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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1103694
審判番号 不服2003-48  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-06 
確定日 2004-09-16 
事件の表示 平成 6年特許願第249034号「ルームエアコン」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月30日出願公開、特開平 8-110085〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月14日の出願であって、平成14年5月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年7月22日付けで手続補正がなされ、更に、同年8月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月25日付けで手続補正がなされたが、この手続補正は、同年11月18日付け(発送日:同年12月3日)補正の却下の決定により却下された。

そして、平成14年11月18日付け(発送日:同年12月3日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年1月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年1月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、次のとおりの平成14年7月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5を、請求項1として次のとおりに補正し(平成14年10月25日付け手続補正は上記のとおり平成14年11月18日付け補正の却下の決定により却下された。)、他の請求項を削除するものと認められる(平成14年10月25日付け意見書第1頁第13-14行参照)。

「【請求項5】ファンと、このファンの上流に配置された熱交換器と、電気品収納箱とを有する室内ユニットを備えたルームエアコンにおいて、前記電気品収納箱を前記熱交換器の上流側に位置した空間であって、ノーズの前方に配置したルームエアコン。」

「【請求項1】ファンと、このファンの上流に配置された熱交換器と、電気品収納箱とを有する室内ユニットを備え、室内ユニット下方に吹出口、この吹出口の上方に吸込口を有するルームエアコンにおいて、前記熱交換器は前記室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたものであり、前記電気品収納箱は前記室内ユニットの幅方向に細長く形成されたものであり、この電気品収納箱を前記熱交換器の上流側下部に位置した空間であって、前記室内ユニット前面であってノーズの近傍に配置したルームエアコン。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ルームエアコン」について「室内ユニット下方に吹出口、この吹出口の上方に吸込口を有する」との限定を付加し、

同様に、「熱交換器」について「前記室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたもの」との限定を、「電気品収納箱」について「前記室内ユニットの幅方向に細長く形成されたもの」との限定を付加し、

また、電気品収納箱を配置する場所について、「前記熱交換器の上流側に位置した空間であって、ノーズの前方」を「前記熱交換器の上流側下部に位置した空間であって、前記室内ユニット前面であってノーズの近傍」とするものであって、

平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、これらの補正事項は、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、同法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定を満足する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平2-298737号公報(以下、「引用例1」という。」)には、図面とともに次の記載がある。

・「この発明は、冷暖房機の室内ユニットに関するものである。」(第1頁左下欄第15ー16行)

・「第3図および第4図は、例えば実公昭58-48979号公報に記載された従来の冷暖房機の室内ユニッットを示す断面側面図および概略正面図である。第3図および第4図において、1は室内ユニット本体であり、この本件1は外箱2、羽根車4および熱交換器11を基本として構成されている。
上記外箱2の上壁面に吸込口10が形成され、外箱2の下端部に吹出□9が形成され、外箱2内には吸込ロ10から吹出口9に至る通風路12が設けられている。通風路12内には羽根車4と、この羽根車4より吸込ロ10側に配置した熱交換器11とが設けられ、羽根車4は電動機3に連絡され、熱交換器11は通風方向に対し傾斜している。また、外箱1内には通風路12外の一側部に設けたスペース8内に電気品箱5と電動機3とが配設されている。」(第1頁左下欄第18行ー右下欄第13行)

・「そして、第4図において寸法aは箱体2内に設けられた通風路12の幅方向寸法、寸法bは箱体2内の電気品箱5を収納したスペース8の幅方向寸法であり、箱体2内の電気品箱収納部が占める通風路12外の幅方向寸法bの割合が大きい。」(第2頁左上欄第1-5行)

・「従来の冷暖房機の室内ユニットは、以上のように構成され、外箱の上壁面に吸込口が設けられているため、通風路の吸込側部分の断面積を大きくすることが困難であり、吸入側の圧力損失が大きくなり、性能を低下させる問題点があった。」(第2頁左上欄第7-11行)

・「この発明における室内ユニットは、電気品箱を通風路外の一側部から熱交換器と外箱の前面パネルとの間に変更することにより、外箱の幅方向寸法が従来のものと同じであれば、外箱の上壁面に形成した吸込口及び通風路の幅方向寸法を大きくして、これらの断両積をともに大きくでき、また熱交換器も従来のものより前面面積が大きいものを通風路内に収納でき、従って吸込側の圧力損失を低減させることができる。」(第2頁右上欄第2-10行)

・「第1図はこの実施例による室内ユニットの断面側面図、第2図は同概略正面図である。これらの図に示すように、室内ユニット本体1は外箱1、羽根車4及び熱交換器11を基本として構成されている。上記外箱1内には、外箱2の上壁面に形成した吸込口10から外箱2の下端部に形成した吹出口9に至る通風路12が形成されている。通風路12内には羽根車4とこの羽根車4より吸込口10側に配置した熱交換器11とが配置されている。熱交換器11は通風方向に対し下部が外箱2の前両パネル7に近づくように傾斜して配置され、前面パネル7と熱交換器11との間に電気品箱5が配置され、外箱2内の通風路12外の一側に形成された通風路12外スペース8には羽根車4に連結された電動機3が収納されているが、電気品箱は設けられていない。なお、第1図中、6は吹出口9部に投けた風向調整板である。
そして、第2図において、寸法Aは箱体2内の通風路12の幅方向寸法であり、この寸法Aと吸込ロ10、熱交換器11、羽根車4及び吹出口9の同方向寸法がほぼ等しく、また外箱2の一側端部の通風路12外スペース8の増方向Bは電動機3が収納できる最小寸法にしてあり、外箱2の幅方向寸法は第4図に示す従来のものの外箱の幅方向寸法と等しくしてあるが、この発明の実施例による通風路12の幅方向寸法Aは従来のものの通風路の幅方向寸法aよりも大きくしてある。」(第2頁右上欄第14行ー左下欄第20行)

これらの記載及び図面を参照すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。」)。

「羽根車と、この羽根車の上流に配置された熱交換器と、電気品箱とを有する室内ユニットを備え、室内ユニット下方に吹出口、この吹出口の上方に吸込口を有するルームエアコンにおいて、前記熱交換器は前記室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたものであり、前記電気品箱はほぼ正方形に形成されたものであり、この電気品箱を熱交換器と前面パネルとの間に配置したルームエアコン。」

なお、熱交換器が「室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたもの」であることは、審判請求人も、平成15年1月28日付け手続補正書(審判請求の理由補充書)第5頁第19-21行で認めている。

また、原査定の拒絶の理由に引用した実願平1-140657号(実開平3-80215号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。」)には、図面とともに次の記載がある。

・「本考案は空気調和機に関するものである。」(第1頁第17行)

・「第3図は従来の空気調和機(以下空調機と略す)の正面図であり、室内機の前面部分を取除いた状態が示してある。第4図は同空調機の断面図である。図において、1は空調機の前面側、2は同空調機へ流入する空気流、3は空調機の本体、4は同本体前面に設けられ.空気吸込口として作用するグリル(格子.grille)、5は前記本体内に設けられた熱交換器、6は同じく本体内に設けられた貫流送風機、7は空気の吐出口、8は同吐出口を形成するスタビライザ、9は前記熱交換器から滴下するドレン水、10は同ドレン水を受けるドレンパン、11は前記本体内において一方の側に寄せて設けられている電装品、12は本体の幅、13は電装品の幅である。」(第1頁第19行-第2頁第12行)

・「従来の空調機においては、第3図に示すようにその本体の幅12のうち、電装品の幅13の部分は、本体内部を電装品11が占有しているため、空気の流れはなく、いわば空調本来の用途には利用されていない。すなわち、その分だけ熱交換器、貫流送風機、および吐出口の幅が本体の幅に比して短くなっている。」(第3頁第2-8行)

・「本考案は上記課題を解決したものであって、吸込口と吐出口とを有する空気調和機本体の内部に熱交換器、同熱交換器の下方のドレンパン、貫流送風機、同貫流送風機用スタビライザ、および電装品を有する空気調和機において、前記吸込口を同空気調和機本体の後方上部に設け、同吸込口と対向して前記熱交換器を設け、その下流側に貫流送風機を設けると共に、同貫流送風機用スタビライザと前記空調機本体の前面パネルとで形成される領域内に、前記電装品を収納したことを特徴とする空気調和機に関するものである。」(第3頁第13行ー第4頁第3行)

・「本考案においては上記構成を具えているため、電装品を前面パネルとスタビライザで囲まれた領域内に収納することによって、本来の空調を行をう熱交換器、貫流送風機、および吐出口の幅を大きく取ることができるため、空調能力を向上させることができる。」(第4頁第5-10行)

また、第1図に、電装品を収納する領域が空調機本体の幅方向に細長く形成された点が示されている。

(3)対比
本願補正発明と上記引用例1発明とを比較する。

引用例1発明の「羽根車」は本願補正発明の「ファン」に相当し、同様に「電気品箱」は「電気品収納箱」に相当する。

したがつて、両者は、

「ファンと、このファンの上流に配置された熱交換器と、電気品収納箱とを有する室内ユニットを備え、室内ユニット下方に吹出口、この吹出口の上方に吸込口を有するルームエアコンにおいて、前記熱交換器は前記室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたものであるルームエアコン。」の点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では、電気品収納箱は、「室内ユニットの幅方向に細長く形成されたもの」であり、この電気品収納箱を「熱交換器の上流側下部に位置した空間であって、室内ユニット前面であってノーズの近傍に」配置したのに対して、

引用例1発明では、電気品収納箱は、「ほぼ正方形に形成されたもの」であり、この電気品収納箱を「熱交換器と前面パネルとの間に」配置した点。

(4)相違点についての判断
引用例2に、吸込口を空気調和機本体の後方上部に設け、同吸込口と対向して熱交換器を設け、その下流側に貫流送風機を設けると共に、同貫流送風機用スタビライザと前面パネルとで形成され、かつ空調機本体の幅方向に細長く形成された領域内に電装品を収納した点が記載されている。

そして、引用例1発明、及び、引用例2に記載された発明は、共に、室内ユニットの一側部に電気品収納箱等を配置すると、熱交換器等の幅が本体の幅に比して短くなるという技術課題を解決するためのものである点で一致する。

したがって、引用例1発明において、電気品収納箱をほぼ正方形に形成されたものとし、熱交換器と前面パネルとの間に配置することに代えて、引用例2に記載された、上記「同貫流送風機用スタビライザと前面パネルとで形成され、かつ空調機本体の幅方向に細長く形成された領域内に電装品を収納した」点を採用して、電気品収納箱を「室内ユニットの幅方向に細長く形成されたもの」とし、「熱交換器の上流側下部に位置した空間であって、室内ユニット前面であってノーズ(露受皿)の近傍に」配置することは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年1月28日付け手続補正は、上記のとおり却下された。そして本願補正発明に対応する発明は、上記したように平成14年7月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「ファンと、このファンの上流に配置された熱交換器と、電気品収納箱とを有する室内ユニットを備えたルームエアコンにおいて、前記電気品収納箱を前記熱交換器の上流側に位置した空間であって、ノーズの前方に配置したルームエアコン。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例、及びその記載事項は上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「ルームエアコン」について、「室内ユニット下方に吹出口、この吹出口の上方に吸込口を有する」との限定を省き、

以下同様に、「熱交換器」について、「前記室内ユニットの幅方向にその幅寸法より少し小さい寸法で前記室内ユニットの端面に近接して取り付けられたもの」との限定、及び、「電気品収納箱」について、「前記室内ユニットの幅方向に細長く形成されたもの」との限定を省き、

また、電気品収納箱を配置する場所について、「前記熱交換器の上流側下部に位置した空間であって、前記室内ユニット前面であってノーズの近傍」を「前記熱交換器の上流側に位置した空間であって、ノーズの前方」としたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-13 
結審通知日 2004-07-20 
審決日 2004-08-02 
出願番号 特願平6-249034
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
P 1 8・ 575- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之佐野 遵  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 井上 哲男
櫻井 康平
発明の名称 ルームエアコン  
代理人 作田 康夫  

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