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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
管理番号 1102791
異議申立番号 異議2003-71859  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-18 
確定日 2004-06-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3369596号「リード線ユニット」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3369596号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3369596号の請求項1、2に係る発明は、平成4年6月26日に特許出願され、平成14年11月15日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、全請求項に係る特許について岡田竜児より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年12月9日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
(a)特許請求の範囲の請求項1の
「該耐熱性シール部材の少なくとも一部を加熱圧縮する」を、
「該耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて加熱圧縮する」と訂正する。
(b)明細書の段落【0006】の
「加熱圧縮」を、
「金型に入れて加熱圧縮」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、耐熱性シール部材の少なくとも一部についての「加熱圧縮」を、「金型に入れて加熱圧縮」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正は、特許明細書の段落【0012】の「導通孔2内にリード線3を挿通した状態で、円筒状シール部材1の一部1aを金型に入れて加熱圧縮する。」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記(b)の訂正は、上記(a)の訂正により特許請求の範囲が訂正されることに伴い、これに整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2-3.訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第120条の4第3項で準用する第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.取消理由の概要
当審において通知した取消理由の概要は、本件請求項1、2に係る発明は、本件の出願日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-49740号(以下、「先願」という。その公開公報である特開平4-285849号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という)に記載された発明と同一と認められ、しかも、本件請求項1、2に係る発明の発明者が上記先願に係る発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願の時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり(取消理由1)、また、本件請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物1〜4(特許異議申立人が提出した甲第2〜5号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである(取消理由2)、というものである。

3-2.本件発明
上記2.で述べたとおり訂正が認められるから、本件請求項1、2に係る発明は、平成15年12月9日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という)。
「【請求項1】 リード線の端部を耐熱性シール部材に挿通してなるリード線ユニットにおいて、該耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて加熱圧縮することにより、該耐熱性シール部材と該リード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させたことを特徴とするリード線ユニット。
【請求項2】 前記耐熱性シール部材及び前記リード線の耐熱性絶縁被覆がフッ素樹脂からなる請求項1記載のリード線ユニット。」

3-3.先願明細書、刊行物の記載事項
(1)取消理由に引用された先願明細書(特願平3-49740号(特開平4-285849号公報参照))には、「センサの防水構造及びその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
・摘示1-A:「【請求項1】 被測定ガス中のガス成分濃度を検出する検出部と、該検出部が格納されたセンサ内部と外界とを気密するシール材と、該シール材を貫通して上記検出部から伸びる被覆リード線と、を備えたセンサの防水構造において、上記シール材の材料として、上記リード線の被覆膜の融点より低い融点を有しかつ上記シール材使用温度より高い耐熱温度を有する樹脂を用いたことを特徴とするセンサの防水構造。
【請求項2】 上記請求項1記載のセンサの防水構造の製造方法において、上記シール材の材料として、上記リード線の被覆膜の融点より低い融点を有しかつ上記シール材使用温度より高い耐熱温度を有する樹脂を用い、上記シール材を加熱することによって溶融させて上記リード線の被覆膜に溶着させたことを特徴とするセンサの防水構造の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1、2)
・摘示1-B:「上記リード線の被覆膜としては、例えば融点が327℃であるPTFEを採用できる。また、上記シール材の材料としては、融点が約250〜310℃のPFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル)やFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を使用することができる。」(公開公報第2頁右欄第23〜29行)
・摘示1-C:「本発明では、シール材の材料として、リード線の被覆膜の融点よりも低い融点を有するとともにシール材使用温度より高い耐熱温度を有する樹脂を使用している。従って、リード線の貫通するシール材を加熱することによって、シール材の温度をリード線の被覆膜の融点より低い温度でしかもシール材の融点以上に上昇させ、それによって、被覆膜ではなくシール材のみが溶融することになる。その結果、この溶融したシール材がリード線に溶着することにより、リード線とシール材との隙間が閉ざされて気密される。」(同第2頁右欄第41〜50行)
・摘示1-D:「シール部63等を収納した保護外筒9は、その先端側がハウジング3に嵌合されて加締められるとともに、中央部で内筒7とともに加締められ、更に後端側のシール部63に対応する位置で外側から加締められてシール部63が固定される。その後、シール部63の第2層67の溶融温度の近傍の温度(315℃)で加熱されることによって、第2層67が溶融される。尚、リード線49の被覆膜50の溶融温度は327℃であり、また第1層65及び第3層69の溶融温度も327℃であり、上記加熱温度はこれらの溶融温度より低いので、リード線49の被覆膜50,第1層65及び第3層69は溶融しない。従って、この加熱による第2層67の溶融によって、第2層67はリード線49の被覆膜50に溶着してシール部63とリード線49との間隙を気密する。更に、第2層67は第1層65及び第3層69に溶着して気密する。」(同第3頁右欄第25〜40行)
・摘示1-E:「本実施例では、構成部品が減少し、かつ第1実施例で必要であったシール部の加締め工程を省略できるという利点がある。更に、シール部93の第1層94に設けられたテーパ状凸部94a及び第2層95に設けられた凹部95aと、シール部93に加えられるバネ圧とによって、リード線98及び被覆膜97に加圧しながら溶着を行うことができるので、その気密性が一層向上するという効果がある。」(同第4頁右欄第14〜19行)
(2)同じく引用された刊行物2(特開平1-314847号公報)には、「流体加熱装置の加熱エレメントにリード線を接続する方法」に関して、次の事項が記載されている。
・摘示2-A:「(1)流体加熱装置に使用する加熱エレメントにリード線を接続する方法において、耐腐食性をもつ熱可塑性材料の層で被覆された抵抗加熱エレメントを準備し、少なくとも一部が耐腐食性をもつ熱可塑性材料のジャケットで被覆されたリード線を準備し、前記抵抗加熱エレメントとリード線との間に低抵抗の電気接続部を形成して、該接続部を耐腐食性の熱可塑性材料からなる前記ジャケットに隣接して配置し、前記接続部のまわりに耐腐食性をもつ熱可塑性材料からなるスリーブを配置して、該スリーブを前記ジャケットの少なくとも一部と重ね合わせ、前記スリーブを熱活性型の熱収縮チューブで包囲し、前記接続部を包囲している熱可塑性材料を溶融し、前記収縮チューブを活性化して該収縮チューブによって前記熱可塑性材料を互いに圧搾かつ融合させ、前記リード線と抵抗加熱エレメントとの間の接続部のまわりに密封されたシールを形成することを特徴とする流体加熱装置に使用する加熱エレメントにリード線を接続する方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
・摘示2-B:「(2)前記熱可塑性材料が、フルオロポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
(3)・・・(中略)・・・
(4)前記リード線を準備する工程が、該リード線に着色PFAテフロン製の第1ジャケットを取付け、次いで該第1ジャケットの上に非着色PFAテフロン製のジャケットを取付けることを特徴とする請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項2〜4)

3-4.当審の判断
3-4-1.取消理由1について
(1)本件発明1について
先願明細書には、摘示1-Aからみて、シール材を加熱することによって溶融させてリード線の被覆膜に溶着させた被覆リード線付きセンサが記載され、また、摘示1-Cからみて、該シール材及びリード線の被覆膜は、シール材使用温度より高い耐熱性を有するといえるから、先願明細書には、
「被測定ガス中のガス成分濃度を検出する検出部と、該検出部が格納されたセンサ内部と外界とを気密する耐熱性シール材と、該シール材を貫通して上記検出部から伸びる被覆リード線と、を備えた被覆リード線付きセンサにおいて、上記シール材の材料として、上記リード線の耐熱性被覆膜の融点より低い融点を有しかつ上記シール材使用温度より高い耐熱温度を有する樹脂を用い、上記シール材を加熱することによって溶融させて上記リード線の被覆膜に溶着させたことを特徴とする被覆リード線付きセンサ。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
本件発明1(前者)と先願発明(後者)とを対比すると、後者における「耐熱性シール材」は、前者における「耐熱性シール部材」に、後者における「耐熱性被覆膜」は、前者における「耐熱性絶縁被覆」に、後者における「溶着」は、前者における「融着」に、後者における「被覆リード線付きセンサ」は、前者における「リード線ユニット」に、それぞれ相当するから(以下、後者の用語の代わりに、それに相当する前者の用語を使用することがある)、両者は、
「リード線の端部を耐熱性シール部材に挿通してなるリード線ユニットにおいて、該耐熱性シール部材の少なくとも一部を加熱して、該耐熱性シール部材と該リード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させたリード線ユニット。」である点で一致するが、次の点で一応の相違がみられる。
相違点:
耐熱性シール部材の少なくとも一部を加熱して、耐熱性シール部材とリード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させる際に、本件発明1においては、耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて圧縮するのに対し、先願明細書においては、耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて圧縮することが規定されていない点。
この相違点について検討するに、融着部を加熱して融着する際に、融着部を金型に入れて圧縮することは、本件特許の出願前周知・慣用のことである(例えば、特開昭62-47909号公報、特開昭63-150830号公報、特開平2-212125号公報、特開平4-26019号公報参照)。しかも、本件発明1は、前記相違点で示される構成要件を具備することにより、先願発明や前記周知・慣用技術に比べて新たな効果を奏するとも認められない。してみれば、この相違点は、周知・慣用技術の付加に相当するものであって、課題解決のための具体化手段における微差といえる。
よって、本件発明1は、先願発明と実質的に同一といえる。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、「前記耐熱性シール部材及び前記リード線の耐熱性絶縁被覆がフッ素樹脂からなる」ことを限定したものである。
これに対し、先願明細書には、リード線の耐熱性絶縁被覆としてPTFEを採用できること、耐熱性シール部材の材料としてPFAやFEPを使用できることが記載されており(摘示1-B参照)、しかも、PTFE、PFA、FEPは、フッ素樹脂であるから、本件発明2は、本件発明1と同様に、先願明細書に記載された発明と同一といえる。

3-4-2.取消理由2について
(1)本件発明1について
刊行物2には、摘示2-Aからみて、
「流体加熱装置に使用する加熱エレメントにリード線が接続されたリード線付き加熱エレメントにおいて、耐腐食性をもつ熱可塑性材料の層で被覆された抵抗加熱エレメントを準備し、少なくとも一部が耐腐食性をもつ熱可塑性材料のジャケットで被覆されたリード線を準備し、前記抵抗加熱エレメントとリード線との間に低抵抗の電気接続部を形成して、該接続部を耐腐食性の熱可塑性材料からなる前記ジャケットに隣接して配置し、前記接続部のまわりに耐腐食性をもつ熱可塑性材料からなるスリーブを配置して、該スリーブを前記ジャケットの少なくとも一部と重ね合わせ、前記スリーブを熱活性型の熱収縮チューブで包囲し、前記接続部を包囲している熱可塑性材料を溶融し、前記収縮チューブを活性化して該収縮チューブによって前記熱可塑性材料を互いに圧搾かつ融合させ、前記リード線と抵抗加熱エレメントとの間の接続部のまわりに密封されたシールを形成することにより製造される、流体加熱装置に使用するリード線付き加熱エレメント。」の発明が記載されていると認められる。
本件発明1(前者)と刊行物1記載の発明(後者)とを対比すると、後者における「耐腐食性をもつ熱可塑性材料からなるスリーブ」ないし「シール」は、前者における「耐熱性シール部材」に、後者における「耐腐食性をもつ熱可塑性材料のジャケット」は、前者における「耐熱性絶縁被覆」に、後者における「融合」は、前者における「融着」に、後者における「圧搾」は、前者における「圧縮」に、後者における「リード線付き加熱エレメント」は、前者における「リード線ユニット」に、それぞれ相当するから(以下、後者の用語の代わりに、それに相当する前者の用語を使用することがある)、両者は、
「リード線の端部を耐熱性シール部材に挿通してなるリード線ユニットにおいて、該耐熱性シール部材の少なくとも一部を加熱圧縮することにより、該耐熱性シール部材と該リード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させたリード線ユニット。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:
耐熱性シール部材の少なくとも一部の圧縮を、本件発明1においては、金型に入れて行うのに対し、刊行物2記載の発明においては、収縮チューブを活性化し収縮チューブを収縮させて行う点。
この相違点について検討するに、融着部を加熱圧縮して融着する際に、融着部の圧縮を金型に入れて行うことは、本件特許の出願前周知のことであるから(例えば、特開昭62-47909号公報、特開昭63-150830号公報、特開平2-212125号公報、特開平4-26019号公報参照)、刊行物2記載の発明において、融着部である耐熱性シール部材の少なくとも一部の圧縮を、収縮チューブを活性化して収縮チューブの収縮により行う代わりに、又はそれと併せて、金型に入れて行うことは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
よって、本件発明1は、刊行物2記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに、「前記耐熱性シール部材及び前記リード線の耐熱性絶縁被覆がフッ素樹脂からなる」ことを限定したものである。
これに対し、刊行物2には、リード線の耐熱性絶縁被覆をPFAテフロン製とすること、耐熱性シール部材の材料をフルオロポリマーとすることが記載されており(摘示2-B参照)、しかも、PFAテフロン、フルオロポリマーは、フッ素樹脂であるから、本件発明2は、本件発明1と同様に、刊行物2記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本件発明1、2は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明1、2の発明者が上記先願に係る発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願の時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。
また、本件発明1、2は、刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明1、2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
リード線ユニット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 リード線の端部を耐熱性シール部材に挿通してなるリード線ユニットにおいて、該耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて加熱圧縮することにより、該耐熱性シール部材と該リード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させたことを特徴とするリード線ユニット。
【請求項2】 前記耐熱性シール部材及び前記リード線の耐熱性絶縁被覆がフッ素樹脂からなる請求項1記載のリード線ユニット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒータリード線、センサリード線などのリード線を固定、シールするためのシール材(ブッシュ)を端部に有するリード線ユニットに関するものであり、更に詳しくは、高温下での長期間の使用に耐えうるシール部材付リード線ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高温下にあり、かつ防水性、気密性などが要求される箇所、例えば自動車の排ガス室などにリード線を接続固定する場合は、該個所にフッ素樹脂などの耐熱性樹脂からなるシール部材を固定し、そのシール部材に穿設した導通孔内に、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂で被覆したリード線を挿通して、該シール部材と該リード線との間を、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどのパッキングでシールするという方法が一般に用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の方法では、高温下で連続的に使用しているとパッキングが熱劣化又は腐蝕して、防水性、気密性が損なわれることがわかってきた。そのため、パッキングの交換を頻繁に行わなければならないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解消し、耐久性のある防水性、気密性を有するリード線ユニットを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために、種々検討を重ねた結果、パッキングを使用せず、シール部材とリード線被覆とを直接融着させることを着想し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、リード線の端部を耐熱性シール部材に挿通してなるリード線ユニットにおいて、該耐熱性シール部材の少なくとも一部を金型に入れて加熱圧縮することにより、該耐熱性シール部材と該リード線の耐熱性絶縁被覆とを融着させたことを特徴とするリード線ユニットである。
【0007】
【作用】
本発明のリード線ユニットでは、耐熱性シール部材とリード線の耐熱性絶縁被覆との間にパッキングを介在させることなく、直接融着させているので、高温下などの苛酷な条件下で長期間使用しても、パッキングの熱劣化、腐蝕に起因する問題が発生する余地はまったくなく、耐久性のある防水性、気密性を有するリード線ユニットが得られる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のリード線ユニットの一例を示す斜視図であり、耐熱性樹脂からなるシール部材(ブッシュ)1には、その長さ方向に導通孔2が穿設されており、該導通孔2に耐熱性樹脂からなる絶縁被覆を有するリード線3が挿通されている。該シール部材1の一部1aは、加熱圧縮され、図2に断面図で示すように、リード線3の導体3aを被覆している耐熱性樹脂絶縁被覆3bと融着し、シール部材1とリード線3との間を完全にシールしている。
【0009】
本発明において、シール部材1は、耐熱性樹脂で形成されており、通常融点が200℃以上の耐熱性樹脂が用いられる。その代表例としては、フッ素樹脂を挙げることができ、ポリテトラフルオロエチレン、特に、ポリテトラフルオロエチレンにおいては、変成PTFE、Copolymer TYPEが望ましい。テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが例示される。
【0010】
また、リード線3の耐熱性絶縁被覆3bにも、前記シール部材1に用いた耐熱性樹脂と同様の樹脂を用いることができ、特にフッ素樹脂を用いることが好ましい。良好な融着状態を得るうえで、シール部材1とリード線3の絶縁被覆3bとは、同じ樹脂を用いるのが望ましい。
【0011】
本発明のリード線ユニットは、例えば次のようにして製造することができる。まず、長さ方向に、リード線3を挿通するための導通孔2を有する円筒状の耐熱性樹脂製シール部材1を用意し、該導通孔2内にリード線3を挿通する。この場合、導通孔2は、その内径がリード線3の外径よりも若干大きくなるように形成しておく。
【0012】
導通孔2内にリード線3を挿通した状態で、円筒状シール部材1の一部1aを金型に入れて加熱圧縮する。この場合、該円筒状シール部材1の加熱圧縮部1aを、金型温度よりも20〜30℃低い温度に予熱しておく。金型温度は、300〜370℃、加圧圧力は5〜15Kg/cm2が適当であり、通常、元の体積の85〜95%まで圧縮する。この場合、耐熱性シール部材の少なくとも一部とリード線の双方を高周波により加熱(誘電加熱)してもよい。
【0013】
次いで、室温まで3〜20分程度かけて冷却する。冷却は自然冷却が好ましく、急冷すると歪みによる成型不良が発生することがある。
【0014】
本発明のリード線ユニットを製造するに際しては、シール部材1とリード線3の絶縁被覆3bとの間に耐熱性のバインダ樹脂を介在させておくと、融着がより完全に行われ、融着強度が向上するので好ましい。バインダ樹脂としては、その融点がシール部材1を構成する樹脂の融点〜該融点-20℃であり、シール部材1を構成する樹脂と同一系統の樹脂、従ってフッ素系の樹脂が好ましく用いられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンをシール部材1及びリード線3の絶縁被覆3bに使用する場合は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の粉末を絶縁被覆3b表面に付着させるか、あるいはシール部材1の導通孔2内に入れておく。
【0015】
かくして得られたリード線ユニットは、図1及び図2に示すように、円筒状シール部材1の一部1aが加熱圧縮され、シール部材1とリード線3の絶縁被覆3bとが融着、シールされた構造となる。
【0016】
なお、本発明のリード線ユニットにおいて、シール部材1の形状リード線の本数などは、図示したものに限定されるものではなく、目的に応じて、変更することができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明のリード線ユニットによれば、高温下(例えば200℃以上)などの苛酷な条件下で長期間使用しても、放水性、気密性が損なわれることがなく、塩害、浸水などを防止することができ、また、パッキング交換などの手間もかからない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のリード線ユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】
本発明のリード線ユニットのA-A線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 耐熱性シール部材
1a 圧縮部
3 リード線
3b 耐熱性絶縁被覆
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-04-27 
出願番号 特願平4-193480
審決分類 P 1 651・ 16- ZA (H01B)
P 1 651・ 121- ZA (H01B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 結城 佐織天野 斉  
特許庁審判長 奥井 正樹
特許庁審判官 吉水 純子
綿谷 晶廣
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3369596号(P3369596)
権利者 株式会社アイワ 日星電気株式会社
発明の名称 リード線ユニット  

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