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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1102713
審判番号 不服2003-24953  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2004-09-08 
事件の表示 平成10年特許願第259128号「キャリア再生回路」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月14日出願公開、特開2000- 78218〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年8月31日の出願であって、平成15年12月25日付けで審判請求がなされ、特許法第17条の2第1項第3号の規定により、平成16年1月26日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年1月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成16年1月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正は、補正前特許請求の範囲の請求項1の記載を、
【請求項1】
「BSデジタル放送受信機におけるキャリア再生回路であって、数値制御発振器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を同期検波する同期検波回路と、同期検波回路から出力される同期検波出力を受けて伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路と、同期検波出力を信号点配置に変換する信号点配置変換回路と、信号点点配置変換回路にて変換された信号点位置信号を伝送多重構成制御信号のシンボルごとに離反周波数の極性判別のために数値制御発振器の発振周波数をシフトさせる角速度に対応する角速度で位相回転させる位相回転回路と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検波器と、伝送多重構成制御信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度情報を出力する自己相関検出回路と、自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度を減算する減算手段とを備え、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを数値制御発振器から同期検波回路へ送出することを特徴とするキャリア再生回路。」、
と補正することを含むものである。
該補正は、補正前特許請求の範囲の請求項1において、
(1)「数値制御発振器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を同期検波する同期検波回路」を付加すると共に
(2)伝送多重構成制御信号区間検出回路で同期検波出力を受け取る対象が「同期検波回路」であることを限定し、
(3)位相回転回路での位相回転の、伝送多重構成制御信号のシンボルごとの予め定めた所定の角速度が、「離反周波数の極性判別のために数値制御発振器の発振周波数をシフトさせる角速度に対応する角速度」であることを限定すること、
を含むものであり、
係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が独立して特許を受けることができるのか否かについて以下、検討する。

2.特許法第29条の2についての検討
(1)本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)は、次のとおりのものである。
【請求項1】
「BSデジタル放送受信機におけるキャリア再生回路であって、数値制御発振器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を同期検波する同期検波回路と、同期検波回路から出力される同期検波出力を受けて伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路と、同期検波出力を信号点配置に変換する信号点配置変換回路と、信号点配置変換回路にて変換された信号点位置信号を伝送多重構成制御信号のシンボルごとに離反周波数の極性判別のために数値制御発振器の発振周波数をシフトさせる角速度に対応する角速度で位相回転させる位相回転回路と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検波器と、伝送多重構成制御信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度情報を出力する自己相関検出回路と、自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度を減算する減算手段とを備え、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを数値制御発振器から同期検波回路へ送出することを特徴とするキャリア再生回路。」
なお、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の「信号点点配置変換回路にて」なる記載は、「信号点配置変換回路にて」の誤りであるので、前記のごとく認定した。

(2)先願発明
これに対して、原審の拒絶理由において引用された本願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願平9-253979号(平成9年9月18日出願、特開平11-98432号公報、平成11年4月9日出願公開)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、下記(ア)〜(カ)の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衛星デジタルテレビジョン放送などで使用されるAFC回路、キャリア再生回路および受信装置に係わり、特に低CN比時でも、キャリアを確実に再生するAFC回路、キャリア再生回路および受信装置に関する。
【0002】[発明の概要]衛星を使用したデジタル伝送では、降雨減衰などによるCN比の劣化を考慮し、多値化数の異なる変調方式を時分割で適応的に伝送し、低CN比時においても、ある程度のデータ伝送を可能とするような階層化伝送方式が考案されている。このような伝送方式では、低CN比時において多値化数が多い変調波の期間から、キャリア再生に必要な基準信号を得ることが極めて困難であるため、通常のキャリア再生方法である、連続的にキャリア再生を行なうキャリア再生方法を使用することができない。
【0003】そこで、本発明は、低CN比時でも、ある程度のCN比の基準キャリア信号を得ることが可能な多値化数の少ない、例えばBPSK変調方式やQPSK変調方式で変調された変調信号を周期的に配置し、間欠的に位相、周波数誤差情報を取り出すことで、キャリア再生を実現しようとするものである。さらに、間欠的に位相誤差信号を観測する方法では、ある一定周期の周波数で、同等の位相誤差信号が得られるため、本来のキャリア周波数とは異なった周波数に見かけ上、同期してしまう、いわゆる擬似同期現象が発生する。この現象を回避するために、一定期間に多値化数の少ない、例えばBPSK変調方式やQPSK変調方式で変調された変調信号を設定し、擬似同期状態では、信号位相が一定方向に回転することを利用し、本来のキャリア周波数との差の周波数を観測することにより、VCO(電圧制御発信器)などを制御し、所望の周波数に同期させることができるようにするものである。また、多値化数の少ない変調期間において、観測される信号の統計的な性質を用いて、擬似同期状態の検出および所望の周波数への同期を可能にするものである。」(先願明細書段落【0001】〜【0003】)、

(イ)「【0043】すなわち、本発明によるAFC回路、キャリア再生回路および受信装置では、多値化数の少ない期間のみを使って信号の位相を測定し、VCOまたはNCO(数値制御発振器)を制御することで、低CN比時においても安定したキャリア再生を行なおうとするものである。しかしながら、この場合、受信する変調信号の位相と、再生したキャリア信号の位相とを間欠的に測定かることから、擬似同期現象が発生してしまうことがあり、引き込み範囲を広くすることができない。
【0044】そこで、変調波中に既知のパターンで変調された比較的長さが短いSYNCを入れ、広い範囲、例えば2MHzの範囲でVCOまたはNCOの発振周波数をスイープさせ、SYNCが受信できた周波数でスイープを停止させることで、粗調AFCを行なうとともに、前記変調波中に、ある程度の長さを持つ多値化数が少ない期間(例えばBPSK信号区間)を設け、この期間内で、受信した変調信号の周波数と、VCOまたはNCOの局部発振信号の周波数との差(周波数差)を求め、位相微分関数方式、自己相関関数方式、またはカウント方式などで、前記周波数差を解析し、この解析結果に基づいて、VCOまたはNCOを制御することにより、広い周波数引き込み範囲を持つAFC機能を実現し、低CN比時においても、広帯域な引き込み特性で、擬似同期現象が発生しないようしながら、正確なキャリア信号を再生する。」(先願明細書段落【0043】、【0044】)、

(ウ)「【0046】この図に示すデジタル伝送信号では、先頭のブロックを除いて多値化信号期間である信号Dとキャリア位相同期用に供するBPSK信号期間である信号Cで構成される1ブロックを複数集めて1フレームを構成する。
【0047】1ブロックのシンボル数を、例えば196シンボルとし、これら各ブロックのうち、1つ目のブロックでは、先頭の、例えば20シンボルがUW(ユニークワード)で変調されたSYNC(同期信号)にされ、このSYNCに続く176(196-20=176)シンボルが伝送すべき情報でBPSK変調される。
【0048】また、2つ目以降のブロックでは、先頭のシンボルから、例えば192シンボルまで、伝送すべき情報でQPSK変調または8PSK変調され、最後の4シンボルが伝送すべき情報で、位相同期用として、BPSK変調される。
【0049】図2は、上述したデジタル伝送信号を受信する、本発明によるAFC回路、キャリア再生回路および受信装置の一実施の形態で使用される受信回路の一例を示すブロック図である。
【0050】この図に示す受信回路1は、図1に示すフォーマットのデジタル伝送信号を受信するアンテナ2と、このアンテナ2によって得られたデジタル変調信号を周波数変換してIF信号を生成するODU3と、このODU3から出力される前記IF信号を直交復調してI軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とを生成しながら、前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNCを検出するために、例えば2MHzの範囲で低い周波数側からスイープを行なう粗調AFCブロック4と、この粗調AFCブロック4から出力される前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号を用いて位相の変化より離調周波数を検出し微調キャリア信号を再生する微調AFCブロック5と、この微調AFCブロック5から出力されるI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の各フレーム毎のBPSK信号を使用して、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微小な周波数ずれおよび位相を検出、制御するAPCブロック6とを備えている。
【0051】そして、アンテナ2によってデジタル伝送信号が受信され、ODU3からIF信号が出力されているとき、粗調AFCブロック4によって、前記IF信号を直交復調してI軸側ベースバンド信号と、Q軸側ベースバンド信号とを生成しながら、前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNCを検出するために、例えば2MHzの範囲で低い周波数側からスイープを行なって、前記IF信号の粗調キャリア信号を再生するとともに、微調AFCブロック5によって前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号より離調周波数を検出し、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微調キャリア信号を再生する。そして、APCブロック6によって前記微調AFCブロック5から出力されるI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の各ブロック毎のBPSK信号に基づき、再生キャリア信号の位相を調整して、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の位相を制御し、これによって得られた周波数ずれ、位相ずれが無いI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号を信号復調部(図示は省略する)に供給する。
【0052】前記粗調AFCブロック4は、VCOまたはNCOなどの可変周波数発振器を有し、SYNC検知信号が入力されていない場合には、VCOまたはNCOの発振周波数を、例えば2MHzの範囲で、低い周波数側からスイープさせながら、局部発振信号を生成し、SYNC検知信号が入力された時点で、スイープを停止させするスイープジェネレータ回路7と、このスイープジェネレータ回路7から出力される局部発振信号を使用して、前記ODU3から出力されるIF信号を直交変調し、I軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とを生成する直交復調回路8と、この直交復調回路8から出力されるI軸側ベースバンド信号に対し、ナイキスト特性を与えてイメージ除去や波形整形などを行なうナイキストフィルタ回路9と、このナイキストフィルタ回路9から出力されるI軸側ベースバンド信号をA/D変換して、デジタル化されたI軸側ベースバンド信号を生成するA/D変換回路11と、前記直交復調回路8から出力されるQ軸側ベースバンド信号に対し、ナイキスト特性を与えてイメージ除去や波形整形などを行なうナイキストフィルタ回路10と、このナイキストフィルタ回路10から出力されるQ軸側ベースバンド信号をA/D変換して、デジタル化されたQ軸側ベースバンド信号を生成するA/D変換回路12と、これらの各A/D変換回路11、12から出力されるI軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とに含まれているデータと予め登録されているユニークワード(デジタル伝送信号のSYNCに使用されているユニークワードと同じユニークワード)とを比較し、ユニークワードと一致するデータを検出したとき、1ブロック目にあるSYNCを検出したことを示すSYNC検知信号を生成し、これを前記スイープジェネレータ回路7に供給するフレーム同期検出回路13とを備えている。
【0053】そして、受信回路1の電源が投入された直後などのように、デジタル伝送信号 のキャリアを再生していない、非同期状態にあるときには、例えば2MHzの範囲で、発振周波数を低い周波数側からスイープさせ、このスイープ動作で生成された局部発振信号に基づき、ODU3から出力されるIF信号を直交復調させて、I軸側ベースバンド信号と、Q軸側ベースバンド信号とを生成させるとともに、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号にナイキスト特性を与えて、イメージ除去や波形整形などを行なった後、デジタル化して、微調AFCブロック5に供給する。また、この動作と並行し、デジタル化された前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号より得られるデータがユニークワードと一致したとき、1フレーム目にあるSYNCを検出したことを示すSYNC検知信号を生成し、このときの発振周波数を固定し、この発振周波数の局部発振信号を粗調キャリア信号として使用して、前記IF信号の直交復調動作、ナイキストフィルタ特性付与動作、A/D変換動作を継続し、これによって得られたデジタル化されたI軸側ベースバンド信号と、Q軸側ベースバンド信号とを微調AFCブロック5に供給する。また、この動作と並行し、デジタル化された前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号より得られるデータがユニークワードと一致したとき、1フレーム目にあるSYNCを検出したことを示すSYNC検知信号を生成し、このときの発振周波数を固定し、この発振周波数の局部発振信号を粗調キャリア信号として使用して、前記IF信号の直交復調動作、ナイキストフィルタ特性付与動作、A/D変換動作を継続し、これによって得られたデジタル化されたI軸側ベースバンド信号と、Q軸側ベースバンド信号とを微調AFCブロック5に供給する。
【0054】この際、この受信回路1で受信されるデジタル伝送信号では、SYNCが既知のパターン(ユニークワード)でBPSK変調されていることから、低CN比時においても、ある程度の周波数幅の中であれば、キャリア同期が確立されていなくても、SYNCを検出することが可能であり、このSYNCの検出を基準として、ある程度の周波数誤差の範囲内で、キャリア同期を確立させることができる。
【0055】また、微調AFCブロック5は、前記粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とに基づき、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の位相を微調整する微調AFC回路14を備えており、粗調AFCブロック4から出力される前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号より離調周波数を検出し、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微調キャリア信号を再生しながら、前記I軸側ベースバンド信号の位相と、Q軸側ベースバンド信号の位相とを微調整して、周波数ずれ、位相ずれをほぼゼロにした状態で、APCブロック6に供給する。」(先願明細書段落【0046】〜【0055】)、

(エ)「【0066】このように、この実施の形態では、アンテナ2によってデジタル伝送信号を受信し、ODU3からIF信号が出力されているとき、粗調AFCブロック4によって、前記IF信号を直交復調してI軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とを生成しながら、前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNCに対し、例えば2MHzの範囲で低い周波数側からスイープを行なって、前記IF信号の粗調キャリア信号を再生するとともに、微調AFCブロック5によって前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号の期間を利用し前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる離調周波数を検出し、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微調キャリア信号を再生し、さらにAPCブロック6によって前記微調AFCブロック5から出力されるI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の各フレーム毎のBPSK信号に基づき、再生キャリア信号の位相誤差を検出して、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の位相を制御し、これによって得られたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号を信号復調部に供給するようにしているので、一定時間間隔でキャリア再生に供する基準信号期間または多値化数の少ないデジタル変調信号期間を設けたデジタル変調信号を受信再生する際、CN比が低いときでも、間欠的に得られる位相、周波数誤差情報を用いてキャリア同期を行ない、これによって広い周波数引き込み範囲で、安定的にキャリア信号を再生して、デジタル変調信号に含まれている情報を再生することができる。」(先願明細書段落【0066】)、

(オ)「【0088】また、上述した実施の形態においては、微調AFCブロック5、APCブロック6によって、粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の周波数ずれ、位相ずれを検出して、これを個々に補正して、I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の周波数ずれ、位相ずれをゼロにするようにしているが、微調AFCブロック5、APCブロック6によって、粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の周波数ずれ、位相ずれを検出し、この検出結果を粗調AFCブロック4のスイープジェネレータ回路7にフィードバックすることにより、粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の周波数ずれ、位相ずれをゼロにするようにしても良い。
【0089】このようにしても、上述した実施の形態と同様に、一定時間間隔でキャリア再生に供する基準信号期間または多値化数の少ないデジタル変調信号期間を設けたデジタル変調信号を受信再生する際、CN比が低いときでも、間欠的に得られる位相、周波数誤差情報を用いてキャリア同期を行ない、これによって広い周波数引き込み範囲で、安定的にキャリア信号を再生して、デジタル変調信号に含まれている情報を再生することができる。」(先願明細書段落【0088】、【0089】)、

(カ)「【0093】図12は、図2に示す微調AFC回路として使用される他の微調AFC回路のうち、自己相関関数方式の微調AFC回路のさらに他の一例を示すブロック図である。この実施の形態は請求項13に対応する。この微調AFC回路55は、局部発振信号を生成するとともに、入力されている周波数差信号に応じて発振周波数を変更、固定するNCO回路56と、このNCO回路56から出力される局部発振信号に基づき、前記粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の位相を回転させる位相回転回路57と、回転されたI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に周波数オフセットを与える位相回転回路58と、この位相回転回路にオフセット周波数データに基づく局部発振信号を与えるNCO回路59と、前記位相回転回路58から出力されるI軸側ベースバンド信号の振幅とQ軸側ベースバンド信号の振幅とのアークタンジェントを演算して、位相差信号を生成する位相検出回路60と、この位相検出回路60から出力される位相差信号の自己相関を求めて相関係数信号を生成する自己相関演算回路61と、この自己相関演算回路61から出力される自己相関係数信号をアベレージ積分方式などの時系列加算方式などを使用して、何回か積分し、雑音の影響を軽減する積分回路62と、この積分回路62から出力される自己相関係数信号の相関ピークをカウントするカウンタ回路(または、相関ピークの間隔または周期を計測する周期検出回路)63と、このカウント値に対応した周波数差信号(周波数データ)を生成する周波数データ生成ROM64と、この周波数データ生成ROM64から出力される周波数差信号からオフセット周波数データを減算して前記NCO回路56に供給する減算回路65とを備えている。そして、この微調AFC回路55は、位相検出回路60に入力されるI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に周波数オフセットを与えることにより、周波数差の絶対値は計測できるが、その極性が判定できない自己相関関数方式でも所望の周波数より低い離調周波数を推定することができる。
【0094】上述したように、この微調AFC回路55によれば、一定時間間隔でキャリア再生に供する基準信号期間または多値化数の少ないデジタル変調信号期間を設けたデジタル変調信号を受信再生する際、CN比が低いときでも、間欠的に得られる位相、周波数誤差情報を用いて広い周波数引き込み範囲で、安定的にキャリア信号を再生し、デジタル変調信号に含まれている情報を再生することができる。」(先願明細書段落【0093】、【0094】)。

a.前記(ウ)の段落【0052】の記載の、スイープジェネレータ回路7が数値制御発信器を有する記載及び(オ)の段落【0088】の記載の、微調AFCブロックの出力をスイープジェネレータ回路7に入力する旨、の記載からみて、微調AFCブロックの出力がスイープジェネレータ回路7の数値制御発信器に入力されることは自明の事項であり、また、(オ)の段落【0088】の微調AFCブロックの出力をスイープジェネレータ回路7に入力する場合には、位相回転と同等の機能を直交復調回路8で行うようになるのであるから、微調AFCブロックの位相回転回路(例えば図12、57)が不要なことは当然のことである。
b.直交復調回路が数値制御発信器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を直交復調することは技術常識であり、前記(ウ)記載において、直交復調回路が数値制御発信器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を直交復調することは、記載されているに等しい事項である。

c.微調AFC回路の動作期間に関連し、
(a)前記(イ)の段落【0044】には「前記変調波中に、ある程度の長さを持つ多値化数が少ない期間(例えばBPSK信号区間)を設け、この期間内で、受信した変調信号の周波数と、VCOまたはNCOの局部発振信号の周波数との差(周波数差)を求め、位相微分関数方式、自己相関関数方式、またはカウント方式などで、前記周波数差を解析し、この解析結果に基づいて、VCOまたはNCOを制御することにより、広い周波数引き込み範囲を持つAFC機能を実現し、」、
(b)前記(ウ)の段落【0055】には「また、微調AFCブロック5は、前記粗調AFCブロック4から出力されるデジタル化されたI軸側ベースバンド信号とQ軸側ベースバンド信号とに基づき、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の位相を微調整する微調AFC回路14を備えており、粗調AFCブロック4から出力される前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号より離調周波数を検出し、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微調キャリア信号を再生しながら、前記I軸側ベースバンド信号の位相と、Q軸側ベースバンド信号の位相とを微調整して、周波数ずれ、位相ずれをほぼゼロにした状態で、APCブロック6に供給する。」、
(c)前記(エ)の段落【0066】には「微調AFCブロック5によって前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる1ブロック目のSYNC、BPSK信号の期間を利用し前記I軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号に含まれる離調周波数を検出し、これらI軸側ベースバンド信号、Q軸側ベースバンド信号の微調キャリア信号を再生し、---一定時間間隔でキャリア再生に供する基準信号期間または多値化数の少ないデジタル変調信号期間を設けたデジタル変調信号を受信再生する際、CN比が低いときでも、間欠的に得られる位相、周波数誤差情報を用いてキャリア同期を行ない、これによって広い周波数引き込み範囲で、安定的にキャリア信号を再生して、デジタル変調信号に含まれている情報を再生することができる。」、
(d)前記(カ)の段落【0094】には「上述したように、この微調AFC回路55によれば、一定時間間隔でキャリア再生に供する基準信号期間または多値化数の少ないデジタル変調信号期間を設けたデジタル変調信号を受信再生する際、CN比が低いときでも、間欠的に得られる位相、周波数誤差情報を用いて広い周波数引き込み範囲で、安定的にキャリア信号を再生し、デジタル変調信号に含まれている情報を再生することができる。」との記載が成されており、
これら記載からみて、微調AFC回路が、フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間において動作するようになっていることは自明の事項であり、フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路があることも当然のことである。

前記記載事項及び図面の記載並びに技術常識を勘案すると、
先願明細書には、
「衛星テレビジョン放送受信装置における微調AFC回路であって、数値制御発振器NCOから出力される正弦波データおよび余弦波データを受けてIF信号を直交復調する直交復調回路と、フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路と、直交復調出力をA/D変換するA/D変換回路11、12と、A/D変換回路にて変換された信号をフレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号のシンボルごとに数値制御発振器NCO59の発振周波数をオフセット周波数データだけシフトする角速度に対応する角速度で位相回転させる位相回転回路58と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検出回路と、フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく周波数情報を出力する自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROMと、自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROMの出力からオフセット周波数データを減算する減算手段とを備え、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを数値制御発振器から同期検波回路へ送出することを微調AFC回路。」、
を構成とする発明(以下、「先願明細書に記載された発明」という。)が記載されているものと認める。

(3)対比・判断
補正後の発明と先願明細書に記載された発明を対比すると、
a.補正後の発明の「BSデジタル放送受信機」、「位相検波器」、「区間」、「自己相関検出回路」は、各々、先願明細書に記載された発明の「衛星テレビジョン放送受信装置」、「位相検出回路」、「期間」、「自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROM」に相当する。
b.先願明細書に記載された発明の「直交復調回路」は、技術常識からみて、「同期検波回路」であり、また、先願明細書に記載された発明の「直交復調」は、技術常識からみて、「同期検波」である。
c.また、先願明細書に記載された発明の「IF信号」は、「入力変調信号」である。
d.また、先願明細書に記載された発明の「微調AFC回路」はキャリアの周波数を再生する回路であり、「キャリア再生回路」である。
e.また、先願明細書に記載された発明の「A/D変換するA/D変換回路11、12」は、直交復調された連続的な信号をサンプリングして信号点位置信号に変換する回路であり、「信号点配置変換回路」である。
f.補正後の発明の「伝送多重構成制御信号」と先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」とは、「フレームの所定信号」で一致する。
g.補正後の発明の「同期検波回路から出力される同期検波出力を受けて伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」と先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」とは「フレームの所定信号区間検出回路」で一致する。
h.補正後の発明の「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」と 先願明細書に記載された発明の「周波数情報」、「オフセット周波数データ」とは、各々、「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」で一致する。
i.まとめるに、補正後の発明の発明の「伝送多重構成制御信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度情報を出力する自己相関検出回路」と 先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく周波数情報を出力する自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROM」とは、前記a.、f.、h.を考慮して、「フレームの所定信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度に比例する情報を出力する自己相関検出回路」で一致する。

j.まとめるに、補正後の発明の発明の「自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度を減算する減算手段」と 先願明細書に記載された発明の「自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROMの出力からオフセット周波数データを減算する減算手段」とは、前記a.、hを考慮して、「自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報を減算する減算手段」で一致する。

そうしてみると、両者は、
「BSデジタル放送受信機におけるキャリア再生回路であって、数値制御発振器から出力される正弦波データおよび余弦波データを受けて入力変調信号を同期検波する同期検波回路と、フレームの所定信号区間検出回路と、同期検波出力を信号点配置に変換する信号点配置変換回路と、信号点配置変換回路にて変換された信号点位置信号をフレームの所定信号のシンボルごとに数値制御発振器の発振周波数をシフトさせる角速度に対応する角速度で位相回転させる位相回転回路と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検波器と、フレームの所定信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度に比例する情報を出力する自己相関検出回路と、自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報を減算する減算手段とを備え、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを数値制御発振器から同期検波回路へ送出することをキャリア再生回路。」、
である点で一致し、

下記点で一応相違する。
(1)「フレームの所定信号」に関連して、補正後の発明は、該信号が「伝送多重構成制御信号」であり、該信号区間が「伝送多重構成制御信号区間」であり、該信号区間を検出する手段として「同期検波回路から出力される同期検波出力を受けて伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」であるのに対し、先願明細書に記載された発明では、該信号が「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」であり、該信号区間が「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間」であり、該信号区間を検出する手段が、「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」である点、

(2)位相回転回路において「数値制御発振器の発振周波数をシフトさせる角速度に対応する角速度で位相回転させる」のが、本願発明では、「離反周波数の極性判別のために」行うのに対し、補正後の発明ではこのような記載がない点、

(3)「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」について、補正後の発明が、各々、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」であるのに対して、先願明細書に記載された発明が、各々、「周波数情報」、「オフセット周波数データ」である点。

そこで、前記相違点(1)、(2)、(3)について検討する。

相違点(1)について
BSデジタル放送受信機において、同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号からなる伝送多重構成制御信号TMCCを有するフレーム、を受信することは本願出願前より周知の技術(必要ならば、例えば、特開平9-321813号公報、映像情報メディア学会技術報告 放送方式 映情学技法VOL.21、NO.25 、1997年3月19日発行、ISSN1324-6893、加藤外4名「衛星ISDB伝送方式の検討」、BSC97-12、1-6頁、電子情報通信学会技術研究報告VOL.97、 NO.414 1997年12月2日発行、山田「衛星・地上デジタル放送の開発動向」、IT97-53、1-10頁参照)であり、また、復調回路から出力される復調出力を受けて所定信号区間を検出することは本願出願前より周知技術といえるものであるから、先願明細書に記載された発明において、「フレームの所定信号」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」をBPSK信号からなる「伝送多重構成制御信号」とし、「フレームの所定信号区間」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間」を「伝送多重構成制御信号区間」とすると共に、「フレームの所定信号区間検出回路」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」を「同期検波回路から出力される同期検波出力を受けて伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」とすることは、当業者が具体的に受信システムを設計する上での微差ともいうべきものである。

相違点(2)について
また、先願明細書の記載(前記2.(2)(カ))において、オフセット周波数データをどのような大きさにとるかは当業者の設計的事項であり、オフセット周波数データを予想される離調周波数より大きくとって、離調周波数の大きさのみならずその極性も分かるようにすることは、当業者が受信システムを具体的に設計する上での微差といえる事項である。

相違点(3)について
「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」 として、各々、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」があることは自明のことであり、先願明細書に記載された発明の「周波数情報」、「オフセット周波数データ」を、各々、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」とすることは当業者が具体的に受信システムを設計する上での微差といえる事項である。

(4) よって、本件補正後の発明は、前記先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一ではなく、また、本願出願時に、その出願人が前記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成16年1月26日付けの手続補正は前記第2.の記載のとおり却下されたので、平成15年10月29日付けで補正された明細書および図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】
「BSデジタル放送受信機におけるキャリア再生回路であって、同期検波出力から伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路と、同期検波出力を信号点配置に変換する信号点配置変換回路と、信号点配置変換回路にて変換された信号点位置信号を伝送多重構成制御信号のシンボルごとに予め定めた所定の角速度で位相回転させる位相回転回路と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検波器と、伝送多重構成制御信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度情報を出力する自己相関検出回路と、自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度を減算する減算手段と、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを同期検波回路へ送出する数値制御発振器とを備えたことを特徴とするキャリア再生回路。」

2.先願発明
(1)原審拒絶理由で引用された先願明細書、その記載事項及び「先願明細書に記載された発明」は、前記「第2.2.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明と先願明細書に記載された発明に記載された発明とを対比すると、
a.本願発明の「BSデジタル放送受信機」、「区間」、「自己相関検出回路」は、各々、先願明細書に記載された発明の「衛星テレビジョン放送受信装置」、「期間」、「自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROM」に相当する。
b.先願明細書に記載された発明の「直交復調回路」、「直交復調出力」は、技術常識からみて、各々、「同期検波回路」、「同期検波出力」である。
c.また、先願明細書に記載された発明の「IF信号」は、各々、「入力変調信号」である。
d.また、先願明細書に記載された発明の「微調AFC回路」はキャリアの周波数を再生する回路であり、「キャリア再生回路」である。
e.また、先願明細書に記載された発明の「A/D変換するA/D変換回路11、12」は、直交復調された連続的な信号をサンプリングして信号点位置信号に変換する回路であり、「信号点配置変換回路」である。
f.本願発明の「伝送多重構成制御信号」と先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」は「フレームの所定信号」である。
g.本願発明の「同期検波出力から伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」と先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」は「フレームの所定信号区間検出回路」である。
h.先願明細書に記載された発明の「数値制御発振器NCO59の発振周波数をシフトする角速度に対応する角速度」が、「予め定めた角速度」であることは、先願明細書の記載(前記第2.2.(2)(カ)の記載)からみて自明である。

i.本願発明の「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」と 先願明細書に記載された発明の「周波数情報」、「オフセット周波数データ」とは、各々、「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」で一致する。

j.まとめるに、本願発明の「伝送多重構成制御信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度情報を出力する自己相関検出回路」と 先願明細書に記載された発明の「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく周波数情報を出力する自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROM」とは、前記a.、f.、i.を考慮して、「フレームの所定信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度に比例する情報を出力する自己相関検出回路」で一致する。

k.まとめるに、本願発明の「自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度を減算する減算手段」と 先願明細書に記載された発明の「自己相関演算回路、周期検出回路、周波数データ生成ROMの出力からオフセット周波数データを減算する減算手段」とは、前記a.、i.を考慮して、「自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報を減算する減算手段」で一致する。
そうしてみると、両者は、
「BSデジタル放送受信機におけるキャリア再生回路であって、フレームの所定信号区間検出回路と、同期検波出力を信号点配置に変換する信号点配置変換回路と、信号点配置変換回路にて変換された信号点位置信号をフレームの所定信号のシンボルごとに予め定めた所定の角速度で位相回転させる位相回転回路と、位相回転回路からの出力を位相検波する位相検波器と、フレームの所定信号区間において位相検波出力の自己相関関数を求めかつ求めた自己相関関数波形の周期に基づく角速度に比例する情報を出力する自己相関検出回路と、自己相関検出回路の出力から位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報を減算する減算手段と、減算手段の出力に基づく周波数の正弦波データおよび余弦波データを同期検波回路へ送出する数値制御発信器とを備えたキャリア再生回路。」、
である点で一致し、

下記点で一応相違する。
(1)「フレームの所定信号」に関連して、本願発明は、該信号が「伝送多重構成制御信号」であり、該信号区間が「伝送多重構成制御信号区間」であり、該信号区間を検出する手段として「同期検波出力から伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」を有するのに対し、先願明細書に記載された発明では、該信号が「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」であり、該信号区間が「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間」であり、該信号区間を検出する手段が、「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」である点、

(2)「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」について、本願発明が、各々、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」であるのに対して、先願明細書に記載された発明が、各々、「周波数情報」、「オフセット周波数データ」である点。

そこで、前記相違点(1)、(2)について検討する。
相違点(1)について
BSデジタル放送受信機において、同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号からなる伝送多重構成制御信号TMCCを有するフレーム、を受信することは本願出願前より周知の技術(必要ならば、例えば、特開平9-321813号公報、映像情報メディア学会技術報告 放送方式 映情学技法VOL.21、NO.25 、1997年3月19日発行、ISSN1324-6893、加藤外4名「衛星ISDB伝送方式の検討」、BSC97-12、1-6頁、電子情報通信学会技術研究報告VOL.97、 NO.414 1997年12月2日発行、山田「衛星・地上デジタル放送の開発動向」、IT97-53、1-10頁参照)であり、また、復調回路から出力される復調出力を受けて所定信号区間を検出することは本願出願前より周知技術といえるものであるから、先願明細書に記載された発明において、「フレームの所定信号」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号」をBPSK信号からなる「伝送多重構成制御信号」とし、「フレームの所定信号区間」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間」を「伝送多重構成制御信号区間」とすると共に、「フレームの所定信号区間検出回路」である「フレーム最初の同期信号SYNCとそれに続くBPSK信号における所定信号期間を検出する所定信号期間検出回路」を「同期検波出力から伝送多重構成制御信号区間を検出する伝送多重構成制御信号区間検出回路」とすることは、当業者が具体的に受信システムを設計する上での微差ともいうべきものである。

相違点(2)について
「角速度に比例する情報」、「位相回転回路における位相回転角速度に比例する情報」として、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」があることは自明のことであり、先願明細書に記載された発明の「周波数情報」、「オフセット周波数データ」を、各々、「角速度情報」、「位相回転回路における位相回転角速度」とすることは当業者が具体的に受信システムを設計する上での微差といえる事項である。

4. むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、前記先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一ではなく、また、本願出願時に、その出願人が前記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-07 
結審通知日 2004-07-13 
審決日 2004-07-28 
出願番号 特願平10-259128
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 161- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 智彦  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 野元 久道
望月 章俊
発明の名称 キャリア再生回路  

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