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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1105795
審判番号 不服2002-10727  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-13 
確定日 2004-11-04 
事件の表示 平成 7年特許願第242940号「会議開催及びスケジュール管理支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月 4日出願公開、特開平 9- 91341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は平成7年9月21日の出願であって、平成14年5月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月12日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年7月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月12日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件手続き補正
平成14年7月12日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に規定する期間内になされたものであって、平成14年1月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、次のとおり(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)補正する補正事項を含むものである。

(補正前の特許請求の範囲)
【請求項3】
利用者との対話機能を有する複数の情報処理装置を通信手段を介して結合し、利用者各人毎にスケジュール情報を保持するスケジュール管理エージェントと利用者により指示された会議開催希望条件に沿って出席要請者とのスケジュール調整を行う会議開催エージェントを構成し、前記会議開催エージェントは、会議を開催する利用者から会議開催の希望条件が指定されると該会議への出席を要請する全利用者の各スケジュール管理エージェントに対して開催希望日時の範囲における空き時間を問い合わせて該空き時間情報を取得し、出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定し、該会議開催スケジュールを会議開催者に提示して確認すると共に会議開催通知を出席要請者のスケジュール管理エージェントに通知する会議開催及びスケジュール管理支援装置において、
前記会議開催エージェントは、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、スケジュール情報から取得した過去の同一シリーズに属する会議における該会議の平均開催日間隔を求め、最後に行われた会議から平均開催日間隔たった日に最も近い日の候補を第1候補として会議開催者に通知するようにしたことを特徴とする会議開催及びスケジュール管理支援装置。

(補正後の特許請求の範囲)
【請求項3】
利用者との対話機能を有する複数の情報処理装置を通信手段を介して結合し、利用者各人毎にスケジュール情報を保持するスケジュール管理エージェントと利用者により指示された会議開催希望条件に沿って出席要請者とのスケジュール調整を行う会議開催エージェントを構成し、前記会議開催エージェントは、会議を開催する利用者から会議開催の希望条件が指定されると該会議への出席を要請する全利用者の各スケジュール管理エージェントに対して開催希望日時の範囲における空き時間を問い合わせて該空き時間情報を取得し、出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定し、該会議開催スケジュールを会議開催者に提示して確認すると共に会議開催通知を出席要請者のスケジュール管理エージェントに通知する会議開催及びスケジュール管理支援装置において、
前記スケジュール管理エージェントは、前記スケジュール情報として、過去の会議開催情報を保持し、
前記会議開催エージェントは、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、前記スケジュール管理エージェントが保持するスケジュール情報から取得した過去の同一シリーズに属する会議における該会議の平均開催日間隔を求め、最後に行われた会議から平均開催日間隔たった日に最も近い日の候補を第1候補として会議開催者に通知するようにしたことを特徴とする会議開催及びスケジュール管理支援装置。

(2)当審の判断
本件補正について検討する。
本件補正により、請求項3は、「スケジュール管理エージェントは、スケジュール情報として、過去の会議開催情報を保持する」点が、追加された。
そして、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲,又は図面(以下、当初明細書等という)を参照すると、当初明細書の発明の詳細な説明には、以下のように記載されている。
(a)「各スケジュール管理エージェント840a,840b…は、会議開催エージェント830a,830b…からの会議開催通知メッセージやアポイントメントエージェント850a,850b…からのアポイントメント要求メッセージ、更には、各ユーザーインタフェースエージェント820a,820b…を介してユーザー810a,810b…が自ら入力した休暇取得,フレックスタイム利用及び個人的用事などのスケジュール情報を受け取り、問題がなければ個人スケジュール情報として登録し、複数のスケジュールが重複する場合には、その間の調整及び選択を行って登録する。」(段落【0021】)
(b)「更に、この中から最適な候補を選択するには、会議開催エージェント830aが持つ各人に関する知識情報を利用する。例えば、過去の会議の開催時刻で、行われた回数が多い時間帯ほど優先度を高める。また、過去の会議が何の曜日に一番多く行われているかをチェックし、会議開催が多い曜日の候補ほど優先度を高める。更に、過去の一連の会議の開催間隔をチェックし、その平均間隔に近い日程の優先度を高める。前記処理470における確認では、以上のような優先度の評価付けを行った上で該優先度の高い順に該候補を会議開催者に提示して承認を得る。このとき、優先度順に候補を並べて提示しても良いし、先ずは最優先度の候補を提示し、該候補が会議開催者に拒否されたときに次善の候補を提示するようにしても良い。」(段落【0040】〜【0041】」

以上の様に、当初明細書には、「会議開催エージェントが、スケジュール情報として、過去の会議開催情報を保持する」旨記載されており、「スケジュール管理エージェントが、スケジュール情報として、過去の会議開催情報を保持」する構成については、当初明細書等には何ら明記されておらず、また、当初明細書等から自明な事項とも認められない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本願発明について
平成14年7月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「利用者との対話機能を有する複数の情報処理装置を通信手段を介して結合し、利用者各人毎にスケジュール情報を保持するスケジュール管理エージェントと利用者により指示された会議開催希望条件に沿って出席要請者とのスケジュール調整を行う会議開催エージェントを構成し、前記会議開催エージェントは、会議を開催する利用者から会議開催の希望条件が指定されると該会議への出席を要請する全利用者の各スケジュール管理エージェントに対して開催希望日時の範囲における空き時間を問い合わせて該空き時間情報を取得し、出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定し、該会議開催スケジュールを会議開催者に提示して確認すると共に会議開催通知を出席要請者のスケジュール管理エージェントに通知する会議開催及びスケジュール管理支援装置において、
前記会議開催エージェントは、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、スケジュール情報から取得した過去の同一シリーズに属する会議において最も回数の多い曜日及び開催時間帯を第1候補として会議開催者に通知するようにしたことを特徴とする会議開催及びスケジュール管理支援装置。」

4.引用例
(1)原審の拒絶の理由に引用された "N.R. Jennings and A.J. Jackson, Agent-based meeting scheduling: A design and implementation, ELECTRONICS LETTERS, 英国, 1995年3月2日, Vol.31, No.5,pages 350-352"(以下、引用例という。)には、「Agent-based meeting scheduling: A design and implementation」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。
なお、原文の後の括弧書きの日本文は当該部分の仮訳である。
A.「The Letter describes the design and implementation of a distributed meeting scheduling system in which each user has an intelligent agent in their computer desktop which is responsible for arranging meetings. Knowing the preferences and commitments of their user, the agents negotiate with one another to find the most acceptable meeting times.
(この論文では、それぞれのユーザが、自分のデスクトップコンピュータに知的な処理を行うエージェントを有した分散会議スケジュールシステムの設計と実装について述べる。ここでエージェントは、会議を開催する役割を持ち、各ユーザの優先度や設定に基づいて、最も望ましい会議の時間を見つけるために、エージェント同士で交渉を行なう。)」(第350頁右欄第13行目〜第18行目)
B.「This Letter reports the design and implementation of a particular agent-based application which arranges meetings. This application turns the currently available electronic calendar management systems (such as Organiser or UNIX's Calendar Manager) from passive information repositories in which a user simply records his personal schedule into active and empowered applications which can negotiate on behalf of their user to arrange meetings according to a set of expressed preferences. ・・・(略)・・・ It is an advance over currently available calendar management products (such as Meeting Maker and MS-Schedule+) in that it is the agents, and not the humans, which manage and enact the negotiation process.
(この論文では、実際のエージェントによる会議の調整を行うアプリケーションの設計と実装について報告する。このアプリケーションは、現在利用可能な("オーガナイザー"やUNIX上のカレンダー管理ソフトのような)電子カレンダ管理システムを、ユーザが単に自分の個人的なスケジュールを記載しておくような受動的な情報庫から、アクティブで、ユーザが予め示しておいた意向に沿って、ユーザに代わって会議のアレンジの調整が可能なアプリケーションへと変える。・・・(略)・・・これらのアプリケーションは、人間ではなく、エージェントによって、交渉(調整)のための過程が生成され管理されるという点で、現在利用可能な(ミーティングメーカやMS-スケジュールのような)カレンダー管理ソフトに比べて進んだものとなっている。)」(第350頁右欄第32行目〜第46行目)
C.「Agent design and implementation: A centralised database which stores the calendars of all the participants in the system is infeasible because it violates the privacy of the individuals concerned. For this reason, it was decided that individuals should maintain their own calendar locally and hence they should each have a meeting scheduling agent (MSA) acting on their behalf (Fig. 1). The system is invoked when a host indicates to its MSA that it would like to schedule a meeting involving a number of individuals (e.g. B and C) at a specific time (e.g. 'one afternoon this week'). The host's MSA announces the meeting, together with the associated constraints, to the proposed invitees. However because the host's MSA does not know the commitments of the invitees, the proposal may conflict with the invitees' existing arrangements. In such cases, the MSAs negotiate with one another to resolve the conflict; possible means include cancelling the meeting, rescheduling the meeting or rearranging existing meetings. At all stages in this process, the MSAs take their user's preferences into account (e.g. no meetings at the weekends and all meetings between 9 and 5).
(エージェントの設計と実装: システム関係者全員のカレンダーが蓄積された集中方式データベースは、個人に関するプライバシーが侵されることになるので、利用することはできない。したがって、個人は自分のカレンダーをそれぞれローカルに保持することになるので、自分の代わりに動作する会議スケジューリングエージェント(MSA)を(それぞれ)保持しておかなければならない。(第1図) 会議の主催者(ホスト)が、「ある時間(例えば、今週の午後)に、複数の人(例えば、BとC)とで会議をしたい」と、自分のMSAに対して指示を行うと、このシステムが作動する。主催者(ホスト)のMSAは対象となる招待者に、関連づけられた条件と共に、会議の案内を行う。しかし、主催者(ホスト)のMSAは招待者の予定の状態を知らないため、会議の開催の提案が、招待者における既存の予定と一致しないかもしれない。このような場合、MSAは、会議を取消したり、再調整したり、他の会議を調整するなどの可能な方法によって、不一致を解消するために、相互に調整を行う。このプロセスのすべての段階で、 MSA は、自らのユーザーの優先度を考慮に入れる(例えば、週末には会議を入れず、すべての会議は朝9時から夕方5時までにする)。)」(第350頁右欄第47行目〜第351頁左欄第15行目)
D.「 The algorithm encoded in each agent's decision making module is given as follows:
1: Host (H) for meeting Mj sends out invitations to all invitees {I1....In} indicating the purpose of the meeting, the constraints which apply to the meeting(CMj), and the desired length of the meeting(LMj).
2: FORALL Ii ∈ { I1....In } DO: Determine potential times {TMj,Ii,1.....TMj,Ii,k} at which Mj could be scheduled (according to CMj, LMj, and local preferences) and how many of these options (m) will be offered to H. Make tentative commitments to these times {TCMj,Ii,1 .... TCMj,Ii,m}. Return bids to H.
3: IF there exists a timeslot present in bids from all the invitees and its global preference is above the host's threshold for Mj THEN select slot (ΨMj) with highest global preference
seek confirmation from all attendees for Mj at TMj ELSE IF further times available for Mj THEN ask for further bids for Mj and repeat from stage 2
ELSE replan Mj.
4: FORALL Ii ∈ { I1.....In } DO: Respond (confirm or reject) to proposal from H for Mj at ΨMj.
5: IF H receives sufficient positive responses to proposal ΨMj to make Mj viable
THEN schedule Mj atΨMj ELSE replan Mj.
(各エージェントの判断モジュールに組み込まれているアルゴリズムは、以下のようなものである:
1:主催者(ホスト)(H)は、全ての招待者{I1....In}に対して、会議Mjについての案内を、会議の目的、会議における制約条件(CMj)、会議開催の時間長(LMj)とともに送付する。
2:FORALL Ii ∈{I1....In} (全ての各招待者Iiについて、以下を実行)DO:(制約条件CMj、会議時間LMjや各々の優先度を考慮に入れて)会議Mjを予定可能な時間{TMj,Ii,1....TMj,Ii,k}と、主催者(ホスト)Hに対して幾つの選択肢(m)を提案できるかを決める。そして、これらの時間{TMj,Ii,1....TMj,Ii,m}を仮の開催候補とし、主催者(ホスト)Hへ候補値(bids)を返す。
3:IF 全招待者から得られた候補値の中にタイムスロット<TMj,Ii,q>が存在し、グローバルな優先度が主催者(ホスト)における会議Mjの閾値を超える場合、
Then 時間TMjにおける会議Mjの出席者全員からの確認を求め、全体として最も好ましいタイムスロット(ΨMj)を選択する
ELSE IF 会議Mjについて、さらに別の候補時間が存在する場合
THEN 会議Mjについて、さらなる候補の時間を問い合わせ、第2手順の操作を繰り返す
ELSE 会議Mjの開催を見直す
4:FORALL Ii ∈{I1....In} (全ての各Iiについて、以下を実行) DO:時間ΨMjにおける主催者(ホスト)Hからの会議Mjの開催提案に対して返答(出席/欠席)を行う
5:IF 主催者(ホスト)Hが、時間ΨMjにおける会議Mjを開催するのに十分な肯定的返答を受けた場合
THEN 時間ΨMjにおける会議Mjの開催を予定
ELSE 会議Mjの開催を見直す)」(第351頁左欄第16行目〜第39行目)
E.「In more detail, the request for a meeting is initiated by the host agent (AgtA) who specifies the meeting's attributes (see below); these include a list of the desired attendees together with the associated constraints (e.g. all invitees must attend), the objective and length of the meeting (in hours), and the time window during which the meeting must take place. This time window may vary from the very specific (e.g. Friday 15:00) to the very vague (e.g. 'some time Friday afternoon'). ・・・(略)・・・ On receipt of this invitation. each invitee decides whether it is interested in attending the meeting. Assuming an agent is willing, it sends a ranked list of m possible times together with their respective preference ratings back to the host (see below, where m=2 and midday is preferred to late afternoon). The agent also makes tentative commitments in its diary for these times. A tentative commitment indicates that the timeslot may be used for that meeting
(より詳細には、会議の要請は、会議の属性(下記を参照)を明示する主催者(ホスト)のエージェント(AgtA)によって開始される;その会議の属性としては、会議に関連づけられた制約(例えば、すべての招待者は出席しなくてはならない)、会議の目的、会議の長さ(例えば、何時間か)、その会議が開かれる必要がある期間と、出席を要望する者のリストを含む。この期間の値としては、非常に具体的な値(例えば、金曜日の15時)から、非常に曖昧な値(例えば、‘金曜日の午後のいずれかの時間’)までをとる。・・・(略)・・・あるエージェントが出席を希望していると想定すると、エージェントは、m通りの出席可能な時間にそれぞれ優先評価を付け、ランク付けされたリスト(下記のように、m=2について、午後の遅い時間より、昼頃の方が望ましい旨)を主催者(ホスト)へ返答する。エージェントはこれらの時間を用いて、予定表上における仮の予定の予約を行う。仮の予約は、そのタイムスロットがその会議の予定に充てられる可能性があることを示している)」(第351頁左欄第46行目〜第65行目)
F.「Once the host has received all the potential meeting times from the invitees, it tries to find a mutually agreeable slot. In the current implementation this is done by searching for an intersection among all the offered bids. If such an intersection exists, its global preference is computed, by averaging the offered preferences, and if this value is higher than a preset host-defined threshold the slot is deemed acceptable (if there is more than one acceptable slot, the one with the highest global preference is selected). However if no acceptable slot exists there is a further iteration of this phase of the algorithm.・・・(略)・・・
Assuming the hosts able to find an acceptable time, it sends out a confirmation message to each of the invitees (see below). Each invitee then has to either confirm or reject the meeting proposal. When making this decision the agent is faced with four possible situations: (i) its tentative commitment for Mj at ΨMj can be made firm because there are no conflicting obligations; (ii) the slot atΨMj has been firmly committed to a more important meeting Mk and so the proposal for Mj is rejected; (iii) the slot at ΨMj has been tentatively committed to a meeting Mk in which case the proposal for Mj is accepted; (iv) the slot at ΨMj has been firmly committed to a less important meeting Mk in which case the proposal for Mj is accepted (as for iii),
(主催者(ホスト)が招待者から会議における開催時間の全ての候補を受け取ったら、主催者(ホスト)は相互に会議開催にふさわしいスロットを見いだそうとする。 今回の実装では、これは、受け取った全候補値の中で共通な値を捜すことによってなされる。もしこのような共通の値が存在するなら、受け取った優先度を平均することによって、そのグローバルな優先度が計算され、そしてもしこの値があらかじめセットされた主催者(ホスト)によって定義された閾値より高いならは、スロットは受容できるとみなされる(もし1以上の受容できるスロットがあれば、最も高いグローバルな優先度を持っている一つのスロットが選ばれる)。しかしながら、もし受容できるスロットが存在しないなら、アルゴリズムのこの段階において、さらなる再試行が行われる。・・・(略)・・・
主催者(ホスト)が受容できる時間を見いだすことが可能であると想定して、主催者(ホスト)は(下記のように)招待者のそれぞれへの確認のためのメッセージを送る。各招待者は、その会議の提案について、了承か拒絶をしなければならない。この判断をするとき、エージェントは4つの可能性のある状態に直面する:
(i)不一致の拘束条件はないので、会議Mjの時間ΨMjにおける仮の予約を確定的な予定にすることができる; (ii)時間ΨMjにおけるスロットには、より重要な会議Mkの確定的な予定がなされていることから、会議Mjの提案は拒絶される; (iii)時間ΨMjにおけるスロットは会議Mjのために仮に予約されており、この場合の会議Mjの提案は受け入れられる; (iv)時間ΨMjにおけるスロットには、あまり重要ではない会議Mkの確定的な予定がなされていることから、この場合の会議Mjの提案は(iiiと同様に)受け入れられる)」(第351頁右欄第17行目〜第48行目)
また、第1図においては、ユーザ(user)とのインターフェイス(interface)を有する複数のエージェントを、通信手段(inter-agent communication)を介して結合している構成が記載されている。そして、ここでは、コンピュータ上のソフトウエアとしてエージェントが構成されているものであるから、本引用例において、複数の(エージェントが実装された)コンピュータ、すなわち複数の情報処理装置を有していることは明らかである。
さらに、第1図には、会議スケジューリングエージェント(MSA)は、予定表(diary)および判断モジュール(decision making module)を有していることが示され、そして、判断モジュール(decision making module)が通信手段(inter-agent communication)を介して他のユーザーの会議スケジューリングエージェント(MSA)と通信することが示されている。それ故、複数の会議スケジューリングエージェント(MSA)間の通信は、通信手段(inter-agent communication)を介して判断モジュール(decision making module)間で行われていることは明らかである。また、予定表(diary)は判断モジュール(decision making module)間とのみ連絡することも示されており、複数の会議スケジューリングエージェント(MSA)間における会議のスケジュール情報の交換は、予定表(diary)と直接行われるのではなく、判断モジュール(decision making module)を介して行われることも明白である。

したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認められる。
「ユーザとのインターフェイスを有する複数の情報処理装置を通信手段を介して結合し、ユーザ毎にスケジュール情報を保持する予定表とユーザにより指示された会議開催希望条件に沿って招待者とのスケジュール調整を行う判断モジュールを構成し、判断モジュールは、主催者(ホスト)から会議開催の希望条件が指定されると該会議への出席を要請する全ユーザの会議スケジューリングエージェント内の判断モジュールに対して開催希望日時の範囲における空き時間を問い合わせて該空き時間情報を取得し、招待者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定し、該会議開催スケジュールを招待者の会議スケジューリングエージェント内の判断モジュールに通知する会議スケジューリングシステムにおいて、
前記判断モジュールは、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、優先度の高い開催時間帯を第1候補とする会議スケジューリングシステム。」

5. 本願発明と引用例に記載された発明の対比
引用例記載の発明の「イ.予定表」、「ロ.判断モジュール」、および、「ハ.会議スケジューリングシステム」は、本願発明の「イ.スケジュール管理エージェント」、「ロ.会議開催エージェント」、および、「ハ.会議開催及びスケジュール管理支援装置会議スケジューリングシステム」にそれぞれ相当する。
また、引用例記載の発明の「イ.ユーザ」、「ロ.インターフェイス」、「ハ.招待者」、および、「ニ.主催者(ホスト)」は、本願発明の「イ.利用者」、「ロ.対話機能」、「ハ.出席要請者」、および、「ニ.会議を開催する利用者」にそれぞれ相当する。
そして、引用例記載の発明と本願発明は、「イ.複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、優先度の高い開催時間帯を第1候補とする」点、および、「ロ.スケジュール情報の交換に際しては、判断モジュール(会議開催エージェント)と相手側のエージェントとの間で行われる」点で一致する。更に、引用例記載の発明において、「(招待者全員の空き時間情報に基づいて決定した)会議開催スケジュールを招待者(の会議スケジューリングエージェント内の判断モジュール)に通知する」ことは、本願発明の「(出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定した後、)会議開催通知を出席要請者(のスケジュール管理エージェント)に通知する」ことと実質的に同一である。

したがって、両者は、「利用者との対話機能を有する複数の情報処理装置を通信手段を介して結合し、利用者各人毎にスケジュール情報を保持するスケジュール管理エージェントと利用者により指示された会議開催希望条件に沿って出席要請者とのスケジュール調整を行う会議開催エージェントを構成し、前記会議開催エージェントは、会議を開催する利用者から会議開催の希望条件が指定されると該会議への出席を要請する全利用者のエージェントに対して開催希望日時の範囲における空き時間を問い合わせて該空き時間情報を取得し、出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定し、会議開催通知を出席要請者のエージェントに通知する会議開催及びスケジュール管理装置において、
前記会議開催エージェントは、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合は、優先度の高い開催時間帯を第1候補とする会議開催及びスケジュール管理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、出席要請者全員の空き時間情報に基づいて会議開催スケジュールを決定した後に、「会議開催スケジュールを会議開催者に提示して確認」する構成となっているが、引用例記載の発明ではこの点は明確に記載されていない点。
(相違点2)
本願発明では、複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合、「過去の同一シリーズに属する会議において最も回数の多い曜日及び開催時間帯を第1候補とし」、これを会議開催者に通知する構成となっているが、引用例記載の発明では、このような第1候補の選び方については記載されていない点。
(相違点3)
本願発明では、スケジュール情報の交換は、会議開催エージェントとスケジュール管理エージェントの間で行われているが、引用例記載の発明では、スケジュール情報の交換は、
判断モジュール間で行い、そして、別途判断モジュールと予定表間を連絡している点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
引用例記載の会議スケジューリングシステムにおいて、招待者全員の出席可能な時間を問い合わせ、会議開催の候補時間帯が決定された際に、会議開催スケジュールを主催者(ホスト)に提示して確認することは、適宜実施しうることと認められる。

(相違点2) について
複数の開催可能時間帯が候補として存在する場合に、最適なものを第1候補とするために、過去の会議における開催状況を調べ、その分析結果に基づいて、最適な日時を選択させる方法は、従来より必要に応じて経験的に行われてきたような周知な方法であり、また、この点に格別な技術的な特徴は認められない。
したがって、引用例記載の会議スケジューリングシステムにおいても、周知の手段を採用し、複数の会議開催可能時間帯が候補として存在する場合に、「過去の同一シリーズに属する会議において最も回数の多い曜日及び開催時間帯を第1候補とすること」は、当業者が容易に考えうることと認められる。
なお、第1候補の時間帯を会議開催の主催者に通知することは、「(相違点1)について」において説明したとおり、当業者が適宜実施しうることと認められる。

(相違点3)について
引用例記載の会議スケジューリングシステムにおいて、他のエージェントとのスケジュール情報の交換を、予定表と直接行う様に構成するか、あるいは、判断モジュールを介して行うようにするかは、いずれも機能的には格別な違いはなく、いずれを採用するかは、当業者が適宜実施しうることと認められる。

また、本願請求項1に係る発明の効果についてみても、上記引用例に記載された発明および周知の方法から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

7.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明および周知の方法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-24 
結審通知日 2004-08-31 
審決日 2004-09-17 
出願番号 特願平7-242940
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 山下 弘綱
特許庁審判官 須原 宏光
久保田 健
発明の名称 会議開催及びスケジュール管理支援装置  
代理人 高田 幸彦  

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