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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A01B
管理番号 1103522
審判番号 無効2003-35144  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-11 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-11 
確定日 2003-11-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2972534号発明「畦塗り機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2972534号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第一.手続の経緯
[1].本件特許第2972534号の発明(以下「本件発明」という)は、平成6年11月30日に出願され、平成11年8月27日に特許の設定登録がなされた。
[2].これに対して、平成15年4月11日に、株式会社ササキコーポレーションより、本件発明は、甲第3号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもので無効である旨、及び請求項1に記載された発明は、特許法第36条の規定に反するから無効である旨の審判が請求された。
[3].これに対して、被請求人である松山株式会社から、平成15年6月23日に、特許法第134の規定に基づく答弁書の提出と訂正請求がなされた。

第二.訂正の適否
[1].訂正の内容
訂正事項A.
特許請求の範囲の請求項1の記載を、「トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段と、を具備し、
前記ロータリー及び前記畦塗り体の不使用時には、前記機枠の後方部に前記可動機枠が配置されて固定されることを特徴とする畦塗り機。」と訂正する。

訂正事項B.
特許請求の範囲の請求項3を、「機枠は、その左右方向の中心部に左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸をクラッチを介して着脱自在に連結する前後方向の回転自在の入力連結軸を有することを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。」と訂正する。

訂正事項C.
特許請求の範囲の請求項4を、「ロック手段は、機枠の左右部に左右方向の一方側に回動した可動機枠をロックする一方のロックアーム及び左右方向の他方側に回動した可動機枠をロックする他方のロックアームを有し、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動することを特徴とする請求項3記載の畦塗り機。」と訂正する。

訂正事項D.
明細書段落【0006】の記載を、「【課題を解決するための手段】 請求項1記載の畦塗り機は、トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段と、を具備し、前記ロータリー及び前記畦塗り体の不使用時には、前記機枠の後方部に前記可動機砕が配置されて固定されたものである。」と訂正する。

訂正事項E
明細書段落【0008】の記載を、「請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、機枠は、その左右方向の中心部に左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸をクラッチを介して着脱自在に連結する前後方向の回転自在の入力連結軸を有するものである。」と訂正する。

訂正事項F
明細書段落【0009】の記載を、「請求項4記載の畦塗り機は、請求項3記載の畦塗り機において、ロック手段は、機枠の左右部に左右方向の一方側に回動した可動機枠をロックする一方のロックアーム及び左右方向の他方側に回動した可動機枠をロックする他方のロックアームを有し、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動するものである。」と訂正する。

[2].訂正要件充足性の検討
訂正事項Aは、特許請求の範囲の請求項1の減縮を目的として、可動機枠の不使用時における事項を限定するもので、当該事項は明細書の段落【0048】に記載されているから、当該訂正は特許請求の範囲の請求項1を減縮する訂正に該当する。
訂正事項Bは、請求項3が従属する請求項を、請求項2のみに従属させる訂正であるから、特許請求の範囲を減縮する訂正に該当する。
訂正事項Cは、請求項4が従属する請求項を、請求項3のみに従属させる訂正であるから、特許請求の範囲を減縮する訂正に該当する。
訂正事項D、訂正事項E、訂正事項Fは、訂正事項A、訂正事項B、訂正事項Cと各々整合を図る為の訂正に該当するものであるから明瞭でない記載の釈明の訂正に該当するものである。
そして、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

[3].訂正のまとめ
したがって、平成15年6月23日付の訂正は、平成6年改正法による改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定、及び同条第5項の規定により準用する平成6年改正法による改正前の特許法前第126条第2項の規定に適合するので当該訂正を認める。


第三.請求人の主張の要旨
[1].請求項1〜請求項4に係る本件発明は、甲第3号証、甲第4号証に記載される周知の技術に、甲第5号証〜甲第7号証に記載される慣用技術を設計変更程度に置き換えたに過ぎないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
[2].請求項1に係る発明は、可動機枠の入力軸に関する記載が無いので、可動機砕が回動されたとき、ロータリー、畦塗り体が如何に駆動されるか不明であるから、特許法第36条第6項第2号の規定を充足しないものである。
[3].したがって、請求項1〜請求項4に係る本件特許は、無効とされるべきものである。


第四.被請求人の主張
[1].甲第3〜7号証に記載された発明は、いずれも訂正後の本件請求項1に係わる発明の「ロータリー及び前記畦塗り体の不使用時には、前記機枠の後方部に前記可動機砕が配置されて固定される」との構成を備えていない。
そして、本件請求項1に係わる発明は、当該構成を備えることにより、本件明細書記載の格別の作用効果を奏するものであるから、甲号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件請求項2〜4に係わる発明は、本件請求項1に係わる発明に従属するものであるから、当然、甲号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
[2].本件請求項1に係わる発明は、特許請求の範囲の請求項1の記載から明らかなように、ロータリー、畦塗り体を回転させるための動力をトラクタから入力することを前提とするものではないから、特許法第36条の規定に違反しない。
[3].したがって、請求人の主張は誤りである。


第五.特許無効についての判断
[1].本件発明
前記「第二.訂正の適否」に記載したように平成15年6月23日付の訂正が認められるものであるから、本件特許第2972534号の請求項に記載された発明は、平成15年6月23日付訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのもの(以下「本件発明1〜4」という)である。

[2].第29条第2項の検討
(1).無効審判請求人が提出した甲号証の記載事項、及び周知事項
(A).実願平2-29545号(実開平3-122603号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第3号証、以下「刊行物A」という)記載事項。
(A-1).「〔産業上の利用分野〕本考案は、トラクタに牽引されて使用される整畦機に係り、泥土を掘り起こして旧畦に盛り上げ、この盛り上げた土を締め固める整畦機を水平方向反転可能に設け、トラクタが行き止まりになる畦の角隅部等においてトラクタを反転させてバックさせながら整畦作業を行えるようにしたものに関する。 」(第1頁第12〜19行)
(A-2).「〔考案が解決しようとする課題〕しかしながら、従来の整畦機は、これをトラクタにより牽引して整畦作業を行うときは、直線部の畦についてはこれに平行にトラクタを走行させながら整畦作業を行えるが、畦の角隅等のトラクタが行き止まりになるところでは、トラクタの長さと整畦機を連結する部分の長さ分だけ整畦できない所が生じる。この残った部分は手作業により行わなければならない不便があった。」(第2頁第11〜19行)
(A-3).「〔課題を解決するための手段〕本考案は、上記課題を解決するために、トラクタに連結自在の機枠に泥土を掘り起こして畦に盛り上げる土起こし手段と、この土起こし手段により盛り上げられた泥土を整える整畦板を有する整畦機において、整畦機をトラクタに対して水平方向回動可能にしたことを特徴とする整畦機を提供するものである。」(第2頁末行〜第3頁第7行)
(A-4).「〔作用〕整畦機を回動可能に設け、反転できるようにしたので、トラクタを反転させバックさせれば整畦機をその行き止まりの部分まで移動させて整畦作業を行える。」(第2頁第8〜12行)
(A-5).「すなわち、連結機構Bは、枠体1がその両側でトラクタのリンクa、a(図示省略)により回動自在に支持され、その中央がトラクタのリンクcにより回動自在に支持されて、これらにより上下回動自在に設けられている。」(第3頁第19〜第4頁第3行)
(A-6).「上記枠体1に整畦機Aの機枠2が第3図に示すように水平方向回転自在に支持されている。すなわち、第3図(イ)において、3、3’は枠体1の上下中央に突設されたアーム状の回転ベースで、その先端に貫通孔が形成され、これに顎部を有する中空軸3a、3’aが嵌合され、この中空軸が上記機枠2に固着されている。これにより、中空軸が上記回転ベースに対して回転可能となり、機枠2が回転可能となる。上記中空軸から後述の油圧ポンプの上部が突出されている。」(第4頁第4〜13行)」
(A-7).「ついで、トラクタを走行させて整畦機Aを移動させると、ロータ20は逆転動作し、畦の一部を削るとともに田圃の土を掘起こして旧畦に盛り上げる。これを畦叩き板26が叩き締め固める。」(第11頁第3〜7行)
(A-8).「マル1 整畦機ロック状態、作業可能状態 一方のロックアーム16は一方のロックピン17に係合し、レバー11は縦溝15a開口部に位置している。この状態で作業を行なう。」(第6頁第10〜13行)
(A-9).「マル5 整畦機反転完了、ロック完了 そして第5図(イ)のマル5の状態(第1図想像線図)にすると、他方のロックピン17’が他方のロックアーム16’を乗り越える。このときはレバー11が縦溝15aを後退し、フリー状態のためジョイントスプリング8によりスライドボス9が後退し、入力軸(機枠の両側に突出した他方の側)7に嵌合する。同時に他方のロックアーム16’が他方のロックピン17’に完全に係合し、ロックを完了する。このようにしてマル1の状態に戻る。これにより整畦機Aの反転後の作業状態となる。次に整畦機Aの構造は、入力軸7に減速機18が連結され、この減速機には電動軸19が連結され、この電動軸19にロータが取付けられ、上記入力軸の回転力が上記電動軸に上記減速機により減速かつ方向を変えられ、」(第7頁第13行〜第8頁第8行)
(A-10).「23は上記減速機18に連結されたクランクにより作動されるプランジャーポンプであり、シリンダ23a内をプランジャー23bが上下動し油を可撓性管24を介して畦叩き装置25に送出又はここから吸入している。・・・。上記ピストンロッドに畦の上面及び側面形状に適合した畦叩き板26が回動自在に取付けられ、」(第9頁第1〜末行)
(A-11).「上記連結機構Bには、整畦機の動力をトラクタの動力から分取し伝達する動力伝達機構Cが設けられている。すなわち、第4図に示すように、トラクタの動力取出軸(図示省略)とユニバーサルジョイントを介して連結されるジョイント軸4の他方の側にジョイントスプリング5を介してスライドボス6が嵌合され、このスライドボス6は整畦機Aの入力軸7に嵌合し、ジョイント軸4の回転力を入力軸7にスプラインにより伝える。」(第4頁第14行〜第5頁第2行)
(A-12).「マル2 整畦機ロック解除、反転準備 レバー11を縦溝15a及び横溝に沿って移動させ、切り欠aに係止させると、スライドアーム9によりジョイントスプリング5が前方に圧縮され、これにつれてスライドボス6が前方に移動して入力軸7から外れるとともに、ロックアーム16がロックピン17に半がかりの状態となる」(第6頁第14〜末行)
(A-13).してみると刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
すなわち、「従来の整畦作業においては、整畦機を牽引したトラクタが行き止まりになるところでは整畦できない部分が発生する欠点が存在し、当該欠点を解消するために、トラクタに、(i).枠体1、トラクタのリンク(a、a、c)から構成される連結機構Bに、(ii).土起こし手段と整畦板を有する整畦機をトラクタに対して水平方向に回動可能とした整畦機が支持され、さらに、整畦機の具体的構成として、(iii).整畦機Aの機枠2が、中空軸3a、3a’を回転軸として枠体1に回転可能に支持される構成、(iv).整畦機Aを回動位置に保持、又は回動するために、ロックアーム16,16’、ロックピン17、17’からなるロック手段、及びレバー11からなるロック解除手段、(v).トラクタから整畦機Aへの動力伝達機構として、機枠2の両側に突出した2つの入力軸7、ジョイント軸4、スライドボス等から構成される動力伝達機構C、(vi).トラクタから整畦機Aへの動力伝達、遮断は、レバー11のロック、ロック解除と、連動する構成」が記載されている。

(B).特開平6-22604号(請求人提出の甲第5号証、 以下「刊行物B」という)記載事項。
(B-1).「【0017】一方前記畦形成装置4は、図1、図3〜5に示す如く、第2の減速部10の右側の側面部に畦と直交する如く突設され且つ右方側から見て反時計回りに回転(図1において矢印F2方向に回転)する6角柱状の回転軸30(図5)に、図1に示す台形状の畦11を形成する回転具31を固設してなる。」(第4欄第13〜18行)
(B-2).「又図9は前記外側回転板39を省略して内側回転板36と回転体33を以て回転具31を構成した場合を示し、回転具の形態に応じた畦を形成することができる。」(第5欄第45〜48行)
(B-3).図9には、本件発明における畦塗り体と同様作用、同様形状の回転体33が示されている。

(C).周知事項
(C-1).(i).特開平4-281702号公報には、「また、左右の作業機を折り畳んだ状態での対土作業を行わない移動時等には、全体的に前後の重量バランスが大きく変化することがなく、したがって、安全に移動することができる農作業機を提供することを目的とするものである。」(第2欄第21〜25行)と記載され、(ii).実開平6-11405号公報に「(57)【要約】【目的】 作業部を水平方向後方に移動し、その後垂直方向に移動させることで、危険を回避し、オーバーハング量、後方荷重のバランスを適性とする。」(第1頁左欄)と記載され、(iii).実願昭60-93390号(実開昭62-1501号)のマイクロフィルムに「トラクターの移動時の路上走行や、納屋への格納が非常に困難となるのであるが、左右の単位耕耘装置を上方または後方への折り畳み可能とすることにより、路上走行可能な機体幅とすることが出来、また納屋へ格納する時にも場所を取らないのである。」(第7頁第10〜15行)と記載されている。
(C-2).以上のように、トラクターに連結される農作業機が、当該農作業機の移動時等の不使用時には、重量バランスを考慮してトラクタの後方に収納することは周知の事項である。

(2).引用発明と、本件発明との対比
(あ).構成の対応関係
(i).引用発明における「枠体1」は、トラクタに連結するリンク(a、a、c)を有し、その後方に上下方向の回転軸を取着するものであるから、本件発明の「トラクタに連結する3点連結部を有する機枠」に相当する。
(ii).引用発明における土起こし手段としての「ロータ」は、本件発明において、同様に整畦用の泥土を跳ね上げる「ロータリー」に相当する。
(iii).引用発明における「整畦板」は、畦を整畦する機能を持つ整畦物体である点において、本件発明の「畦塗り体」に相当する。
(iv).引用発明における「機枠2」は、ロータ、及び整畦板、すなわち整畦物体を有して中空軸3a,3’aを中心に回転するものであるから、本件発明において、回動中心軸を中心として回転する「可動機枠」に相当する。
(v).引用発明における「ロックアーム16,16’、ロックピン17,17’」は、整畦機を左右方向に回動して作業位置にロックするものであるから、本件発明における「ロック手段」に相当する。
(vi)引用発明における「減速機18」は、整畦機Aの機枠2に取付けられ、トラクタの出力を入力軸7を介して、ロータ、整畦板に対して回転駆動力を出力するものであり、しかも、減速機等の機器がケースで覆われることも周知であるから、本件発明における「ミッションを内蔵したミッションケース」に相当する。
(vii).引用発明において、機枠2の両側に突出した2つの「入力軸7」は、トラクタの出力を整畦機が左または右に配置された場合の駆動力の入力軸となるものであるから、本件発明の「第1、第2入力軸」に相当する。
(viii).引用発明における「伝動軸19」は、減速機18からの出力にて回転駆動される「ロータ20」を有するものであるから、本件発明において、ミッションからの出力によって回転駆動されるロータリーを有する「第1の伝動ケース」に相当する。
(iv).引用発明における「プランジャーポンプ23、可撓性管24」は、減速機18からの出力にて整畦する、整畦板26の畦叩き装置25に接続されるものであるから、ミッションからの出力により駆動される整畦物体を有する点において、本件発明おける、ミッションからの出力によって回転駆動される整畦体である畦塗り体を有する「第2の伝動ケース」に相当する。
(x).引用発明における「スライドボス6」、は、トラクタの動力出力軸と連結するジョイント軸4の回転力を整畦機Aの入力軸7に伝達、遮断するものであるから、本件発明の「クラッチ」に相当する。
(xi).引用発明における「ジョイント軸4」は、トラクタの動力出力軸と連結し、整畦体の入力軸7と接続、または遮断されるものであるから、本件発明の「入力連結軸」に相当する。

(い).引用発明と本件発明1との対比
(a).一致点・相違点
両者は、「トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する整畦物体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の整畦作業位置にロータリー及び整畦物体を配置してロックするロック手段と、を具備したことを特徴とする整畦塗り機。」
で一致し、
(i).整畦物体として、引用発明は畦叩き板であるのに対し、本件発明1は、回転自在の畦塗り体である点、
(ii).ロータリー及び整畦物体の不使用時における可動機枠の配置に関しては、引用発明では特段の記載は認められないのに対し、本件発明1では、前記機枠の後方部に固定される点
で相違する。
(b).相違点の検討
相違点(i)について、
整畦物体として、回転自在で且つ本件発明の畦塗り体と同形状の整畦物体は、前記のように刊行物Bに示されているから、整畦体として、畦の状態に合わせて、回転自在な畦塗り体を採用することは、当業者が適宜為し得る程度の事項である。
したがって、当該相違点(i)は格別のものではない。
相違点(ii)について、
前記(C-2)に記載したように、トラクタに連結される農作業機の不使用時には、重量バランスを考慮してトラクタの後方に収納して移動の際の利便性を図ることが周知の事項であるから、本件発明1において、農作業機に相当する、ロータリー、畦塗り体等の不使用時に、移動の便等の為に前記周知の事項を採用することは、当業者が適宜為し得る程度の事項である。
(c).本件発明1のまとめ
以上のように各相違点は格別のものではないから、本件発明1は、前記刊行物A,B、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当する。

(う).引用発明と本件発明2との対比
(a).相違点
本件発明2は、本件発明1における「可動機枠」について、さらに「回動中心軸に左右方向に回動自在に取着され前方に向かって回転自在に突出した第1の入力軸及び後方に向かって回転自在に突出した第2の入力軸を有するミッションを内蔵したミッションケースと、このミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動されるロータリーを有する第1の伝動ケースと、前記ミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動される畦塗り体を有する第2の伝動ケースと、を備えていること」を限定したものであり、当該限定事項以外は、前記「(い).引用発明と本件発明1との対比」で検討したように刊行物A,B及び周知事項に基づいて当業者が容易に為し得る事項であるから、検討すべき相違点として、一応前記限定事項が挙げられる。
しかしながら、前記限定事項における、「第1、第2の入力軸」、「ミッションケース」、及び「第1の伝動軸」が、刊行物Aに記載されていることは前記「(あ).構成の対応関係(vii)、(vi)、(viii)」に記載したとおりである。
また、「第2の伝動ケース」に関しては、如何なる駆動力伝達手段であるか本件発明2には明記されていないが、整畦物体である畦塗り体が回転駆動することを考慮して回転伝達とすると、刊行物Aに記載されている整畦物体に動力を伝達するプランジャーポンプ等とはその駆動力伝達手段において相違するから、当該駆動力伝達手段が相違点となる。
(b)相違点の検討
整畦物体として、回転自在の畦塗り体を採用することは当業者が適宜為し得る事項であることは前記したとおりであり、当該畦塗り体を採用すれば、伝達する駆動力として回転駆動力とすることは、当業者にとっては当然のように想起する程度の技術的事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(c).本件発明2のまとめ
以上のように相違点は格別のものではないから、本件発明2は前記刊行物A,B、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当する。

(え).引用発明と本件発明3との対比
(a).相違点
本件発明3は、本件発明2における「機枠」について、さらに「機枠は、その左右方向の中心部に左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸をクラッチを介して着脱自在に連結する前後方向の回転自在の入力連結軸を有する。」ことを限定したものであり、当該限定事項以外は、前記「(う).引用発明と本件発明2との対比」で検討したように刊行物A,B及び周知事項に基づいて当業者が容易に為し得る事項であるから、検討すべき相違点として、一応前記限定事項が挙げられる。
(b)相違点の検討
前記限定事項に記載における、クラッチを介して着脱自在に連結する入力連結軸は、前記「(あ).構成の対応関係(x)、(xi)」に記載のように引用発明も備えているから、当該限定事項は実質的には相違点ではない。
また、連結軸の配設箇所として、中央に限定したことによる格別の作用効果は認められないばかりでなく、トラクタに連結される農作業機は、前記(C-2)に記載するようにバランスが要請されるものであり、しかも、バランスに関しては、中央配置は周知の配置個所であることを考慮すると、連結軸の配設箇所として、中央に限定することは当業者が容易に為し得る程度の事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(c).本件発明3のまとめ
以上のように各相違点は格別のものではないから、本件発明3は前記刊行物A,B、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件発明3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当する。

(お).引用発明と本件発明4との対比
(a).相違点
本件発明4は、本件発明3における「ロック手段」について、さらに「ロック手段は、機枠の左右部に左右方向の一方側に回動した可動機砕をロックする一方のロックアーム及び左右方向の他方側に回動した可動機枠をロックする他方のロックアームを有し、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動する」ことを限定したものであり、当該限定事項以外は、前記「(え).引用発明と本件発明3との対比」で検討したように刊行物A,B及び周知事項に基づいて当業者が容易に為し得る事項であるから、検討すべき相違点として、一応前記限定事項が挙げられる。
(b)相違点の検討
前記限定事項における、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動する動作に関して検討すると、当該事項は前記(A-12)、(A-9)に記載のように引用発明も同様動作を行うものであるから、当該限定事項は実質的には相違点ではない。
(c).本件発明4のまとめ
以上のように相違点は格別のものではないから、本件発明4は前記刊行物A,B、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件発明4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当する。


第六.むすび
以上のように、本件発明1〜4は、前記刊行物A,B、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1〜4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、その余の無効事由を検討するまでもなく同法123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定によって被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
畦塗り機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段と、を具備し、前記ロータリー及び前記畦塗り体の不使用時には、前記機枠の後方部に前記可動機枠が配置されて固定される
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】 可動機枠は、回動中心軸に左右方向に回動自在に取着され前方に向かって回転自在に突出した第1の入力軸及び後方に向かって回転自在に突出した第2の入力軸を有するミッションを内蔵したミッションケースと、このミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動されるロータリーを有する第1の伝動ケースと、前記ミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動される畦塗り体を有する第2の伝動ケースと、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】 機枠は、その左右方向の中心部に左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸をクラッチを介して着脱自在に連結する前後方向の回転自在の入力連結軸を有する
ことを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。
【請求項4】 ロック手段は、機枠の左右部に左右方向の一方側に回動した可動機枠をロックする一方のロックアーム及び左右方向の他方側に回動した可動機枠をロックする他方のロックアームを有し、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動する
ことを特徴とする請求項3記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は畦塗り機に係り、主として水田を区画する旧畦を補修して水漏れを防ぐように修復するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の畦塗り機としては、たとえば、特公平4-64642号公報に記載されているように、トラクタに連結する機枠の左右方向の一側部に旧畦の上面部を砕土する多数の砕土刃を放射状に突設した砕土機構を回転自在に設け、この砕土機構の後方部に位置して前記機枠に前記旧畦の側面部から旧畦の内部に回転穿入して土を旧畦上に跳ね上げる複数の掻上刃を放射状に突設したロータリーを回転自在に設け、このロータリーの後方部に位置して前記機枠に前記旧畦上の盛土及び旧畦の側部を叩いて締める整畦体を上下動自在に設ける構成が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載の構成では、機枠の一側部に砕土機構、ロータリー及び整畦体をそれぞれ位置固定的に、すなわち、これらを機枠に対して左右方向に切替え不能に配設されているため、旧畦の最終端部に走行したトラクタの先端部と機枠の最終部に配設された整畦体との間に相当する距離分だけ旧畦に対して畦塗り作業を行わない未作業部分が生じる、すなわち、旧畦の最終端部でトラクタ及び機枠を方向転換して折り返した場合には、前行程の旧畦とは反対側に砕土機構、ロータリー及び整畦体が移動されることになるので、前行程の旧畦に対しては畦塗り作業を行わない未作業部分が生じる、という問題がある。
【0004】
また、前記公報に記載の構成では、整畦体にて旧畦上の盛土を叩いて締めるため、旧畦の湿気状態によっては盛土の付着性が不十分で特に旧畦の側部の整畦土から崩れ易くなるとともに水漏れし易く、整畦にばらつきが生じることがある、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、旧畦の全長に亘って確実に畦塗り作業を行うことができ、この旧畦に対して畦塗り作業を行わない未作業部分が生じることがなく、盛土の付着性が十分で旧畦に塗り付けた整畦土が崩れたり水漏れするようなことがなく、したがって、仕上がり具合が良好な畦塗り機を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の畦塗り機は、トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段と、を具備し、前記ロータリー及び前記畦塗り体の不使用時には、前記機枠の後方部に前記可動機枠が配置されて固定されるものである。
【0007】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、可動機枠は、回動中心軸に左右方向に回動自在に取着され前方に向かって回転自在に突出した第1の入力軸及び後方に向かって回転自在に突出した第2の入力軸を有するミッションを内蔵したミッションケースと、このミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動されるロータリーを有する第1の伝動ケースと、前記ミッションケースに連結され前記ミッションからの出力によって回転駆動される畦塗り体を有する第2の伝動ケースと、を備えているものである。
【0008】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、機枠は、その左右方向の中心部に左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸をクラッチを介して着脱自在に連結する前後方向の回転自在の入力連結軸を有するものである。
【0009】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項3記載の畦塗り機において、ロック手段は、機枠の左右部に左右方向の一方側に回動した可動機枠をロックする一方のロックアーム及び左右方向の他方側に回動した可動機枠をロックする他方のロックアームを有し、この左右のロックアームをクラッチを切替える操作レバーの切替操作に連動して可動機枠をロックする方向及びこのロックを解除する方向に回動するものである。
【0010】
【作用】
請求項1記載の畦塗り機では、機枠に取着した回動中心軸を中心として可動機枠を進行方向に対して、たとえば、右側に回動されると、この可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が機枠の右側部に突出した状態に配置される。そして、ロック手段を操作すると機枠に可動機枠が前記配置状態でロックされる。
【0011】
つぎに、トラクタにて機枠が畦際に沿って進行されるとともに、可動機枠のロータリー及び畦塗り体が回転駆動されると、ロータリーにて畦際の泥土が旧畦に向かって順次跳ね上げられるとともに、この旧畦の上部及び側部に放出されて盛り土された泥土はスリップ回転しつつ進行する畦塗り体にて順次塗り付けられて旧畦が順次整畦される。
【0012】
また、トラクタが旧畦の最終端部まで進行されると、このトラクタ及び機枠を方向転換して所定の位置まで折り返し進行した後に、このトラクタの進行を停止する。そして、ロック手段を操作すると機枠にロックした可動機枠のロックが解除される。
【0013】
また、この可動機枠が回動中心軸を中心として折り返した進行方向の左側に回動されると、この可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が機枠の左側部、すなわち、前行程の旧畦に向かって突出した状態に配置される。そして、ロック手段を操作すると機枠に可動機枠が前記配置状態でロックされる。
【0014】
つぎに、トラクタを前行程の旧畦に沿って後退させると、このトラクタにて機枠が旧畦に沿って後退されるとともに、この可動機枠のロータリー及び畦塗り体が回転駆動されると、ロータリーにて畦際の泥土が旧畦に向かって順次跳ね上げられるとともに、この旧畦の上部及び側部に放出されて盛り土された泥土はスリップ回転しつつ後退する畦塗り体にて順次塗り付けられて旧畦が最終端部まで順次整畦される。
【0015】
したがって、旧畦の上面部及びこの旧畦の側面部が全長に亘って順次畦塗り整畦され、旧畦に畦塗り作業を行わない未作業部分が生じることなく整畦される。そして、泥土はスリップ回転しつつ進行(後退)する畦塗り体にて順次塗り付けられることにより、この畦塗り体にて旧畦に対して泥土が十分に締め固められるとともに表面が平滑状態に仕上げられ、盛土の付着性が十分で旧畦に塗り付けた整畦土が崩れたり水漏れするようなことがなく、良好な仕上がり具合で整畦される。
【0016】
請求項2記載の畦塗り機では、機枠の右側部に可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が配置された場合には、この可動機枠のミッションケースの第1の入力軸が前方に向かって突出される。そして、この第1の入力軸はトラクタのPTO軸からの出力によって回転されることにより、このミッションからの出力によって第1の伝動ケースのロータリー及び第2の伝動ケースの畦塗り体がそれぞれ回転駆動される。
【0017】
また、機枠の左側部に可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が配置された場合には、この可動機枠のミッションケースの第2の入力軸が前方に向かって突出される。そして、この第2の入力軸はトラクタのPTO軸からの出力によって回転されることにより、このミッションからの出力によって第1の伝動ケースのロータリー及び第2の伝動ケースの畦塗り体がそれぞれ回転駆動される。
【0018】
請求項3記載の畦塗り機では、機枠の右側部に可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が配置された場合には、この可動機枠のミッションケースの第1の入力軸が前方に向かって突出され、この第1の入力軸がクラッチを介して機枠の入力連結軸に連結される。そして、この入力連結軸がトラクタのPTO軸からの出力によって回転されることにより、第1の入力軸が連動回転されるとともに、このミッションからの出力によって第1の伝動ケースのロータリー及び第2の伝動ケースの畦塗り体がそれぞれ回転駆動される。
【0019】
また、機枠の左側部に可動機枠に設けたロータリー及び畦塗り体が配置された場合には、この可動機枠のミッションケースの第2の入力軸が前方に向かって突出され、この第2の入力軸がクラッチを介して機枠の入力連結軸に連結される。そして、この入力連結軸がトラクタのPTO軸からの出力によって回転されることにより、第2の入力軸が連動回転されるとともに、このミッションからの出力によって第1の伝動ケースのロータリー及び第2の伝動ケースの畦塗り体がそれぞれ回転駆動される。
【0020】
請求項4記載の畦塗り機では、クラッチを切替える操作レバーを切替操作すると、この操作レバーにて入力連結軸に対して第1の入力軸及び第2の入力軸が連結または遮断されるようにクラッチが切替え操作されるとともに、可動機枠をロックする一方のロックアームまたは他方のロックアームが連動回動され、可動機枠のロックまたはロックが解除される。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の一実施例の構成を図面を参照して説明する。
【0022】
図1、図2はロータリー及び畦塗り体を右側に配置した状態の平面図及び側面図で、図1及び図2において、1は機枠で、この機枠1は基板2を有し、この基板2の上方部には左右の側板3を介して支持板4が一体に固着され、この支持板4の左右方向の略中間上部にはマスト5が前方に向かって一体に突設され、このマスト5の突出端部には左右方向の連結ピン6が取着されている。
【0023】
また、前記基板2と支持板4との間の前側左右部には左右のヒッチアーム7がそれぞれ前方に向かって一体に突設され、この左右のヒッチアーム7の突出端部には左右方向のロワピン8がそれぞれ一体に固着されている。そして、前記マスト5の連結ピン6及び前記左右のヒッチアーム7のロワピン8にてトラクタTに連結する三点連結部が構成されている。
【0024】
また、前記基板2と支持板4との間の前側部には前記左右のヒッチアーム7の前後方向の略中間部を連結支持した前側支板9が一体に固着され、この前側支板9の左右方向の中心部には軸受体10が固定されている。また、前記軸受体10には前後方向の入力連結軸11が回転自在に軸架され、前記軸受体10から後方に向かって突出された前記入力連結軸11のスプライン軸部12には円筒状のクラッチ13が軸方向に摺動自在にスプライン嵌合されている。
【0025】
また、図3はロータリー及び畦塗り体を右側に配置した位置でロックされた状態を示す可動機枠部の側面図で、図4はロックを解除された状態を示す側面図であり、図3及び図4において、前記クラッチ13の上部には固定ピン14にて左右方向のクラッチアーム15が固着され、このクラッチアーム15の一側部には操作レバー16の下部が回動自在に枢着され、この操作レバー16の下端部は前記基板2上に左右方向の支軸17にて回動自在に軸支され、この操作レバー16の上部は前記支持板4に形成された前後方向の案内長溝18内に移動自在に挿通され、この案内長溝18の前端部及び後端部には案内長溝18に連通して直交方向に切り込んだ係止凹部19,20がそれぞれ形成され、前記操作レバー16の上端部には摘み体21が固着されている。
【0026】
そして、前記基板2上の支軸17を中心として前記操作レバー16を前記案内長溝18に沿って前後動することにより、この操作レバー16にてクラッチアーム15を介して前記クラッチ13が前記入力連結軸11のスプライン軸部12に沿って軸方向に摺動され、図3に示すように、このクラッチ13にて入力連結軸11に対して後述する入力軸が連結され、かつ、図4に示すように、この入力軸の連結が解除されるようになっている。
【0027】
また、図3及び図4に示すように、前記基板2上に前記支持板4を固着した左右の側板3の内側部には左右方向の取付軸22がそれぞれ相対して突設され、この左右の取付軸22にはロックアーム23がそれぞれ上下方向に回動自在に軸支されている。この左右のロックアーム23は、側面視略逆L字状に形成され、その一端部が前記取付軸22にそれぞれ上下方向に回動自在に軸支され、その他端部の下部には後述するロックピンを係脱自在に係合する係合凹部24がそれぞれ形成されている。
【0028】
また、前記左右のロックアーム23の他端部の上部には支軸25にて連動アーム26の一端部がそれぞれ回動自在に軸支され、この左右の連動アーム26の他端部に形成された長孔状の取付孔27内には前記クラッチアーム15の他側部及び前記操作レバー16に突設された連動ピン28がそれぞれ回動可能に装着されている。そして、前記左右のロックアーム23、左右の連動アーム26、後述する左右のロックピン及び操作レバー16にてロック手段29が構成されている。
【0029】
そうして、前記ロック手段29の操作レバー16を前後動操作することにより、前記クラッチ13が前記入力連結軸11のスプライン軸部12に沿って軸方向に摺動されて後述する入力軸を係脱自在に連結するとともに、左右の連動アーム26を介して左右のロックアーム23がそれぞれの取付軸22を中心として上下方向に回動されて後述するロックピンを係脱自在に連結するようになっている。
【0030】
さらに、図1及び図2に示すように、前記左右のヒッチアーム7の前側部にはスタンド30をそれぞれ上下方向に位置調節自在に支持するホルダー31が固着されている。そして、前記マスト5の連結ピン6及び前記左右のヒッチアーム7のロワピン8にはトラクタTの三点懸架機構に連結されるクイックカプラー32が連結されている。また、前記入力連結軸11は前記トラクタTのPTO軸にユニバーサルジョイントを介して着脱自在に連結されるようになっている。
【0031】
つぎに、前記機枠1の後側部すなわち、前記基板2と前記支持板4との間において、前記入力連結軸11の前後方向の軸線に対して一側部(図1において左側)に偏位した位置の後側部間には上下方向の回動中心軸33が垂直状に一体に取着されている。また、前記回動中心軸33には可動機枠34が前記機枠1の進行方向に対して左右方向に水平回動自在に取着されている。
【0032】
前記可動機枠34は、前記回動中心軸33に左右方向に水平回動自在に取着されたミッションケース35を有し、このミッションケース35の前側部には前記入力連結軸11の前後方向の軸線上に位置して第1の入力軸36が前方に向かって回転自在に突出されているとともに、前記ミッションケース35の後側部には前記回動中心軸33より左側に位置し、かつ、このミッションケース35が180度回動した場合に前記入力連結軸11の前後方向の軸線上に位置する第2の入力軸37が後方に向かって回転自在に突出されている。
【0033】
また、図6はロータリー及び畦塗り体が進行方向に向かって右側に位置された状態の平面図で、図1及び図6に示すように、前記ミッションケース35にはミッション38が内蔵され、このミッション38にて前記第1の入力軸36が回転駆動されることにより前記第2の入力軸37が連動回転されるようになっている。また、前記回動中心軸33を中心として前記ミッションケース35が回動されることにより前記入力連結軸11のスプライン軸部12に対して前記クラッチ13を介して前記第1の入力軸36(図1)及び第2の入力軸37(図6)が係脱自在にスプライン連結されるようになっている。
【0034】
また、図1及び図2に示すように、前記ミッションケース35の前側部には前記第1の入力軸36を回転自在に貫通した左右方向の第1の伝動ケース39が前記機枠1の進行方向に向かって右側下方に向かって傾斜して一体に突設され、この第1の伝動ケース39の右側下端部には旧畦際の泥土を旧畦Aに向かって跳ね上げるロータリー40が回転自在に軸架されている。このロータリー40は、前記第1の伝動ケース39の下端部に軸受体41にて回転自在に軸架された前後方向の回転軸42を有し、この回転軸42に固着された略三角形状のフランジ43の周側部には旧畦際の泥土を旧畦Aに向かって跳ね上げる複数の跳上爪44がフランジ43の外方に向かって放射状に突設されている。
【0035】
また、前記第1の伝動ケース39内において、前記第1の入力軸36に固着されたスプロケット45と、前記ロータリー40の回転軸42に固着されたスプロケット46との間には無端チェーン47が回行自在に懸架されている。そして、前記第1の入力軸36が回転されることにより、前記無端チェーン47を介して前記ロータリー40が回転されるとともに、このロータリー40の各跳上爪44にて旧畦際の泥土を旧畦Aに向かって跳ね上げるようになっている。
【0036】
さらに、前記第1の伝動ケース39の前側部には前記ロータリー40を被覆しロータリー40の各跳上爪44にて跳ね上げられる泥土を旧畦Aに向けて案内するカバー体48が固着されている。このカバー体48は、前記ロータリー40の前後方向の両側部を被覆した前後の側板部、この両側板部間に連設され前記ロータリー40の上方部を被覆した天板部及び前記両側板部と天板部間に連設され前記ロータリー40の回転方向の外端部を被覆した外側板部とを有して形成されている。
【0037】
つぎに、図1に示すように、前記ミッションケース35の右側端部には左右方向の第2の伝動ケース49が水平状に一体に固着され、この第2の伝動ケース49内には左右部に配設された軸受体50にて左右方向の第1の出力軸51が回転自在に軸支され、この第1の出力軸51の左端部は前記ミッションケース35内に突出され、この第1の出力軸51の突出端部は前記ミッション38に連動連結されている。そして、前記第1の入力軸36が回転駆動されることによりミッション38にて前記第1の出力軸51が出力回転されるようになっている。
【0038】
また、前記第2の伝動ケース49の右側端部には第2の伝動ケースとしての前後方向の第3の伝動ケース52が前記第1の出力軸51を中心として上下方向に回動可能に取着支持され、この第3の伝動ケース52の後端部には軸受体53にて水平状に配設された左右方向の回転軸54が回転自在に軸架されている。また、前記第3の伝動ケース52内において前記回転軸54の基端部にはスプロケット55が固着され、このスプロケット55と前記第1の出力軸51の右側端部に固着されたスプロケット56との間には無端チェーン57が回行自在に懸架されている。
【0039】
また、前記回転軸54には前記ロータリー40の各跳上爪44にて跳ね上げられた泥土を旧畦Aに塗り付けて旧畦Aを整畦する畦塗り体58が抜き差し自在の連結ボルト59にて軸方向に位置調節自在に連結されている。この畦塗り体58は、前記ロータリー40の後方に位置して配設されるもので、前記回転軸54に軸方向に位置調節自在に嵌合された筒状の連結体60を有し、この連結体60には前記旧畦Aの上面部を整畦する円筒状の上面塗り部61及び前記旧畦Aの側面部を整畦する円錐形状の側面塗り部62を固着して形成されている。
【0040】
そして、前記ミッション38からの出力によって第1の出力軸51及びこの第1の出力軸51に連動連結された回転軸54によって前記畦塗り体58は前記機枠1の進行速度よりも早い回転速度で回転駆動され、その上面塗り部61及び側面塗り部62が旧畦Aの上面部及び側面部に対してスリップ回転して畦塗り作業をするようになっている。
【0041】
しかして、前記円筒状の上面塗り部61及び前記円錐形状の側面塗り部62は合成樹脂または金属にて形成され、この上面塗り部61及び側面塗り部62の表面部には超高分子量ポリエチレン材料などからなる合成樹脂被膜が形成されている。そして、この合成樹脂被膜にて上面塗り部61及び側面塗り部62の表面部に泥土が付着することを防止するようになっている。
【0042】
さらに、図1、図3及び図4に示すように、前記第2の伝動ケース49の右側部には前記第3の伝動ケース52の内側部に位置して矩形状の連結板63が垂直状に一体に固着され、この連結板63の前側下部には前記可動機枠34を右側に回動した際に(図1)前記ロック手段29の右側のロックアーム23にて係脱自在にロックされる右側ロックピン64が水平状に一体に突設されている。また、前記連結板63の後側下部には前記可動機枠34を左側に回動した際に(図6)前記ロック手段29の左側のロックアーム23にて係脱自在にロックされる左側ロックピン65が水平状に一体に突設されている。
【0043】
また、前記連結板63の後端部には上下方向のホルダー66が一体に固着され、このホルダー66には支持アーム67が上下方向に位置調節自在に嵌着支持され、この支持アーム67の下端部にはゲージ輪68が回転自在に軸架されている。そして、前記ゲージ輪68にて前記第3の伝動ケース52を有する第2の伝動ケース49を支持するとともに、前記ロータリー40及び前記畦塗り体58を所定の接地作業位置に支持するようになっている。
【0044】
つぎに、図5はロータリーと畦塗り体との作業状態を示す可動機構部の背面図で、図2及び図5に示すように、前記第3の伝動ケース52の後端上部に前記カバー体48及び前記畦塗り体58の右側部に対して配設された前後方向の側板69を支持した門型フレーム70が固着されている。この門型フレーム70は、前記第3の伝動ケース52の後端上部に固定された固定フレーム部71と、この固定フレーム部71の上端部の水平状部72に左右方向に摺動自在に嵌合された水平状の摺動部73を上端部に有して前記側板69を支持した可動フレーム部74とからなっている。
【0045】
そして、前記可動フレーム部74は常時は前記固定フレーム部71に対して前記側板69を前記カバー体48及び前記畦塗り体58の右側部に近接する位置に配設して固着され、前記回転軸54に対して前記畦塗り体58を軸方向に設定位置を調節する場合及び畦塗り体58を着脱交換する場合には可動フレーム部74は固定フレーム部71から離間して前記畦塗り体58を着脱交換するスペースを確保するようになっている。
【0046】
また、図2に示すように、前記機枠1の右側後側部には取付アーム75が上方に向かって一体に突設され、この取付アーム75の上端部には前記第3の伝動ケース52を前記第1の出力軸51を中心として上下方向に回動調節して支持するハンドル76を有する調節支持機構77が連設されている。そして、前記ハンドル76を回動操作して前記調節支持機構77を作動することにより、前記第1の出力軸51を中心として前記第3の伝動ケース52が上下動調節され、この第3の伝動ケース52の回転軸54に軸架された前記畦塗り体58の接地位置が調節設定されるようになっている。
【0047】
さらに、図1に示すように、前記回動中心軸33の左側前方に位置して前記機枠1の基板2及び支持板4には上下方向に相対して固定孔78が連通形成されている。また、前記ミッションケース35の左側部には前記回動中心軸33を中心として回動し前記機枠1の固定孔78を通過する回動軌跡上に位置して固定孔78に連通する連通孔79が上下方向に貫通して形成されている。
【0048】
そして、図10はロータリー及び畦塗り体の不使用時の状態を示す平面図で、図10に示すように、前記機枠1の前記回動中心軸33を中心として前記可動機枠34を回動し、この機枠1の固定孔78に前記ミッションケース35の連通孔79を連通させ、この固定孔78及び連通孔79に固定ピン80を挿脱自在に挿着することにより、機枠1の後方部に可動機枠34が配置されて固定され、畦塗り作業をしない畦塗り機の運搬等に備えるようになっている。
【0049】
つぎに、前記実施例の作用を説明する。
【0050】
トラクタTのトップリンク及び左右のロアリンクにクイックカプラー32を連結し、このクイックカプラー32に機枠1の三点連結部すなわち、連結ピン6及び左右のロワピン8をそれぞれ連結する。また、トラクタTのPTO軸(図示せず)に動力伝達軸を介して入力連結軸11を連結する。また、圃場の状況に応じてゲージ輪68を上下方向に高さを調節してゲージ輪68を所定の接地位置に設定する。また、スタンド30を地面から上方に離間する。
【0051】
つぎに、機枠1の進行方向に対して、たとえば、右側に可動機枠34を設置する場合には、この可動機枠34は、たとえば、図10に示すように、機枠1の後方部に配置されて固定されている。すなわち、図3において、摘み体21を把持して操作レバー16を進行方向の前方に向かって移動操作すると、図4に示すように、この操作レバー16が基板2の支軸17を中心として前方に向かって回動され、この操作レバー16にてクラッチアーム15を介してクラッチ13が入力連結軸11のスプライン軸部12に沿って前方に向かって摺動されるとともに、この操作レバー16及びクラッチアーム15の連動ピン28にて左右の連動アーム26が前方に向かって牽引され、この左右の連動アーム26にて左右のロックアーム23がそれぞれの取付軸22を中心として上方に向かって引上げ回動される。
【0052】
そして、図4に示すように、操作レバー16を案内長溝18の前端部の係止凹部19に係止することにより、クラッチ13は入力連結軸11のスプライン軸部12の後端部を露出した状態で位置決めされるとともに、左右のロックアーム23にて可動機枠34の左右のロックピン64,65のロックを解除した状態で、機枠1の固定孔78及びこの固定孔78に連通したミッションケース35の連通孔79に装着した固定ピン80にて可動機枠34が機枠1の後方部に配置固定されて位置決めされている。
【0053】
つぎに、機枠1の固定孔78及びミッションケース35の連通孔79から固定ピン80を引き抜き、図1及び図2に示すように、機枠1に取着した回動中心軸33を中心として可動機枠34を機枠1の進行方向に対して右側に向かって回動すると、この可動機枠34に設けたロータリー40及び畦塗り体58が機枠1の右側部に突出した状態に配置されるとともに、この可動機枠34のミッションケース35に設けた第1の入力軸36の先端部が機枠1に設けた入力連結軸11のスプライン軸部12の後端部に接続可能状態に対向される。
【0054】
また、操作レバー16を案内長溝18の前端部の係止凹部19から外し、この操作レバー16を案内長溝18に沿って後方に向かって移動操作すると、図4に示す状態から、この操作レバー16が基板2の支軸17を中心として後方に向かって回動され、この操作レバー16にてクラッチアーム15を介してクラッチ13が入力連結軸11のスプライン軸部12に沿って第1の入力軸36に向かって摺動されるとともに、この操作レバー16及びクラッチアーム15の連動ピン28にて左右の連動アーム26が後方に向かって押動され、この左右の連動アーム26にて左右のロックアーム23がそれぞれの取付軸22を中心として下方に向かって下降回動される。
【0055】
そして、操作レバー16を案内長溝18の後端部の係止凹部20に係止することにより、図3に示すように、入力連結軸11のスプライン軸部12のクラッチ13が第1の入力軸36にスプライン嵌合され、このクラッチ13にて入力連結軸11のスプライン軸部12に第1の入力軸36が連結されるとともに、この左右のロックアーム23の内で右側のロックアーム23の係合凹部24が可動機枠34の右側ロックピン64に嵌合され、この右側のロックアーム23にて可動機枠34の右側ロックピン64がロックされる。
【0056】
したがって、図1及び図2に示すように、回動中心軸33及び右側のロックアーム23にて機枠1に対して可動機枠34がそのロータリー40及び畦塗り体58を機枠1の右側部に突出した状態でロックされ、畦塗り作業に備えることができる。
【0057】
つぎに、トラクタTにて機枠1が旧畦際に沿って進行される一方、このトラクタTのPTO軸からの出力によって入力連結軸11が回転されると、この入力連結軸11にて第1の入力軸36が回転されるとともに、この第1の入力軸36にて連動媒体(スプロケット45,46及び無端チェーン47)を介して第1の伝動ケース39に設けたロータリー40が旧畦Aに向かって泥土を跳ね飛ばす方向に向かって回転駆動される。
【0058】
また、第1の入力軸36の回転でミッション38からの出力によって第2の伝動ケース49内の第1の出力軸51が回転されるとともに、この第1の出力軸51にて連動媒体(スプロケット55,56及び無端チェーン57)を介して第3の伝動ケース52に設けた畦塗り体58が機枠1の進行速度より早い回転速度で回転駆動される。
【0059】
そして、図5に示すように、トラクタTにて旧畦際に沿って進行される可動機枠34のロータリー40の各跳上爪44にて旧畦際の泥土が旧畦Aに向かって順次跳ね上げられるとともに、この旧畦Aの上面部及び側面部に放出されて盛り土された泥土はスリップ回転しつつ進行する畦塗り体58の上面塗り部61及び側面塗り部62にて順次塗り付けられ、この整畦土Bにて旧畦Aが順次整畦される。
【0060】
つぎに、図7に示すように、トラクタTが旧畦Aの最終端部まで進行されると、図8に示すように、このトラクタ及び機枠1を方向転換して所定の位置まで折り返し進行した後に、このトラクタの進行を停止する。この場合、トラクタTの先端部と可動機枠34に設けた進行方向の後側部に位置する畦塗り体58との間に相当する距離分だけ、旧畦Aには畦塗り作業をしない未作業部分Lが生じることになる。
【0061】
そこで、図3の状態から、操作レバー16を案内長溝18の後端部の係止凹部20から外し、この操作レバー16を案内長溝18に沿って前方に向かって移動操作すると、この操作レバー16が基板2の支軸17を中心として前方に向かって回動され、この操作レバー16にてクラッチアーム15を介してクラッチ13が入力連結軸11のスプライン軸部12及び第1の入力軸36に沿って前方に向かって摺動されるとともに、この操作レバー16及びクラッチアーム15の連動ピン28にて左右の連動アーム26が前方に向かって牽引され、この左右の連動アーム26にて左右のロックアーム23がそれぞれの取付軸22を中心として上方に向かって上昇回動される。
【0062】
そして、図4に示すように、操作レバー16を案内長溝18の前端部の係止凹部19に係止することにより、入力連結軸11のスプライン軸部12のクラッチ13が第1の入力軸36から外れて第1の入力軸36の連結が解除されるとともに、この左右のロックアーム23の内で右側のロックアーム23の係合凹部24が可動機枠34の右側ロックピン64から外れ、この右側のロックアーム23にて可動機枠34の右側ロックピン64のロックが解除される。
【0063】
つぎに、図8に示すように、機枠1に取着した回動中心軸33を中心として可動機枠34を進行方向に対して左側に向かって略180度回動すると、この可動機枠34に設けたロータリー40及び畦塗り体58が機枠1の左側部に突出した状態に配置されるとともに、この可動機枠34のミッションケース35に設けた第2の入力軸37の先端部が機枠1に設けた入力連結軸11のスプライン軸部12の後端部に接続可能状態に対向される。
【0064】
また、図4に示す状態から、操作レバー16を案内長溝18の前端部の係止凹部19から外し、この操作レバー16を案内長溝18に沿って後方に向かって移動操作すると、この操作レバー16が基板2の支軸17を中心として後方に向かって回動され、この操作レバー16にてクラッチアーム15を介してクラッチ13が入力連結軸11のスプライン軸部12に沿って第1の入力軸36に向かって摺動されるとともに、この操作レバー16及びクラッチアーム15の連動ピン28にて左右の連動アーム26が後方に向かって押動され、この左右の連動アーム26にて左右のロックアーム23がそれぞれの取付軸22を中心として下方に向かって下降回動される。
【0065】
そして、図3及び図6に示すように、操作レバー16を案内長溝18の後端部の係止凹部20に係止することにより、入力連結軸11のスプライン軸部12のクラッチ13が第2の入力軸37にスプライン嵌合され、このクラッチ13にて入力連結軸11のスプライン軸部12に第2の入力軸37が連結されるとともに、この左右のロックアーム23の内で左側のロックアーム23の係合凹部24が可動機枠34の左側ロックピン65に嵌合され、この左側のロックアーム23にて可動機枠34の左側ロックピン65がロックされる。
【0066】
したがって、回動中心軸33及び左側のロックアーム23にて機枠1に対して可動機枠34がそのロータリー40及び畦塗り体58を機枠1の左側部、すなわち、前行程の旧畦Aに向かって突出した状態でロックされ、畦塗り作業に備えることができる。
【0067】
つぎに、図9に示すように、トラクタTを前行程の旧畦Aに沿って後退させると、このトラクタTにて機枠1が旧畦Aに沿って後退されるとともに、この可動機枠34のロータリー40及び畦塗り体58が回転駆動されると、ロータリー40にて畦際の泥土が旧畦Aに向かって順次跳ね上げられるとともに、この旧畦Aの上面部及び側面部に放出されて盛り土された泥土はスリップ回転しつつ後退する畦塗り体58の上面塗り部61及び側面塗り部62にて順次塗り付けられ、この整畦土Bにて旧畦Aが最終端部まで順次整畦され、未作業部分Lが解消される。
【0068】
したがって、旧畦Aの上面部及びこの旧畦Aの側面部が全長に亘って順次畦塗り整畦され、旧畦Aに畦塗り作業を行わない未作業部分Lが生じることなく整畦される。そして、泥土はスリップ回転しつつ進行(後退)する畦塗り体58にて順次塗り付けられることにより、この畦塗り体58にて旧畦Aに対して泥土が十分に締め固められるとともに表面が平滑状態に仕上げられ、盛土の付着性が十分で旧畦Aに塗り付けた整畦土が崩れたり水漏れするようなことがなく、良好な仕上がり具合で修復整畦される。
【0069】
つぎに、トラクタTに連結したクイックカプラー32から畦塗り機を外す場合及び畦塗り作業をしないで畦塗り機を運搬する場合には、操作レバー16を案内長溝18に沿って移動操作してクラッチ13を摺動し、入力連結軸11に連結した第2の入力軸37の連結を解除するとともに、この操作レバー16にて左右の連動アーム26を介して左側のロックアーム23にてロックされた可動機枠34の左側ロックピン65のロックを解除する。
【0070】
また、機枠1に取着した回動中心軸33を中心として可動機枠34を機枠1の後方に向かって回動するとともに、この機枠1に形成された固定孔78に可動機枠34のミッションケース35に形成された連通孔79が連通した位置で可動機枠34の回動を停止する。そして、上下に連通した固定孔78及び連通孔79に対して固定ピン80を挿着することにより、図10に示すように、この固定ピン80及び回動中心軸33にて機枠1の後方にロータリー40、畦塗り体58及びゲージ輪68を有する可動機枠34を配置した状態で機枠1に可動機枠34が固定される。
【0071】
そして、トラクタTに連結したクイックカプラー32に畦塗り機の機枠1を連結する際にはトラクタTの三点懸架機構にてクイックカプラー32を掬い上げ、このクイックカプラー32の三点連結部に機枠1の三点連結部(連結ピン6及び左右のロワピン8)を連結するため、機枠1の後方にロータリー40、畦塗り体58及びゲージ輪68を有する可動機枠34が配置固定されることにより、畦塗り機のバランスがよく、クイックカプラー32の三点連結部に機枠1の三点連結部がスムーズに連結され、また、機枠1の三点連結部からクイックカプラー32の三点連結部がスムーズに外される。
【0072】
また、機枠1の後方にロータリー40、畦塗り体58及びゲージ輪68を有する可動機枠34が配置固定されることにより、畦塗り作業時に比べ可動機枠34のロータリー40及び畦塗り体58が機枠1の左右方向に出っ張ることが少なく、横幅を最小にすることができ、畦塗り機の運搬が容易となる。
【0073】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、機枠の後側部に取着した上下方向の回動中心軸に畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠を進行方向に対して左右方向に回動自在に取着し、前記機枠に前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段を設けたので、機枠の回動中心軸を中心として可動機枠を左右方向に回動することにより、機枠の左右部に可動機枠のロータリー及び畦塗り体を簡単に切替え設置して畦塗り作業に備えることができ、このため、旧畦に対して順次畦塗り作業を行うとともに、この旧畦の進行方向の最終端部分では方向転換して前行程の旧畦側にロータリー及び畦塗り体を切替え設置することにより、旧畦の全長に亘って確実に畦塗り作業を行うことができ、この旧畦に対して畦塗り進行方向の最終端部分に畦塗り作業を行わない未作業部分が生じることを確実に防止できる。
【0074】
また、ロータリーから跳ね上げられた泥土を回転自在の畦塗り体にて旧畦に塗り付けて整畦するので、この旧畦に跳ね上げられた泥土の付着性が十分で旧畦に塗り付けた整畦土が崩れたり水漏れするようなことがなく整然と整畦することができる。したがって、作業性にすぐれ仕上がり具合が良好な畦塗り機を提供することができる。
【0075】
請求項2の発明によれば、回動中心軸に左右方向に回動自在に取着した可動機枠のミッションケースは前方に向かって回転自在に突出した第1の入力軸及び後方に向かって回転自在に突出した第2の入力軸を有するので、この可動機枠を左右方向に切替え回動した場合には前方に移動位置した第1の入力軸または第2の入力軸を用いて第1の伝動ケースのロータリー及び第2の伝動ケースの畦塗り体を確実に回転駆動させることができ、機枠の左右部に可動機枠を切替え設定しても、そのロータリー及び畦塗り体を回転駆動して畦塗り作業を行うことができる。
【0076】
請求項3の発明によれば、機枠は左右方向の中心部にミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸を着脱自在に連結するクラッチを有する入力連結軸を設けたので、この入力連結軸にはクラッチにて左右方向に回動したミッションケースの第1の入力軸及び第2の入力軸を確実に連結することができ、このため、入力連結軸にはトラクタからの出力を伝達する動力伝達軸を連結しておくことができ、ロータリー及び畦塗り体の駆動系を簡単に構成することができる。
【0077】
請求項4の発明によれば、操作レバーの切替え操作によって入力連結軸に対して第1の入力軸及び第2の入力軸を連結できると同時に機枠に対して可動機枠をロックでき、かつ、入力連結軸に対する第1の入力軸及び第2の入力軸の連結解除と同時に機枠に対する可動機枠のロックを解除でき、可動機枠を左右方向に切替える操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示すロータリーと畦塗り体とを右側に配置した状態の畦塗り機の一部を切欠した平面図である。
【図2】
同上側面図である。
【図3】
同上ロータリーと畦塗り体とを右側に配置した位置でロックされた状態を示す可動機枠部の側面図である。
【図4】
同上可動機枠のロックを解除した状態を示す側面図である。
【図5】
同上ロータリーと畦塗り体とを右側に配置した状態を示す畦塗り作業状態を示す可動機枠部の背面図である。
【図6】
同上ロータリーと畦塗り体とを進行方向に向かって右側に位置された状態で可動機枠を左側に切替えた状態を示す一部を切欠した平面図である。
【図7】
同上ロータリーと畦塗り体とを右側に配置した畦塗り作業状態を示す説明図である。
【図8】
同上畦塗り機を方向転換した状態を示す説明図である。
【図9】
同上ロータリーと畦塗り体とを右側に配置ように可動機枠を前行程側に切替えた状態を示す説明図である。
【図10】
同上機枠の後方にロータリーと畦塗り体とを配置するように可動機枠を配置した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 機枠
6 連結ピン
8 ロワピン
11 入力連結軸
13 クラッチ
16 操作レバー
23 ロックアーム
29 ロック手段
33 回動中心軸
34 可動機枠
35 ミッションケース
36 第1の入力軸
37 第2の入力軸
38 ミッション
39 第1の伝動ケース
40 ロータリー
49,52 第2の伝動ケース
58 畦塗り体
A 旧畦
T トラクタ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-09-02 
結審通知日 2003-09-05 
審決日 2003-10-15 
出願番号 特願平6-297707
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (A01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
白樫 泰子
登録日 1999-08-27 
登録番号 特許第2972534号(P2972534)
発明の名称 畦塗り機  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 安原 正義  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  

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