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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04H |
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管理番号 | 1105030 |
審判番号 | 無効2003-35013 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-01-20 |
確定日 | 2004-09-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2549242号発明「蔵型収納付き建物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2549242号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
(一)手続の経緯 1)出願 (特願平5-117123号) 平成5年5月19日 2)登録 (特許第2549242号) 平成8年8月8日 3)無効審判請求 平成15年1月20日 4)答弁書、訂正請求書 平成15年4月4日 5)弁駁書 平成15年6月20日 6)口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成15年7月10日 7)口頭審理(特許庁審判廷) 平成15年7月10日 8)上申書(請求人) 平成15年7月24日 (二)本件特許発明について 1.訂正について (1)訂正請求の内容 平成15年4月4日付けの訂正請求は、特許第2549242号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正するものであり、その訂正の内容は、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的として、次のように訂正するものである。 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1を削除し、特許請求の範囲を次のように訂正する。 「【請求項1】 階数が3階の建物であって、2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、該蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にし、該蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設け、該蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けたことを特徴とする蔵型収納付き建物。 【請求項2】 前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを特徴とする請求項1記載の蔵型収納付き建物。 【請求項3】 前記蔵型収納室は防湿構造であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の蔵型収納付き建物。」 訂正事項b:明細書の段落【0007】を「また前記蔵型収納付き建物において、前記蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にした。さらに、前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを望ましいし、また防湿構造であることが望ましい。」に訂正する。 訂正事項c:明細書の段落【0009】を「またこの蔵型収納付き建物において、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。さらに、前記蔵型収納室の主要構造は防火構造であり、また防湿構造であるので蔵としての機能が高まる。」に訂正する。 訂正事項d:明細書の段落【0032】を「請求項1に記載の発明に係る蔵型収納付き建物によれば、3階建ての建物の2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設けるようにしたので、大きな収納空間を得ることができるとともに、この蔵型収納階の空間を有効に利用して蔵型収納室のレイアウトに変化をつけることができる。また、例えば蔵型収納階のフロアーの大部分を大きな収納空間とすれば、効率的に家具等を収納することができる収納空間を備えた蔵型収納付きの建物を提供することができる。また、前記蔵型収納階がそれを挟む上下の階における防音、防震の効果を発揮することができる。さらに、前記蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊場に面して蔵型収納室に出入りできる出入り口を設けるようにしたので、物品の搬入、搬出を円滑に行えるようになり、蔵型収納付き建物の機能を高めることができる。また、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。また、請求項2および3にそれぞれ記載の蔵型収納付き建物においては前記蔵型収納室の主要構造部を防火構造にしたり、防湿構造にしているので、蔵としての機能を高めることができる。」に訂正する。 (2)訂正の適否について 上記訂正事項aないしdに係る訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項bないしdに係る訂正は、訂正事項aに係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、明りょうでない記載の釈明および誤記の訂正を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書並びに同法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 2.本件特許発明 上記のように訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものである。(上記(二)1.(1)訂正事項a参照。) (三)請求人の主張および提出した証拠方法 請求人は、「特許第2549242号発明の明細書の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求するとともに、証拠方法として甲第1号証(実願昭63-157505号(実開平2-77242号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(「別冊・都市住宅 1975冬 住宅第8集」 鹿島研究所出版会 昭和49年12月15日 p.2,58〜62,160,169,172)、甲第2号証の2(「別冊・都市住宅 1975冬 住宅第8集」のp.62の図面に、断面線等の記載を記入したもの)を提出し、請求の理由として、平成15年6月20日付け弁駁書において、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第123条第1項の規定により無効とされるべきであると主張し、参考資料1ないし4を提出し、平成15年7月24日付け上申書とともに、参考資料5を提出している。 (四)被請求人の主張 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。 そして、平成15年4月4日付け答弁書および口頭審理陳述要領書において、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許は、無効とされるべきものではないと主張している。 (五)当審の判断 1.証拠に記載された発明の認定 甲第1号証(実願昭63-157505号(実開平2-77242号)のマイクロフィルム)には、実用新案登録請求の範囲に「1.木造独立住宅において、水回り関係諸室をまとめ、その天井高を、居室よりも低くして、南面する居室などの天井を高く構成し、上記水回り関係諸室の上方を利用して、1〜2階の中間に多目的スペースを組み込んだことを特徴とする住宅。」、6頁5〜15行に「水回り関係諸室を北側にまとめて、それらの天井を低めに抑えることにより、上部に生れた余裕の高さ(北)と南面居間を高い天井にするために上積みされた高さ(南)とを組合せることにより、1〜2階の北側中間部に、頭のぶつからない程度のスパースが生れる。それは、上下階の中間に位置し、どの階からも近く(階段の踊り場を利用して)、物の出し入れも比較的容易で、通風、採光も可能な乾燥した収納スペースとなる。」、8頁5行〜9頁10行に「1は南面する居間、2は北側の台所、3は北側のユーティリティ(浴室・便所・洗面洗濯場)、4は1〜2階の中間に位置する多目的スペースで、上記北側の台所2とユーティリティ3の上方に配設されている。5は階段踊り場より上記多目的スペース4への出入り動線、・・・上記南面する居間1は、天井を高くして開放感を与え、南面高窓7を取付けて北側にまで直射を導入させるように構成されている。図中、12は玄関、13は玄関ホール、14は納戸、15は便所、16は洗面洗濯場、17は浴室である。上記北側の台所2とユーティリティ3は、天井高さを低めに抑えて、上部に余裕の空間を生み出すよう構成されている。・・・18は例えば子供室(洋間)、19は例えば書斎、20は例えば寝室である。」と記載されており、階段踊り場より出入り(物の出し入れ)できるということは、階段の踊り場に面して出入り口を設けてあるはずであり、また、第1,2図をみると、1階の台所2とユーティリティ3の上方および玄関12玄関ホール13納戸14の上方に、階段の踊り場を挟んで区画された2つの多目的スペース4が、記載されている。これらの記載および図面を参照すると、甲第1号証には、「1〜2階の中間に頭のぶつからない程度の天井高の多目的スペースを組み込み、多目的スペースに至る階段を設け、階段の踊り場に面して出入り口を設けた多目的スペースを組み込んだ住宅」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 2.本件特許発明と証拠に記載された発明との対比・判断 (1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「多目的スペース」は収納スペースとなることが記載されている(6頁15行)から、本件特許発明1の「蔵型収納室」に相当し、また、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ住宅」は、本件特許発明1の「蔵型収納付き建物」に相当し、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ1〜2階の中間」と、本件特許発明1の「蔵型収納階とした2階」とは、「中間層」で共通するから、両者は、中間層を区画して蔵型収納室を設け、中間層に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けた蔵型収納付き建物の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点1:本件特許発明1は、階数が3階の建物であって、中間層が2階であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、中間層が1〜2階の中間と記載されている点。 相違点2:蔵型収納階の天井高さを、本件特許発明1では、1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたのに対し、甲第1号証記載の発明では、頭のぶつからない程度にした点。 上記相違点1について検討する。 被請求人も成立を認めた参考資料1(「建築大辞典第2版<普及版>」株式会社彰国社p.232)によると、「階」とは「(1)床によって区切られる内部空間の層。(2)建築物の層を数えるのにいう。」と定義されており、また、「床」とは、「空間を水平方向に仕切る建物の部位で、人間や物がその上に乗ったり置かれたりする。」(「建築大辞典<縮刷版>」株式会社彰国社 昭和59年2月10日発行 p.1556)、「天井・壁とともに建物内部空間を構成する普通水平な底。」(「建築用語辞典」株式会社技報堂 昭和48年6月25日発行 p.1039)と定義されている。そして、当業者の技術常識からみても、甲第1号証記載の発明の「多目的スペースを組み込んだ住宅」は、階数が3階の建物であって、多目的スペースを組み込んだ1〜2階の中間である中間層は2階であるということもできる。となると、上記相違点1は、表現が異なるだけで、実質的には相違していないことになる。 つぎに、相違点2について検討する。 天井高さとして、1.2メートル以上、2.0メートル以下という数字は通常居室の天井高さより低いといえるが、甲第1号証記載の発明でも、頭のぶつからない程度にしており、どの程度の天井高さにするかは、設計的事項に過ぎない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに、「前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造である」と限定しているが、上記(1)本件特許発明1についての検討事項に加えて、蔵型収納室の主要構造部を防火構造とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項に過ぎない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3は、本件特許発明1〜2のいずれかを引用し、さらに、「前記蔵型収納室は防湿構造である」と限定しているが、上記(1)本件特許発明1について、および、(2)本件特許発明2についての検討事項に加えて、蔵型収納室を防湿構造とすることは、当業者が必要に応じて適宜なしうる設計的事項に過ぎない。 3.むすび したがって、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により、これを無効にすべきものである。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 蔵型収納付き建物 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 階数が3階の建物であって、2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、該蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にし、該蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設け、該蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けたことを特徴とする蔵型収納付き建物。 【請求項2】 前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを特徴とする請求項1記載の蔵型収納付き建物。 【請求項3】 前記蔵型収納室は防湿構造であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の蔵型収納付き建物。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、蔵のような大型の収納空間を備えた蔵型収納付きの建物に係り、更に詳しくは建物の上下階間の天井フトコロに相当する空間を蔵のような大型の収納空間として構成した蔵型収納付き建物に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 物品を保管、収容する場所として、従来の一般住宅等ではその屋内に屋根裏の収納部、天井裏の収納部、階段下、押入、納戸、床下収納庫等を備えており、また屋外に物置等を備えている場合もあった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、近年における生活の質の向上に伴い、生活に使用する物品も多種多様で、かつ点数も多くなってきており、従来のような狭いスペースでは物品を保管、収容することができなくなるという問題点が生じている。 【0004】 該問題点の解決は、土地の高騰に対処するための土地の有効利用の観点からも要請されるところであり、建物内に可能な限り大きくしかも効率的に家具等を収納することができる収納空間を設けておくことが望まれていた。このような観点から物品の保管、収容場所を検討したところ、従来の建物では上下階間の天井フトコロに相当する空間がデッドスペースになっていたことが判明した。 【0005】 そこで、本発明は建物の上下階間の天井フトコロに着目し、その天井フトコロに相当する空間を積極的に利用し、効率的に家具等を収納することができる大きな収納空間を備えた建物を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明に係る蔵型収納付き建物は、3階建ての建物の2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、該蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設け、前記蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊り場に面して前記蔵型収納室の出入り口を設けたものである。 【0007】 また前記蔵型収納付き建物において、前記蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にした。さらに、前記蔵型収納室の主要構造部は防火構造であることを望ましいし、また防湿構造であることが望ましい。 【0008】 【作用】 本願発明に係る蔵型収納付き建物においては、3階建ての建物の2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設けるようにしたのでこの蔵型収納階の蔵としての機能を有効に発揮させることができる。また、前記蔵型収容階に至る階段を設け、該階段の踊場に面して前記蔵型収納室に出入りできる出入り口で設けるように構成したので、物品の搬入、搬出を円滑に行える。 【0009】 またこの蔵型収納付き建物において、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。さらに、前記蔵型収納室の主要構造は防火構造であり、また防湿構造であるので蔵としての機能が高まる。 【0010】 【実施例】 以下、図面を参照しつつ本願発明に係る蔵型収納付き建物の実施例について説明する。図1は実施例に係る蔵型収納付き建物の正面の立面図、図2は実施例に係る蔵型収納付き建物の右側面の立面図、図3は実施例に係る蔵型収納付き建物の断面図、図4乃至図6は実施例に係る蔵型収納付き建物の間取りを示す平面図である。これらの各図において1は蔵型収納付き建物、2は蔵型収納付き建物の1階部分、3は2階の蔵型収納階、4は蔵型収納付き建物の3階部分を示し、30は前記蔵型収納階3に設けられた蔵型収納室を示す。 【0011】 前記蔵型収納付き建物1は3階建ての木質系プレファブ住宅であり、1階2の天井フトコロに相当する空間を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階3としている。そしてこの実施例では前記蔵型収納階3の天井高を1.4メートルの高さに構成したので、該蔵型収納階3の空間を蔵として有効に利用できるようになっている。 【0012】 該蔵型収納階3は物品を保管し、貯蔵するための広い収納空間であり、その収納空間は1階の壁パネル20(図4参照)の組立後に敷込まれた前記蔵型収納階3の床パネル(図示せず)と、その床パネル上に建て起こされた蔵型収納階壁パネル31上に敷込まれた前記3階床パネル(図示せず)とによって構成される。 【0013】 前記蔵型収納階3の各壁パネル31の高さは1.4mで、この壁パネルの高さにより前記蔵型収納階3の床面から天井までの高さである天井高が決定されるようになっている。ここで天井高を1.4mとしたのは、平均的な身長の大人が例えば腰や頭を少し低くした状態で、あるいは椅子に座った状態等で自由に移動できる高さを想定したもので、物品の搬入や搬出に十分な高さとなっている。 【0014】 なお、天井高は1.4mに限定されるものではなく、軒高の制限のもとで1階部分の高さと3階部分の高さとの関係で決定されるようになっている。具体的には前記蔵型収納階3の天井高の上限は平均的な身長の大人が背伸びした状態でその手を物に届かすことができる高さ、例えば約2.2m程度にすることができる。この点はそれ以上の高さとしても上部はあまり利用されないという利用効率の点からも望ましい。また前記天井高の下限は天井フトコロに相当する空間を蔵として、物品の搬入や搬出にそれほど不自由なく利用できる高さ、即ち大人が屈んで作業できる高さ、例えば1.2m程度にすることができる。したがって、本発明においては、前記蔵型収納階3の天井高さは、実施例における1.4mに限ることなく、1.2m以上、2.2m以下にするのが望ましい。 【0015】 このようにこの実施例に係る蔵型収納付き建物1では1階の天井フトコロに相当する2階の空間を有効に利用して蔵型収納階3が設けられており、1フロアーの広いスペースで効率的に物品を収納することができる収納空間を設けることができるようになっている。 【0016】 次に前記蔵型収納階3の具体的な構成例を図5に基づいて説明する。図5に示すように前記蔵型収納階3には前記蔵型収納階壁パネル31によって構成された外壁32と内壁33とにより、蔵型収納室30が区画されている。該蔵型収納室30は蔵として区画された室であり、蔵としての役割果たすものである。 【0017】 前記蔵型収納室30への出入りは建物1内のスキップ階段34の踊り場35に設けられている出入口36を介して行われるようになっている。従って物品を搬入したり搬出する場合に、前記階段34を利用することができて、円滑に物品を搬入したり搬出することができるようになっている。 【0018】 なお、前記出入口36の高さを最大1.4mにすることができるが、出入口36を通過する際には身体を屈めることになる。そこで、図7に示すように前記実施例に係る建物1の吹抜け37(図4参照)より階段37aを直接、前記蔵型収納階3に接続するように構成するすれば楽な姿勢で物品の搬入、搬出を行うことができる。 【0019】 また図8に示すように前記実施例に係る建物1の押入天井38(図4参照)上に至る階段(図示せず)を設け、前記前記蔵型収納室30の床面に出入り口38aを設けるように構成すれば、押入天井38上の床面と前記蔵型収納階3の天井との間の空間(高さが約2m)を利用して、楽な姿勢で前記蔵型収納室30に物品を搬入したり、搬出することができる。 【0020】 なお、前記蔵型収納室30への出入り口は図5に示した出入口36、図8に示した出入り口38a等に限定されるものではなく、3階4の床面に出入口を設けても良いし、1階2の天井に出入口を設けるようにしてもよい。 【0021】 また前記蔵型収納室30の主要構造部となる壁や床を防火材料を用いて防火構造とすれば、蔵としての役割が高まることになる。前記採光窓33aは通気口としての機能も果たすので防湿効果があり、また防湿効果を更に高めるため、前記蔵型収納室30の内壁の仕上げ材料として吸放湿性材料を使うようにしてもよい。換気扇を外壁32に取り付けて、強制的に換気するようにしてもよい。 【0022】 この実施例に係る蔵型収納付き建物1では2階部分を蔵型収納階3としているので、図4と図6に示すように1階2と3階4とをすべて居室部分に活用できるようになっている。またこの実施例に係る蔵型収納付き建物1では一定の土地上の空間を縦方向に有効に使用しており、土地の有効利用に直接的に結び付けることができるようになっている。 【0023】 また1階の居室部分と3階の居室部分の中間に前記蔵型収納階3を設けているので、防音、防震に優れた効果を発揮することができるばかりでなく、実施例に係る蔵型収納付き建物1を2世帯住宅として使用する場合には、各世帯間の緩衝階としての役割も期待できる。 【0024】 上記のように構成された蔵型収納付き建物1の施工方法は、木質プレファブ構法に従うものであり、基礎工事終了後、1階床パネルの敷込み、1階壁パネル20の組立、蔵型収納階3の床パネルの敷込み、蔵型収納階3の壁パネル31の組立を行う。 【0025】 図示は省略するが前記蔵型収納階の壁パネル31は矩形状に組んだ枠材の両面に合板を貼設してパネル状に形成したもので、例えばこれらの蔵型収納階の壁パネル30を桁方向と平行に、または妻行き方向と平行に配設して、それぞれの端面を接合する。そして該蔵型収納階の壁パネル31に3階床パネルの敷込み、3階壁パネル40の組立後に屋根パネル(図示せず)を敷込むようにする。 【0026】 図示は省略するが1階壁パネル20、蔵型収納階の床パネル、蔵型収納階の壁パネル31、3階床パネル、3階壁パネル40間は胴差しボルトにより一体的に接合されている。 【0027】 なお、上記実施例では木質プレファブ構法に係る建物の内、パネル構法による建物について説明したが、木質プレファブであればどのような構法に係る建物でも本発明に係る建物の構成を応用することができる。また、木質プレファブ以外であっても、枠組壁工法による建物に本発明に係る建物の構成を応用してもよいし、在来構法による建物に本発明に係る建物の構成を応用してもよし、鉄筋コンクリート造りに本発明に係る建物の構成を応用してもよい。 【0028】 また、上記実施例に係る建物は地上3階建てであったが、階数に限定されずに、2階以上の建物に本発明に係る建物の構成を応用してもよい。 【0029】 上記実施例では前記蔵型収納階3全体で1つの蔵型収納室30を構成していたが、前記蔵型収納階を2以上の蔵型収納室に区画して構成してもよい。また前記蔵型収納階3全体を蔵型収納室にする必要はなく、前記蔵型収納階3の一部を吹抜けとして構成すれば非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。 【0030】 図9は蔵型収納階を2以上の蔵型収納室300、300に区分して構成された蔵型収納階3の平断面図である。このような構成であれば平面的にバランスのとれた構造にすることができる。 【0031】 また図10に示すように前記蔵型収納階3の中心に階段301を設けるようにすればコア部分が中心に位置するので耐震性にも優れた建物を提供することができる。 【0032】 請求項1に記載の発明に係る蔵型収納付き建物によれば、3階建ての建物の2階を物品の保管、貯蔵のための蔵型収納階とし、蔵型収納階を区画して蔵型収納室を設けるようにしたので、大きな収納空間を得ることができるとともに、この蔵型収納階の空間を有効に利用して蔵型収納室のレイアウトに変化をつけることができる。また、例えば蔵型収納階のフロアーの大部分を大きな収納空間とすれば、効率的に家具等を収納することができる収納空間を備えた蔵型収納付きの建物を提供することができる。また、前記蔵型収納階がそれを挟む上下の階における防音、防震の効果を発揮することができる。さらに、前記蔵型収納階に至る階段を設け、該階段の踊場に面して蔵型収納室に出入りできる出入り口を設けるようにしたので、物品の搬入、搬出を円滑に行えるようになり、蔵型収納付き建物の機能を高めることができる。また、蔵型収納階の天井高さを1.2メートル以上、2.0メートル以下にしたので、該蔵型収納階の天井高は、大人が屈んで作業できる高さ以上の高さ、大人が背伸びして物に手が届く高さ以下の高さとなり、よって、2階部分の蔵型収納階が従来の1階の天井フトコロに相当する空間となり、この空間を大きな収納空間とすることができる。また収納空間を必要としない部分は非常に高い天井高を確保することができ、部屋の用途によって多様な居住性が演出できる。また、請求項2および3にそれぞれ記載の蔵型収納付き建物においては前記蔵型収納室の主要構造部を防火構造にしたり、防湿構造にしているので、蔵としての機能を高めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例に係る蔵型収納付き建物の正面の立面図。 【図2】 実施例に係る蔵型収納付き建物の側面の立面図。 【図3】 実施例に係る蔵型収納付き建物の断面図。 【図4】 実施例に係る蔵型収納付き建物の間取りを示す平面図。 【図5】 実施例に係る蔵型収納付き建物の間取りを示す平面図。 【図6】 実施例に係る蔵型収納付き建物の間取りを示す平面図。 【図7】 実施例に係る蔵型収納付き建物につき、蔵型収納階への階段の取付位置を変更した場合の建物の断面図。 【図8】 実施例に係る蔵型収納付き建物につき、蔵型収納階への階段の取付位置を変更した場合の建物の断面図。 【図9】 他の実施例に係る蔵型収納付き建物の蔵型収納階の平断面図。 【図10】 他の実施例に係る蔵型収納付き建物の蔵型収納階の平断面図。 【符号の説明】 1 蔵型収納付き建物 2 1階 3 蔵型収納階 4 3階 30 蔵型収納室 34 階段 35 踊場 36 出入口 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-07-30 |
結審通知日 | 2003-08-04 |
審決日 | 2003-08-25 |
出願番号 | 特願平5-117123 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(E04H)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
鈴木 憲子 |
特許庁審判官 |
田中 弘満 長島 和子 |
登録日 | 1996-08-08 |
登録番号 | 特許第2549242号(P2549242) |
発明の名称 | 蔵型収納付き建物 |
代理人 | 土井 清暢 |
代理人 | 土井 清暢 |
代理人 | 羽鳥 修 |