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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04F |
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管理番号 | 1101791 |
審判番号 | 無効2003-35417 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-01-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-10-07 |
確定日 | 2004-06-18 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2967351号発明「羽目板」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2967351号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 平成10年 7月13日 本件特許出願(特願平10-196895号) 平成11年 8月20日 本件特許登録(特許第2967351号) 平成15年10月 7日 本件無効審判請求 平成15年12月26日 答弁書、訂正請求書 平成16年 3月15日 弁駁書 2.当事者の主張の概要 (1)請求人は、請求書及び弁駁書において、本件特許を無効とする理由として次のように主張し、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 本件特許の請求項1に記載された発明及び訂正後の請求項1に記載された発明は、いずれも、特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証、甲第3号証に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 甲第1号証:実願平4-19849号(実開平6-32558号)のCD-ROM 甲第2号証:実願昭59-88456号(実開昭61-3841号)のマイクロフィルム 甲第3号証:実願平5-7360号(実開平6-62073号)のCD-ROM (2)被請求人は、答弁書において、訂正請求書により補正後の請求項1に記載された発明について、次のように主張する。 訂正後の請求項1に記載された発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明からは容易に想到できない構成、作用効果を有しており、本件特許を無効とすることはできない。 3.訂正事項 平成15年12月26日付けの訂正請求書による訂正、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「【請求項1】互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され木製で一体加工される羽目板であって、 上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に段差部を有し表面の上記段差部側を目すかし表面とする凹部と、該凹部の表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、 上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記凹部の表面に延在して先端部と上記凹部の段差部との間に上記目すかし表面を露出させる凸部と、該凸部の下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、 上記一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成する凹条部を設け、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凹条部に接合し該凹条部の段部に対面する対面段部を有する凸条部を形成し、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記目すかし表面に延在する延在部を備え、 上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、上記雌部を、上記雄部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、上記雄部を上記凸部と支持部との間に嵌合させて保持し、 上記一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、上記雄部の切除部の幅Eとの関係をD≧Eとしたことを特徴とする羽目板。」を、 「【請求項1】 互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され木製で一体加工される羽目板であって、 上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に段差部を有し表面の上記段差部側を目すかし表面とする凹部と、該凹部の表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、 上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記凹部の表面に延在して先端部と上記凹部の段差部との間に上記目すかし表面を露出させる凸部と、該凸部の下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、 上記一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成する凹条部を設け、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凹条部に接合して隙間なく係合し該凹条部の段部に対面する対面段部を有する凸条部を形成し、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凸状部から上記目すかし表面に延在する延在部を備え、 上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、上記雌部を、上記雄部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、上記雄部を上記凸部と支持部との間に嵌合させて保持し、 上記一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、上記雄部の切除部の幅Eとの関係をD=Eとしたことを特徴とする羽目板。」 と訂正するものである。 (以下、訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正発明」という。) 4.訂正の適否について 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書き及び同条第5号で準用する特許法第126条第2項ないし第4項の要件を満たし、適法なものといえる。 5.無効理由について 請求人主張の無効理由について検討する。 5-1 本件特許出願前に頒布された刊行物及びそこに記載された事項 本件特許出願前に頒布された次の刊行物には、以下の記載が認められる。 (1)刊行物1:実願平4-19849号(実開平6-32558号)のCD-ROM(請求人提出の甲第1号証) (ア)産業上の利用分野の項 「【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、板材の接合構造に関し、更に詳しくは、床板、壁板等の接合構造に係わる。」 (イ)実用新案登録請求の範囲 「【請求項1】固定用基材に釘打ち固定される複数の板材の相隣接して接合される一方の板材の接合端面に凸状が形成され、他の板材の接合端面に凹溝が形成されて、前記凸条と前記凹溝が嵌合して成る板材の接合構造において、前記凸条の表側面の幅寸法を裏側面の幅寸法より長く形成し、前記凹溝を構成する表側凸部を裏側凸部より突出して形成したことを特徴とする板材の接合構造。」 (ウ)考案が解決しようとする課題 「【0004】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、上記したような従来例においては、凸条1a,4aに釘2,5を打ち付ける際に必要以上の力で打ち付けるとこれら凸条1a,4aが割れてしまう問題点を有していた。このため、この部分に斜めに釘打ちを行なうには熟練した作業者が行なうことが必要であった。 【0005】 また、この部分の釘打ち終了後、他の板材を接合させるには、例えば図5に矢示するように、接合する板材どうしを同一平面上に並べて矢示方向にたたいて嵌め込まなくてはならず、このような嵌め込み作業にも、熟練が要請されている。 【0006】 本考案は、このような従来の問題点に着目して創案されたものであって、固定強度が高く、しかも機械釘打ちを可能とする施工容易な板材の接合構造を得んとするものである。」 (エ)作用 「【0008】 【作用】 板材の接合端面に形成した凸条の表側面の幅寸法を裏側面の幅寸法より長く形成することにより、該凸条の表側面より釘を打ち込んだ際の釘貫通肉厚が大きくなり、凸条の釘打ち強度を、高める作用を有する。また、凸条に嵌合する凹溝を構成する表側凸部を裏側凸部より突出させたことにより、凸条に打ち込んだ釘の頭を表側凸部が隠蔽して接合構造の外観を高める。」 (オ)実施例 「【0010】 (実施例1) 図1及び図2は、本考案を壁板に適用した実施例1を示している。 【0011】 図中10は、壁板ユニットであって、長手方向の一側端面に凸条11を、他側端面に凹溝12が形成されている。 【0012】 凸条11は、斜面部11aと、この斜面部11aの裾より側方に延在する平面部11bと、平面部11bの先端縁に形成された段差部11cと、凸条先端部11dとから構成され、この凸条先端部11dの裏面側はテーパ面11eとなっている。 【0013】 また、凹溝12は、上記凸条先端部11dを密嵌する形状であり、この溝12を挾む表側凸部12aと裏側凸部12bとで構成されている。 【0014】 このような構造の壁板ユニット10を接合して、壁躯体側の固定用基材14に釘13を用いて取付けるには、先ず、固定用基材14の所定位置に壁板ユニット10の凸条先端部11dの表面より釘13を打ち込み固定する。次いで、他の壁板ユニット10の凹溝12を、上記凸条先端部11dに嵌め込み、この壁板ユニット10の凸条11側を再度釘打ち固定すればよい。 【0015】 なお、本実施例によれば、打ち込んだ釘13が凸条先端部11dを貫通した後、空間を介することなく直接固定用基材14を打ち込まれるため、固定強度が高く、しかも凸条先端部11dの破損の恐れも少ない。このため、本実施例によれば、機械釘打も可能である。 【0016】 また、凸条先端部11dのテーパ面11eの作用により、壁板ユニット10ど うしを同一平面上で嵌め合わせなくてもよく、作業性が向上する。」 上記記載及び図1、図2を参酌すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。 「互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され一体加工される羽目板であって、 上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に傾斜面11aを有し表面の上記傾斜面11a側を目すかし表面とする平面部11bと、該平面部11bの表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、 上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記平面部11bの表面に延在して先端部と上記平面部11bの傾斜面11aとの間に上記目すかし表面を露出させる表面凸部12aと、該表面凸部12aの下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、 上記一側縁部の平面部11bの表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段差部11cを形成する凹条部を設け、 上記他側縁部の表面凸部12aの裏面に、上記凹条部に接合して隙間なく係合し該凹条部の段部に対面する凸条部を形成し、 上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除したテーパ面11eを有して形成し、上記雌部を、上記雄部のテーパ面11eに対応する裏側凸部12bを設けて構成し、上記雄部を上記表面凸部12aと裏側凸部12bとの間に嵌合させて保持し、 上記一側縁部の平面部11bの表面に形成した凹条部の幅Dと、上記雄部のテーパ面11eの幅Eとの関係をD>Eとしたことを特徴とする羽目板。」 (以下、刊行物1に記載された発明を「刊行物1記載発明」という。) (2)刊行物2:実願昭59-88456号(実開昭61-3841号公報)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第2号証) 第1図には、外装材2の他側縁部の凸部の裏面に、他側縁部の凸状部から一側縁部に設けられた目すかし表面に延在する延在部が備えられていることが記載されている。 (3)刊行物3:実願平5-7360号(実開平6-62073号)のCD-ROM(請求人提出の甲第3号証) 特に図7には、断熱パネルの他側縁部の凸部の裏面に、他側縁部の凸状部から一側縁部に設けられた目すかし表面に延在する延在部を備えることが記載されている。 5-2 対比、判断 (1)対比 本件訂正発明と刊行物1記載発明とを対比すると、本件訂正発明の、「段差部」、「凹部」、「凸部」、「段部」、「切除部」及び「支持部」は、それぞれ刊行物1記載発明の「傾斜面11a」、「平面部11b」、「表面凸部12a」、「段差部11c」、「テーパ面11e」及び「裏側凸部12b」に相当するから、両者の一致点及び相違点は次のとおりであると認められる。 [一致点] 「互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され一体加工される羽目板であって、 上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に段差部を有し表面の上記段差部側を目すかし表面とする凹部と、該凹部の表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、 上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記凹部の表面に延在して先端部と上記凹部の段差部との間に上記目すかし表面を露出させる凸部と、該凸部の下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、 上記一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成する凹条部を設け、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凹条部に接合して隙間なく係合し該凹条部の段部に対面する凸条部を形成し、 上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、上記雌部を、上記雄部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、上記雄部を上記凸部と支持部との間に嵌合させて保持したことを特徴とする羽目板。」 [相違点] 相違点1:本件訂正発明の羽目板は、木製であるのに対し、刊行物1記載発明は、木製かどうか不明である点。 相違点2:本件訂正発明は、他側縁部の凸部の裏面に、一側縁部の凹条部に接合して隙間なく係合し該凹条部の段部に対面する対面段部を有する凸条部を形成し、上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凸状部から上記目すかし表面に延在する延在部を備えているのに対し、刊行物1記載発明では、凸条部には対面段部や凸状部から上記目すかし表面に延在する延在部が設けられていない点。 相違点3:本件訂正発明の一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、雄部の切除部の幅Eとの関係はD=Eであるのに対し、刊行物1記載発明ではD>Eである点。 (2)判断 羽目板を木製とすることは、本件特許出願前に周知の技術的事項にすぎず、上記相違点1には何ら技術的意義はない。 次に相違点2について検討する。 本件訂正発明は、上記相違点2に係る構成のうち特に対面段部を設けたことによって、「他側縁部の凸部の裏面に、凹条部に接合し凹条部の段部に対面する対面段部を有した凸条部を形成したので、凹条部の段部に釘やステープル等の釘類の先端を位置決めできるので、打ち込み位置が明瞭になり、打ち込み作業性を大幅に向上させることができる。また、釘やステープル等の釘類を打ち込んだ後は、釘類の頭は段部に存在することになるので、釘類が目すかし表面に露出する事態を確実に防止することができる。更に、隣接する羽目板の他側縁部の雌部を先に固定された羽目板の雄部に係合する際、他側縁部の凸部の裏面には、凹条部に接合し凹条部の段部に対面する対面段部を有した凸条部が形成されているので、凸条部が凹条部に隙間なく係合することになり、そのため、がたつきを防止することができ、連設強度を向上させることができる。更にまた、釘やステープル等の釘類の頭は段部に存在することになるので、凸条部と干渉することがなく、しかも、釘類の頭が対面段部で押えられて、確実に覆われることになる。そのため、雄部と雌部の係合が不十分になったり、凸部にひびが入って破損したりすることを防止することができ、組付け性を向上させることができるとともに、一側縁部の凹部の段差部と他側縁部の凸部の先端部との間に露出させる目すかし表面に、釘類の頭が露出しないので、仕上がり品質が極めて良いものになり、外観品質の良い内装や外装の施工を実現できる。」という作用効果(段落番号0013ないし0015参照)を奏すると認められるが、刊行物1記載発明において、本件訂正発明の他側縁部の凸部に相当する表面凸部の先端部は、本件訂正発明の一側縁部の凹条部に設けられた段部に相当する形状に対応するように形成され、両者は隙間なく係合しており、本件訂正発明と同様の作用効果を奏するといえ、また、上記相違点2のうち特に目すかし表面に延在する延在部を備えることは、外装材や断熱パネルに関してではあるが、請求人提出の甲第2号証(第1図参照)や、同甲第3号証(特に図7参照)に記載されているように、本件特許出願前に周知の技術的事項であって、このような周知の技術的事項を刊行物1記載発明に適用することを除外すべき理由は見当たらないことを考慮すると、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎないといえる。そして、刊行物1記載発明に上記周知の技術的事項を適用すれば、本件訂正発明と同様に、「他側縁部の凸部の裏面に、目すかし表面に延在する延在部を備えた場合には、より確実に段部を覆うことができるとともに、雨返しが確実になり、防水性の向上を図ることができる。」という作用効果(段落番号0015)を奏することが期待できる。 さらに相違点3については、刊行物1記載発明のものにおいて、一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、雄部の切除部の幅Eとの関係をD=Eとすることは、一側縁部と他側縁部との接合強度をより大きいものとするために、当業者が適宜設定できる設計的事項にすぎない。 したがって、本件訂正発明は、刊行物1記載発明及び出願前周知の技術的事項から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項に該当するものである。 5-3 被請求人の主張について 被請求人は、平成15年12月26日付けの答弁書において、甲第2号証や甲第3号証に記載された延在部は、防水性の向上効果は得られない旨、本件訂正発明は、一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、雄部の切除部の幅Eとの関係をD=Eとしたことによって、保持を確実にし、がたつきを防止し、連接強度を向上させる作用効果を奏する旨主張する。 しかしながら、甲第2号証や甲第3号証に記載された延在部は、目すかし部の表面に接するように設けられており、その構造からみて雨返しを確実にし、防水性の向上を図ることが期待でき、また、刊行物1記載発明において、DとEの関係を本件訂正発明のようにD=Eとすれば、保持はより確実になり、がたつきが少なくなり、連接強度が高くなることが期待できることが、いずれも当業者にとって容易に予想できることであるから、格別の作用効果ということはできず、被請求人の主張は採用できない。 6.まとめ 以上のように、本件訂正発明(訂正後の請求項1記載の発明)の特許は、特許法第29条2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 羽目板 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され木製で一体加工される羽目板であって、 上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に段差部を有し表面の上記段差部側を目すかし表面とする凹部と、該凹部の表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、 上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記凹部の表面に延在して先端部と上記凹部の段差部との間に上記目すかし表面を露出させる凸部と、該凸部の下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、 上記一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成する凹条部を設け、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凹条部に接合して隙間なく係合し該凹条部の段部に対面する対面段部を有する凸条部を形成し、 上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凸状部から上記目すかし表面に延在する延在部を備え、 上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、上記雌部を、上記雄部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、上記雄部を上記凸部と支持部との間に嵌合させて保持し、 上記一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、上記雄部の切除部の幅Eとの関係をD=Eとしたことを特徴とする羽目板。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、建物の内装や外装に用いられる羽目板に係り、特に、互いに隣接する側端部に目すかし部を形成して多数が順次連設される羽目板に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、この種の羽目板は、例えば、図5に示すように、木製で一体加工され、互いに隣接する一側縁部1と他側縁部11とを目すかし部10を形成して係合させて多数が順次連設される羽目板Sであって、一側縁部1を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面Fとの間に段差部2を有し表面の段差部2側を目すかし表面3とする凹部4と、凹部4の表面を含んで形成された雄部5とを備えて構成し、他側縁部11を、長手方向に沿い裏面が凹部4の表面に延在して先端部12aと凹部4の段差部2との間に目すかし表面3を露出させる凸部12と、凸部12の下側に設けられ雄部5に係合する雌部13とを備えて構成されている。 そして、この羽目板Sを付設するときは、例えば、図5に示すように、雄部5のある一側縁部1を上にして、柱Tに架設し、凹部4の表面に釘やステープル等の釘類Kを打ち込んで柱Tに固定し、次に、別の羽目板Sを用意して、他側縁部11の雌部13を先に固定された羽目板Sの雄部5に係合し、一側縁部1において凹部4の表面に釘やステープル等の釘類Kを打ち込んで柱Tに固定する。このように、順次羽目板Sを固定していく。 固定された状態では、一側縁部1の凹部4の段差部2と、他側縁部11の凸部12の先端部12aとの間に目すかし表面3が露出させられて、目すかし部10が形成され、外観品質の良い内装や外装が施工される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、この従来の羽目板Sにあっては、一側縁部1において凹部4の表面に釘やステープル等の釘類Kを打ち込んで固定するようにしているが、凹部4の表面のどの位置に釘類Kを打ち込んで良いか、打ち込み位置が明瞭でないので、釘類Kが目すかし表面3に露出したり、雄部5に打ち込まれて雄部5の裏側に貫通し雌部13の嵌合が阻害されて組付けが不十分になる等、仕上がり品質や組付け性に影響を与えることがあるという問題があった。また、釘類Kをその頭が凸部12によって隠されるように打ち込むと、凸部12と釘類Kの頭が干渉して、雄部5と雌部13の係合が不十分になったり、凸部12にひびが入って破損したりすることがあり、この点でも、組付け性に影響を与えることがあるという問題があった。 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、凹部の表面のどの位置に釘やステープル等の釘類を打ち込んで良いか、その打ち込み位置を明瞭にし、しかも、釘類の頭が隠れるようにし、更に、雄部と雌部の係合がぐらつかないようにし、仕上がり品質や組付け性を向上させることを目的とした羽目板を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 このような目的を達成するため、本発明に係る羽目板は、互いに隣接する一側縁部と他側縁部とを目すかし部を形成して係合させて多数が順次連設され木製で一体加工される羽目板であって、上記一側縁部を、長手方向に沿い端縁側から凹設され一般外面との間に段差部を有し表面の上記段差部側を目すかし表面とする凹部と、該凹部の表面を含んで形成された雄部とを備えて構成し、上記他側縁部を、長手方向に沿い裏面が上記凹部の表面に延在して先端部と上記凹部の段差部との間に上記目すかし表面を露出させる凸部と、該凸部の下側に設けられ上記雄部に係合する雌部とを備えて構成した羽目板において、上記一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い上記雄部の先端側から削り取って形成され上記目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成する凹条部を設け、上記他側縁部の凸部の裏面に、上記凹条部に接合し該凹条部の段部に対面する対面段部を有する凸条部を形成した構成としている。 【0005】 この構成により、羽目板を固定するときは、雄部のある一側縁部を上にして、凹部の表面であって凹条部の段部に釘やステープル等の釘類の先端を当ててこの釘類を中央側に斜めに打ち込む。この場合、凹条部の段部に釘類の先端を位置決めできるので、打ち込み位置が明瞭になり、打ち込み作業性が大幅に向上させられる。 また、釘類を打ち込んだ後は、釘類の頭は段部に存在することになるので、釘類が目すかし表面に露出する事態が確実に防止される。 更に、隣接する羽目板の他側縁部の雌部を先に固定された羽目板の雄部に係合する際、他側縁部の凸部の裏面には、凹条部に接合し凹条部の段部に対面する対面段部を有した凸条部が形成されているので、凸条部が凹条部に隙間なく係合することになり、そのため、がたつきが防止され、連設強度が向上させられる。 更にまた、釘類の頭は段部に存在することになるので、凸条部と干渉することがなく、対面段部で押えられて、確実に覆われることになり、雄部と雌部の係合が不十分になったり、凸部にひびが入って破損したりする事態が防止される。 【0006】 そして、上記他側縁部の凸部の裏面に、上記目すかし表面に延在する延在部を備えた構成としている。段部の覆いが確実になり、仕上がり品質が極めて良いものになるとともに、雨返しも確実になり、防水性の向上が図られる。 また、上記雄部を、該雄部の裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、上記雌部を、上記雄部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、上記雄部を上記凸部と支持部との間に嵌合させて保持する構成としている。雄部が雌部に挾持されるように嵌合するので保持が確実になり、がたつきが防止される。 更に、上記一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、上記雄部の切除部の幅Eとの関係をD≧Eとした構成としている。凹条部の段部の直下より中央側には空所がなく、中実になることから、釘やステープル等の釘類を中央側に向けて段部から斜めに打ち込んだ際、釘が中実部を貫通するので、保持が確実になる。 【0007】 【発明の実施の形態】 以下添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る羽目板を詳細に説明する。尚、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。 図1乃至図3に示すように、実施の形態に係る羽目板Sは、木製で一体加工され、互いに隣接する一側縁部1と他側縁部11とを目すかし部10を形成して係合させて多数が順次連設されるものである。 一側縁部1は、長手方向に沿い端縁1a側から凹設され一般外面Fとの間に傾斜させられた段差部2を有し表面の段差部2側を目すかし表面3とする凹部4と、凹部4の表面を含んで形成された雄部5とを備えて構成されている。雄部5は、その裏側を長手方向に端縁1a側から切除した切除部6を有して形成されている。 また、一側縁部1の凹部4の表面に、長手方向に沿い雄部5の先端5a側から削り取って形成され目すかし表面3との間に長手方向に沿う段部7を形成する凹条部8が設けられている。 更にまた、図2に示すように、一側縁部1において、凹部4の表面に形成した凹条部8の幅Dと、雄部5の切除部6の幅Eとの関係がD≧Eに設定されている(実施の形態ではD=Eに設定されている)。 【0008】 一方、他側縁部11は、長手方向に沿い裏面が凹部4の表面に延在して先端部12aと凹部4の段差部2との間に上記の目すかし表面3を露出させる凸部12と、凸部12の下側に設けられ雄部5に係合する雌部13とを備えて構成されている。凸部12の先端部12aは凹部4の段差部2と同様に鏡映対象に傾斜形成されている。また、雌部13は、雄部5の切除部6に対応する支持部14を設けて構成され、雄部5を凸部12と支持部14との間に嵌合させて保持する。 また、他側縁部11の凸部12の裏面に、凹条部8に接合し凹条部8の段部7に対面する対面段部15を有する凸条部16が形成されている。更に、他側縁部11の凸部12の裏面に、目すかし表面3に延在する延在部17が備えられている。 【0009】 従って、この実施の形態に係る羽目板Sを付設するときは、例えば、図3に示すように、雄部5のある一側縁部1を上にして、柱Tに架設し、凹部4の表面であって凹条部8の段部7に釘やステープル等の釘類Kの先端を当ててこの釘類Kを中央側に斜めに打ち込み、羽目板Sを柱Tに固定する。この場合、凹条部8の段部7に釘類Kの先端を位置決めできるので、打ち込み位置が明瞭になり、打ち込み作業性が大幅に向上させられる。 そして、釘やステープル等の釘類Kを打ち込んだ後は、釘類Kの頭は段部7に存在することになるので、釘類Kの頭が目すかし表面3に露出する事態が防止される。また、この状態においては、一側縁部1の凹部4の表面に形成した凹条部8の幅Dと、雄部5の切除部6の幅Eとの関係をD≧Eとしているので、凹条部8の段部7の直下より中央側には空所がなく、中実になることから、釘類Kを中央側に向けて段部7から斜めに打ち込んだ際、釘類Kが中実部を貫通するので、保持が確実になる。 【0010】 次に、別の羽目板Sを用意して、他側縁部11の雌部13を先に固定された羽目板Sの雄部5に係合する。この場合、他側縁部11の凸部12の裏面には、凹条部8に接合し凹条部8の段部7に対面する対面段部15を有した凸条部16が形成されているので、凸条部16が凹条部8に隙間なく係合することになり、そのため、がたつきが防止され、連設強度が向上させられる。また、釘やステープル等の釘類Kの頭は段部7に存在することになるので、凸条部16と干渉することがなく、釘類Kの頭が対面段部15で押えられて、確実に覆われることになる。そのため、雄部5と雌部13の係合が不十分になったり、凸部12にひびが入って破損したりすることが防止され、組付け性が向上させられる。 【0011】 その後、一側縁部1において凹部4の表面であって凹条部8の段部7に釘類Kの先端を当ててこの釘類Kを中央側に斜めに打ち込み、羽目板Sを柱Tに固定する。 固定された状態では、一側縁部1の凹部4の段差部2と、他側縁部11の凸部12の先端部12aとの間に目すかし表面3が露出させられて、目すかし部10が形成され、外観品質の良い内装や外装が施工される。 この場合、目すかし表面3には、釘やステープル等の釘類Kの頭が露出しないので、仕上がり品質が極めて良いものになる。また、他側縁部11の凸部12の裏面に、目すかし表面3に延在する延在部17を備えているので、段部7の覆いが確実になり、この点でも、仕上がり品質が極めて良いものになるとともに、雨返しも確実になり、防水性の向上が図られる。 【0012】 【実施例】 図4には、一実施例に係る羽目板Sを示しており、木板を切削加工して、図4に示す寸法関係にしたものである。尚、実施例においては、一側縁部1の段差部2及び凸部12の先端部12aを外面Fに対して直角に形成してある。この段差部2及び先端部12aの形状については、適宜変更して差支えない。 【0013】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明の羽目板によれば、一側縁部の凹部の表面に、長手方向に沿い雄部の先端側から削り取って形成され目すかし表面との間に長手方向に沿う段部を形成した凹条部を設け、他側縁部の凸部の裏面に、凹条部に接合し凹条部の段部に対面する対面段部を有した凸条部を形成したので、凹条部の段部に釘やステープル等の釘類の先端を位置決めできるので、打ち込み位置が明瞭になり、打ち込み作業性を大幅に向上させることができる。 また、釘やステープル等の釘類を打ち込んだ後は、釘類の頭は段部に存在することになるので、釘類が目すかし表面に露出する事態を確実に防止することができる。 【0014】 更に、隣接する羽目板の他側縁部の雌部を先に固定された羽目板の雄部に係合する際、他側縁部の凸部の裏面には、凹条部に接合し凹条部の段部に対面する対面段部を有した凸条部が形成されているので、凸条部が凹条部に隙間なく係合することになり、そのため、がたつきを防止することができ、連設強度を向上させることができる。 更にまた、釘やステープル等の釘類の頭は段部に存在することになるので、凸条部と干渉することがなく、しかも、釘類の頭が対面段部で押えられて、確実に覆われることになる。そのため、雄部と雌部の係合が不十分になったり、凸部にひびが入って破損したりすることを防止することができ、組付け性を向上させることができるとともに、一側縁部の凹部の段差部と他側縁部の凸部の先端部との間に露出させる目すかし表面に、釘類の頭が露出しないので、仕上がり品質が極めて良いものになり、外観品質の良い内装や外装の施工を実現できる。 【0015】 また、他側縁部の凸部の裏面に、目すかし表面に延在する延在部を備えたので、より確実に段部を覆うことができるとともに、雨返しが確実になり、防水性の向上を図ることができる。 更に、雄部を、その裏側を長手方向に切除した切除部を有して形成し、雌部を、凸部の切除部に対応する支持部を設けて構成し、雄部を凸部と支持部との間に嵌合させて保持する構成としたので、雄部が雌部に挾持されるように嵌合するので保持が確実になり、がたつきを防止することができ、連設強度を向上させることができる。 更にまた、一側縁部の凹部の表面に形成した凹条部の幅Dと、雄部の切除部の幅Eとの関係をD≧Eとしたので、凹条部の段部の直下より中央側には空所がなく、中実になることから、釘やステープル等の釘類を中央側に向けて段部から斜めに打ち込んだ際、釘類が中実部を貫通するので、保持を確実にすることができる。また、雄部に打ち込まれて雄部の裏側に釘類が貫通し雌部の嵌合が阻害されて組付けが不十分になる事態を防止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施の形態に係る羽目板を示す断面図である。 【図2】 本発明の実施の形態に係る羽目板を示す斜視図である。 【図3】 本発明の実施の形態に係る羽目板の組付け状態を示す断面図である。 【図4】 本発明の実施例に係る羽目板を示す断面図である。 【図5】 従来の羽目板の一例をその組付け状態とともに示す断面図である。 【符号の説明】 S 羽目板 F 外面 K 釘類 1 一側縁部 1a 端縁 2 段差部 3 目すかし表面 4 凹部 5 雄部 5a 先端 6 切除部 7 段部 8 凹条部 10 目すかし部 11 他側縁部 12 凸部 12a 先端部 13 雌部 14 支持部 15 対面段部 16 凸条部 17 延在部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2004-04-21 |
結審通知日 | 2004-04-22 |
審決日 | 2004-05-07 |
出願番号 | 特願平10-196895 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(E04F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長島 和子、深草 誠 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 新井 夕起子 |
登録日 | 1999-08-20 |
登録番号 | 特許第2967351号(P2967351) |
発明の名称 | 羽目板 |
代理人 | 丸岡 裕作 |
代理人 | 土橋 皓 |
代理人 | 田村 爾 |
代理人 | 丸岡 裕作 |
代理人 | 土橋 皓 |