• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1104339
異議申立番号 異議2003-72487  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-07 
確定日 2004-08-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3395197号「映像信号記録装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3395197号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1. 手続の経緯
特許第3395197号の請求項1に係る発明は、平成4年2月20日に特許出願され、平成15年2月7日にその特許権の設定登録がなされ、その後、小塚浩より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月9日に訂正請求がなされたものである。

2. 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
ア. 訂正事項a
特許第3395197号明細書の請求項1を次のとおり訂正する。
「【請求項1】 レンズと、アイリスと、CCDイメージセンサとカメラ信号処理回路と、前記レンズの焦点を調整するフォーカス駆動部と、前記アイリスの絞り量を調整するアイリス駆動部と、前記CCDの読み出し速度を制御するCCD読み出し制御部とを有して動画と静止画を記録媒体に記録する映像信号記録装置において、
前記カメラ信号処理回路から出力される輝度信号から特徴抽出を行う特徴抽出回路と、該特徴抽出回路からのデータが供給され、前記フォーカス駆動部、アイリス駆動部並びにCCD読み出し制御部を制御すると共に自動利得制御処理、ガンマ補正等の信号処理を前記カメラ信号処理回路で行わせるマイクロプロセッサと、前記特徴抽出回路で特徴抽出するエリアを制御することができる動きベクトル検出回路とを有し、前記マイクロプロセッサは、前記動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであり、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御、アイリスの駆動制御、CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及び前記撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいて切り換えて前記マイクロプロセッサが前記特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行い、静止画用映像信号又は動画用映像信号を生成する撮像手段と、
前記撮像手段が生成した静止画用映像信号及び動画用映像信号を前記記録媒体に記録する記録手段とを備えることを特徴とする映像信号記録装置。」
イ.訂正事項b
同書、段落【0007】の記載を次のとおり訂正する。
「【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る映像信号記録装置は、レンズと、アイリスと、CCDイメージセンサとカメラ信号処理回路と、前記レンズの焦点を調整するフォーカス駆動部と、前記アイリスの絞り量を調整するアイリス駆動部と、前記CCDの読み出し速度を制御するCCD読み出し制御部とを有して動画と静止画を記録媒体に記録する映像信号記録装置において、前記カメラ信号処理回路から出力される輝度信号から特徴抽出を行う特徴抽出回路と、該特徴抽出回路からのデータが供給され、前記フォーカス駆動部、アイリス駆動部並びにCCD読み出し制御部を制御すると共に自動利得制御処理、ガンマ補正等の信号処理を前記カメラ信号処理回路で行わせるマイクロプロセッサと、前記特徴抽出回路で特徴抽出するエリアを制御することができる動きベクトル検出回路とを有し、前記マイクロプロセッサは、前記動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであり、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御、アイリスの駆動制御、CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及び前記撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいて切り換えて前記マイクロプロセッサが前記特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行い、静止画用映像信号又は動画用映像信号を生成する撮像手段と、前記撮像手段が生成した静止画用映像信号及び動画用映像信号を前記記録媒体に記録する記録手段とを備えることを特徴として前記課題を解決する。」

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「マイクロプロセッサ」を「動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであ」(以下、「技術事項A」という)る点で限定し、しかも、上記技術事項Aについては、願書に添付された明細書の段落【0029】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3) むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3. 特許異議申立てについての判断
(1) 申立ての理由の概要
申立人小塚浩は、請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭59-148471公報)、甲第2号証(特開平3-102977号公報)、甲第3号証(特開平3-74980号公報)をもとに容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。

(2) 本件の請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記2(1)ア参照)により特定されるとおりのものである。

(3) 刊行物等
特許異議申立人が証拠として提示した刊行物は以下のものである。
刊行物1:特開昭59-148471公報(甲第1号証)
これには、静止画撮影と動画撮影の両者を可能とした電子カメラであって、撮影レンズ、瞳位置の絞開閉機構、シャッタ、イメージセンサを有し、スチル撮影が選択されると、スチル露出制御回路及びスチル用記憶装置が使用されるように切り替えられ、ビデオ撮影を選択すると、ビデオ露出制御回路及びビデオ用記憶装置が使用されるように切り替えられる電子カメラについて記載されている。
刊行物2:特開平3-102977号公報(甲第2号証)
これには、検出した動きベクトルに基づいて画面内のエリアの抽出を制御する動きベクトル検出回路について記載されている。
刊行物3:特開平3-74980号公報(甲第3号証)
これには、システムコントロール回路が全体のシステムの制御を行う点が記載されている。

(4) 対比・判断
本件発明と上記刊行物1ないし3に記載の発明とを対比すると、これら刊行物に記載の発明は、本件発明を特定する事項である、「マイクロプロセッサは、前記動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであ」る事項を備えておらず、当該事項により本件請求項1に係る発明は、一層高質の静止画を得ることができるという顕著な効果を奏するのであり、本件発明が上記刊行物1ないし3に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
映像信号記録装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 レンズと、アイリスと、CCDイメージセンサとカメラ信号処理回路と、前記レンズの焦点を調整するフォーカス駆動部と、前記アイリスの絞り量を調整するアイリス駆動部と、前記CCDの読み出し速度を制御するCCD読み出し制御部とを有して動画と静止画を記録媒体に記録する映像信号記録装置において、
前記カメラ信号処理回路から出力される輝度信号から特徴抽出を行う特徴抽出回路と、該特徴抽出回路からのデータが供給され、前記フォーカス駆動部、アイリス駆動部並びにCCD読み出し制御部を制御すると共に自動利得制御処理、ガンマ補正等の信号処理を前記カメラ信号処理回路で行わせるマイクロプロセッサと、前記特徴抽出回路で特徴抽出するエリアを制御することができる動きベクトル検出回路とを有し、前記マイクロプロセッサは、前記動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであり、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御,アイリスの駆動制御,CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及び前記撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいて切り換えて前記マイクロプロセッサが前記特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行い、静止画用映像信号又は動画用映像信号を生成する撮像手段と、
前記撮像手段が生成した静止画用映像信号及び動画用映像信号を前記記録媒体に記録する記録手段とを備えることを特徴とする映像信号記録装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばいわゆる8mmビデオテープレコーダ等で使用される磁気テープのいわゆるPCMオーディオ領域に静止画をディジタル映像信号として記録する映像信号記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
映像信号を記録媒体、例えば磁気記録媒体に記録する装置としては、例えば静止画の映像信号、すなわち1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号をいわゆるスチルビデオフロッピに記録するいわゆる電子スチルカメラや、例えば動画の映像信号を磁気テープに記録するいわゆるカメラ一体型8mmビデオテープレコーダ(以下カメラ一体型8mmVTRという)等が知られている。
【0003】
例えばカメラ一体型8ミリVTRでは、磁気テープがいわゆる回転ヘッド・ドラムの周囲に211度の角度で巻き付けられ、180度間隔の一対のヘッド(以下回転ヘッドという)が磁気テープをヘリカル走査することにより、図3に示すように、磁気テープ80上に斜めのトラック81が形成される。そして、各トラック81の回転ヘッド・ドラムの180度に相当するビデオ領域82には、輝度信号がFM変調され、搬送色信号が低周波に変換され、オーディオ信号がFM変調され、トラッキングサーボ用のトラッキング信号、例えばいわゆるATF(Automatic Track Finding)制御用のパイロット信号と共に周波数多重されて記録されるようになっている。また、各トラック81の残りの回転ヘッド・ドラムの約30度に相当するPCMオーディオ領域83には、非直線量子化されたディジタルオーディオ信号(以下PCMオーディオ信号という)が、誤り訂正のためのいわゆるクロスインターリーブコード処理を施された後、同期信号、パリティ、ID等が付加されて記録されるようになっている。また、磁気テープ80の両側には固定ヘッドがそれぞれ走査することによりキュートラック84とオーディオトラック85が形成される。そして、キュートラック84には例えば録画内容の番地や頭だし等に利用されるキュー信号が記録され、オーディオトラック85には例えばアフレコ(after recording)用のオーディオ信号が記録されるようになっている。
【0004】
ここで、例えば上述の8mmVTRにおいて、PCMオーディオ領域83に音声信号だけでなくディジタル化された静止画映像信号の記録再生を行うことが考えられている。すなわち、例えばカメラ一体型のVTRにおいて、通常の記録釦とは別に静止画記録用のシャッタ釦を押すことによって、その時の静止画映像信号がディジタル化されてPCMオーディオ領域83に記録されるようにする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えばカメラ一体型8mmVTRで映像信号を撮影するための撮影条件及び映像信号を処理する条件は、動画の撮影に適するようになっている。具体的には、被写体に焦点を自動的に合わせるオートフォーカス(以下AFという:Automatic Focus)、被写体の明るさあるいは光量に応じて光学系の絞りを調整するアイリス制御、露光及びシャッタ速度等の撮影条件と、カメラの入力光の強度とブラウン管の発光強度を比例させるためにブラウン管のガンマ特性(電光変換特性)をカメラ側で補正するガンマ補正、ダイナミックレンジの補正、AGC(自動利得制御:Automatic Gain Control)処理等の各種信号処理条件を動画の撮影に適するようにしている。そのため、静止画の撮影は、動画の1コマとして動画の撮影条件及び信号処理で行われることになる。一般に動画の撮影では、シーンのパンニングを見越して撮影条件の時定数を長くしており、上記信号処理も時間軸の方向を見越して処理される。このように、動画の撮影条件及び映像信号処理で静止画を撮影すると、静止画が1フレームあるいは1フィールドの画像であり、AF、アイリス、シャッタ速度等の撮影条件の時定数が動画程長く必要なく、また、ガンマ補正、ダイナミックレンジの補正、AGC処理等の信号処理条件も適切でないため、十分な画質の静止画が得られない。
【0006】そこで、本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、動画撮影モードと静止画撮影モードとに応じて撮影条件及び映像信号処理条件を切り換え、高質な静止画を得ることのできる映像信号記録装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る映像信号記録装置は、レンズと、アイリスと、CCDイメージセンサとカメラ信号処理回路と、前記レンズの焦点を調整するフォーカス駆動部と、前記アイリスの絞り量を調整するアイリス駆動部と、前記CCDの読み出し速度を制御するCCD読み出し制御部とを有して動画と静止画を記録媒体に記録する映像信号記録装置において、前記カメラ信号処理回路から出力される輝度信号から特徴抽出を行う特徴抽出回路と、該特徴抽出回路からのデータが供給され、前記フォーカス駆動部、アイリス駆動部並びにCCD読み出し制御部を制御すると共に自動利得制御処理、ガンマ補正等の信号処理を前記カメラ信号処理回路で行わせるマイクロプロセッサと、前記特徴抽出回路で特徴抽出するエリアを制御することができる動きベクトル検出回路とを有し、前記マイクロプロセッサは、前記動きベクトル検出回路により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができるものであり、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御,アイリスの駆動制御,CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及び前記撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいて切り換えて前記マイクロプロセッサが前記特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行い、静止画用映像信号又は動画用映像信号を生成する撮像手段と、前記撮像手段が生成した静止画用映像信号及び動画用映像信号を前記記録媒体に記録する記録手段とを備えることを特徴として前記課題を解決する。
【0008】
ここで、撮影条件とは、例えば、被写体に焦点を自動的に合わせるオートフォーカス(以下AFという:Automatic Focus)、被写体の明るさあるいは光量に応じて光学系の絞りを調整するアイリス制御、自動的に露光を行うAE(Automatic Exposure:自動露光)及びシャッタ速度等をいい、映像信号処理条件とは、例えば、カメラの入力光の強度とブラウン管の発光強度を比例させるためにブラウン管のガンマ特性(電光変換特性)をカメラ側で補正するガンマ補正、ダイナミックレンジの補正、AGC(自動利得制御:Automatic Gain Control)処理等をいう。
【0009】
【作用】
本発明に係る映像信号記録装置は、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御,アイリスの駆動制御,CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及びその撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいてマイクロプロセッサが切り換えて特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行う。
【0010】
【実施例】
以下、本発明に係る映像信号記録装置の一実施例を図面を参照しながら説明する。この実施例は、本発明をいわゆるカメラ一体型8mmVTR(以下単にVTRという)に適用したものであり、図1はこのVTRの回路構成を示すブロック回路図である。
【0011】
本発明に係る映像信号記録装置の一実施例であるVTRは、図1に示すように、被写体を撮影して得た撮像信号をディジタル信号に変換し、例えばガンマ補正やAGC処理等の信号処理を施すカメラ部10と、このカメラ部10を動画と静止画の撮影モード別に制御するカメラ制御部20と、このカメラ制御部20が静止画撮影モードに応じて上記カメラ部10を制御して得られたディジタル映像信号の1フレームあるいは1フィールド分にデータ圧縮処理等の信号処理を施して出力すると共に、静止画の映像信号を再生する静止画映像信号処理部30と、上記カメラ部10からの映像信号をアナログ信号に変換して出力すると共に、再生される動画等の映像信号に輪郭補償等の信号処理を施す動画映像信号処理部40と、この動画映像信号処理部40からのアナログ映像信号と上記静止画映像信号処理部30からのディジタル映像信号を時分割多重して磁気テープ1のいわゆるビデオ領域とPCMオーディオ領域にそれぞれ記録すると共に、記録されたこれらの映像信号を再生するヘッド部50と、上記カメラ制御部20、静止画映像信号処理部30、動画映像信号処理部40等を制御するシステム制御部60とから構成される。
【0012】
そして、このVTRは、システム制御部60で設定された動画撮影モードに応じて上記カメラ部10の撮影条件や映像信号処理条件をカメラ制御部20が制御し、得られる映像信号をディジタル信号に変換し、信号処理が施された映像信号をアナログ信号に変換して、動画の映像信号として磁気テープ1のビデオ領域に記録すると共に、このビデオ領域に記録した動画の映像信号を再生し、例えばいわゆるNTSC方式に準拠した映像信号として出力するようになっている。また、このVTRは、システム制御部60で設定された静止画撮影モードに応じてカメラ部10の撮影条件や映像信号処理条件をカメラ制御部20が制御し、得られた映像信号の1フレームあるいは1フィールド分を、静止画の映像信号として磁気テープ1のPCMオーディオ領域に記録すると共に、このPCMオーディオ領域に記録した静止画の映像信号を再生し、再生した1フレームあるいは1フィールド分の映像信号をNTSC方式に準拠した映像信号として繰り返し出力するようになっている。つまり、このVTRは、上記カメラ部10で映像信号を得る場合、上記システム制御部60で設定される動画撮影モードと静止画撮影モードとに応じて、例えばAF、アイリス、シャッタ速度等の撮影条件とダイナミックレンジの補正、ガンマ補正、AGC処理等の映像信号処理条件を上記カメラ制御部20で切り換えることにより、例えば静止画を撮影するときには、高質な静止画が得られる。
【0013】
具体的には、上記カメラ部10は、図1に示すように、レンズ11と、被写体の明るさあるいは光量に応じて絞り量を調整するアイリス12と、このアイリス12を通った光りがレンズ13を介して照射され、電気信号である映像信号を光りの強さに応じて出力するCCDイメージセンサ(以下CCDという)14と、このCCD14からの映像信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル(以下A/Dという)変換器15と、該A/D変換器15からのディジタル映像信号に例えばガンマ補正、AGC等の各種の信号処理を施すカメラ信号処理回路16とから構成される。
【0014】
また、上記カメラ制御部20は、同じく図1に示すように、上記システム制御部60で設定される動画撮影モードと静止画撮影モードとに応じて、上記カメラ部10のレンズ11の焦点を自動的に調整するAF駆動部21と、上記アイリス12の絞り量を調整するアイリス駆動部22と、上記CCD14の読み出し速度を制御するCCD読みだし制御部23と、上記カメラ信号処理回路16から出力される輝度信号からAF及びAE用の特徴抽出を行う特徴抽出回路24と、この特徴抽出回路24からのデータが供給され、このデータを基に上記AF駆動部21、アイリス駆動部22、CCD読みだし制御部23等を制御するマイクロプロセッサ(以下MPU)25と、上記特徴抽出回路24で特徴抽出するエリアを制御することができる動きベクトル検出回路26とから構成される。
【0015】
また、上記動画映像信号処理部40は、同じく図1に示すように、上記静止画映像信号処理部30あるいはヘッド部50からの映像信号を記憶するビデオRAM42と、上記カメラ部10からの映像信号に記録に適した信号処理を施して動画データを形成し、この動画データを上記ヘッド部50に供給すると共に、上記ビデオRAM42から読み出された映像信号に輪郭補償等の各種の信号処理を施した後、例えばNTSC方式に準拠した映像信号に変換する映像信号処理回路41と、この映像信号処理回路41から供給されるNTSC方式に準拠した映像信号(ディジタル信号)をアナログ信号に変換し、端子46を介して例えばモニタ受像機等に送出するディジタル/アナログ(以下D/Aという)変換器43と、上記映像信号処理回路41からの動画データをアナログ信号に変換して上記ヘッド部50に供給するD/A変換器44と、上記ヘッド部50で再生される映像信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換し、動画データとして上記映像信号処理回路41に供給するA/D変換器45とから構成される。
【0016】
また、上記静止画映像信号処理部30は、同じく図1に示すように、上記カメラ部10からのディジタル映像信号を記憶するビデオRAM32と、このビデオRAM32からのディジタル映像信号が供給されて、該ディジタル映像信号の1フレームあるいは1フィールド分に所定のデータ圧縮処理を施して圧縮データを形成し、また逆に、圧縮データにデータ伸長処理を施して映像信号を再生する静止画映像信号処理回路31と、この静止画映像信号処理回路31からの圧縮データに同期信号、エラー訂正符号等を付加して、静止画データを形成し上記ヘッド部50に供給すると共に、上記ヘッド部50からの静止画データにエラー訂正処理を施して圧縮データ等を再生し、この圧縮データ等をRAM34に供給するPCM処理回路33とから構成される。
【0017】
また、上記ヘッド部50は、同じく図1に示すように、上記動画映像信号処理部40からのアナログ映像信号と上記静止画映像信号処理部30からの静止画データを時分割多重すると共に、再生RF信号から動画のアナログ映像信号と静止画データを再生して、上記動画映像信号処理部40、静止画映像信号処理部30にそれぞれ供給するMUX51と、このMUX51からの時分割多重された記録信号を増幅する増幅器53と、再生RF信号を増幅する増幅器54と、上記増幅器53と増幅器54を記録時と再生時で切り換える切り換えスイッチ52と、上記増幅器53からの励磁電流に基づいて上記磁気テープ1に信号を記録すると共に、再生RF信号を再生して上記増幅器54に供給する回転ヘッド55とから構成される。
【0018】
また、上記システム制御部60は、同じく図1に示すように、このVTRの動作モード、例えば動画の映像信号を記録する動画撮像モード、静止画の映像信号を記録する静止画撮像モード等の各種の動作モードを設定する機能制御回路61と、この機能制御回路61からの設定されたモードに応じて上記カメラ制御部20のMPU25及び動きベクトル検出回路26を制御するシステムコントローラ62と、このシステムコントローラ62の制御のもとに上記ビデオRAM32及び42のアドレスを制御するメモリコントローラ63とから構成される。
【0019】
また、上記磁気テープ1は、例えば上述の図3に示す磁気テープ80と同様のテープフォーマットを有するものである。すなわち、上記回転ヘッド55のヘリカル走査により上記磁気テープ1上に斜めに形成されるトラックがビデオ領域とPCMオーディオ領域に分割され、ビデオ領域に動画がアナログ映像信号として記録され、PCMオーディオ領域に静止画がディジタル映像信号として記録されるようになっている。
【0020】
次に、このVTRを構成する各部の動作を説明する。先ず、上記カメラ部10は、上記システム制御部60で設定された撮影モード(動画撮影モードあるいは静止画撮影モード)に応じ、上記カメラ制御部20が切り換えた撮影条件及び映像信号処理条件により被写体を撮影し、撮影により得た映像信号を信号処理し、信号処理により得たディジタル映像信号を動画映像信号処理部40あるいは静止画映像信号処理部30に供給する。
【0021】
上記カメラ制御部20は、上記システム制御部60で設定される動画撮影モードと静止画撮影モードとに応じて、上記カメラ部10のAF、AE、アイリス、映像信号の読み出し速度等の撮影条件とガンマ補正、ダイナミックレンジの補正、AGC処理等の映像信号処理条件とを制御する。
【0022】
上記動画映像信号処理部40は、上記カメラ信号処理回路16からの映像信号の輝度信号を所定の搬送波によってFM変調し、搬送色信号を低周波に変換した後、周波数多重して動画データを形成し、この動画データを上記ヘッド部50に供給すると共に、ヘッド部50あるいは静止画映像信号処理部30からの映像信号に各種の信号処理を施した後、例えばNTSC方式に準拠したアナログ映像信号に変換して出力する。
【0023】
上記静止画映像信号処理部30は、上記カメラ部10からの映像信号の1フレームあるいは1フィールド分に、所定のデータ圧縮、例えばいわゆる適応型ダイナミックレンジ符号化(ADRC:Adaptive Dynamics Range Coding)やいわゆるサブサンプリング(Sub Sampling)、離散余弦変換(DCT:Discrete Cosine Transform)等のデータ圧縮処理を施すと共に、同期信号、エラー訂正符号等を付加して、ヘッド部50に供給し、磁気テープ1上のPCMオーディオ領域に記録する。また、逆にヘッド部50で再生される静止画データにデータ伸長処理等の信号処理を施して、得られる静止画の映像信号をビデオRAM42に供給するようになっている。
【0024】
上記ヘッド部50は、D/A変換器44からのアナログ映像信号とPCM処理回路33からのディジタル映像信号(静止画データ)を時分割多重して磁気テープ1のビデオ領域とPCMオーディオ領域にそれぞれ記録すると共に、動画のアナログ映像信号と静止画データを再生して、A/D変換器45、PCM処理回路33にそれぞれ供給する。
【0025】
上記システム制御部60は、例えば、撮影者が機能制御回路61において設定する動画の映像信号を撮影する動画撮像モード、静止画の映像信号を撮影する静止画撮像モードに応じて上記カメラ制御部20を制御し、撮影条件及び映像信号処理条件を切り換える。そして、例えば、静止画撮像モードが設定されると、シャッタを操作する毎に、端子64を介して送られてくるシャッタ信号を検出し、カメラ部10で被写体を撮影して得られる映像信号の1フレームあるいは1フィールド分を静止画の映像信号として、磁気テープ1のPCMオーディ領域に記録する。
【0026】
ここで、このVTRの動作を上記カメラ制御部20の制御動作を中心に詳しく説明する。先ず、カメラ部10のレンズ11を通して収光された光りは、アイリス12で光量を制御され、CCD14で電気信号に変換される。この電気信号(以下映像信号という)は、A/D変換器15でディジタル映像信号に変換された後、カメラ信号処理回路16に供給される。このカメラ信号処理回路16は、ディジタル映像信号を輝度成分と色差成分に変換し、一方を動画映像信号処理部40の映像信号処理回路41へ供給し、他方をカメラ制御部20の特徴抽出回路24へ供給する。この特徴抽出回路24は、AF、AEを制御するためのフィルタである。この特徴抽出回路24のフィルタリングは、例えばAF用では、画面のエッジまたは特定の成分を抽出し、例えばAE用では、画面内での輝度信号のレベルの平均を計算したり、任意のレベル以上または以下の信号が全体に対してどの程度あるかを測定するものである。この特徴抽出回路24でフィルタリングされた信号を基に、MPU25では、特定のアルゴリズムに基づき、例えばAEの場合、最適な露光状態にすべく、アイリス12の絞り量、AGC信号処理、フィルタのウィンドウ、重みづけを制御する。また、AFの場合、フォーカスが合うように、レンズ位置の制御、フィルタの重みづけを制御する。この際、動きベクトル検出回路26からの動き量を基に特徴抽出回路24での抽出エリアを高速、適切に制御できる。
【0027】
次に、このVTRにおいて、静止画を記録するべくモードを切り換えてから磁気テープのPCMエリアに静止画が記録されるまでの動作を上記図1と図2とを用いて説明する。図2は、静止画撮影モードが制御部で設定された場合の動作例を示す図である。
【0028】
例えば、利用者が時間taのタイミングで静止画撮影モードの設定を行うべくモード釦91を押圧すると、上記システムコントローラ62は、その設定に対応する制御信号を検出して上記カメラ制御部20を静止画の撮影モードで時間tbから動作させるように制御する。すると、フィールドFnとなる時間tbのタイミングで動画撮影モードから静止画撮影モードに切り換わり、画像特徴抽出、測光、動きベクトルの検出等が開始される。そして、フィールドFn+1が始まる時間tcのタイミングから、前フィールドFnで行われた測光、動きベクトルの検出等の結果を受けて、アイリス制御、AGC制御、電子シャッタ制御が開始される。また、このフィールドFn+1では、露光も行われており、ガンマ補正を行う際のガンマカーブ(特性)の選択も行われる。ここで、時間tdのタイミングでシャッタ釦92が押圧されたとすると、次のフィールドFn+2が始まる時間teから、上記フィールドFn+1で行われたカメラ制御、カメラ信号処理から得られた静止画映像信号が映像RAM32に記録される。そして、フィールドFn+2が終了すると時間tfから磁気テープ1上のPCM領域に静止画が記録される。
【0029】
具体的には、静止画撮影時には、システムコントローラ62から静止画撮影モードであることがカメラ制御部20のMPU25に伝えられる。このMPU25は、AF/AE用の特徴抽出回路24で抽出された被写体情報から、該フィールドあるいはフレームの映像が最適なダイナミックレンジとなる様に上記AF駆動部21、アイリス駆動部22を制御し、またAGC処理、ガンマ補正等の信号処理を上記カメラ信号処理部16で該映像に適するように行わせる。また、上記MPU25は、動きベクトル検出回路26により検出される動きベクトル量からシャッタ速度を選択することができ、上記CCD読みだし制御部23の読みだし速度を制御できる。このようにして得られた静止画映像信号をメモリコントローラ63の制御により、ビデオRAM32に記録する。そして、この静止画は、上記機能制御部61で設定される動作モードによっては、上記静止画映像信号処理部30で帯域圧縮され、PCM処理回路34でID情報等が加えられ、静止画データとされてMUX51〜増幅器53を介して回転ヘッド45に供給される。
【0030】
このとき、システムコントローラ62は、回転ヘッド55への静止画データの供給に同期して、磁気テープ1が走行を開始するように図示しない走行系を制御する。そして、システムコントローラ62は、記録を開始してから例えば数秒後に磁気テープ1の走行を停止する制御を行う。この結果、磁気テープ1のPCMオーディオ領域の数十〜数百トラック(データ圧縮率に依存する)に、静止画がディジタル映像信号として記録される。
【0031】
以上により、本発明に係る映像信号記録装置の一実施例が適用されるVTRは、静止画撮影時と動画撮影時とで撮影条件と信号処理とを分けることができ、静止画撮影モードに対応した撮影条件及び信号処理条件で高質の静止画を撮影することができる。
【0032】
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、例えば、磁気テープの厚み方向に記録領域を分割したいわゆる深層記録方式を採用し、アナログ映像信号とディジタル信号をこれらの領域にそれぞれ記録可能なビデオテープレコーダ等に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係る映像信号記録装置は、被写体を撮影するときに用いるレンズの自動フォーカス制御,アイリスの駆動制御,CCDの読み出し制御によるシャッタ制御に関する条件等の撮影条件、及びその撮影条件で得られた撮像信号に施すガンマ補正,ダイナミックレンジ補正及び自動利得制御に関する条件等の各種補正処理及び利得制御に関する映像信号処理条件を、静止画撮影又は動画撮影モードに基づいてマイクロプロセッサが切り換えて特徴抽出回路で抽出された被写体情報を基に制御を行うので、それぞれの撮影モードに適したカメラ制御、カメラ信号処理を行うことができ、特に静止画撮影時には、高質の静止画を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る映像信号記録装置を適用したカメラ一体型8mmVTRの回路構成を示すブロック回路図である。
【図2】
本発明に係る映像信号記録装置を適用したカメラ一体型8mmVTRの静止画撮影モードでの動作を説明するための図である。
【図3】
8mmビデオテープレコーダで用いられる磁気テープのテープフォーマットを示す図である。
【符号の説明】
1・・・・・磁気テープ
10・・・・カメラ部
16・・・・カメラ信号処理回路
20・・・・カメラ制御部
24・・・・特徴抽出回路
25・・・・マイクロプロセッサ(MPU)
26・・・・動き検出回路
30・・・・静止画映像信号処理部
40・・・・動画映像信号処理部
50・・・・ヘッド部
60・・・・システム制御部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-12 
出願番号 特願平4-69297
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂東 博司伊東 和重  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 橋爪 正樹
小松 正
登録日 2003-02-07 
登録番号 特許第3395197号(P3395197)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 映像信号記録装置  
代理人 田村 榮一  
代理人 田村 榮一  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  
代理人 小池 晃  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ