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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K |
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管理番号 | 1104539 |
異議申立番号 | 異議2003-71807 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-11-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-15 |
確定日 | 2004-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3367863号「シリコーンエマルション及びその製造方法、並びに毛髪化粧料」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3367863号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許(特許第3367863号)の請求項1〜3に係る発明は、平成9年5月7日に特許出願され、平成14年11月8日に特許権の設定の登録がされた。 その後、平成15年7月15日に特許異議申立人・信越化学工業株式会社より本件特許の請求項1〜3に係る発明に対して、特許異議の申立てがされた。 (2)本件発明 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。 【請求項1】 ポリオルガノシロキサンのO/W型シリコーンエマルションを製造するにあたり、界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を使用し、且つポリオルガノシロキサンとノニオン系界面活性剤との混合物中に、転相点以上の水を1度に加えて混合攪拌後、残りの水を加えて希釈することを特徴とするシリコーンエマルションの製造方法。(以下、「本件発明1」という。) 【請求項2】 請求項1記載の製造方法で得られた、エマルション平均粒子径が1〜100 μmであるシリコーンエマルション。(以下、「本件発明2」という。) 【請求項3】 請求項2記載のシリコーンエマルションを含んでなることを特徴とする毛髪化粧料。(以下、「本件発明3」という。) (3)異議申立の概要 申立人・信越化学工業株式会社は、請求項1及び3に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲1及び2号証に記載された発明であり、また、請求項2に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1〜3は特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、請求項1〜3に係る特許は特許法第113条第2項に該当する旨を主張している。 (4)甲第1及び2号証の記載 (1)甲第1号証:特開平7-188557号公報 (1-1)「比較例1〜3として、非イオン性界面活性剤をオルガノポリシロキサンと混合しておき、精製水を添加して転相させたのち、精製水で稀釈することにより、実施例1〜5と同装置で乳化した」(段落【0023】) (1-2)「得られたオルガノポリシロキサン乳化物の平均粒子径が0.5μm(比較例1)、1.0μm(比較例2)、0.7μm(比較例3)であり、安定性は○であること」(段落【0024】の表1) (1-3)「つぎに・・・シャンプー基材を調製し、これに表1に示したオルガノポリシロキサン乳化物を・・・添加し、・・・シャンプー組成物A〜Iを作成し、これについての泡立ち性、付着量、毛髪の感触、シャンプー安定性をしらべたところ、表2に併記したとおりの結果が得られた」(段落【0025】) (2)甲第2号証:特開平8-319221号公報 (2-1)「(A)・・・オルガノポリシロキサンを含有する水性シリコーン乳濁液及び(B)・・・シリコーン乳濁液からなり、[(A)のオルガノポリシロキサン]/[(B)のオルガノポリシロキサン]=1/99〜99/1(重量比)であり、(A)のオルガノポリシロキサン及び(B)のオルガノポリシロキサンの合計含有量が 0.1〜10重量%であるシャンプー組成物。」(【請求項1】) (2-2)「この(B)成分のシリコーン乳濁液は、下式(h)で示される25℃における粘度が1〜10、000cpのオルガノポリシロキサンを、非イオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを用いて乳化することによって得ることもできる。」(第4欄40〜44行、段落【0013】) (2-3)「(h)・・・R43SiO-(R32SiO)hSiR43(h=1〜1000) 。(段落【0015】)」 (2-4)「[調製例6:(B)成分-2の調製]下記式(i)で表わされる粘度が50cpのオルガノポリシロキサン 300g にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13)40g 及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウムの30重量%水溶液3g を混合し、さらに水 100g を加えてホモミキサーで6、000rpmで撹拌を行なったところ転相が起り増粘が認められたが、さらに撹拌を20分間継続し均一化した。その後、ホモミキサーの回転数を2、000rpmとして、撹拌を行ないながら水 557g を添加混合した。さらにこのものを 300kg/cm2の高圧ホモジナイザーを通過させ、目的とする水性乳濁液を得た。[(B)成分-2]((i)・・・(CH3)2SiO-[(CH3)2SiO]42-Si(CH3)3)」(段落【0028】) (5)当審の判断 (i)本件発明1について 本件発明1における「転相点」とは、「例えば、従来技術として前述した転相乳化法では、油相成分と界面活性剤の混合物に水を徐々に加えていく。まず、W/O型を経由したのち、D相を形成させる。D相は、界面活性剤相とも呼ばれ、油と水が界面活性剤のラメラ相によってサンドイッチ型に配列した液晶相であり、ここで、外観上は透明性が出てくる。通常この点を転相点としている。」(段落【0007】)と記載されていることから、注水により外観上透明性が出てくる点を意味し、また、「1度に加えて」とは「本発明では、転相点の水量を基準として、その量の1〜5倍量の水を初回注水する。」(段落【0008】)との記載からみて、上記従来技術において「水を徐々に加えていく」ところを、一度に加えるものであるが、甲第1号証には「精製水を添加して転相させたのち、」(1-1)と、また、甲第2号証には「・・・30重量%水溶液3g を混合し、さらに水 100g を加えてホモミキサーで6、000rpmで撹拌を行なったところ転相が起り」(2-4)と記載されているにとどまり、初回の注水量を一度に加えることは記載されておらず、「転相点以上の水を1度に加える」ことが普通に行われることとも認められないから、本件発明1が甲第1〜2号証に記載された発明であるということはできない。 (ii)本件発明2について 本件発明2は、請求項1の製造方法では、「これまで安定性の良好なものを得るのが困難であった比較的粒子径の大きいもの、例えば1〜100μm、・・・のものが効率良く得られる。」(段落【0010】)ことに基づくものであって、甲第1号証の表1の比較例2に0.5μm及び0.7μmのものと共に列記された平均粒径が1μmの乳化物が本件発明2に係る「シリコーンエマルション」と同一であるということはできない。 (iii)本件発明3について 本件発明3は本件発明2記載のシリコーンエマルションを含んでなることを特徴とする毛髪化粧料であり、前記(ii)記載のとおり、本件発明2は甲第1号証記載の発明と同一であるということはできないから、本件発明3も同様に甲第1号証記載の発明と同一であるということはできない。 また、甲第2号証には、シャンプー組成物を形成するエマルションの平均粒径が何ら記載されていないから、本件発明3が甲第2号証記載の発明と同一であるということはできない。 したがって、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であるとすることはできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び提出された証拠によっては本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消す理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-09-07 |
出願番号 | 特願平9-116775 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(A61K)
P 1 652・ 113- Y (A61K) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 横尾 俊一 |
登録日 | 2002-11-08 |
登録番号 | 特許第3367863号(P3367863) |
権利者 | ジーイー東芝シリコーン株式会社 |
発明の名称 | シリコーンエマルション及びその製造方法、並びに毛髪化粧料 |
代理人 | 岩見谷 周志 |
代理人 | 義経 和昌 |
代理人 | 溝部 孝彦 |
代理人 | 古谷 馨 |
代理人 | 持田 信二 |