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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L
管理番号 1105028
審判番号 訂正2004-39182  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-04 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-07-30 
確定日 2004-09-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3141033号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3141033号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3141033号発明(平成3年1月24日特許出願、平成12年12月15日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(15)のとおり訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、
「マトリックスの行及び列に配置され、照射の入射量に依存する電荷を発生する光感知又はX線感知センサ(S1,1 ,…S2000,2000 )からなり、該センサのそれぞれは電気スイッチ(3)を有し、薄膜技術を用いて電気スイッチ(3)として構成され、各センサ行に対してスイッチングライン(5,6,…7)が設けられそれを介してスイッチ(3)は、関連の活性化されたセンサ行の電荷が読出ライン(8,9,…,10,…)を介して同時に出力されるように活性化され、又並列に読出される信号を直列信号に変換する転送手段からなり、各読出ライン(8,9,…,10,…)に、結晶性半導体からなり、転送に先行し、増幅器(11,12,…,13,…)が設けられ、その増幅器は読出動作中、関連読出ライン(8,9,…,10,…)に接続されるセンサ(S1,1 ,…S2000,2000 )から読出された信号を増幅し、且つ、列当りに複数の読出ラインが設けられ、略同数のセンサが列の種々の読出ラインに接続され、且つ各読出ラインに増幅器が設けられることを特徴とする装置。」から
「マトリックスの行及び列に配置され、照射の入射量に依存する電荷を発生する光感知又はX線感知センサ(S1,1 ,…S2000,2000 )からなり、該センサのそれぞれは電気スイッチ(3)を有し、薄膜技術を用いて前記電気スイッチ(3)として構成され、各センサ行に対してスイッチングライン(5,6,…7)が設けられそれを介して前記電気スイッチ(3)は、関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷が読出ライン(8,9,…,10,…)を介して同時に出力されるように活性化され、又並列に読出される信号を直列信号に変換する転送手段からなり、各前記読出ライン(8,9,…,10,…)に、結晶性半導体からなり、前記転送手段に先行し、増幅器(11,12,…,13,…)が設けられ、その増幅器は読出動作中、その増幅器に関連する前記読出ライン(8,9,…,10,…)に接続されるセンサ(S1,1 ,…S2000,2000 )から読出された信号を増幅し、且つ、前記列当りに複数の前記読出ラインが設けられ、略同数のセンサが前記列の種々の前記読出ラインに接続され、且つ各前記読出ラインに増幅器が設けられ、
前記転送手段は幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からなり、それぞれが前記読出ライン(8,9,…,10,…)の夫々の部分に接続され、前記読出ライン(8,9,…,10,…)に同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からの直列信号に変換し、
これらの幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からのそれぞれの直列信号は並列に処理されることを特徴とする装置。」と訂正する(訂正箇所に下線を付した)。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を、
「各列に対し、2つの読出ラインが設けられ、各列の半数のセンサが一の読出ラインに接続され、列のセンサの他の半分が他の読出ラインに接続されることを特徴とする請求項1の装置。」から
「各前記列に対し、2つの前記読出ラインが設けられ、各前記列の半数のセンサが一の前記読出ラインに接続され、各前記列のセンサの他の半分が他の前記読出ラインに接続されることを特徴とする請求項1に記載の装置。」と訂正する(訂正箇所に下線を付した)。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3ないし8を削除する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項9を、
「増幅器(11,12,…,13,…)は電流積分器として接続されることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の装置。」から
「前記増幅器(11,12,…,13,…)は電流積分器として接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。」と訂正する(訂正箇所に下線を付した)。
(5)訂正事項e
特許請求の範囲の請求項10を、
「X線検査装置において請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の装置を使用する方法。」から
「X線検査装置において請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の装置を使用する方法。」と訂正する(訂正箇所に下線を付した)。
(6)訂正事項f
特許請求の範囲の請求項9及び10を、それぞれ請求項3及び4に繰り上げる。
(7)訂正事項g
明細書の段落【0006】に記載された「緩和さる」及び段落【0007】に記載された「最小化さる」を、それぞれ「緩和される」、「最小化される」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書の段落【0013】に記載された「1つの読出ライン」を「一の読出ライン」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書の段落【0016】及び段落【0043】に記載された「続く、」をいずれも「続き、」と訂正する。
(10)訂正事項j
明細書の段落【0030】に記載された「各センサ光センサ素子」を「各センサは、光センサ素子」と訂正する。
(11)訂正事項k
明細書の段落【0034】に記載された「そのトランジスタが活性化され」を「そのトランジスタを活性化するよう活性化され」と訂正する。
(12)訂正事項l
明細書の段落【0034】に記載された「トランジスタが導直」を「トランジスタが導通」と訂正する。
(13)訂正事項m
明細書の段落【0035】に記載された「第2行」を「第2列」と訂正する。
(14)訂正事項n
明細書の段落【0036】に記載された「読出ラインン内」を「読出ライン内」と訂正する。
(15)訂正事項o
明細書の段落【0044】に記載された「全体の信号の形成する」を「全体の信号を形成する」と訂正する。

2.当審の判断
2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
(1)訂正事項aについて
a.訂正事項aのうち、「薄膜技術を用いて電気スイッチ(3)」の「電気スイッチ」の前に「前記」を挿入する訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、請求項1第5行に記載された「電気スイッチ(3)」が、同第4行に記載された初出の「電気スイッチ(3)」と同一の構成要件であることを明確にするために、「前記電気スイッチ(3)」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、明りょうでない記載を釈明するものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
b.訂正事項aのうち、「それを介してスイッチ(3)」の「スイッチ(3)」を「前記電気スイッチ(3)」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
平成14年11月29日付け異議の決定で、「3. 特許異議申立て及びこれについての判断 3-3.特許法第36条各項の規定に対する違反についての判断 3-3-3.特許法第36条第5項第2号違反についての判断」(第13頁第26〜37行)において指摘されているように、請求項1に記載された「電気スイッチ」及び「スイッチ」については、両者で記載が異なっており両者の関係がわからず、明りょうでない記載であるから、「それを介してスイッチ(3)」の「スイッチ(3)」を、「電気」との技術的限定を付して「前記電気スイッチ(3)」と訂正することにより、両者が同一の構成要件であることを明確にし、明りょうでない記載を釈明するとともに特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
c.訂正事項aのうち、「関連の活性化されたセンサ行の電荷」を「関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
すなわち、「関連の活性化されたセンサ行の電荷」を、電荷に対して「全てのセンサの」との技術的限定を付して「関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷」と訂正することにより、関連の活性化されたあるセンサ行の全てのセンサの電荷が同時に出力されることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するとともに特許請求の範囲を減縮するものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、発明の詳細な説明の段落【0038】において、「この行の全てのセンサは同時に活性化され、センサ内に蓄えられた電荷は読出ラインを介して同時に出力される。」と記載されているように、関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷が読出ラインを介して同時に出力されるように活性化されることが開示されているので、新規事項の追加に該当しない。
d.訂正事項aのうち、「転送手段からなり、各読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、前記異議の決定第13頁最第38行〜第14頁第9行において指摘されているように、請求項1に記載された初出の「読出ライン」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「読出ライン」とは、これらの関係がわからず明りょうでない記載である。そこで「読出ライン」を「前記読出ライン」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成要件であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
e.訂正事項aのうち、「転送に先行し」を「前記転送手段に先行し」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、旧請求項1に記載の「転送に先行し」では意味不明りょうであり、発明の詳細な説明の段落【0005】には「転送手段に先行し、」と記載されていることからも明らかである。旧請求項1の「各読出ライン(8,9,...,10,...)に、結晶性半導体からなり、転送に先行し、増幅器(11,12,...,13,...)が設けられ」の記載は、読出ラインと増幅器との接続関係を説明しているのである。したがって、「転送に先行し」も接続関係を意味すべきものであって、具体的には読出ラインが転送手段に接続される前に増幅器が設けられていることを意味している。したがって、「転送手段に先行し、」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして請求項1の第12、13行の「転送手段」が、同第11行に記載された初出の「転送手段」と同一の構成であることを明確にするために、「前記」の語を付する訂正をすることにより、明りょうでない記載を釈明するものである。発明の詳細な説明及び図1からも同一の構成であることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
しかも、上記の「前記転送手段に先行し」とする訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
f.訂正事項aのうち、「関連読出ライン」を「その増幅器に関連する前記読出ライン」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
「関連読出ライン」を「その増幅器に関連する前記読出ライン」と訂正することにより、関連の対象を「その増幅器に関連する」と技術的限定を付して特許請求の範囲を減縮するとともに、関連の対象が増幅器であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するものであり、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
g.訂正事項aのうち、「列当りに複数の」の「列」を「前記列」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、請求項1に記載された初出の「列」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「列」とは、これらの関係がわからず、不明りょうな記載である。そこで「列」を「前記列」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
h.訂正事項aのうち、「複数の読出ラインが設けられ」の「読出ライン」を「前記読出ライン」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、前記異議の決定第13頁第38行〜第14頁第9行において指摘されているように、請求項1に記載された初出の「読出ライン」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「読出ライン」とは、これらの関係がわからず、不明りょうな記載である。そこで「読出ライン」を「前記読出ライン」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成要件であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明とするものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
i.訂正事項aのうち、「略同数のセンサが列」の「列」を「前記列」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、請求項1に記載された初出の「列」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「列」とは、これらの関係がわからず、不明りょうな記載である。そこで「列」を「前記列」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成であることを明確にして、明りょうでない記載の釈明するものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
j.訂正事項aのうち、「列の種々の読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、前記異議の決定第13頁第38行〜第14頁第9行において指摘されているように、請求項1に記載された初出の「読出ライン」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「読出ライン」とは、これらの関係がわからず、不明りょうな記載である。そこで「読出ライン」を「前記読出ライン」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成要件であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
k.訂正事項aのうち、「接続され、且つ各読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、前記異議の決定第13頁第38行〜14頁第9行において指摘されているように、請求項1に記載された初出の「読出ライン」と、第2番目以降の「前記」の語が付されていない「読出ライン」とは、これらの関係がわからず、不明りょうな記載である。そこで「読出ライン」を「前記読出ライン」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、両者が同一の構成要件であることを明確にして、明りょうでない記載を釈明するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
l.訂正事項aのうち、「増幅器が設けられることを特徴とする装置。」を、
「増幅器が設けられ、
前記転送手段は幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からなり、それぞれが前記読出ライン(8,9,…,10,…)の夫々の部分に接続され、前記読出ライン(8,9,…,10,…)に同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からの直列信号に変換し、
これらの幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からのそれぞれの直列信号は並列に処理されることを特徴とする装置。」とする訂正は、特許第3141033号の請求項1に記載された発明の装置において、技術的限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
また、「前記転送手段は幾つかのアナログマルチプレクサからなり、それぞれが前記読出ラインの夫々の部分に接続され、前記読出ラインに同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサからの直列信号に変換」されることは、発明の詳細な説明の段落【0014】に、「転送手段は読出ラインの各部分に接続され、読出ラインに同時に生じる読出信号を直列信号に変換する幾らかのアナログマルチプレクサを設けられる。」と記載され、段落【0015】に、「並列に読取られた信号を1つ又はそれ以上の直列信号に変換する為、読出ラインの各部分に接続されたアナログマルチプレクサが設けられる。次に、これらの読出ラインに生じる読取信号はアナログマルチプレクサにより直列信号に変換される。」と記載され、かつ段落【0018】に、「アナログマルチプレクサのレベルで並列に読取られた信号は幾つかの直列信号に変換される。」と記載されているから、願書に添付した明細書又は図面に開示されたものである。
「これらの幾つかのアナログマルチプレクサからのそれぞれの直列信号は並列に処理される」ことは、段落【0018】の「アナログマルチプレクサのレベルで並列に読取られた信号は幾つかの直列信号に変換される。これらの直列信号は更に並列に再び処理される。」という記載等から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に開示されたものである。
したがって、訂正事項aのうち、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bのうち、「各列に対し」の「列」を「前記列」にする訂正、「2つの読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」にする訂正、「各列の半数の」の「列」を「前記列」にする訂正、「一の読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」にする訂正、「列のセンサの他の」の「列」を「前記列」にする訂正、「半分が他の読出ライン」の「読出ライン」を「前記読出ライン」にする訂正、及び「請求項1の」を「請求項1に記載の」にする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項を削除する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(4)訂正事項dについて
a.訂正事項dのうち、「増幅器」を「前記増幅器」とする訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
すなわち、この請求項に記載された「増幅器」が、訂正後の請求項1に記載された初出の「増幅器」と同一の構成であることを明確にするために、「前記増幅器」と「前記」の語を付する訂正をすることにより、明りょうでない記載を釈明するものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
b.訂正事項dのうち、「請求項1乃至8のうちいずれか一項」を「請求項1又は2」とする訂正は、請求項3ないし8の削除に伴い、引用すべき請求項が請求項1又は2のみとなったことによる訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(5)訂正事項eについて
「請求項1乃至9」を「請求項1乃至3」とする訂正は、請求項3ないし8の削除に伴い、引用すべき請求項が請求項1乃至3のみとなったことによる訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(6)訂正事項fについて
訂正事項fは、請求項3ないし8の削除に伴い、請求項を繰り上げるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(7)訂正事項gについて
訂正事項gは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、「緩和さる」、「最小化さる」はいずれも脱落した「れ」を補うべきであり、「緩和される」、「最小化される」と受身の意味を表す正しい表現へと訂正するものである。
(8)訂正事項hについて
訂正事項hは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0013】では、一方の読出ライン及び他方の読出しラインを意味する「一の読出ライン」及び「他の読出ライン」という表現を用いており、「1つの読出ライン」は「一の読出ライン」の誤記であることは明白である。
(9)訂正事項iについて
訂正事項iは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の当該箇所において、「続く、」では文脈上前後との関係がおかしいので、「続く、」は「続き、」の誤記であることは明白である。
(10)訂正事項jについて
訂正事項jは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0030】の当該箇所において、「各センサ光センサ素子からなる。」では主語がなく文脈が明確でないので、「各センサは、光センサ素子からなる。」と訂正するもので、この訂正事項は、明りょうでない記載を釈明を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)訂正事項kについて
訂正事項kは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0034】の当該箇所における、「スイッチングライン5がそのトランジスタが活性化され」では、「活性化され」の主語が2つもあり意味が不明りょうであり、この記載に続き、「これによりトランジスタが導直になり、次にスイッチングライン6が第2行のトランジスタを活性化するように活性化され」と記載されていることから、「スイッチングライン5がそのトランジスタを活性化するよう活性化され」と訂正することにより、明りょうでない記載を釈明するとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(12)訂正事項lについて
訂正事項lは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0034】の当該箇所において、「トランジスタが導直」では技術的に意味が通らず、「トランジスタが導通」の誤記であることは明白である。
(13)訂正事項mについて
訂正事項mは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0035】は列に設けられる読出しラインについて説明している箇所であるので、「第2行」では技術的に意味が通らず、「第2列」の誤記であることは、文脈から明白である。
(14)訂正事項nについて
訂正事項nは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0036】の当該箇所において、「読出ラインン内」は「読出ライン内」の誤記であることは明白である。
(15)訂正事項oについて
訂正事項oは、誤記の訂正を目的とするものである。すなわち、明細書の段落【0044】の当該箇所において、「信号の形成する」では「形成する」の目的語が存在せずおかしいので、「信号を形成する」の誤記であることは明白である。

2-2.独立特許要件について
(1)特許法第36条各項に規定する要件についての判断
a.特許法第36条第4項に規定する要件について
前記異議の決定で、「3. 特許異議申立て及びこれについての判断 3-3.特許法第36条各項の規定に対する違反についての判断 3-3-1.特許法第36条第4項違反についての判断」において、次のように指摘した。
「・・・列当りに複数設けられる読出ライン自体をどのように配置・形成するかについては、段落【0013】に「各列に対する1つの読出ラインは基板の一側に経路を有し、他の読出ラインは基板の他方に経路を有する」と記載されているのみであって、しかも「基板の一側」及び「基板の他方」とは基板のどの部分であるかわからないので不明瞭な記載である。また、列当りに複数設けられる読出ラインについてその具体的な配置については図面には何ら記載されていない。そして、発明の詳細な説明のその他の箇所にも、列当りに複数設けられる読出ラインについての具体的な態様についてはなんら開示も示唆もされていない。
したがって、請求項1に係る発明及び請求項1を直接又は間接に引用している請求項2〜10に係る発明については、発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているものとは認められない。
よって、本件特許は特許法第36条第4項の規定を満たしていない出願についてなされたものである。」
しかしながら、幾つかの読出ラインが各列に設けられるとき、同じ列の各センサは各個別の読出しラインにそれぞれ接続される。読出ラインが3つあるときは各1/3のセンサそれぞれが3つの読出ラインの1つに接続され、2つの場合は半分のセンサそれぞれが2つの読出ラインの1つに個別に接続されるというように、略同数のセンサが個別の読出ラインに接続される。このことは、段落【0011】の「各列のセンサは列の種々の読出ラインに略等しい数の群で接続され」という記載、段落【0012】の「例えば、3つの読出ラインが設けられる時、センサ素子の1/3は毎回個々の読出ラインに接続される。」という記載、及び段落【0013】の「各列のセンサの半分は一の読出ラインに接続され、列のセンサの他の半分は他の読出ラインに接続される。」という記載から明らかである。
同じ列に複数の読出ラインがある場合、これら複数の読出ラインは、列方向に必然的に互いに平行の位置関係にならざるを得ない。してみると、例えば、同じ列に2つの読出ラインがある場合、同じ列の2つの読出ラインは、図1に記載のアナログマルチプレクサ14が存在する側へ2つとも延びるか、アナログマルチプレクサ14がある側とは反対の他方の側へ2つとも延びるか、又は一の読出ラインがアナログマルチプレクサ14の存在する側へ延び、他の読出ラインがアナログマルチプレクサ14がある側とは反対の他方の側へ延びることになることは、当業者であれば容易に想到できることである。最初の2例のように、転送手段が基板の一方の側にのみある場合は、複数の読出ラインが互いに隣り合いながら一の転送手段へ延びる。段落【0013】の「2つの読出ラインを基板上の他方に隣るものに配置する」という記載は、正にこのことを意味している。また、転送手段が基板の両側にある場合は、一の読出ラインは一の転送手段がある基板の一側に延び、他の読出ラインは他の転送手段がある基板の他方へ延びる。段落【0013】の「この構成では、各列に対する一の読出ラインは基板の一側に経路を有し、他の読出ラインは基板の他方に経路を有する。」との記載は、正にこのことを意味している。
したがって、訂正後の請求項1に記載の「前記列当りに複数の前記読出ラインが設けられ、略同数のセンサが前記列の種々の前記読出ラインに接続され」ということは、当業者であれば容易に実施できる内容であり、列当りに複数設けられる読出ライン自体をどのように配置・形成するかについて、発明の詳細な説明の記載及び図面により把握できるものである。
このように、列当りに複数設けられる読出ラインをどのように配置するかという事項は、発明の詳細な説明に当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているものと認められるので、訂正後の請求項1ないし4に係る発明についての発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしているといえる。

b.特許法第36条第5項第1号及び第6項に規定する要件について
前記異議の決定で、「3. 特許異議申立て及びこれについての判断 3-3.特許法第36条各項の規定に対する違反についての判断 3-3-2.特許法第36条第5項第1号違反についての判断」において、特許第3141033号の請求項7に係る発明は発明の詳細な説明には記載されていないので、特許第3141033号発明についての特許は特許法第36条第5項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていない出願についてなされたものである旨指摘したが、請求項7は削除されたので、特許異議申立てに係る特許法第36条第5項第1号及び第6項に規定する要件についての不備は解消している。

c.特許法第36条第5項第2号に規定する要件について
前記異議の決定で、「3. 特許異議申立て及びこれについての判断 3-3.特許法第36条各項の規定に対する違反についての判断 3-3-3.特許法第36条第5項第2号違反についての判断」において、次のように指摘した。
「(1)本件請求項1に記載された「電気スイッチ」及び「スイッチ」については、両者で記載が異なっており両者の関係がわからないので、不明瞭な記載である。
なお、「スイッチ」は「電気スイッチ」の上位概念を示すものと認められ、また、同一の構成要件であることを表すための「前記」や「該」が記載されていないので、これらは異なる構成を表しているものと認められるが、一方で、請求項1において「電気スイッチ(3)」及び「スイッチ(3)」と記載されており、上記「(3)」は図面に付された符号を表すものであるから、いずれも発明の詳細な説明及び図1に記載された「電界効果トランジスタ3」に対応するものであることは示されているので、同一の構成要件を示すものとも認められる。したがって、本件特許明細書の請求項1の記載は不明瞭である。
(2)本件請求項1の6ヶ所に記載された「読出ライン」については、第1番目、第2番目及び第3番目に記載された「読出ライン」は、図1に付された符号8,9,10に対応する読出ラインであるものと認められるが、それ以外の「読出ライン」には対応する図面の符号がつけられておらず、第4番目に記載された「読出ライン」は列当たり複数設けられたものであり、第5番目に記載された「読出ライン」は列の種々の読出ラインであり、第6番目に記載された「読出ライン」は各読出ラインであるが、これらには同一の構成であることを表すための「前記」や「該」が記載されていないので、これら6ヶ所に記載された「読出ライン」の関係がわからず、不明瞭な記載である。
(3)本件請求項1に記載された「転送に先行し、増幅器(11,12,…,13,…)が設けられ」について、該「転送に先行し」が装置の発明としていかなる構成を表しているのかわからず不明瞭な記載である。
したがって、請求項1はその記載が上記(1)〜(3)の点について不明瞭であり、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものと認められないので、本件特許は特許法第36条第5項第2号及び第6項の規定を満たしていない出願についてなされたものである。」
しかしながら、上記(1)の点は、訂正事項aについての(a)、(b)により明りょうな記載に訂正され、上記(2)の点は、訂正事項aについての(d)、(f)、(h)、(j)、(k)により明りょうな記載に訂正され、上記(3)の点は、訂正事項aについての(e)により明りょうな記載に訂正されたので、本件特許は特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしている出願についてなされたものである。

(2)特許法第29条第2項の規定についての判断
a.前記異議の決定で引用された各刊行物の記載事項
(a)刊行物1(特開昭62-202684号公報、特許異議申立人キャノン株式会社提出の甲第1号証、同金子和弘提出の甲第1号証)
刊行物1は、「ソリッドステート感光デバイス及び該デバイスの読み出し方法」(発明の名称)に関するものであって、第1図、第2図、第4図、第5図及び第7図乃至第9図とともに以下の点が記載されている。
「本発明は、可視光線及びX線又は任意の他の型の輻射を検出するために使用され得る感光デバイスに係る。X線の検出には、X線を可視光線に変換してフォトダイオードにより検出するように・・・挿入され得る。また、X線の直接検出を確保するに十分な厚さで作成することの可能な任意の半導体を使用して検出器を作成することも可能である。」(第4頁右下欄第11行〜第5頁左上欄第1行)
「第1図は、本発明の感光エレメントの一具体例を示す概略図である。
このデバイスは、水平方向接続線又は行系列と垂直方向接続線又は列系列とから成る感光マトリックス1から構成されている。」(第6頁右上欄第10〜14行)
「第1図のデバイスは更に、マトリックスの行に連結された出力を有するアドレシング回路2と、マトリックスの列に連結された入力を有する読み出し及び多重化回路3とを備えている。
第1図は、マトリックスの各列が演算増幅器4の負の入力に連結された読み出し及び多重化回路の具体例を示しており、・・・これらの増幅器は積分器として配置されており、・・・増幅器の出力は、例えばスイッチ系列又はCCD型のマルチプレクサ5に連結されており、マルチプレクサの出力はデバイスの出力信号Sを発生する。」(第6頁右下欄第5行〜第7頁左上欄第2行)

(b)刊行物2(特開昭58-105673号公報、特許異議申立人キャノン株式会社提出の甲第3号証、同金子和弘提出の甲第2号証)
刊行物2には、影像の記録および読取り装置において、各列用導線の各個はその1端が増幅器に接続されており、該増幅器の雑音は列中のセル数の増加に比例して増大する旨、また1列中の各セルの増幅器へ送出される信号強度は、1列中のセル数の増加に比例して低下する旨記載されている(第2頁右上欄第7〜9行、第3頁左上欄第1〜13行参照)。
また、第1図、第4図及びその説明(第3頁右下欄第8〜13行、第5頁右上欄第7行〜左下欄第15行)を参照すれば、同一の列に対し、2つの列導線が設けられ、各列の半数のセルが上側の列導線に接続され、各列の他の半分が、下側の列導線に接続されていることが読み取れる。
さらに、第5図及びその説明(第5頁左下欄第16行〜右下欄第8行)を参照すれば、単一のマトリックス50が対称軸51,52で分割されて複数の単位マトリックスが形成されており、上記単一のマトリックス50の同一列上の列導線として軸52の一方の側にある列導線と軸52の他方の側にある列導線の2つの列導線が設けられており、該2つの列導線の一方に少なくとも多重変換回路で構成される読取り回路L’を設け、該2つの列導線の他方に少なくとも多重変換回路で構成される読取り回路とL”を設けることが読み取れる。
さらに、第6図及びその説明(第5頁右下欄第9行〜第6頁右下欄第19行)を参照すれば、第6図は単位セルグループ化の形式を、相異なる単位セルがジグザグ状に配置されたものとしており、先ず最初にマトリックスの半分である奇数番号の行を読取り次にマトリックスの残り半分である偶数番号の行を読取ることができ、この奇数番号の行と偶数番号の行を交互に読取る処理を、第1,2,3図に示した実施例に関して説明したように順次的行読取り処理に置き替えてもよいことが記載されている。

(c)刊行物3(特開昭64-61054号公報、特許異議申立人金子和弘提出の甲第3号証)
刊行物3は、「密着型イメージセンサ」(発明の名称)に関するものであって、第2図、第3図とともに以下の点が記載されている。
「第2図,第3図は従来のサンドイッチ構造の密着型イメージセンサデバイス基板の模式的断面図および模式的平面図である。・・・さらに、これら光電変換素子で発生した光信号電荷を走査,駆動,検出するための駆動用集積回路11が絶縁性基板1上にダイボンディングされ・・・
この様な駆動用集積回路11としては、シフトレジスタ走査回路とスイッチングトランジスタよりなるいわゆるMOSイメージセンサと同等のものや、本発明の発明者等がすでに提案したCCD駆動回路等がある(特願昭59-143020号)。」(第2頁左上欄第2行〜右上欄第3行)

(d)刊行物4(電子情報通信学会技術研究報告,Vol. 88, No.446, (1989-2-21),ED88-157,p.41〜48、特許異議申立人キャノン株式会社提出の甲第4号証)
刊行物4は、「a-Si TFT駆動イメージセンサの高速・多階調化」に関するものであって、図1とともに以下の点が記載されている。
「2. TFTセンサのマトリックス駆動方式
リニアイメージセンサでは、直線上に配置された複数画素の光信号を基本的に一本の出力線に時系列出力する。・・・実効的に高速化するためにTFTによるスイッチングを数画素分同時に行う並列処理により、データレートを5MHz以上にすることが可能となる。
・・・TFTを電荷転送の選択スイッチとして用いて順次共通信号線に導かれアナログマルチプレクサの入力に接続される。TFTスイッチによるブロック多重数は40であり、64本の共通信号線は並列に信号処理される。」(p.41右下欄第1〜16行)

b.対比・判断
(a)請求項1に係る発明について
訂正後における請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「マトリックスの行及び列に配置され、照射の入射量に依存する電荷を発生する光感知又はX線感知センサ(S1,1 ,…S2000,2000 )からなり、該センサのそれぞれは電気スイッチ(3)を有し、薄膜技術を用いて前記電気スイッチ(3)として構成され、各センサ行に対してスイッチングライン(5,6,…7)が設けられそれを介して前記電気スイッチ(3)は、関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷が読出ライン(8,9,…,10,…)を介して同時に出力されるように活性化され、又並列に読出される信号を直列信号に変換する転送手段からなり、各前記読出ライン(8,9,…,10,…)に、結晶性半導体からなり、前記転送手段に先行し、増幅器(11,12,…,13,…)が設けられ、その増幅器は読出動作中、その増幅器に関連する前記読出ライン(8,9,…,10,…)に接続されるセンサ(S1,1 ,…S2000,2000 )から読出された信号を増幅し、且つ、前記列当りに複数の前記読出ラインが設けられ、略同数のセンサが前記列の種々の前記読出ラインに接続され、且つ各前記読出ラインに増幅器が設けられ、
前記転送手段は幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からなり、それぞれが前記読出ライン(8,9,…,10,…)の夫々の部分に接続され、前記読出ライン(8,9,…,10,…)に同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からの直列信号に変換し、
これらの幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からのそれぞれの直列信号は並列に処理されることを特徴とする装置。」

刊行物1には、本件請求項1に係る発明の構成要件である「幾つかのアナログマルチプレクサ」自体が開示も示唆もされていない。
刊行物2の第1図、第4図及びその説明を参照すれば、セルのマトリックス上半分の行に接続された読出ラインからの信号を直列信号にするためのマルチプレクサL”と、マトリックス下半分の行に接続された読出ラインからの信号を直列信号にするためのマルチプレクサL’とが開示されているだけである。1つの行に対応して幾つかのマルチプレクサがあるわけではない。刊行物2の第6図に示された装置では、奇数番号の行を読取り次に偶数番号の行を読取る処理、又は行を順番に読取る順次的行読取り処理が行われている(刊行物2第6頁右下欄第7〜10行参照)。したがって、2行同時に読出されるわけでもない。これらのことから、刊行物2は、本件請求項1に係る発明の構成要件である「前記読出ラインに同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサからの直列信号に変換」することを開示も示唆もしていないことが明らかである。刊行物2に記載の装置では、非常に多くのセンサからなるマトリクスの行からの信号を並列処理することはできないし、信号を並列処理することの開示も示唆もない。
刊行物3には複数の駆動用集積回路が開示され、これら駆動用集積回路がシフトレジスタ走査回路及びスイッチングトランジスタよりなることが記載されている。しかしながら、刊行物3の第3図及び刊行物3で引用されている特願昭59-143020号の記載からも明らかなように、各駆動用集積回路の出力は、入出力端子10に接続されて、一本になっている。したがって、複数の駆動用集積回路からなる「転送手段」の構成が、幾つかの直列信号を並列処理できるようになっているわけではない。刊行物3は、本件請求項1に係る発明の構成要件である「並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサからの直列信号に変換し、これらの幾つかのアナログマルチプレクサからのそれぞれの直列信号は並列に処理される」ことを開示も示唆もしていない。
刊行物4に記載のTFTセンサのマトリックス駆動方式では、アナログマルチプレクサに入力する前の信号がTFTにより数画素分同時に並列処理されるが、アナログマルチプレクサは1つであり、複数画素の信号を一本の出力線に時系列出力することが開示されているだけであって、本件請求項1に係る発明の構成要件である「前記読出ラインに同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサからの直列信号に変換」することを開示も示唆もしていない。刊行物4に記載の装置では、非常に多くのセンサからなるマトリクスの行からの信号を並列処理することはできない。
したがって、これら刊行物1ないし4のいずれにも、本件請求項1に係る発明の構成要件である、「これらの幾つかのアナログマルチプレクサからのそれぞれの直列信号は並列に処理される」点は開示も示唆もされておらず、かかる点により本件請求項1に係る発明は、大きいデータ量が扱われるという明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、訂正後における本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記刊行物1ないし4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(b)請求項2ないし4に係る発明について
本件請求項2ないし4に係る発明は、本件請求項1に係る発明を更に技術的に限定するものであるから、上記本件請求項1に係る発明についての判断と同様な理由により、刊行物1ないし4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)独立特許要件についての結論
以上のとおりであるから、訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではない。

3.むすび
したがって、本件訂正審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)の附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光感知又はX線感知センサよりなる装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 マトリックスの行及び列に配置され、照射の入射量に依存する電荷を発生する光感知又はX線感知センサ(S1,1,…S2000,2000)からなり、該センサのそれぞれは電気スイッチ(3)を有し、薄膜技術を用いて前記電気スイッチ(3)として構成され、各センサ行に対してスイッチングライン(5,6,…7)が設けられそれを介して前記電気スイッチ(3)は、関連の活性化されたセンサ行の全てのセンサの電荷が読出ライン(8,9,…,10,…)を介して同時に出力されるように活性化され、又並列に読出される信号を直列信号に変換する転送手段からなり、各前記読出ライン(8,9,…,10,…)に、結晶性半導体からなり、前記転送手段に先行し、増幅器(11,12,…,13,…)が設けられ、その増幅器は読出動作中、その増幅器に関連する前記読出ライン(8,9,…,10,…)に接続されるセンサ(S1,1,…S2000,2000)から読出された信号を増幅し、且つ、前記列当りに複数の前記読出ラインが設けられ、略同数のセンサが前記列の種々の前記読出ラインに接続され、且つ各前記読出ラインに増幅器が設けられ、
前記転送手段は幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からなり、それぞれが前記読出ライン(8,9,…,10,…)の夫々の部分に接続され、前記読出ライン(8,9,…,10,…)に同時に生じる並列に読出された信号を前記幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からの直列信号に変換し、
これらの幾つかのアナログマルチプレクサ(14,17,18)からのそれぞれの直列信号は並列に処理されることを特徴とする装置。
【請求項2】 各前記列に対し、2つの前記読出ラインが設けられ、各前記列の半数のセンサが一の前記読出ラインに接続され、各前記列のセンサの他の半分が他の前記読出ラインに接続されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】 前記増幅器(11,12,…,13,…)は電流積分器として接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】 X線検査装置において請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の装置を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マトリックスの行及び列に配置され、照射の入射量に依存する電荷を発生する光感知又はX線感知センサからなり、該センサのそれぞれは電気スイッチを有し、薄膜技術を用いて電気スイッチとして構成され、各センサ行に対してスイッチングラインが設けられそれを介してスイッチは、関連の活性化されたセンサ行の電荷が読取ラインを介して同時に出力されるように活性化され、又並列に読出される信号を直列信号に変換する転送手段からなる装置に係る。
【0002】
【従来の技術】この種の装置は欧州特許明細書第28960号で公知である。この公知の装置では、一行のセンサの電荷は同時に読込まれる。この為に、センサの電気スイッチを活性化するセンサ用の回路が設けられ、これにより電荷は各列に設けられる読出ラインを介して出力されうる。従って、一行の電荷は同時に、即ち並列に読出される。従って並列に読出された電荷は並列信号を直列信号に変換する転送手段に印加される。この為に、引用欧州特許明細書により、共通マルチプレクサ又は共通シフトレジスタは全ての読出ラインに設けられる。
【0003】とりわけ、X線適用に対し、単に非常に小さいX線がセンサに入射される。従って、照射の入射の量によってセンサ素子に発生した電気電荷は非常に小さい。読出されるべきこれらの非常に小さい電荷により、問題は屡々生じ、即ち比較的強い雑音が読出された信号に重畳される。この問題点をなくす為、引用欧州特許明細書は各センサ用に各増幅器を提案する。この増幅器はセンサに発生した電荷を増幅し、該電荷は次に電気スイッチ及び関連した読出ラインを介して増幅した形で読出可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は前記の種類の改良された装置を提供することである。
【0005】本目的は、各読出ラインに、結晶性半導体からなり、転送手段に先行し、増幅器が設けられその増幅器が、読出動作中、関連読出ラインに接続されるセンサから読出された信号を増幅する本発明により達成される。
【0006】前記の種類のセンサマトリックスでは、出来るだけ同時に緩和されるべきいくつかの問題が発生する。
【0007】特に、X線適用に対し、放射線照射量が最小化されるべき場合、問題がセンサ感度として発生する。これらの問題は、個々のセンサが出来るだけ大きい照射感度の為出来るだけ大きい感知面領域を有さなければならない理由により起こる。更に、各センサに対し、光センサ素子のみならず、電荷が読出される時活性化される電気スイッチと同様に電荷を蓄える容量も設けられるべきである。個々の増幅器が技術の状態によって各センサ用に設けられる場合、個々のセンサ素子は複雑になり、センサの照射感知面領域は更に減少する。他の可能性、即ち薄膜基板で重なって増幅器及び実際のセンサを配置することは、その場合には、基板上の並列配置の場合のように、高不合格パーセントが製造中に基板の不合格に予期され、基板の複雑性が増幅器の存在により大きく増すので問題である。例えば、2000×2000の素子からなるセンサマトリックスが形成される時、かかる製造中許容可能な不合格パーセントは、追加増幅器が各センサ素子に設けられる場合、製造技術の状態により達成することは不可能となる。
【0008】欧州特許明細書第0028960号により、増幅器は薄膜基板上にセンサと共に形成される。従って、増幅器も又薄膜技術により構成される。しかし、増幅器は雑音がなく、上記の理由により、出来るだけ敏感であるべきなので、これらの必要性は、薄膜増幅器がこの点で問題であるので、上記装置では満足に満たされない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記雑音及び製造問題が欧州特許明細書第0028960号で開示されたような装置により克服できないという事実の認識に基づいている。従って、マトリックスの各読出ラインに単に1つの増幅器を提供することが提案され、その増幅器は関連列の全てのセンサから読出された信号を増幅するのに役立つ。従って、各センサ用の増幅器を設ける代わりに、共通の増幅器が各センサ列に設けられる。この増幅器は、薄膜技術によりもはや製造される必要はないが、例えばシリコンが半導体材として用いられうる従来の半導体結晶技術を用いて望ましくは製造されうる。雑音行動及び感度に関しては、かかる増幅器は実質的に薄膜増幅器以上の良い特性を示す。従来のシリコン技術でのかかる増幅器が用いられる時、本発明装置は、センサマトリックス又は個々のセンサが、製造技術の見方から、最新の技術による構成よりも実現するのが実質的に容易である簡単な構成を有するという、さらに本質的な利点を提供する。
【0010】これらの利点は、薄膜技術により製造された実際のセンサマトリックス及び従来のシリコン技術により製造された増幅器の組み合わせにより得られ、その一つだけが各読出ラインに設けられる。
【0011】本発明の一実施例では、各列のセンサは列の種々の読出ラインに略等しい数の群で接続され、増幅器は各読出ラインに設けられる。
【0012】既述した如く、最適評価の為、読出された信号は出来るだけ全装置の可能な雑音レベル以上にあるべきである。しかし、読出ラインでの雑音は、特にライン自体に、及びスイッチが読出ラインのように容量を有し、雑音に負の効果を有するラインに接続された個々のセンサの電気スイッチによる。雑音を削減する為、幾つかの読出ラインが各列に設けられる。例えば、3つの読出ラインが設けられる時、センサ素子の1/3は毎回個々の読出ラインに接続される。従って読出ライン毎の容量は又、一列ごとの唯1つの読出ラインのみでの解決策に含まれた略1/3である。しかし、幾つかの読出ラインが各列に設けられる時、増幅器は各読出ラインに設けられなければならない。
【0013】本発明による非常に魅力的実施例では、2つの読出ラインが各列に設けられ、各列のセンサの半分は一の読出ラインに接続され、列のセンサの他の半分は他の読出ラインに接続される。この構成では、各列に対する一の読出ラインは基板の一側に経路を有し、他の読出ラインは基板の他方に経路を有する。この場合には、2つの読出ラインを基板上の他方に隣るものに配置する必要はなく、読出ラインの長さは最適化される。
【0014】本発明の更なる実施例では転送手段は読出ラインの各部分に接続され、読出ラインに同時に生じる読出信号を直列信号に変換する幾らかのアナログマルチプレクサを設けられる。
【0015】並列に読取られた信号を1つ又はそれ以上の直列信号に変換する為、読出ラインの各部分に接続されたアナログマルチプレクサが設けられる。次に、これらの読出ラインに生じる読取信号はアナログマルチプレクサにより直列信号に変換される。
【0016】本発明による更なる実施例では、各アナログマルチプレクサの後にA/D変換器が続き、各A/D変換器の後にマイクロプロセッサ又は信号処理器が続き、隣るセンサからの信号を処理する2つのマイクロプロセッサは共通メモリに接続される。
【0017】種々のアナログマルチプレクサの後にアナログマルチプレクサの直列出力信号をディジタル信号に変換する各A/D変換器が続く。更にA/D変換器のディジタル出力信号は更にマイクロプロセッサにより処理される。隣るセンサからの信号を処理する2つのマイクロプロセッサは共通メモリをアクセスする。
【0018】アナログマルチプレクサのレベルで並列に読取られた信号は幾つかの直列信号に変換される。これらの直列信号は更に並列に再び処理される。センサマトリックスが例えば2000×2000の別々のセンサからなる時、アナログマルチプレクサはマトリックスの256列を処理することができる。次に、各アナログマルチプレクサは256の並列信号を1つの直列信号に変換する。その場合には、8つのアナログマルチプレクサが必要とされ、A/D変換器及びマルチプレクサのレベルで、8つの直列信号が並列に処理される。並列信号が個々の信号群内の準直列信号に変換され、かく発生された直列信号が更に並列に再び処理されるかかるアプローチはこれに係る大きいデータ量が単にこの方法で扱われうるので特に魅力的である。例えば完全なイメージに対し、即ち、マトリックスの全てのセンサに対して、25Hzの信号読取速度の場合において、時間の極端に短い期間だけが、単一マイクロプロセッサによる信号の直列処理が可能でない間、信号を処理するのに役立つ。従って、信号は本発明によるサブ群で結合され、その後、それらは更に並列に処理される。
【0019】この並列処理に続いて、マトリックスの全てのセンサからの信号を含む共通の全体のビデオ信号への変換が最終段階で行なわれる。この為に、本発明の更なる実施例では、マイクロプロセッサにより処理されたセンサ信号はマイクロプロセッサに続くディジタルマルチプレクサで全体のビデオ信号を形成するよう結合される。
【0020】本発明の更なる実施例では、個別センサにより供給され、続いて増幅される信号の補正はマイクロプロセッサ及び隣るセンサに共通であるメモリのそのアクセシングを介して実行され、これにより、センサの感度の差、個々のセンサの故障又は増幅器の利得係数間の差の補償が行なわれる。
【0021】マトリックスの隣るセンサからの信号を処理する2つのマイクロプロセッサが共通メモリをアクセスしうるので、各マイクロプロセッサがその関連したセンサにより供給された信号を隣るセンサのものと比較することは可能である。関連した増幅器の異なる利得係数による完全センサ群の偏り感度と同様な個々のセンサの偏り感度はマイクロプロセッサにより決定され、補正されうる。有用な信号を供給するセンサの破壊又はセンサの故障の場合には、マイクロプロセッサは例えば隣るセンサの信号の平均値から生じる計算された信号でその信号を置き換えうる。
【0022】本発明の更なる実施例では、対応する制御信号に応答して、マイクロプロセッサは、1つの信号を形成する列方向及び/又は行方向に互いに隣る幾らかのセンサの信号を毎回結合する。
【0023】センサに入射する照射が特に低い強度を有する場合、本発明による装置の改善された雑音にもかかわらず、雑音問題は依然として生じる。その理由は、個々のセンサ素子の信号が雑音レベルに非常に近いからである。その場合に、隣るセンサの信号は結合されえ、即ちマイクロプロセッサにより加算されうる。次に改善された信号対雑音比を有する強い信号が得られる。所定の適用に対して、かかる改善された雑音は隣るセンサの信号の組み合わせによるマトリックス解像度の減少より更に重要である。
【0024】特にX線検査装置において、本発明による装置は特に低いX線照射量がX線検査に望ましいので有利に用いられ、最適利益は本発明による装置の好ましい雑音の振舞から生じる。
【0025】
【実施例】本発明による実施例を以下図面を参照して詳細に説明する。
【0026】図1は単に部分的に示されるマトリックスからなる装置の一部を示す。マトリックスはマトリックスの行及び列に配置されるセンサからなる。そのようなマトリックスは、図にはその一部のみを示すが、例えば2000×2000センサからなる。
【0027】図に示されるマトリックスの第1行では、センサS1,1及びS1,2が示される。同じ行ではセンサS1,2の後に図示されないセンサが続く。しかし、図は第1行の128番目のセンサであるセンサS1,128を示す。この行では、図示されないが、略2,000までの更なるセンサ素子が設けられる。
【0028】同じことはマトリックスの第2行に当てはまり、図はこの第2行のセンサS2,1,S2,2及びS2,128を示す。しかし、この第2行も全部で略2,000のセンサ素子からなる。
【0029】センサのこれらの最初の2行の後に図示されない更なる行がくる。図は単に最後の行、即ち2,000行目を示す。この行の第1センサはS2000,1として示され、第2センサは参照番号S2000,2を有する。行1及び2でのように、図はセンサS2000,128を除いては更なるセンサは示さない。各行の第1センサは共に第1の列を構成し、各行の第2センサは第2の列を構成する等である。
【0030】図1にその幾つかを示す、各センサは、光センサ素子からなる。適切な半導体が用いられる時、この光センサ素子自体既に、X線に感知する。しかし、X線がホトダイオード上に設けられた燐層に入射する場合、光を受ける光感知ホトダイオードでよい。図において、ホトセンサ素子はホトダイオード1として示される。更に、各センサは記憶容量2を有する。ホトダイオード1のアノード及び記憶容量2の電極は共に負の直流バイアスを設ける直流電圧源4に接続される。ホトダイオード1のカソード及び記憶容量2の別な電極は又スイッチ電界効果トランジスタ3のソース端子に接続される。
【0031】マトリックスの全てのセンサは各ホトダイオード1と、記憶容量2と、電界効果トランジスタ3とからなり、薄膜技術により全て製造される。
【0032】照射がホトダイオード1上に入射する時、ホトダイオードは導通により、直流電圧源4により導入されるバイアスにより、電荷は記憶容量2に転送され、電荷の量はホトダイオード1に入射され照射の強度に依存する。所定時間の後に容量2に蓄えられた電荷は照射強度を表わす。この電荷はスイッチングトランジスタ3を介して各センサ素子に対し個別に読出されうる。
【0033】この為に、センサマトリックスの各行に対し、スイッチングラインが設けられる。図1の表示では、スイッチングライン5が第1のラインに対し設けられ、スイッチングライン6は第2のラインに対し設けられ、スイッチングライン7は行2000に対し設けられる。これらのスイッチングラインはセンサ内の電界効果トランジスタ3のゲート端子に接続される。従って、スイッチングラインは関連した行のトランジスタ3を活性化する。例えば、スイッチングライン5はマトリックスの第1の行の全てのトランジスタ3を活性化する。
【0034】スイッチングライン5,6,7及び図示しない更なるスイッチングラインはディジタルデコーダ30により制御されうる。ディジタルデコーダ30は、センサ内に蓄えられた電荷に対する読出動作中センサマトリックスの行を順次活性化するのに役立つ。これは、例えば初めに第1行に対するスイッチングライン5がそのトランジスタを活性化するよう活性化され、これによりトランジスタが導通になり、次にスイッチングライン6が第2行のトランジスタを活性化するよう活性化され、行2000になるまで続けられる。ディジタルデコーダ30自体は制御ライン31を介して制御される。これは例えば、図示されてない、読出動作に対する全ての制御を提供するマイクロプロセッサにより実現されうる。
【0035】図1に部分的に示されるマトリックスの各列に対して、各読出ラインが設けられる。例えば、単にセンサS1,1,S2,1及びS2000,1のみを図に示す第1列は読出ライン8からなる。同様に、第2列は読出ライン9からなり、図に示される列128は読出ライン10からなる。図示していない列は又各読出ラインからなる。読出ラインは共に関連した列の電界効果トランジスタ3のドレーン端子に接続される。例えば第1列の読出ライン8はこの列に配置される全てのセンサの電界効果トランジスタ3のドレーン端子に接続される。
【0036】各読出ラインにおいて、読出ライン8,9及び10のみが図示されているが、増幅器が設けられる。図1中、増幅器11は読出ライン8内に設けられ、増幅器12は読出ライン9内に設けられ、一方増幅器13は読出ライン10内に設けられる。増幅器は、それが個別のセンサから生じる電荷を増幅するよう読出ライン内に夫々配置される。
【0037】増幅器の後にその入力が増幅器の出力に接続されるアナログマルチプレクサ14が続く。増幅器は、電流積分器として接続され、従来のシリコン結晶技術を用いて製造される。
【0038】例えば、第1行が読出される時、この行にあるセンサの電界効果トランジスタ3はスイッチングライン5を介して活性化される。次に、この行にあるセンサの容量2に蓄えられた電荷は関連するセンサの電界効果トランジスタ3及び読出ラインを介して出力される。従って、この場合には、この行の全てのセンサは同時に活性化され、センサ内に蓄えられた電荷は読出ラインを介して同時に出力される。図示されたセンサに対し、これは電荷が読出ライン8,9及び10とこれに続く増幅器11,12及び13を介してアナログマルチプレクサ14に到ることを意味する。アナログマルチプレクサ14では同時に並列に着く電荷はマルチプレクサの直列出力15に現われる直列信号に変換される。マルチプレクサ14は、制御されうる制御ライン16を介して、例えばディジタルディコーダのように図示していない外部プロセッサにより制御されうる。
【0039】図は全部で2000×2000センサからなるマトリックスの比較的にわずかな部分だけを示すので、アナログマルチプレクサ14の更なる回路は完全には示されない。128読出ラインがアナログマルチプレクサ14に接続され、該読出ラインの信号は出力15にある1つの直列出力信号を形成するようマルチプレクサにより変換される。マトリックスが全部で2000列からなるので、16のかかるアナログマルチプレクサが必要である。
【0040】センサマトリックスに対する読出動作中、行は順次活性化され、行の活性化によって、関連行にある全てのセンサの電荷は毎回出力される。次に、次の行が活性化され、これによりこの行のセンサ内に蓄えられた電荷は再び出力される。この動作は、行2000になるまで繰り返される。各読出動作中、並列に着くセンサ信号はアナログマルチプレクサにより直列信号に変換される。多数のセンサの故に、これは毎回128のセンサの群でなされる。全部で8つのアナログマルチプレクサが設けられるので、従って8つの直列信号が得られ、該信号の夫々は、行128のセンサの信号を表わす。
【0041】更に、図2は図1に示される装置に関連した転送手段を示す。図2は又図1によるアナログマルチプレクサ14と同様な増幅器11,12及び13を示す。しかし、2000のセンサ素子が上記に示されるよう行ごとに設けられるので、8つのアナログマルチプレクサの全部が転送手段に含まれる。図2はこれらのマルチプレクサのうちマルチプレクサ14と、別なマルチプレクサ17及び最後にマルチプレクサ18だけを示す。図示されてない更なるアナログマルチプレクサと同様にこれらのアナログマルチプレクサ17と18の夫々は、マルチプレクサ14のようにその入力が読出ラインを介して関連列に接続される増幅器が先行する128の入力からなる。
【0042】夫々のアナログマルチプレクサの後に各アナログディジタル変換器が続く。図2はアナログマルチプレクサ17に続くアナログディジタル変換器20と同様にマルチプレクサ14に続くアナログディジタル変換器19を示す。同じことが図示してない更なるアナログマルチプレクサに当てはまる。図はA/D変換器21が続く最後のマルチプレクサとしてマルチプレクサ18を示す。
【0043】A/D変換器19の後にマイクロプロセッサ22が続き、A/D変換器20の後にマイクロプロセッサ23が続き、A/D変換器21の後にマイクロプロセッサ24が続き、図示されてない他のA/D変換器の後にも各マイクロプロセッサが続く。マイクロプロセッサ22及び23は共通メモリー25をアクセスする。マイクロプロセッサ23は又図示してない方法で他のマイクロプロセッサによってもアクセスされるメモリー26をアクセスする。マイクロプロセッサ24は又メモリー27だけが示されている2つのメモリーをアクセスする。
【0044】マイクロプロセッサは、A/D変換器により供給され、センサ内で読出される信号から生じるディジタル信号を処理するのに役立つ。従って、例えばセンサの異なる感度、増幅器の異なる感度又は他の誤りは補償されうる。各マイクロプロセッサは、その関連したセンサの信号が蓄えられるばかりでなく、隣るセンサの信号が別なマイクロプロセッサによりそれ自体処理されるメモリーをアクセスしうるので、上記のことが可能である。例えばマイクロプロセッサ22はメモリー25をアクセスして、しかし、ここでマイクロプロセッサ23により処理され、その信号がマイクロプロセッサ22により処理されるマトリックス内のセンサに隣るセンサから生じる信号も蓄えている。センサ又は増幅器の感度の差は隣るセンサの信号の比較により検出されうる。更に、マイクロプロセッサは個々のセンサ素子の破壊を検出することが可能である。次にその信号は例えば隣るセンサからの平均的信号により置換されうる。この動作に続いて、それぞれのマイクロプロセッサは関連した列のセンサの出力信号を供給する。これらのディジタル出力信号は、8つのマイクロプロセッサからの8つの信号が、直列特性を有する全体の信号を形成するよう結合されるディジタルマルチプレクサ28の出力に現われるマトリックスの全ての信号を含む装置の全体のビデオ信号を表わす。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコン増幅器とアナログマルチプレクサとからなるセンサマトリックスの一部を有する装置を示す。
【図2】図1に示す装置の更なる転送手段を示す図である。
【符号の説明】
1 ホトダイオード
2 記憶容量
3 電界効果トランジスタ
4 直流電圧源
5,6,7 スイッチングライン
8,9,10 読出ライン
11,12,13 増幅器
14,17,18 マルチプレクサ
15 直列出力
16,31 制御ライン
19,20,21 アナログディジタル変換器
22,23,24 マイクロプロセッサ
25,26,27 メモリー
28 ディジタルマルチプレクサ
29 出力
30 ディジタルデコーダ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-08-30 
出願番号 特願平3-7044
審決分類 P 1 41・ 851- Y (H01L)
P 1 41・ 852- Y (H01L)
P 1 41・ 853- Y (H01L)
P 1 41・ 856- Y (H01L)
最終処分 成立  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 恩田 春香
松本 邦夫
登録日 2000-12-15 
登録番号 特許第3141033号(P3141033)
発明の名称 光感知又はX線感知センサよりなる装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 湯原 忠男  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 湯原 忠男  
代理人 伊東 忠彦  

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