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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1103972 |
審判番号 | 不服2000-6435 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-02-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-05-01 |
確定日 | 2004-10-07 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第 45997号「複数カードの利用を簡素化する方法および装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 2月20日出願公開、特開平 3- 40081]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成2年2月28日(優先日、1989年3月1日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年5月31日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のクレジットカード、小切手カード、顧客カード、身分証明カード、文書、キー、アクセス手段、マスターキー等の利用を簡素化する方法において、 複数の単目的カードの発行者の名称、その指定、ロゴ、有効期限、カード番号等のデータセットを単一の多機能電子カードの記憶部に転送し、その際、前記データセットは単目的カードの発行者によって供給されるデータ保持手段によって転送され、且つ該データ保持手段及び前記多目的カードを転送装置にセットして該単目的カードのデータを前記多機能電子カードに転送し、 前記多機能電子カードの記憶部に転送された各データセットを該多機能電子カードに記憶し、 前記多機能電子カードを作動させるための暗号を選択し、 前記多機能電子カードを作動させるために前記暗号を入力し、 前記作動された多機能電子カードで一つのデータセットを選択し、 選択されたデータセットのデータを前記多機能電子カードの表示部で表示する、 複数カードの利用を簡素化する方法。」 2.引用例に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-228567号公報、特開昭63-56789号公報には、それぞれ以下の事項が記載されている。 (1)特開昭61-228567号公報(以下、引用例1という) ・「現在クレジットカードは、各クレジットカード会社がそれぞれ独立に発行し、また、各商店で使用できるクレジットカードが各商店毎にそれぞれ異なったものとなっている。このため、どの商店においてもカード取引が出来るようにするためには、客は各クレジットカード会社のカードを別々に作り、これを専用のカードホルダ等に保管している。従って、多い人は、一人で20〜30枚のカードを持つことになる。」(第1頁右下欄第11行〜第20行) ・「本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、1枚のカードでクレジットカード等の複数の個人証明カードの機能を持たせることができる電子式個人証明カード及びその表示方法を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第9行〜第13行) ・「まず、第1図により個人証明カード10の外観構成について説明する。個人証明カード10は、例えばICカードを用いて構成され、その上面にキーボード11及び表示部12が設けられている。」(第2頁右上欄第1行〜第4行) ・「上記PINメモリ26には、カード使用者によって任意の暗証番号PINが設定されるもので、その記憶内容はXレジスタ27の保持データと共に比較部29に送られる。そして、この比較部29の比較結果がCPU24へ送られる。また、上記個人証明情報メモリ28には、例えばカード使用者が加入しているクレジットカードに関する個人証明情報が書込まれる。例えば上記個人証明情報メモリ28には、第3図に示すように3つのエリアa1、a2、a3が設けられており、エリアa1には各クレジットカード会社に対応させた数値コード(このコードはカード所有者が任意設定可能とする)、エリアa2にはクレジットカード会社名、エリア3には上記各クレジットカード会社の口座番号が予め書込まれる。」(第3頁左下欄第5行〜第19行) ・「物品の購入に際して上記個人証明カード10をクレジットカードとして使用する場合、カード使用者は、まず、ONキーを兼ねるACキー14を操作して電源をオンさせる。」(第3頁右下欄第6行〜第9行) ・「次いでカード使用者は、ステップA2に示すようにテンキー13により暗証番号を入力し、その後、照合キー16を操作する。上記キーボード11から入力された暗証番号は、入力制御部22を介してXレジスタ27にセットされる。そして、上記照合キー16の操作によりステップA3に示すように暗証番号の照合が行われる。すなわち、上記Xレジスタ27に書込まれた暗証番号とPINメモリ26に予め設定されている暗証番号が比較部29へ送られ、ステップA4に示すように一致しているか否かの判断が行なわれる。」(第3頁右下欄第15行〜第4頁左上欄第6行) ・「上記ステップA4において、Xレジスタ27に書込まれた暗証番号とPINメモリ26に設定されている暗証番号とが一致していると判断された場合は、次のキー入力操作が可能になるので、ステップA9に示すようにテンキー13の操作により、所望のクレジットカード会社に対応する数値コードを入力する。」(第4頁左上欄第17行〜右上欄第3行) ・「上記ステップA10において、該当数値有りと判断された場合は、ステップA11に進み、個人証明情報メモリ28から該当数値に対応するクレジットカード会社名及び口座番号を読出して表示制御部23の表示バッファ231に書込み、表示部12に表示する。」(第4頁右上欄第9行〜第14行) ・「上記実施例では、個人証明情報メモリ26にクレジットカードに関する個人証明情報を記憶し、個人証明カードをクレジットカードとして使用した場合について説明したが、個人証明情報メモリ28の記憶内容を変更することにより、他のカードとして使用することができる。例えば 1) ライセンス用として 1 自動車運転免許証 2 船舶免許 3 航空機免許 4 その他、ライセンスに関する一般のもの 2) キャッシュカードとして 3) 個人証明カードとして 1 健康保険証に準ずるもの(国民年金等も含む) 2 ビザ(国籍等)→全世界的な対応 3 その他 等において実施し得るものである。」(第3頁左下欄第3行〜第8行) 上記記載によれば、「1枚のカードでクレジットカード等の複数の個人証明カードの機能を持たせることができる」及び「個人証明カード10をクレジットカードとして使用した場合について説明したが、個人証明情報メモリ28の記憶内容を変更することにより、他のカードとして使用することができる」のであるから、引用例1には、複数のクレジットカード、ライセンス用カード、キャッシュカード、個人証明カード等の利用を簡素化する方法が記載されているということができる。そして、複数個人証明カードに対応した個人証明情報を単一の電子式個人証明カードの個人証明情報メモリに転送して記憶し、前記電子式個人証明カードのPINメモリに暗証番号を設定し、前記電子式個人証明カードを作動させるために前記暗証番号を入力し、前記作動された電子式個人証明カードで一つの個人証明情報を選択し、選択された個人証明情報を個人証明カードの表示部で表示することが記載されている。 (2)特開昭63-56789号公報(以下、引用例2という) ・「従来のICカードの発行処理方法は、従来の磁気カードの発行のように、磁気テープあるいはフロッピィディスクなどに書き込まれたデータをホストコンピュータを介してそのままカードリーダ・ライタに入力し、未発行のICカードに書込むことにより発行する方法が用いられていた。」(第2頁左上欄第13行〜第18行) ・「第2図は本発明に係る携帯可能記憶媒体処理装置の一例として、ICカードを発行するICカード処理装置の外観斜視図を示し、第1図はそのブロック構成図を示している。すなわち、11はホスト制御ユニットで、図示しない制御部および制御プログラムを内蔵しているメモリ部などからなるホストプロセッサ12と、本装置全体を制御するプログラムおよび本装置の処理内容を記録するハードディスク装置13と、ICカードに書込むデータの一部であるICカードごとに異なるデータ、たとえばカード携帯者の氏名、キャッシュカードであれば口座番号などのデータを入力するためのフロッピィディスク装置14とから構成され、本装置のホストとなるものである。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第13行) 以上によれば、引用例2には、ICカード等の携帯可能記憶媒体にデータを書込むに際して、磁気テープやフロッピィディスクなどのデータ保持手段からデータを読み出し、カードリーダ・ライタにセットされた未発行のICカードに書き込みことが従来から行われていたことが記載されている。 3.対比・判断 本願請求項1に係る発明(以下、本願発明という)と、引用例1に記載された発明とを対比すると、本願発明が「複数のクレジットカード、小切手カード、顧客カード、身分証明カード、文書、キー、アクセス手段、マスターキー等の利用を簡素化する方法」であるのに対し、引用例1に記載された発明では、「複数のクレジットカード、ライセンス用カード、キャッシュカード、個人証明カード等の利用を簡素化する方法」であるから、この点は同じである。そして、引用例1に記載された発明の「個人証明情報」は、「例えばカード使用者が加入しているクレジットカードに関する個人情報」であり、「クレジットカードの会社名」や「各クレジットカード会社の口座番号」であることも明示されているから、本願発明の「複数の単目的カードの発行者の名称、その指定、ロゴ、有効期限、カード番号等のデータセット」に相当する。また、引用例1に記載された発明の「電子式個人証明カード」、「個人情報メモリ」及び「暗証番号」は、それぞれ本願発明の「多機能電子カード」、「記憶部」及び「暗号」に相当する。 そうすると、両者は、複数のクレジットカード、小切手カード、顧客カード、身分証明カード、文書、キー、アクセス手段、マスターキー等の利用を簡素化する方法において、複数の単目的カードの発行者の名称、その指定、ロゴ、有効期限、カード番号等のデータセットを単一の多機能電子カードの記憶部に転送し、前記多機能電子カードの記憶部に転送された各データセットを該多機能電子カードに記憶し、前記多機能電子カードを作動させるための暗号を選択し、前記多機能電子カードを作動させるために前記暗号を入力し、前記作動された多機能電子カードで一つのデータセットを選択し、選択されたデータセットのデータを前記多機能電子カードの表示部で表示する、複数カードの利用を簡素化する方法である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点)データセット転送の際、本願発明では、複数の単目的カードのデータセットは、単目的カードの発行者によって供給されるデータ保持手段によって転送され、且つ該データ保持手段及び前記多目的カードを転送装置にセットして該単目的カードのデータを前記多機能電子カードに転送するのに対し、引用例1に記載された発明では、これらの構成を備えていない点。 上記相違点について検討する。 クレジットカードや身分証明等の目的で発行されるICカードでは、該ICカードに転送されるデータを磁気ディスクやフロッピーディスク等のデータ保持手段から読み出して該ICカードに記憶させることは、引用例2に記載されるように従来から行われてきたことである。また、ICカードにデータを転送し記憶させる際に転送装置を用い、転送記憶するデータを保持するICカード等のデータ保持手段からデータ転送を行うことは、周知である(例えば、特開昭61-48089号公報、特開昭62-93779号公報参照)。 このような事項を考慮すれば、複数の個人証明情報を1枚の電子式個人証明カードで記憶する引用例1に記載される発明において、記憶される個人情報のデータセットを各個人証明カードの発行者によって供給されるデータ保持手段によって電子式個人証明カードに転送するようにし、該データ保持手段と電子式個人証明カードを転送装置にセットして転送することは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、引用例1に記載される発明において、引用例2に記載された発明及び上記周知の事項を適用して本願発明の構成を得ることは当業者が容易に想到し得ることであり、本願発明の効果も各引用例に記載される発明から当業者が当然に予測し得る範囲のものである。 4.結び 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-07-03 |
結審通知日 | 2001-07-10 |
審決日 | 2001-07-24 |
出願番号 | 特願平2-45997 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金田 利規 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
吉見 信明 広岡 浩平 |
発明の名称 | 複数カードの利用を簡素化する方法および装置 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 中山 恭介 |
代理人 | 西山 雅也 |