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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E01C
管理番号 1101794
審判番号 無効2003-35456  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-11-05 
確定日 2004-06-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3115131号発明「舗装路面円形切断装置と該切断装置に用いる切断刃」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3115131号の請求項3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3115131号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成4年11月19日に特許出願された特願平4-310509号(以下、「本件出願」という。)であって、その請求項1ないし請求項4に係る発明について平成12年9月29日に設定登録され、その後、本件無効審判請求人〔ジェーピーイー株式会社〕により上記本件特許のうちの請求項3に係る発明の特許に対して平成15年11月5日に本件無効審判〔無効2003-35456〕が請求されたものであり、無効審判被請求人〔有限会社サンコー〕により指定期間内の平成16年1月30日付けの審判事件答弁書が提出されると共に、同日付けの訂正請求書が提出され、前記請求人により平成16年4月6日付けの弁駁書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
〔訂正事項1〕
訂正請求人〔無効審判被請求人有限会社サンコー〕が平成16年1月30日付けの訂正請求書により訂正請求している訂正の内容は、特許査定時の明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】 駆動手段により回転されるアームの先端に取り付けられ、切断円形の周方向に沿って移動される切断刃であって、
舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃。」の記載を、
「【請求項3】 路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、
舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、上記アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで円形切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃。」と訂正する。

〔訂正事項2〕
特許明細書の発明の詳細な説明欄の
「【0012】
さらに、本発明は、駆動手段により回転されるアームの先端に取り付けられ、切断円形部の周方向に沿って移動される切断刃として、舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備えている舗装路面円形切断装置に用いる切断刃を提供するものである。」の記載を、
「【0012】
さらに、本発明は、路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、 舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、上記アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで円形切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃を提供するものである。」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上拡張又は変更の存否
2-1.訂正の目的について
ア 〔訂正事項1〕の訂正について
(a)上記〔訂正事項1〕の訂正の内の「路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアーム」の訂正は、本件発明の「切断刃」が用いられるところの、訂正前の請求項3に係る発明を特定する事項である「舗装路面円形切断装置」を構成する「駆動手段により回転されるアーム」を、より限定的に特定する訂正である。
(b)上記〔訂正事項1〕の訂正の内の「上記路面円形切断部の周」の訂正は、訂正前の請求項3に係る発明を特定する事項である「切断円形の周」を、より限定的に特定する訂正である。
(c)上記〔訂正事項1〕の訂正の内の「上記アーム」の訂正は、訂正前の請求項3に係る発明を特定する事項である「アーム」を、限定的に特定する訂正である。
(d)上記〔訂正事項1〕の訂正の内の「円形切断」の訂正は、訂正前の請求項3に係る発明を特定する事項である「切断」を、より限定的に特定する訂正である。
(e)したがって、上記〔訂正事項1〕の訂正は、訂正前の請求項3に係る発明の特定事項を、より限定的に特定するための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 〔訂正事項2〕の訂正について
上記〔訂正事項2〕の訂正は、特許請求の範囲の請求項3についての上記〔訂正事項1〕の訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項3の記載と発明の詳細な説明欄の記載とが整合するようにするための訂正であるから、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

2-2.新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上拡張又は変更の存否について
上記〔訂正事項1〕及び〔訂正事項2〕における訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載されているから、上記〔訂正事項1〕及び〔訂正事項2〕の訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。また、上記〔訂正事項1〕及び〔訂正事項2〕における訂正事項は、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。

3.訂正に関する無効審判請求人の主張について
無効審判請求人は、平成16年4月6日付けの弁駁書の中で、「上記〔訂正事項1〕の一部としての『路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、』の訂正事項は、専ら、本特許発明の対象とする切断刃を利用するという路面切断装置を技術内容とするものであって、切断刃自体について何ら減縮するものではなく、また、明瞭でない記載の釈明をするものではない。このような訂正事項を含む訂正後の請求項3の記載内容は、全体的に把握した場合、切断刃に関する内容に乏しく、実質的に切断刃を利用する路面切断装置に大きな比重がおかれ、、同請求項3に記載された発明は、実質的に路面切断装置であると解される。別言すると、原明細書の請求項3における切断刃の特許権の及ぶ範囲が、訂正後においては、実質的に路面切断装置の特許権の及ぶ範囲に変更されると考えられる。従って、本件訂正は、実質的に特許請求の範囲を変更するものであるので、特許法第134条第5項において準用する同法第126条第4項に違反する。」旨を主張する。
しかしながら、上記〔訂正事項1〕の訂正は、訂正前の請求項3に記載されていた発明の特定事項である「舗装路面円形切断装置に用いる切断刃」の中の「舗装路面円形切断装置」を、前記『路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、』のように特定することにより、訂正後の請求項3に係る発明の特定事項である「舗装路面円形切断装置に用いる切断刃」を間接的に限定的に特定するという、切断刃を形式的に特定する訂正の体裁を取っているものと解され、そして、訂正前の請求項3に係る発明の技術的範囲が、上記〔訂正事項1〕により、新たな技術範囲に実質上変更されたり、或いは、新たな技術範囲を含むように実質上拡張されたということもできないから、「上記〔訂正事項1〕の訂正は実質的に特許請求の範囲を変更するものである」という無効審判請求人の上記主張は、これを採用することができない。

4 むすび
以上のとおりであり、本件訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書に規定する要件を満たし、また、特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件特許の請求項3に係る発明
以上のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項3に係る発明は、平成16年1月30日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された次のとおりのもの(以下、これを「本件訂正発明3」という。)である。
「【請求項3】 路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、
舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、上記アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで円形切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃。」

第4 当事者の主張
1.無効審判請求人の主張
無効審判請求人は、「特許第3115131号の発明の明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る発明についての特許を無効にする。審判費用は無効審判被請求人の負担とする。」との審決を求め、下記の刊行物を提示し、以下の無効理由を主張する。その無効理由の概略は、次のとおりである。
〔無効理由〕:本件特許の請求項3に係る特許発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証刊行物及び甲第2号証刊行物に記載の発明に、周知技術である甲第3号証刊行物及び甲第4号証刊行物に記載のダイヤモンドチップを適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものである。したがって、本件発明3の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

甲第1号証刊行物:実願平2-130500号(実開平4-86109号)のマイクロフィルム
甲第2号証刊行物:実願昭62-57854号(実開昭63-165310号)のマイクロフィルム
甲第3号証刊行物:特開昭63-230306号公報
甲第4号証刊行物:実願昭63-167040号(実開平2-86710号)のマイクロフィルム

2.無効審判被請求人の主張
無効審判被請求人は、その審判事件答弁書において「無効事項はない、本件特許は維持されるべきものであるとの審決を求める。」と主張し、無効審判請求人の前記主張に対し、「訂正後の請求項3は第29条第2項に規定される進歩性を有するものである。」と主張する。

第5 当審の判断
1.甲号証各刊行物の記載事項
1-1.甲第1号証刊行物〔実願平2-130500号(実開平4-86109号)のマイクロフィルム〕の記載事項
甲第1号証刊行物には、天井の孔あけ工具に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「本考案実施例は、回転軸1と、回転軸1にその軸心を一致させて取付けられたドリル2と、回転軸1から可変距離xの位置にその回転軸1に平行にその回転軸1とともに回転するように取付けられた2枚のブレード3と、回転軸1を回転駆動する電動機4と、回転軸1が貫通しその回転軸1を支持する軸受5と、その軸受5に取付けられ、ブレード3の回転直径より大きい内径であって透明プラスチックで構成され、ブレード3の回転範囲を覆い、その上縁6aは天井面に当接する構造の覆い6とを備え、さらに本考案の特徴として、回転軸1とドリル2との間に長さが60cmないし90cmの延長棒7が取付けられる。回転軸1は軸受5に対してその軸方向に距離yだけ移動可能であり、この距離yは操作により可変設定できる構造を備える。」(明細書7頁2行〜同17行)
「次いで、あけようとする孔の中心位置にドリル2の先端を当接し電動機4を駆動する。これにより天井にはセンタ孔があげられ、さらに、電動機4を駆動しながら天井に向かって押し上げると、センタ孔に挿通したドリル2を中心にブレード3が回転して天井を円形にカットし、あらかじめ天井の厚さを超える範囲に設定された軸方向の距離yだけ移動して孔あけを完了する。」(明細書8頁5行〜同12行)
そして、添付図面の第1図及び第3図には、2枚のブレード3が、回転軸1の回転中心からxの可変距離だけ伸びた腕の長さを有する2本の腕部のそれぞれの先端に、ブレード3の長手方向の軸線が回転軸1と平行でかつ前記ブレード3の面が回転円周の接線方向を向くように、ネジ止めにより着脱可能に固着されている天井の孔あけ工具におけるブレードの具体的な取付構造が図示されている。
そうしてみると、上記甲第1号証刊行物の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証刊行物には、「回転軸1と、その回転軸1にその軸心を一致させて取付けられたドリル2と、その回転軸1から可変距離xの位置にその回転軸1に平行にその回転軸1とともに回転するように取付けられた2枚のブレード3と、その回転軸1を回転駆動する電動機4と、その回転軸1が貫通しその回転軸1を支持する軸受5と、その軸受5に取付けられ、前記ブレード3の回転直径より大きい内径であって透明プラスチックで構成され、前記ブレード3の回転範囲を覆い、その上縁6aは天井面に当接する構造の覆い6とを備えた天井の孔あけ工具における2枚のブレード3が、前記回転軸1の回転中心からxの可変距離だけ伸びた腕の長さを有する2本の腕部のそれぞれの先端に、ブレード3の長手方向の軸線が回転軸1と平行でかつ前記ブレード3の面が回転円周の接線方向を向くように、ネジ止めにより着脱可能に固着されている天井の孔あけ工具のブレード3の取付構造」の発明の記載が認められる。

1-2.甲第2号証刊行物〔実願昭62-57854号(実開昭63-165310号)のマイクロフィルム〕の記載事項
甲第2号証刊行物には、車載式舗装道路用切断装置に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「車体(1)にブーム(3)を出退操作自在に取付け、舗装道路(A)に対する円筒形状の回転カッター(4)をその上下中心(P1)周りで駆動回転自在に前記ブーム(3)の先端側に取付け、前記回転カッター(4)の舗装道路(A)に対する姿勢を調整する手段を設けた車載式舗装道路用切断装置であって、前記カッター姿勢調整用の手段を形成するに、ほぼ水平な第1軸芯(P2)周りで揺動可能な第1支持部材(7)を前記ブーム(3)に取付け、前記第1軸芯(P2)とほぼ直角でほぼ水平な第2軸芯(P3)周りで揺動可能で、前記回転カッター(4)を昇降操作自在に取付けた第2支持部材(13)を前記第1支持部材(7)に取付け、前記第1及び第2支持部材(7),(13)の一方にその姿勢を定めるための一対のアウトリガー(9)を、かつ、他方にその姿勢を定める固定手段(14),(15),(16)を夫々付設してある車載式舗装道路用切断装置。」(明細書1頁5行〜2頁2行)
「〔作用〕つまり、互にほぼ直角で夫々ほぼ水平な第1又は第2軸芯周りで揺動可能な第1支持部材と第2支持部材の固定姿勢をアウトリガーや固定手段で調整することによって、回転カッターを舗装面に対してほぼ垂直にセットでき、また、一対のアウトリガーによる突張り作用によって回転カッターの車体に対するガタツキを無くすことができる。」(明細書4頁17行〜5頁5行)
「第1図に示すように、自動車(1)の後端部に、ヒンジ(2)により左右揺動自在に、かつ、前後スライドにより出退操作自在にブーム(3)を取付け、鋪装道路(A)に対する円筒形状の回転カッター(4)を、油圧モータ(M)により上下中心(P1)周りで駆動回転自在にブーム(3)の先端側に取付けてある。」(明細書6頁7行〜同13行)
「次に、上述の車載式舗装道路用切断装置による作業状態を説明する。・・・第4図(ロ)に示すように、ハンドル(18)で第1支持部材(7)をブーム(3)に対して下降させ、アウトリガー(9)を接地させる。・・・アウトリガー(9)の伸長操作で、第1支持部材(7)を自動車(1)を利用して固定する。・・・もって、第1図に示すように、回転カッター(4)を舗装面にほぼ垂直な姿勢で固定する。その後、回転カッター(4)を駆動しながらハンドル(18)で下降させて、舗装道路(A)を円盤状に切断する。」(明細書8頁7行〜9頁13行)
「回転カッター(4)は、刃体の形状、駆動構成、第2支持部材(13)への取付構成、昇降操作構成、その他において適当に変更できる。」(明細書9頁20行〜10頁2行)

そうしてみると、甲第2号証刊行物には、上記甲第2号証刊行物の摘記事項を総合すると、「車体(1)にブーム(3)を出退操作自在に取付け、舗装道路(A)に対する円筒形状の回転カッター(4)を油圧モータ(M)によりその上下中心(P1)周りで駆動回転自在に前記ブーム(3)の先端側に取付け、前記回転カッター(4)の舗装道路(A)に対する姿勢を調整する手段を設けた車載式舗装道路用切断装置において、ほぼ水平な第1軸芯(P2)周りで揺動可能な第1支持部材(7)を前記ブーム(3)に取付け、前記第1軸芯(P2)とほぼ直角でほぼ水平な第2軸芯(P3)周りで揺動可能で、前記回転カッター(4)を昇降操作自在に取付けた第2支持部材(13)を前記第1支持部材(7)に取付け、前記第1及び第2支持部材(7),(13)の一方にその姿勢を定めるための一対のアウトリガー(9)を、かつ、他方にその姿勢を定める固定手段(14),(15),(16)を夫々付設し、前記アウトリガー(9)及び前記固定手段(14),(15),(16)の調整により回転カッター(4)を舗装面にほぼ垂直な姿勢にセットして、該回転カッター(4)を駆動させながら下降させて、舗装道路(A)を円盤状に切断する車載式舗装道路用切断装置」の発明の記載が認められる。

1-3.甲第3号証刊行物〔特開昭63-230306号公報〕の記載事項
甲第3号証刊行物には、中空ドリルに関し、図面とともに次の技術事項が記載されている。
「本発明の基礎をなす課題は、ダイヤモンド粒子を含有するカッターセグメントを具える中空カッターによって直径精度の高い多数の孔を穿設可能とすることである。」(2頁左下欄14行〜同17行)

1-4.甲第4号証刊行物〔実願昭63-167040号(実開平2-86710号)のマイクロフィルム〕の記載事項
甲第4号証刊行物には、コアドリルに関し、図面とともに次の技術事項が記載されている。
「電気ドリル等の回転工具1の先端にダイヤモンドコアビット2を装着し、前記ダイヤモンドコアビットの胴内には貯水室を含む注水装置3が配設されているコアドリルでコンクリート壁等の被穿孔材4に穴明けする揚合、まず、被穿孔材の穴明けしようとする位置に、穴明け位置決め兼、コア抜き治具5を貼着する。穴明け位置決め兼、コア抜き袷具5は、厚さが10mmから20mm程度であり、ダイヤモンドコアビット2に遊嵌状態で挿入可能な円柱形状をしており、前記被穿孔材4に貼着された前記穴明け位置決め兼、コア抜き治具5の外周を前記ダイヤモンドコアビットの内径でなぞるように穿孔を開始すれば穿孔開始時の穴明け位置決めができる。」(明細書4頁1行〜同14行)

2.対比、判断
2-1.本件訂正発明3と甲第2号証刊行物に記載の発明との対比及び一致点・相違点
ここで、本件訂正発明3と甲第2号証に記載の発明(以下、これを「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「油圧モータ(M)の回転駆動軸」「油圧モータ(M)の回転駆動軸の上下中心(P1)」「舗装道路(A)」「回転カッター(4)を舗装面にほぼ垂直な姿勢にセット」「昇降操作自在に取付けられた回転カッター(4)を駆動させながら下降させて、」「舗装道路(A)を円盤状に切断する」「車載式舗装道路用切断装置」が、それぞれ本件訂正発明3の「駆動主軸」「路面円形切断部の中心点」「舗装路面」「舗装路面に対して垂直方向となるように固定され」「回転および下降に応じて、」「路面を円形切断していく」「舗装路面円形切断装置」に対応する。
また、引用発明における「円筒形状の回転カッター(4)」は、該円筒形状の回転カッター(4)を油圧モータ(M)の回転駆動軸の上下中心(P1)の周りに回転駆動させると、前記円筒形状の回転カッター(4)が円盤状切断部の周方向に沿って回転移動することにより、舗装道路(A)の舗装面が円盤状に切断されることになるものであるから、引用発明の前記「円筒形状の回転カッター(4)」が、本件訂正発明3の「路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃」に対応し、引用発明の「円盤状に切断される舗装道路(A)の舗装面」が、本件訂正発明3の「路面円形切断部」に対応する。
そして、引用発明の車載式舗装道路用切断装置は、車体(1)にブーム(3)を出退操作自在に取付け、舗装道路(A)に対する円筒形状の回転カッター(4)を油圧モータ(M)によりその上下中心(P1)周りで駆動回転自在に前記ブーム(3)の先端側に取付け、前記回転カッター(4)の舗装道路(A)に対する姿勢を調整する手段を設けて、前記回転カッター(4)を姿勢を定めるための一対のアウトリガー(9)の調整により舗装面にほぼ垂直な姿勢にセットするものであることからみて、引用発明における円筒形状の回転カッター(4)は、円盤状に切断すべき舗装道路(A)の舗装面の側方に配置される「姿勢を定めるための一対のアウトリガー(9)ないしブーム(3)を出退操作自在に取付ける車体(1)」に支持されているといえるから、引用発明の「姿勢を定めるための一対のアウトリガー(9)及びブーム(3)を出退操作自在に取付ける車体(1)」が、本件訂正発明3の「側方に配置される支柱あるいは基台」に対応する。
そうすると、本件訂正発明3と引用発明の両者は、「路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸の先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、舗装路面に対して垂直方向となるように固定され、回転および下降に応じて、路面を押し切りで円形切断していく舗装路面円形切断装置に用いる切断刃」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
相違点1:切断刃が、本件訂正発明3では「駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に着脱自在に固定され取り付けられ」るのに対して、引用発明では、回転カッター(4)が油圧モータ(M)の上下中心(P1)周りで駆動回転する回転軸の先端に取付けられている点。
相違点2:本件訂正発明3が「切断刃の下端縁にダイヤモンドチップを備え」るのに対して、引用発明は、回転カッター(4)の下端縁にダイヤモンドチップを備えていない点。

2-2.相違点についての検討
ア 相違点1について
甲第1号証刊行物に「回転軸1の回転中心から伸びた2本の腕部のそれぞれの先端に、ブレード3の長手方向の軸線が回転軸1と平行でかつ前記ブレード3の面が回転円周の接線方向を向くように、ネジ止めにより着脱可能に固着されているブレード3」が記載されていることは、上記「1.甲号証各刊行物の記載事項」欄の「1-1.」に前示のとおりであり、前記「回転軸1の回転中心から伸びた2本の腕部のそれぞれの先端に、ブレード3の長手方向の軸線が回転軸1と平行でかつ前記ブレード3の面が回転円周の接線方向を向くように、ネジ止めにより着脱可能に固着されているブレード3」のような切断刃は、本件特許出願前の公知技術である。
しかして、前記公知技術における「ブレード3」が、天井の孔あけ工具に用いられるものであるのに対し、本件訂正発明3の「切断刃」は、路面を円形切断する舗装路面円形切断装置に用いられる切断刃である点で、両者の切断刃の用途が相違するものであるとはいえども、両者は切断対象物を円形に切断するための切断刃であることにおいて変わるところはなく、共に円形切断装置に用いられる切断刃である点で両者は共通し、しかも、切断刃を舗装路面円形切断装置に用いるに当たっての当該切断刃に格別の技術的工夫をしたということも認められず、したがって、両者の切断刃に技術的な相違を認めることができない。
そして、前記公知技術を本件訂正発明3に適用するに際して、互いに適用を阻害する事情が見いだせない点からみても、両者は相互に関連する技術分野であるというべきであるから、甲第1号証刊行物に記載の「ブレード3」が、本件訂正発明3の「切断刃」に対応するといえる。
そうしてみると、引用発明の切断刃としての「油圧モータ(M)の上下中心(P1)周りで駆動回転する回転軸の先端に取付けられている円筒形状の回転カッター(4)」に代えて、前記甲第1号証刊行物に記載の「回転軸1の回転中心から伸びた2本の腕部のそれぞれの先端に、ブレード3の長手方向の軸線が回転軸1と平行でかつ前記ブレード3の面が回転円周の接線方向を向くように、ネジ止めにより着脱可能に固着されているブレード」を採用することにより、本件訂正発明3における前記相違点1に係る「駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に着脱自在に固定され取り付けられる切断刃」の構成を得ることは、当業者が格別の困難を伴うことなく容易に想到できることである。
そして、上記相違点1に係る本件訂正発明3の構成が奏する効果に、前記公知技術から予測できる範囲を超える格別顕著な効果を認めることができない。

イ 相違点2について
円形切断装置に用いる「切断刃の下端縁にダイヤモンドチップを備える」技術は、本件特許出願時の周知技術(例えば、実願平2-403657号(実開平4-89614号)のマイクロフイルム、実願平2-42079号(実開平4-2562号)のマイクロフイルム、実願昭62-131717号(実開昭64-36112号)のマイクロフイルムを参照)である。
そして、引用発明の円筒形状の回転カッター(4)に上記周知技術を付加することにより、本件訂正発明3の前記相違点2に係る「切断刃の下端縁にダイヤモンドチップを備え」る構成を得ることは、当業者が格別の困難を要することなく容易になし得ることである。
そして、上記相違点2に係る本件訂正発明3の構成が奏する効果に、前記周知技術から予測できる範囲を超える格別顕著な効果を認めることができない。

3.まとめ
以上のとおり、本件訂正発明3は、引用発明(甲第2号証に記載の発明)に甲第1号証に記載の発明及び周知技術を適用することにより当業者が容易に想到することができたものであり、その作用効果も引用発明、甲第1号証に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。
したがって、本件訂正発明3は、甲第2号証に記載の発明に甲第1号証に記載の発明及び周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明3に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
舗装路面円形切断装置と該切断装置に用いる切断刃
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 路面円形切断部の側方に配置される支柱に、スリーブを昇降自在に外嵌し、該スリーブに原動機等の回転駆動手段を搭載すると共に上記原動機により回転駆動される駆動主軸を回転自在に取り付け、該駆動主軸の軸線を路面円形切断部の中心点と同一線上の上方に配置する一方、
上記駆動主軸の下端に径方向に突出するアームの一端を固定すると共に、該アームの他端に切断刃を固定し、該切断刃の下端縁に切削用チップを固定し、上記スリーブを下降させて駆動主軸を下降すると共に上記原動機により回転して、上記アームを介して切断刃を切断円形の円周に沿って移動させる構成としている舗装路面円形切断装置。
【請求項2】 上記支柱を切断装置搬送用の車両に位置決め手段を介して固定し、該位置決め手段により上記駆動主軸が円形切断部の中心上方に位置するように調節することを特徴とする請求項1記載の舗装路面円形切断装置。
【請求項3】 路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、
舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、上記アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで円形切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃。
【請求項4】 水平断面が円弧形状で、その曲率が切断円形の曲率と同一で、該円弧形状の下端縁に沿って所定間隔をあけて上記ダイヤモンドチップを固定していることを特徴とする請求項3記載の切断刃。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マンホール等の舗装路面占有物の周辺を円形に切断する舗装路面円形切断装置および該切断装置に用いる切断刃に関し、特に、直径の異なった円形の切断が容易に出来るようにすると共に、路面占有面積が少なく且つ所定位置への設置が容易で、しかも、従来装置と比較して構造が簡単で極めて安価に提供できるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の円形切断装置として、下記の3つのタイプの装置が提案されている。
第一は、図10に示すように、マンホールの蓋1の中心位置上に支柱3を立設し、該支柱3の上端部よりアーム4を突設すると共に、該アーム4の先端に駆動部6を介して円形切断刃5を取り付け、駆動部6によりアーム4を支柱3を支点として回転させると共に円板状形切断刃5を図中矢印で示す垂直方向に回転させ、言わば、切断刃を自転させながら公転させて路面Rを点線で示すように円形Cに切断するものである。(特開昭63-27519、特開昭63-55204)
【0003】
第二は、図11(A)(B)に示すように、マンホールの蓋1の中心上面あるいは補強材上に支柱3を立設し、該支柱3に摺動自在にスリーブ7を取り付けると共に該スリーブ7の下端に刃部5aを下端周縁に設けた円筒状切断刃5を固定すると共に切断刃回転モータ8を搭載し、切断刃5を回転しながらスリーブ7をシリンダ9で下降して、舗装路面を円形に切断している。(特開昭59-141611)
【0004】
第三は、図12に示すように、路面Rに支柱3を立設し、該支柱3より第1モータ8Aで回転される第1アーム4Aを突設すると共に、該第1アーム4Aの先端に第2アーム4Bを第2モータ8Bにより昇降自在に取り付け、かつ、第2アーム4Bに第3モータ8Cにより水平方向に回転される第3アーム4Cを取り付け、該第3アーム4Cの下端に刃5を取り付けた構成としている。該装置では、第2モータ4Bにより切断刃5を下降しながら第3モータにより切断刃5を水平方向に自転させ、かつ、第1モータ4Aにより円形切断ラインに沿って公転させることにより、舗装路面を円形Cに切断している。(特開昭61-277704)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来提案されている三つのタイプの切断装置はいずれも、支柱を円形切断部の中心位置の路面上あるいはマンホール上蓋や支持部材上に立設しており、この支柱を保持する機構を必要とすると共に、支柱を中心に所定位置に位置決めするのに時間がかかる。また、小さい円形を切断する場合には、支柱保持機構の方が大きくなる問題がある。
さらに、支柱をマンホールの蓋上面あるいは他の支持部材の上に設置すると、切断作業時に駆動部の振動や荷重が負荷され、それにより、蓋あるいは支持部材に損傷が生じやすいと共に、作業時に大きな騒音が発生する。しかも、マンホールの蓋の周辺の路肩が振動により緩んで、土砂やアルファルト破片等がマンホールの下方へ落下する問題があった。
【0006】
また、通常、マンホールの蓋の大きさは、直径が75,100,125,150,180,200cmと多種存在し、それに応じて、切断する円形面積を変える必要がある。そのため、上記第二のタイプに示すような円筒形状の切断刃を用いる場合は、多種の直径の円筒状切断刃を用意する必要がある。しかも、該円筒状切断刃は平板を湾曲させて円筒部材を形成するため、真円度が出にくく、また、直径の大きなものは製造が困難となっている。
【0007】
さらに、上記第一のタイプの円板状切断刃を垂直方向に回転させる場合、小さい直径の円形を切断するには、円板状切断刃の径を小さくする必要があるが、その場合、切断刃の強度が問題となる。よって、該第一のタイプで小径な円形を切断することは困難となっている。
【0008】
さらにまた、上記第三のタイプでは、切断刃を下降しながら公転および自転させるために3つのモータを必要とする等構造が極めて複雑で、そのため装置全体の重量が大となる。よって、この大きな重量がマンホールの蓋等の支柱支持材に負荷されることとなり、さらに、切断装置が高価になる等の問題がある。
【0009】
上記のように、従来提案されているいずれの円形切断装置も問題を備え、特に、支柱を路面上に立設すると共に、該支柱以外にも路面を占有する部材が多いために、路面占有面積が大となりやすく、路面切断時に交通の妨げとなりやすい問題があった。
【0010】
本発明は、上記した従来提案されている装置の種々の問題を解消せんとすることを目的とし、円形切断部の中心位置に配置する支柱を路面上に立設しないと共に切断装置の路面に対する占有を出来る限り少なくし、かつ、小径から大径まで多種の径の円形を切断でき、しかも、構造が簡単で安価に提供できる舗装路面円形切断装置および該切断装置に用いる切断刃を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、路面円形切断部の側方に配置される支柱に、スリーブを昇降自在に外嵌し、該スリーブに原動機等の回転駆動手段を搭載すると共に上記原動機により回転駆動される駆動主軸を回転自在に取り付け、該駆動主軸の軸線を路面円形切断部の中心点と同一線上の上方に配置する一方、
上記駆動主軸の下端に径方向に突出するアームの一端を固定すると共に、該アームの他端に切断刃を固定し、該切断刃の下端縁に切削用チップを固定し、駆動主軸を下降しながら回転して、上記アームを介して切断刃を円周に沿って移動させる構成としている舗装路面円形切断装置を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、路面円形切断部の側方に配置される支柱あるいは基台により支持される駆動主軸を上記路面円形切断部の中心点と同一軸線上に配置し、該駆動主軸に径方向に突出する1本または等間隔の複数本のアームの先端に取り付けられ、上記路面円形切断部の周方向に沿って移動される切断刃であって、
舗装路面に対して垂直方向となるようにアーム先端に着脱自在に固定され、その下端縁にダイヤモンドチップを備え、上記アームの回転および下降に応じて、路面を上記ダイヤモンドチップにより路面を押し切りで円形切断していくことを特徴とする舗装路面円形切断装置に用いる切断刃を提供するものである。
【0013】
上記切断刃は水平断面が円弧形状で、該円弧の曲率は切断円形と同一曲率を有する設定としている。
尚、該切断刃の周方向の長さが短く、かつ切断円形が大径の場合には、水平断面を直線として、切断刃を平板より形成することが出来る。
【0014】
上記切断装置の支柱は、切断装置を搬送する車両上に位置決め手段を介して固定する支持台より立設した一対の支柱からなり、これら支柱に上記スリーブを摺動自在に外嵌すると共に、上記スリーブを送りネジを回転操作することにより昇降させる構成とし、該スリーブより突出したフレーム上に上記原動機および伝動機を搭載すると共に、上記垂直方向に配置する駆動主軸の上部を回転自在に支持している。
尚、搬送用車両に作業時も切断装置を固定して用いることが好ましいが、必ずしも車両に搭載した状態で使用する必要はなく、円形切断部の側方に配置した基台上等に設置してもよい。
【0015】
上記切断装置の位置決め手段は、上記支柱を立設する支持台を車両の前後方向および左右方向に移動して、上記駆動主軸の下端より釣り下げる下げ振りを切断円形部の中心と一致させる構成としている。
【0016】
上記駆動主軸の下端より径方向に突出させるこれらアームには駆動主軸側より冷却水通路を設けて、アーム先端より切断刃に向けて冷却水を噴射する構成としている。上記冷却水通路はアームに中空部を設けて形成してもよいし、アームに沿ってパイプを取り付け、該パイプを冷却通路としてもよい。
さらに、各アームを2部材に分割して構成し、これら部材を互いにスライド自在に連結させてアームの長さを調節自在とし、切断円形の径の相異に対応出来るようにしている。
【0017】
【作用】
本発明の舗装路面円形切断装置では、駆動主軸が下降されながら原動機により回転され、該駆動主軸より突出したアームが駆動主軸を回転中心として回転して、アーム先端に固定した切断刃が切断円形の外周に沿って移動され、該切断刃の下端に取り付けた切削チップにより路面を円形に切断していく。
【0018】
上記切断作業時、切削チップにより路面を言わば押し切りしていくが、該切削チップとて超硬度のダイヤモンドチップを用いているため、舗装路面の切断をスムーズに行うことが出来る。
【0019】
また、切断する円形の径が変わった場合には、アームの長さを調節すると共に、該アーム先端に取り付ける切断刃を変えることにより、対応出来る。尚、切断刃が周方向に短く曲率を設けていない場合には、切断刃を交換する必要はない。即ち、切断装置の構成部材を全く交換することなく異なる径の円形を切断することが可能となる。
【0020】
本装置による切断作業時、従来、円形切断部の中心位置に設置していた支柱をなくし、中心位置の上方に駆動主軸を位置させ、かつ、該駆動主軸を中心位置へ容易に位置決め出来るようにしているため、切断作業時に支柱を円形切断部の中心より立設していた場合に生じる従来の問題を解消することが出来る。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を図面に示す実施例により詳細に説明する。
図1から図7は第1実施例を示し、舗装路面円形切断装置10は、トラック等の車両11の荷台11aに積載して作業位置まで搬送し、作業位置において、車両11の後蓋11bを開き、該後蓋11bを荷台11aと水平に保持した状態とし、該車両水平部を切断装置支持面として利用している。
切断装置10は図1に示すように、車両11に搭載した状態で、路面Rの円形切断部の中心Pに位置させる駆動主軸12を上方より垂設し、該駆動主軸12よりアーム13を突出させ、該アーム13の先端に取り付けた切断刃14で路面Rに円環状切断Cを施すようにしている。
【0022】
切断装置10は、上記駆動主軸12を切断部中心Pにセンタリングするために、装置全体を前後方向と左右方向に位置調節する位置決め手段を介して車両11の上記切断装置支持面に支持しており、該位置決め手段より立設した上下移動手段に回転駆動手段を取り付け、該回転駆動手段により上記駆動主軸12、アーム13および切断刃14を含む切断手段を駆動するようにしている。
【0023】
切断装置10の上記各手段を詳述すると、まず、位置決め手段は切断装置10の平板状支持台15を前後方向X(車長方向)および左右方向Y(車巾方向)(図2に示す)に移動可能としている。即ち、上記車両支持面の荷台11aの後部と後蓋11bに固定ピン16a,16bを突設する一方、切断装置10の下端の左右一対の前後枠17に、上記固定ピン16a、16bを挿入する挿入穴を形成して、これら挿入穴に固定ピン16a,16bを挿入して、切断装置10を車両支持面に固定するようにしている。
【0024】
図2に示すように、上記前後枠17には、回転自在で移動不可に前後方向のネジ軸18を軸受を介して取り付け、一方のネジ軸18の先端のハンドル18aを取り付けると共に左右ネジ軸18を伝動させている。該ネジ軸18と螺合する雌ネジ穴を有する前後移動枠19を設け、これら左右一対の前後移動枠19の上面に軸受19bを介して左右方向のネジ軸20を回転自在で移動不可に軸架している。該ネジ軸20の先端にハンドル20aを取り付けると共に、該ネジ軸20と螺合するネジ穴を有する左右移動枠21を設け、該左右移動枠21を上記支持台15の下面に固定している。
このように、支持台15を、ネジ軸18のハンドル18aを回転して前後方向へ移動すると共にネジ軸20のハンドル20aを回転して左右方向へ移動するようにしている。
【0025】
切断装置10の切断刃14を切断作業時に下降させるための上下移動手段は、図3に示すように、支持台15の上面に、2本の主柱22の下端を主軸受23で固定支持して上方へ突出させて並設し、これら2本の主柱22の上端を連結板24で連結すると共に中間部をスリーブ25を介して連結している。
上記連結板24およびスリーブ25にネジ穴24a,25aを設け、これらネジ穴24a,25aに送りネジ26を貫通して垂直方向に取り付けている。該送りネジ26はその大径上部26aを連結板24の上面に係止して保持すると共に、上端にハンドル27を取り付けている。送りネジ26はネジ穴24aの内部を遊挿し、ネジ穴25aとは螺合し、ハンドル27の回転でスリーブ25を昇降させている。
【0026】
上記スリーブ25は、両側の円筒部25bが支柱22に摺動自在に外嵌し、この両側円筒部25bの間に上記ネジ穴25aを有する中央部25cを有する形状で、該中央部25cに上記回転駆動手段を連結している。
即ち、中央部25cの前面側に図4に示すように駆動部搭載枠部25dを突設する一方、後面側に上記駆動主軸12を回転自在に支持する軸受部25eを突設している。
【0027】
上記回転駆動手段は、上記駆動部搭載枠部25dに原動機30、該原動機30の出力軸と接続した伝動機31、該伝動機31の出力軸に取り付けたVプーリ32を設けている。
一方、反対側の軸受部25eには、駆動主軸12の上端部を回転自在に支持して垂直方向に取り付けると共に、該駆動主軸12と伝動させたVプーリ33を上記Vプーリ32と対応させて設置し、これらVプーリ32と33との間にVベルト34を巻き掛けしている。尚、図中、35はプーリカバーである。
駆動部搭載枠25d側に原動機スイッチ(図示せず)を設けており、該スイッチをONして原動機30を駆動すると、伝動機31、Vベルト34を介して駆動主軸12が図中矢印で示すように回転されるようにしている。
【0028】
図5に示すように、上記駆動主軸12は中空軸で、その中空穴を通して上端開口より下端開口にかけて冷却水を流通させるようにしている。
駆動主軸12の下端にはアーム13を着脱自在に固定し、該アーム13も中空軸として、アーム13の中空穴を駆動主軸12の中空穴と連通させて冷却水の供給通路としている。
【0029】
詳しくは、アーム13の一端に垂直方向のカップリング13aを設け、該カップリング13aに駆動主軸12の下端を挿入して、ボルト36により固定している。該カップリング13aの下端からは外方に向かって下方へ傾斜させて突出させ、その先端に垂直下向に屈折させた切断刃取付部13bを設けている。
【0030】
上記駆動主軸12と同軸のカップリング13aの底面中央には下向きにフック37を突設し、該フック37に下げ振り38を取り付けている。該下げ振り38は、上記位置決め手段により切断装置10を前後方向および左右方向に移動させて、切断中心点Pの上方に位置するようにし、よって、駆動主軸12を中心点Pにセンタリングさせている。
【0031】
上記アーム13は図示のようにカップリング13aを設けた側の基部側部材13-1と切断刃取付部13bを設けた側の先端側部材13-2に2分割して、これら部材13-1と13-2とをスライド自在に嵌合し、所要位置でネジ等(図示せず)により連結固定するようにしている。このようにアーム13の長さLを調節することにより、切断する円形の直径を調節可としている。
【0032】
上記スライド自在に連結する部材13-1と13-2は上記のように中空軸として冷却水通路を設けていると共に、先端側部材13-2の垂直下向きに突出する切断刃取付部13bにも冷却水通路13gを設け、該冷却水通路13gの下端を屈折して外向に噴射口13hを設けている。
【0033】
図6に示すように上記切断刃取付部13bの下端は巾広として、その両側にボルト穴13iを設け、切断刃14をボルト39により着脱自在に取り付けている。
上記切断刃14は切断刃取付部13bの下部より垂直下方に向けて取り付けられ、その先端が路面に当接するようにしている。該切断刃14は水平断面が所要の曲率を有する円弧形状とし、その曲率を切断部中心Pを中心として描く切断円形の曲率と同様としている。実施例の切断刃14では、その周方向の長さを、切断部全周の略1/20としている。
尚、切断刃14の周方向の長さは限定されず、非常に短いもので直線形状としてもよい。また、駆動主軸から突出させるアームの個数との関係からも切断刃の長さが設定される。
【0034】
上記切断刃14の下端縁には所定間隔をあけてダイヤモンドチップ42を蝋着けで固着している。本実施例では5個のダイヤモンドチップ42を固定しているが、切断刃14の長さにより設置個数を変えられる。
【0035】
次に、上記構成の舗装路面円形切断装置の作動工程を説明する。
まず、図1に示すように、車両11をマンホールの蓋1の付近に停止させた後、後蓋11bを開いて、荷台後部を開口すると共に、後蓋11bと荷台後端とからなる支持面に切断装置を固定する。
【0036】
上記切断装置10のアーム13の長さLおよびアーム13の先端に取り付ける切断刃14は、マンホールの蓋1の直径に応じた切断円形に対応させて予めセットしておくが、上記車両の支持面に固定してからアーム13の長さLを調節すると共に所要の切断刃14を選択して取り付けてもよい。
【0037】
次に、下げ振り38をフック37に取り付け、該下げ振り38が切断円形の中心上方に位置するように位置決め手段のハンドル18aと20aとを回転操作して支持台15を移動させる。
かつ、上下移動用の送りネジ26のハンドル27を回転して、切断刃14の下端のダイヤモンドチップ42が路面に接触する位置まで下降する。
【0038】
上記センタリングが出来た後に、原動機30を起動する。この時、予め伝動機31の安全対策用のスイッチをOFFにしておき、該伝動機31により上記原動機30からの動力をVプーリ32、Vベルト34、Vプーリ33を介して駆動主軸12に伝えないようにしている。
【0039】
次いで、図7に示すように、上記伝動機31のスイッチを入れ、駆動主軸12を水平方向に回転する。該駆動主軸12の回転によりアーム13が円形中心点Pを支点として回転し、切断刃14が円周に沿って移動し、その下端のダイヤモンドチップ42が路面を円形に押し切りしていく。
【0040】
その後、ハンドル27を回転して切断刃14を下降しながら、かつ、原動機30により切断刃14を円周に沿って移動させて、舗装路面を切り込んで切断していく。切断の深さに応じて、切断刃14を全周に沿って所要回数移動させて、所定の深さの円環状切断を施す。
【0041】
上記切断作業時に、駆動主軸12の上端開口の冷却水通路に冷却水を供給し、駆動主軸12およびアーム13の中空穴よりなる冷却水通路を通してアーム先端より切断刃14に向かって冷却水を噴射する。この冷却水の噴射によりダイヤモンドチップ42および切断刃14の発熱および摩耗を低減している。
【0042】
本発明の舗装路面円形切断装置は、上記構成に限られず、例えば、図8および図9に示すように、駆動主軸12の下端より直径方向に突出する2本のアーム13’,13”を設けて、これら2本のアームの先端に夫々切断刃14を取り付けてもよい。
このように、駆動主軸12から突出させるアームの個数は限定されないが、切断円形の径が大きくなると、アームの個数を増加することが好ましい。
【0043】
さらに、駆動主軸12或いは主柱22に深度計を設け、路面の切断深度が一見して解る構成としてもよい。
また、円弧状に湾曲させた切断刃14の円周長さは、切断円形の円周の1/20の大きさに設定しているが、周方向の長さは限定されず、切断円形と同一曲率であれば良く、かつ、周方向の長さが極めて短い場合には、円弧状とせずに直線状としても良く、その場合には、切断円形の径に応じた切断刃の交換を不要とできる。
さらに、上記駆動手段の伝動機は、VプーリおよびVベルトを用いているが、ギヤ等の伝動装置を使って主軸を回転させるようにしてもよい。
さらにまた、上下移動手段は、ハンドルを回転操作し、送りネジを介してスリーブを昇降させているが、モータ等の原動機を用いてもよい。
かつ、本実施例では、車両11に設置して作業性を向上させているが、運搬用の台等を用いてもよいことは言うまでもない。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の舗装路面円形切断装置では、切断円形の中心位置の路面上に支柱を立設する代わりに、上方に駆動主軸を配置する構成としているため、従来のように立設した支柱に加わる振動および荷重により支持面に損傷が生じることが防止出来る。また、支柱を保持する部材を路面上に設置する必要がなく、路面占有面積を減少出来る。しかも、切断装置全体を搬送用車両に搭載した状態で切断作業を行うと、切断装置の設置に手数がかからず、かつ、この点からも路面占有面積を少なく出来る。
【0045】
さらに、路面切断チップとして超硬度のダイヤモンドチップを用いるため、ダイヤモンドチップを下降させながら路面を言わば押し切ることが可能となる。その分、切断刃を切断円形の円周に沿って移動させる公転を行うだけでよいため、駆動機構を簡単とすることが出来る。
また、切断刃の下降もハンドルの回転操作でネジ軸を回して、螺合するスリーブを下降させる構成としているため、原動機は上記切断刃を公転させるための1つだけで良くなり、切断装置の構造を従来と比較して非常に簡単にでき、その分、価格の低下および重量の低減、小型化を図ることが出来る。
【0046】
さらに、切断刃は、円筒形状ではなく、円弧形状としているため、大径の切断用でも容易に製造することが出来る。かつ、小径から大径まで種々の径に沿った切断刃を容易に用意しておくことが出来る。
また、アームの長さを調節自在としているため、切断する円形の径に対向して長さ調節が可能となり、該アームの先端に取り付ける切断刃を交換することにより、多種の円形を切断することが出来る等の種々の利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施例の舗装路面円形切断装置を車両に搭載して切断作業を行っている状態を示す正面図である。
【図2】 上記切断装置の位置決め手段を示す概略平面図である。
【図3】 上記切断装置の側面図である。
【図4】 上記切断装置の駆動手段の部分の要部拡大正面図である。
【図5】 上記切断装置の切断手段の部分の要部拡大正面図である。
【図6】 切断刃にダイヤモンドチップを取り付けた状態を示す底面図である。
【図7】 上記切断装置による切断作動を示す概略図である。
【図8】 本発明の他の実施例を示す図7と同様な概略図である。
【図9】 図8の実施例の要部正面図である。
【図10】 従来の路面円形切断装置の斜視図である。
【図11】 (A)は従来の他の路面円形切断装置の正面図、(B)は該切断装置に用いる切断刃の斜視図である。
【図12】 従来の他の路面円形切断装置の正面図である。
【符号の説明】
10 切断装置
11 車両
12 駆動主軸
13 アーム
14 切断刃
22 支柱
24 スリーブ
26 送りネジ軸
30 原動機
42 ダイヤモンドチップ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-04-21 
結審通知日 2004-04-23 
審決日 2004-05-10 
出願番号 特願平4-310509
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (E01C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 佐藤 昭喜
新井 夕起子
登録日 2000-09-29 
登録番号 特許第3115131号(P3115131)
発明の名称 舗装路面円形切断装置と該切断装置に用いる切断刃  
代理人 高橋 敏邦  
代理人 大和田 和美  
代理人 大和田 和美  
代理人 高橋 敏忠  

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