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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 B23K 審判 全部申し立て 2項進歩性 B23K |
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管理番号 | 1105882 |
異議申立番号 | 異議2003-72075 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-13 |
確定日 | 2004-08-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3378150号「溶接構造体の接合用部材」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3378150号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 同請求項3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許3378150号の請求項1ないし3に係る発明は、平成8年9月6日に特許出願され、平成14年12月6日に特許権の設定の登録がなされた後、その請求項1ないし3に係る特許に対して、平成15年8月12日に特許異議申立人住友軽金属工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成16年1月22日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月5日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 特許権の設定の登録がされた願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る記載、 「【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項2】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、一方の側面と他方の側面とが直交し、一方の底面と他方の側面とが平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項3】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。」を、 「【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項2】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項3】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。」 と訂正する。 イ.訂正事項b 本件特許明細書等の段落【0012】の記載、 「【課題を解決するための手段】 本発明に係る溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする。この場合に、請求項3のように、両側面同士は必ずしも平行である必要はないが、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることが必要である。」を、 「【課題を解決するための手段】 本発明に係る溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする。」 と訂正する。 ウ.訂正事項c 同明細書等の段落【0013】の記載、 「また、本発明に係る他の溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、一方の側面と他方の側面とが直交し、一方の底面と他方の側面とが平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする。」を、 「また、本発明に係る他の溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする。 本発明に係る更に他の溶接構造体の接合部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする。」 と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aのうち、請求項1については訂正されていない。 請求項2に係る訂正部分については、「嵌合部のうち少なくとも2つは、一方の側面と他方の側面とが直交し、一方の底面と他方の側面とが平行」である点を、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行」であるように規定したものである。これは、請求項2に係る発明を、少なくとも3つの形材を接合する接合部材に本件発明を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。(請求項2に係る訂正事項は本件特許明細書等の段落【0023】〜【0025】及び図5に記載されていたことである。) 請求項3に係る訂正部分については、少なくとも2つの嵌合部の相互に平行な底面間にビームが架け渡されていること、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを規定したものである。これは、請求項3に係る発明を、嵌合部の底面間にビームを設けた接合部材に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。(請求項3に係る訂正事項は本件特許明細書等の段落【0030】〜【0032】及び図9ないし12に記載されていたことである。) 上記訂正事項b及びcは、訂正事項aに係る特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そしてこれら訂正事項b及びcは新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)特許異議の申立て、及び取消しの理由の概要 特許異議申立人住友軽金属工業株式会社は、甲第1号証(自動車のアルミ化調査団編,“第16回自動車のアルミ化調査報告書”,(社団法人軽金属協会),平成5年10月,p.46〜54)ないし甲第2号証(実開昭63-98888号公報)を提出し、本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、甲第1ないし2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件の請求項1ないし3に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。 また、当審で通知した取消しの理由の概要は、上記特許異議の申立ての理由と同様のものである。 (2)本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」・・・等という。)は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項2】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項3】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。」 (3)刊行物記載の発明・事項 当審が通知した取消の理由に引用された刊行物1ないし2には、次の事項が記載されている。 刊行物1:自動車のアルミ化調査団編,“第16回自動車のアルミ化調査報告書”,(社団法人軽金属協会),平成5年10月,p.46〜54(特許異議申立人の提出した甲第1号証) ア. 「懇談および工場見学 ・・・懇談は自動車のアルミ化については押出材の適用,特にスペースフレームについて意見交換を行った。」(第46頁右欄第13〜20行) イ. 「3)スペースフレーム ・・・Hydro AluminiumはPorscheと共同で図5.6に示すスペースフレームを開発している。特徴は押出材の嵌合による溶接部の削減と押出形材利用による部品点数の削減など押出形材形状に工夫がある。」(第47頁左欄第17行〜同頁右欄第1行) ウ. 「ジョイント部は鋳物も使用しているが,図5.7に示す押出材を利用したものも検討している。」(第47頁右欄第2〜3行) エ. ジョイント部の接合方法の中で欧州では接着接合は信頼に欠けると判断されている。 スペースフレームではないがロボットによるサブフレーム(押出材を引き裂いて利用)の自動溶接を今年から開始するとのことであり,スペースフレームへの応用が予想される。」(第47頁右欄第7行〜第48頁第1行) オ. 「Reynoldsのスペースフレームの開発状況は表5.11に示すとおりであり,嵌合接着が特徴である。また,写真5.4に示す押出材のジョイント部の開発も行っている。」(第53頁左欄第9〜12行) カ. 図5.7(第47頁)において、同図は「押出材によるスペースフレーム継手部」であること。図面視で上方、右下方、左下方に向かう3つの角筒状の部材と、中央部の単一の部材とが組み合わされていること。また、上方、右下方に向かう2つの部材については、上記中央部の単一の部材に形成される底面及び側面で規定される断面コ字形の部分に嵌合していること。 上記記載事項イ.ウ.カ.を参酌すると、図5.7に記載の継手部は、上記カ.に記載した「中央部の単一の部材」が「3方向に向かう3つの角筒状の部材」の位置決めに使用される接合部材として機能することは明らかである。したがって、これらの記載事項からみて、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。 「角筒状の部材を接合して製造される構造体の接合時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記角筒状の部材を嵌合する複数個の嵌合部を有する構造体の接合用部材。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 刊行物2:実開昭63-98888号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証) キ. 車体フレーム(10)を構成する角柱状のメインフレーム(16)あるいはダウンチューブ(18)の端部両側面に設けた嵌合溝(30a,30b,32a,32b)に角柱状のセンターフレーム(20a、20b)あるいはボトムチューブ(22a、22b)が嵌合溶接されていること。(実用新案登録請求の範囲、図面の簡単な説明、及び図面第1ないし6図) (4)対比・判断 ア.本件発明1について 本件発明1と刊行物1記載の発明を対比するに、後者の「角筒状の部材」は前者の「角筒状形材」に相当するから、両者は次の一致点、相違点を有している。 一致点 「角筒状形材を接合して製造される構造体の接合時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有することを特徴とする構造体の接合用部材。」 相違点1 前者は、形材の材質が「アルミニウム又はアルミニウム合金からなる」ものであるのに対し、後者においては形材の材質が不明である点。 相違点2 前者は、形材が「溶接接合」によって接合用部材と接合されるのに対し、後者においては、接合方法が不明である点。 相違点3 前者は、複数個の嵌合部が、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行である」のに対し、後者においては、当該事項を備えていない点。 <相違点についての検討> 上記各相違点について検討する。 a.相違点1について 上記刊行物1は、その記載全般が自動車のアルミ化について記述されており、その46頁(上記記載事項(3)ア.)には、スペースフレームをアルミ化することが示唆されている。そして、上記記載事項イ、エ、カからみて、刊行物1の図5.7に記載の、3方向に向かう3つの「角筒状の部材」はそれぞれがスペースフレームであることは明かであるから、刊行物1記載の発明における「角筒状の部材」の材質をアルミニウムとすることは当業者が容易に成し得たものである。 b.相違点2について 上記刊行物1の記載事項(3)イ.には、スペースフレームについて、「押出材の嵌合による溶接部の削減・・・」と記載されていること、同(3)エ.には、「自動溶接を今年から開始するとのことであり、スペースフレームへの応用が予想される。」と記載されていること、上記a.で述べたように刊行物1の図5.7に記載の「角筒状の部材」はそれぞれがスペースフレームであることは明かであることからみて、刊行物1記載の「角筒状の部材」を溶接接合によって接合用部材と接合することは当業者が容易に成し得たものである。 c.相違点3について 刊行物1の図5.7において、図面視で上方、右下方、左下方に向かう3つの角筒状の部材のうち、上方、右下方に向かう2つの部材(以下、それぞれを「部材A」、「部材B」という。)については、接合用部材に形成される底面及び側面で規定される断面コ字形の部分に嵌合されているのであるが(上記記載事項(3)カ)、左下方に向かう角筒状の部材(以下、「部材C」という。)に関しては、上記接合用部材との接合関係が明らかではない。(なお、この点について、特許権者は特許異議意見書にて、異議申立書第5頁記載の参考図1を引用し、上記部材Cに相当する箇所の接合形態について、刊行物1の図5.7の記載だけでは、同参考図1に示される嵌合部3の形状を有しているとはいえない旨主張している。) この点について検討するに、同図5.7は「押出材によるスペースフレーム継手部」を示す図面であること、上記の部材A、及び部材Bについてはいずれも接合用部材に形成される底面及び側面で規定される断面コ字形の部分に嵌合されていることからすれば、部材AないしBと同様の部材である部材Cにおいても部材A、部材Bと同様な接合形態を採用し、上記参考図1に記載される構造のように底面3a、2つの側面3b及び3cからなる嵌合部3を設けることは必要に応じ適宜成し得るところのものである。 次に、上記の接合用部材における部材Bと部材Cの嵌合部についてみると、これら2つの嵌合部の底面は、平板部分の表裏面に形成されており、互いに平行であることは明らかである。そして、同図5.7からみるに、部材Bはその嵌合部の底面に対して垂直方向に向かうものか否かについては明らかではないが(上記参考図1には、部材Bの嵌合部に相当する嵌合部1が水平方向より下向きに記載されている。)、複数の部材を接合する場合の接合角度は、製品の形状に応じて適宜定められるものであるから、この接合角度を嵌合部底面と垂直となるように、側面を底面に対して垂直にすることは、必要に応じて適宜選択することのできる事項である。してみると、部材Bの嵌合部における側面は部材Cの嵌合部の側面と平行となることからして、刊行物1記載の発明において、複数個の嵌合部を、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行である」ものとすることは当業者には容易に成し得たものといえる。 <本件発明1の作用効果> 本件発明1の作用効果は、刊行物1記載の発明及び事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。 したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ.本件発明2について 本件発明2は、本件発明1と「アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部」を有する「溶接構造体の接合用部材」である点が共通である。したがって、本件発明2と刊行物1記載の発明を対比すると、一致点は上記ア.に記載した一致点に同じであり、相違点は、上記ア.に記載した相違点1及び相違点2の他に、下記の点で相違する。 相違点4 前者は、複数個の嵌合部が、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行である」のに対し、後者においては、当該事項を備えていない点。 <相違点についての検討> 上記各相違点について検討する。 a.相違点1ないし2について これら相違点1ないし2ついての判断は上記ア.a.ないしb.に記載した判断に同じである。 b.相違点4について (以下においても、上記ア.C.で定義した「部材A」・・・等を上記と同様に用いる。) 刊行物1記載の図5.7において、部材Cが部材A、部材Bと同様な接合形態を有し、接合用部材に同部材Cの嵌合部として底面および2つの側面設けること、及び、嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であるものとすることが当業者が容易に成し得たものであることは、上記ア.c.に記載したとおりである。 そして、部材Aの嵌合部の底面と部材Cの嵌合部の側面とは、平板部分の表裏面に形成されており、互いに平行であることは明らかである。部材Aの嵌合部の側面と部材Cの嵌合部の側面とは、その角度が直交であるとは一概にいえないものの、同図5.7によれば、これら両側面はほぼ直交していると看取ることができることからすれば、両者の側面を直交させることは当業者が容易に成し得たものである。 また、図5.7は「押出材」によるジョイント部であるから、(上記記載事項(3)ウ)その屈曲線の全ては平行になること明らかである。 してみれば、刊行物1記載の発明において、複数個の嵌合部を、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行である」ものとすることは当業者には容易に成し得たものといえる。 <本件発明2の作用効果> 本件発明2の作用効果は、刊行物1記載の発明及び事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。 したがって、本件発明2は、刊行物1記載の発明及び事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ.本件発明3について 本件発明は、本件発明1と「アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部」を有する「溶接構造体の接合用部材」である点が共通である。したがって、本件発明3と刊行物1記載の発明を対比すると、一致点は上記ア.に記載した一致点に同じであり、相違点は、上記ア.に記載した相違点1及び相違点2の他に、下記の点で相違する。 相違点5 前者は、複数個の嵌合部が、「嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行である」のに対し、後者においては、当該事項を備えていない点。 上記相違点について検討する。 上記相違点5のうち、嵌合部のうち少なくとも2つについて、「両底面間にビームが架け渡され」た点、及び「各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行である」点については、異議申立人が提出したいずれの刊行物にも記載も示唆もない。そして、これらの点が当業者にとって容易に想到できる根拠も見あたらない。 してみると、本件発明3は、刊行物1又は2に記載された発明でも、また、刊行物1ないし2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。したがって、本件の請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項3号及び同条第2項の規定に違反してなされたものではない。 また、本件の請求項3に係る特許については、他にこれを取り消すべき理由を発見しない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件の請求項3に係る特許については、取消しの理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 溶接構造体の接合用部材 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項2】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【請求項3】 アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする溶接構造体の接合用部材。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称してアルミニウム材という)からなる角筒状の形材を溶接してトラック等の自動車の車体フレーム等を構成する溶接構造体の接合に使用される接合用部材に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来トラック等の自動車及び輸送機等の車体は、成形した鋼板端部を折り重ねて、その部分を抵抗スポット溶接によって接合して補強している。このようにして組み立てられたモノコック構造がトラック等の一般的な車体構造である。 【0003】 しかし、この方法は、組立の自動化が容易であるという利点はあるものの、重ね部分が多く、構造形成上、無駄な部分がかなりあり、スリムでないことに加え、成形部材の形状が複雑で重量の増加も生じるという欠点がある。 【0004】 これに対し、アーク溶接及びビーム溶接により、突き合わせて溶接すれば、構造的にスリムとなるものの、溶接前の部材の突合せ精度によって、溶接品質が大きく影響する。例えば、部材間にギャップが生じると溶接品質が著しく低下する。このため、部材を押さえて組み立て状態に保持するための治具が必要であり、また部材自体も高精度の機械加工が必要である。従って、組立の自動化が困難である。 【0005】 また、近時、車体の軽量化のために、車体をアルミニウム合金材で製作しようとする試みがなされている。この場合に、アルミニウム材はスポット溶接性が低く、モノコック構造においては、数千点の溶接をする必要があるが、その場合に電極の消耗が大きいという難点がある。また、板材の成形性もアルミニウム材は鋼材よりも悪いという難点がある。 【0006】 そこで、トラック等の自動車及び輸送機等の車体を中空のパイプ状フレームにより支持するスペースフレーム構造が提案されている。図13は、一般のトラックに適用されるものとして提案されたスペースフレーム構造を示す模式図である。図13に示すように、角筒状のアルミニウム材製形材51を、トラックのキャビンの形状に組み立て、各角筒状形材51同士を溶接により接合して形材51同士が固着される。これにより、所謂スペースフレーム構造が形成され、このスペースフレーム50を覆うように構造板が取り付けられて自動車ボディが完成する。 【0007】 このアルミニウム材製角筒状形材を使用して自動車の車体フレームを組み立てる場合に、一本の形材から複数の形材を分岐させる必要がある。このような結合部に、鋳鍛造により製造した結節部材を使用し、この結節部材を介して形材同士を結合する方法が提案されている(特開昭60-135375号公報)。 【0008】 また、この結節部材を使用せずに、形材同士を直接結合する方法も提案されている(特開平6-219321号公報)。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、結節部材を使用する従来技術においては、結節部材の形状が複雑であり、部品点数が多くなるため、製造コストが高くなるという欠点がある。 【0010】 また、従来の形材同士を直接結合する方法は、フレームを構成する形材に曲げ部材を使用している場合に、結合部に寸法上の誤差が生じやすく、また、結合部に捩れが生じやすいため、溶接接合する際に、結合部において形材同士を一致させることが容易ではない。また、形材と形材とを直接溶接接合しているので、形材の1カ所から複数の他の形材を分岐させる必要があるような場合には、溶接による熱影響部が1カ所に集中し、このため熱影響による軟化部も1カ所に集中してしまい、強度が劣化してしまう。 【0011】 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、結節部材を使用せずに形材同士を直接溶接接合する溶接構造物の製造方法の利点を生かしつつ、角筒状形材のセッティング作業を容易且つ迅速にし、そのセッティング作業性を向上させることができる溶接構造体の接合用部材を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】 本発明に係る溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であることを特徴とする。この場合に、請求項3のように、両側面同士は必ずしも平行である必要はないが、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることが必要である。 【0013】 また、本発明に係る他の溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面及び両側面が相互に平行であり、他の1つは、その側面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と直交し、前記他の1つの嵌合部の底面が前記少なくとも2つの嵌合部の側面と平行であり、各嵌合部の側面と底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする。 本発明に係る更に他の溶接構造体の接合用部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる角筒状形材を溶接接合して製造される溶接構造体の溶接時の位置決めに使用される接合用部材において、底面とその両側面からなる断面コ字形をなし前記形材を嵌合する複数個の嵌合部を有し、前記嵌合部のうち少なくとも2つは、底面が相互に平行であり、両底面間にビームが架け渡されており、各嵌合部の側面と底面との屈曲線及び前記ビームと前記底面との屈曲線が全ての嵌合部について平行であることを特徴とする。 【0014】 本発明においては、断面コ字形の嵌合部に形材を嵌め込み、嵌合部の側面と形材の外面とを溶接接合する。本発明の接合用部材は複数の嵌合部を有するので、そのうちの少なくとも2つの嵌合部に夫々形材を嵌合して溶接接合することにより、この接合用部材を介して形材同士を結合することができる。 【0015】 この場合に、本発明においては、少なくとも2つの嵌合部において、底面及び両側面が相互に平行であるか(請求項1)、一方の側面と他方の側面とが直交し、一方の底面と他方の側面とが平行であってその屈曲線が平行であるか(請求項2)、又は底面が相互に平行であってその屈曲線が平行である(請求項3)。このため、本発明の接合用部材の断面形状はその底面と側面とが屈曲する線の長手方向に均一にすることができ、換言すれば、全ての嵌合部について、その底面と側面とが屈曲する線が、相互に平行になるように形成されている。このため、本発明の接合用部材は押出成形により製造することができ、結節部材のように鋳鍛造により製造する場合に比して、その製造コストが極めて低い。 【0016】 また、2つの嵌合部を、2つの形材の結合部における結合角度に対応して相対的な配置を設定しておけば、捩れの位置にある形材同士も結合することができ、溶接前の形材のセッティングも容易である。 【0017】 そして、本発明の接合用部材は、両側面で形材を挟み込むような形を有しているので、形材の結合部においてその補強材としても機能する。 【0018】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1の実施例を示す正面図、図2は同じくその平面図、図3は同じくその左側面図、図4は図1のAーA線による断面図である。形材1、2、3はいずれも角筒状をなし、特に、形材1はその断面形状が「日」形となるように、断面中央部にその側面間を結ぶ中央板1aを有する。形材2、3は断面が正方形である。また、形材1はその上板に矩形の孔1bが形成されており、この孔1b内に形材3が挿入されるようになっている。 【0019】 本実施例の接合用部材9は、2つの嵌合部10、16を有する。底板11は嵌合部10の底面と、嵌合部16の底面とを兼ねる。そして、この底板11の両端部からその表面及び裏面に垂直に夫々側板12、13及び側板14、15が延出している。側板12と側板14とは同一面上にあり、側板13と側板15とは同一面上にある。そして、側板12、14と、側板13、15とは平行である。このように接合用部材9は断面コ字形の嵌合部10、16が背中合わせに配置された形状を有し、その断面形状は底板11と側板12、13、14、15との屈曲線の長手方向に均一である。このため、この接合用部材9は押出成形により製造することができる。 【0020】 このように構成された接合用部材9においては、形材1を嵌合部10に形材1の長手方向が嵌合部10の屈曲線に平行になるように嵌合する。一方、形材2はその長手方向が嵌合部16の底板11に垂直になるように嵌合部16に嵌合する。また、形材3を形材1の孔1b内にその長手方向を形材1の長手方向に垂直にして挿入し、形材3の先端部を形材1の中央板1aに当接させる。 【0021】 このようにして、形材1、2を接合用部材9を利用して位置決めした後、接合用部材9の側板12、13と形材1の側板とを、側板12、13の縁部に沿って溶接して接合する。また、接合用部材9の側板14、15と形材2の側板とを、側板14、15の下端縁に沿って溶接接合する。更に、形材3の側板と形材1の上板とを溶接接合する。 【0022】 これにより、形材1と形材2とが接合用部材9を介して結合され、形材3が形材1に結合される。本実施例においては、前述の如く、接合用部材9が押出成形により製造できるため、その製造コストが低い。また、この接合用部材9を利用して形材1、2をセッティングするので、セッティング作業が極めて容易である。更に、本実施例では、形材1、2を直接溶接接合するのではなく、接合用部材9の側板と形材1、2の側板とを溶接接合するので、形材における熱影響を受ける部分が分散され、軟化による強度劣化が防止される。更にまた、接合用部材9の側板12〜15を形材1、2の側板に溶接するので、側板による補強効果が得られ、形材1、2を直接溶接接合する場合に比して、接合部の強度を高めることができる。 【0023】 図5は本発明の第2の実施例に係る接合用部材21を示す正面図、図6は同じくその平面図、図7は同じくその左側面図、図8は同じくその右側面図である。本実施例の接合用部材20は底板22を共通にする嵌合部21、27を有する。この嵌合部21は底板22と、その底板22の両端部で底板22から垂直に延出する側板23、24とにより構成されている。また、嵌合部27は底板22と、底板22から垂直に延出する側板25、26により構成されている。そして、側板23、25が同一面であり、側板24、26は同一面である。また、側板23,25と側板24、26とは平行である。更に、嵌合部21、27の幅は同一である。 【0024】 一方、側板24の外面には、側板31、32が側板24に垂直に、且つ底板22に平行に延びている。この側板24を底面として、側板24と、側板31、32とにより、嵌合部30が構成されている。 【0025】 このように、嵌合部21、27は背中合わせに配置され、嵌合部30は嵌合部21、27と、その底面及び側面をいずれも直交させて配置されている。しかし、各嵌合部21、27、30の屈曲線はいずれも平行である。このため、本実施例の接合用部材も押出成形により製造することができる。 【0026】 而して、本実施例においては、図5乃至8に示すように、形材1を嵌合部21に形材1の上面を嵌合部21の底面に接触させて嵌合し、形材2を嵌合部27に形材2の先端部を嵌合部27の底面に接触させて嵌合し、形材4を嵌合部30に形材4の先端部を嵌合部30の底面に接触させて嵌合する。 【0027】 そして、嵌合部21の側板23、24と形材1の側板とを側板23、24の縁部で溶接により接合する。また、嵌合部27の側板25、26及び嵌合部30の側板31、32と、形材2及び形材4とを、各側板の先端縁で溶接により接合する。これにより、形材1に対し、形材2及び形材4が直交するようにして各形材が結合される。本実施例においても、形材の側板と、嵌合部の側板の縁部とを溶接するので、溶接熱影響部が分散され、溶接熱影響部による軟化が防止される。 【0028】 本実施例においては、嵌合部の側板間の距離を、形材の横寸法又は縦寸法に合わせて適切に設定することにより、種々の寸法の形材を任意に結合することができる。 【0029】 また、2つの形材がねじれの関係にある場合も、一方の嵌合部の側板と、他方の嵌合部の側板とを平行ではなく、所定の角度をなすように形成すればよい。但し、この接合用部材の場合も、押し出し成形により製造する場合は、各嵌合部の側板と底板との屈曲線は、いずれも平行にする必要がある。 【0030】 図9は本発明の第3の実施例に係る車体のフロントフレーム構造体を示す正面図、図10はその平面図、図11はその背面図、図12は左側面図である。本実施例の接合用部材40は、図10に示すように、平面視でコ字形をなす嵌合部41と嵌合部42とが垂直板状の1対のビーム43a,43bにより連結されている。ビーム43aはビーム43bよりも短く、従って、嵌合部41と嵌合部42とはその奥行き方向が平行ではなく、若干相違している。また、図9に示すように、嵌合部41、42及びビーム43a、43bは嵌合部41から嵌合部42に向けて上昇するように傾斜しており、嵌合部42の方が嵌合部41よりも高い位置にある。また、クロスビーム44はビーム43aの一方の端部と、ビーム43bの他方の端部とを対角線方向に連結するものである。このクロスビーム44によりビーム43a、43bの強度が向上し、形材の結合強度を高めることができる。 【0031】 このように構成された接合用部材40においては、垂直方向に若干湾曲して延びる形材47を形材47の側面を嵌合部42の底面に接触させて接合用部材40の嵌合部42に側方から嵌合する。また、水平方向に延びる形材46を嵌合部41にその先端面を嵌合部41の底面に当接させて嵌合する。そして、嵌合部41、42の側板と、形材46、47の側板とを溶接により固定する。また、水平に延びる形材48をその上面を形材46の先端部下面に接触させ、形材48の一側面を嵌合部41の底面に接触させて配置し、形材48と形材46及び嵌合部41の底板とを溶接接合する。 【0032】 これにより、形材46、47、48を相互に固定することができる。本実施例においても、嵌合部の底板と側板との屈曲線はいずれも平行である。従って、この接合用部材40も押出成形により製造することができる。 【0033】 本実施例においては、形材47と形材46とはほぼ垂直でねじれの関係にあり、このように、嵌合部の方向をその屈曲線が平行の条件の下で種々調整することにより、任意の態様で形材を結合することができる。 【0034】 なお、上記各実施例の接合用部材は、図3、5、10に示すように、断面形状が均一であり、このため、押出加工と切断加工により製造することができるので、この接合用部材を使用することによる溶接構造体の製造コストの上昇は極めて少ない。 【0035】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、所定の設計結合角度で形材同士を接合することができ、ねじれの関係にある形材同士も接合することができると共に、そのセッティング作業が容易である。また、本発明においては、嵌合部の側板と形材の側板とを溶接接合するので、形材同士を直接溶接する場合に比して、溶接熱影響部が集中することを防止できると共に、この嵌合部の側板により接合部が補強され、接合部の信頼性が向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の第1実施例を示す正面図である。 【図2】 同じくその平面図である。 【図3】 同じくその左側面図である。 【図4】 同じく図1のA-A線による断面図である。 【図5】 本発明の第2実施例を示す正面図である。 【図6】 同じくその平面図である。 【図7】 同じくその左側面図である。 【図8】 同じくその右側面図である。 【図9】 本発明の第3の実施例を示す正面図である。 【図10】 同じくその平面図である。 【図11】 同じくその背面図である。 【図12】 同じくその左側面図である。 【図13】 トラックのスペースフレーム構造を示す図である。 【符号の説明】 1、2、3、4、46、47、48:形材 9、20、40:接合用部材 10、16、21、27、30、41、42:嵌合部 11、22:底板 12、13、14、15、23、24、25、26、31、32:側板 43a、43b、44:ビーム |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-06-17 |
出願番号 | 特願平8-237024 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZD
(B23K)
P 1 651・ 161- ZD (B23K) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 加藤 昌人 |
特許庁審判長 |
宮崎 侑久 |
特許庁審判官 |
上原 徹 菅澤 洋二 |
登録日 | 2002-12-06 |
登録番号 | 特許第3378150号(P3378150) |
権利者 | 株式会社神戸製鋼所 |
発明の名称 | 溶接構造体の接合用部材 |
代理人 | 藤巻 正憲 |
代理人 | 岩倉 民芳 |
代理人 | 藤巻 正憲 |
代理人 | 高橋 祥泰 |