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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A61H
管理番号 1105027
審判番号 無効2001-35499  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-16 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-11-08 
確定日 2004-09-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3012127号発明「エアマッサージ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3012127号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3012127号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成5年10月29日に出願され、平成11年12月10日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
(2)これに対し、請求人は、平成13年11月8日に、その請求項1に係る発明の特許について無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成14年2月18日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、以下のとおりである。
【特許請求の範囲】の【請求項1】の、
「空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させてマッサージを行うエアマッサージ装置であって、上方および前後端が開放されるとともに人体の脚部を載せる一対の凹状受部を形成し、前記各凹状受部の相対向する側面には空気袋をそれぞれ配設したことを特徴とするエアマッサージ装置。」
を、
「空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させて前記空気袋によってマッサージを行うエアマッサージ装置であって、上方および前後端が開放されるとともに人体の脚部を載せる一対の凹状受部を形成し、前記各凹状受部の相対向する側面には膨張により前記脚部を挟み付ける空気袋をそれぞれ配設したことを特徴とするエアマッサージ装置。」、
と訂正する。

2.訂正の可否に対する判断
(1)上記訂正事項は、マッサージを行うための手段を空気袋に特定し、かつ、該空気袋の動作態様を特定したものであって、かかる特定は、特許明細書の段落【0022】の「空気袋23a,23bの膨張によりこの承山近傍の下退部を挟み付けることにより筋肉のマッサージ並びにツボへの刺激を行なう」及び段落【0036】の「空気袋23a,23bの膨張により、下肢のふくらはぎが両側部から挟み込まれるように掴み揉みされる状態となる」との記載に基づいたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記訂正事項は、人手によるような充分な揉み効果がえられるエアマッサージ装置の提供という課題に変更を及ぼすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)したがって、平成14年2月18日付けの訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定に適合し、かつ、同条第5項の規定によって準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1号証乃至甲第7号証を提出すると共に、以下の1)乃至4)の理由を挙げて、本件請求項1に係る発明の特許は平成2年改正の特許法(以下、「旧特許法」という。)第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきである旨主張している。
1)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由1」という。)
2)本件請求項1に係る発明は、甲第2号証(甲第3号証は補強証拠)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。」(以下、「無効理由2」という。)。
3)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第2号証(甲第3号証は補強証拠)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由3」という。)。
4)本件請求項1に係る発明は、甲第6号証に記載された発明と実質的に同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。」(以下、「無効理由4」という。)

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明ではなく、或いはそれらの証拠に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもなく、また、甲第6号証に記載された発明と実質的に同一のものでもないから、本件請求項1に係る発明の特許には、何等の無効理由も存在しない旨主張している。

5.甲第1号証乃至甲第7号証
(1)甲第1号証(特公昭52-28517号公報)には、指圧装置に関するものであって、
・第1欄34行〜第2欄2行に「従来の指圧装置にあっては単に指圧頭を身体に向けて間歇的に押圧するようにしているだけなので、身体が指圧力の作用方向に逃げてしまい指圧効果が損われ、特に腕部、脚部のように体重をかけにくい部分ではその傾向が大きく、実質的な指圧効果が得られない欠点があった。」、
・第3欄第12〜27行に「前記取付板23の瑞部には、大腿部に対面する内面が凹状になるように屈曲させた固定枠24が一体的に形成され、この固定枠24の一端緑には同じく前記被指圧部に対面する内面が凹状になるように屈曲させた可動枠25がその固定枠24に対して開閉自在に蝶着26されており,前記固定枠24と可動枠25とによって前記被指圧部を抱持し得る抱持枠27を構成する。固定枠24と可動枠25の相対向する内面には対をなす、蛇腹式の指圧筒28,29が気密状態にして固着され、指圧筒28,29の上端部には、指圧頭30,31がそれぞれ固設されている。指圧筒28,29にはそれぞれ図示しない空気圧生成装置によって生成された空気圧が導管32を介して給排できるようになっており、指圧筒28,29を伸縮作動させることができる。」、
・第4欄第34〜35行に「大腿部にはもみ作用を与えながら指圧することができる。」、
・第5欄第12行〜第6欄第6行に「太った人、痩せた人の場合でも前記指圧筒28,29を略相対向させることができ、従来の指圧装置では指圧が困難であった脚部、腕部等を恰も指圧師が指先で抱持して指圧する場合と同じように指圧することができ、・・・利用者の身体をもみながら指圧することができ、全体として指圧効果を著しく高めることができるものである。」、
とそれぞれ記載されている。
・また、第2図には、凹状固定枠24と凹状可動枠25からなり、前後端が開放され、かつ、凹状可動枠25が開いた状態で上方が開放されるとともに人体の脚部を抱持し得る一対の凹状抱持枠27,27を構成し、各凹状抱持枠27,27の相対向する側面には、指圧頭30,31が固設された蛇腹式の指圧筒28,29が固着され、前記指圧筒28,29の伸長により前記脚部を挟み付けるようにした指圧装置の構成が示されている。
・上記の記載事項及び図示内容によれば、甲第1号証には、
「指圧頭30,31が固設された指圧筒28,29と、この指圧筒28,29に対して空気圧生成装置によって生成された空気圧を給排できる手段とからなり、前記指圧筒28,29を伸縮作動させて前記指圧筒28,29によって指圧を行う指圧装置であって、凹状固定枠24と凹状可動枠25により、前後端が開放され、上方が凹状可動枠25が開くことで開放されるとともに人体の脚部を抱持し得る一対の凹状抱持枠27,27を形成し、前記各凹状抱持枠27,27の相対向する側面には伸長により前記脚部を挟み付ける指圧筒28,29をそれぞれ固着して、もみ作用を与えるようにした指圧装置。」(以下、「甲第1発明」という。)
が記載されているものと認められる。
(2)甲第2号証(意匠登録第296760号公報)には、意匠に係る物品を指圧椅子とする意匠であって、特に参考図には、上方および前後端が開放されるとともに人体の脚部を載せる一対の凹状受部を形成した指圧椅子が示されている。
(3)甲第3号証(意匠登録第296760号の意匠登録証とその意匠登録出願の際に提出された図面代用写真)には、甲第2号証と同様の指圧椅子が示されている。
(4)甲第4号証(実願昭57-121347号[実開昭59-100410号]のマイクロフィルム)には、エアーバッグ式圧迫治療器に関するものであって、
・明細書第5頁13行〜第6頁第6行に「エアーバッグ4a〜4fは十分な風量の空気を受けて所定の大きさまで脹らみ、それぞれ所定の要所を圧迫する。そして、設定された圧迫時間だけこの状態を保持し、電磁弁15が閉鎖されると圧力調整排気弁16からエアーバッグ内の空気が排気されエアーバッグは収縮する。さらに、収縮時間経過後、再び電磁弁15が開くと圧縮空気がエアーバッグ4a〜4f内に供給されて脹らみ、患部要所が圧迫される。このような動作が繰り返し行なわれることにより、肩部の肩甲骨内側縁・・・等の要部が適度にもみほぐされ、血行を良くすると共に沈痛効果が生じ、肩関節の筋腱等軟部組織の損傷を治療することができる。」と記載されている。
・また、第5図には、脚部をエアーバッグで圧迫する構成が示されている。
(5)甲第5号証(実願昭55-5633号[実開昭56-106731号]のマイクロフィルム)には、マッサージ装置に関するものであって、
・明細書第5頁第4行〜第7頁第2行に「上記の様な構成とした本実施例の場合、使用者が先ず椅子1に座してその腰から背中及び肩(首)へとかけた部分を空気袋13a乃至13eに当て、その上で図示しない・・・よって空気袋13a乃至13eはその一つ一つが順次膨張,収縮を繰返し、斯かる空気圧の変化によって前記使用者の腰,背中,肩(首)といった各部を順次マッサージする。」と記載されている。
(6)甲第6号証(特開平6-197934号公報)には、身体を載せてマッサージを行うための施療凹部が設けられ、この施療凹部を形成している両側壁にそれぞれマッサージ子を備えたエアーセルが設けられ、このエアーセルにはエアーセルの膨張,収縮のためのエアーを供給するためのポンプが設けられたマッサージ装置について記載されている。
(7)甲第7号証は、特許庁編「特許・実用新案 審査基準」第II部第2〜3章を抜粋したものである。

6.無効理由について
つぎに、上記無効理由1乃至4のうち、無効理由3について検討する。

(1)本件の請求項1に係る発明
上記「2.」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。(上記「1.(3)」参照。以下、「本件発明1」という。)

(2)対比・判断
本件発明1と甲第1発明とを比較すると、甲第1発明における「空気圧生成装置によって生成された空気圧を給排できる手段」が本件発明1における「エアを給排気するエア給排気装置」に相当し、以下同様に、「伸縮作動」が「膨張・収縮」に、「一対の凹状抱持枠27,27」が「一対の凹状受部」に、「伸長により」が「膨張により」に、「固着」が「配設」に、それぞれ相当する。
そして、甲第1発明における「指圧頭30,31が固設された指圧筒28,29」と本件発明1における「空気袋」は、共に脚部を押圧する「押圧子」という概念で共通するものである。
また、甲第1発明における「指圧を行う指圧装置」は、それによりマッサージ効果が得られることは明らかであるから、本件発明1における「マッサージを行うエアマッサージ装置」と共に「マッサージを行うマッサージ装置」という概念で捉え得るものである。
さらに、甲第1発明における「人体の脚部を抱持し得る」ことと、本件発明1における「人体の脚部を載せる」こととは、「人体の脚部を位置させる」という概念で共通している。
したがって、両者は、
「押圧子と、この押圧子に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記押圧子を膨張・収縮させて前記押圧子によってマッサージを行うマッサージ装置であって、前後端が開放されるとともに人体の脚部を位置させる一対の凹状受部を形成し、前記各凹状受部の相対向する側面には膨張により前記脚部を挟み付ける押圧子をそれぞれ配設したマッサージ装置」である点で一致し、
a)本件発明1が、押圧子を「空気袋」とした「エアマッサージ装置」であるのに対し、甲第1発明は、押圧子を「指圧頭が固設された指圧筒」とした「指圧装置」である点(以下、「相違点a」という。)、
b)人体の脚部を位置させる前後端が開放された一対の凹状受部に関し、本件発明1が、「上方が開放され」、かつ、脚部を「載せる」としているのに対し、甲第1発明は、「上方が凹状可動枠25が開くことで開放され」、かつ、脚部を「抱持し得る」としている点(以下、「相違点b」という。)、
で相違する。
以下、上記の相違点について検討する。
・相違点aについて
一般的に、マッサージ装置として、指圧頭が固設された指圧筒を押圧部材として備えた指圧式のもの(実公昭61-39470号公報、特公昭44-13638号公報参照。)や空気袋を押圧部材として備えたエア式のもの(甲第4及び5号証参照。)があることは良く知られているところである。
そうすると、マッサージ装置として、上記二つの内のいずれのタイプを採用するかは、当業者が必要に応じて適宜選定しうる事項であると認められ、甲第1発明において、押圧部材として「指圧頭が固設された指圧筒」の替わりに「空気袋」を採用することにより、空気袋によってマッサージを行う「エアマッサージ装置」に改変することは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、その際に格別な技術的困難性を伴うものとも認められない。
・相違点bについて
甲第2号証には、上方および前後端が開放された一対の凹状受部に人体の脚部を載せるようにした指圧椅子が記載されている。
甲第1発明と甲第2号証に記載の指圧椅子とは、指圧装置という同一技術分野に属するものであるから、甲第1発明において、前後端が開放された一対の凹状受部に、上記甲第2号証に記載の技術を適用し、相違点bにおける本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明1により奏される効果は、上記甲第1、2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明1は、上記甲第1、2号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、被請求人は、平成14年6月28日に実施された口頭審理において、ツボを押圧対象とする指圧装置と、筋肉を押圧対象とするエアマッサージ装置とでは、その目的・機能が異なっており、エアマッサージ装置の手段を指圧装置に組み合わせることは容易ではない旨の主張をしている。
しかしながら、指圧装置における指圧頭は、所定の接触面積を有するため、人体に点接触することはありえず、少なからず筋肉をも押圧するものであること、一方、エアマッサージ装置は、空気袋による押圧部位にツボが含まれること、また、両者はいずれも、押圧により揉み作用を与えるものであること、等を総合的に勘案すれば、指圧装置とエアマッサージ装置とが目的・機能において格別に異なるものであるとは認められない。
さらに、上記「相違点aについて」の項で指圧装置に係る文献として示した実公昭61-39470号公報には、「指圧マッサージを施すことのできるマッサージ装置」(公報第1頁左欄[産業上の利用分野]参照。)と、同じく特公昭44-13638号公報には、「古来より按摩およびマッサージとして・・・指圧療法が盛んに行われてきた」(公報第1頁左欄[発明の詳細な説明]の第2段落参照。)と、それぞれ記載されているように、指圧装置をマッサージ装置として捉えることは通例になっていることと認められる。
そうである以上、エアマッサージ装置の手段を指圧装置に組み合わせることに格別の阻害要因が存在するとは考えられず、被請求人の上記主張は採用できない。

7.むすび
以上のとおり、他の無効理由について判断するまでもなく、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、旧特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エアマッサージ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させて前記空気袋によってマッサージを行うエアマッサージ装置であって、上方および前後端が開放されるとともに人体の脚部を載せる一対の凹状受部を形成し、前記各凹状受部の相対向する側面には膨張により前記脚部を挟み付ける空気袋をそれぞれ配設したことを特徴とするエアマッサージ装置。
【請求項2】 空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させてマッサージを行うエアマッサージ装置であって、人体のマッサージ箇所が当接される凹状受部を形成し、前記凹状受部の相対向する側面には空気袋をそれぞれ配設し、前記空気袋を凹状受部の底側へ引き込み可能に設けたことを特徴とするエアーマッサージ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、空気袋の膨張・収縮によってマッサージを行なうエアマッサージ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のエアマッサージ装置としては、例えば、図8に示した様な座椅子式エアマッサージ装置が考えられている。
【0003】
この図8に示した座椅子式エアマッサージ装置は、座部200の後縁部に背凭れ部201を前後回動自在に装着して、座部200および背凭れ部201内に複数の空気袋203a〜203fを配設すると共に、エア給排気装置204と各空気袋203a〜203fをエアホース205a〜205fで接続した構成となっている。
【0004】
しかも、このエアマッサージ装置においては、エア給排装気置204により各空気袋203a〜203fを順番に膨張・収縮させる様になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このエアマッサージ装置では、空気袋203a〜203fは座部200及び背凭れ部201の左右まで延びている構成であるため、空気袋203a〜203fは使用者の背中等を単純に押す動作しかし得ず、身体を掴みもみするようなマッサージ効果が得られないものであった。
【0006】
この点を多少解消するものとしては例えば特開昭58-99958号公報に開示されたようなエアマッサージ装置が考えられている。この公報に開示されたエアマッサージ装置では、空気袋の長手方向中央に幅方向のくびれ部を設けて、空気袋の中央部が使用者の体重等により多少沈むようにしておくことにより、空気袋の膨出時に左右の部分が身体を挟むようにした構成となっている。
【0007】
しかしながら、この構成では、空気袋の中央部が使用者の体重等により多少沈む構成であるため、空気袋の膨出時に空気袋の左右の部分が身体を挟み込む力が小さく、人手によるような充分な揉み効果が得られないものであった。
【0008】
そこで、この発明は、人手によるような充分な揉み効果がえられるエアマッサージ装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させてマッサージを行うエアマッサージ装置であって、上方および前後端が開放されるとともに人体の脚部を載せる一対の凹状受部を形成し、前記各凹状受部の相対向する側面には空気袋をそれぞれ配設したことを特徴とする。請求項2の発明は、空気袋と、この空気袋に対してエアを給排気するエア給排気装置とからなり、前記空気袋を膨張・収縮させてマッサージを行うエアマッサージ装置であって、人体のマッサージ箇所が当接される凹状受部を形成し、前記凹状受部の相対向する側面には空気袋をそれぞれ配設し、前記空気袋を凹状受部の底側へ引き込み可能に設けたことを特徴とする。
【0010】
【作用】
請求項1の発明によれば、凹状受部の上方および前後端が開放されているので、人体の脚部をその凹状受部に簡単に載せることができる。そして、凹状受部の側面に設けた空気袋の膨張・収縮により脚部が両側から押圧されたり、開放されたりするので、人手によるような挟み揉み効果が得られる。しかも、凹状受部に脚部を載せるものであるからこの脚部をリラックスした状態にすることができ、このリラックスにより脚部が柔らかくなり、その脚部が十分にマッサージされる。このため、人手によるような挟み揉み効果が十分に得られることになる。請求項2の発明によれば、凹状受部の相対向する側面にそぞれ配置された空気袋を膨張・収縮させることにより、人体のマッサージ箇所が挟まれたり開放されたりするので、人手によるような充分な揉み効果を得ることができ、しかも、空気袋を凹状受部の底側へ引き込むことにより、人手によるような引き揉みマッサージを行うことができる。
【0011】
【実施例】
以下、この発明に係るエアマッサージ装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2において、エアマッサージ装置Aは、マッサージ椅子10と、マッサージ椅子10の前側に配置して使用者のふくらはぎ等の下肢をマッサージさせる下肢マッサージ器20と、エア給排気装置40を有する。
【0013】
マッサージ椅子10は、座部11と、座部11の両側部に設けられて座部11を支持している支持脚12,12と、支持脚12,12一体に設けられ且つ座部11より上方に突出するアームレスト部13,13と、座部11の後縁部に前後に起倒調整可能に装着された背もたれ部14とを有する。16は一方のアームレスト部13に設けられた操作パネルである。
【0014】
背もたれ部14の上部には、首をマッサージするための首マッサージ部50が設けられている。首マッサージ部50は、図3に示すように、背もたれ部14のフレーム板15に前面板51を取り付けて構成してある。
【0015】
前面板51には、中央部に首が当てられる湾曲した凹部52を形成した凹状受部56が形成されている。凹部52の両側には平面部53が連続形成されている。凹部52の中央にはさらに引込溝54が形成され、引込溝54の両側が2つの相対向した状態の側面52a,52bとなっている。
【0016】
凹部52内の両側面52a,52bには、一対の空気袋55a,55bが配置されている。空気袋55aと空気袋55bは連結部55cで連結されているとともに連通している。空気袋55a,55bは人体の首部に位置するツボの天柱(てんちゅう)にそれぞれ対応している。
【0017】
前面板51の内側には、矢印方向に移動可能な可動板60が配置されている。可動板60には、凹部52の形状と同形の当接部61が形成され、この当接部61にピン62が固定されている。このピン62は前面板51の引込溝54に設けた孔54aを貫通しており、ピン62の先端に空気袋55a,55bの連結部55cが固定されている。ピン62は引込溝54の孔54a内に沿って移動可能となっており、このピン62の移動により空気袋55a,55bが引込溝54へ引き込まれるようになっている。
【0018】
当接部61の両側にはスプリング受部62,62が連続形成されており、このスプリング受部62,62とフレーム板15との間にスプリング63,63が介在され、スプリング受部62,62と前面板51の平面部53,53との間に空気袋64,64が配設されている。
【0019】
可動板60はスプリング63,63によって前方(図3において下側)へ常時付勢され、図3に示すように可動板60の当接部61が前面板51の凹部52の裏面に当接している。空気袋64,64が膨張されると、可動板60はスプリング63,63の付勢力に抗して破線位置まで後退するようになっている。
【0020】
前面板51の平面部53,53には、身体にソフト感を与えるためにウレタン65,65が取り付けらており、このウレタン65,65および空気袋55a,55bは図示しないカバーで覆われている。
【0021】
下肢マッサージ器20は、マッサージ椅子1と同様にクッション性を備えていると共に、本体21に左右脚用の保持溝(凹状受部)22,22を設け、各保持溝22,22の対向する部分に各々一対の空気袋23a,23bを対向させて設けたものである。保持溝22,22は、図1および図4から明らかに、上方が開放されるとともに前後端が開放されている。【0022】空気袋23a,23bは人体の下肢部に位置するツボの承山(しょうざん)等に対応していて、対応する空気袋23a,23bの膨張によりこの承山近傍の下腿部を挟み付けることにより筋肉のマッサージ並びにツボへの刺激を行なう。
【0023】
図1において、40は空気袋55a,55b,64,23a,23bに空気を供給したり、空気袋55a,55b,64,23a,23b内の空気を排気したりするエア給排気装置である。このエア給排気装置40は座部11の後部下面に取り付けられている。
【0024】
エア給排気装置40は、図5に示すように、圧縮空気を生成するエアコンプレッサ41と、圧縮空気を浄化して貯えるフィルタータンク42と、フィルタタンク内の圧縮空気を所定の空気袋55a,55b,64,23a,23bに供給する分配切換器43と、操作パネル16の操作スイッチ(図示せず)の操作によってエアコンプレッサ41と分配切換器43を制御する制御回路44とを備えている。
【0025】
分配切換器43には、空気袋55a,55bに接続されたホース45と、空気袋64,64に接続されたホース46と、空気袋23a,23a,23b,23bに接続されたホース47とが接続されている。
【0026】
分配切換器43は、各ホース45〜47に圧縮空気を供給して各空気袋55a,55b,64,23a,23bを膨張させたり、各ホース45〜47を外気と連通させて各空気袋55a,55b,64,23a,23bの排気を行なわせたりするものである。これら圧縮空気の供給や外気との連通などは、例えば複数の電磁切換弁を使用して行う。
【0027】
次に、上記実施例の作用について説明する。
【0028】
先ず、首だけをマッサージする場合について説明する。
【0029】
操作パネル16のメインスイッチ(図示せず)を投入する。これにより、エアコンプレッサ41が駆動して圧縮空気がフィルタータンク42に貯えられていく。そして、操作パネル16の操作スイッチ(図示せず)の操作により首マッサージを選択する。この操作により、分配切換器43が制御されてホース45に圧縮空気が供給されて図6に示すように空気袋55a,55bが膨張されていく。
【0030】
この空気袋55a,55bは、凹部52の相対向する側面52a,52bが壁となることにより、首のツボの天柱が挟み込まれて掴み揉みする状態となる。
【0031】
そして、空気袋55a,55bが充分に膨張されると、ホース45への圧縮空気の供給が停止される。そして、ホース46に圧縮空気が供給されて空気袋64,64が膨張されていく。空気袋64,64の膨張により、可動板60がスプリングに抗して後方へ移動していく。可動板60の後方への移動により、図7に示すように、空気袋55a,55bは首を挟みながら引込溝54に引き込まれていく。
【0032】
この引き込みにより、空気袋55a,55bは首のツボの天柱を引き揉みマッサージしていくことになる。
【0033】
この後、ホース46への圧縮空気の供給が停止され、ホース45,46が外気と連通されて空気袋55a,55b,64,64の排気が行われる。この排気により空気袋55a,55b,64,64は収縮していく。空気袋64,64の収縮とともにスプリングの付勢力により可動板60は前方へ移動していき図3に示す元の状態となる。
【0034】これら動作が繰り返し行われることにより、首部が掴み揉みと引き揉みによりマッサージされていくこととなり、人手によるような充分な挟み揉み効果を得ることができる。
【0035】
次ぎに、ふくらはぎをマッサージする場合について説明する。
【0036】
操作パネル16の操作スイッチの操作によりふくらはぎマッサージを選択する。この操作により、分配切換器43が制御されてホース47へ圧縮空気が供給されていき、空気袋23a,23bが膨張されていく。空気袋23a,23bの膨張により、下肢のふくらはぎが両側部から挟み込まれるように掴み揉みされる状態となる。
【0037】
空気袋23a,23bが充分に膨張されると、ホース47への圧縮空気の供給が停止されるとともにホース47が外気と連通され、空気袋23a,23bの排気が行われて空気袋23a,23bが収縮していく。
【0038】
これら動作が繰り返し行われることにより、首部が掴み揉みと引き揉みによりマッサージされていくこととなり、人手によるような充分な挟み揉み効果を得ることができる。ところで、保持溝22,22の上方および前後端が開放されているので、ふくらはぎ部(脚部)をその保持溝22,22に簡単に載せることができる。しかも、保持溝22,22にふくらはぎ部を載せることによりこのふくらはぎ部をリラックスした状態にすることができ、このリラックスによりふくらはぎ部が柔らかくなり、そのふくらはぎ部が十分にマッサージされる。このため、人手によるような挟み揉み効果が十分に得られることになる。また、保持溝22,22を強固にすることにより、空気袋23a,23bが膨張した際にその保持溝22,22が拡開することがなく、このため、空気袋23a,23bの膨張によってふくらはぎを両側から効率良く押圧することができ、挟み揉み効果を効率良く得ることができる。しかも、保持溝22,22を強固にしても、上方および前後端が開放されていることにより、ふくらはぎ部をその保持溝22,22に簡単に載せることができる。
【0039】上記実施例では、首のマッサージとふくらはぎのマッサージは別々に行うようになっているが、同時に行えるようにしてもよい。また、座部11や背もたれ部14に空気袋を配置してもよいことは勿論である。また、下肢マッサージ器20を首マッサージ部50と同様な構成としてもよい。
【0040】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、凹状受部の上方および前後端が開放されているので、人体の脚部をその凹状受部に簡単に載せることができる。そして、凹状受部の側面に設けた空気袋の膨張・収縮により脚部が両側から押圧されたり、開放されたりするので、人手によるような挟み揉み効果が得られる。しかも、凹状受部に脚部を載せるものであるからリラックスすることができ、このリラックスにより脚部が柔らかくなり、その脚部が十分にマッサージされる。このため、人手によるような挟み揉み効果が十分に得られることになる。また、凹状受部を強固にしても、上方および前後端が開放されているので、脚部をその凹状受部に簡単に載せることができる。請求項2の発明によれば、凹状受部の相対向する側面にそぞれ配置された空気袋を膨張・収縮させることにより、人体のマッサージ箇所が挟まれた状態となるので、人手によるような充分な揉み効果を得ることができ、しかも、空気袋を凹状受部の底側へ引き込むことにより、人手によるような引き揉みマッサージを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明に係るエアマッサージ装置の実施例を示した正面図である。
【図2】
図1に示したマッサージ装置の側面図である。
【図3】
首マッサージ部の構成を示した断面図である。
【図4】
下肢マッサージ器20の構成を示した斜視図である。
【図5】
エアマッサージの構成を概略的に示したブロック図である。
【図6】
図3の首マッサージ部の作用を示した作用説明図である。
【図7】
図3の首マッサージ部の作用を示した作用説明図である。
【図8】
従来の座椅子式エアマッサージ装置の斜視図である。
【符号の説明】
A…椅子式エアマッサージ装置
40…エア給排気装置
52a,52b…側面
55a,55b…空気袋
56…凹状受部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2002-07-05 
結審通知日 2002-07-10 
審決日 2002-07-31 
出願番号 特願平5-272102
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 元人  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
平上 悦司
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3012127号(P3012127)
発明の名称 エアマッサージ装置  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 峰 隆司  
代理人 尾崎 英男  
代理人 尾崎 英男  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 峰 隆司  

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