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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
管理番号 1104414
異議申立番号 異議2003-71775  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-10 
確定日 2004-08-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3367076号「電気部材の接続構造及び接続方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3367076号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の「【請求項2】絶縁物表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材を前記導電体のうち電気的に接続すべき部位が向き合うように対向させ、電気部材の絶縁物表面から突き出して設けた導電体より硬質でありかつ加圧により変形可能な導電粒子を分散させた異方導電性の接着剤を前記電気部材間に置き、加圧することにより前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に接触させて電気絶縁性の接着剤で固着させる電気部材の接続方法。」を、
「【請求項1】電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材を前記導電体のうち電気的に接続すべき部位が向き合うように対向させ、電気部材の電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体より硬質でありかつ加圧により変形可能な導電粒子を分散させた異方導電性の接着剤を前記電気部材間に置き、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで加圧することにより、前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に直接接触させて電気絶縁性の接着剤で固着させる電気部材の接続方法。」と訂正する。

イ.訂正事項b
特許請求の範囲の「【請求項1】電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材を前記導電体のうち電気的に接続すべき部位が向き合うように対向させ、前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に接触させて電気絶縁性の接着剤で固着してなる電気部材の接続構造。」を、
「【請求項2】請求項1に記載の接続方法によって得られる電気部材の接続構造。」と訂正する。

ウ.訂正事項c
発明の詳細な説明の段落【0006】の「本発明の接続構造は、絶縁物表面から突き出して設けた電極13を有する二つの電気部材を前記電極13が向き合うように対向させ、電気部材の絶縁物表面から突き出して設けた・・・」を、
「本発明の接続構造は、電気絶縁体表面から突き出して設けた電極13を有する二つの電気部材を前記電極13が向き合うように対向させ、電気部材の電気絶縁体表面から突き出して設けた・・・」と訂正する。

エ.訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0006】の「・・・異方導電性接着剤を前記電気部材間に置き、加圧することによって得られる。」を、
「・・・異方導電性接着剤を前記電気部材間に置き、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで加圧することによって得られる。」と訂正する。

オ.訂正事項e
発明の詳細な説明の段落【0005】の「・・・を介在させるとともに、前記電極13を相互に接触させて電気絶縁性の接着剤12で固着してなる・・・」を、
「・・・を介在させるとともに、前記電極13を相互に直接接触させて電気絶縁性の接着剤12で固着してなる・・・」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a中の、願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の請求項2を請求項1に項番号を変更することは、便宜上のものであり実質上内容に変更はないから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しない。
上記訂正事項a中の、「絶縁物」を「電気絶縁体」に変えることは、特許明細書の請求項1、2において、互いに異なる表記でなされていた部分同士を統一する訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。また、「電気絶縁体」の語は、特許明細書の段落【0005】、【0012】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
上記訂正事項a中に「前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで」の記載を加えること、及び、上記訂正事項a中の「接触」に対し、「直接」の記載を加えることは、加圧の程度を限定することであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、かかる限定は、特許明細書の段落【0013】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。

上記訂正事項bは、請求項1に記載されていた電気部材の接続構造につき、新たな請求項1に記載された方法を引用した新たな請求項2とすることにより、構成を限定すると共に明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、かかる限定は、特許明細書の段落【0005】、【0006】、【0014】、【0017】の記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当しない。

上記訂正事項c〜eは、訂正事項a、bの訂正に基づき発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当しない。

そして、上記訂正のいずれの訂正も実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔2〕特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
異議申立人・大塚あさ子は、請求項1、2に係る発明は、甲第1号証(特公平3-40899号公報)、甲第2号証(特開平4-32171号公報)、甲第3号証(実願平4-76606号(実開平6-41069号)のCD-ROM)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、と主張している。

(2)本件発明
特許第3367076号の請求項1、2に係る発明(以下、各々「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項のとおりのものである。(上記〔1〕(1)ア.イ.参照。)

(3)甲第1〜3に記載された発明
甲第1号証には、回路の接続構造体に関し、以下の事項が記載されている。
ア.「相対峙して形成された接続用回路が電気的接続部材により相互に接続された回路の接続構造体において、接続部材が高分子重合体からなる核材のほぼ全表面を導電性の金属薄層により実質的に被覆された導電性粒子と高剛性のスペーサ粒子および絶縁性接着剤とからなり、前記導電性粒子は前記スペーサ粒子により隔てられた相対峙する回路により押圧変形した状態で固定してなることを特徴とする回路の接続構造体。」(特許請求の範囲の請求項1)
イ.「これらの高分子核材は、回路接続時の加圧あるいは加熱加圧により軟化あるいは変形可能である要件が必要である。ここで接続時の加圧あるいは加熱加圧により軟化あるいは変形を必要とする理由は、回路接続時に導電性粒子同士あるいは導電性粒子と回路との接触面積を増加するために必要であり、常温においてのいわゆる感圧接着剤による感圧接続あるいは400℃迄の加熱を併用した感熱接続によることも可能である。400以上では回路基板に対して熱損傷を与える恐れがあり、また常温貼付の場合には回路の実装上耐熱性が問題となる場合があるために、好ましは高分子核材は100〜250℃で軟化あるいは変形可能であることがよい。」(第3頁第5欄第10〜23行)
ウ.「金属被覆層の厚みは0.01〜5μm程度が望まし0.05〜1μmがさらに良好であるが、この厚みは回路接続前の導電粒子の粒径の1/5〜1/1000に入るようにすることが望ましい。ここで金属薄層の厚みが薄いと導電性が低下し、厚みが増すと回路接続時における高分子核材の軟化変形時における追随性が無くなるためである。また金属は薄層であることから充分に変形に対して追随性を有するが、たとえば伸び性の良い展延性の材料であることが好ましい。従来このような導電性粒子として、ガラス球(ビーズ)あるいはガラス中空球(バルーン)にAg等の薄層を形成したものもあるが、これらは加熱加圧時に軟化変形することが出来ない為に本発明の実施には不適である。」(第3頁第6欄第29〜43行)
エ.「最適な接続状態を得るには、接続後の回路間隔(t)に対する接続前の接続部材の厚み(T)の比を、t/T=0.02〜0.95の範囲内にすることが好ましい。このとき接続前の粒径Dなる導電性粒子が厚み方向に単粒子状で存在している場合においては接続後の粒径をdとしてd/Dの比をt/Tと同様に用いることが出来る。t/Tが0.02以下では導電性粒子が破壊して金属薄片が脱落し易なり、またこの比が0.95以上では回路あるいは導電性粒子との充分な面接触が得られないことから、満足すべき接続構造体とすることが出来ないので本発明の実施には好ましくない。」(第4頁第8欄第44行〜第5頁第9欄第11行)

甲第2号証には、電子装置に関して、第1〜6図とともに以下の事項が記載されている。
オ.「(1)基板上に形成された電極に、ICに設けた金属バンプが導電粒子を含む異方性導電膜を介しフェース・ダウン・ボンディング法により電気的に接続されてなる電子装置において、上記導電粒子の硬度は上記電極及び上記金属バンプの硬度よりも小さいことを特徴とする電子装置。
(2)基板上に形成された電極に、ICに設けた金属バンプが導電粒子を含む異方性導電膜を介しフェース・ダウン・ボンディング法により電気的に接続されてなる電子装置において、上記導電粒子の硬度は上記電極及び上記金属バンプの硬度よりも大きいことを特徴とする電子装置。」(特許請求の範囲の請求項1、2)
カ.「しかし、この提案にも、次のような欠点がある。(1)導電粒子15である粉体の焼結カーボンは高抵抗であるため、接続部の抵抗値が高くなってしまう。更に、これには、下記(3)と同様な画質の問題がある。(2)金属バンプ13の硬度よりも硬い導電粒子15は、金属バンプ13に良く“食い込み”、良好な接続が得られるが、ITO配線電極10に対しては“食い込み”ことが出来ない。従って、導電粒子15とITO配線電極10との間の接続強度が弱く、たとえ初期的に良好な電気的接続が得られても、熱衝撃試験などの信頼性試験においてはオープンが発生していた。」(公報第2頁左下欄第12行〜右下欄第4行)
キ.「この発明によれば、異方性導電膜中の導電粒子としてPb-Sn系の半田粒子を用いているため、加熱しながらの加圧処理により、半田粒子はITO配線電極と金バンプの間で潰れ、接触面積が広くなり、且ついずれに対しても良く密着するので、良好な電気的接続を得ることが出来る。更に、半田粒子の粒径が金バンプの高さより小さいので、ITO配線電極と金バンプとの間以外にある半田粒子はそのままの形状を保っており、ショートなどの不具合は発生しない。又、薄膜が金バンプの高さより厚い異方性導電膜を用いているため、加熱しながらの加圧処理により、ITO配線と金バンプ以外の領域では、熱硬化性樹脂からなる接着層がガラス基板並びに液晶駆動用ICの表面層のパッシベーション膜と強固に密着する。」(公報第3頁右上欄第12行〜左下欄第6行)
キ.「液晶駆動用IC44上の金属バンプ45の高さが揃っている場合には、第3図に示すように、それぞれの金属バンプ45が導電粒子52を介して配線電極43に接続される。しかし、液晶駆動用IC44には、ICの出力数以上の金属バンプ45が形成されており、これらの高さは必ずしも一様ではない。金属バンプ45は通常メッキ法により形成されるが、歩留まりの点より、金属バンプ45の高さにバラツキがある。出力数120の液晶駆動用IC44の場合には、バンプ数は例えば180であり、高さ25μmの金属バンプ45のバラツキは、通常±3.5μm、即ち、約7μmの高低差がある。導電粒子52の径粒は約4μm乃至約6μmである市販の異方性導電膜46、例えば某社のCP-4131を用いて、図示しないボンダー・ツールにて一括してフェース・ダウン・ボンディングを行なうと、第4図に示すように、バンプ高さの高い金属バンプ45aの箇所においては良好な接続がなされるが、高さの低い金属バンプ45b、45cの箇所においては、導電性粒子52が金属バンプ45b、45c或いは配線電極43と接触せず、電気的にオープンが発生するということがしばしば起こった。そこで、大きい導電粒子を用いると、高低差のある金属バンプ45a、45b、45cのいずれに対しても、良好な接続がなされることを発明者は見出だした。そして、導電粒子52として、粒径が約10μm(±1.5μm)のニッケル粒子を含有する異方性導電膜46を用い、接続実験を行なった所、電気的にオープンが発生するということは、無くなった。尚、導電粒子52の粒径の範囲は、例えば6μm乃至20μmの範囲で効果がある。」(公報第6頁左下欄第3行〜右下欄第16行)

甲第3号証には、電子機器基板の接続構造に関して、図1、2とともに以下の事項が記載されている。
ク.「電気シグナルを伝搬する配線を表面に有する基板と、前記基板と対面して重なり、接触して前記シグナルの伝搬を中継するプリント回路とを備えた電子機器において、前記基板の配線と前記プリント回路の配線上に形成した異方性導電膜との接触部に、樹脂質接着剤を介在させ、これを加熱圧接して電気的に接続することを特徴とする電子機器基板の接続構造。」(実用新案登録請求の範囲)
ケ.「図1は、本考案の実施例に示す電子機器基板の接触の断面図である。ガラスエポキシ等からなる基板5上にAl製の配線11が形成されている。外部からのシグナルや給電は、中継プリント回路4上のAl製の配線1を伝搬し、基板5と中継プリント回路4に挟持された異方性導電膜3は、接着強度補強している樹脂質接着剤2で接着し、異方性導電膜3中の導電粒子6が両配線の表面に食い込み上記基板5上に設けられた配線11に伝わる。上記異方性導電膜3は配線1上に塗布し、上記基板5上に設けられた配線11に伝わる。上記異方性導電膜3は配線1上に塗布し、上記基板5と上記中継プリント回路4の接続組立時に、樹脂質接着剤2を介在させると共に、これで異方性導電膜3を挟持している中継プリント回路4、基板5の周辺を被覆し、図示しない加熱ツールを押し当て圧力を加えて接続部を加熱することによって、上述の導電粒子6が配線へのくいこみが確実となり、かつ、樹脂質接着剤2が基板5と中継プリント回路基板4との接触の隙間と周辺部を埋め、接着強度を従来例に比べ約6倍位向上させることができる。」(明細書の段落【0006】)

(4)対比・判断
ア.本件発明1について
甲第1〜3号証には、本件発明1の要件である「導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで加圧することにより、前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に直接接触させ」た構成に相当する記載はなく、また、当該記載を示唆する記載もない。
そして、本件発明1は、上記の構成を備えることにより、「低抵抗でかつ信頼性の高い接続を得ることができる。」という明細書に記載の効果を奏することができるものである。
したがって、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用した発明であり、本件発明1の方法により得られる電気部材の接続構造であるから、本件発明1が甲第1〜3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件発明2も甲第1〜3号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

〔3〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の理由及び証拠によっては、本件発明1、2についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1、2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気部材の接続構造及び接続方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材を前記導電体のうち電気的に接続すべき部位が向き合うように対向させ、電気部材の電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体より硬質でありかつ加圧により変形可能な導電粒子を分散させた異方導電性の接着剤を前記電気部材間に置き、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで加圧することにより、前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に直接接触させて電気絶縁性の接着剤で固着させる電気部材の接続方法。
【請求項2】 請求項1に記載の接続方法によって得られる電気部材の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材、例えば、プリント配線板相互間又はプリント配線板と金バンプを有するICチップの電気的接続構造及び接続方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集積回路類と配線基板との接続、表示素子類と配線基板との接続などのように接続端子が相対峙して細かいピッチで形成されている場合の接続構造として、異方導電性接着剤を用い、電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体(以下電極という)を有する二つの電気部材を互いに接着するとともに、同一電気部材上にあり隣接する導電体を短絡させることなく二つの電気部材の互いに向き合う電極間を電気的に導通させる構造が知られている。
【0003】
異方導電性接着剤として、高分子重合体よりなる核材のほぼ全表面が導電性の金属薄層により実質的に被覆された導電粒子と絶縁性接着剤よりなるものが知られている(特公平3-40899号公報参照)。この異方導電性接着剤を用いた接続構造体は、導電粒子が接続しようとする電極接続時の加圧により適度に変形し、充分な接触面積が得られること、および高分子核材は剛性や熱膨張収縮特性が金属粒子に比べて接着剤の性質に極めて近いため、接続信頼性が優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、配線密度が高くなり、電極が微細化して、接続抵抗がより低く、また、より高い接続信頼性のものが要求されるようになっている。本発明は、異方導電性接着剤を用い、接続抵抗がより低く、また、より高い接続信頼性の接続構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気絶縁体15の表面から突き出して設けた電極13を有する二つの電気部材を前記電極13が向き合うように対向させ、その間に扁平に変形されかつ前記電極13に食い込んでいる導電粒子11を介在させるとともに、前記電極13を相互に直接接触させて電気絶縁性の接着剤12で固着してなることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の接続構造は、電気絶縁体表面から突き出して設けた電極13を有する二つの電気部材を前記電極13が向き合うように対向させ、電気部材の電気絶縁体表面から突き出して設けた電極13より硬質でありかつ加圧により変形可能な導電粒子11を分散させた異方導電性接着剤を前記電気部材間に置き、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部が相互に直接接触するまで加圧することによって得られる。
【0007】
接続の対象となる電気部材としては、例えばガラス基板、セラミック基板、フィルム(ポリイミド等)基板、ガラスエポキシ基板等の絶縁板の表面に、ITO、アルミニウム、ニッケル、金等の薄膜電極を設けたもの、銅はく、銀、ニッケル等を含む導電性ペースト類の電極を設けたもの、ICチップのような半導体素子が挙げられる。電極本体がニッケルのように硬質の場合には、その表面に、錫、金、はんだ等の軟質の表面層を形成したものを使用する。
【0008】
半導体素子としては、シリコン、ガリウムヒ素等を材料とするものがあり、これらICチップは、アルミニウム等の上に、銅、ニッケル、金、はんだ等を被覆した電極を設けたものである。これら電極の表面に、さらに、錫、金、はんだ等の表面層を形成することもできる。電極以外の面は、酸化シリコン、ホウケイ酸ガラス、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、ポリイミド、フッ素樹脂のような絶縁層が形成されていることが導電粒子とICチップの素子との接触を完全に防止できるので好ましい。
【0009】
また、互いに向き合う電極13のうち、少なくとも一方の電極13の高さは、導電粒子11の径よりも大きくする。電極表面に存する凹凸も考慮して電極の高さより1μm以上大きいのが好ましい。電極の高さばらつきは導電粒子の粒径よりも小さい方が好ましい。電極の硬さは導電粒子と同じか柔らかいことが導電粒子が食い込むために必要である。電解銅はくより、伸びの大きい圧延銅はくを用いた方が導電粒子の食い込みが大きく、好ましい。
【0010】
導電粒子としては、金、銀、銅、はんだ等が用いられる。ポリスチレン等の高分子の球状の核材にニッケル、銅、金、はんだ等の導電層を設けたものがより好ましい。さらに、導電粒子の表面に錫、金、はんだ等の表面層を形成することもできる。微小電極上に導電粒子を分散させ、電極に食い込ませためには、粒径が小さいほうが好ましく、3μm〜5μmが好ましい。同じ材質の導電粒子を用いた場合、粒径が大きい例えば10μmの粒子では粒子の変形が大きく電極への食い込みは小さくなる。これにたいし、粒径の小さい例えば3μmの粒子では変形は小さく電極への食い込みは大きく容易に電極間の直接接触が得られる。
【0011】
接着成分は液状もしくは加熱して液状となることが必要である。熱又は光等で反応硬化する、エポキシ、アクリル樹脂のような反応性樹脂が好ましい。接着成分中には、粒径が揃った導電粒子を分散させる。分散量は、導電粒子の粒径によって異なる。電気部材間に配して、加圧したとき、単粒子層を形成できかつ隣接粒子が互いに接触しない程度とする必要がある。
【0012】
【作用】
電気絶縁体表面から突き出して設けた電極13,13間に存在する導電粒子11は、加圧により、少なくとも一方の電極13に食い込み変形し、他方の電極13と接触する。このように、導電粒子11が変形しかつ電極13に食い込むことにより充分な接触面積が得られる。
【0013】
また、電極13が一部分相互に直接接触することにより、低抵抗での接続が可能となる。電極間以外では導電粒子11は接着剤中に分散し圧力がかからないため変形することがない。従って、導電粒子の粒径や添加量を選択することで隣接電極との絶縁性が充分に保たれる。
【0014】
【実施例】
実施例1
ポリイミドフィルムをフィルムベース15とする厚み35μmの圧延銅はく張りフィルムをエッチングし、残った銅の上に錫を被覆し、幅50μm、密度10本/mmの電極13を有する試験片を用意した。この試験片の電極13を向き合わせ、その間に、異方導電性接着剤を介在させ、圧力を変えて、180℃で、20秒間加熱加圧した。なお、異方導電性接着剤は、エポキシ樹脂を接着成分12とし、導電粒子11を単粒子層を形成するように拡げたときに1000個/mm2となるように導電粒子11を分散したものである。導電粒子11はポリスチレン核の表面に金を被覆したもので、粒径3μm、5μm及び10μmの3種類とした。その結果、導電粒子11の粒径が3μmのときは、圧力が1.0MPa以上で、また、導電粒子の粒径が5μmのときは、圧力が2.0MPa以上で、導電粒子の粒径が10μmのときは、圧力が3.0MPa以上で、電極13,13間にある導電粒子11が変形して電極13に食い込み、また、電極13も互いに接触していた(図1参照)。さらに、導電粒子11の粒径が3μmのときは、圧力が1.0MPaで、導電粒子の粒径が5μmのときは、圧力が2.0MPaで、導電粒子の粒径が10μmのときは、圧力が3.0MPaで、それぞれ、接続抵抗(配線抵抗を含む)が1Ωであった。これにたいし、導電粒子11の粒径が3μmのとき、圧力が0.5MPaでは、接続抵抗1.5Ω、導電粒子の粒径が5μmのとき、圧力が1.0MPaで接続抵抗1.5Ω、導電粒子の粒径が10μmのとき、圧力が1.0MPaで接続抵抗2.0Ωであった。なお、電極間に存在する導電粒子の変形、導電粒子の電極への食い込みは接続部分の断面を顕微鏡または電子顕微鏡を用いて観察した。次に、粒径が10μmの導電粒子について、接続後、85℃、85%RHに保持して接続抵抗の変化を調べた。その結果、圧力が3.0MPaのとき、初期値1Ω(前記参照)から、1000時間後に1.1Ω、2000時間後に1.3Ωと僅かしか増加しなかったが、圧力が1.0MPaのときは、初期値2Ω(前記参照)から、1000時間後に2.5Ω、2000時間後に3Ωと変化した。
【0015】
実施例2
ガラス板15a上にITOの透明電極13a(厚み200nm、幅50μm、密度10本/mm)を形成したガラス基板試験片を一方の電気部材とし、実施例1で用いた試験片を他方の電気部材とし、その他は実施例1と同様にして試験した。その結果、実施例1と同様な結果が得られた。ただし、ガラス基板上の透明電極13aには、導電粒子の食い込みはみられなかった。
【0016】
実施例3
複数の金電極(高さ=15μm、一つの面積=40μm□)を設けたICチップと、ガラス基板上に、表面に金を被覆したニッケルの薄膜電極(高さ=0.3μm、一つの面積=40μm□)と、エポキシ樹脂を接着成分12とし、導電粒子11を単粒子層を形成するように拡げたときに、導電粒子の数が1電極あたり10個となるように分散した異方導電性接着剤とを用い以下実施例1と同様にして試験した。その結果、実施例1と同様な結果が得られた。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、電気絶縁体表面から突き出して設けた導電体を有する二つの電気部材を前記導電体のうち電気的に接続すべき部位が向き合うように対向させ、前記導電体の電気的に接続すべき部位間に扁平に変形されかつ前記導電体に食い込んでいる導電粒子を介在させるとともに、前記導電体の電気的に接続すべき部位の一部を相互に接触させて電気絶縁性の接着剤で固着することにより、低抵抗でかつ信頼性の高い接続を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルム基板同士の接続状態を示す断面図である。
【図2】フィルム状基板とガラス基板の接続状態を示す断面図である。
【符号の説明】
11 導電粒子
12 接着成分
13、13a 電極
15 フィルムベース
15a ガラス板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-16 
出願番号 特願平6-257765
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松縄 正登  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 西村 泰英
和泉 等
登録日 2002-11-08 
登録番号 特許第3367076号(P3367076)
権利者 日立化成工業株式会社
発明の名称 電気部材の接続構造及び接続方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 赤堀 龍吾  
代理人 赤堀 龍吾  
代理人 寺崎 史朗  

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