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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G01C
審判 全部申し立て 特174条1項  G01C
管理番号 1105879
異議申立番号 異議2003-72918  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2003-07-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-03 
確定日 2004-09-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3411566号「地図表示方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3411566号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3411566号の請求項1ないし3に係る発明は、平成6年11月14日に出願された特願平6-278909号の一部を平成14年11月8日に新たな特許出願としたものであって、平成15年3月20日に特許の設定登録がなされ、その後、大西蓉子により特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年8月5日に訂正請求がなされたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正請求は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2の記載である、
「【請求項2】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることを特徴とする地図表示方法。」を、
「【請求項2】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるため、前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることを特徴とする地図表示方法。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の記載である、
「【請求項3】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることを特徴とする地図表示方法。」を、
「【請求項3】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させるため、前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることを特徴とする地図表示方法。」
と訂正する。

(3)訂正事項3
発明の詳細な説明の段落【0008】の記載である、
「【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、地図表示の対象となる道路地図データに基づき、表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させるものである。
請求項2の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるものである。」を、
「【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、地図表示の対象となる道路地図データに基づき、表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させるものである。
請求項2の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるため、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、領域ごとに見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるものである。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の段落【0009】の記載である、
「【0009】
請求項3の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど文字あるいは記号を大きく表示させるものである。」を、
「【0009】
請求項3の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど文字あるいは記号を大きく表示させるため、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、領域ごとに見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、領域が該表示画面の下辺側に近いほど文字あるいは記号を大きく表示させるものである。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項2において、「前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させる」ことをさらに具体化するために、「前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させる」との限定を加えるもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、限定した事項は、本件特許明細書の段落【0024】、【0029】、図11の記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項3において、「前記表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させる」ことをさらに具体化するために、「前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させる」との限定を加えるもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、限定した事項は、本件特許明細書の段落【0024】、【0039】、図11の記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3及び4
訂正事項3及び4は、上記の各訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについて
1.異議申立ての理由及び取消理由の概要
(1)異議申立人の申立の理由は、次のとおりである。
なお、異議申立人は、申立の理由として、特許法第36条及び第17条の2について平成6年改正後の特許法を引用しているが、本件特許に係る出願が適用される平成6年改正前の特許法の条項に代えて記載する。
ア.請求項1に係る特許について
(ア)請求項1に記載された「地名」及び「表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させる」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないため、本件特許は、平成6年改正前の特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たさない特許出願についてなされたものである。

(イ)請求項1に記載された「表示画面の上方」「下方」は、不明確であるため、本件特許は、平成6年改正前の特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たさない特許出願についてなされたものである。

(ウ)平成14年11月8日付けの手続補正により請求項1に加えられた「地名」及び「表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させる」ことは、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書」又は「当初図面」という。)に記載された事項の範囲内でないため、本件特許は、平成6年改正前の特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてなされたものである。

イ.請求項2に係る特許について
(ア)請求項2に記載された「目印の大きさを変えて表示させる」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないため、本件特許は、平成6年改正前の特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たさない特許出願についてなされたものである。

(イ)平成14年11月8日付けの手続補正により請求項2に加えられた「目印の大きさを変えて表示させる」ことは、当初明細書又は当初図面に記載された事項の範囲内でないため、本件特許は、平成6年改正前の特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてなされたものである。

(ウ)請求項2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であってその出願後に出願公開公報の発行された特願平6-250530号の願書に最初に添付した明細書及び図面(甲第1号証。以下「先願明細書」及び「先願図面」という。)に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。

(エ)請求項2に係る発明は、特開平2-244188号公報(甲第2号証)、実願昭61-108675号(実開昭63-16085号)のマイクロフィルム(甲第5号証)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

ウ.請求項3に係る特許について
(ア)請求項3に係る発明は、先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。

(イ)請求項3に係る発明は、特開平2-244188号公報(甲第2号証)、実願昭61-108675号(実開昭63-16085号)のマイクロフィルム(甲第5号証)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)当審において通知した取消理由は、請求項2及び請求項3に係る発明は、先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないというものである。

2.本件発明及び明細書
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり、また、本件特許に係る明細書は、本件訂正明細書のとおりである。

3.異議申立ての理由及び取消理由についての判断
(1)請求項1に係る特許について
ア.異議申立人は、請求項1に記載された「地名」及び「表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させる」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないと主張している。
しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】に同様のことが、一応記載されており、また、実施例の記載における「名称データ」にその代表的なものとして「地名」が含まれることは、本件特許に係る発明のような「地図表示方法」における技術においては自明のことであり、さらに、段落【0015】には、全てのデータを表示すると、上辺側はデータ量が多すぎて表示できないために、道路データ、名称データ、背景データの種別に優先順位を付けて、上辺側には優先順位の高いデータのみを表示し、下辺側には優先順位の低いデータも含めて表示することが記載されており、名称データが道路データに対して優先順位が低いことも自明であることから、「地名」及び「表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させる」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないということはできない。

イ.異議申立人は、請求項1に記載された「表示画面の上方」「下方」は、不明確であると主張している。
しかしながら、請求項1に係る発明においては、表示画面の上方と下方とをどこで区画するのかを特定しなければ、発明の構成が不明であるというものではなく、全てのデータを表示すると、上辺側はデータ量が多すぎて表示できないために、上辺側には優先順位の高いものを表示するという趣旨からして、画面の大きさや表示するデータ量等から、適宜に境界を定めればよいことは当然である。

ウ.異議申立人は、平成14年11月8日付けの手続補正により請求項1に加えられた「地名」及び「表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させる」ことは、当初明細書又は当初図面に記載された事項の範囲内でないとの主張をしている。
しかしながら、当初明細書の段落【0015】には、全てのデータを表示すると、上辺側はデータ量が多すぎて表示できないために、道路データ、名称データ、背景データの種別に優先順位を付けて、上辺側には優先順位の高いデータのみを表示し、下辺側には優先順位の低いデータも含めて表示することが記載されており、地名データが名称データの代表的なものであること、名称データが道路データに対して優先順位が低いことは自明であることから、これらの事項が当初明細書又は当初図面に記載された事項の範囲内でないということはできない。

(2)請求項2に係る特許について
ア.異議申立人は、請求項2に記載された「目印の大きさを変えて表示させる」ことは、発明の詳細な説明に記載されていないとの主張をしている。
しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】に同様のことが、一応記載されており、また、実施例の記載においては、旗マークの大きさを変えて表示することが段落【0029】【0030】【0035】に記載されており、この「旗マーク」が目印であることも自明のことであるから、目印の大きさを変えて表示させることが、発明の詳細な説明に記載されていないということはできない。

イ.異議申立人は、平成14年11月8日付けの手続補正により請求項2に加えられた「目印の大きさを変えて表示させる」ことは、当初明細書又は当初図面に記載された事項の範囲内でないとの主張をしている。
しかしながら、当初明細書の段落【0029】【0030】【0035】に、旗マークの大きさを変えて表示することが記載されており、この「旗マーク」が目印であることは自明であることから、目印の大きさを変えて表示することが、当初明細書又は当初図面に記載された事項の範囲内でないということはできない。

ウ.異議申立人は、請求項2に係る発明は、先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であると主張している。
ところで、本件発明2に係る請求項2の記載は、上記のとおり訂正され、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることが、発明の構成要件とされている。
先願明細書には、先願図面の図9に示す画像が鳥瞰図であることが記載され、さらに、図9の画像では目印が上方で小さく下方で大きくされたものが記載されている。
しかし、先願明細書及び先願図面には、本件発明2のように、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることは、記載されておらず、また、この事項が単なる設計事項とも認められない。
したがって、本件発明2が先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であるとは認めることができない。

エ.異議申立人は、請求項2に係る発明は、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとの主張をしている。
甲第2号証に、見下ろし地図に目印を表示させることが記載されているにしても、表示画面上の表示位置に応じて目印の大きさを変えて表示させる点について異議申立人が引用する甲第5号証に記載されたものは、ゲームにおける画面の表示であってそこに現わされたポールは背景の一部に過ぎないもので、本件発明2のように、地図表示方法において、目印の大きさを変えて表示するものとは基本的に異なるものである。
さらに、上記のとおり、本件発明2では、甲第2号証、甲第5号証に記載も示唆もない、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることも発明の構成要件とされている。
したがって、本件発明2が、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)請求項3に係る特許について
ア.異議申立人は、請求項3に係る発明は、先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であるとの主張をしている。
ところで、本件発明3に係る請求項3の記載は、上記のとおり訂正され、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることが、発明の構成要件とされている。
先願明細書には、先願図面の図9に示す画像が鳥瞰図であることが記載され、さらに、図9の画像では文字及び記号が上方で小さく下方で大きくされたものが記載されている。
しかし、先願明細書及び先願図面には、本件発明3のように、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることは、記載されておらず、また、この事項が単なる設計事項とも認められない。
したがって、本件発明3が先願明細書及び先願図面に記載された発明と実質的に同一であるとは認めることができない。
イ.異議申立人は、請求項3に係る発明は、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとの主張をしている。
甲第2号証に、見下ろし地図に記号を表示させることが記載されているにしても、表示画面上の表示位置に応じて記号の大きさを変えて表示させる点について異議申立人が引用する甲第5号証に記載されたものは、ゲームにおける画面の表示であってそこに現されたポールは背景の一部に過ぎないもので、本件発明3のように、地図表示方法において、記号の大きさを変えて表示するものとは基本的に異なるものである。
さらに、上記のとおり、本件発明3では、甲第2号証、甲第5号証に記載も示唆もない、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることも発明の構成要件とされている。
したがって、本件発明3が、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
地図表示方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
地図表示の対象となる道路地図データに基づき、前記表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させることを特徴とする地図表示方法。
【請求項2】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるため、前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させることを特徴とする地図表示方法。
【請求項3】
上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法であって、
車両の現在地を検出し、
車両の進行方向を検出し、
前記表示画面に自車位置を示した前記見下ろし地図であって、前記現在地周辺の上空から前記進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、
前記表示画面上の表示位置に応じて、前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させるため、前記表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、前記領域ごとに前記見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、前記領域が該表示画面の下辺側に近いほど前記文字あるいは記号を大きく表示させることを特徴とする地図表示方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、道路地図を表示装置に表示することができる地図表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の現在地周辺の道路地図を表示する車両用地図表示装置が提案されている。この種の従来の車両用地図表示装置では、運転者が出発地と目的地を入力すると、出発地および目的地周辺の道路地図データを地図記憶メモリから読み出し、読み出した道路地図データの一部を車両の走行に応じて表示装置に表示する。
【0003】
例えば特公平6-13973号公報には、運転者が出発地と目的地を入力すると、出発地から目的地までの距離および方向を演算し、図14に示すように、出発地と目的地が同時に表示装置に表示されるように地図縮尺を選択するようにした装置が開示されている。また、この公報には、出発地と目的地との距離が離れている場合には、車両が目的地に近づくまでは現在地周辺の道路地図を表示し、車両が目的地に近づくと現在地と目的地の双方を含む道路地図を表示する例も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された装置は、出発地と目的地との距離によって自動的に地図縮尺を選択するため、例えば運転者が目的地までの概略経路を知りたいときに目的地が表示されず、逆に、現在地周辺の道路地図を詳細に確認したいときに広範囲の道路地図が表示される場合がある。
このように、従来の車両用地図表示装置は、現在地周辺の道路地図を拡大表示し、同時に、目的地方向の広範囲の道路地図を表示することはできなかった。
【0005】
上記の問題を解決するための一つの手法として、従来からフライトシュミレータ等で用いられている鳥瞰図を利用し、道路地図を鳥瞰図表示することが考えられる。鳥瞰図とは、道路地図等の平面の上空に視点を置き、この視点から斜めに平面を見下ろした様子を表示装置に表示するものである。道路地図を鳥瞰図表示すると、現在地周辺を拡大して表示でき、かつ同時に、現在地から目的地までの広範囲の道路地図を表示できる。
【0006】
ところが、鳥瞰図表示では、視点の設定位置や視点からの見下ろし角度等によって表示装置に表示される道路地図範囲が大きく変化するため、視点の設定位置等が悪いと、運転者が進行しようとする方向の道路地図が表示装置に十分に表示されないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、道路地図の鳥瞰図を表示する際、車両進行方向を常に把握できるようにした地図表示方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、地図表示の対象となる道路地図データに基づき、表示画面の上方に道路を、下方に道路および地名を表示させるものである。
請求項2の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるため、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、領域ごとに見下ろし地図に表示される目印の大きさを変えて表示させるものである。
【0009】
請求項3の発明は、上方から斜めに見下ろした見下ろし地図を表示画面に表示させる地図表示方法に適用され、車両の現在地を検出し、車両の進行方向を検出し、表示画面に自車位置を示した見下ろし地図であって、現在地周辺の上空から進行方向を見下ろした見下ろし地図を表示させ、表示画面上の表示位置に応じて、見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、表示画面上の表示位置が該表示画面の下辺側に近いほど文字あるいは記号を大きく表示させるため、表示画面の表示範囲を表示画面上下方向に所定の数の複数の領域に分割し、領域ごとに見下ろし地図に表示される文字あるいは記号の大きさを変えて表示させ、領域が該表示画面の下辺側に近いほど文字あるいは記号を大きく表示させるものである。
【0010】
なお、上記の通り本発明の構成を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0011】
【実施例】
図1は本発明による車両用地図表示装置の一実施例のブロック図である。図1において、1は車両の現在地を検出する現在地検出装置であり、例えば車両の進行方位を検出する方位センサや車速を検出する車速センサやGPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ等から成る。2は道路地図データを格納する地図記憶メモリであり、例えばCD-ROMおよびその読み出し装置から成る。地図記憶メモリ2に格納される道路地図データは、主に道路データ、名称データおよび背景データ等から成り、それぞれ所定のデータ構造を有している。
【0012】
図2は地図記憶メモリ2に格納される道路データのデータ構造を示す図、図3は道路データの一例を示す図である。
図2(a)に示すように、道路データは「点数」、「データ種別」および「X1,Y1…」の3つのデータ領域に分かれている。「データ種別」領域には、図2(b)に示すように、各道路の道路種別を示すコードが格納され、「X1,Y1…」領域には各道路の座標が格納される。例えば図3の道路データの場合、図示された6点分の座標が格納される。「X1,Y1…」領域に格納される座標数は交差点数やカーブ数等によって変化し、座標数の総計が「点数」に格納される。
【0013】
図1に戻って、3は装置全体を制御する制御回路であり、マイクロプロセッサおよびその周辺回路から成る。4は車両の目的地等を入力する入力装置、5は制御回路3によって作成された画像データを格納する画像メモリであり、画像メモリ5に格納された内容は適宜読み出されて表示装置6に表示される。
【0014】
図4は表示装置6に表示される鳥瞰図の概要を説明する図である。図4は道路地図をXY平面とし、XY平面に直交するZ軸上に視点Mを置き、視点Mからの見下ろし角度をφとした例を示す。図示の長方形abcdは図5に拡大表示するように表示装置6の表示範囲を示し、図4の台形ABCDは表示装置6に表示される道路地図範囲を示す。
図4に示すように、長方形abcdの面積よりも台形ABCDの方がはるかに面積が大きく、鳥瞰図表示によって広範囲の道路地図を表示できることがわかる。また、表示装置6の下辺ab側の道路地図は上辺cd側よりも大きい縮尺率で表示されるため、車両の現在地を下辺ab側に表示すれば、現在地周辺をより拡大して表示できる。したがって、運転者は現在地周辺の道路地図情報を詳細に把握できるとともに、目的地方向の広範囲の道路地図も同時に把握できる。
【0015】
道路地図を鳥瞰図表示する場合、鳥瞰図表示形式の道路地図データを予め地図記憶メモリ2に格納することも考えられるが、データ量が膨大になってしまう。そこで、本実施例では、地図記憶メモリ2に格納されている通常の道路地図データをソフトウェア処理によって鳥瞰図データに変換して表示装置6に表示する。
その変換処理の際、道路地図データ中のすべてのデータを鳥瞰図データに変換すると、縮尺率の小さい表示装置6の上辺側はデータ量が多すぎて表示しきれなくなる。そこで、本実施例では、道路地図データに含まれる道路データ、名称データおよび背景データを各データ種別によって優先順位をつけて分類し、表示画面の上辺側には優先順位の高いデータのみを表示し、下辺側には優先順位の低いデータも含めて表示するようにしている。
【0016】
例えば道路データに関しては、地図記憶メモリ2に格納されている「データ属性」領域の道路種別に基づいて優先順位をつける。そして、表示装置6の上辺側には優先順位の高い高速道路、有料道路、国道および都道府県道のみを表示し、下辺側には上記の道路に加えて一般地方道も表示する。
【0017】
図6,7は制御回路3のメイン処理を示すフローチャートであり、以下このフローチャートに基づいて本実施例の動作を説明する。なお、制御回路3は、キーがイグニッションオン位置に操作されたときに図6,7の処理を開始する。
図6のステップS1では、運転者が入力装置4により設定した出発地と目的地を読み込み、出発地から目的地までの推奨経路を演算する。なお、出発地に関しては、後述するステップS2と同様に、現在地検出装置1を用いて自動的に検出してもよい。ステップS1における推奨経路の演算は周知のダイクストラ法等を用いて行う。
【0018】
車両が走行を開始するとステップS2に進み、現在地検出装置1を用いて車両の現在地を検出する。例えば、現在地検出装置1内部にGPSセンサが備わっている場合には、GPSセンサを用いたいわゆるGPS航法によって現在地を検出し、GPSセンサの代わりに車速センサおよび方位センサが備わっている場合には、車両の走行軌跡を求めるいわゆる自立航法によって現在地を検出する。あるいは、GPS航法と自立航法を組み合わせて現在地を検出してもよい。
【0019】
ステップS3では、鳥瞰図表示をする際の表示方向角度を演算する。
図8は表示方向角度αの演算方法を説明する図である。図示のXY軸は道路地図平面を示し、原点Oは車両の出発地を、座標G(X0,Y0)は車両の現在地を、座標P1(X1,Y1)は目的地をそれぞれ示す。
図示のように、表示方向角度αは現在地Gおよび目的地P1を結ぶ線分(図示の点線)と、X軸との間の角度であり、(1)式で示される。
【数1】
tanα={(Y1-Y0)/(X1-X0)} …(1)
上述のステップS3では、(1)式に基づいて表示方向角度αを求める。
ステップS4では、ステップS1で演算した推奨経路、ステップS2で検出した現在地およびステップS3で演算した表示方向角度αに基づいて、現在地周辺の道路地図データを地図記憶メモリ2から読み込む。例えば、現在地を含む数10km四方の道路地図データを読み込む。
【0020】
ステップS5では、ステップS4で読み込んだ道路地図データの中から、鳥瞰図を表示するのに用いるデータを選択する。
図9は、ステップS5の処理の詳細を示すフローチャートである。図示のステップS101では、図6のステップS4で読み込んだ道路地図データのうち、以下に示すステップS102以降の処理を行っていないデータを選択する。ステップS102では、ステップS101で選択したデータのデータ種別が表示装置6に表示すべきものであるか否かを判定する。例えば、ステップS101で選択したデータが道路データの場合には、その道路データの道路種別の優先順位が国道より上位か否かを判定する。このステップS102の処理により、表示装置6に表示する道路地図データの量を削減できる。
【0021】
ステップS102の判定が肯定されるとステップS103に進み、ステップS101で選択したデータが表示装置6に表示される範囲内にあるか否かを判定する。すなわち、ステップS101で選択したデータが図4の台形領域ABCDの範囲内にあるか否かを判定する。
ステップS103の判定が肯定されるとステップS104に進み、ステップS101で選択したデータを鳥瞰図に変換するためのデータとして選択する。
ステップS104の処理が終了した場合、またはステップS102の判定が否定された場合、またはステップS103の判定が否定された場合はいずれもステップS105に進み、図6のステップS4で地図記憶メモリ2から読み込んだデータのすべてについて、ステップS101〜S104までの処理を行ったか否かを判定する。判定が肯定されるとリターンし、判定が否定されるとステップS101に戻る。
【0022】
このように、図9の処理では、地図記憶メモリ2から読み込んだ道路地図データのうち、データ種別が所定の条件を満たすデータのみを抽出し、その抽出したデータの中からさらに、鳥瞰図表示のためのデータを選択する。
【0023】
図6に戻って、ステップS6では、ステップS5で選択した道路地図データを鳥瞰図データに変換する。具体的には、図4の台形領域ABCD内の道路地図データのすべてを表示装置6に表示できるように、視点Mの高さZ、視点Mからの見下ろし角度φおよび視点からの見開き角度θを定めた後、これらパラメータを用いて図4の長方形領域abcdに投影される鳥瞰図データを作成する。その際、見下ろし角度φは、表示装置6の表示画面の上辺および下辺の各中点を結ぶ中心線付近が目的地方向となるように設定する。
【0024】
ステップS7では、ステップS5で変換した鳥瞰図データを、表示装置6に表示するための最終的な地図画像データに変換する。
図10はステップS7の処理の詳細を示すフローチャートである。
図10のステップS201では、図6のステップS6の処理によって得られる鳥瞰図データの中から、まだ地図画像データに変換していないデータを選択する。ステップS202では、表示装置6の表示範囲を複数の領域に分割し、分割した領域数を変数Nに代入する。
【0025】
図11に示すように、本実施例では、表示装置6の表示範囲を4つの領域に分割している。図11では、表示装置6の表示画面のX軸方向を500ドット、Y軸方向を400ドットとし、画面の左下隅を座標の原点とした例を示している。また図11では、4つの領域のうち、第1領域をY軸方向の座標が0〜200ドットの範囲、第2領域をY軸方向の座標が200〜300ドットの範囲、第3領域をY軸方向の座標が300〜350ドットの範囲、第4領域をY軸方向の座標が350〜400ドットの範囲としている。
【0026】
ステップS203では、ステップS201で選択したデータの表示位置が第N領域に属するか否かを判定する。判定が否定されるとステップS204に進み、変数Nから1減算した値を新たなNとしてステップS203に戻る。
ステップS203の判定が肯定されるとステップS205に進み、変数Nの値に基づいて鳥瞰図データを地図画像データに変換する。例えば、第1領域の道路データは4ポイントの線幅とし、第2領域の道路データは2ポイント、第3領域の道路データは1ポイントの線幅とする。また、第4領域には空を示す画像を表示するため、第4領域に含まれる道路地図データはすべて削除し、代わりに青系統の画像データを作成する。なお、第4領域については、昼と夜によって表示色を変えてもよい。
ステップS206では、鳥瞰図データのすべてを地図画像データに変換したか否かを判定する。判定が否定されるとステップS201に戻り、判定が肯定されるとリターンする。
【0027】
このように、図10の処理では、表示装置6の表示範囲を複数の領域に分割し、各領域ごとに鳥瞰図データの表示形式を変更するため、より立体的な鳥瞰図を表示でき、距離感がつかみやすくなる。特に、表示画面の上辺に最も近接した第4領域には道路地図を表示せずに空を示す画像を表示するため、鳥瞰図により一層の奥行きを持たせることができる。
【0028】
図6に戻って、ステップS8では、車両の現在地および目的地を示すマークを表示装置6に表示するためのデータ(以下、車両情報画像データと呼ぶ)を作成する。
図12はステップS8の処理の詳細を示すフローチャートである。図12のステップS301では、車両の現在地Gに対応する表示位置に、図11に示す三角形状のマークを表示すべく、車両位置マークデータを作成する。ステップS302では、車両の現在地Gと目的地Pまでの距離GPを求める。ステップS303では、距離GPが所定距離L以下か否かを判定する。所定距離Lは、図8に示すように、現在地Gおよび目的地Pを結ぶ線分と、道路地図の表示範囲ABCDとの交点をFとしたとき、現在地Gから交点Fまでの距離を示す。このように、ステップS303では、目的地Pが表示装置6に表示される範囲内にあるか否かを判定する。
【0029】
ステップS303の判定が肯定されるとステップS304に進み、目的地Pの表示位置に図11に示す旗マークを表示すべく、目的地マークデータを作成してリターンする。ステップS303の判定が否定されるとステップS305に進み、交点Fに図に示す旗マークを表示すべく、目的地マークデータを作成してリターンする。
また、上記ステップS304およびS305では、目的地の表示位置によって旗マークの大きさを変更する。例えば、目的地が図11の第1領域内にある場合には旗マークを最も大きくし、以下、第2領域にある場合が次に大きく、第3領域にある場合は最も小さくする。図11では、第2領域および第3領域に目的地がある場合の各旗マークの表示例を示している。
なお、第4領域に旗マークが表示されないように、前述した所定距離Lを現在地Gから交点Fまでの距離よりも少し短くしてもよい。これにより、旗マークは第4領域に表示されず、道路地図が表示される第1〜3領域のいずれかに表示されるようになり、画面上の地図表示を見易くできる。
【0030】
このように、図12の処理では、目的地が表示装置6に表示される範囲内にある場合には、目的地に対応する表示位置に旗マークを表示し、目的地が表示範囲内にない場合には、目的地方向にあり、かつ表示画面上で目的地に最も近い表示位置に旗マークを表示する。これにより、現在地から目的地までの距離にかかわらず常に旗マークを表示でき、運転者は常に目的地方向を把握できるようになる。また、表示画面内の表示位置によって旗マークの大きさを変更するようにしたため、旗マークが他の地図情報の表示の妨げになることはない。
【0031】
図6に戻って、ステップS9では、ステップS7で変換した地図画像データと、ステップS8で作成した車両情報画像データとを画像メモリ5に格納する。図7のステップS10では、画像メモリ5に格納されているデータに基づいて表示装置6への描画を行う。これにより、表示装置6には、図11に示すような鳥瞰図が表示される。図11の斜線で示す道路は、図6のステップS1で演算された推奨経路を示す。
【0032】
図7に戻って、ステップS11では、ステップS2と同様に車両の現在地を検出する。ステップS12では、車両が所定距離以上走行したか否かを判定する。判定が肯定されるとステップS3に戻り、判定が否定されるとステップS13に進む。ステップS13では、表示装置6上の地図画像データはそのままにし、車両の現在地を示すマークの表示位置だけを、車両の走行距離に応じて変更する。そして、ステップS11に戻る。このように、ステップS12,S13では、車両が所定距離走行するまでは、道路地図を書き換えずに車両マークだけを書き換えるようにしたため、制御回路3の負担を軽減できる。
【0033】
以上に説明した図6の処理をまとめると、車両が走行を開始すると、制御回路3は車両の現在地を検出し、現在地と目的地との位置関係から鳥瞰図表示の際の表示方向角度を求める。次に、現在地、目的地および表示方向角度に基づいて地図記憶メモリ2から道路地図データを読み込み、読み込んだ道路地図データの中から、データ種別が所定の条件を満たすデータを抽出し、抽出したデータを鳥瞰図データに変換する。
【0034】
次に、表示装置6の表示画面を複数の領域に分割し、各領域ごとに鳥瞰図データの加工を行って地図画像データに変換する。例えば、表示画面の下辺側の領域内の道路線幅は太くし、上辺側の領域の道路線幅は細くする。
次に、車両の現在地および目的地を示すマークを表示するための車両情報画像データを作成する。その際、目的地が表示範囲内にある場合には目的地に対応する表示位置にマークを表示すべく、マークデータを作成し、目的地が表示範囲内にない場合には目的地方向で、かつ最も目的地に近い表示位置にマークを表示すべく、マークデータを作成する。
地図画像データおよび車両情報画像データの作成が終了すると、それらデータを表示装置6に表示した後、再度車両の現在地を検出する。車両が所定距離以上走行していない場合は車両位置マークの表示位置だけを変更し、所定距離以上走行した場合は地図画像データの書き換えを行う。
【0035】
このように、目的地が画面上に表示されないような遠くにあっても、目的地方向にある画面上の所定箇所に目的地を示す旗マークを表示するため、運転者は常に目的地方向を把握でき、車両の経路離脱を起こしにくくなる。
また、目的地を示す旗マークの大きさを、旗マークの表示位置によって変更するようにしたため、旗マークによって他の地図情報の表示が邪魔されることはない。さらに、表示装置6の表示範囲を複数の領域に分割し、各領域ごとに別々に、表示するデータ種別を選択するようにしたため、現在地周辺は詳細な地図情報を表示でき、かつ目的地方向は重要な地図情報だけを表示でき、表示装置6の地図表示を見易くできる。また、各領域ごとに道路線幅を変えるため、立体感のある鳥瞰図を表示できる。
【0036】
図6のステップS5では、図4の台形領域ABCDの範囲内のデータを鳥瞰図データとして抽出しているが、処理速度の向上を図るため、図13(a)のように台形領域ABCDを含む正方形領域(図示のハッチング領域)のデータを鳥瞰図データとして抽出し、抽出した正方形領域の全範囲を座標変換してもよい。
図13(b)は、図13(a)の正方形領域を座標変換した例を示す。図13(b)の中央部の長方形領域abcdは、実際に表示装置6に表示される範囲を示す。このように、表示装置6の表示範囲よりも広い範囲の道路地図データを鳥瞰図データに変換すると、表示後に車両が移動した場合に、図13(a)に示す正方形の範囲内であれば、図6のステップS6の処理を行わずに、図13(b)の長方形領域をずらして表示するだけで済むため、鳥瞰図の書き換え速度が向上する。
【0037】
上記実施例では、鳥瞰図表示の際の視点の高さ、見下ろし角度および見開き角度等のパラメータを、目的地方向が表示されるように設定する例を説明したが、これら条件を任意に変更できるようにしてもよい。その場合には、例えば入力装置4によって運転者が設定した視点の高さ等のデータに基づいて、図4の台形領域ABCDの範囲を定めればよい。視点を高くするほど広範囲の道路地図を表示でき、また、見下ろし角度を大きくするほど通常の平面地図に近づくため、これらパラメータを任意に変更することで、道路地図上の任意の範囲を鳥瞰図表示でき、さらに鳥瞰図表示の縮尺率も任意に変更でき、より融通性のある鳥瞰図表示が可能となる。
また、現在地周辺の狭い範囲の道路地図を鳥瞰図表示するモードと、広範囲の道路地図を鳥瞰図表示するモードとを備え、そのいずれかのモードを選択スイッチ等で任意に選択できるようにしてもよい。
【0038】
上記実施例では、表示装置6に常に鳥瞰図を表示する例を説明したが、鳥瞰図を表示するか、通常の平面地図を表示するかを、選択スイッチ等によって任意に選択できるようにしてもよい。例えば地図上の2点間の距離を測定するためには、平面地図の方が都合がよいため、このように地図表示形式を切り換えられるようにすることで、より融通性のある表示が可能となる。
上記実施例では、車両の現在地周辺の上空に視点を置き、この視点から目的地方向を見下ろす例を説明したが、道路状況等によっては、車両の進行方向を見下ろした鳥瞰図を表示した方がよい場合がある。したがって、目的地方向を表示するか、進行方向を表示するかを、選択スイッチ等によって選択できるようにしてもよい。あるいは、車両が推奨経路上を走行している場合には目的地方向を見下ろした鳥瞰図を表示し、車両が推奨経路から離脱した場合には車両進行方向を見下ろした鳥瞰図を表示するように、見下ろす方向を自動的に切り換えてもよい。
【0039】
上記実施例では、表示装置6内の各領域によって道路線幅を変更する例を説明したが、名称データ中の文字や記号の大きさを各領域によって変更してもよい。すなわち、表示装置6の上辺側に表示される文字等の大きさを下辺側より小さくしてもよい。
また、図6の点線で示すように、地図上の所定距離ごとにグリッドを表示してもよい。グリッドの間隔を同一距離にすると、画面の下辺側の方が上辺側よりも間隔は広くなるため、このグリッド表示により、鳥瞰図に立体感を出すことができる。また、このグリッド表示により、距離関係も把握しやすくなる。
上記実施例において、鳥瞰図表示の際に、方位を示すコンパスを表示してもよい。これにより、車両の進行方位がわかりやすくなる。
【0040】
上記実施例では、表示装置の表示範囲内に目的地がない場合でも、目的地方向に旗マークを表示しているが、その際、本来の目的地と区別するために、通常の旗マークとは異なる色や形状で表示してもよい。
上記実施例では、表示画面上の各領域ごとに道路線幅を変えて立体感を出しているが、各領域ごとに色を変えてもよい。例えば、表示画面の下辺側を上辺側よりも明るく表示すれば、より立体感を出すことができる。
上記実施例では、演算した推奨経路に従って車両を誘導する例を説明したが、本発明は車両の誘導機能を備えた地図表示装置に限定されない。すなわち、設定された現在地と目的地とに基づいて道路地図の鳥瞰図を表示する場合にも適用できる。
図6のステップS1では推奨経路を演算しているが、推奨経路に関するデータを予めROM等に格納しておき、出発地と目的地が入力されると、対応する推奨経路を読み出してもよい。
【0041】
このように構成した実施例にあっては、地図記憶メモリ2は道路地図記憶手段に、図7のステップS10は表示制御手段に、現在地検出装置1は車両位置検出手段および進行方向検出手段に、図6のステップS1は目的地設定手段に、図6のステップS6は鳥瞰図データ変換手段に、入力装置4は表示方向選択手段に、図6のステップS1は推奨経路演算手段に、それぞれ対応する。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、例えば、現在地周辺の上空から車両進行方向の道路地図を見下ろした鳥瞰図を表示するため、車両進行方向の道路地図状況を詳細かつ広範囲にわたって把握できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による車両用地図表示装置の一実施例のブロック図。
【図2】
地図記憶メモリに格納される道路データのデータ構造を示す図。
【図3】
道路データの一例を示す図。
【図4】
鳥瞰図の概要を説明する図。
【図5】
図4の視点Mと長方形abcdとを拡大表示した図。
【図6】
制御回路のメイン処理を示すフローチャート。
【図7】
図6に続くフローチャート。
【図8】
表示方向角度αの演算方法を説明する図。
【図9】
図6のステップS5の処理の詳細を示すフローチャート。
【図10】
図6のステップS7の処理の詳細を示すフローチャート。
【図11】
表示装置内部の分割領域を説明する図。
【図12】
図6のステップS8の処理の詳細を示すフローチャート。
【図13】
鳥瞰図データに変換する領域を示す図。
【図14】
従来の道路地図表示を示す図。
【符号の説明】
1 現在地検出装置
2 地図記憶メモリ
3 制御回路
4 入力装置
5 画像メモリ
6 表示装置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-13 
出願番号 特願2002-324823(P2002-324823)
審決分類 P 1 651・ 534- YA (G01C)
P 1 651・ 55- YA (G01C)
P 1 651・ 121- YA (G01C)
P 1 651・ 16- YA (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 大野 覚美
安池 一貴
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3411566号(P3411566)
権利者 株式会社ザナヴィ・インフォマティクス
発明の名称 地図表示方法  
代理人 永井 冬紀  
代理人 永井 冬紀  

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