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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G08B
管理番号 1102764
異議申立番号 異議2003-72189  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-06-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-02 
確定日 2004-06-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3382395号「火災報知設備用光ファイバケーブル」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3382395号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由
1.手続の経緯
特許出願 平成 6年12月 6日
特許権設定登録 平成14年12月20日
(公報発行日 平成15年 3月 4日)
特許異議申立て 平成15年 9月 2日
(申立人 昭和電線電纜株式会社)
取消理由通知 平成16年 1月 9日
(平成16年 1月23日発送)
訂正請求 平成16年 3月22日


2.訂正の適否の判断
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「上記耐熱部材の周面に配置された複数の識別線」を「上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線」と訂正する。

訂正事項b
発明の詳細な説明の記載の0005段落の「周面に配置された複数の識別線」を「周面に略等間隔で配置された複数の識別線」と訂正する。

訂正事項c
発明の詳細な説明の記載の0021段落の「周面に配置された複数の識別線」を「周面に略等間隔で配置された複数の識別線」と訂正する。

(2)訂正の適否
請求項1についての訂正事項aは、「上記耐熱部材の周面に配置された複数の識別線」を「上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線」と限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、図1の記載に基づくものであるので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正事項aは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合する。
また、その他の訂正事項b、cについても特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するものであるので、上記訂正を認める。


3.特許異議申立についての判断
(1)本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の発明は、訂正された特許明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本件発明」という。)

「【請求項1】 中央部に設けられたワイアと、
このワイアを包囲するスペーサと、
このスペーサの周面に設けられた複数の溝と、
これらの複数の溝に設けられた複数の光ファイバ心線と、
上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する耐熱部材と、
下地の色に対して識別可能な色で、上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線と
を備えたことを特徴とする火災報知設備用光ファイバケーブル。」


(2)引用発明
(2-1)引用文献1(甲第1号証)
(A)当審において通知した取消理由に引用した特開昭60-211408号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「複数本の光ファイバ心線を合成樹脂からなるスペーサにスパイラル状に該設された複数本の溝に収容して光ファイバユニットを構成した・・・光ファイバケーブル」(1頁右下欄20行〜2頁左上欄5行)

イ.「21は光ファイバー心線、22はユニット中心材、23は合成樹脂外被、28は押さえ巻き、24は光ファイバ心線21をユニット中心材22の周囲に撚り合わせ、その外側に押さえ巻き28を施して構成された光ファイバユニットである。
第3図では光ファイバ心線21は光ファイバ1本に合成樹脂被覆を施した構造の光ファイバ心線を示しているが、複数本の光ファイバに一括して合成樹脂外被を施した高密度集合形の光ファイバ心線を用いてもよい。25は抗張力体であって、通常、鋼線の単線や撚り線からなる。26は合成樹脂からなるスペーサ、27はスペーサの外周に刻設された溝であって、光ファイバユニット24を収容する十分な大きさを有している。」(2頁右下欄19行〜3頁左上欄13行)

(B)引用文献1のものにおいて次のことが明らかである。
第3図より、抗張力体25は中央部に設けられ、スペーサ26は抗張力体25を包囲し、スペーサ26の周面に溝27が複数設けられ、溝27には光ファイバ心線21を含む光ファイバユニット24が収容され、複数の溝27を覆ってスペーサ26の周囲を合成樹脂外被23が被覆すること。

(C)以上から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「中央部に設けられた抗張力体25と、
この抗張力体25を包囲するスペーサ26と、
このスペーサ26の周面に設けられた複数の溝27と、
これらの複数の溝27に設けられた複数の光ファイバ心線21と、
上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する合成樹脂外被23と
を備えた光ファイバケーブル。」(以下、「引用発明1」という。)

(2-2)引用文献2(甲第2号証ないし甲第4号証)
(A)当審において通知した取消理由に引用し、かつ平成15年12月2日付け審尋により原本を照合した「光ファイバケーブル」カタログ、昭和電線電纜株式会社、1992年10月(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア-1.「難燃用ケーブル
ケーブル外被に特殊な難燃材料を使用した、難燃用ケーブルです。垂直燃焼試験(IEEE Std.383)にも合格する難燃性を有しています。
用途 電力設備、地下、プラント関係設備等の難燃ケーブル」(15頁左欄)

イ-1.「耐熱用ケーブル
消防庁通達の基準に従い、日本電線工業会が行なう認定試験に合格した耐熱光ファイバです。
用途 防災関係、消防用設備」(15頁右欄)

ウ-1.「ストライプ外被ケーブル
多条布設の場合、光ケーブルを他のメタル通信、又は電力ケーブルと容易に識別できるように、ケーブルの外被上にストライプ状の被覆を施した構造です。
用途 多条布設時に、光ケーブルの識別が要求される場合」(17頁下段)

(B)引用文献2のものにおいて次のことが明らかである。
ア-2.難燃用ケーブルについて
15頁左欄下側の構造(例)の図より、「中央部にはワイア(テンションメンバ)が設けられ、周囲部には外被が被覆された、光ファイバケーブルであって、外被を難燃外被とするもの」

イ-2.耐熱用ケーブルについて
15頁右欄下側の構造(例)の図より、「中央部にはワイア(テンションメンバ)が設けられ、周囲部には外被が被覆される」

ウ-2.ストライプ外被ケーブルについて
17頁下段左側の写真及び17頁下段右側の構造(例)の図より、「下地の黒系色に対して識別可能な白系色で、光ファイバケーブルの外被の周面に配置されたストライプライン」
ここで、「ストライプライン」は、識別機能を果たすものであるので、「識別線」ということができる。

(C)以上から、引用文献2には、次の各発明が記載されていると認められる。
ア-3.「中央部にはワイア(テンションメンバ)が設けられ、周囲部には外被が被覆された、光ファイバケーブルにおいて、光ファイバケーブルの周囲を被覆する外被に難燃材料を使用すること」(以下、「引用発明2のア」という。)

イ-3.「中央部にはワイア(テンションメンバ)が設けられ、周囲部には外被が被覆された、光ファイバケーブルのうち、耐熱用の光ファイバケーブルを消防用設備に使用すること」(以下、「引用発明2のイ」という。)

ウ-3.「下地の色に対して識別可能な色で光ファイバケーブルの外被の周面に配置した識別線を備えることにより識別を可能とすること」(以下、「引用発明2のウ」という。)


(3)対比
本件発明と引用発明1を対比すると、引用発明1における「抗張力体25」、「スペーサ26」、「溝27」、「光ファイバ心線21」は、それぞれ、本件発明における「ワイア」、「スペーサ」、「溝」、「光ファイバ心線」に相当することから、両者は、
「中央部に設けられたワイアと、
このワイアを包囲するスペーサと、
このスペーサの周面に設けられた複数の溝と、
これらの複数の溝に設けられた複数の光ファイバ心線と、
上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する部材と、
を備えた光ファイバケーブル。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)本件発明は、火災報知設備用の光ファイバケーブルに関するものであって、複数の溝を覆ってスペーサの周囲を被覆する部材が、耐熱部材であるのに対して、引用発明1においては、光ファイバケーブルを火災報知設備用に用いることについて記載がなく、複数の溝を覆ってスペーサの周囲を被覆する外被は合成樹脂外被でありこれを耐熱部材とすることについての記載はないものである点

(相違点2)本件発明は、下地の色に対して識別可能な色で、被覆部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線を備えるものであるのに対して、引用発明1においては、識別線については記載がない点


(4)判断
上記相違点について以下に検討する。
(4-1)相違点1について
引用発明1、引用発明2のア、引用発明2のイは、いずれも、中央部にワイアが設けられ周囲部に外被が被覆された光ファイバケーブルに関するものである点で共通するので、引用発明1に引用発明2のア及び引用発明2のイを適用することを阻害する要因はなく、引用発明1に記載の光ファイバケーブルにおける光ファイバケーブルの周囲を被覆する外被に、耐熱材料を使用し耐熱用として、火災報知設備用に使用する光ファイバーケーブルとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1に関する本件発明の構成とすることに、困難性は認められない。

(4-2)相違点2について
引用発明2のウは、「下地の色に対して識別可能な色で光ファイバケーブルの外被の周面に配置した識別線を備えることにより識別を可能とする」技術を示すものであり、さらに、ケーブルの分野において、ケーブルの外被の周面に配置した識別線として略等間隔で配置された複数の識別線を使用する技術は周知技術である(必要なら、特開平4-209418号公報(図3(副絶縁体(青)が上下に設けられている点に着目のこと)、図4、「・・・ストライプ模様・・・複数条とする」(0009段落)、0007段落、0014段落、0016段落等参照)、特開平6-51170号公報(図3(4本の色識別マークに着目のこと)、「・・・色識別マークは・・・長手方向に延びる・・・幾つかの識別線・・・としても良い。」(0007段落)、段落0014等参照)、等を参照されたい。)ので、引用発明1の光ファイバケーブルについても識別のために、下地の色に対して識別可能な色で、被覆部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線を備える構成とすることは、当業者が容易になし得た程度の事項である。

(4-3)また、各相違点を総合して本件発明について検討しても、その奏する効果は当業者の予測できる範囲内のものと認められる。

(4-4)まとめ
したがって、本件発明は、引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
火災報知設備用光ファイバケーブル
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 中央部に設けられたワイアと、
このワイアを包囲するスペーサと、
このスペーサの周面に設けられた複数の溝と、
これらの複数の溝に設けられた複数の光ファイバ心線と、
上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する耐熱部材と、
下地の色に対して識別可能な色で、上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線と
を備えたことを特徴とする火災報知設備用光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、火災報知設備用光ファイバケーブルに関し、特に、例えば、火災受信機と、中継器(火災感知器が接続された監視用中継器、防火戸等の被制御機器が接続された制御用中継器、監視兼制御用中継器)や、アナログ式火災感知器、アドレス付き火災感知器等の複数の端末機器との間を信号線として光ファイバケーブルを用いる場合に適用して好適な火災報知設備用光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、火災報知設備において、例えば、火災受信機と主中継器等の各種端末機器との間の信号線に光ファイバケーブルを用い、広い範囲での信号伝送を高速で大量に行うことが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の光ファイバケーブルは、曲げに弱く、施工時に折れ易く、折れると、再度引き直す必要があり、施工には細心の注意を払う必要があり、作業性が悪いという問題点があった。
【0004】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、折れにくく、強度があり、施工等の際に何ら細心の注意を払うことなく扱うことができ、施工時の作業性の向上が可能で、しかも、他の配線と容易に識別可能な識別性を有する火災報知設備用光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルは、中央部に設けられたワイアと、このワイアを包囲するスペーサと、このスペーサの周面に設けられた複数の溝と、これらの複数の溝に設けられた複数の光ファイバ心線と、上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する耐熱部材と、下地の色に対して識別可能な色で、上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線とを備えたものである。
【0006】
【作用】
この発明においては、光ファイバケーブルの中央部にワイアを設けているので不用意にケーブルを曲げることを防止でき、また、スペーサに設けられた溝によって、ケーブルに対する外力を緩衝することができ、以て、光ファイバ心線が折れにくくなる。
また、スペーサの溝を複数個設けたので、一度に複数本の光ファイバ心線を配線でき、余分な光ファイバ心線を余らせておくことによって、使用している光ファイバ心線の万一の断線時にその予備の光ファイバ心線5を使用することができる。
さらに、耐熱部材の被覆に識別線を設けたので、施工時等において作業者が火災報知設備用の光ファイバケーブルであることを容易に識別することができ、作業性の向上に寄与できる。
【0007】
【実施例】
以下、この発明による火災報知設備用光ファイバケーブルの一実施例を、図を参照しながら説明する。
図1は、この発明による火災報知設備用光ファイバケーブルの一実施例を示す断面図である。
図において、1は光ファイバケーブルであって、この光ファイバケーブル1は、中央部に設けられた例えば鋼製のワイヤのより線よりなるテンション部材2と、このテンション部材2を覆う例えばモールドよりなるスペーサ3と、このスペーサ3の周面に設けられた複数個例えば6個の溝4と、これらの溝4の各々に固定されることなく設けられた光ファイバ心線5と、この光ファイバ心線5が設けられた溝4を密封する押えテープ6と、この押えテープ6の外周を被膜する耐熱部材としての耐熱シース7とで構成される。この溝4の数は、6個以外の数でよいが、送受信には最低2本、余りを含めて3本以上が好ましい。
【0008】
つまり、この光ファイバケーブル1は、中央部に鋼製のワイアを貫通させたモールドに例えば星形に6本の光ファイバ心線5を配置するための溝4を設け、ケーブルの剛性保持および外力に対する保護を行うようにしている。
また、耐熱シース7は、火災報知設備として使用する場合の耐熱性を有するものである。そして、この耐熱シース7の周面には、他の配線と区別するために下地に対して識別可能な色の識別線8として例えば下地の黒に黄色の縞模様が配置される。
【0009】
図2は光ファイバ心線5の具体的構造の一例を示す断面図である。
図において、51は中央部に設けられた信号としての光が伝送されるコア、52はこのコア51の周囲を覆うクラッドであって、これらコア51とクラッド52で実質的に光ファイバを構成する。これらの材質としては、例えば石英ガラスが用いられる。
53はクラッド52の周囲を覆う例えば樹脂からなる緩衝層、54は緩衝層53の周囲を覆う被覆層である。この被覆層54には、個別の配色がされる。従って、この場合、6本の光ファイバ心線5は、その被覆の異なった配色で区別される。
【0010】
図3は上述したような光ファイバケーブルを利用した火災報知設備の一例を示す系統図である。
図において、11は火災受信機であって、この火災受信機11に複数個の端末機器としての主中継器12,13が接続される。火災受信機11と、主中継器12,13は、一方向に電気信号の伝送を行うための主ループ信号線14M、他方向に電気信号の伝送を行うための副ループ信号線15Mの例えばそれぞれ1対の信号線からなる2系統の電線による信号線と、同じく、一方向に光信号の伝送を行うための主ループ信号線14F、他方向に光信号の伝送を行うための副ループ信号線15Fの少なくとも1対の光ファイバ心線を含む1系統の光ファイバケーブルによる信号線と、電話線16とでループ状に接続されている。
この場合、主ループ信号線14Fおよび副ループ信号線15Fとして、図1の光ファイバケーブル1の6本の光ファイバ心線5の内の2本が使用される。
【0011】
なお、これらの主ループ信号線14Mおよび副ループ信号線15Mと、主ループ信号線14Fおよび副ループ信号線15Fとは、信号を電気信号で送受信するか、光信号で送受信するかに応じて、選択的に切り換えられるようになされていて、現場によって選択的に使用可能である。
また、火災受信機11および主中継器12,13におけるFMR,FMTはそれぞれ主ループ信号線14Fによる受信ポート,送信ポートを表し、同じく、FSR,FSTはそれぞれ副ループ信号線15Fによる受信ポート,送信ポートを表し、また、MMR,MMTはそれぞれ主ループ信号線4Mによる受信ポート,送信ポートを表し、同じく、MSR,MSTはそれぞれ副ループ信号線15Mによる受信ポート,送信ポートを表す。
【0012】
いま、火災受信機11から各主中継器12,13、並びに各主中継器12,13から火災受信機11には、主ループ信号線14Fおよび副ループ信号線15Fの双方を介してポーリング信号や返送信号、その他各種の信号が伝送され、この場合、主ループ信号線14Fおよび副ループ信号線15Fの双方の信号線には常時同じ信号が流される。従って、火災受信機11および各主中継器12,13は、主ループ信号線14Fおよび副ループ信号線15Fの双方に常時同じ信号を受信しており、主ループ信号線14F側からの受信がある場合には、主ループ信号線14M側の信号だけを信号処理のために火災受信機や主中継器内部の図示しない例えばマイクロコンピュータを有する信号処理部に実際に取り込み、断線等の異常により主ループ信号線14F側からの受信が無くなると、副ループ信号線15F側で受信された信号を火災受信機や主中継器内部の信号処理部に取り込む。 【0013】
この構成により、通常は主ループ信号線14Fを介する火災受信機11からのポーリング信号に従って、主中継器12,13は各種センサからの信号を取り込んで火災監視のための信号処理を行い、その結果を火災受信機11に返送したり、また、火災が発生したことが検出された時には、火災受信機11からの指令により防火戸等の被制御機器の動作制御を行ったりする。
また、伝送される信号が光信号の場合も、上述の電気信号の場合と同様に行われる。
【0014】
図4は機器の組み込み状態の一例を示す斜視図である。
図において、60は火災受信機11または主中継器12,13の筐体、62は筐体60の天井面に設けられた光ファイバケーブル1の引き込み口、63は筐体60内に収納され、電気ー光相互変換基板40,50(図5参照)等が設けられて光ファイバケーブル1と接続された光ファイバ成端箱、64は同じく筐体60内に収納され、火災受信機11または主中継器12,13の信号伝送部(図示せず)が搭載された盤内基板である。
【0015】
65,66はそれぞれ電気ー光相互変換基板40,50に接続されるコネクタ(図6参照)、67,68はコネクタ65,66をそれぞれ光ファイバ成端箱63のコネクタ81,82に接続する盤内伝送線(例えば、ツイストペア4Pのコネクタ線)としてのケーブルである。
かくして、光ファイバケーブル1で光ファイバ成端箱63に取り込まれた光信号は、ここで電気信号に変換され、ケーブル67,68を介して基板64の信号伝送部に供給される。
【0016】
図5は基板40,50を含む光ファイバ成端箱63の内部を示す構成図である。
図において、71は光ファイバ成端箱本体、72は光ファイバケーブル1を固定するためのケーブルクランプである。光ファイバケーブル1の光ファイバ心線5が、ここでは、破線で示されている。光ファイバ成端箱63の設置は、通常光ファイバケーブル1を引き込む面を上部にするが、引き込み位置の都合により光ファイバ成端箱63の位置を回転させる場合は、光ファイバケーブル1の自重によるストレスを軽減させるため、このケーブルクランプ72を光ファイバ成端箱本体71の側面等に設けるようにしている。
【0017】
73は光ファイバケーブル1のワイヤ(テンション部材)2をねじ止めにより所定の張力に固定するためのテンション部材クランプであって、これにより、配設された光ファイバケーブル1によじれが発生しないようにしている。74は接続部収納トレイ、75は接続部収納トレイ74内に設けられた接続部補強材である。光ファイバケーブル1の光ファイバ心線5は、その余りが融着され、接続部補強材75で被膜されて接続部収納トレイ74内に収納される。
光ファイバケーブル1の光ファイバ心線5の先端は、その使用する心線がいわゆるスプライシング加工により、基板40と接続されている複数のコネクタ76と、同じく基板50に接続されている複数のコネクタ77に接続され、余りの心線がスプライシング加工により、光アダプタ79の予備の複数のコネクタ78に接続される。
【0018】
図6は光ファイバ成端箱63と盤内基板64の接続状態を示す配置図である。 光ファイバ成端箱63と盤内基板64はケーブル67,68を介して接続される。ケーブル67,68の盤内基板64側に接続されているコネクタ65,66は、盤内基板64にある切換回路(図示せず)等に接続されている。
【0019】
図7は光ファイバ成端箱63の内部における接続状態の一例を示す配線図である。
図において、図5および図6と対応する部分には同一符号を付して示している。光ファイバ成端箱63内には、ここでは、片側をコネクタ加工(FC型)した光ファイバ心線5が12本(伝送用4本,予備8本)が収納されており、引き込んだ2本の光ファイバケーブル1(6芯)の内各2本を伝送用に用い、残り各4本を予備としている。
【0020】
このように、本実施例では、光ファイバケーブル1のワイアすなわちテンション部材2によって、不用意にケーブルを曲げることを防止でき、スペーサ3に設けられた溝4によって、ケーブルに対する外力を緩衝することができる。以て、光ファイバケーブル1内の光ファイバ心線5が折れることがない。
また、スペーサ3の溝4を複数個設けることにより一度に複数本の光ファイバ心線5を配線でき、余分な光ファイバ心線5を余らせておくことによって、使用している光ファイバ心線5の万一の断線時にその予備の光ファイバ心線5を使用することができる。
さらに、耐熱シース7の被覆に識別線8を設けているので、施工時等において作業者が火災報知設備用の光ファイバケーブルであることを容易に識別することができ、作業性の向上に寄与できる。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、中央部に設けられたワイアと、このワイアを包囲するスペーサと、このスペーサの周面に設けられた複数の溝と、これらの複数の溝に設けられた複数の光ファイバ心線と、上記複数の溝を覆って上記スペーサの周囲を被覆する耐熱部材と、下地の色に対して識別可能な色で、上記耐熱部材の周面に略等間隔で配置された複数の識別線とを備えたので、不用意にケーブルを曲げることを防止でき、また、ケーブルに対する外力を緩衝することができ、光ファイバ心線を折れないようにすることが可能となり、作業性がよく、しかも品質の良好な光ファイバケーブルが得られるという効果がある。
また、施工時等において作業者が火災報知設備用の光ファイバケーブルであることを容易に識別することができ、さらに、作業性の向上に寄与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルの一実施例を示す断面図である。
【図2】
この発明の要部の一例を示す断面図である。
【図3】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルを用いた火災報知設備の一例を示す系統図である。
【図4】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルを用いた火災報知設備の収納状態を斜視図である。
【図5】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルを用いた火災報知設備における光ファイバ成端箱を示す構成図である。
【図6】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルを用いた火災報知設備における光ファイバ成端箱と盤内基板の接続状態を示す配置図である。
【図7】
この発明に係る火災報知設備用光ファイバケーブルを用いた火災報知設備における光ファイバ成端箱の接続状態を示す配置図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル
2 テンション部材
3 スペーサ
4 溝
5 光ファイバ心線
7 耐熱シース
8 識別線
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-04-19 
出願番号 特願平6-302122
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G08B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 宮崎 敏長  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 村上 哲
大野 覚美
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3382395号(P3382395)
権利者 能美防災株式会社
発明の名称 火災報知設備用光ファイバケーブル  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道照  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道照  
代理人 古川 秀利  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  

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