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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G01P
管理番号 1104336
異議申立番号 異議2003-72162  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-01 
確定日 2004-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3382030号「フルモールド実装型加速度センサ」の請求項1、7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3382030号の請求項1、7に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3382030号の請求項1ないし33に係る発明についての出願は、平成6年10月14日に特許出願され、平成14年12月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1及び7に係る特許に対し、特許異議申立人近藤武より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月7日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項7の
「請求項1記載の加速度センサにおいて、」
の後に、
「前記検出部構造体はリードフレーム上に固定され、」
を挿入する。
イ 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項7の
「プラスチック部に少なくとも1個以上の溝もしくは凹み」
を、
「前記リードフレームの上部におけるプラスチック材料の表面及び下部におけるプラスチック材料の表面に1個以上の溝もしくは凹み」
に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内において、「リードフレーム上に固定され」る点を限定付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加でもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものでもない。
次に上記訂正事項bについては、願書に添付された明細書及び図面の段落【0007】の「リードフレーム3の上部におけるプラスチック材料8の・・・下部におけるプラスチック材料8の・・・」との記載、段落【0019】の「モールドプラスチック部の熱応力緩和機構の実施例を図15に示す・・・図に示すようにプラスチック材料部8に溝あるいは凹み117,118を設ければ良い」との記載、及び、図面の図15に波線でハッチングされた8の部分の上端の2つの白抜き部の一方に引出線と符号117が、下端の2つの白抜き部の一方に引出線と符号118が描かれていることからみて、明細書及び図面に記載された事項の範囲内であることが明らかであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加でもなく、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1及び7に係る発明(以下、「本件発明1及び7」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】シリコン板をエッチング加工してビームで支持されたマスを形成し、前記マスの変位をマスに対向して配置した固定電極とマスとの間の静電容量の変化あるいはビームに配置した歪ゲージの抵抗値変化から加速度を検出できる加速度検出部構造体と有し、前記検出部構造体をプラスチック材料で完全にモールド実装する方式の加速度センサにおいて、前記マスとビームからなる検出部構造体自体が完全に気密構造であり、検出部構造体とプラスチック材料との間の熱膨張係数の差による熱応力によって引き起こされる検出部構造体自体の変形を極小化するように検出部構造体あるいは検出部構造体を囲むプラスチック構造体に熱応力緩和機構を設けたことを特徴とするフルモールド実装型加速度センサ。
【請求項7】請求項1記載の加速度センサにおいて、前記検出部構造体はリードフレーム上に固定され、熱応力緩和機構として前記リードフレームの上部におけるプラスチック材料の表面及び下部におけるプラスチック材料の表面に1個以上の溝もしくは凹みを設けたことを特徴とする加速度センサ。」

(2)刊行物記載の発明
当審で通知した取消理由で引用された刊行物1(特開平1-143963号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は半導体加速度センサーの実装に関するもので、自動車用の加速度センサーとしてアンチスキッドブレーキシステム等に利用される」(1頁右下欄8〜10行)、
「本発明に係る従来技術としては・・・単一結晶シリコンの圧電抵抗効果を用いたセンサーで第5図に示すように加速度センサーのチップ1をヘッダー3、カバー2に取り付けた構造で、ヘッダーとカバーとチップの間には・・・エポキシ化合物4が挟まれている構造である」(1頁右下欄12〜19行)、
「半導体よりなるゲージ梁とウエイトを有するセンサー部及びカバー、ヘッダーよりなる加速度センサーの製造方法に於いて、(1)窒化ケイ素に被覆されたセンサー部及びカバー及びヘッダーの各ウエハを低融点ガラスにて接着し、(2)電極取出しのためのパターン成形を行い、シリコンエッチング液により前記エッチング速度の極めて遅い窒化ケイ素膜までエッチングを行い、(3)緩衝剤注入用の孔を形成し、(4)ワイヤボンデイングを行うために、カバーウエハ裏面と、センサー部ウエハ表面の窒化ケイ素膜及び接着用の低融点ガラスをドライエッチにより除去しボンデイングパッドを露出し、(5)緩衝剤を注入し密閉し、(6)電極パッドと外部リードとをワイヤボンデイング法で結線し、(7)樹脂モールを行う、加速度センサーの製造方法である」(2頁左上欄16行〜右上欄16行)、
「前記技術的手段は次のように作用する・・・通常のウエハと同様に、ダイシングにより多数個のチップに分割すると同時にそのままチップになり、通常のICと同様樹脂封止も可能となり、HIC、プリント板へのベアチップも実装可能である」(2頁右上欄18〜左下欄6行)、
「以下実施例について説明する。第1図(イ)〜(チ)は本実施例の製造工程で、1は加速度センサーを形成したウエハ、2はオーバーロード保護と緩衝剤を内蔵するためのカバーを形成したウエハ、3はセンサーの保護とオーバーロード保護の機能を持つヘッダーを形成したウエハで、それぞれのウエハは第1図(イ)に示すように窒化ケイ素膜8で覆われており、6はウエイトで、7はゲージ梁である。
(1)第1図(ロ)に示すように前記各ウエハ1、2及び3を低融点ガラス(300℃〜400℃)により接着する。5は接着剤である。(2)第2図(ハ)に示すようにウエハ2の表面の窒化ケイ素膜8に電極取り出しのためのエッチング用にパターンを形成する。(3)第2図(ニ)に示すようにKOH等のエッチング液を用いウエハ2のシリコンを表面よりウエハ2の裏面の窒化ケイ素膜8に達するまでエッチングを行う。・・・(7)第2図(チ)に示すようにシリコンオイル等の緩衝剤を注入孔10より注入後、シリコンゴム2等を塗布することにより孔10をふさぐ。・・・(8)次に第2図に示すように通常のIC工程と同様にダイシングによりセンサーチップ毎に分割し、分割したチップをリードフレーム15にダイボンド後、ワイヤボンデイングによりチップの電極とリードを接続する。9はワイヤである。(9)第3図に示すようにトランスファ成形機により樹脂封止を行い、13に示すようにパッケージにする。」(2頁左下欄9行〜3頁左上欄12行)、

同じく刊行物2(特開平5-52867号公報:甲第1号証)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は加速度による慣性力によって移動し周囲から弾性を有した梁にて支持された振動マスが形成されたシリコン基板と、絶縁材に形成された絶縁基板上に前記振動マスと微小ギャップを有して対向する固定電極を形成し、この振動マスと固定電極間の静電容量の変化により、加速度を測定するようにした容量型加速度センサに関する」(段落【0001】)、
「【従来の技術】一般に容量型加速度センサは、図5に示すようにシリコン基板50の表面からエッチングを施し、振動マス51および梁52を残してシリコン基板50の内部に空洞を形成し、この振動マス51および梁52を形成したシリコン基板50の両面から振動マス51と対向する部分に凹部53を形成したガラス基板54,55が陽極接合され、さらに台座63が接着されている。・・・そしてガラス基板54,55に形成された凹部53にはアルミニウム等をスパッタリングもしくは蒸着して電極56,57が形成され、この電極56,57にはリード線58,59が同様にスパッタリングもしくは蒸着されている。また、振動マス51の表面には不純物を拡散して拡散層60が形成され、この拡散層60からそれぞれ拡散リード61が拡散層60と同様に不純物を拡散して形成されている。そしてこの拡散リード61およびリード線58の端部では金線にてウエッジボンディングされて外部に信号が取り出されている」(段落【0002】〜【0003】)、
「【実施例】以下、本願発明を具体的な実施例に基づいて説明する。図1は本発明に係わる差動容量型加速度センサの加速度検出部10を示した平面図であり、図2は図1のA-A線に沿った断面図である。11は慣性力を受ける振動マス部12と、中継部13と、配線取出し部14a,14bおよび外周部15とで構成されるシリコン基板である。16,17はシリコン基板11の両面から陽極接合にて配線取出し部14a,14bおよび外周部15に接合された上部ガラス基板および下部ガラス基板であり、この上部ガラス基板16と下部ガラス基板17には振動マス部12に対して微小ギャップを有して対向する上部固定電極20と下部固定電極21がそれぞれ形成されている。・・・前記シリコン基板11の両面はn型の拡散層が形成されており、このシリコン基板11の前記振動マス部12と中継部13はそれぞれ複数の梁22にて弾性的に結合されている。」(段落【0009】〜【0010】)、
「ここで、図1および図2におけるシリコン基板11の製作プロセスを示した図3(a)〜(e)・・・図4(a)〜(d)を参照し、これらの製作プロセスを説明する。・・・シリコン基板11は厚さ300μmの両面をポリッシュしたものに、リン拡散処理を施し、この後厚さ2μmのオキシナイトライドの絶縁層23をシリコン基板11の表面に選択的にCVD法にて気相成長させて梁22および支持部30を形成する・・・次にこの梁22および支持部30にCVD法にてシリカの絶縁膜25を気相成長させるとともに、振動マス部12上にストッパ31をシリカの絶縁膜25(1μm)で形成する・・・次にシリコン基板11にCVD法にて窒化けい素(SiN)の皮膜を形成して(図3(d))ヒドラジンにてシリコン基板11のエッチングを行うことによって振動マス部12と、中継部13と、配線取出し部14a,14bおよび外周部15にそれぞれ分割される(図3(e))」(段落【0013】〜【0015】)、
「次に、上述の製作プロセスにて製作されたシリコン基板11と上部ガラス基板16および下部ガラス基板17との組付けプロセスを説明する。・・・上部ガラス基板16および下部ガラス基板17とシリコン基板11とをそれぞれ真空にて陽極接合する。・・・そして、次工程のダイシングをする前に、上述したように上部ガラス基板16の第1穴部32と第2穴部33および第3穴部34の内部にクロム銅金(Cr-Cu-Au)を蒸着する。この後、ダイシングを行って第1穴部32と第2穴部33および第3穴部34から配線をボンディングすることで、差動型圧力センサの加速度検出部10が完成される。」(段落【0018】〜【0020】)、
「また、外周部から電気的に絶縁されたシリコンの島で形成された信号取出し部を介して固定電極との配線を行い、この信号取出し部から第1穴部の第1リードにて電気的に接続されて信号が取り出される。これによって寄生容量の影響を防止できるとともにセンサを完全に密閉することができる効果がある。」(段落【0022】)

同じく刊行物3(特開平5-346361号公報:甲第2号証)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「この発明は、半導体圧力センサのアセンブリ構造に関するものである。」(段落【0001】)、
「図5、図6は従来のモールド封止形半導体圧力センサの断面図と斜視図であり、図において、1は半導体圧力センサチップ、2はそのダイヤフラム領域、3はこのダイヤフラム領域2のチップ表面側に形成される歪ゲージ抵抗、4はガラス台座、5はこのガラス台座4がダイボンドされるダイパッド、6はアウターリード、7はこのアウターリード6と圧力センサチップ1上に形成される電極パッドとを接続するワイヤ、8はモールド樹脂である。」(段落【0002】)、
「以下この発明の一実施例を図について説明する。図1、図2において、1〜8は上記従来例と同一部品を示しており、9はモールド樹脂8で形成されるパッケージに設けられた応力緩和溝である。ここで応力緩和溝9は、モールド樹脂8によりパッケージを形成するときと同時に形成され、かつ圧力検知部分から離れた位置に配置されている。・・・次に動作について説明する。圧力に対して電気信号を取り出す方法は従来と同様であるが、ここでモールド樹脂がパッケージ形成後に圧力センサ素子に加える残留応力や熱変化で発生する熱応力は、応力緩和溝9に集中し、歪みゲージ抵抗に加わる圧力以外の応力は緩和され、応力による電気出力信号の誤差が減少する。」(段落【0008】〜【0009】)
図面の図2には、応力緩和溝9がモールド樹脂8の表面に描かれている。

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比する。
a.刊行物1記載の「ゲージ梁、ウエイト、半導体加速度センサー」が、本件発明1の「ビーム、マス、加速度センサ」に相当する。
b.刊行物1記載の「トランスファ成形機により樹脂封止を行い・・・パッケージにする」ことは、本件発明1の「プラスチック材料で完全にモールド実装する方式」に相当し、刊行物1記載のものも「フルモールド実装型加速度センサ」である。
c.刊行物1記載の「緩衝剤を注入し密閉する」ことは、本件発明1の「検出部構造体自体が完全に気密構造である」ことと異ならない。
d.本件発明1はシリコン板をエッチング加工してビームで支持されたマスを形成するものであるが、刊行物1記載のウエイト6、ゲージ梁7は、ウエハ1に形成されているものの、ウエハ1の材質及び加工手段に関する記載はない。
e.本件発明1はマスの変位をマスに対向して配置した固定電極とマスとの間の静電容量の変化あるいはビームに配置した歪ゲージの抵抗値変化から加速度を検出するものであるが、刊行物1にはゲージ梁と記載されているだけで何の値の変化から加速度を検出するのか明記されていない。
f.刊行物1には応力緩和機構に関する記載がない。
上記a.〜f.の考察から、両者は、「板を加工してビームで支持されたマスを形成し、前記マスの変位から加速度を検出できる加速度検出部構造体を有し、前記検出部構造体をプラスチック材料で完全にモールド実装する方式の加速度センサにおいて、前記マスとビームからなる検出部構造体自体が完全に気密構造であるフルモールド実装型加速度センサ」である点の構成(以下、「構成ア」という)で一致し、次の相違点1〜3で相違する。
相違点1:ビームで支持されたマスを形成する際に、本件発明1はシリコン板をエッチング加工して形成するのに対し、刊行物1にはウエハ1の材質及びその加工手段に関する記載がない点。
相違点2:加速度を検出する際に、本件発明1はマスに対向して配置した固定電極とマスとの間の静電容量の変化あるいはビームに配置した歪ゲージの抵抗値変化から検出するのに対して、刊行物1には何の値の変化から検出するのか明記されてない点。
相違点3:本件発明1は、検出部構造体とプラスチック材料との間の熱膨張係数の差によって引き起こされる検出部構造体自体の変形を極小化するように検出部構造体あるいは検出部構造体を囲むプラスチック構造体に熱応力緩和機構を設けるのに対し、刊行物1には熱応力緩和機構に関する記載がない点。
上記相違点について検討するに、相違点1については、刊行物2にシリコン基板(50、11)をエッチング加工してビームで支持されたマスを形成するものが記載されていることから、刊行物1記載のウエハ1及びその加工手段として刊行物2記載のシリコン基板及びエッチング加工手段を採用して本件発明1のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。
次に、相違点2については、刊行物2に振動マスと固定電極間の静電容量の変化により加速度を測定することが記載されており、しかも、刊行物2記載の加速度センサも、いわゆるビームに支持されたマスの変位を利用するという点で刊行物1記載の加速度センサと共通しているから、刊行物1記載の加速度センサに刊行物2に記載された容量変化から検出する検出手段を適用して本件発明1のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。
次に、相違点3については、刊行物3の「モールド樹脂がパッケージ形成後に圧力センサ素子に加える残留応力や熱変化で発生する熱応力は、応力緩和溝9に集中し、歪みゲージ抵抗に加わる圧力以外の応力は緩和される」旨の記載からみて、刊行物3記載の「該応力緩和溝9」が本件発明1の「応力緩和機構」に相当することは明らかである。そして、刊行物3記載のものと刊行物1記載のものとは共に樹脂モールドされたセンサであるという点で技術分野を共通にしているから、刊行物1記載の樹脂モールドされた加速度センサに刊行物3記載の応力緩和溝9を適用して本件発明1のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。
そして、本件発明1の奏する効果は、上記刊行物1〜3に記載された発明から当業者であれば予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明1は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の構成に加えて、「検出部構造体はリードフレーム上に固定され、熱応力緩和機構として前記リードフレームの上部におけるプラスチック材料の表面及び下部におけるプラスチック材料の表面に1個以上の溝もしくは凹みを設けた」点の構成を有するものである。そこで、本件発明7と上記刊行物1に記載された発明を対比する。
a.本件発明1の構成に関する対比・判断については、上記「ア 本件発明1について」で述べたとおりである。
b.刊行物1の記載「第2図に示すように通常のIC工程と同様にダイシングによりセンサーチップ毎に分割し、分割したチップをリードフレーム15にダイボンド後、ワイヤボンデイングによりチップの電極とリードを接続する」からみて、刊行物1記載のものもリードフレーム上に固定されていることが明らかである。
したがって、上記a.及びb.の考察から、両者は、上記「構成ア」及び「検出部構造体はリードフレーム上に固定され」る点の構成で一致し、上記相違点1〜3及び下記相違点4で相違する。
相違点4:本件発明7は、熱応力緩和機構としてリードフレームの上部におけるプラスチック材料の表面及び下部におけるプラスチック材料の表面に1個以上の溝もしくは凹みを設けたものであるのに対して、刊行物1には応力緩和機構に関する記載がない点。
上記相違点について検討するに、相違点1〜3については上記「ア 本件発明1について」で述べたとおりである。
次に相違点4については、刊行物3記載の「応力緩和溝9」が本件発明7の「応力緩和機構としての溝あるいは凹み」に相当し、また、刊行物3記載の応力緩和溝9もモールド樹脂8の表面に設けられていることが明らかである。そして、刊行物3記載のものと刊行物1記載のものとは共に樹脂でモールドされたセンサであるという点で技術分野を共通にしているから、刊行物1記載のモールドされた樹脂の上部表面及び下部表面に刊行物3記載の応力緩和溝9を適用して本件発明7のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。
そして、本件発明7の奏する効果は、上記刊行物1〜3に記載された発明から当業者であれば予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明7は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1、7についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フルモールド実装型加速度センサ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリコン板をエッチング加工してビームで支持されたマスを形成し、前記マスの変位をマスに対向して配置した固定電極とマスとの間の静電容量の変化あるいはビームに配置した歪ゲージの抵抗値変化から加速度を検出できる加速度検出部構造体と有し、前記検出部構造体をプラスチック材料で完全にモールド実装する方式の加速度センサにおいて、前記マスとビームからなる検出部構造体自体が完全に気密構造であり、検出部構造体とプラスチック材料との間の熱膨張係数の差による熱応力によって引き起こされる検出部構造体自体の変形を極小化するように検出部構造体あるいは検出部構造体を囲むプラスチック構造体に熱応力緩和機構を設けたことを特徴とするフルモールド実装型加速度センサ。
【請求項2】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はリードフレーム上に固定され、静電容量の変化あるいは抵抗値変化を検出して加速度に対応した信号を外部に出力する信号処理回路を有し、前記信号処理回路は前記検出部構造体に一体に集積化されるかあるいは前記検出部構造体とは別体で前記検出部構造体近傍のリードフレーム上に固定されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項3】 請求項2記載の加速度センサにおいて、熱応力緩和機構として検出部構造体におけるビームの固定端が相対的に信号処理回路の反対側の位置にくるように、検出部構造体と信号処理回路をリードフレーム上に固定したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項4】 請求項2記載の加速度センサにおいて、リードフレームからなる電源,入出力端子及び調整用端子が外部に引き出されており、信号処理回路部に設けたディジタルメモリの内容を前記調整用端子を利用してディジタル的に変更することにより、ゼロ点や感度などの出力特性をプラスチック材料をモールドした後に調整できるようにしたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項5】 請求項2記載の加速度センサにおいて、熱応力緩和機構としてリードフレーム上,下のプラスチックの厚さをほぼ等しくしたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項6】 請求項2記載の加速度センサにおいて、リードフレーム下部のプラスチック表面に金属製の板を装着したとき、熱応力緩和機構としてリードフレーム下部のプラスチックの厚さをリードフレーム上部のプラスチックの厚さより厚くしたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項7】 請求項1記載の加速度センサにおいて、前記検出部構造体はリードフレーム上に固定され、熱応力緩和機構として前記リードフレームの上部におけるプラスチック材料の表面及び下部におけるプラスチック材料の表面に1個以上の溝もしくは凹みを設けたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項8】 請求項1記載の加速度センサにおいて、プラスチック表面の一部を半導電性の材料あるいは疎水性の材料でコーティングしたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項9】 請求項2記載の加速度センサにおいて、電源,入出力端子などのリードフレームを介して加速度センサを使用するシステムのコントロールユニットへ加速度センサ自身を直接的に表面実装できることを特徴とする加速度センサ。
【請求項10】 請求項9記載の加速度センサにおいて、リードフレームは水平あるいは途中でほぼ直角に曲げられていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項11】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位を静電容量の変化から検出する方式のものであり、ビームとマスを形成した第1のシリコン板の上面と下面にそれぞれ第1と第2のガラス板を接合し、さらに上部の第1のガラス板に第2のシリコン板を接合した4層構造よりなり、可動電極であるマスに対向した第1のガラス板の表面部分に固定電極を配置した構造体よりなり、熱応力緩和機構として第2のシリコン板と第1のガラス板の間に空所を設けたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項12】 請求項11記載の加速度センサにおいて、空所は第1のガラス板あるいは第2のシリコン板の表面の少なくとも一方に加工した凹みであることを特徴とする加速度センサ。
【請求項13】 請求項12記載の加速度センサにおいて、第2のシリコン板と第1のガラス板のダイシング面からの接合寸法が第1のシリコン板と第1のガラス板のダイシング面からの接合寸法より小さくなるように空所の大きさを決めたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項14】 請求項11記載の加速度センサにおいて、リードフレームと直接的に固定される第2のガラス板の厚さが検出部構造体を構成する4枚の板の中で最も厚いことを特徴とする加速度センサ。
【請求項15】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位を静電容量の変化から検出する方式のものであり、ビームとマスを形成した第1のシリコン板の上面と下面にそれぞれ第2と第3の板を接合、前記第2と第3の板の逆側の面にそれぞれ第4と第5の板を接合した5層構造よりなり、熱応力緩和機構として前記第2と第4の板の間および前記第3と第5の板の間に空所をそれぞれ設けたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項16】 請求項15記載の加速度センサにおいて、空所は第2と第4の板および第3と第5の板の表面の少なくとも一方に加工した凹みであることを特徴とする加速度センサ。
【請求項17】 請求項16記載の加速度センサにおいて、第4および第5の板のダイシング面からの接合寸法が第1の板のダイシング面からの接合寸法より小さくなるように空所の大きさを決めたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項18】 請求項15記載の加速度センサにおいて、リードフレームと直接的に固定される第5の板の厚さが検出部構造体を構成する5枚の板の中で最も厚いことを特徴とする加速度センサ。
【請求項19】 請求項15記載の加速度センサにおいて、第2および第3の板はガラス板,第4および第5の板はシリコン板で構成され、5枚の板を積層した検出部構造体は前記5枚の板を同時に陽極接合することによって組み立てられ、可動電極であるマスの両面に対向した前記第2および第3の板の表面部分にそれぞれ固定電極を配置したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項20】 請求項15記載の加速度センサにおいて、第1,第2,第3,第4および第5の板は全てシリコン板で構成され、これらのシリコン板を積層した検出部構造体はシリコンを酸化させた熱酸化膜によって高温で接合することによって組み立てられ、可動電極であるマスと対向した前記第2と第3の板は導電性の材料であるためそのまま固定電極として使用することができることを特徴とする加速度センサ。
【請求項21】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位を静電容量の変化から検出する方式のものであり、ビームとマスを形成した第1のシリコン板の上面と下面にそれぞれ第2と第3のシリコン板を熱酸化膜を介して接合した3層構造よりなり、可動電極である前記マスの両面に対向した前記第2,第3のシリコン板の少なくとも一方に、熱応力緩和機構として両端支持あるいは片側支持のシリコン薄板よりなる固定電極をエッチング加工により形成したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項22】 請求項21記載の加速度センサにおいて、エッチング加工前に第2,第3のシリコン板の少なくとも一方の表面にボロンを高濃度にドープし、このドーピング部分によってシリコン薄板よりなる固定電極が形成され、この薄板形状の固定電極によって前記第2,第3のシリコン板の少なくとも一方に空所が構成されていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項23】 請求項22記載の加速度センサにおいて、ダイシング面から空所までの距離が第1のシリコン板のダイシング面からの接合寸法より小さくなるように空所の大きさを決めたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項24】 請求項21記載の加速度センサにおいて、3枚のシリコン板を積層した検出部構造体の中で熱応力緩和機構として、リードフレームと固定される第3のシリコン板の厚さが最も厚いことを特徴とする加速度センサ。
【請求項25】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位を静電容量の変化から検出する方式のものであり、前記ビームとマスはシリコン板の表面を犠牲層を利用したエッチング加工によって製作され、且つ前記シリコン板とは熱酸化膜を介して電気的に絶縁されており、熱応力緩和機構として前記シリコン板の厚さを前記ビームとマスの厚さより約100倍以上厚くし、前記ビームとマスを空所内に囲むように前記熱酸化膜の上に形成したポリシリコン層へガラス板よりなるキャップを気密に接合したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項26】 請求項25記載の加速度センサにおいて、シリコン板自体が固定電極材料になっていることを特徴とする加速度センサ。
【請求項27】 請求項25記載の加速度センサにおいて、可動電極であるマスに対向した固定電極を前記マスと同様、犠牲層を利用したエッチング加工によって前記シリコン板の表面に形成したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項28】 請求項27記載の加速度センサにおいて、可動電極であるマスおよび固定電極は共に櫛歯の形状を有していることを特徴とする加速度センサ。
【請求項29】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位をビームに形成された歪ゲージの抵抗値変化から検出する方式のものであり、前記ビームとマスを形成した第1のシリコン板の上面と下面にそれぞれ第1,第2のガラス板を陽極接合した3層構造よりなり、熱応力緩和機構として前記シリコン板表面の熱酸化膜上に形成したポリシリコン層を介して陽極接合される前記第1のガラス板の表面に空所となる凹みを設けたことを特徴とする加速度センサ。
【請求項30】 請求項29記載の加速度センサにおいて、歪ゲージを形成したビーム固定端における第1のシリコン板と第2のガラス板間のダイシング面からの接合距離が第1のシリコン板と第1のガラス板間のダイシング面からの接合距離より大きいことを特徴とする加速度センサ。
【請求項31】 請求項29記載の加速度センサにおいて、3層積層構造の検出部構造体において、第2のガラス板の厚さが最も厚いことを特徴とする加速度センサ。
【請求項32】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスの変位をビームに形成された歪ゲージの抵抗値変化から検出する方式のものであり、前記ビームとマスはシリコン板の表面を犠牲層を利用したエッチング加工によって製作され、熱応力緩和機構として前記シリコン板自体の厚さを前記ビームとマスの厚さより約100倍以上厚くし、前記ビームとマスを空所内に囲むように前記シリコン板の表面に形成したポリシリコン層へガラス板よりなるキャップを気密に接合したことを特徴とする加速度センサ。
【請求項33】 請求項1記載の加速度センサにおいて、検出部構造体はビームで支持されたマスを有する第1のシリコン板の上下にそれぞれ第2のシリコン板と第3のシリコン板を気密に積層したものよりなり、熱応力緩和機構として前記第2及び第3のシリコン板の厚さを前記第1のシリコン板の横幅寸法の少なくとも半分以上に、また前記第1のシリコン板と前記第2及び第3のシリコン板との接合しろを前記第1のシリコン板の横幅寸法の少なくとも10%以上にしたことを特徴とする加速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車の安全システム用加速度センサ、特にアンチロック・ブレーキ制御システムやエアバッグシステムなどに使用される加速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の加速度センサとして半導体歪ゲージ式,静電容量式,圧電式など数多くのものが知られている。例えば、特開平1-152369号公報に記載されているように、これらの加速度センサの検出部構造体は金属パッケージ内に収納されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
検出部構造体は金属パッケージ内に実装されるため、加速度センサの実装コストが高くなると共に、パッケージ前にセンサの出力特性を調整しなければならなかった。また、加速度センサの寸法が大きく、重量もおもくなるので、自動車応用システムのコントロールユニットへ表面実装したとき共振などの問題が生じる。一方、プラスチック材料のフルモールド実装は汎用ICの低コストな実装方法の一つとして広く知られている。本実装方法を適用したとき、従来型加速度センサの検出部構造体は汎用ICとは異なり、一般的に熱応力の影響を受けやすい構造になっているので、加速度センサの温度特性が極端に悪くなるという問題点があった。さらに、プラスチック材料の吸湿による変形によって、加速度センサの出力特性が変化するという問題点もあった。また、金属パッケージでないため、外部からの電気的ノイズの影響を受け易いという問題点もあった。
【0004】
本発明の目的は、低コストでパッケージ後に出力特性が調整でき、また表面実装が可能な小型,軽量で高性能な加速度センサを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
加速度センサの気密型検出部構造体とディジタル調整機能付き信号処理回路をリードフレーム上に固定し、検出部構造体,信号処理回路およびリードフレーム間のワイヤボンディングを行った後、その周囲へプラスチック材料を完全にモールドする。このとき、検出部構造体とモールドプラスチック部に種々の熱応力緩和機構を設ける。そして、モールド終了後にプラスチック部の表面を半導電性の材料や疎水性の材料でコーティングする。
【0006】
【作用】
加速度センサの気密型検出部構造体とディジタル調整機能付き信号処理回路をリードフレーム上に固定した後、その周囲をプラスチック材料でフルモールドする実装方法により低コスト化を図る。フルモールド実装により加速度センサの小型,軽量化が図れ、加速度センサの表面実装が可能になる。モールドプラスチック部の外表面を半導電性の材料でコーティングすることにより、電気的ノイズに強い加速度センサが得られる。検出部構造体とフルモールドプラスチック部に熱応力緩和機構を設けることにより、検出部構造体とプラスチック材料との間の熱膨張係数の差による熱応力によって引き起こされる検出部構造体自体の変形を極少化し、加速度センサの温度特性を改善する。この熱応力緩和機構は、プラスチック材料の吸湿変形によって引き起こされる出力特性の変化を防止することに対しても効果がある。モールドプラスチックの表面を疎水性の材料でコーティングすればプラスチックの吸湿による変形を極少化でき、加速度センサの出力変化を防止できる。信号処理回路に結線されたリード端子をフルモールドプラスチック部の外部に引出すことにより、この端子を利用して加速度センサの出力特性の調整をフルモールド終了後にできるようにする。
【0007】
【実施例】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの実施例を図1に示す。ビームで支持されたマス(錘)を有する加速度検出部構造体2と前記マスの変位を静電容量の変化あるいは歪ゲージの抵抗値変化から検出して加速度に対応した信号を外部に出力する信号処理回路1をFe-Niなどの金属材料よりなるリードフレーム3へ接着剤(図には示していない)を介して固定した後、信号処理回路1と検出部構造体2間を金線などの導線7,信号処理回路1と出力調整端子5間を導線200,信号処理回路1と電源および出力端子4間を導線6を介してワイヤボンディング作業により電気的に結線している。なお、加速度検出部構造体2の詳細構造については後述する。ワイヤボンディング作業が終わった後、検出部構造体2と信号処理回路1の周囲へ図に示すようにプラスチック材料8を完全にフルモールドする。なお、プラスチック材料8のモールド作業は70気圧,170℃の条件下で行われた。プラスチック材料8の熱膨張係数はビームとマスの材料であるシリコンと同じであることが望ましいが、モールド作業時のプラスチック材料8の流動性から適用できる熱膨張係数の下限値は8ppm/℃であった。なお、シリコンの熱膨張係数は約3ppm/℃である。このように、検出部構造体2を構成する材料とプラスチック材料8間の熱膨張係数の差は約5ppm/℃と大きく、この熱膨張係数の差によって検出部構造体2は大きな熱応力である圧縮と曲げ作用を受けて変形する。この変形によって、加速度センサのゼロ点や感度が温度によって大きく変化する。この温度影響を改善する種々の熱応力緩和機構を本図および以下に示す図で説明する。プラスチック材料8が吸湿で変形したときの影響は、見かけ上プラスチック材料8の熱膨張係数が部分的に変化したものと等価である故、この熱応力緩和機構はプラスチック材料8の吸湿変形の影響をなくすことに対しても有効な結果をもたらす。出力調整端子5,電源および出力端子4はリードフレーム3と同じ材料で構成され、これらはプラスチック材料8をモールドする前は外部の外枠で機械的に連結している。プラスチック材料8をフルモールドした後、外枠を切断しこれらの機械的および電気的な連結をなくする。本加速度センサは孔9を介してネジなどにより、自動車システムのコントロールユニットへ固定される。あるいは、プラスチック材料8の下部10でコントロールユニットへ表面実装される。本図における熱応力緩和機構は、リードフレーム3の上部におけるプラスチック材料8の厚さTpaを下部におけるプラスチック材料8の厚さTpbにほぼ等しくしたことである。こうすることによって、リードフレーム3を中心とするプラスチック材料8の温度変化による曲げ変形は極少になり、加速度センサの温度影響の改善に大きく寄与できた。なお、以下に示す図において、同一の番号は同一の要素を示すものとする。
【0008】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構を図2に示す。検出部構造体はシリコン板11,ガラス板12,シリコン板13およびガラス板14の4層積層構造よりなり、これらの4枚の板はウエハ状態で積層された後、良く知られた陽極接合方法で接着され各検出部構造体にダイサーなどの方法によってダイシングされる。シリコン板13にはエッチング加工によって、ビーム15に支持されたマス16を形成している。(なお、シリコン板13の平面構造を参考までに図8に示している。)マス16に対向したガラス板12の表面へ金属膜よりなる固定電極17をスパッタや蒸着などの方法で形成している。この固定電極17はガラス板12にあけたスルーホール19の内面とガラス板12の上部表面に設けたリード部20によってシリコン板11と電気的に接続されている。リード部20の一部はシリコン板11とガラス板12の間に、図に示すように挾みこまれている。本検出部構造体に加速度が作用すると、ビーム15で支持されたマス16は錘の機能を有し、加速度の大きさに応じて上下に変位する。シリコン板13は導電性の材料であり、マス16は可動電極となる。マス16と固定電極17間のギャップ18の寸法変化を静電容量の変化から計測して、加速度に応じたマス16の変位を検出することができる。即ち、本図に示した加速度検出部構造体は静電容量式の検出部構造体である。シリコン板11の上にパッド21,シリコン板13の上にパッド22が形成され、これらのパッドを介して検出部構造体は前述したワイヤボンディング作業により信号処理回路と電気的に結線される。本図に示した検出部構造体のチップサイズは約数ミリ角で、各4枚の板の厚さは約数百ミクロン(但し、後述するようにガラス板14の厚さは厚いほど良い)、マス16とビーム15の厚さは約数十ミクロン,ギャップ18は約数ミクロンである。次に、本検出部構造体における熱応力緩和機構について述べる。静電容量式加速度センサにおけるゼロ点や感度の温度特性はマス16と固定電極18間のギャップ18によって決まる故、熱応力緩和機構の目的は温度が変化してもギャップ18の寸法が変化しないようにすることにある。このためには、ガラス板12とマス16を支持するビーム15の熱応力による変形を極少化すれば良い。シリコン板11に空所21を形成することにより、検出部構造体が周囲のプラスチック材料から圧縮,引っ張り,曲げなどの熱応力を受けても、加速度センサの温度特性に問題を起こさない程度までガラス板12の変形を小さくすることができた。なお、空所21はシリコン板11の表面にエッチングによって加工された凹みである。また、ガラス板12とシリコン板11の接合部のダイシング面からの距離Laをガラス板12とシリコン板13の接合部のダイシング面からの距離Lbより小さくすることにより、ガラス板12とビーム15の曲げ変形を小さくすることができた。前述したように、シリコン板11の厚さTsa,ガラス板12の厚さTga,シリコン板13の厚さTsbは約数百ミクロンと似たような厚さである。これに対して、検出部構造体自体が熱膨張係数の異なるリードフレームに接着される面となるガラス板14の厚さTgbを前記3枚の板より約2倍程度以上に厚くすることが、熱応力緩和機構として有効であった。
【0009】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構の他の実施例を図3に示す。検出部構造体はシリコン板23,ガラス板24,シリコン板25,ガラス板26,シリコン板27の5層構造よりなり、陽極接合によって接合されている。中央のシリコン板25には、ビーム28で支持されたマス29がエッチングによって形成されている。このマス29に対向して、上下のガラス板24,26には固定電極32,34が形成されている。これらの固定電極32,34はそれぞれスルーホール30,31の内面およびガラス板24,26の表面に形成したリード部33,35を介してシリコン板23,27と電気的に結線されている。本検出部構造体は前図と同様、静電容量式であり、可動電極であるマス29の両面に固定電極を形成し、マス29の厚さがビーム28の厚さより厚くなっていることが特徴である。次に、本検出部構造体における熱応力緩和機構を説明する。熱応力緩和機構として、(1)シリコン板23と27に空所36,37を設けること、(2)ビーム28の固定端側におけるシリコン板25とガラス板24,26との接合部のダイシング面からの距離をガラス板24,26とシリコン板23,27との接合部のダイシング面から空所36,37までの距離より大きくすること、(3)シリコン板27の厚さを他の4枚の板の厚さより約2倍以上厚くすることが有効であった。なお、空所36,37はシリコン板23,27の表面をエッチングすることによって得られる凹みであり、その深さは前図と同様に約10ミクロンである。
【0010】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構の他の実施例を図4に示す。検出部構造体はシリコン板38,39,40,41および42の5層構造よりなり、熱酸化膜43,44,45および46を介して良く知られたシリコン板の直接接合技術によって気密に接合されている。本検出部構造体も静電容量式であり、中央のシリコン板40にはビーム48に支持されたマス47がエッチングにより形成されている。可動電極であるマス47に対向したシリコン板39,41は導電性の材料であり、このまま固定電極として使用される。なお、固定電極用のパッドは図には示していないものの、これらのシリコン板39,41上に設けられる。この場合も前図と同様、熱応力緩和機構として、(1)シリコン板38,42へ空所49,50を設けること、(2)ビーム48の固定端側におけるシリコン板40の接合寸法をダイシング面から空所49,50までの距離より大きくすること、(3)シリコン板42の厚さを他の4枚のシリコン板の厚さの約2倍以上にすることが有効であった。
【0011】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構の他の実施例を図5に示す。検出部構造体はシリコン板51,52および53の3層構造よりなり、熱酸化膜54及び55を介して気密に接合されている。本検出部構造体は静電容量式であり、中央のシリコン板52にはビーム57に支持されたマス56がエッチング加工により形成されている。あらかじめ、シリコン板51と53の表面にボロンを高濃度にドーピングし、この高濃度部が他の部分よりエッチング速度が極端に遅いことを利用して、シリコン板51および53の表面に両端支持構造の薄板58および59を形成している。この薄板部分58,59がボロンの高濃度部である。あらかじめドライエッチであけた孔60及び61を介して、異方性エッチングによりシリコン板51および53に空所62及び63をそれぞれ形成している。可動電極であるマス56に対向した薄板58および59は固定電極となる。この場合の熱応力緩和機構としては、(1)両端支持構造の薄板58および59を固定電極とし、空所62および63をそれぞれシリコン板51および53に設けること、(2)ビーム57の固定端側のみならず、全周囲におけるシリコン板52とシリコン板51および53の接合部のダイシング面からの距離がダイシング面から凹み62および63までの寸法より大きいこと、(3)シリコン板53の厚さを他のシリコン板の厚さの約2倍以上にすることが有効である。
【0012】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を図6に示す。検出部構造体はシリコン板64,65および66の3層構造よりなり、熱酸化膜67および68を介して気密に接合されている。中央のシリコン板65には、ビーム70で支持されたマス69をエッチング加工により形成している。シリコン板64および66にはそれぞれ、固定電極となる片側支持構造の薄板71および72,空所73および74がエッチングにより形成されている。熱応力緩和機構として、(1)固定電極を片側支持構造の薄板とし、空所を設けたこと、(2)中央シリコン板のビーム固定端側の接合寸法をダイシング面から凹みまでの距離より大きくしたこと、(3)最下部のシリコン板の厚さを他のシリコン板の厚さの約2倍以上にしたことが有効である。プラスチック材料から検出部構造体が熱応力を受けて変形しても、ビーム70および片側支持構造の薄板71,72の変形は極少化される。ビーム70と薄板71,72が変形しても、同じビーム形状である故、マス69と薄板71,72間のギャップの変化は極めて小さいものになる。
【0013】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構の他の実施例を図7に示す。検出部構造体はガラス板75,シリコン板76およびガラス板77の3層構造よりなり、陽極接合によって気密に接合されている。中央のシリコン板76には、ビーム79で支持されたマス78がエッチングにより形成されている。ビーム79の固定端近傍に、歪ゲージ80が拡散によって形成され、熱酸化膜82で保護されている。本検出部構造体は、加速度によるマス78の変位を歪ゲージの抵抗値変化から検出する歪ゲージ式である。熱酸化膜82の上にはポリシリコン層83が形成されており、このポリシリコン層83を利用して空所81を有するガラス板75がシリコン板76へ陽極接合により気密に接着されている。なお、空所81はガラス板75にエッチングその他の方法で形成された深さ約10ミクロンの凹みである。歪ゲージ80はシリコン板76上に形成したパッド84を介して、信号処理回路と電気的に結線される。図に示すように、ダイシング面から空所81までの距離をLa、ビーム79の上部固定端までの距離をLb、下部固定端までの距離をLcとする。寸法Laが寸法LbおよびLcに対して小さくなるように空所81のサイズを決めることが、熱応力緩和機構として有効であった。また、静電容量式の場合と同様、リードフレームへ接着されるガラス板77の厚さが他の2枚の板の厚さの約2倍以上であることも有効であった。
【0014】
図2に示した検出部構造体のシリコン板13の平面図を図8に示す。図8に示すように、マス16は2本のビーム15で支持されている。領域85はガラス板12と接合される部分およびそれと同一平面の部分、領域86はパッド22の形成される部分、領域87はエッチング深さが約100ミクロンの部分、領域88はビーム15およびマス16と同一のエッチング深さ(数ミクロンのエッチング量でギャップ寸法を決める)の部分である。
【0015】
本発明による検出部構造体のフルモールド時における熱応力緩和機構の他の実施例を図9に示す。SOI基板の犠牲層エッチング技術を利用して、シリコン基板90の表面にビーム・マス系93を形成している。ビーム・マス系93の下部のギャップ94は熱酸化膜91を犠牲層エッチングによって除去した部分である。熱酸化膜91の上に形成したポリシリコン層92を介して、空所95を有するガラス板89をシリコン板90へ陽極接合により気密に接着している。空所95はガラス板89にエッチングなどによって加工した凹みである。シリコン板90はパッド97を介して、ビーム・マス系93はポリシリコン層92,パッド96を介して信号処理回路と電気的に結線される。本検出部構造体はY-Y軸方向の加速度を検出するものである。プラスチック材料からの熱応力によってビーム・マス系93およびシリコン板90が変形しないように、シリコン板90の厚さをビーム・マス系93の厚さの少なくとも約100倍以上に厚くすることが熱応力緩和機構として有効であった。なお、ビーム・マス系93の厚さは数ないし数十ミクロンの値である。ビーム・マス系93の平面図を図10に示す。ビーム・マス系は4本のビーム99で支持されたマス100よりなり、各ビーム99は固定端98部で熱酸化膜91の上に固着されている。本検出部構造体はマス100を可動電極、シリコン板90を固定電極として使用すれば静電容量式に、ビーム99に歪ゲージを形成してこれを利用すれば歪ゲージ式の検出部になる。
【0016】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を図11に示す。本検出部構造体は図9に示した構造体と同様な手法で製作され、図9とはビーム・マス系の形状が異なり、X-X方向の加速度を検出するところに特徴がある。可動電極であるマス102と固定電極101間のギャップ103の寸法変化を静電容量の変化から検出して加速度を計測するものである。熱応力緩和機構の内容は、図9に示した検出部構造体の場合と同じである。ビーム・マス系の平面図を図12に示した。ビーム105で支持されたマス102と固定電極101は櫛歯形状になっている。櫛歯形状にしているのは、ギャップ103の対向面積を大きくして感度を増加させるためである。ビーム105および固定電極101は固定端104部で熱酸化膜91の上に固着されている。
【0017】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を図13に示す。シリコン板108,シリコン板109およびシリコン板110が熱酸化膜111および112を介して気密に接合された3層構造よりなり、中央のシリコン板109にビーム107で支持されたマス106がエッチング加工によって形成されている。マス106を可動電極、これに対向した上下のシリコン板108と110を固定電極とする静電容量式の検出部構造体である。プラスチック材料からの熱応力によるビーム107と上下のシリコン基板108および110の変形を極少化できれば、加速度センサの温度特性を改善することができる。このためには、上下のシリコン板を厚くして検出部構造体の全体形状をサイコロのように立方体に近い形にし、ビーム固定端の接合寸法を十分に大きくすれば良い。検出部構造体の横幅、即ち中央シリコン板109の横幅寸法をLとすると、熱応力緩和機構としてシリコン板108の厚さTuおよびシリコン板110の厚さTdを少なくとも横幅寸法Lの半分以上にすることが有効であった。また、ビーム107の固定端側における中央のシリコン板109と上下のシリコン板108および110との間の接合寸法Wは少なくとも横幅寸法Lの10%以上にすることも極めて有効であった。
【0018】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を図14に示す。シリコン板108,109および110が厚さ約数十ミクロンのガラス層113および114を介して陽極接合で気密に接合された3層構造よりなり、中央のシリコン板109にビーム107で支持されたマス106をエッチング加工で形成した静電容量式の検出部構造体である。マス106に対向したガラス層113および114の表面にはそれぞれ金属薄膜よりなる固定電極115および116が形成されており、それぞれシリコン板108および110と電気的に接続されている。本検出部構造体は前図に示したものに対して接合方法が異なるだけであり、前図と同じ熱応力緩和機構を適用できた。
【0019】
本発明によるモールドプラスチック部の熱応力緩和機構の実施例を図15に示す。プラスチック材料部8が検出部構造体2に及ぼす熱応力を低減させるためには、図に示すようにプラスチック材料部8に溝あるいは凹み117,118を設ければ良い。これらの溝は温度特性を向上させるための熱応力緩和機構として有効であった。
【0020】
本発明によるモールドプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例を図16に示す。信号処理回路1の厚さ(高さ)は約数百ミクロンであるのに対して、検出部構造体2は1ミリ以上と厚い場合が多い。この場合の熱応力緩和機構としては、検出部構造体2の上部のプラスチック材料8を凸型部119とするのが有効である。信号処理回路1と検出部構造体2の上部のプラスチック材料の厚さが同じになり、フルモールド時のプラスチック材料の流動性を確保できる。結果として、プラスチック材料8の局所的な熱膨張係数の差異はなくなり、プラスチック材料部8が検出部構造体2に及ぼす熱応力を全体的に均一化することができる。本発明によるモールドプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例を図17に示す。加速度センサを使用するシステムの装着方法によっては、プラスチック材料部8の下部に金属板120を設けて同時にフルモールドするほうが都合が良い場合がある。このとき、プラスチック材料部8がバイメタル効果によって全体的にそらないようにする必要がある。この場合の熱応力緩和機構として、プラスチック材料部8のリードフレーム下部の厚さTpbをリードフレーム上部の厚さTpaより厚くすることが有効である。
【0021】
本発明によるモールドプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例を図18に示す。本図は信号処理回路1と検出部構造体2の相対位置関係を示したものである。信号処理回路1はシリコン基板よりなるICであり、プラスチック材料8より剛性の高い材料である。この剛性の高い材料によって検出部構造体2の内部構造が曲げなどの変形を受けないように、マス121を支持するビーム122の固定端側を信号処理回路1の反対側にくるように検出部構造体2を配置するのが熱応力緩和機構として有効であった。
【0022】
本発明によるモールドプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例を図19に示す。プラスチック材料部8の周囲に疎水性の材料123をコーティングしたものである。これによって、プラスチック材料部8の吸湿による変形を防止できる故、熱応力緩和機構として有効である。また、コーティング膜123が導電性もしくは半導電性の材料であれば、加速度センサは外部からの電気的なノイズの影響を受けにくくなる。
【0023】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例を図20に示す。本図は信号処理回路と検出部構造体を一体に集積化したもので、124は集積化検出部構造体を示している。このような場合でも、これまでに述べてきた検出部構造体およびプラスチック材料部の熱応力緩和機構の手法がそのまま適用できる。
【0024】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例を図21に示す。電源や出力端子であるリードフレーム4を厚く、例えば0.5ミリ以上にしてリードフレームの剛性を上げれば、このリードフレーム4を介して加速度センサを各種自動車応用システムのコントロールユニットへ直接的に表面実装することができる。
【0025】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例を図22に示す。良く知られた汎用ICと同じ実装方法であり、信号処理回路部1と検出部構造体2をプラスチック材料8内に封入した後、電源および出力端子であるリードフレーム4と出力調整端子であるリードフレーム5を図に示すように直角に曲げている。
【0026】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの製造工程図を図23に示す。検出部構造体と信号処理回路を厚さが約数十ミクロンのエポキシ接着剤でリードフレームの上に接着する。検出部構造体,信号処理回路およびリードフレーム間をワイヤボンディングで電気的に結線した後、これらをモールド治具内に装着し、170℃,70気圧の雰囲気下でプラスチックをモールドする。次に、本モールド品のリードフレームの外枠を切断によって除去し、電源,出力端子および調整端子を各々電気的に分離する。調整端子を利用して、加速度センサの出力特性をディジタル的に調整する。最後に、製品としての検査を行う。
【0027】
信号処理回路の概略構成を図24に示す。信号処理回路1は検出部構造体2における静電容量の変化(あるいは歪ゲージの抵抗値変化)を検出する部分125,前記検出部の信号を増幅する部分126およびゼロ点や感度などの特性を調整して出力信号Voを出力する部分127よりなる。
【0028】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの温度特性の評価結果の一例を図25に示す。本図は測定範囲が0〜±50G用の加速度センサの感度誤差を示したものである。ここで、1G=9.8m/s2である。図2に示した検出部構造体を図18に述べた手法でモールドしたときの温度特性を対策後として記載した。-40℃〜+85℃の広い温度範囲で、感度誤差は±1%以下と高精度であった。対策前と記載したものは本発明による熱応力緩和機構を何ら適用しなかった場合であり、感度誤差は約±25%と大きかった。なお、測定範囲が0〜±1Gと小さい加速度センサについても、本発明による熱応力緩和機構の効果を確認した。マスを支持するビーム系の最適なバネ定数を測定範囲に合致させることにより、測定範囲にあまり係り無く温度特性を図25のように改善することができた。
【0029】
【発明の効果】
前述したように、本発明により小型,低コストで表面実装に適した高性能な加速度センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの実施例を示した図。
【図2】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の実施例を示した図。
【図3】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図4】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図5】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図6】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図7】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図8】
図2に示した検出部構造体の中央シリコン板の平面図。
【図9】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図10】
図9に示した検出部構造体のビーム・マス系の平面図。
【図11】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図12】
図11に示した検出部構造体のビーム・マス系の平面図。
【図13】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図14】
本発明による検出部構造体の熱応力緩和機構の他の実施例を示した図。
【図15】
本発明によるプラスチック部の熱応力緩和機構の実施例を示した図。
【図16】
本発明によるプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例図。
【図17】
本発明によるプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例図。
【図18】
本発明によるプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例図。
【図19】
本発明によるプラスチック部の熱応力緩和機構の他の実施例図。
【図20】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例図。
【図21】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例図。
【図22】
本発明によるフルモールド型加速度センサの実装方法の他の実施例図。
【図23】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの製造工程図。
【図24】
信号処理回路の概略構成図。
【図25】
本発明によるフルモールド実装型加速度センサの温度特性を示した図。
【符号の説明】
1…信号処理回路、2…検出部構造体、3…リードフレーム、4…電源,出力端子、5…出力調整端子、6,7,200…導線、8…プラスチック材料部、9,60,61…孔、10…下部、11,13,23,25,27,38,39,40,41,42,51,52,53,64,65,66,76,90,108,109,110…シリコン板、12,14,24,26,75,77,89…ガラス板、15,28,48,57,70,79,99,105,107,122…ビーム、16,29,47,56,69,78,100,102,106,121…マス、17,32,34,101,115,116…固定電極、18,94,103…ギャップ、19,30,31…スルーホール、20,33,35…リード部、21,36,37,49,50,62,63,73,74,81,95…空所、22,84,96,97…パッド、43,44,45,46,54,55,67,68,82,91,111,112…熱酸化膜、58,59,71,72…薄板、80…歪ゲージ、83,92…ポリシリコン層、85,86,87,88…領域、93…ビーム・マス系、98,104…固定端、113,114…ガラス層、117,118…溝,凹み、119…凸型部、120…金属板、123…コーティング材、124…集積化検出部構造体、125…静電容量の変化検出部、126…増幅部、127…調整部。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-26 
出願番号 特願平6-249033
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (G01P)
最終処分 取消  
前審関与審査官 白石 光男  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 三輪 学
杉野 裕幸
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3382030号(P3382030)
権利者 株式会社日立製作所 株式会社日立カーエンジニアリング
発明の名称 フルモールド実装型加速度センサ  
代理人 平木 祐輔  
代理人 平木 祐輔  
代理人 平木 祐輔  

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