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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1105918
異議申立番号 異議2003-71992  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-04 
確定日 2004-08-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3374455号「薄膜トランジスタの製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3374455号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3374455号の請求項1、2に係る発明は、平成5年7月20日に特許出願され、平成14年11月29日にその特許の設定登録がなされ、その後、山枡幸文より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月21日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
平成14年9月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に係る記載
「 【請求項1】 基板上に形成された半導体薄膜をレーザアニールした後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を該表面層に集中した不純物と共に除去することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】 前記半導体薄膜は前記レーザアニール前アモルファスシリコン薄膜であって、前記レーザアニールにより該アモルファスシリコン薄膜をポリ化することを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。」を
「【請求項1】 基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜からなる半導体薄膜をレーザアニールしてポリ化した後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を、前記表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜と共に除去することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。」
と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書段落0004の「 【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上に形成された半導体薄膜をレーザアニールした後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を該表面層に集中した不純物と共に除去するようにしたものである。」とあるのを
「 【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜からなる半導体薄膜をレーザアニールしてポリ化した後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を、前記表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜と共に除去するようにしたものである。」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に請求項2の記載を加え、さらに、明細書の【0010】段落の、
「次に、ポリシリコン薄膜6の膜質を安定化するために、窒素雰囲気中において500℃程度の温度で熱処理を行うと、図4(A)に示すように、ポリシリコン薄膜6の表面に自然酸化膜8が形成される。次に、1%フッ酸に1分間程度浸し、エッチングを行う。すると、自然酸化膜8が数秒間程度で除去され、この後ポリシリコン薄膜6の表面層が100Å程度除去される。この状態を図4(B)に示す。このように、ポリシリコン薄膜6の表面層を100Å程度除去しているので、ポリシリコン薄膜6の表面層に集中して残留している不純物7も同時に除去されることになる。」との記載に基づいて、特許請求の範囲に「並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜」を加えて、「前記半導体薄膜の表面層を、前記表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜と共に除去する」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立理由の概要
申立人山枡幸文は、甲第1号証(特開昭61-78119号公報)、甲第2号証(特開平4-340724号公報)、および、参考資料1(特開平5-152325号公報)を示し、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、甲第1号証、甲第2号証及び参考資料1をもとに容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。
(2)本件請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。
(3)刊行物等
特許異議申立人が証拠として提示した刊行物にはそれぞれ、以下のような発明が記載されている。
a.刊行物1:特開昭61-78119号公報(甲第1号証)
刊行物1には、「絶縁基体上に非晶質又は多結晶の半導体層を形成し、該半導体層に短波長レーザを照射して表面部のみ上記半導体層の粒径の成長を行わせた後、熱処理を施して固相成長を行わせることを特徴とする半導体の製造方法」(特許請求の範囲)
「第4図に示す固相成長工程が終了した多結晶シリコン層7に対し、・・・エッチング処理することにより、膜厚を薄くし、」(第3頁左下欄第3行〜第6行)、
「最初に被着形成する多結晶シリコン層3の代りに、非晶質シリコン層を被着形成してもよい。」(第4頁右上欄第15行〜第17行)が記載されている。
b.刊行物2:特開平4-340724号公報(甲第2号証)
刊行物2には、
「該シリコン層305の形成方法は上記の減圧化学気相成長法に限られることなく、グロー放電によるモノシランの分解により形成された水素を含有する非晶質のシリコン層や、スパッタ法によるシリコン層でも本発明は適用できる。」(【0042】)
「次に該シリコン層を、該ソース領域303と該ドレイン領域304の架け橋となるように図3bの如く島上にパターニングし、シリコン層305を形成する。次に、図3cに示すように、該シリコン層305にレーザービーム306を照射して結晶化する。該レーザービーム306には、波長308nmのXeClエキシマパルスレーザーを用いる。・・・ビームアニールしているとき、該シリコン層305の周辺は、He、Ne、Ar、Kr、Xeあるいはこれらの混合ガスである不活性ガス雰囲気である。」(【0044】)
「なぜなら、該シリコン層305の表面あるいはその近傍に酸素が存在すると、ビームアニールによって該シリコン層305の温度が上昇したとき、酸素あるいは窒素が反応し不純物として該シリコン層305中に取り込まれ良好なシリコン層が得られない。よって、シリコン層をアニールするときには、できる限り真空中あるいは不活性ガス雰囲気でアニールするとよい。ただし、レーザーアニール後フッ酸などで結晶化したシリコン層305の表面を除去する場合には、酸素雰囲気、窒素雰囲気あるいは大気中でもビームアニール可能である。 」(【0045】)
「該ビームアニールにより、図3dに示す様にシリコン層305は多結晶シリコン層306になる。」(【0047】)
「 次に、多結晶シリコン層306中に残存する応力と、および多結晶シリコン層306と二酸化珪素膜302の間に存在する多数の不整合、および多結晶シリコン層を構成する結晶粒子の粒界に存在する不整合、および多結晶シリコン粒子中に存在する点欠陥および正孔を減少または消滅させるため、熱処理を施す。該熱処理の条件としては、実施例図1で示しながら説明した条件で行えばよい。」(【0048】)が記載されている。
実施例、 図1の熱処理として「次に、多結晶シリコン層中に残存する応力と、および多結晶シリコン層105と二酸化珪素膜102の間に存在する多数の不整合、および多結晶シリコン層を構成する結晶粒子の粒界に存在する不整合、および多結晶シリコン粒子中に存在する点欠陥および正孔を減少または消滅させるため、熱処理を施す。該熱処理の条件としては、例えば300〜650℃の温度で、時間は10分から20時間、試料周囲の雰囲気は窒素ガス中あるいは不活性ガス中あるいは水素を含んだ不活性ガス中である。」(【0028】)が記載されている。
c.刊行物3:特開平5-152325号公報(参考資料1)
刊行物3には、アモルファスシリコン薄膜をポリ化して多結晶シリコン薄膜とすることが記載されている。
(4)対比・判断
本件発明と上記刊行物1に記載の発明とを対比すると、本件発明ではアモルファスシリコン薄膜からなる半導体薄膜をレーザアニールしてポリ化しているのに対し、刊行物1に記載の発明は、短波長レーザからの照射によって非晶質の半導体層表面部のみにグレイン(結晶粒)5を形成し、熱処理を施して固相成長を行わせている。固相成長は、表面のグレインを結晶核として基板表面側から基板1側に向けて凝固していくことは明らかであり、不純物は基板側に集中してしまう。
したがって、本件発明では、表面層に集中した不純物を除去しているのに対し、刊行物1に記載の発明では、表面をエッチングしても、不純物を除去することはできない。
よって、本件発明は、刊行物1に記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
また、刊行物1に記載の発明から容易に成し得るものとも認められないので、特許法第29条第2項の規定に違反しない。
本件発明と上記刊行物2に記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載の発明では、「ただし、レーザーアニール後フッ酸などで結晶化したシリコン層305の表面を除去する場合には、酸素雰囲気、窒素雰囲気あるいは大気中でもビームアニール可能である。(【0045】)
(実施例図1で示しながら説明した条件により窒素雰囲気中で)、熱処理を施す。(【0048】)」と記載されており、仮に、レーザーアニール後フッ酸などで結晶化したシリコン層305の表面を除去するとしても、表面を除去する工程の後で窒素雰囲気中での熱処理が行われていると認められ、窒素雰囲気中で熱処理を施したときに生成した酸化膜を除去できないものである。また、アモルファスシリコンをレーザアニールしてポリ化する際に表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面に形成された酸化膜と共に除去することを示唆する記載もない。
よって、本件発明は、刊行物2から容易に成し得たものとは認められない。
さらに、刊行物3においても、アモルファスシリコンにエキシマレーザ光を照射して、結晶化を行うことが記載されているが、半導体薄膜の表面層を、熱処理時に表面層に形成された酸化膜並びに表面層に集中した不純物と共に除去することが記載されていない。
よって、本件発明は、刊行物1乃至3の記載に基づいて当業者が容易に成し得たものとは認められない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
薄膜トランジスタの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜からなる半導体薄膜をレーザアニールしてポリ化した後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を、前記表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜と共に除去することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜トランジスタの製造分野では、ガラス基板上に形成したアモルファスシリコン薄膜を、レーザアニールすることにより、ポリ化してポリシリコン薄膜とすることがある。この場合、レーザアニールにより溶融したアモルファスシリコン薄膜がガラス基板側から凝固してポリ化する。また、イオン注入後のポリシリコン薄膜をレーザアニールして活性化することもあるが、この場合もレーザアニールにより溶融したポリシリコン薄膜がガラス基板側から凝固する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、レーザアニールにより溶融したアモルファスシリコン薄膜等からなる半導体薄膜がガラス基板側から凝固するので、半導体薄膜中に存在する不純物がその表面層に集中して残留することになる。この結果、このような構造の半導体薄膜を備えた薄膜トランジスタでは、半導体薄膜の膜質が良くなく、オン電流、オフ電流、しきい値電圧等の電気的特性が劣化するという問題があった。この発明の目的は、半導体薄膜の膜質を良くすることのできる薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上に形成されたアモルファスシリコン薄膜からなる半導体薄膜をレーザアニールしてポリ化した後、窒素雰囲気中で熱処理を施してから前記半導体薄膜の表面層を、前記表面層に集中した不純物並びに前記熱処理時に前記表面層に形成された酸化膜と共に除去するようにしたものである。
【0005】
【作用】
この発明によれば、半導体薄膜の表面層を該表面層に集中した不純物と共に除去することになるので、半導体薄膜の膜質を良くすることができる。
【0006】
【実施例】
図1〜図8はそれぞれこの発明の一実施例における薄膜トランジスタの各製造工程を示したものである。そこで、これらの図を順に参照しながら、薄膜トランジスタの製造方法について説明する。
【0007】
まず、図1に示すように、ガラス基板1の上面にSiH4とH2との混合ガスを用いたプラズマCVDにより水素化アモルファスシリコン薄膜2を堆積する。この場合、水素化アモルファスシリコン薄膜2の膜厚が目的とする膜厚よりもある程度厚くなるようにする。例えば、目的とする膜厚が500Å程度であるならば、プラス100Åの600Å程度とする。また、堆積条件としては、ガラス基板1の温度を200〜350℃程度望ましくは250℃程度とし、10〜20SCCM程度のSiH4とその10倍程度のH2との混合ガスを用いる。すると、水素化アモルファスシリコン薄膜2の水素含有量は10〜20atomic%程度となる。次に、後の工程でエキシマレーザ照射により高エネルギを与えたとき水素が突沸して欠陥が生じるのを回避するために、脱水素処理を行う。この場合、窒素雰囲気中において450℃程度の温度で1時間程度の熱処理を行い、水素含有量が3atomic%以下望ましくは1atomic%以下となるようにする。
【0008】
次に、図2に示すように、脱水素処理後のアモルファスシリコン薄膜3のソース・ドレイン形成領域3a以外の領域に対応する部分の上面にフォトレジスト膜4を形成する。次に、このフォトレジスト膜4をマスクとしてアモルファスシリコン薄膜3のソース・ドレイン形成領域3aにリンイオンやボロンイオン等のイオンを注入してイオン注入領域5を形成する。この後、フォトレジスト膜4を除去する。
【0009】
次に、図3に示すように、真空中において基板温度200〜400℃で波長308nmのXeClエキシマレーザをエネルギ密度250〜350mJ/cm2程度、パルス幅50nsec程度で照射すると、アモルファスシリコン薄膜3がポリ化してポリシリコン薄膜6になると同時にイオン注入領域5が活性化される。この場合、レーザアニールにより溶融したアモルファスシリコン薄膜3がガラス基板1側から凝固することにより、アモルファスシリコン薄膜3中に存在する不純物7がポリシリコン薄膜6の表面層に集中する。このとき、ガラス基板1の温度を200〜400℃とすると、凝固速度は室温の場合の60〜30%に低減するので、結晶粒径の増大と共に不純物の表面層への一層の集中化を図ることができる。なお、波長308nmのXeClエキシマレーザのほかに、波長248nmのKrF、波長193nmのArF、波長175nmのArCl、波長353nmのXeF等のエキシマレーザを用いてもよいことはもちろんである。また、エキシマレーザ照射を複数回行えば、不純物の表面層への集中をより確実となすことができる。
【0010】
次に、ポリシリコン薄膜6の膜質を安定化するために、窒素雰囲気中において500℃程度の温度で熱処理を行うと、図4(A)に示すように、ポリシリコン薄膜6の表面に自然酸化膜8が形成される。次に、1%フッ酸に1分間程度浸し、エッチングを行う。すると、自然酸化膜8が数秒間程度で除去され、この後ポリシリコン薄膜6の表面層が100Å程度除去される。この状態を図4(B)に示す。このように、ポリシリコン薄膜6の表面層を100Å程度除去しているので、ポリシリコン薄膜6の表面層に集中して残留している不純物7も同時に除去されることになる。なお、ポリシリコン薄膜6の膜質を安定化するために、窒素雰囲気中ではなく、酸素雰囲気中において500〜600℃程度の温度で熱処理を行ってもよい。この場合、窒素雰囲気中での熱処理の場合よりもエッチング時間を短縮することができるので、ガラス基板1に与えるダメージを少なくすることができる。また、エッチングはドライエッチングであってもよい。
【0011】
次に、図5に示すように、素子分離により、不要な部分のポリシリコン薄膜6を除去する。この状態では、ポリシリコン薄膜6の中央部はチャネル領域6aとされ、その両側は活性化イオン注入領域からなるソース・ドレイン領域6bとされている。次に、図6に示すように、全表面に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とからなるゲート絶縁膜9を形成する。すなわち、まず全表面にスパッタにより酸化シリコン膜を堆積し、次いでこの酸化シリコン膜の表面にSiH4とNH3とN2とからなる混合ガスを用いたプラズマCVDにより窒化シリコン膜を堆積する。プラズマCVDにより窒化シリコン膜を堆積する場合、ガラス基板1の温度を250℃程度とし、SiH4を30SCCM程度とし、NH3を60SCCM程度とし、N2を390SCCM程度とし、出力600W程度、圧力0.5Torr程度で行うと、同時にポリシリコン薄膜6が水素化されてそのダングリングボンドが減少する。このように、ポリシリコン薄膜6上にプラズマCVDによりゲート絶縁膜9を堆積するのと同時にポリシリコン薄膜6を水素化してそのダングリングボンドを減らしているので、ゲート絶縁膜9の堆積とポリシリコン薄膜6の水素化を一度のプラズマCVDで同時に行うことができ、したがって独自の水素化工程を省略することができ、ひいては製造工程数を少なくすることができる。次に、チャネル領域6aに対応する部分のゲート絶縁膜9の上面にCrからなるゲート電極10を形成する。
【0012】
次に、図7に示すように、全表面に窒化シリコン等からなる層間絶縁膜11を形成する。次に、ソース・ドレイン領域6bに対応する部分の層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9にコンタクトホール12を形成する。次に、図7に示すように、コンタクトホール12を介してソース・ドレイン領域6bと接続されるAlからなるソース・ドレイン電極13を層間絶縁膜11の上面にパターン形成する。かくして得られた電界効果型の薄膜トランジスタでは、オン電流、オフ電流、しきい値電圧等の電気的特性が向上し、移動度も80cm2/V・sec以上であり、ポリシリコン薄膜6の膜質が極めて良好であることが確認された。
【0013】
なお、上記実施例では、プラズマCVDにより水素化アモルファスシリコン薄膜2を堆積した後脱水素処理を行っているが、これに限定されるものではなく、例えばLPCVDにより水素を含有しないアモルファスシリコン薄膜を堆積するようにしてもよい。この場合、LPCVDにより水素を含有しないアモルファスシリコン薄膜を堆積する際のガラス基板1の温度を500〜600℃程度とし、ポリ化および活性化するためのエキシマレーザのエネルギ密度を400mJ/cm2程度とする。したがって、この場合には脱水素処理を行う必要はないが、ガラス基板1の温度を500〜600℃程度と比較的高温とすることになるので、基板温度の昇温に時間が余計にかかることになる。また、ガラス基板1の温度を600℃程度とした場合には、アモルファスシリコン薄膜ではなくポリシリコン薄膜が直接堆積されることになるが、その後のエキシマレーザ照射によりその結晶粒径が成長し、したがってポリシリコン薄膜の結晶構造を良くすることができる。
【0014】
また、上記実施例では、ポリ化と活性化を一度のエキシマレーザ照射で同時に行っているが、これは別々に行ってもよい。要は、ゲート絶縁膜9を形成する前に、レーザアニールによってポリシリコン薄膜の表面層に集中した不純物を除去することができればよい。このとき、ポリシリコン薄膜の膜質を安定化するための熱処理を行った場合には、ポリシリコン薄膜の表面に形成された自然酸化膜も除去される。
【0015】
また、上記実施例では、この発明を通常のMOS構造の薄膜トランジスタに適用した場合について説明したが、通常のMOS構造の薄膜トランジスタと比較して、耐圧の向上等を図って高信頼化したLDD構造の薄膜トランジスタにも適用することができる。例えば、図8と同一名称部分には同一の符号を付した図9に示すLDD構造の薄膜トランジスタでは、ポリシリコン薄膜6の中央部をチャネル領域6aとされ、その両側をイオン濃度の低いソース・ドレイン領域6bとされ、さらにその両側をイオン濃度の高いソース・ドレイン領域6cとされた構造となっている。このLDD構造の薄膜トランジスタを製造する場合には、例えば図2に示すような状態において、イオン濃度の低いソース・ドレイン領域6bおよびイオン濃度の高いソース・ドレイン領域6cを形成すべき部分に低濃度のイオンを注入し、次いでフォトレジスト膜4を除去し、次いでイオン濃度の高いソース・ドレイン領域6cを形成すべき部分以外の部分の上面に別のフォトレジスト膜を形成し、この別のフォトレジスト膜をマスクとしてイオン濃度の高いソース・ドレイン領域6cを形成すべき部分に高濃度のイオンを注入するようにすればよい。
【0016】
さらに、上記実施例では、この発明をトップゲート型のコプラナ構造の薄膜トランジスタに適用した場合について説明したが、スタガ構造やバックゲート型のコプラナまたはスタガ構造の薄膜トランジスタにも適用し得ることはもちろんである。バックゲート型の場合、ガラス基板の上面にゲート電極およびゲート絶縁膜を形成し、その上にアモルファスシリコン薄膜を堆積し、このアモルファスシリコン薄膜をポリ化してポリシリコン薄膜とする。また、ポリシリコン薄膜の水素化処理は、ポリシリコン薄膜上にパッシベーション膜(絶縁膜)をプラズマCVDにより堆積する際に同時に行うことができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、半導体薄膜の表面層を該表面層に集中した不純物と共に除去しているので、半導体薄膜の膜質を良くすることができ、ひいてはオン電流、オフ電流、しきい値電圧等の電気的特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の一実施例における薄膜トランジスタの製造に際し、ガラス基板の上面に水素化アモルファスシリコン薄膜を堆積した状態の断面図。
【図2】
同薄膜トランジスタの製造に際し、脱水素処理後のアモルファスシリコン薄膜のソース・ドレイン形成領域にイオンを注入した状態の断面図。
【図3】
同薄膜トランジスタの製造に際し、エキシマレーザを照射することにより、アモルファスシリコン薄膜をポリ化すると同時にイオン注入領域を活性化した状態の断面図。
【図4】
(A)は同薄膜トランジスタの製造に際し、熱処理により、ポリシリコン薄膜の表面に自然酸化膜を形成した状態の断面図、(B)は同薄膜トランジスタの製造に際し、エッチングにより、ポリシリコン薄膜の表面層を除去した状態の断面図。
【図5】
同薄膜トランジスタの製造に際し、素子分離により、不要な部分のポリシリコン薄膜を除去した状態の断面図。
【図6】
同薄膜トランジスタの製造に際し、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成した状態の断面図。
【図7】
同薄膜トランジスタの製造に際し、層間絶縁膜をおよびコンタクトホールを形成した状態の断面図。
【図8】
同薄膜トランジスタの製造に際し、ソース・ドレイン電極を形成した状態の断面図。
【図9】
この発明をLDD構造の薄膜トランジスタに適用した場合の図8同様の断面図。
【符号の説明】
1 ガラス基板
3 アモルファスシリコン薄膜
6 ポリシリコン薄膜
7 不純物
8 自然酸化膜
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-11 
出願番号 特願平5-199895
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河本 充雄  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 松本 邦夫
橋本 武
登録日 2002-11-29 
登録番号 特許第3374455号(P3374455)
権利者 カシオ計算機株式会社
発明の名称 薄膜トランジスタの製造方法  
代理人 花輪 義男  
代理人 花輪 義男  

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