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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 B41M 審判 全部申し立て 2項進歩性 B41M 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B41M |
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管理番号 | 1105860 |
異議申立番号 | 異議2003-71716 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-08 |
確定日 | 2004-08-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3363543号「インクジェット記録シート」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3363543号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3363543号に係る発明は、平成5年10月25日に出願され、平成14年10月25日に特許の設定登録がなされた。 本件特許公報は、平成15年1月8日に発行され、本件特許に対して、近藤眞由子より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年4月9日に訂正請求がなされ、その訂正について特許異議申立人に対して審尋がなされ、特許異議申立人から回答書が提出された。 2.訂正の適否 2-1 訂正の内容 訂正を請求する事項は、次のとおりである。 訂正事項a 特許請求の範囲中の、「平均粒子径が0.1μm未満のシリカ微粒子」との記載を、「平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子」と訂正する。 訂正事項b 明細書の段落【0009】の、「平均粒子径が0.1μm未満のシリカ微粒子」との記載を、「平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子」と訂正し、 段落【0011】の、「平均粒子径は、0.1μm未満であることが好ましい。」との記載を、「平均粒子径は、0.08μm以下であることが好ましい。」と訂正し、 段落【0032】の「平均粒子径0.1μm以下のシリカ微粒子」を、「平均粒子径0.08μm以下のシリカ微粒子」と訂正し、 段落【0040】の、「平均粒子径が0.1μm未満のシリカ微粒子」との記載を、「平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子」と訂正する。 2-2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に「0.1μm未満」と限定されていた、シリカ微粒子の平均粒子径の範囲を、特許明細書の実施例に記載されている平均粒子径「0.08μm」、「0.05μm」、「0.02μm」に基いて「0.08μm以下」に限定するものであるから、発明の包含する範囲を縮小するものであり、したがって、この訂正は特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当し、かつ、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 訂正事項bは、いずれも訂正事項aによる特許請求の範囲の減縮に伴なう特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との不一致を、発明の詳細な説明の記載の訂正によって整合を図るものであるから、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。また、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも特許請求の範囲を実質的に拡張し又は変更するものでもない。 2-3 訂正の適否の結論 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立について 3-1 本件発明 上記のとおり訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という)は、上記訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「支持体上にインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、該支持体がポリオレフィン樹脂被覆紙であり、該インク受理層組成物が、主として平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子及び重合度4300以上7800以下のポリビニルアルコールからなり、且つ該シリカ微粒子及び該ポリビニルアルコールの固形分重量比が、20/1〜1/1の範囲であることを特徴とするインクジェット記録シート。」 3-2 特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人(以下、単に「申立人」という)は、刊行物として、 甲第1号証(特開昭61-10483号公報)、 甲第2号証(特開昭59-222381号公報)、 甲第3号証(「Family of SYLOID」FUJI-DAVISON CHEMICAL LTD.富士デヴィゾン化学株式会社発行)、 甲第4号証(「仕上・化繊紙・合成紙・塗工」紙パルプ技術協会、昭和45年9月18日発行、477〜478頁)及び 甲第5号証(「紙と加工の薬品事典」株式会社テックタイムス、平成3年2月25日発行、90、257〜259頁) を提出して、本件発明に係る特許は、次の理由により、拒絶しなければならない特許出願に対して特許されたものであるからその特許を取り消すべき旨主張する。 (1)本件発明は、甲第3号証の記載を参酌すると、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいてこの発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する発明に該当する。 (2)本件特許明細書は、明細書の記載が不備であるから、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を備えない。 3-3 刊行物に記載された事項 甲第1号証には、 (1a)「ポリビニルアルコールのカチオン変性物を含有することを特徴とするインクジェット記録用被記録材。」(特許請求の範囲)、 「本発明の目的は、特にインク受容性および記録画像の鮮明性に優れたインクジェット記録用の被記録材を提供することにある。」(2頁左下欄16〜18行)、 (1b)「PVAのカチオン変性物の重合度は500〜5,000のものが好適であり、800〜3,000のものがより好適である。」(3頁右下欄20行〜4頁左上欄3行)、 (1c)「本発明でインク受容層の支持体として用いる基材としては、透明性、不透明性等従来公知の基材はいずれも使用でき」(4頁右上欄12〜14行) (1d)「実施例3 基材として上質紙を用い、この上質紙上にサンドミルで分散させた下記の組成の塗工液を、乾燥後のインク受容層の厚さが約20μmとなる様にバーコーター法により塗工し、120℃で10分間の熱処理により乾燥させて本発明の不透明性被記録材を得た。 塗工液組成; カチオン変性PVA(PVA C-118 AA クラレ製) 3部 微粉シリカ(サイロイド620 富士デビソン製) 12部 水 85部 このようにして得られた本発明の被記録材は白色の不透明なものであった。この被記録材に対して実施例1と同様なインクジェット記録を実施し、記録特性を実施例1と同様にして評価した。」(8頁左上欄17行〜右上欄13行)、 ことが記載されている。 甲第2号証には、 (2a)「支持体として白色顔料を塗抹したコーテッド紙や不透明合成紙更にバライタ紙及びレジンコーテッド紙等高級印刷用紙や写真用支持体等を用いた場合は、インクジェット画像は不透明な支持体上に光沢のある皮膜として得られ、色再現性、色濃度、解像性のすぐれた強光沢画像を提供する記録用媒体として優れている。」(6頁右下欄5〜11行)、 (2b)「実施例3 (1)接着剤としてポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)10部、無機顔料として合成シリカ(富士デビゾン社製サイロイド620)50部及び水200部よりなる塗布液を作成した。 原紙の裏面に透明ポリエチレン層を設け、表面にチタンを含有したポリエチレン層を設けコロナ処理した写真用支持体上に、上記塗布液を固形分24g/m2となるように塗布、乾熱操して第2層とした。この第2層のインク吸収容量は19ml/m2であった。 (2)接着剤としてPVA(クラレ社製、PVA117)5部、熱可塑性有機高分子微粒子としてL-8801・・・50部及び水95部よりなる塗布液を作成し、上記(1)で作成した第2層の上に、・・・塗布、乾燥して記録媒体とした。」(7頁右下欄4〜8頁左上欄1行) ことが記載されている。 甲第3号証には、 (3a)「サイロイドは、一口で言えばμサイズのシリカゲルです。シリカゲルは珪酸のゲル化により得られる合成シリカですが,その生成条件により数mμから10mμ位の一次粒子まで成長し、以後この一次粒子が化学結合により三次元的につながった非常に多孔性に富んだ網目構造を作ります。」(2頁左欄1〜8行)と記載され、 (3b)4頁の表には、「620」は、平均粒子径(μ)沈降法が、20μであることが記載されている。 甲第4号証には、コーティング用接着剤としてのポリビニルアルコールに関して、 (4a)「PVAの溶液粘度,顔料接着力は,PVAの重合度と鹸化度によってさまざまである。一般には,重合度が高くなると,溶液粘度は高くなり,接着強度も大きくなるが,溶解性は低下してくる。」(477頁22〜24行) (4b)「PVA塗料をコーティングする時,しばしば塗装被紙表面にパターンを発生させる。このパターンは印刷適性を低下させるため,パターンは好ましくない。このパターンの現象は,PVA塗料の高剪断時に於ける流動性に原因があるもので,PVAは顔料粒子に対する吸着と,粒子相互の連結作用が大きいため,流動性に大きな影響をもつものである。パターン発生を最少限にするには重合度が低く,鹸化度の低いPVAを使用・・・するとよい。」(477頁29行〜478頁6行) ことが記載されている。 甲第5号証には、 (5a)コロイドルシリカの項に、「多くは二酸化ケイ素またはその水和物のコロイドであって一定の構造をもったケイ酸ではないとされている。・・・・アニオン性のコロイダルシリカは15%の溶液では微少なコロイド粒子で径は約50Åである。」(90頁右欄6〜18行)、 (5b)PVAの項に、「製紙用については・・・顔料コーティングには完全鹸化および部分鹸化物とも低重合度物が主として使用される。」(258頁左欄1〜4行)ことが記載され、 (5c)表1の「主要ポリビニルアルコールの品質」には、重合度500、1700、2400の完全鹸化PVA、重合度500、1700、2400の部分鹸化のPVAの品質が記載されている。 3-4 判断 3-4-1 特許法第29条第2項違反について 甲第1号証には、「基材にインク受容層を設けたインクジェット記録用被記録材において、該基材が上質紙であり、該インク受容層組成物が、主として合成シリカ微粒子及び重合度500〜5,000のカチオン変性ポリビニルアルコールからなり、且つ該シリカ微粒子及び該ポリビニルアルコールの固形分重量比が、12/3であるインクジェット用被記録材記」の発明が記載されており、本件発明と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「基材」、「インク受容層」、「インクジェット記録用被記録材」は、本件発明の「支持体」、「インク受理層」、「インクジェット記録シート」に相当し、シリカ微粒子及び該ポリビニルアルコールの固形分重量比12/3は、20/1〜1/1の範囲に含まれるから、両者は、 「支持体上にインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、該インク受理層組成物が、主としてシリカ微粒子及びポリビニルアルコールからなり、且つ該シリカ微粒子及び該ポリビニルアルコールの固形分重量比が、20/1〜1/1の範囲であるインクジェット記録シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1: 支持体について、本件発明が、ポリオレフィン樹脂被覆紙であることを特定するのに対して、甲第1号証には、上質紙の例が示され(1d)、支持体の一般的記載として透明樹脂フィルムやそれを不透明化したもの、が例示されているだけで、ポリオレフィン樹脂被覆紙について言及する記載はない点、 相違点2:シリカ微粒子の平均粒子径について、本件発明が、0.08μm以下であることを規定するのに対して、甲第1号証には、微粉シリカとして商品名サイロイド620が記載されている(1d)点、及び、 相違点3:ポリビニルアルコールの重合度について、本件発明が、4300以上7800以下と規定するのに対して、甲第1号証には、500〜5000が好適なこと、より好適には800〜3000の範囲を記載している(1c)点。 まず、相違点2について検討する。 申立人は、甲第3号証の記載に基づき、甲第1号証の実施例3に記載のサイロイド620の平均粒子径を0.1μm未満であると主張するが、甲第3号証の記載によれば、数mμから10mμの一次粒子を経て、それが化学結合により三次元的につながった網目構造になったもの(3a)をサイロイド620としていることは明白であり、甲第3号証には、サイロイド620自体の平均粒子径は20μであることが記載されているから、サイロイド620を形成する中間段階で0.1μm未満の一次粒子径を示すからといって、その粒径のままで、インク受理層形成用塗布液中に存在するものとは認められない。 甲第2号証には、ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に、合成シリカとポリビニルアルコールからなるインク受理層を設けたインクジェット記録シートが記載されているが、使用されているシリカ微粒子は、サイロイド620であり(2b)、甲第2号証にも、インク受理層組成物として、平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子を含有させることは示されていない。 また、甲第4号証には、シリカ微粒子に関する記載はなく、甲第5号証には、アニオン性のコロイダルシリカの粒径について約50Åすなわち0.1μm未満である(5a)ことは記載されているものの、このような粒径のコロイダルシリカをインクジェット記録シートのインク受理層形成に使用することは記載されていない。 次に、相違点3について検討する。 甲第1号証には、インク受理層組成物のポリビニルアルコールの重合度として、500〜5000の範囲を好ましい(1c)と記載しており、本件発明のポリビニルアルコールとは、重合度4300〜5000の範囲において重複する。しかしながら、甲第1号証では、より好適には800〜3000としており(1c)、4300〜5000の範囲とすることについて何の必然性も認められない。また、甲第2ないし5号証には、インク受理層組成物として重合度4300〜7800のポリビニルアルコールを使用することは示されていない。 そして、本件発明は、特定の支持体に、特定範囲の平均粒子径を有するシリカ粒子と特定重合度範囲のポリビニルアルコールとからなるインク受理層を組み合わせることで、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、ドット再現性が良好であるという明細書記載の顕著な効果を奏するものであり、その効果は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された事項から予測することはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、申立人は、甲第4号証にPVAは、重合度が高くなると、接着強度も大きくなること、PVA塗料をコーティングする時、パターンを発生させると、このパターンは印刷適性を低下させることが記載されていることから、重合度を4300以上とすることは、容易に想到しうると主張するが、甲第4号証には、パターン発生を最少限にするには重合度が低くする方がよいことが記載され(4b)ており、重合度を4300以上とすることは示されておらず、甲第4号証の記載から、PVAの重合度4300以上7800以下とすることが当業者が容易に想到しえたとすることはできない。 また、申立人は、審尋に対する回答書において、資料1(特開昭61-19389号公報)、資料2(特開昭60-219084号公報)を提出して、インクジェット記録シートのインク受容層として、ポリビニルアルコールと、平均粒子径3〜200nmのコロイダルシリカを使用することが公知であることを申し立てるが、資料1は、透明なインク受理層を有し、高解像度で色純度の高いOHP用インクジェット記録媒体を実現しようとするものであり、資料2は耐水性・耐光性共に優れたインクジェット記録媒体を提供するために、コロイダルシリカ使用するものであって、本件発明とは別異の目的・効果に対処するものであり、資料1、2にも、ポリオレフィン樹脂被覆紙の支持体に、主として、平均粒子径0.08μm以下のシリカ微粒子と、特定範囲の重合度のポリビニルアルコールとからなるインク受容層を組み合わせることは示されていない。 3-4-2 特許法第36条違反について 申立人が、訂正前の本件特許明細書について記載不備を主張する趣旨は、概ね次のとおりである。 ア.本件明細書の段落【0012】の記載によれば、一般に市販されてるPVAは重合度が3500以下のものとされているから、4300〜7800のものは、その製造方法を明記しなければ、当業者が容易に実施できない。 イ.重合度4300〜7800のPVAを溶解するのに使用した溶剤が何であるのか記載していない。溶剤が水であるとしても、重合度が4300未満のポリビニルアルコールを使用する甲第1、2号証の実施例と比較して、本件明細書に記載された実施例では水の量が少なく、甲第4号証によれば、重合度が上がれば水に溶けにくくなるものであるから、水の量を明記しければ、当業者が容易に実施できない。 ウ.本件明細書には、コロイダルシリカの濃度も商品名も記載されていないので、本件発明を実施できない。 エ.コロイダルシリカ中の水を溶媒と仮定しても、甲第1、2号証の実施例に比較して、本件のものは水の量が少ないから、水がポリビニルアルコールの溶剤として機能していることは疑わしい。 オ.受容層塗布液の溶媒に水を使用することが技術常識と仮定しても、それは重合度3500以下のポリビニルアルコールについてのことであり、4300〜7800のものについては、当てはまらない。そのため、重合度4300〜7800のポリビニルアルコールを用いて、どの様にしてインクジェット記録シートを得ることができるのか、当業者が実施可能な程度に記載されていない。 カ.請求項1においては、シリカ微粒子の平均粒子径を0.1μm未満としているが、実施例で示されている平均粒子径の上限は0.08μmであるから、上限を0.1μm未満とする根拠がない。 以下、検討する。 アについて 市販されているPVAが通常重合度3500以下であるとしても、重合度4300より大きなポリビニルアルコールを使用する技術は、例えば、特開平3-26526号公報の実施例1に重合度12000、特開平3-193919号公報の実施例1に5000、特開平4-227904号公報の実施例4、34000、同公報の比較例4に14000のものが記載されているように本件出願前より知られている。そして、わが国においてポリビニルアルコールを商業的に提供している企業数は、甲第5号証の258頁の図1にも示されているとおり、わずかな数にすぎないから、それら企業に連絡して、高重合度のポリビニルアルコールをサンプル的に生産していること、および入手可能性を確認することは、ごく容易になしうることである。 さらに、高重合度ポリビニルアルコールは、高重合度ポリ酢酸ビニルを合成し、それを加水分解することにより生産されることは、常識にすぎず、高重合度ポリビニルアルコールを当業者が合成することができないというものでもない。 イ、オについて 本件明細書の段落【0034】には「下記配合のインク受理層塗液を乾燥塗工量が25g/m2になるように塗工、乾燥し、インクジェット記録シートを作製した。<インク受理層配合>・・・」と記載されていることからみて、<インク受理層配合>として記載されているものは、塗液中の成分の中で、乾燥により蒸発する溶媒を除いた、インク受理層の固形文組成比を記載したものであることは明らかである。そして、インクジェット記録シートのインク受理層を塗設する際に使用する溶媒として水を使用することは、当業界において常用のことであり、インク受理層塗液中のポリビニルアルコールを10重量%程度の濃度で使用することも、通常行われることである(特許権者が意見書に添付して参考資料として提出した特開平4-16379号公報、特開平4-223190号公報参照)。 甲第4号証には、ポリビニルアルコールの重合度が高くなると溶解度は低下する傾向にあることが記載されているが、重合度4300〜7800のものが水には全く溶解しないとは記載していないし、他に、重合度4300〜7800のポリビニルアルコールが水に対して溶解しないとする証拠は示されていない。一方、本件特許権者は意見書において、重合度4300のものが8%、7800のものが5%程度の水溶液を形成しうるとする点は、より低重合度のものの溶解度から勘案して、必ずしも荒唐無稽なものではないと考えられるから、従来より使用されているポリビニルアルコールを使用するインク受容層の製造例を参考として、水に対する溶解度がより低く測定されるポリビニルアルコールを使用する際に、その溶解に必要な使用量を選択することは、容易になし得ることである。 そして、乾燥塗工量に応じて、塗布液組成に換算して塗工量を調整することは意見書において一つの例を示しているように、当業者が容易になし得ることであり、塗工、乾燥は、通常行われる塗布条件に照らして、当業者が適宜設計し得る程度のことである。 ウ、エについて コロイダルシリカのメーカーにどのような企業があるかは、例えば甲第5号証の90頁右欄にも記載されており、コロイダルシリカは容易に入手できるものである。そして、それらの商品中のシリカ濃度についても、それほど大きな違いがあるものではなく、上記のとおり溶媒として適宜の量の水等を用いることは普通のことであって、コロイダルシリカ中の水の量が特定できないと、インク受理層を、当業者が容易に形成することができないというものでもない。 カについて 上記「2.」に記載したとおり本件明細書は訂正され、シリカ微粒子の平均粒子径の上限が「0.08μm以下」とされたので、この点に関する記載 不備は解消した。 4.結論 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 インクジェット記録シート (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持体上にインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、該支持体がポリオレフィン樹脂被覆紙であり、該インク受理層組成物が、主として平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子及び重合度4300以上7800以下のポリビニルアルコールからなり、且つ該シリカ微粒子及び該ポリビニルアルコールの固形分重量比が、20/1〜1/1の範囲であることを特徴とするインクジェット記録シート。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、インクジェットプリンターにより画像形成されるインクジェット記録シートに関するものである。更に詳しくは、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性を有し、インク吸収性に優れ、且つドット再現性の良好なインクジェット記録シートに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行なうものである。インクジェットプリンターは、高速印字が可能である、騒音が少ない、記録パターンの融通性が大きい、現像-定着が不要である等の特長があり、複雑な画像を正確、且つ迅速に形成することができる点で注目されており、特にコンピューターで作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において、近年急速に普及している。 【0003】 又、インクジェット記録方式では、複数個のインクノズルを使用することにより、多色記録を行うことも容易である。多色インクジェット記録方式では、多色印刷物やカラー写真に比較して、遜色のない画像を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術よりも安価で済むことから広く利用されつつある。 【0004】 最近、特に注目されているインクジェットプリンターの利用分野としては、写真に近い高画質が要求される印刷分野におけるカラープルーフの作成やデザイン分野におけるデザインイメージの出力等がある。更に、コンピューターで作成した文字や画像情報をインクジェットプリンターを用いて透明な記録シートに出力し、これをオーバーヘッドプロジェクターの原稿として会議のプレゼンテーション等に利用することも一般的に行われている。 【0005】 このようなインクジェット記録方式で使用される記録シートに要求される特性としては、インク受理層表面の光沢が高いこと、画像濃度が高いこと、色再現性が良好なこと、インク吸収性が高いこと、ドット再現性が良好であること等が挙げられる。 【0006】 従来公知の技術としては、例えば、特公昭61-60793号公報による記録用紙、特開平3-215081号公報による記録用シート等に示されているように、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナゾル、炭酸カルシウム等の無機顔料と酸化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性バインダーからなるインク受理層を有するインクジェット記録シートが開示されている。しかし、上記公報では、市販の低重合度品からなるポリビニルアルコールを例示している。これらポリビニルアルコールを使用した場合、インクジェット記録シートに要求される特性、即ちインク受理層表面のひび割れや光沢性に劣り、又、ドット再現性やインク吸収性についても悪化傾向にあった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、従来の技術では実現できなかったインク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、且つドット再現性の良好なインクジェット記録シートを提供することである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、支持体が特定の樹脂被覆紙であり、インク受理層組成物が、主として平均粒子径が特定範囲のシリカ微粒子と重合度が特定範囲のポリビニルアルコールで構成されてなるとき、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、且つドット再現性が良好であることを発見し、本発明を完成するに至った。 【0009】 即ち、本発明のインクジェット記録シートは、支持体上にインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、該支持体がポリオレフィン樹脂被覆紙であり、該インク受理層組成物が、主として平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子及び重合度4300以上7800以下のポリビニルアルコールからなることを特徴とするものである。 【0010】 又、本発明のインクジェット記録シートは、インク受理層中のシリカ微粒子及びポリビニルアルコールの固形分重量比が、20/1〜1/1の範囲であることを特徴とするものである。 【0011】 本発明に用いられるシリカ微粒子の平均粒子径は、0.08μm以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径が0.1μm以上の場合には、インク受理層表面の光沢が低下するため好ましくない。このようなシリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ等が挙げられる。 【0012】 本発明に用いられるポリビニルアルコール(以下、PVAと略す。)は、一般に市販されているものとは異なり、特に4300以上7800以下の高重合度であることを特徴とするものである。ここで、PVAの重合度が4300未満の場合には、インク受理層表面がひび割れやすく、光沢が低下するほか、ドット再現性が悪化し、鮮鋭度の高い画像が得られなくなるため好ましくない。一般には、重合度が3500以下のPVAが市販されているが、このような重合度3500以下のPVAでは、本発明の効果を得ることはできない。 【0013】 本発明において、インク受理層には、主として特定の平均粒子径を有するシリカ微粒子及び上記特定のPVAからなるインク受理層組成物に加えて、必要に応じてバインダー、界面活性剤、硬膜剤、防腐剤などの各種添加剤を添加することができる。例えば、バインダーとしては、以下のポリマーが挙げられる。石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体、例えば、フタール酸、マレイン酸、フマール酸等の二塩基酸の無水物と反応したゼラチン等の各種のゼラチン、重合度4000未満のPVA、カルボキシ変性、カチオン変性及び両性のPVA及びそれらの誘導体、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロ-ス、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロ-ス誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジウムハライド、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸メタクリル酸共重合体塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、アルキルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、又はそれらの塩、ポリエチレンイミン等の合成ポリマー、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系重合体ラテックス、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系重合体または共重合体のラテックス、塩化ビニリデン系共重合体ラテックス等あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤及びポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコーポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤等のポリマーを単独あるいは併用して含有せしめることができる。これらのバインダーの使用量は、無機微粒子固形分100重量部に対して、10重量部以下が適当であるが、5重量部以下であることが特に好ましい。 【0014】 界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系のいずれのタイプでもよく、又、低分子のものでも高分子のものでもよい。又、1種もしくは2種以上の界面活性剤を併用して含有せしめてもよい。このような界面活性剤の好ましい具体例としては、長鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、長鎖、好ましくは分枝アルキルスルフォコハク酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、長鎖、好ましくは分枝アルキル基含有フェノールのポリアルキレンオキサイドエーテル、長鎖アルキルアルコールのポリアルキレンオキサイドエーテル等のノニオン系界面活性剤、特公昭47-9303号公報、米国特許第3,589,906号明細書等に記載のフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。界面活性剤の添加量としては、インク受理層の乾燥固形重量に対して0.1〜7重量%が好ましく、0.5〜3重量%が更に好ましい。 【0015】 その他の各種添加剤としては、活性ハロゲン化合物、ビニルスルフォン化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、アクリロイル化合物、イソシアネート化合物等の硬膜剤、特開平1-102551号公報に記載のp-ヒドロキシ安息香酸エステル化合物、ベンズイソチアゾロン化合物、イソチアゾロン化合物等の防腐剤、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、特開昭63-204251号及び特開平1-266537号公報等に記載の着色顔料、着色染料、蛍光染料等、ヒドロキシ-ジ-アルキルフェニル基を2位に有するベンゾトリアゾール化合物等の紫外線吸収剤、特開平1-105245号公報に記載のヒンダードフェノール化合物等の酸化防止剤、澱粉粒、硫酸バリウム、シリカ等の有機又は無機の粒子径0.2〜5μmの微粒子からなる鉛筆加筆剤、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫酸、塩酸、リン酸、クエン酸等のpH調整剤、オクチルアルコール、シリコン系等の消泡剤を適宜組み合わせて含有せしめることができる。 【0016】 本発明において、インク受理層の乾燥塗工量は、1〜50g/m2であることが好ましい。インク受理層の塗工量が1g/m2未満の場合には、インク受理性が劣るため、印字後インクがインク受理層から溢れ、画像の色混じりや擦れによる汚染が発生しやすくなる。又、50g/m2を超える場合には、インクの沈み込みによる画像解像度の低下や、記録シートのカール等の問題が発生する。 【0017】 本発明において、インク受理層塗液の塗工方法としては、ロッド方式、ワイヤーバー方式、スライドホッパー方式、カーテン方式、エクストルージョンダイ方式、エアーナイフ方式、ロール方式、ブレード方式等の一般的な塗工方法が用いられる。 【0018】 本発明において、インク受理層は、単層又は2層以上の多層のいずれであっても良い。多層の場合、各層を互いに異なる組成とすることも同一の組成とすることもできる。多層を形成する場合、2層以上を一度に塗工しても、1層ずつ逐次塗工しても良い。 【0019】 本発明において、インク受理層は、支持体の少なくとも片面に設けられるが、両面印字を行う、或はカールを防止する等の目的で、支持体の両面に設けても良い。 【0020】 本発明において、支持体としては、画質の良さ、光沢、平滑性等の点からポリオレフィン樹脂被覆紙を用いる。支持体の厚さについては特に制限はないが、ハンドリング性とプリンターの通紙適性から、50〜300μm程度のものが好ましい。 【0021】 本発明において、ポリオレフィン樹脂被覆紙用の原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、好ましくは、例えば、写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては、天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には、一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。更に、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面に塗工されていてもよい。 【0022】 又、原紙は、抄造中又は抄造後、カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2であることが好ましい。 【0023】 本発明において、樹脂被覆層は、原紙の片面又は両面に設けることが可能であるが、カール防止の点から原紙の両面に設けることが好ましい。 【0024】 本発明において、支持体として用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、走行する原紙上に、加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する、いわゆる溶融押出法、又は、樹脂エマルジョンを塗工するエマルジョン塗工法により製造される。溶融押出法による時は、樹脂と原紙の接着性を向上させるために、ポリオレフィン樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。エマルジョン塗工法による時は、塗工後に熱カレンダー処理等の平滑化処理を施すことが好ましい。 【0025】 本発明におけるポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂被覆層の構成は、1層或は2層以上の多層のいずれであっても良い。この場合、ポリオレフィン樹脂を単独又は2種以上混合して用いることができる。又、多層の各層を互いに異なる組成とすることも同一の組成とすることもできる。多層からなる樹脂層を形成する方法としては、2層以上を一度に塗工しても1層ずつ逐次塗工しても良い。 【0026】 本発明におけるポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂被覆層の厚みとしては、特に制限はないが、一般に5〜50μmであることが好ましい。 【0027】 本発明におけるポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂被覆層には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、カオリンクレー等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜組み合わせて加えることができる。 【0028】 【0029】 本発明における支持体のインク受理層が塗工される表面は、その用途に応じて、光沢面、マット面等を有するが、特に光沢面が好ましく用いられる。 【0030】 本発明における支持体には、インク受理層を塗工する前に、インク受理層塗液の塗工性を向上させるためにサブコート層を設けることができる。このようなサブコート層には、各種水溶性高分子、ラテックス、硬膜剤、界面活性剤等を適宜組み合わせて添加せしめることができる。 【0031】 本発明における支持体には、帯電防止性、搬送性、カール防止性等を付与するために、バックコート層を塗設することができる。このようなバックコート層には、無機又は有機の帯電防止剤、水溶性バインダー、合成樹脂ラテックス、硬膜剤、顔料、界面活性剤等を適宜組み合わせて添加せしめることができる。 【0032】 【作用】 本発明において、支持体がポリオレフィン樹脂被覆紙であり、インク受理層に平均粒子径0.08μm以下のシリカ微粒子を添加することにより、光沢が向上し、重合度4300以上7800以下のPVAを添加することにより、ひび割れを抑制できるため、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、且つドット再現性の良好なインクジェット記録シートが得られる。 【0033】 【実施例】 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載されている部及び%は全て重量換算値である。 【0034】 実施例1〜6及び比較例1〜7 LBKPからなる坪量100g/m2の原紙の表面に、低密度ポリエチレン85重量%と二酸化チタン15重量%からなる樹脂組成物を16g/m2塗工し、裏面に、高密度ポリエチレン60重量%と低密度ポリエチレン40重量%からなる樹脂組成物を16g/m2塗工して、ポリオレフィン樹脂被覆紙を作製した。次いで、樹脂被覆紙の表面をコロナ処理した後、下記配合のインク受理層塗液を乾燥塗工量が25g/m2になるように塗工、乾燥し、インクジェット記録シートを作製した。 <インク受理層配合> シリカ微粒子(表1参照) 100部 PVA(表1参照) (表1参照) 界面活性剤(日本油脂製、ノニオンNS215) 2部 【0035】 以下、表1にインク受理層配合の詳細な説明を示す。 【0036】 【表1】 【0037】 上記のようにして得られたインクジェット記録シートについて、Hewlett Packard製Desk Writer 550Cプリンターを用いて印画し、印画画像について下記の評価を行った。 [光沢]インクジェット記録シートの画像部および非画像部の光沢を目視で判定した。 [ひび割れ]インクジェット記録シートの表面のひび割れを目視で判定した。 [ドット再現性]インクジェット記録画像を顕微鏡で観察し、ドットの径と形状を目視で判定し、ドット径が大きすぎないか、形状が真円に近いかを判定した。 [インク吸収性]印画後1分後に画像部を指でこすり、インクの吸収性について評価を行った。 上記の品質試験の評価基準は、以下の通りである。 ◎:問題がなく、優れている。 ○:良好である。 △:実用限界内である。 ×:劣る。 【0038】 以上の評価結果をまとめて表2に示す。 【0039】 【表2】 【0040】 表2の結果から明かなように、実施例1〜6のインクジェット記録シートは、支持体がポリオレフィン樹脂被覆紙であり、インク受理層組成物が、主として平均粒子径が0.08μm以下のシリカ微粒子と重合度4300以上7800以下のPVAからなり、シリカ微粒子とPVAの固形分重量比が20/1〜1/1の範囲であるので、ひび割れがなく、光沢があり、ドット再現性も良好である。これに対し、比較例1〜2のインクジェット記録シートは、シリカ微粒子の平均粒子径が0.1μm以上であるため、光沢がなくなった。比較例3〜5のインクジェット記録シートは、PVAの重合度が4300未満であるため、ひび割れが多くなり、光沢が低下し、ドット再現性も悪化した。比較例6のインクジェット記録シートは、シリカ微粒子とPVAの固形分重量比が20/1より大きいため、ひび割れが多くなり、光沢が低下し、ドット再現性も悪化した。比較例7のインクジェット記録シートは、シリカ微粒子とPVAの固形分重量比が1/1より小さいため、インク吸収性が劣っていた。 【0041】 【発明の効果】 本発明によれば、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性を有し、インク吸収性に優れ、且つドット再現性の良好なインクジェット記録シートが得られる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-07-28 |
出願番号 | 特願平5-266327 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B41M)
P 1 651・ 534- YA (B41M) P 1 651・ 531- YA (B41M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 野田 定文 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
秋月 美紀子 伏見 隆夫 |
登録日 | 2002-10-25 |
登録番号 | 特許第3363543号(P3363543) |
権利者 | 三菱製紙株式会社 |
発明の名称 | インクジェット記録シート |