• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H02K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H02K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H02K
管理番号 1102866
異議申立番号 異議2003-72727  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-10 
確定日 2004-08-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3406142号「電動アクチュエータ」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3406142号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続きの経緯

特許出願 平成 8年 1月 9日
特許権設定登録 平成15年 3月 7日
特許異議申立て(申立人:関由美、請求項1、2、3に係る特許に対して)
平成15年11月10日
取消理由通知 平成16年 3月 3日

第2.本件発明
特許第3406142号の請求項1ないし3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである(以下、本件発明1ないし3という。)。

【請求項1】回転運動を生じる駆動手段と、この回転運動を直線運動に変換する運動変換手段と、前記運動変換手段とこの運動変換手段により変換された直線運動を出力する出力手段とを外部から加わる荷重を分散させて駆動連結させる駆動力連結手段と、この駆動力連結手段と前記運動変換手段との途中に、前記出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段を配置したことを特徴とする電動アクチュエータ。

【請求項2】前記駆動力連結手段は、内側に運動変換手段のねじ軸と螺合する第1のねじ部を有し、外側には出力手段となる駆動ロッドの開口端内側に設けたねじ部の全域と螺合する第2のねじ部を備え、前記外側の第2のねじ部の端部には、平坦状の係止部を所定数凹設したナットからなり、このナットの各係止部と対応して出力手段となる駆動ロッドの開口端に係止片を形成し、前記ナットの第1のねじ部に運動変換手段のねじ軸を、第2のねじ部には前記駆動ロッドをそれぞれ螺合し、更に、前記駆動ロッドの係止片をナット外周の係止部に嵌合・止着して、運動変換手段と出力手段とを駆動可能に連結したことを特徴とする請求項1記載の電動アクチュエータ。

【請求項3】前記駆動力制御手段は、出力手段に加えられる荷重によって前記出力手段が押圧される方向、あるいは、出力手段が引張られる方向に、前記出力手段を制動力を付与しつつ進退できるように配置したことを特徴とする請求項1記載の電動アクチュエータ。

第3.特許異議申立てについての判断

1.申立の理由の概要

(1)申立人関由美は、証拠として甲第1〜3、5〜9号証を提示して、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜3、5〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許法第113条第2号に該当するので取消されるべきものであり、

(2)また、甲第3号証を提示して、本件請求項1、3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができず、特許法第113条第2号に該当するので取消されるべきものであり、

(3)また、甲第4号証を提示して、本件請求項1、3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、特許法第113条第2号に該当するので取消されるべきものである。

との理由で、結局本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべきと主張している。

2.当審の判断

(1)取消理由通知書について
当審が平成16年3月3日付けで通知した取消理由通知書にて引用した刊行物及び先願明細書は、以下のとおりである。
刊行物1:特開平7-332454号公報(申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:米国特許第4137784号明細書(申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-294457号公報(申立人の提出した甲第3号証)
刊行物4:実願平4-84340号(実開平6-41928号)のCD?ROM(申立人の提出した甲第7号証)
刊行物5:実願平3-87421号(実開平5-30530号)のCD?ROM(申立人の提出した甲第8号証)
先願明細書:特願平6-200094号(特開平8-42657号公報、申立人の提出した甲第4号証)の願書に最初に添付した明細書及び図面

また取消し理由の概要は、(1)本件の請求項1ないし3に係る発明は、上記刊行物1ないし5記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(2)本件の請求項1に係る発明は、上記刊行物3に記載された発明である。よって、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。(3)本件の請求項1ないし3に係る発明は、上記先願明細書に記載された発明と同一である。よって、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるというものである。

(2)特許法第29条第2項の規定に適合しているかどうかについて

ア.刊行物
(ア)刊行物1:特開平7-332454号公報(申立人の提出した甲第1号証)

A.刊行物1には、以下の記載がある。
(a)「【産業上の利用分野】 本発明は、ねじ軸にねじ込まれたナットに固定された出力軸がねじ軸の回転によってハウジングに対し進退動する直線作動機において、出力軸に軸方向の外力が加わったとき、ねじ軸の回転を防止するための装置に関する。」(段落【0001】)

(b)「【実施例】 以下本発明の実施例を図1乃至図3に基づいて説明する。直線作動機30(図1参照)は、駆動モータ31によって正逆転するボールねじ軸32上のボールナット33の移動によってボールナット33に取付けられた出力軸34がハウジング35の外筒36を直線的に進退動するようになっている。 出力軸34の先端には、例えば、開閉装置(図示省略)の開閉体が設けられている。」(段落【0016】)

(c)「次に動作を説明する。出力軸34(図1参照)に矢印E方向の力が加わると、ボールナット33を介してボールねじ軸32に同方向の力が加わる。ボールねじ軸32(図2参照)には矢印F方向に回転力が発生する。・・・コイルスプリング50は、押圧力受け回転体42、引張力受け回転体43に装着されているだけであって固着されていないため、摩擦によって押圧力受け回転体42の回転を阻止する。押圧力受け回転体42は、摩擦によって、回転止めされるか、コイルスプリング50に対してスリップする。この結果、軸上押圧段部44を介して押圧力受け回転体42に圧接されているボールねじ軸32の回転が防止される。コイルスプリング50の締め込まれた状態は、駆動モータ31を矢印Fと反対方向にボールねじ軸32を回転させることによって解除される。」(段落【0024】-【0025】)

(d)「次に図1に示すように、ボールねじ軸32に矢印G方向の引張力が加わった場合の動作を説明する。出力軸34に矢印G方向の力が加わると、ボールナット33を介してボールねじ軸32に同方向の力が加わる。ボールねじ軸32は軸上牽引部47と一体に同方向に移動するとともに、ボールねじ軸32には矢印H(図1参照)方向の回転力が発生する。軸上牽引部47(図3参照)は、・・・コイルスプリング50は、押圧力受け回転体42、引張力受け回転体43に装着されているだけであって固着されていないため、摩擦によって引張力受け回転体43の回転を阻止する。引張力受け回転体43は、摩擦によって、回転止めされるか、コイルスプリングに対してスリップする。この結果、ボールねじ軸32の回転が防止される。コイルスプリング50の締め込まれた状態は駆動モータ31を矢印H方向とは反対方向にボールねじ軸32を回転させることによって解除される。」(段落【0027】-【0030】)

B.また、刊行物1において、上記記載及び図1ないし3に記載された事項、並びに技術常識を考慮すると以下のことが言える。

ボールナット33と出力軸34が結合されていないとすれば、直線作動機としての機能を奏しえないものであるから、何らかの手段でボールナット33と出力軸34が結合されていることは明らかである。
また駆動モータ31の出力が回転運動であることは自明であり、該回転運動を直線作動機の出力軸34の運動、すなわち直線運動へ変換していることも明らかである。
また、外力により出力軸34に押圧力または引張力が加わった場合、上記A(c)(d)の記載によれば、ボールねじ軸回転防止装置10における押圧力受け回転体42または引張力受け回転体43は、コイルスプリング50が当該回転体42、43に装着されているだけで固着されていないため、摩擦によって、回転止めされるか、コイルスプリングに対してスリップするものである。したがって出力軸34に押圧力または引張力が加わった場合に、ボールねじ軸32及び出力軸34の駆動力は、摩擦力による制限を受け、出力軸34自体は進退が止まるか、または制限を受けつつ進退可能であることは明らかである。

C.以上から、刊行物1には次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「回転運動を生じる駆動モータ31と、この回転運動を直線運動に変換する変換手段と、前記変換手段とこの変換手段により変換された直線運動を出力する出力軸34とを駆動連結する手段と、この駆動連結する手段と前記変換手段との途中に、前記出力軸34の駆動力を制限するボールねじ軸回転防止装置10を配置した直線作動機。」(以下「刊行物1記載の第1発明」という)
「ボールねじ軸回転防止装置10は、出力軸に加えられる外力によって前記出力軸34が押圧される方向、あるいは出力軸34が引張られる方向に、前記出力軸34を摩擦力により制限しつつ進退可能であるように配置した第1発明の直線作動機。」(以下「刊行物1記載の第2発明」という)

(イ)刊行物2:米国特許第4137784号明細書(申立人の提出した甲第2号証)

A.刊行物2には、以下の記載がある。
(a)「Fig1は、アクチュエーターの主なコンポーネントの相互関係を示す。リードスクリュー12は、仮想的に示された、モータプーリー18とリードスクリュー20のまわりで適合するベルト16によって伝達される回転運動をさせるモータ14により駆動される。」〔FIG.1 shows the inter-relationship of the major components of the actuator. Lead Screw 12 is driven by motor 14, shown in phantom, the rotary motion of which is transmitted by belt 16 which fits around motor pulley 18 and lead screw pulley 20.(p4. 45-49)〕

(b)「ドライブナット30、それは、商標DelrinというE.I.Dupont de Nemours and Companyによって製造された潤滑ポリアセタール樹脂のようなベアリングに適した性質のプラスチックを軸受けとして好ましくは作り上げられており、リードスクリュー12の上にねじ込まれている。ドライブナット30は比較的大きな直径であるシリンダ部32と小さな直径であるシリンダ部34を備えている。部分32の周囲は多くの刻み目36を備え、好ましくは4つである。部分34はその外周にねじが切られている。
以下ピストンとして引用されている、移動可能なインナーシリンダー40は、内部両端にねじが切られた中空のステンレス鋼チューブ(直径1インチのタイプ)である。一端はドライブナット30の部分34の上にねじ込まれており;他端は荷重を受けるアタッチメントプラグ44にねじ込まれている。荷重アタッチメントプラグ44はU字型の鍵とその他同種のもののような様々な荷重アタッチメント装置に適合することができるスタッド46を最後にねじ形成されている。ピストン40はリードスクリュー12を囲んでいる。」〔Drive nut 30, preferably fabricated out of bearing quality plastic such as lubricated polyacetal resin manufactured by the E.I. Dupont de Nemours nad Company under the tarademark Delrin, is theraded onto lead screw 12. Drive nut 30 has a relatively large diameter cylindrical portion 32 and a smaller diameter cylindrical portion 34. The periphery of portion 32 has a plurality of notches 36, preferably four in number. Portion 34 is theraded on its outside.
Movable inner cylinder 40, hereinafter referred to as "piston", is a hollow stainless steel tube (typically of 1-inch diameter) threaded internally at both its ends. One end is theraded onto portion 34 of drive nut 30; the other threaded end receives load attachment plug 44. Load attachment plug 44 terninates in a theraded stud 46 capable of being fitted to a variety of load attachment devices such as clevises and the like. Piston 40 surrounds lead screw 12.(p5. 21-38)

B.また、刊行物2において、上記記載及び図1に記載された事項、並びに技術常識を考慮すると以下のことが言える。

ドライブナット33とインナーシリンダー40は、ドライブナット33上にインナーシリンダーをねじ込むことで結合されているが、アクチュエータを駆動・使用している際、ねじ込みが緩んでしまう程度の結合状態であるとすれば、アクチュエータとしての機能を奏しえないものであるから、当該結合は、駆動・使用に耐えうる程度にドライブナット33とインナーシリンダー40とが固定された状態であることは明らかである。
また、モータ14の出力が回転運動であることは自明であり、該回転運動をアクチュエータの駆動力として出力するインナーシリンダー40の運動、すなわち直線運動へ変換していることも明らかである。

C.以上から、刊行物2には次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「アクチュエータにおいて、駆動力連結手段は、内側にリードスクリュー22のねじ軸と螺合する第1のねじ部を有し、外側には出力手段となるリードスクリュー22の開口端内側に設けたねじ部の全域と螺合する第2のねじ部を備えたドライブナット33からなり、前記ドライブナット33の第1のねじ部にリードスクリュー12のねじ軸を、第2のねじ部には前記インナーシリンダー40をそれぞれ螺合し、第2のねじ部とインナーシリンダー40とは駆動に耐えうる程度に固定され、回転運動を直線運動へ変換する変換手段とインナーシリンダー40とを駆動可能に連結したものであるアクチュエータ。」

(ウ)刊行物4:実願平4-84340号(実開平6-41928号)のCD-ROM(申立人の提出した甲第7号証)には、以下の記載がある。

(a)「【産業上の利用分野】 本考案は、ナットをねじ軸に回り止めするためのナットカシメ工具に関するものである。」(段落【0001】)
(b)「【実施例】 以下本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1において、10はねじ軸(ボルト)であり、その端部にはセンタ穴9と、図2で示すように、溝8が外周の複数箇所に設けられている。7は前記ねじ軸10に螺合されたナットであり、その端面には変形可能な筒部材7aが形成されている。」(段落【0008】)
(c)「その後、ハンマーによって軸部材1の後端の叩打面11を叩くことにより、軸部材1はセンタ軸2と相対移動して瞬間的に前進する。これにより、テーパ突起6はナット7の円筒部7aを外周から絞り込むように押圧変形させ、図2で示すように、複数個所の変形部7bがねじ軸10の複数箇所の溝8内に係合して一挙にカシメ止めされる。」(段落【0014】)

(エ)刊行物5:実願平3-87421号(実開平5-30530号)のCD-ROM(申立人の提出した甲第8号証)には、以下の記載がある。

(a)「【産業上の利用分野】
この考案は弛み止めナットに係り、特にシャフトに螺合すべく内側面が螺刻されているとともに外縁部位が多角形状に形成された締付部とこのシャフトからナットが脱落することを防止するカシメ部とを有する弛み止めナットに関する。」(段落【0001】)
(b)「図1a〜図2bはこの考案の実施例を示すものである。図2bにおいて、2はナット、4は軸部である。この軸部4の端部部位は、雄ネジ部6が螺刻されている。
前記ナット2の内側面に前記雄ネジ部6に螺合する雌ネジ部である螺刻部8を設け、外縁部位に多角形状、例えば6角形状の締付部10を設ける。
また、前記ナット2から突出しないカシメ部12を現出させるべく前記締付部10と螺刻部8間のナットの一側(図1b、図2bにおいて左側)には、環状のカシメ用溝部14を設ける。
詳述すれば、ナット2の一側面の締付部10と螺刻部8間、例えば螺刻部8寄りにこの螺刻部8より大なる径であるとともに、前記締付部10より小なる径のカシメ用溝部14を設け、このカシメ用溝部14の内側にカシメ部12を現出させている。」(段落【0011】-【0014】)
(c)「軸部4の雄ネジ部6にナット2の螺刻部8を螺合し、図示しないベアリングを保持する。その後にカシメ部12を押圧してナットの弛みを阻止している。」(段落【0016】)

イ.対比・判断

(ア)本件発明1について
(A-1)
本件発明1と刊行物1記載の第1発明とを対比すると、後者の「駆動モータ31」「変換手段」「出力軸34」「駆動連結する手段」「直線作動機」は、それぞれ前者の「駆動手段」「運動変換手段」「出力手段」「駆動力連結手段」「電動アクチュエータ」に相当する。また、本件発明1の「駆動力制御手段」は、単に「出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段」と規定されているのみで、どのような条件でどのような制御を行うのか具体的限定はなく、ある部材との摩擦によって回転を止めたり、部材上をスリップさせて駆動力を制限するものを含む記載である。故に後者の「ボールねじ軸回転防止装置10」は、前者の「駆動力制御手段」に相当する。

したがって、両者は
[一致点]
「回転運動を生じる駆動手段と、この回転運動を直線運動に変換する運動変換手段と、前記運動変換手段とこの運動変換手段により変換された直線運動を出力する出力手段と駆動連結させる駆動力連結手段と、この駆動力連結手段と前記運動変換手段との途中に、前記出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段を配置したことを特徴とする電動アクチュエータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者の「駆動連結手段」は運動変換手段と出力手段とを外部から加わる荷重を分散させて駆動連結させるのに対し、後者は外部から加わる荷重を分散させるための具体的手段の記載はない点。

(A-2)
上記相違点1について検討する。
本件明細書の段落【0015】-【0016】には「・・・ナット自体は、その外周全域に設けたねじ部によって駆動ロッドに螺着されている関係上、前記駆動ロッドに加えられる操作対象物の荷重は、実質的にナットと駆動ロッドとの螺合部に加えられることになる。この結果、前記ナットはその外周全域に形成したねじ部によって操作対象物の荷重を受け止めることになり、即ち、操作対象物の荷重をナット全体に分散して受け止めることができるので、・・・」、段落【0031】には「・・・前記の荷重が螺合部21,20に伝達されると、螺合部21,20はナット18の外周において、その軸方向の全域に形成されているため、前記駆動ロッド13に加わる荷重は、ナット18との螺合部21,20において均等に分散されて、部分的に応力の集中を受けることなく良好に受け止めることができる。」との記載がある。これら記載によれば、操作対象物の荷重を分散して受け止められるという作用効果は、ナット外周全域に形成したねじ部と駆動ロッドとを螺着する構成を採用することにより当然奏する作用効果である。
そして刊行物2には、ナット外周のねじ部とインナーシリンダー(本件発明1の「駆動ロッド」に相当)の内側にもうけたねじ部とがナット外周の全域にわたって螺合する構成が記載されており、この構成によれば本件明細書の従来の技術の欄に記載されているような、ナットと駆動ロッドとがナット外周の一部だけで連結されているアクチュエータに比べて、当該連結部分において外部から加わる荷重を分散させることができるという作用効果を奏することは明らかである。
そして刊行物1記載の第1発明も刊行物2記載の発明ともに、回転運動を直線運動に変換するアクチュエータに係るものであり、同一技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の第1発明に刊行物2記載の発明を適用できないとする阻害要因は認められない。

したがって本件発明1は、刊行物1記載の第1発明及び刊行物2記載の発明から、当業者が容易になし得たものと認められる。
また、本件発明1を全体として検討しても、刊行物記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

(A-3)
なお、特許権者は、特許異議意見書の請求項1に係る部分において、刊行物1記載のものは荷重を分散させる技術的手段について全く記載がない旨主張するが、その点は前記一致点・相違点のところで認定したとおりである。
また、特許権者は、刊行物2のものは螺合状態を固定する手段は全く示されていない旨主張し、一方本件発明は駆動ロッドとナットとは螺合した後具体的な固定手段により一体的に固定されており、また両部材は回転不能である旨主張している。しかしながら本件発明1は、「外部から加わる荷重を分散させて駆動連結させる駆動連結手段」との記載があるのみで、螺合した後の具体的固定手段については全く規定されておらず、特許権者のこの点の主張は特許請求の範囲第1項の記載に基づくものではない。

(イ)本件発明2について
(A-1)
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の「駆動連結手段」をより具体的に規定したものである。
本件発明2と刊行物1記載の第1発明とを対比すると、両者は前記(ア)本件発明1について、の一致点、及び「駆動連結手段は、運動変換手段とを駆動可能に連結した」という一致点を有し、前記(ア)の相違点1の他、以下に示す相違点2を有するものと認められる。

[相違点2]
本件発明2の「駆動力連結手段」は、「内側に運動変換手段のねじ軸と螺合する第1のねじ部を有し、外側には出力手段となる駆動ロッドの開口端内側に設けたねじ部の全域と螺合する第2のねじ部を備え、前記外側の第2のねじ部の端部には、平坦状の係止部を所定数凹設したナットからなり、このナットの各係止部と対応して出力手段となる駆動ロッドの開口端に係止片を形成し、前記ナットの第1のねじ部に運動変換手段のねじ軸を、第2のねじ部には前記駆動ロッドをそれぞれ螺合し、更に、前記駆動ロッドの係止片をナット外周の係止部に嵌合・止着し」との構成を有するのに対し、刊行物1記載の第1発明における、「駆動力連結手段」の具体的構成が不明である点。

(A-2)
上記相違点1は(ア)本件発明1について、における同旨の理由により当業者が容易になし得ることと認められる。

(A-3)
上記相違点2について検討する。
刊行物2には、ナット外周のねじ部と駆動ロッドの内側に設けたねじ部とがナット外周にわたって螺合する構成が記載されていることは前述のとおりである。
刊行物2には、ナット外周と駆動ロッドとの螺合部において、回り止めや緩み止めに相当するような具体的手段の記載はないが、例えば刊行物4には、ナットの一部をねじ軸溝に係合してカシメ止めすることが、刊行物5には、ナットのカシメ部を押圧してナットの緩みを防止することが記載されており、故にそれぞれネジ部が形成された2つの部材を螺合して螺着するものにおいて、2つの部材の相対的な回り止めや緩み止めを防止するために一方の部材の一部分をカシメなどにより変形させて、他方の部材に係合させること自体は従来周知の技術である。さらにカシメなどの係合部分を円筒部材である軸上に加工する場合、特段の事情がなければ、係合部分の面を加工し易い平坦状とすることは、当業者が通常採用する加工法に過ぎないものである。
また、一般的に回転運動を直線運動に変換するアクチュエータにおいて、アクチュエータを駆動・使用している際に、駆動力の連結部分が緩んでしまう程度の結合状態であるとすれば、アクチュエータとしての機能を奏しえないことは自明な事項であるから、当該結合を駆動・使用に耐えうる程度の固定状態とすることは当業者が当然採用する構成である。
そして刊行物2記載の発明のような駆動力の連結分をねじ込みより螺着しているものにおいて、ねじ込みのみの連結とするか、ねじ込みによる連結のみならず、より一層強固に固着すべく回り止めや緩み止めのための手段を講じるかどうかは、アクチュエータの利用分野、駆動ロッドやナットなどの大きさ、形状、材質などにより当業者が適宜決定すべき選択事項に過ぎない。
したがって、刊行物1記載の第1発明に刊行物2記載の発明を適用する際、必要に応じて上記周知の技術から把握される技術的事項を参酌し、上記相違点2に係る構成とすることに格別の困難性は認められない。

したがって本件発明2は、刊行物1記載の第1発明、刊行物2記載の発明及び上記従来周知の技術に基づき、当業者が容易になし得たものと認められる。
また、本件発明2を全体として検討しても、刊行物1、2記載の発明および上記従来周知の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

(ウ)本件発明3について
(A-1)
本件発明3は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の「駆動力制御手段」をより具体的に規定したものである。
本件発明3と刊行物1記載の第2発明とを対比すると、後者の「外力」は前者の「荷重」に相当する。また、後者の「ボールねじ軸回転防止装置10」は、前者の「駆動力制御手段」に相当することは、上記(ア)本件発明1について、で述べたとおりであるから、両者は前記(ア)本件発明1について、の一致点、及び「駆動力制御手段は、出力手段に加えられる荷重によって前記出力手段が押圧される方向、あるいは、出力手段が引張られる方向に、前記出力手段を制動力を付与しつつ進退できるように配置した電動アクチュエータ」という一致点を有し、前記(ア)の相違点1以外の相違点はない。

(A-2)
上記相違点1について検討すると、この点は(ア)本件発明1について、における同旨の理由により、当業者が容易になし得たものである。

(A-3)
したがって本件発明3は、刊行物1記載の第2発明及び刊行物2記載の発明に基づき、当業者が容易になし得たものと認められる。
また、本件発明3を全体として検討しても、刊行物記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

ウ.むすび
よって、本件発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)特許法第29条第1項第3号の規定に適合しているかどうかについて

ア.刊行物3:特開平6-294457号公報(申立人の提出した甲第3号証)

(ア)刊行物3には、以下の記載がある。

(a)「【産業上の利用分野】 本発明は、被動スピンドルおよびナット、特に、アクチュエータの押棒へ結合されるナットおよび循環ボールスピンドルを有する線形アクチュエータに関する。」(段落【0001】)

(b)「図1では、協働するナット4と、安全ナット6と、樹脂駆動ワッシャー8とを有する通常の循環ボールスピンドル2を備える線形アクチュエータが示される。循環ボールスピンドルは、歯車列14を経て可逆電動機16によって駆動される。該スピンドルの回転により、循環ボールナットは、該スピンドルの回転方向に依存して該スピンドル上を前後に移動する。アクチュエータの押棒18は、循環ボールナット4に装着される。」(段落【0004】)

(c)「アクチュエータが修理した良い状態にあるとき、・・・押棒による外方への押圧の際、循環ボールナットは、押棒上の荷重を支持し、一方、安全ナットは、負荷されず、戻り運動の際、安全ナットは、同様に負荷されない。
循環ボールナットが摩耗したとき、即ち、スピンドルからの力がボールを経て該ナットへも早や伝達され得ないとき、安全ナットは、ねじ山に係合して荷重を引き受ける。・・・このとき、安全ナットは、スピンドルとの係合によって負荷される。この負荷の際、スピンドルとナットとの間の摩擦が非常に大きいので、ナットは、スピンドルの回転に加わり、これにより、駆動ワッシャーの突起が破断し、これにより、2つのナットの間の結合は、破断される。荷重と、その結果として生じる摩擦とによってスピンドルに直ちに固定される安全ナットは、軸受として作用する樹脂ワッシャー上を摺動する際にその回転において参加するのに過ぎない。押圧するためのアクチュエータの作動の一層の試みは、結果のないままである。・・・該運動は、スピンドルとの安全ナットの係合が緩められるためにうまく行く。外方運動における一層の試みは、前の様に成功しない。押棒が完全に引き込められていれば、一層の運動は、可能ではない。この構造により、簡単で効果的な装置は、残りの構造に過負荷を加えることなく、または荷重への損傷を生じさせることなく、アクチュエータを修理する必要性に対する可視の徴候を与える。」(段落【0006】-【0007】)

(d)図1、2の記載から、循環ボールナット4の押棒18側の外周側にはネジ山が形成されており、押棒18の内側と循環ボールナット4とは、当該外周側にわたって係合されていることが把握される。

(イ)また、以上の記載および図1、2並びに技術常識を参酌すると、刊行物3において以下のことは明らかである。
アクチュエータを駆動・使用している際に係合状態が緩んでしまう程度のものであるとすれば、アクチュエータとしての機能を奏しえないものであるから、循環ボールナット4と押棒18の係合は、駆動・使用に耐えうる程度に連結・固定された状態であることは明らかである。

(ウ)以上から、刊行物3には以下の発明が記載されていると認められる。
「回転運動を生じる可逆電動機16と、この回転運動を線形運動に変換する変換手段と、前記変換手段とこの変換手段により変換された線形運動を出力する押棒18とを駆動連結する循環ボールナット4と、この循環ボールナット4と前記変換手段との途中に、安全ナット6及び樹脂駆動ワッシャー8を配置し、安全ナット6と樹脂駆動ワッシャー8との結合が破断されたとき前記押棒18の引き込みは許容するが、延ばすことはできないようにした線形アクチュエータ。」

イ.対比・判断

(ア)本件発明1と刊行物3記載の発明とを対比すると、後者の「可逆電動機16」「線形運動」「変換手段」「押棒18」「循環ボールナット4」「線形アクチュエータ」は、それぞれ前者の「駆動手段」「直線運動」「運動変換手段」「出力手段」「駆動力連結手段」「電動アクチュエータ」に相当する。また、本件発明1の「駆動力制御手段」は、単に「出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段」と規定されているのみで、どのような条件でどのような制御を行うのか具体的限定はなく、異常時に出力手段が延びることを不可とし、引き込む方向は許容するという制御態様を含む記載である。故に後者の「安全ナット6及び樹脂駆動ワッシャー8」は、前者の「駆動力制御手段」に相当し、また後者の「安全ナット6と樹脂駆動ワッシャー8との結合が破断されたとき前記押棒18の引き込みは許容するが、延ばすことはできないようにした」は、前者の「出力手段の駆動力を制御する」に相当する。

したがって、両者は
[一致点]
「回転運動を生じる駆動手段と、この回転運動を直線運動に変換する運動変換手段と、前記運動変換手段とこの運動変換手段により変換された直線運動を出力する出力手段とを駆動連結させる駆動力連結手段と、この駆動力連結手段と前記運動変換手段との途中に、前記出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段を配置したことを特徴とする電動アクチュエータ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点4]
本件発明1の「駆動連結手段」が運動変換手段と出力手段とを外部から加わる荷重を分散させて連結するものであるのに対し、先願明細書には、外部から加わる荷重を分散させるとの直接的記載がない点。

(イ)上記相違点4について検討する。
前述のとおり、外部から加わる荷重を分散して受け止められるということは、ナット外周全域に形成したねじ部と駆動ロッドとを螺着する構成を採用することにより当然奏する作用効果である。そして、刊行物3記載の発明のような構成を採用すれば、本件明細書の従来の技術の欄に記載されているような、ナットと駆動ロッドとがナット外周の一部だけで連結されているアクチュエータに比べて、当該連結部分において外部から加わる荷重を分散させることができることは明らかであり、故に、この点において実質的差異は認められない。

ウ.むすび
したがって本件発明1は、刊行物3記載の発明であると認められ、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(3)特許法第29条の2の規定に適合しているかどうかについて

ア.先願明細書:特願平6-200094号(特開平8-42657号公報、申立人の提出した甲第4号証)の願書に最初に添付した明細書及び図面

(ア)先願明細書には、以下の記載がある。
(a)「【産業上の利用分野】 本発明は、アクチュエータに関し、特に、逆転防止機構を備えた電動ねじ式アクチュエータに係り、例えば、重量のある負荷を往復直線運動させるのに利用して有効なものに関する。」(段落【0001】)

(b)「本実施例において、本発明に係るアクチュエータは、セルフロック機能を備えていない代わりに、ローラ方式のワンウエイクラッチおよびブレーキワッシャを備えている。本実施例に係るアクチュエータ10は、樹脂が用いられて一体的に成形されたハウジング11を備えており、このハウジング11には正逆回転可能なモータ12が装着されたモータ装着部13が開設されているとともに、送りねじ軸としてのシャフト15が挿通された挿通孔14が開設されている。シャフト15の一端側(以下、前側とする。)には送り用の雄ねじ部16が形成されており、この雄ねじ部16には雌ねじ部17が螺合された雌ねじ部材としてのナット18が進退自在に装着されている。また、ハウジング11には支持筒19がナット18の外側においてシャフト15と同心的に配されて、ねじ結合部20によって固定されている。ナット18はこの支持筒19に筒心方向に摺動可能に嵌入されている。
ナット18には移動筒22がシャフト15および支持筒19と同心に配されてねじ結合部23によって連結されており、移動筒22の前端にはこのアクチュエータ10を負荷(図示せず)に連結するための連結具24が螺着されている。」(段落【0010】-【0011】)

(c)「詳細な説明および図示は省略するが、ローラ方式のワンウエイクラッチ30は円筒形状に形成されたクラッチケース・・・すなわち、ワンウエイクラッチ30がモータ12の駆動力によって逆回転される場合には、ブレーキワッシャ31とワンウエイクラッチ30との押接面間で滑りが発生し、他方、ワンウエイクラッチ30がナット18側の駆動力によって逆転される場合には、その押接面間で滑りが発生しないように設定されている。」(段落【0013】-【0014】)

(d)「負荷が所定の位置まで持ち上げられると、・・・したがって、負荷はアクチュエータ10によって持ち上げられた状態を維持することができる。
その後、負荷を下げるためにモータ12が逆方向に回転運転されると、・・・ワンウエイクラッチ30のケース30aはブレーキワッシャ31に押接した状態になり、ブレーキワッシャ31はハウジング11に固定された状態になっているため、回転することができない状態になる。しかし、シャフト15をモータ12の駆動力によって強制的に逆回転させようとするモータ側からの逆回転駆動力と負荷側逆回転作用力とは、ワンウエイクラッチ30のケース30aとブレーキワッシャ31との押接面間に作用する摩擦力による回り止め力を上回るため、ワンウエイクラッチ30のケース30aはブレーキワッシャ31との間で滑り回りする状態になる。その結果、シャフト15はワンウエイクラッチ30のケース30aと一緒に逆回転することができる。」(段落【0021】-【0023】)

以上の記載および図1、2を参酌すると、先願明細書には次のとおりの発明が記載されていると認められる。

「回転運動を生じるモータ12と、この回転運動を往復直線運動に変換する変換手段と、前記変換手段とこの変換手段により変換された往復直線運動を出力する移動筒22と、前記変換手段とこの変換手段により変換された往復直線運動を出力する移動筒22とをねじ結合部23により駆動連結させるナット18と、このナット18と前記変換手段との途中に、ワンウエイクラッチ30とブレーキワッシャ31を配置し、移動筒22に加えられる負荷側逆回転作用力によって移動筒22が押圧される方向に、移動筒22を制動力を付与しつつ移動筒22の移動を許容できるようにしたアクチュエータ。」

イ.対比・判断

(ア)本件発明1について
(A-1)
本件発明1と先願明細書記載の発明とを対比すると、後者の「モータ12」「往復直線運動」「変換手段」「移動筒22」「ナット18」「アクチュエータ」は、それぞれ前者の「駆動手段」「直線運動」「運動変換手段」「出力手段」「駆動力連結手段」「電動アクチュエータ」に相当する。また、後者の「ワンウエイクラッチ30とブレーキワッシャ31」は、「移動筒22に加えられる負荷側逆回転作用力によって移動筒22が押圧される方向に、移動筒22を制動力を付与しつつ移動筒22の移動を許容できるよう」にしていることから、前者の「駆動力制御手段」に相当する。

したがって、両者は
[一致点]
「回転運動を生じる駆動手段と、この回転運動を直線運動に変換する運動変換手段と、前記運動変換手段とこの運動変換手段により変換された直線運動を出力する出力手段とを駆動連結させる駆動力連結手段と、この駆動力連結手段と前記運動変換手段との途中に、前記出力手段の駆動力を制御する駆動力制御手段を配置したことを特徴とする電動アクチュエータ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点5]
本件発明1の「駆動連結手段」が運動変換手段と出力手段とを外部から加わる荷重を分散させて連結するものであるのに対し、先願明細書には、外部から加わる荷重を分散させるとの直接的記載がない点。

(A-2)上記相違点5について検討する。
前述のとおり、外部から加わる荷重を分散して受け止められるということは、ナット外周全域に形成したねじ部と駆動ロッドとを螺着する構成を採用することにより当然奏する作用効果である。そして、先願明細書記載の発明のような構成を採用すれば、本件明細書の従来の技術の欄に記載されているような、ナットと駆動ロッドとがナット外周の一部だけで連結されているアクチュエータに比べて、当該連結部分において外部から加わる荷重を分散させることができることは明らかであり、故に、この点において実質的差異は認められない。

(イ)本件発明3について
(A-1)
本件発明3は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の「駆動力制御手段」をより具体的に規定したものである。
本件発明3と先願明細書記載の発明とを比較すると、後者の「ワンウエイクラッチ30とブレーキワッシャ31」「移動筒22に加えられる負荷側逆回転作用力」「移動筒22の移動を許容できる」は、前者の「駆動力制御手段」「出力手段に加えられる荷重」「進退できる」に相当する。また後者の「移動筒22が押圧される方向」は、前者の選択的事項である「前記出力手段が押圧される方向、あるいは、出力手段が引張られる方向」のうち「出力手段が押圧される方向」に相当する。してみると、両者は上記(ア)本件発明1について、の一致点、及び「駆動力制御手段は、出力手段に加えられる荷重によって前記出力手段が押圧される方向に、前記出力手段を制動力を付与しつつ進退できるように配置した」という一致点を有し、上記(ア)の相違点5の以外の相違点は見当たらない。

(A-2)
上記相違点5について検討すると、上記(ア)本件発明1について、における同旨の理由により、この点において実質的差異は認められない。

ウ.むすび
したがって本件発明1及び3は、先願明細書記載の発明と同一であると認められ、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。


3.むすび
以上のとおりであるから、請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-06-16 
出願番号 特願平8-19443
審決分類 P 1 651・ 113- Z (H02K)
P 1 651・ 161- Z (H02K)
P 1 651・ 121- Z (H02K)
最終処分 取消  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 岩本 正義
安池 一貴
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3406142号(P3406142)
権利者 愛知電機株式会社
発明の名称 電動アクチュエータ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ