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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1104542
異議申立番号 異議2003-72501  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-07 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3398171号「水中油型乳化組成物」の請求項1〜7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3398171号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3398171号の発明は、平成5年3月15日に特許出願され、平成15年2月14日に特許権の設定の登録がされ、その後、その特許について、山本泰之及び花田吉秋により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された、以下のとおりのものである。

【請求項1】 両親媒性物質-界面活性剤-水系において常温以上でゲルを形成し得るものの中から選択された両親媒性物質及び界面活性剤と、
油と、
水と、
を含み、前記両親媒性物質及び界面活性剤は、その実質的全量が油滴界面に存在し、両親媒性物質及び界面活性剤の油滴界面存在量は、DSCによるピーク面積比で90%以上であることを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項2】 請求項1記載の組成物において、両親媒性物質及び界面活性剤が、両親媒性物質-界面活性剤-水系において形成されるゲルの転移温度が60℃以上であるものの中から選択されたことを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項3】 請求項1又は2記載の組成物において、乳化粒子径が0.15μm以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項4】 請求項1〜3記載の組成物において、両親媒性物質及び界面活性剤の合計量に対し、油相が1/2量以上配合されたことを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項5】 請求項1〜4記載の組成物において、両親媒性物質及び界面活性剤の合計量は水相に対して0.2重量%以上であることを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項6】 請求項1〜5記載の組成物において、両親媒性物質は炭素鎖長が16以上である高級アルコール及び/又は高級脂肪酸よりなることを特徴とする水中油型乳化組成物。

【請求項7】 請求項1〜6記載の組成物において、界面活性剤がカチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤よりなることを特徴とする水中油型乳化組成物。

3.異議申立ての概要
3-1. これに対し、特許異議申立人山本泰之(以下、「申立人A」という。)は、証拠として甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件請求項1〜7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項の規定に該当する旨、主張している。

3-1-1. 甲第1号証及び甲第2号証の記載
(1)甲第1号証:油化学 第41巻 第2号 (1992) 161-165頁 「高級アルコールで安定化したO/Wエマルジョンの特殊なレオロジー的性質」
(1-1) 油として(a)流動パラフィン、界面活性剤として(b)ポリ(オキシエチレン)(20)ソルビタンモノステアレートとソルビタンモノステアレート及び高級アルコールとして(c)パルミチルアルコールとステアリルアルコールの混合物からなる油相を80℃に加熱し、これをかくはんしながら80℃の水を一気に加え、ホモミキサーで予備乳化した後、高圧ホモジナイザーで600barの圧力で5回処理し、冷水中で30℃まで冷却かくはんして、O/Wエマルジョンを作成したこと(162頁「2 実験」の項)。
(1-2) 高圧ホモジナイザーを用いて製造されたO/Wエマルジョンが、DSC測定において60℃付近に一つの転移ピークを示し,ラメラ構造が形成され,25℃でゲルネットワークを相を形成していると考えられること(162〜163頁「3.1 DSC測定、偏光顕微鏡観察」の項)。
(1-3) O/Wエマルジョンが、「レオペクシー」と呼ばれる流動特性を示すこと。「レオペクシー」とは、ずり速度の下降時の方が、上昇時よりも高いずり応力を示す特性であること(165頁左欄12〜14行、右欄7〜15行及び図5、161頁右欄7〜10行)。
(1-4) この流動特性を持つエマルジョンは、せん断をかける前は低粘度の液状で流動性があるが、せん断をかけることにより流動性はなくなり、固形になること(162頁左欄1〜4行)。

(2)甲第2号証:セチルアルコールの物理化学 福島正二著 1992年第1刷発行、第51-64頁及び第114-115頁
(2-1) 化粧品のO/Wクリームを作るには油と水と乳化剤のほかに高級アルコールであるセチルアルコールが必須であり、該クリーム中にはD2相とM相の2種類の液晶が生成していること及びD2相と呼ばれる半固体のラメラー液晶が水相に分散し、外相がゲル化されることによって乳化粒子の運動が妨害され、クリーミングや凝集が起こりにくくなること(115頁下から8行〜最下行)。
(2-2) D2相は外相を構成する六方晶形構造のラメラ液晶であり、M相は球晶であること(114頁4〜14行及び図10.4)。

3-2.また、特許異議申立人花田吉秋(以下、「申立人B」という。)は、明細書の記載不備について、
(i)A.特許請求の範囲の請求項1における「ピーク面積比」と言う用語の意味が不明りょうである、
(i)B.本件請求項1に係る発明は、(1)両親媒性物質及び界面活性剤は、その実質的全量が油滴表面に存在する点、及び(2)両親媒性物質及び界面活性剤の油滴界面存在量は、DSCによるピーク面積比で90%以上である点を構成要件のひとつとするものであるが、甲第1号証〜甲第5号証を参酌すれば(1)の要件と(2)の要件は技術的にみて同時に満たすことはあり得ない、
という理由で、本件特許は特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、また、
(ii)本件請求項1は、技術的に決して同時に満足されることのない二つの要件を含むものであり、本件明細書及び図面には当業者が容易に実施できる程度にその発明の目的、構成及び効果が記載されているとはいえない、
と主張している。

4.当審の判断
4-1.申立人Aの異議申立について
(1)対比
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と甲第1号証に記載された水中油型乳化組成物とを対比すると、後者でもゲルが形成されている(摘記事項(1-1)及び(1-2))ので、後者の上記(a)、(b)、(c)成分はそれぞれ、前者の油並びに常温以上でゲルを形成し得るものの中から選択された両親媒性物質及び界面活性剤に相当する。
そうすると、両者は、「両親媒性物質-界面活性剤-水系において常温以上でゲルを形成し得るものの中から選択された両親媒性物質及び界面活性剤と、油と、水とを含む水中油型乳化組成物」である点で一致し、前者では「両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量が油滴界面に存在し、両親媒性物質及び界面活性剤の油滴界面存在量は、DSCによるピーク面積比で90%以上」であるのに対し、後者ではこのことが明らかでない点で相違する。
ここで、本件請求項1の「DSCによるピーク面積比」における「面積比で90%以上である」ところのピークは、同項の記載から、油滴界面に存在する両親媒性物質及び界面活性剤に基づく相転移ピークを意味していることが明らかである。
そして、高級アルコールを含む両親媒性物質-界面活性剤-水系でできるクリームでは2種類の液晶が生成し、ラメラ液晶が水相に分散して水相がゲル化されることが知られている(摘記事項(2-1))ところ、本件発明においては、両親媒性物質及び界面活性剤をほぼ全量油滴界面に移行させ、ラメラ構造の分散したもの等が存在しないものである(本件明細書【0006】)から、前記「ピーク」は、乳化組成物中に生成すると考えられる2種類の液晶構造のうち、外相を構成する六方晶形構造のラメラ液晶ではなく、油相と外相の界面に存在する球晶の相(摘記事項(2-2))を構成する両親媒性物質及び界面活性剤の相転移を表すピークであると解される。

(2) 特許法第29条第1項第3号について
上記相違点に関し、特許異議申立人は、本件発明の水中油型乳化組成物は、両親媒性物質、界面活性剤、流動パラフィン及び水を含む混合分散液を、高圧ホモジナイザーを用いて好ましくは3000psi以上の圧力下で調整されるものである(本件明細書【0012】)ところ、甲第1号証のエマルジョンも高圧ホモジナイザーで約8700psiの圧力下で調整され、乳化時の温度もいずれもゲルの転移温度以上であって、高圧ホモジナイザー処理により製造された乳化組成物のDSC曲線(c)も単一のピークを示していることから、この場合も両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量がエマルジョンの界面に移行している状態で一致し、また甲第1号証に記載の水中油型乳化組成物もレオペクシーという特殊な流動特性を示す点で、両者の性状も一致していると主張している(異議申立書9頁3〜21行、10頁15行〜11頁8行)。

しかしながら、甲第1号証の高圧ホモジナイザー処理を行った組成物のDSC曲線のピークと油分を除いた組成物中のラメラ構造の相転移ピーク(摘記事項(1-2))とを比較すると、本件の組成物では両者が異なる温度で現れているが(本件【図4】)、甲第1号証に記載の水中油型乳化組成物では両者はほぼ同一の温度で現れており(摘記事項(1-2)、163頁Fig-2参照)、高圧ホモジナイザー処理により製造された組成物のDSC曲線(c)のピークがラメラ構造の相転移によるものであると記載されている(摘記事項(1-2))。

また、本件請求項1の乳化組成物と甲第1号証の乳化組成物の粘度特性(摘記事項(1-3),(1-4))についても、両者の微細構造が異なっているので、問題とならない。つまり、前者においては塗布・摩擦により、エマルション粒子の機械的な破壊及びゲルの再構成が起こりその流動性が変化するとされる一方、後者においてはせん断力の適用により単にラメラ粒子の凝集が起こっているものと認められる。
してみれば、両者で見られる現象は、ゲル構造の出現ないしは発達という点で共通するものの、両者は初期状態では全く異なった微細構造を有するので、両者で見られる粘度特性の変化そのものは、その質及び程度において全く異なると考えるべきである。

したがって、甲第1号証のFig.2に示される高圧ホモジナイザー処理により製造された組成物のDSC曲線ピーク(c)はラメラ構造に由来するものであり、一方で本件発明の「DSCによるピーク面積比で90%以上である」ところの「ピーク」は球晶に包まれた油相粒子界面における両親媒性物質及び界面活性剤からなる液晶相、すなわち球晶の密に詰まった相の相転移を表すピークであるから、両者はこの点で相違しており、本件請求項1の発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(3) 特許法第29条第2項について
上述したとおり、甲第1号証のDSC曲線のピークはラメラ構造に由来するものであって、甲第1号証には、本件発明のような油滴界面上の両親媒性物質及び界面活性剤の相転移を表すピークについても、該ピークを生じさせるような、油滴界面上に両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量が移行することにより形成された液晶相ないしは該液晶相が遊離状態で存在する油相粒子についても、何ら記載も示唆もなされていない。
また、甲第2号証には、両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量が存在する球晶に包まれた油相粒子(114頁6〜7行参照)は記載されているが、同号証の記載は、該粒子が六方晶形構造のラメラ液晶からなる外相中に存在している乳化組成物を示すに留まり、遊離状態での該粒子及びこれを含む乳化組成物は記載も示唆もなされていない。
そして、両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量が存在する球晶に包まれた油相粒子が遊離状態で含まれる乳化組成物において、使用前は水溶液状の物性を有するものが、使用時にはゲルが形成され基剤が固化されることによりクリーム状の使用感触が付与されるという点は、甲第1、2号証のいずれにも記載も示唆もなされていないので、このような構成を有する水中油型乳化組成物を製造することが、当業者にとって容易になし得たものとは到底いえない。
そして、本件発明は、エマルジョン粒子界面上に、両親媒性物質及び界面活性剤の実質的全量を移行させたことにより、水溶液状の物性を有し、しかもクリーム状の使用感覚を備えた水中油型乳化組成物を提供し得たものである。

したがって本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)また、本件請求項2〜7に係る発明は、本件発明の乳化組成物の成分ないし乳化粒子径を限定する発明であるから、本件発明についての理由と同様の理由により、甲第1号証に記載の発明と同一でもないし、甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4-2.申立人Bの異議申立について
(i)Aについて
申立人Bは、「DSCによるピーク面積比」について、分母となるピーク面積比がなんであるのか、また分子となるピーク面積比がなんであるのかその技術的意義が一義的に明確とはいえないと主張するが、請求項1においては、「両親媒性物質及び界面活性剤は、その実質的全量が油滴界面に存在し、両親媒性物質及び界面活性剤の油滴界面存在量は、DSCによるピーク面積比で90%以上である」と記載されいることから、「ピーク面積比」が「両親媒性物質及び界面活性剤の油滴界面存在量を示すDSCのピーク面積と、これにこれ以外のピーク面積も含めた総ピーク面積との比」を意味するものであることは、明らかであり、その分母が総DSCピーク面積であり、分子が特定の(この場合、油滴界面上の両親媒性物質及び界面活性剤に基づく)DSCピーク面積」を意味することも明らかであるから、請求人Bのこの点についての主張は妥当でない。

(i)Bについて
申立人Bは、(1)の要件について、甲第1号証(Journal of Colloid and Interface Science、Vol.41、No.2、November 1972,p.343-349)、甲第2号証(油化学、第27巻、第1号(1978)、2〜12頁)及び甲第3号証(K.shinoda et al.[COLLOIDAL SURFACTANTS」、Academic Press、New York and London、1963、p.23)に、それぞれ、混合ミセル中では、界面活性剤の疎水部(アルキル部)が運動状態にあること(甲第1号証、345頁右欄、13〜15行)、界面活性剤の鎖の運動はミセル表面もしくは親水性/疎水性界面から離れるに従って活発になること(甲第2号証、7頁右欄7〜13行)、界面活性剤のミセル内部は液体状態であること(甲第3号証、23頁15〜19行)が記載されていることから、ミセル、可溶化ミセル、マイクロエマルジョンの三つの状態では、油の存在量は異なるものの、それらを構成する界面活性剤のアルキル鎖の物性(状態)には違いはなく、いずれも液体状態であるから、O/W型エマルジョンにおいても疎水鎖は油中に溶解しているため、DSCにおいて転移ピークは認められないものであり、転移ピークが存在することを前提とする(2)の要件を満たすことはあり得ない、と主張する。
しかしながら、申立人Bの提出した上記甲号証はいずれも水、油及び界面活性剤のみからなる「水中油型乳化組成物」に関するものであり、このような系においては、申立人Bの主張するとおり、DSCによる転移ピークは存在しないと考えられるが、本件請求項1に係る発明である「水中油型乳化組成物」においては、高級アルコールなどの結晶性(固体)の「両親媒性物質」が更に配合されているものであり、この「両親媒性物質」は「水中油型乳化組成物」中において、融点よりも低い温度(常温)では、油相、水相のいずれにも完全には溶解しておらず、たとえば、水和結晶や界面活性剤との混晶によるラメラ構造(ゲル)のように、ある種の結晶構造を伴って存在している。そして、このような「両親媒性物質」が配合された「水中油型乳化組成物」の温度を上げていった場合には、当該「両親媒性物質」の関わる結晶構造の融解による転移ピークが検出されると考えられ、本件の図4に示された結果もこれを支持するものである。すなわち、流動パラフィン(油分)を含まない水中油型乳化組成物のDSC曲線(以下、「DSC曲線(1)」という。)が、75℃に単一のピークを示すのに対して、流動パラフィンを同一量加える以外上記の水中油型乳化組成物と同一の組成を有し、乳化粒子径のみが異なる3種類の水中油型乳化剤のDSC曲線についてみると、まず粒子径が1〜10μmともっとも大きな系のDSC曲線(以下、「DSC曲線(2)」という。)はDSC曲線(1)の75℃のピークに相当するピークが減少し、75℃よりも低温側に新たにピークが現れており、粒子径が0.24μmとつぎに大きな系のDSC曲線(以下、「DSC曲線(3)」という。)はこの傾向が強まり、粒子径が0.07μmと最も小さな系のDSC曲線(以下、「DSC曲線(4)」という。)では、75℃のピークは消滅し、63℃におけるピークのみを示している。油分を含まない系においてはエマルジョンは形成されないから、この系に対応するDSC曲線(1)におけるピークは、「両親媒性物質-界面活性剤-水」のゲルに由来する転移ピークと考えられ、これは、申立人Bが甲第4号証として提出した油化学、第41巻、第2号(1992)、161-165頁)(申立人Aが提出した甲第1号証と同一のもの)の第162-163頁に記載された油分を含まない系についての記載によっても支持されるものである。一方、乳化粒子径が0.07μmと最も小さな系のDSC曲線(4)においては、この75℃のピークは消滅し、代わりに63℃にピークが現れており、乳化粒子径が1〜10μmの系のDSC曲線(2)及び乳化粒子径が0.24μmの系のDSC曲線(3)においては粒子径が小さくなるにつれてDSC曲線(1)の75℃のピークに相当するピークが減少し、65℃のピーク(DSC曲線(4)における63℃のピークに対応すると考えられる)が増加する様子が読みとれる。油分の量が同じでも乳化粒子径が小さくなれば、油滴界面の面積が増大し、そこに存在する両親媒性物質及び界面活性剤の量も増大することを考慮すれば、DSC曲線(1)における「両親媒性物質ー界面活性剤ー水」のゲルに由来するピークは、両親媒性物質及び界面活性剤が油滴界面に移行する量に応じて減少し、その移行した量に見合う分の油滴界面に存在する両親媒性物質及び界面活性剤の転移に基づくピークが新たに現れる、と考えるのが合理的である。(申立人Bが提出した甲第4号証においてDSCピークがほぼ同一の位置にあるのは、同号証にも記載され、また4-1.(1)で述べているようにラメラ構造内で起こる変化に対応するものであり、本件におけるピーク位置が異なる系とは無関係のものである。)
したがって、前記要件(1)及び要件(2)は技術的にみて同時に満たすことができるものであり、申立人Bの主張は妥当でない。

(ii)について
申立人Bの主張は、前記要件(1)及び要件(2)は技術的にみて同時に満たすことができない、ということを前提とした主張であるところ、その主張が妥当でないことは上記のとおりであるから、主張(ii)も同様の理由で妥当でない。
なお、申立人Bは、平成13年6月4日付け意見書についても甲第5号証(日本化学会誌、1987、No.9、p.1632-1637)を提出して、同意見書に記載されている試験の測定結果に疑義があると主張するが、申立人Bの主張は、ピークに対応する変化についての誤解に基づくものであるので、この点についても、その主張は妥当でない。
したがって、申立人Bの主張はいずれも妥当でない。
以上のとおりであるから、本件特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-08-31 
出願番号 特願平5-80177
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 534- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 531- Y (A61K)
最終処分 維持  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
渕野 留香
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3398171号(P3398171)
権利者 株式会社資生堂
発明の名称 水中油型乳化組成物  
代理人 岩橋 祐司  

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