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関連判例 | 平成16年(行ケ)66号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1105341 |
審判番号 | 不服2001-20818 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-11-22 |
確定日 | 2004-10-20 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第181689号「光学的情報記録再生装置及び光学的情報再生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成5年12月27日出願公開、特開平5-347068]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成4年6月16日の出願であって、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年3月9日付け、平成13年9月26日付け、平成13年12月19日付け、平成15年9月1日付け及び平成15年11月17日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項9に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項9】 情報記録媒体である光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生を行う光学的情報再生装置において、 光ディスクを回転させる回転手段と、 データエラーが生じたことを検知する検知手段とを備え、 初期設定では前記回転手段により最大回転数で前記光ディスクを回転させながらデータの再生を行い、データの再生を行っている途中で前記検知手段によりデータエラーを検知する度に前記回転手段により回転数を低下させてデータの再生を行い、前記検知手段によりデータエラーを検知しないときは、そのままの回転数で前記光ディスクを回転させてデータの再生を行うことを特徴とする光学的情報記録再生装置。」 2.刊行物 (1)刊行物1 当審の平成15年9月29日付けの拒絶理由で引用した特開平3-273564号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項及び図面が記載されている。 「1.円盤状の記録媒体を可変速の駆動モータにより回転駆動させて情報の記録又は再生を行い、任意のセクタの再生時に誤りデータを訂正するためそのセクタ内に誤り訂正コードを記録するようにした情報記録再生方法において、各セクタ毎に誤り訂正行った回数を判定し、この誤り訂正回数が所定値より多いときには前記駆動モータの回転数を下げるようにしたことを特徴とする情報記録再生方法。 2.高速回転モード持つ情報記録再生装置において、初期状態では高速回転モードで再生を行い、誤り訂正を行った回数により記録時の記録媒体の回転数を判定し、低速回転モードで記録されたと判定した時には、駆動モータを低速回転モードの回転数に下げるようにしたことを特徴とする請求項1の情報記録再生方法。」(特許請求の範囲) 「反面、低速回転で記録された媒体であっても高データ転送レート化のためには、高速回転駆動により再生したほうがよいので、一律に低速回転駆動で再生させるというのも得策ではなく、できる限り、高速回転で再生動作ををを行わせた方がよいといえる。」(第2頁左上欄第12行〜第16行) 「より具体的には、高速回転モードを持つ情報記録再生装置において、初期状態では高速回転モードで再生を行い、誤り訂正を行なった回数により記録時の記録媒体の回転数を判定し、低速回転モードで記録されたと判定した時には、駆動モータを低速回転モードの回転数に下げるようにした。 作用 ある回転数で記録媒体を回転駆動させながら行う再生動作において、再生時の回転数が記録時の回転数よりも高い場合には、誤りデータが多くなる一要因となり得る。一方、再生時の回転数が記録時の回転数よりも高い場合であっても良好なる状態で記録がなされた情報については誤りデータの少ない再生が可能となる。」(第2頁右上欄第13行〜第3頁左下欄第8行) 「しかして、本実施例ではこのような誤り訂正を行った回数の多少を、駆動モータ4の回転数切換え制御の判断に用いるものである。まず、第2図に示すような高速回転モードを持つ光ディスクドライブ2に光磁気ディスク1をセットすると、その初期状態では光磁気ディスク1が高速回転モードにより回転駆動されて記録動作又は再生動作が行われる。ここに、再生動作においてはデータやディクトリ等の記録されたデータが光ピックアップ6により読取られ、信号処理系8の変復調器11を経てドライブコントローラ10で読取られる。このデータ中に、誤り訂正コード情報は第1図に示すように誤り訂正符号・復調器12により復号されてドライブコントローラ10に与えられるとともに、復号した際の誤り訂正を行なった回数の情報もこのドライブコントローラ10に与えられる。ドライブコントローラ10ではこの誤り訂正回数が予め設定されて所定値、例えば4ワードより大きい場合には、セットされている光磁気ディスク1が低速回転モードにより書込まれたものであると判断し、それ以降の記録動作又は再生動作を低速回転モードによる回転数に切換えて行う。よって、誤り訂正回数が少ない場合には、初期の高速回転モードのまま動作が継続される。この誤り訂正回数が少ない場合には、高速回転モードによる記録はもちろんであるが、低速回転モードによる記録であってもその記録状態がよい場合も含まれる。このため、誤り訂正コード数の多少に応じた回転数切換え信号がコントローラ10から回転制御系3に与えられる。このように、誤り訂正回数が所定値よりも少ない限り、支障ないため、高速回転モードによる再生動作を継続でき、低速回転モードによる記録のものでもできるだけデータ転送レートを下げることなく再生を行わせることができる。もちろん、データ誤りが多い場合には、低速回転モードの回転数に切換えられて行われるので、データ信頼性の高い再生動作となる。」(第3頁左下欄第7行〜第4頁第8行) 以上の記載事項から、刊行物1には、 「光磁気ディスクから光ピックアップによりデータを読取る光磁気ディスク装置において、 光磁気ディスクを回転させる駆動モータと、 データ中の各セクタ毎に誤り訂正を行った回数を予め設定された所定値と比較するコントローラとを備え、 初期状態では駆動モータにより高速回転モードで光磁気ディスクを回転させながら、情報の読取り行い、情報の読取りを行っている間に、コントローラが、誤り訂正を行った回数が所定値より多い場合には、セットされている光磁気ディスクが低速回転モードで記録されたものと判定し、低速回転モードに切換えて読取りを行い、誤り訂正を行った回数が所定値より少ない場合には、セットされている光磁気ディスクが低速回転モードで記録された光磁気ディスクであっても初期の高速回転モードのままで光磁気ディスクを回転させて情報の再生を行う高速回転モードを持つ光磁気ディスク装置。」の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)刊行物2 同じく当審の拒絶理由で常套手段として引用した特開昭61-218269号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項及び図面が記載されている。 「従来、この様なモデムを使用したファクシミリ通信に於いて通信速度を決定する際、送信側は予め定められたテストデータをモデムの最も高い通信速度で送信する。一方、受信側は受信した前記テストデータ内のエラーピット数からその通信速度が回線品質に適しているかどうか判定し、肯定又は否定応答を送信側に通知する。送信側は肯定応答が受信側から通知された場合のみ、その通信速度をモデムに指定して画情報の送信を行う。しかし、否定応答が通知された場合は同一通信速度で再試行するか通信速度を一段下げて再度前記テストデータの送信を行い、受信側からの肯定応答が得られるまで通信速度を一段階ずつ下げながら前記テストデータの送信を行う。」(第1頁右欄第14行〜第2頁左上欄第9行) (3)刊行物3 同じく当審の拒絶理由で常套手段として引用した特開平2-92153号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項及び図面が記載されている。 「第8図(2)及び(3)は回線状況が悪い場合の手順を示している。第8図(2)に示すようにまず、9500b/sで伝送することを試みる。ところが、受信機はTCF信号を正しく受信できないので、FTT信号を送出する。そこで送信機は、次に7200b/sで伝送することを試みる。この場合にも受信機はTCF信号を正しく受信できないので、FTT信号を送出する。さらに送信機は、次に4800b/sで伝送することを試みる。しかし受信機はTCF信号を正しく受信できないので、FTT信号を送出する。 送信機は、9600b/sあるいは7200b/sのTCF信号に対しFTT信号を受信したときには、直ちに7200b/s・4800b/sでのTCF信号へ移行するよう予め設定されている。これに対して、4800b/sあるいは2400b/sのTCF信号に対しては、2回FTT信号を受信した時に、2400b/sでのTCF信号の送信あるいは回線断へ移行するよう予め設定されている。その理由は、4800b/sあるいは2400b/sでは、なるべくそのスピードで伝送を試みたいものである。 そこで、送信機は引き続き再び4800b/sで伝送することを試みる。ところが、受信機はTCF信号を正しく受信できないので、FTT信号を送出する。このように、送信機は4800b/sでのTCF信号に対し、FTT信号を2回受信したので、次に、2400b/sで伝送することを試みる。これに対して、受信機はTCF信号を正しく受信できたのでCFR信号を送出し、2400b/sで画伝送が行われる。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁右上欄第3行) 3.対比・判断 刊行物1の発明の光ピックアップによって読取られる「光磁気ディスク」は、本願発明の「光ディスク」に相当するから、刊行物1の発明の「光磁気ディスクから光ピックアップによりデータを読取る光磁気ディスク装置」は、本願発明の「情報記録媒体である光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生を行う光学的情報記録再生装置」に相当する。 刊行物1の発明の「駆動モータ」は、光磁気ディスクを回転させるから、本願発明の「回転させる手段」に相当し、刊行物1の発明の各セクタ毎に誤り訂正を行った回数を予め設定された所定値と比較する「コントローラ」は、エラーが生じたことを検知しているから、本願発明の「データエラーが生じたことを検知する検知手段」に相当する。 刊行物1の発明の「初期状態」は、光磁気ディスクが低回転速モードで記録されたものにも関わらず、高速回転モードで回転することは、本願発明の「初期設定」に相当し、刊行物1の発明の初期状態の「高速モード」は、「低速モード」より高速で光磁気ディスクを再生するから、本願発明の「最大回転数で光ディスクを回転させながらデータの再生を行う」に相当する。 そして、刊行物1の発明の「高速モード」から「低速モード」の切換は、回転数を低下させるから、本願発明の「回転数の低下」に相当する。 したがって、両者は、 「情報記録媒体である光ディスクにレーザ光を照射してデータの再生を行う光学的情報再生装置において、 光ディスクを回転させる回転手段と、 データエラーが生じたことを検知する検知手段とを備え、 初期設定では前記回転手段により最大回転数で前記光ディスクを回転させながらデータの再生を行い、データの再生を行っている途中で前記検知手段によりデータエラーの発生により、前記回転手段により回転数を低下させてデータの再生を行い、回転数を低下させる以外は、そのままの回転数で前記光ディスクを回転させてデータの再生を行うことを特徴とする光学的情報記録再生装置。」の発明で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉 データエラーの発生により光ディスクを回転させる回転手段の回転数を低下させる場合が、本願発明では、「データエラーを検知する度」であるのに対して、刊行物1の発明では、「誤り訂正を行った回数が所定値より多く、セットされている光磁気ディスクが低速回転モードで記録されたものであるとき」であり、そのままの回転数で光ディスクを回転させてデータの再生を行う場合が、本願発明では、「検知手段によりデータエラーを検知しないとき」であるのに対して、刊行物1の発明では、「誤り訂正を行った回数が所定値より少ないとき」である点。 上記相違点を検討すると、 大量の情報を高速に伝達することを目的として、データエラーの検知がない限り最も速い速度で、また、エラーが検知される場合は、エラーの検知が有る場合のみ、速度を下げるデータの通信手段が刊行物2,3に記載されている。刊行物1の発明も、できる限り高速回転で再生動作をおこなわせて、データを高速に得ることを求めており、刊行物1の発明でも、データエラーを検知したときは、回転数を低下させているから、刊行物2,3に記載されているように、エラーの生じる度毎に、段階的に光磁気ディスクの回転手段をさげていくことにより、できる限り光磁気ディスクの高速回転を維持し、エラーの生じないときは、速度を下げないで初期状態で光磁気ディスクを回転させるように構成することは、当業者が容易に推考できたたことと認められる。 4.むすび したがって、本願発明は、刊行物1〜3に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-12-16 |
結審通知日 | 2003-12-17 |
審決日 | 2004-01-06 |
出願番号 | 特願平4-181689 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
相馬 多美子 張谷 雅人 |
発明の名称 | 光学的情報記録再生装置及び光学的情報再生装置 |
代理人 | 柏木 慎史 |