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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B24B
管理番号 1104415
異議申立番号 異議2003-72104  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-18 
確定日 2004-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3378036号「ポリッシング装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3378036号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3378036号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成4年9月25日に特許出願され、平成14年12月6日にその特許権の設定の登録がされ、その後、特許異議申立人松尾克也により請求項1ないし3に係る特許について特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月5日に訂正請求がなされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「【請求項1】 ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、
前記ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブと、該ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブとを具備し、
前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したことを特徴とするポリッシング装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0005】項の記載を、
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、前記ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブと、該ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブとを具備し、前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したことを特徴とする。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
この訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、「前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させると共に、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続し、且つ前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したこと」を、「前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したこと」とすることにより、加圧源とドレンポットとの関係を明りょうにするものであるから、特許請求の範囲の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、図1において、ドレンポット12の上部に、切替バルブ13からの配管とトップリング本体からの配管とが挿入されていることが窺われること、及び明細書の段落【0012】の記載から、真空吸着機構が加圧源に接続されたときには、ドレンポット内が加圧されることは自明である。
したがって、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項b
この訂正は、訂正事項aによる特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載をこれに整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 取消しの理由についての判断
1 本件発明
本件特許第3378036号の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正明細書及び設定登録時の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、
前記ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブと、該ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブとを具備し、
前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したことを特徴とするポリッシング装置。
【請求項2】 前記ドレンポットは前記真空吸着機構を前記切換バルブを介して前記真空源に接続する真空配管中に設けたことを特徴とする請求項1に記載のポリッシング装置。
【請求項3】 前記真空吸着機構は、前記トップリングのポリッシング対象物保持面に形成され、前記真空源に前記切換バルブを介して連通する孔を具備することを特徴とする請求項1に記載のポリッシング装置。」
2 刊行物記載の発明ないし技術的事項
当審が通知した取消しの理由に引用した本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平3-173129号公報、特許異議申立人の提出した甲第1号証)、 刊行物2(特開平3-190639号公報、特許異議申立人の提出した甲第2号証)、 刊行物3(特開平4-150911号公報、特許異議申立人の提出した甲第3号証)には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)刊行物1
a「本実施例の研磨装置は、たとえば半導体製造工程におけるウエハ(被研磨物)1のワックスレス型のポリッシング装置2とされ、水平に配置される研磨定盤3と、ウエハ1を研磨する研磨クロス4と、ウエハ1を保持する研磨プレート5と、この研磨プレート5を所定の圧力で押圧する加圧シリンダ(研磨荷重負荷機構)6とから構成されている。」(第3頁左下欄第12〜19行)
b「研磨プレート5には、第1図に示すようにウエハ1の吸着面に通じる複数の真空・加圧孔5aが形成され、ウエハ1の背面側を着脱自在に吸着して固定する構造となっている。」(第3頁右下欄第15〜18行)
c「また、研磨プレート5には、その背面側に従動軸9が接続され、・・・従動軸9の内部には、真空・加圧孔9aが形成され、この真空・加圧孔9aが図示しない流体圧源に接続されている。」(第4頁左上欄第3〜9行)
d「そして、流体圧源(図示せず)の駆動によって研磨プレート5の真空・加圧孔5aの内圧を負圧、すなわち真空状態とし、ウエハ1の背面を研磨プレート5の吸着面に吸着させて安定に固定する。」(第4頁右上欄第15〜19行)
e「この場合に、研磨剤8を供給しながら、ポリッシング処理を所定の時間だけ継続することによって、研磨クロス4に接するウエハ1の表面を鏡面状態に研磨することができる。」(第4頁左下欄第7〜10行)
f「さらに、装着されたウエハ1のポリッシング処理が終了した後に、上記と逆の工程、すなわち加圧シリンダ6を作動させることによって研磨プレート5を上昇させ、流体圧源の駆動によって研磨プレート5の真空・加圧孔5aの内圧を正圧状態とし、ウエハ1の吸着を解除する。」(第4頁左下欄第11〜16行)
上記摘記事項a〜fの記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。
「 研磨定盤3と研磨プレート5を有し、且つ該研磨プレート5が一定の圧力を前記研磨定盤3に与える加圧シリンダ(研磨荷重負荷機構)6を有し、該研磨定盤3と該研磨プレート5の間にウエハ(被研磨物)1を介在させて該ウエハ(被研磨物)1の表面を平坦且つ鏡面化する研磨装置において、
前記ウエハ(被研磨物)1を該研磨プレート5のウエハ(被研磨物)1吸着面に真空吸着する真空吸着機構を具備し、前記真空吸着機構は、前記研磨プレート5の吸着面に形成され、流体圧源に連通する真空・加圧孔5aを具備し、
前記流体圧源の駆動によって、前記真空・加圧孔5aの内圧を真空状態とすることにより、ウエハ1を研磨プレート5の吸着面に真空吸着させ、前記真空・加圧孔5aの内圧を正圧状態とすることによりウエハ1の吸着を解除するように構成した研磨装置。」
(2)刊行物2
a「本発明は光学レンズ等の球面研磨装置のレンズハンドリングに関するものであり、特にレンズの着脱を自動的に行なう自動レンズ研磨装置のワーク吸着または離脱を行なうワーク吸着離脱装置に関するものである。」(第1頁左下欄第13〜17行)
b「 しかしながら、上記のような構成では、繰り返しワーク研磨を行なううちに、真空回路内に研磨液を吸入し真空源である真空ポンプ内にまで研磨液を吸入するため、真空ポンプが破損し、また加工中は真空経路の一部を排気状態にするため分岐して配設した検出器へワーク吸着時に吸入した研磨液を送り込む状態になり、検出器を破損するという欠点を有し、ワーク吸着離脱装置として信頼性の確保が困難であった。」(第2頁左上欄第7〜15行)
c「1はワークであり、ホルダー2に供給される空気圧により吸着あるいは離脱される。3はワークを吸着するための真空源として使用される真空ポンプであり、前記ホルダー2に配管接続されている。4は電磁弁であり圧縮空気源5から送られる圧縮空気の経路と前記真空ポンプ3に接続される真空経路を切換えてワーク1の吸着離脱を行なうものである。」(第2頁右上欄第18行〜同頁左下欄第5行)
d「13,14はエアーフィルターであり真空経路内に配管接続され、空気の流速を低下させて吸入された研磨液を分離する。」(第2頁左下欄第11〜14行)
e「この吸着時に研磨液が真空経路内に吸入されるが、吸入された研磨液は真空経路内に設けられた、フィルター13により分離される。」(第3頁左上欄第16〜19行)
f「また研磨液を流速差を利用して分離するためにフィルター13,14としたが、配管チューブ容量より容積の大きな密閉容器を接続しても同様の効果が得られる。」(第3頁右上欄第13〜17行)
g「吸着検出を行なう検出器および真空ポンプ等への加工液の流入を防止して機器の故障をなくすものであり」(第3頁左下欄第2〜4行)
上記摘記事項a〜g及び第1図の記載からみて、刊行物2には次の技術的事項が記載されていると認める。
「レンズ1の表面を研磨する研磨装置において、
レンズ1をホルダー2に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液を捕集する密閉容器と、該真空吸着機構を選択的に真空ポンプ3と圧縮空気源5に接続する電磁弁4とを具備し、
前記密閉容器は前記真空吸着機構を前記電磁弁4を介して前記真空ポンプ3に接続する真空配管中に設け、
前記真空吸着機構を前記真空ポンプ3に接続することにより前記レンズ1を前記ホルダー2に真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記圧縮空気源5(加圧源)に接続するように構成したこと。」
(3)刊行物3
a「第2図は、上記水分離フィルタ10を、吸着搬送装置35に使用した一例を示し、・・・真空源36と吸着パッド37とを連通させる真空回路を構成するチューブ38,38・・・。上記吸着搬送装置35において、吸着パッド37がワーク42を吸着すると、ワーク42に付着している水滴が空気とともにチューブ38に吸引されるが、この水は水分離フィルタ10の阻水性フィルタエレメント14で分離されて、水が分離された空気が真空源36に吸引される。したがって、真空源の運転制御に必要な制御機器(図示省略)の水による不都合を防止することができる。・・・開閉弁40を開放すると、フィルタ10内の水がドレン管39を通って外部に排出される。」(第3頁左下欄第4行〜同頁右上欄第7行)
b「第4図は本発明の第3実施例を示し、この水分離フィルタ70は、本体71のドレン口72に、ばね73で閉鎖方向に付勢されたチェック弁74を備え、このばね73は、フィルタ70に真空圧が作用するとドレン口72を閉鎖し、真空圧が解除されるとドレン口72を解放する弱い付勢力を有している。」(第4頁右上欄第16行〜同頁左下欄第3行)
c「また、ドレン口に真空圧により閉鎖し、真空破壊により開放するチェック弁を設けたので、真空圧解除の都度フィルタ内の水を排出させることができる。
さらに、吸着搬送装置が、上記いずれかの構成の水分離フィルタを備えているので、水分離フィルタの流出側に水分が流出することを防止することができる。」(第2頁右下欄第10〜17行)
上記摘記事項a〜c及び第2,4図の記載からみて、刊行物3には次の技術的事項が記載されていると認める。
「ワーク42を吸着パッド37に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ水を捕集する水分離フィルタ70と、該真空吸着機構を真空源36に接続し、該水分離フィルタ70に溜まった水を排出するためのチェック弁74(開閉バルブ)とを具備し、
前記水分離フィルタ70は前記真空吸着機構を前記真空源36に接続する真空回路を構成するチューブ38,38中に設け、
前記真空吸着機構を前記真空源6に接続することにより前記ワーク42を前記吸着パッド37に真空吸着させ、また、フィルタ72の真空圧を解除してチェック弁73を開放することにより前記水分離フィルタ70の水を排出させるように構成したこと。」
3 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1(以下、「前者」という。)と刊行物1記載の発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「研磨定盤3」は、その技術的意義からみて、前者の「ターンテーブル」に相当し、以下、同様に「加圧シリンダ(研磨荷重負荷機構)6」は「トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段」に、「研磨プレート5」は「トップリング」に、「ウエハ(被研磨物)1」は「ポリッシング対象物」に、「研磨装置」は「ポリッシング装置」に、「研磨プレート5のウエハ(被研磨物)1吸着面」は「トップリングのポリッシング対象物保持面」に、それぞれ相当することは明らかであり、また、真空・加圧孔5aの内圧が正圧状態であることは、真空・加圧孔5aを具備した真空吸着機構が加圧状態ということができるので、両者は、
「ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、
前記ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構を具備し、
前記真空吸着機構を真空状態とすることによりポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を加圧状態とするように構成したポリッシング装置。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:前者では、真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットを具備しているのに対して、後者では、該ドレンポットを具備していない点。
相違点2:真空吸着機構を真空状態と加圧状態とするために、前者では、選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブを具備しているのに対して、後者では、そのような切換バルブを具備していることについて明らかではない点。
相違点3:前者では、ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブを具備しているのに対して、後者では、該開閉バルブを具備していない点。
相違点4:前者では、真空吸着機構を加圧源に接続してドレンポット内を加圧すると共に、開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したのに対して、後者では、真空吸着機構を加圧状態にするものの、ドレンポットを具備していないことから、ドレンポット内を加圧すると共に、開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成していない点。
以下、相違点1ないし4について検討する。
相違点1については、
刊行物2記載の技術的事項の「レンズ1」、「密閉容器」、「真空ポンプ3」、「圧縮空気源5」及び「電磁弁4」は、本件発明1の「ポリッシング対象物」、「ドレンポット」、「真空源」、「加圧源」及び「切換バルブ」に、それぞれ相当することは明らかであるので、
刊行物2には、「ポリッシング対象物の表面を研磨する研磨装値において、
前記ポリッシング対象物をホルダーに真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブとを具備し、
前記ドレンポットは前記真空吸着機構を前記切換バルブを介して前記真空源に接続する真空配管中に設け、
前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記ホルダーに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続するように構成した」という技術的事項が記載されていると認められる。
しかも、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術的事項とは、共に研磨装置において、ポリッシング対象物を真空吸着する真空吸着機構を具備する点で技術分野が一致しているので、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術的事項を適用して、刊行物1記載の発明において、真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液を捕集するドレンポットを具備するようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2については、
刊行物2には、上記したように真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続するために切換バルブとを具備したことが記載されているので、刊行物1記載の発明において、流体圧源に接続した真空吸着機構を選択的に真空状態と加圧状態になすために、前記切換バルブを採用して、本件発明1のように構成することは当業者が容易に想到し得たことでる。
相違点3については、
刊行物3記載の事項の「水分離フィルタ70」及び「チェック弁74」は、本件発明1の「ドレンポット」及び「開閉バルブ」に、それぞれ相当することは明らかであるので、
刊行物3には、「真空吸着機構中に吸い込んだ水を捕集するドレンポッドを具備し、該ドレンポットに溜まった水を排出するための開閉バルブを具備する」という技術的事項が記載されていると認められる。
そして、刊行物2記載の技術的事項のドレンポットの溜まった研磨液や洗浄水を排出することは、技術常識である。
しかも、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術的事項及び刊行物3記載の技術的事項とは共に、ワークを真空吸着する際に、液体を吸入する恐れのある真空吸着機構である点で技術分野が共通しているので、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の技術的事項を適用するに際し、刊行物3記載の前記技術的事項をも採用して、ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブを具備するようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
相違点4については、
刊行物2記載の技術的事項において、ドレンポットは、真空配管中に設けていることから、真空吸着機構を加圧源に接続したときには、ドレンポット内が加圧されることは明らかであり、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の前記技術的事項の適用に際し、刊行物3記載の技術的事項の前記開閉バルブを採用することにより、ドレンポット内を加圧すると共に、開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水が排出されるように構成されることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件発明1の奏する効果も、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
本件発明2において本件発明1の構成に追加した事項である「ドレンポットは真空吸着機構を切換バルブを介して真空源に接続する真空配管中に設けたこと」は、上記したように刊行物2に記載されている。
また、本件発明2の奏する効果も、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
本件発明3において本件発明1の構成に追加した事項である「真空吸着機構は、トップリングのポリッシング対象物保持面に形成され、真空源に切換バルブを介して連通する孔を具備すること」のうち「真空吸着機構は、トップリングのポリッシング対象物保持面に形成され、真空源に連通する孔を具備すること」は、刊行物1記載の発明も備えており、また、真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブを備えることは刊行物2に記載されている。
また、本件発明3の奏する効果も、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
したがって、本件発明3は、本件発明1と同様の理由により、刊行物1記載の発明並びに刊行物2及び刊行物3記載の各技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリッシング装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、
前記ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブと、該ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブとを具備し、前記真空吸着機構を前記真空源に接続することにより前記ポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、前記真空吸着機構を前記加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、前記開閉バルブを開くことにより前記ドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したことを特徴とするポリッシング装置。
【請求項2】 前記ドレンポットは前記真空吸着機構を前記切換バルブを介して前記真空源に接続する真空配管中に設けたことを特徴とする請求項1に記載のポリッシング装置。
【請求項3】 前記真空吸着機構は、前記トップリングのポリッシング対象物保持面に形成され、前記真空源に前記切換バルブを介して連通する孔を具備することを特徴とする請求項1に記載のポリッシング装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体ウエハ等のポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面に研磨するポリッシング装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来この種のポリッシング装置は、各々独立した回転数で回転するターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが摺動しながら一定の圧力をターンテーブルに与える手段を有し、ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を研磨するようになっている。このようなポリッシング装置においては、トップリング下面に開口し且つ真空源に連通する多数の細かい孔を設け、ポリッシング対象物を該トップリング下面に真空吸着する真空吸着機構が設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来のポリッシング装置の真空吸着機構は、真空吸着部が直接真空源に連通する真空配管につながっているため、研磨砥液若しくは洗浄水等を吸い込み真空ラインを詰まらせたり、真空排出部が水びたしになるという欠点があった。
【0004】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、研磨砥液若しくは洗浄水等で真空ラインを詰まらせたり、真空排出部が水びたしになるということのないトップリング真空吸着機構を具備するポリッシング装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、ターンテーブルとトップリングを有し、且つ該トップリングが一定の圧力を前記ターンテーブルに与える手段を有し、該ターンテーブルと該トップリングの間にポリッシング対象物を介在させて該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、ポリッシング対象物を該トップリングのポリッシング対象物保持面に真空吸着する真空吸着機構と、該真空吸着機構中に吸い込んだ研磨液や洗浄水を捕集するドレンポットと、該真空吸着機構を選択的に真空源と加圧源に接続する切換バルブと、該ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出するための開閉バルブとを具備し、真空吸着機構を真空源に接続することによりポリッシング対象物を前記トップリングに真空吸着させ、また、真空吸着機構を加圧源に接続して前記ドレンポット内を加圧すると共に、開閉バルブを開くことによりドレンポットの研磨液や洗浄水を排出させるように構成したことを特徴とする。
【0006】
【作用】上記のように、ポリッシング対象物を該トップリング底面に真空吸着させる真空吸着機構中にドレンポットを設けたことにより、研磨砥液若しくは洗浄水等はこのドレンポットに収容されるから、研磨砥液若しくは洗浄水等で、真空ラインを詰まらせたり、真空排出部が水びたしになるということはなくなる。また、真空吸着機構を加圧供給源に接続できるようにしたので、該加圧供給源から真空吸着機構に加圧した気体を供給することにより、ドレンポットに溜まった液を排出することができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図2は本発明のトップリング真空吸着装置を装備するポリッシング装置のポリッシング部を示す側断面図である。1はトップリング駆動軸であり、該トップリング駆動軸1の下端面中央部には球ベアリング2が摺接する凹状球面1aが形成されている。3はトップリング本体であり、該トップリング本体3はトップリング本体上部3-1とトップリング本体下部3-2とで構成されている。トップリング本体上部3-1の上面中心部には球ベアリング2が摺接する凹状球面3-1aが形成され、トップリング本体下部3-2の外周部にはウエハ外止リング5が取付けられている。
【0008】トップリング本体下部3-2には下面に開口する多数の真空吸引孔3-2aが形成されている。トップリング本体上部3-1には該真空吸引孔3-2aに連通する真空溝3-1bが形成されており、該真空溝3-1bは同じくトップリング本体上部3-1に形成された4本の真空孔3-1cに連通している。この真空孔3-1cは真空ライン用チューブ10とチューブ継手9及びチューブ継手11でトップリング駆動軸1の中心部に設けられた真空孔1bに連通されている。
【0009】前記トップリング駆動軸1にはフランジ部1cが一体に設けられており、該フランジ部1cの外周には4本のトルク伝達ピン7が設けられている。また、トップリング本体3のトップリング本体上部3-1の上面には該トルク伝達ピン7に対応して、4本のトルク伝達ピン8が設けられている。トップリング本体下部3-2の下面とウエハ外止リング5の内周とターンテーブル(図示せず)上面とに囲まれた空間に半導体ウエハ6を収容し、該ターンテーブルを回転させると共に、トップリング駆動軸1に回転させその回転トルクをトルク伝達ピン7とトルク伝達ピン8の係合によりトップリング本体3に伝達させてトップリング本体3を回転させ、且つトップリング本体3を摺動させながら半導体ウエハ6の表面を平坦且つ鏡面に研磨する。
【0010】なお、4はトップリングホルダーで、該トップリングホルダー4はボルト4-2によりトップリング本体3と連結されている。トップリング駆動軸1を上昇させるとトップリングホルダー4はトップリング本体3とともに上昇する。この上昇させた状態時にスプリング4-1は柔らかくトップリング本体3を水平に保つ機能、特に半導体ウエハを受け渡しする時に有効に機能する。
【0011】図1は上記ポリッシング部のトップリング駆動軸1の中心部に設けられた真空孔1bに接続するトップリング真空吸着装置の構成を示す図である。図1において、12はドレンポット、13はバルブである。半導体ウエハ6をトップリング本体3の底面に吸着する際、真空源16に接続されている真空ライン18を真空にすると、バルブ13がAのポートになっている時は、ドレンポット12を通ってトップリング本体3が真空側になる。この時半導体ウエハ6がトップリング本体3の下面に密着されると、真空状態となるがトップリング本体3の下面と半導体ウエハ6の僅かな隙間から、ポリッシング中の研磨砥液若しくは洗浄中の洗浄水が配管を通りドレンポット12に溜る。なお、17はチャッキ弁である。
【0012】該ドレンポット12に溜った研磨砥液若しくは洗浄水はトップリング本体3の下面から半導体ウエハ6を離脱させるとき、バルブ13をBポートにし、エアー供給源15から加圧したエアーを供給し、バルブ14を開とすればドレンポット12に溜った研磨砥液若しくは洗浄水は排出される。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ポリッシング対象物を該トップリング底面に真空吸着させる真空吸着機構中にドレンポットを設けたので、真空ラインを詰まらせたり、真空排出部が水びたしになるということはなくなる。また、真空吸着機構を加圧供給源に接続できるようにしたので、該加圧供給源から真空吸着機構に加圧した気体を供給することにより、ドレンポットに溜まった研磨液や洗浄水を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリッシング装置のトップリング真空吸着装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の半導体ウエハのポリッシング装置のポリッシング部を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 トップリング駆動軸
2 球ベアリング
3 トップリング本体
4 トップリングホルダー
5 ウエハ外止リング
6 半導体ウエハ
7 トルク伝達ピン
8 トルク伝達ピン
9 チューブ継手
10 真空ライン用チューブ
11 チューブ継手
12 ドレンポット
13 バルブ
14 バルブ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-11 
出願番号 特願平4-280492
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B24B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 和田 雄二  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 上原 徹
鈴木 孝幸
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3378036号(P3378036)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 ポリッシング装置  
代理人 伊藤 茂  
代理人 伊藤 茂  

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