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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 一部申し立て 発明同一  C08G
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1105922
異議申立番号 異議2003-71749  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-14 
確定日 2004-08-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3365687号「ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3365687号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
特許第3365687号の請求項1〜5に係る発明は、平成6年7月13日に出願され、平成14年11月1日に特許権の設定登録がなされ、その後、藤田美佐代より、特許異議の申立てがなされ、平成16年3月9日付けで取消の理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月18日に意見書及び訂正請求書が特許権者から提出されたものである。
[2]訂正の可否
1.訂正の趣旨
特許権者が求める訂正事項は次の通りである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除し、それに伴い請求項2〜5の請求項番号を請求項1〜4と番号を繰り上げると共に、請求項2及び3で引用していた請求項番号をそれぞれ請求項1及び請求項1または2と訂正する。
(2)訂正事項2
発明の詳細な説明の段落【0006】【発明の概要】の記載「本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、(C)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で融点以下の温度に加熱して、o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含み、得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とすることを特徴としている。」を
「本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、(B)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程と、(C)前記予備結晶化工程を経たポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気中で融点以下の温度に加熱してo-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含み、得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とすることを特徴としている。」と訂正し、段落【0007】を削除する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は(イ)特許請求の範囲の請求項1の削除とそれに伴い(ロ)請求項2以下の請求項の番号及びそこで引用する番号を繰り上げ訂正するものであるところ、(イ)は特許請求の範囲を減縮する訂正であり、(ロ)は請求項番号を(イ)の訂正に伴いそれと整合するように番号を訂正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、(イ)、(ロ)のいずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質上拡張・変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を訂正後の請求項1に対応するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を実質上拡張・変更するものでもない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法の一部を改正する法律(平成6年法律116号、以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]本件発明
上記訂正の結果、訂正後の本件請求項1〜4に係る発明(以下単に本件発明1〜4と言う。)は訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により構成される次のとおりのものである。
【請求項1】
(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、
(B)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程と、
(C)前記予備結晶化工程を経たポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気中で融点以下の温度に加熱して、o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含み、
得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とすることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%の範囲にあり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%の範囲にある請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】請求項1または2に記載の製造方法により得られることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項4】o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあり、ホルムアルデヒド含有率が40ppb以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
[4]特許異議申立の理由
特許異議申立人、藤田美佐代は、甲第1〜9号証を提出し、概略以下の理由により訂正前の本件請求項1〜5に係る発明は特許を受けることができないものであるから、これ等の発明に係る特許は取り消されるべきものであると主張する。
(1)訂正前の本件請求項1〜5に係る発明は本出願前に頒布された甲第1〜4号証の刊行物に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2)訂正前の本件請求項1〜5に係る発明は本出願前に頒布された甲第6〜9号証刊行物記載の前提事項を考慮すれば、甲第1〜4号証の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないものである。
(3)訂正前の本件請求項4〜5に係る発明は、本出願前の出願に係る甲第5号証の先願明細書に記載された発明と同一であり、発明者・出願人も同一でないから、特許法第29条の2に該当し特許を受けることができないものである。
[5]刊行物及び先願明細書の記載
特許異議申立人が提出した甲第1〜9号証の刊行物あるいは先願明細書には以下のことが記載されている。
1.刊行物1:特開昭56-55426号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
(1-1)
【特許請求の範囲】「(1)エチレングリコールを主たるグリコール成分とする極限粘度0.3以上、嵩密度0.5〜1.1g/cc以下のポリエステル粒子を、50〜200℃の熱水で処理した後、減圧または不活性気体流通下該ポリエステルの融点以下の温度で、下記(1)式を満足するよう加熱処理することを特徴とするポリエステルの製造法
…(式省略)…
上記式中〔η〕0 および〔η〕はそれぞれ以下の内容を表す。
〔η〕0 :熱水処理前のポリエステルの極限粘度
〔η〕:加熱処理後のポリエステルの極限粘度」
(1-2)
「本発明は、…。更に詳しくは、当該法で得られたポリエステル粒子中に、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を事実上含有しないポリエステルの製造法に関する。」(第1頁左下欄19行〜同頁右下欄5行)
(1-3)
「熱水処理温度は50℃以上、200℃以下である。50℃以下ではアルデヒド類が十分に抽出されず…。」(第4頁左上欄2〜6行)
2.刊行物2:特公平3-79373号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証)
(2-1)
【特許請求の範囲】「フェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(6/4重量比)混合溶媒中30℃で測定した固有粘度が少なくとも0.4以上であり、密度が1.35以下である、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルを、水分率が少くとも0.2重量%以上になるように調湿する工程、140℃以上の温度で予備結晶化する工程および180℃以上240℃以下の温度で不活性ガス雰囲気下又は減圧下で固相重合する工程を含むことを特徴とする高重合度ポリエステルの製造方法。」
(2-2)
「本発明は…、更に詳しくは固相重合により高重合度ポリエステルを製造する方法の改良に関する。その目的はアセトアルデヒド含有量の少い高重合度ポリエステルを製造するにあり、……」(第1頁1欄13〜20行)
(2-3)
「これに対し、本発明では固相重合前のプレポリマーの水分率を出来るだけ多く、少なくとも0.2重量%に調湿することに特徴がある。0.2重量%未満であると固有粘度の上昇はあるがアセトアルデヒドの離脱速度は遅くなる。」(第3頁第5欄33〜37行)
3.刊行物3:特開昭62-199616号公報(特許異議申立人の提出した甲第3号証)
(3-1)
【特許請求の範囲】「(1)極限粘度0.4以上のポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルのチップを予備結晶化後、減圧下に210〜240℃で固相重合して極限粘度0.6以上のポリエステルを製造するに際し、固相重合を2段階に分けて行い、第1段目を真空度15〜50mmHgで5時間以上、第2段目を真空度10mmHg以下で3時間以上とし、かつ全固相重合時間を8〜35時間とすることを特徴とする高重合度ポリエステルの製造法。」
(3-2)
「…ポリエステルチップを特定の条件で2段固相重合すると、公知の固相重合法からは予想できない程、迅速かつ効率的にチップ中のアセトアルデヒド含量を低減することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、極限粘度0.4以上のポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とするポリエステルのチップを予備結晶化後、…固相重合を2段階に分けて行い、…とすることを特徴とする高重合度ポリエステルの製造法を要旨とするものである。」(第2頁左上欄19行〜右上欄14行)
(3-3)
「予備結晶化は常法により行うことができ、通常、減圧下、大気中又は不活性ガス気流中で、140℃以上の高温に加熱して行われる。」(第2頁右下欄6〜9行)
(3-4)
「本発明の方法で得られるポリエステルチップはアセトアルデヒド含量が3ppm以下で、成形性が良好で…の製造に有用なものである。」(第3頁右上欄6〜10行)
4.刊行物4:特公昭43-2952号公報(特許異議申立人の提出した甲第4号証)
(4-1)
【特許請求の範囲】「ポリエステルの低重合体を表面積の大きな固体となし、これを減圧下ポリマーの融点以下の温度で固相重合を行なった後、一旦溶融してから再び上記固相重合を…少なくとも1回繰り返すことを特徴とするポリエステルの製造法。」
(4-2)
「本発明者等はかかる点に鑑み研究検討を重ねた結果、固相重合を行った後一旦溶融し再び固相重合を行い、これを少なくとも1回繰り返すことを特徴とする多段固相重合法により、極めて高重合度の色調良好なポリエステルが比較的短時間に得られることを見出した。」(第1頁左欄下から11〜6行)
5.刊行物5:「nлacmuчeckue Maccbl」No.5(1968)p.42-46(特許異議申立人の提出した甲第6号証)
「ポリエチレンテレフタレートの熱酸化分解(題)

検討の結果
280℃におけるPETの酸化の際には、熱分解の際と同一の生成物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、水、二酸化炭素)が生成される(図1及び2)。例外は、不活性ガス雰囲気中での分解(1hr)の際に検出されない一酸化炭素である:

分解生成物 CO2 H2O CH2O CH3CHO CO
量、mol/ 1.7 1.8 0.12 0.08 4.95
g・104 ――― ―――― ―――― ―――― ――――
0.1 0.35 0.04 0.03 検出せず
注。分子-酸素雰囲気での分解;分母-ヘリウム雰囲気
(なお、O2 の項目について省略)…」
6.刊行物6:「ГИГИEHA TPУДА」No.10(1980)p.51-53(特許異議申立人の提出した甲第7号証)
「ポリエチレンテレフタレート溶融物から分離される物質のガスクロマトグラフィーによる同定及び定量(題)

我々の研究の目的は、加工プロセス温度(160及び260℃)においてラウサン(注;ポリエチレンテレフタレート)から分離される揮発性物質の同定であった。

以上のように、ラウサン溶融物から分離される蒸気ガス混合物中には、10種の物質が検出された:メタン、エチレン、ペンタン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、エタノール、ブタノール、ジオキソラン、一酸化炭素及び二酸化炭素。

結論1。2種の加工温度:160及び260℃におけるラウサンの分解生成物の同定を行った。揮発性物質の主成分は、アセトアルデヒドであることが、確かめられた。」
7.刊行物7:「Journal of Applied Polymer Science」Vol.52(1994年4月発行)p.55〜60(特許異議申立人の提出した甲第8号証)
「PET中に存在するアルデヒド類の分析(題)

1.要約
PETプリフォーム及びボトル材料中に、アルデヒド類が存在することは既知である。しかし、PETは高結晶性であること及び、一般の溶媒には溶けないからこれらアルデヒド類の分析は難しい。

5.結論
工業的に射出成型したPETプリフォームのAA含量を、次の3つの異なる方法で定量した、…さらに、l/gHSGC法は、PETプレフォーム中のAAおよびFAの存在を検出し、両アルデヒド類を定量できることが判った。…」
8.刊行物8:「Polymer Degradation and Stability」Vol.43(1994)p.431〜440(特許異議申立人の提出した甲第9号証)
「PETの熱分解および揮発性分解生成物の定量(題)

1.要約
揮発性アルデヒド化合物を生成することが知られている、PETの予備加工時の分解に対する温度、雰囲気、乾燥条件の影響を、熱重量分析を、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンの生成、及び固/気ヘッドスペースクロマトグラフィーを用いて検討した。温度、乾燥及び加工雰囲気、及び分子量に依存して、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒドが多量に生成することが判った。
PETポリマー鎖の特徴のある構造モデルとして種々の低分子化合物を選び、比較可能な条件下で熱処理を行った。
PET及びモデル化合物の挙動の比較により、分解は、主として分子末端で起こることが判った。
2.序

射出-ブロープロセスに用いられるPETボトルプリフォーム中に存在する多量のアルデヒド類の定量のために検討した。AA及びFAの両者の存在が.L/gHS法により検出された。
…」
9.先願明細書:特願平5-32062号(特開平6-238747号公報参照)(特許異議申立人の提出した甲第5号証)
【特許請求の範囲請求項1】「ホルムアルデヒド含有量が50ppm以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。」
段落【0007】「本発明フィルムのホルムアルデヒド含有量は…好ましくは20ppm以下でないと…」
段落【0028】【表3】「
HA含有量(ppm)
実施例4 5
実施例5 6
実施例6 2
実施例7 <1」(抜粋)
[6]特許法第29条第1項第3号についての判断
1.本件発明1について
(1)本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明は、その特許請求の範囲((1-1)参照)にもあるように、50〜200℃の熱水処理することをも要件とし、それによってもアルデヒド類が抽出されるものであり((1-3)参照)、最終的に得られるポリエステルは「アルデヒド類を事実上含有しない」((1-2)参照)ものではあるが、刊行物1の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒド類としてはアセトアルデヒドやクロトンアルデヒドは記載されているがホルムアルデヒドについては記載がない。
従って、刊行物1には本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。この点について特許異議申立人は「アルデヒド類を事実上含有しない」ことはホルムアルデヒド含有量も皆無の状態と同じことであると主張するが、アルデヒド類として具体的にホルムアルデヒドも意図していたか不明であり、しかもその含有率が40ppb以下であることまでは直ちには読み取れない。
また、刊行物1には本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がない。
従って、本件発明1と刊行物1記載の発明は、刊行物1には本件発明1の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」及び「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」の2点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(2)本件発明1と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明はその特許請求の範囲((2-1)参照)にもあるように、水分率が少なくとも0.2重量%以上に調湿する点に特徴を有するものであり、それによってもアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり((2-3)参照)、「アセトアルデヒド含有量の少ない高重合度ポリエステルを製造」((2-2)参照)するものではあるが、刊行物2の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がなされていない。従って、刊行物1には本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
また、刊行物2には、予備結晶化を不活性ガス気流中で140℃以上の温度で行うことは記載されているが、本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がない。
従って、本件発明1と刊行物2に記載された発明とは、刊行物2に本件発明1の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」及び「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」の2点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(3)本件発明と刊行物3に記載された発明とを対比する。
刊行物3に記載された発明はその特許請求の範囲((3-1)参照)及び詳細な説明((3-2)参照)にもあるように、2段階で固相重合重合を行う点に特徴を有するものであり、それによっても迅速且つ効率的にアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり、「アセトアルデヒド含有量を3ppm以下とする」((3-4)参照)するものではあるが、刊行物3の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がされていない。従って、刊行物3には本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
また、刊行物3には、予備結晶化を不活性ガス気流中で140℃以上の温度で行うことは記載されているが((3-3)参照)、本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がない。
従って、本件発明1と刊行物3に記載された発明とは、刊行物3に本件発明1の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」及び「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」の2点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(4)本件発明1と刊行物4に記載された発明とを対比する。
刊行物4に記載された発明はその特許請求の範囲に記載されているように固相重合と溶融重合を繰り返すところに特徴を有するものであり((4-1)参照)、この多段固相重合によって極めて高重合度の色調良好なポリエステルを短時間で得るものである((4-2)参照)が、刊行物4には最終的に得られるポリエステル中のアルデヒドについては何の記載もなく、ましてホルムアルデヒドの含有量についての記載は存在しない。従って、刊行物4には本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
また、刊行物4には、固相重合に先立ち予備結晶化を行うことについては何の記載もなく、本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がない。
従って、本件発明1と刊行物4に記載された発明とは、刊行物4に本件発明1の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」及び「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」の2点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は刊行物1〜4のいずれかに記載された発明と言うことはできない。
2.本件発明2について
本件発明2は本件発明1に対して更に共重合成分を「前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%の範囲にあり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%の範囲にある」と規定するものであるから、1.で述べた理由により、本件発明2も刊行物1〜4に記載されたいずれの発明とも同一と言うことはできない。
3.本件発明3について
本件発明3は本件発明1あるいは2の製造方法の発明に対してそれらの製造方法により得られるポリエステル樹脂、というように物の発明の形で請求されている。そして、この物の発明で引用される製造方法の各要件により、刊行物1〜4には記載のない「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」ポリエステル樹脂が得られるのであるから、1.又は2.で述べた理由により、本件発明3も刊行物1〜4に記載されたいずれの発明とも同一と言うことはできない。
4.本件発明4について
(1)本件発明4と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明はその特許請求の範囲((1-1)参照)にもあるように、50〜200℃の熱水処理することをも要件とし、それによってもアルデヒド類が抽出されるものであり((1-3)参照)、最終的に得られるポリエステルは「アルデヒド類を事実上含有しない」((1-2)参照)ものではあるが、刊行物1の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒド類としてはアセトアルデヒドやクロトンアルデヒドは記載されているがホルムアルデヒドについては記載がなされていない。従って、刊行物1には本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。この点について特許異議申立人は「アルデヒド類を事実上含有しない」ことはホルムアルデヒド含有量も皆無の状態と同じことであると主張するが、アルデヒド類として具体的にホルムアルデヒドも意図していたか不明であり、しかもその含有率が40ppb以下であることまでは直ちには読み取れない。
従って、本件発明4と刊行物1記載の発明は、刊行物1には本件発明4の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(2)本件発明4と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明はその特許請求の範囲((2-1)参照)にもあるように、水分率が少なくとも0.2重量%以上に調湿する点に特徴を有するものであり、それによってもアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり((2-3)参照)、「アセトアルデヒド含有量の少ない高重合度ポリエステルを製造」((2-2)参照)するものではあるが、刊行物2の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がされていない。従って、刊行物2には本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
従って、本件発明4と刊行物2に記載された発明は、刊行物2には本件発明4の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(3)本件発明4と刊行物3に記載された発明とを対比する。
刊行物3に記載された発明はその特許請求の範囲((3-1)参照)及び詳細な説明((3-2)参照)にもあるように、2段階で固相重合重合を行う点に特徴を有するものであり、それによっても迅速且つ効率的にアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり、「アセトアルデヒド含有量を3ppm以下とする」((3-4)参照)するものではあるが、刊行物3の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がされていない。従って、刊行物3には本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
従って、本件発明4と刊行物3に記載された発明は、刊行物3には本件発明4の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(4)本件発明4と刊行物4に記載された発明とを対比する。
刊行物4に記載された発明は、その特許請求の範囲の範囲に記載されているように固相重合と溶融重合を繰り返すところに特徴を有するものであり((4-1)参照)、この多段固相重合によって極めて高重合度の色調良好なポリエステルを短時間で得るものである((4-2)参照)が、刊行物4には最終的に得られるポリエステル中のアルデヒドについては何の記載もなく、ましてホルムアルデヒドの含有量についての記載は存在しない。従って、刊行物4には本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は記載されていない。
従って、本件発明4と刊行物4に記載された発明は、刊行物4には本件発明4の要件である「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の点が記載されていない点で少なくとも相違しており、両者の発明が同一であるとは言えない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから本件発明4は刊行物1〜4のいずれかに記載された発明であると言うことはできない。
[7]特許法第29条第2項についての判断
1.本件発明1について
特許異議申立人は、刊行物5〜8(甲第6〜9号証)の前提事項を考慮すれば、本件発明は刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ると主張するので、先ずこの刊行物5〜8の記載内容について検討する。
(1)刊行物5について
刊行物5は「ポリエチレンテレフタレートの熱酸化分解」と題するPET(ポリエチレンテレフタレート)の熱分解に関する学術文献であり、熱分解によるアルデヒドの生成反応や生成物の分析について述べられており、具体的な実験結果として280℃におけるPETの酸化の際には、熱分解の際と同一の生成物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、水、二酸化炭素)が生成されること、不活性ガスであるヘリウム雰囲気中では酸素雰囲気中に較べてホルムアルデヒド(CH2 O)がずっと少ないこと(前者0.04、後者0.35)、などが示されている。
しかしこの研究は既に製造されたポリエステルの試料について(酸素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中で)熱を加えてそこから生ずるホルムアルデヒドなどの分析を行ったものであり、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではない。また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
(2)刊行物6について
刊行物6は「ポリエチレンテレフタレート溶融物から分離される物質のガスクロマトグラフィーによる同定及び定量」と題する学術論文であり、加工プロセス温度(160及び260ポリエチレンテレフタレート)においてラウサン(注;ポリエチレンテレフタレート)から分離される揮発性物質の同定について述べられており、ラウサン溶融物から分離される蒸気ガス混合物中には、ホルムアルデヒドなどがあることが示されている。
しかしこの研究は既に重合され成型加工に段階でのポリエステルの試料についてプロセス温度で生ずるホルムアルデヒドなどの分析を行ったものであり、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではない。また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
(3)刊行物7について
刊行物7は「PET中に存在するアルデヒド類の分析」と題する学術論文であり、PETプリフォーム及びボトル材料中に、アルデヒド類が存在することは既知であると述べ、l/gHSGC法は、PETプレフォーム中のAAおよびFAの存在を検出し、両アルデヒド類を定量できると述べている。
しかしこの研究は既に重合され射出成型したプリフォーム段階やボトルでのポリエステルの試料についてホルムアルデヒドなどの分析を行ったものであり、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではない。また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
(4)刊行物8について
刊行物8は「PETの熱分解および揮発性分解生成物の定量」と題する学術論文であり、PETの予備加工時の分解に対する温度、雰囲気、乾燥条件の影響を、分析検討し、温度、乾燥及び加工雰囲気、及び分子量に依存して、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒドが多量に生成することが判ったと記載している。
しかしこの研究は既に重合されたPETの予備加工時の段階でのポリエステルの試料についてホルムアルデヒドなどの分析を行ったものであり、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではない。また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
(5)刊行物5〜8のまとめ
以上のように、刊行物5〜8に記載のことを総括すれば、これ等はいずれも既に重合したポリエステルを成型加工する段階で熱などにより生ずるアルデヒドなどについての分析に関して学術的な観点から論述したものであり、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させるという技術思想は何等記載されていない。
(6)刊行物1に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物1に記載された発明は、その特許請求の範囲((1-1)参照)にもあるように、50〜200℃の熱水処理することをも要件とするものであり、それによってもアルデヒド類が抽出されるものであり((1-3)参照)、最終的に得られるポリエステルは「アルデヒド類を事実上含有しない」((1-2)参照)ものではあるが、刊行物1の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒド類としてはアセトアルデヒドやクロトンアルデヒドは記載されているがホルムアルデヒドについては記載がされていない。
また、(5)でも述べたように刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には本件発明1の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目してそれを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目してこれを低減化することは、刊行物1及び刊行物5〜8には何ら示されていないのであるから、本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件はこれ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。 更に、刊行物1には本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がないのであるから、この点もまた直ちに容易とは言えない。
そして、本件発明1は明細書の実施例の記載によればホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(7)刊行物2に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物2記載の発明は、その特許請求の範囲((2-1)参照)にもあるように、水分率が少なくとも0.2重量%以上に調湿する点に特徴を有するものであり、それによってもアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり((2-3)参照)、「アセトアルデヒド含有量の少ない高重合度ポリエステルを製造」((2-2)参照)するものではあるが、刊行物2の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらず、ホルムアルデヒドについては全く記載がなされていない。
また、(5)でも述べたように、刊行物5〜8は、結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目してこれを低減化することは、刊行物2及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、これ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
更に、刊行物1には、本件発明1の要件(B)、即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がないのであるから、この点もまた直ちに容易とは言えない。
そして、本件発明1は明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明1は、刊行物2及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(8)刊行物3に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物3に記載された発明は、その特許請求の範囲((3-1)参照)及び詳細な説明((3-2)参照)にもあるように、2段階で固相重合を行う点に特徴を有するものであり、それによって迅速且つ効率的にアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり、「アセトアルデヒド含有量を3ppm以下とする」((3-4)参照)ものではあるが、刊行物3の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がなされていない。
また、(5)でも述べたように、刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目してこれを低減化することは、刊行物3及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、これ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
また、刊行物3には、予備結晶化を不活性ガス気流中で140℃以上の温度で行うことは記載されているが((3-3)参照)、本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がないのであるから、この点も直ちに容易であるとは言えない。
そして、本件発明1は明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明1は、刊行物3及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(9)刊行物4に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物4に記載された発明は、その特許請求の範囲の範囲に記載されているように、固相重合と溶融重合を繰り返すところに特徴を有するものであり((4-1)参照)、この多段固相重合によって極めて高重合度の色調良好なポリエステルを短時間で得るものである((4-2)参照)が、刊行物4には最終的に得られるポリエステル中のアルデヒドについては何の記載もなく、ましてホルムアルデヒドの含有量についての記載は存在しない。
また、(5)でも述べたように刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明1の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目して、これを低減化することは、刊行物4及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、これ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
また、刊行物4には、固相重合に先立ち予備結晶化を行うことについては何の記載もなく、本件発明1の要件(B)即ち「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」(これは訂正により追加された要件である。)については記載がないのであるから、この点も直ちに容易であるとは言えない。
そして、本件発明1は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明1は、刊行物4及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(10)まとめ
上述のように、刊行物1〜4及び刊行物5〜8には、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目して、これを低減化することは何も示されていないのであるから、これ等の刊行物すべてを併せ考慮しても、本件発明1の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、当業者が容易に考えつくものでもないし、また、刊行物1〜4には本件発明1の「前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分保つ予備結晶化工程」の要件についても記載がないのであるから(勿論刊行物5〜8にも記載はない。)、この点も直ちに容易と言えない。
そして、本件発明1は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明1は、刊行物1〜4及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
2.本件発明2について
本件発明2は本件発明1に対して更に共重合成分を「前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%の範囲にあり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%の範囲にある」と規定するものであるから、1.で述べた理由により、本件発明2も刊行物1〜4及び5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1あるいは2の製造方法の発明に対してそれらの製造方法により得られるポリエステル樹脂、というように物の発明の形で請求されている。そして、この物の発明で引用される製造方法の各要件により、刊行物1〜4及び5〜8には記載のない「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」ポリエステル樹脂が得られるのであるから、1.又は2.で述べた理由により、本件発明3も刊行物1〜4及び5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
4.本件発明4について
特許異議申立人は、刊行物5〜8(甲第6〜9号証)の前提事項を考慮すれば、本件発明4は刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ると主張するので、先ずこの刊行物5〜8の記載内容について検討するが、その検討内容は1.(1)〜(5)に記載されたとおりであるから、ここでは省略する。
(1)刊行物1に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物1に記載された発明は、その特許請求の範囲((1-1)参照)にもあるように、50〜200℃の熱水処理することをも要件とするものであり、それによってもアルデヒド類が抽出されるものであり((1-3)参照)、最終的に得られるポリエステルは「アルデヒド類を事実上含有しない」((1-2)参照)ものではあるが、刊行物1の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒド類としてはアセトアルデヒドやクロトンアルデヒドは記載されているがホルムアルデヒドについては記載がされていない。
また、1.(5)でも述べたように刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目してこれを低減化することは、刊行物1及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件はこれ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
そして、本件発明4は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明4は、刊行物1及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(2)刊行物2に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物2記載の発明は、その特許請求の範囲((2-1)参照)にもあるように、水分率が少なくとも0.2重量%以上に調湿する点に特徴を有するものであり、それによってもアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり((2-3)参照)、「アセトアルデヒド含有量の少ない高重合度ポリエステルを製造」((2-2)参照)するものではあるが、刊行物2の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がなされていない。
また、1.(5)でも述べたように刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明4の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目してこれを低減化することは、刊行物2及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件はこれ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
そして、本件発明4は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明4は、刊行物2及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(3)刊行物3に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物3に記載された発明は、その特許請求の範囲((3-1)参照)に及び詳細な説明((3-2)参照)にもあるように、2段階で固相重合重合を行う点に特徴を有するものであり、それによって迅速且つ効率的にアセトアルデヒドを離脱させようとするものであり、「アセトアルデヒド含有量を3ppm以下とする」((3-4)参照)ものではあるが、刊行物3の発明の詳細な説明に具体的に記載されたアルデヒドとしてはアセトアルデヒドしか記載されておらずホルムアルデヒドについては全く記載がされていない。
また、1.(5)でも述べたように、刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目してそれを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目して、これを低減化することは、刊行物3及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、これ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
そして、本件発明4は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明4は、刊行物3及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(4)刊行物4に記載された発明に基づく容易推考性について
刊行物4に記載された発明は、その特許請求の範囲の範囲に記載されているように、固相重合と溶融重合を繰り返すところに特徴を有するものであり((4-1)参照)、この多段固相重合によって極めて高重合度の色調良好なポリエステルを短時間で得るものである((4-2)参照)が、刊行物4には最終的に得られるポリエステル中のアルデヒドについては、何の記載もなくましてホルムアルデヒドの含有量についての記載は存在しない。
また、1.(5)でも述べたように、刊行物5〜8は結晶化工程や固相重合に供する前の溶融重合段階でホルムアルデヒドなどがどの程度存在しているのかを分析したものではなく、また、この学術論文には、本件発明の課題ないし構成でもあるホルムアルデヒドに着目して、それを低減させると言う技術思想は何等記載されていない。
してみれば、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目して、これを低減化することは、刊行物4及び刊行物5〜8には何も示されていないのであるから、本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件は、これ等の刊行物の記載から容易に考えつくものでもない。
そして、本件発明4は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明4は、刊行物4及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
(5)まとめ
上述のように、刊行物1〜4及び刊行物5〜8には、ポリエステル中のホルムアルデヒドに着目して、これを低減化することは何も示されていないのであるから、これ等の刊行物を併せ考慮しても、本件発明4の「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」の要件が容易に考えつくものでもない。
そして、本件発明4は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。
よって、本件発明4は、刊行物1〜4及び刊行物5〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
[8]特許法第29条の2の申立理由についての判断
1.本件発明1について
先願明細書には、ホルムアルデヒド含有量を50ppm以下にするということは示されており(例えば、特許請求の範囲)、実施例では「6」〜「<1」ppmのものが具体的に得られたことも記載されている。
しかし、本件発明1の要件とする「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」程度までホルムアルデヒド量を低減化することは記載されていない。そして、本件発明は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。してみれば、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と直ちに同一であるとは言えない。
2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して更に共重合成分を「前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%の範囲にあり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%の範囲にある」と規定するものであるが、1.で述べた理由により、本件発明1を引用する本件発明2も先願明細書に記載された発明と同一ではない。
3.本件発明3について
本件発明3は本件発明1あるいは2の製造方法の発明に対してそれらの製造方法により得られるポリエステル樹脂、というように物の発明の形で請求されている。そして、この物の発明で引用される製造方法の各要件により、先願明細書に記載されていない「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」ポリエステル樹脂が得られるのであるから、1.又は2.で述べた理由により、本件発明1または2を引用する本件発明3も先願明細書記載のものと同一でない。
4.本件発明4について
先願明細書には、ホルムアルデヒド含有量を50ppm以下にするということは示されており(例えば、特許請求の範囲)、実施例では「6」〜「<1」ppmのものが得られることも記載されてる。
しかし、本件発明4の要件とする「ポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とする」程度までホルムアルデヒドを低減化することは記載されていない。そして、本件発明は、明細書の実施例の記載によれば、ホルムアルデヒド含有率20〜32ppbと言う低含有量のものが現実に得られているのである。してみれば、本件発明4は、先願明細書に記載された発明と直ちに同一であるとまでは言えない。
[9]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明1〜4の特許を取り消すことはできない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、
(B)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分間保つ予備結晶化工程と、
(C)前記予備結晶化工程を経たポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気中で融点以下の温度に加熱してo-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含み、
得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とすることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%の範囲にあり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%の範囲にある請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項4】
o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあり、ホルムアルデヒド含有率が40ppb以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂に関し、さらに詳しくは、食品包装用などの用途に好適に用いられるポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂を二軸延伸成形して得られるボトルは、透明性、機械的強度、耐熱性およびガスバリヤ性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器(PETボトル)として広く用いられている。
【0003】
このようなボトルの原料となるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジヒドロキシ化合物またはそのエステル形成性誘導体とを液相重縮合し、次いで固相重縮合することによって得ることができる。そしてこのような工程を経て製造されるポリエステル樹脂には、通常60〜1000ppbのホルムアルデヒドが含まれている。
【0004】
上記のような含有率でホルムアルデヒドを含むポリエステル樹脂から、たとえばボトルを成形した場合、充填される内容物の味覚がホルムアルデヒドにより低下することがあった。このためボトルなどの成形物を形成するポリエステル樹脂中のホルムアルデヒド含有率はできる限り低いことが望ましい。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、ホルムアルデヒド含有率が極めて低いポリエステル樹脂を得ることができるようなポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とするとともに、ホルムアルデヒド含有率が極めて低いポリエステル樹脂を提供することを目的をしている。
【0006】
【発明の概要】
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、
(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、
(B)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分間保つ予備結晶化工程と、
(C)前記予備結晶化工程を経たポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気中で融点以下の温度に加熱してo-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含み、
得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を40ppb以下とすることを特徴としている。
【0008】
本発明では、前記ジカルボン酸中のイソフタル酸の含有率が0〜10モル%であり、前記ジヒドロキシ化合物中のジエチレングリコールの含有率が0〜10モル%、シクロヘキサンジメタノールの含有率が0〜10モル%であることが好ましい。
【0009】
本発明に係るポリエステル樹脂は、o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあり、ホルムアルデヒド含有率が40ppb以下であることを特徴としている。
【0010】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂について具体的に説明する。
【0011】
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、(A)テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する液相重縮合工程と、(C)前記ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で融点以下の温度に加熱して、o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあるポリエステル樹脂(b)を製造する固相重縮合工程とを含む製造工程によりポリエステル樹脂を製造しており、得られるポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率は、40ppb以下である。
【0012】
本発明では、液相重縮合工程(A)で得られたポリエステル樹脂(a)は、固相重合に先立って、ポリエステル樹脂(a)を、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で昇温結晶化温度(Tc1)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分間保つ予備結晶化工程(B)を行ってもよい。
【0013】
以下、各工程について詳細に説明する。
(A)液相重縮合工程
本発明では、まず液相重縮合工程において、テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体(たとえば低級アルキルエステル、フェニルエステルなど)と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体(たとえばモノカルボン酸エステルエチレンオキサイドなど)とのエステル化物を、重縮合触媒の存在下で加熱溶融して液相重縮合させてポリエステル樹脂(a)を製造する。
【0014】
本発明では、テレフタル酸とエチレングリコールとを用いてホモポリエチレンテレフタレートを製造してもよく、またテレフタル酸およびテレフタル酸以外のジカルボン酸を含有するジカルボン酸と、エチレングリコールおよびエチレングリコール以外のジヒドロキシ化合物を含有するジヒドロキシ化合物とを用いて共重合ポリエステルを製造することもできる。
【0015】
共重合ポリエステルを製造する際に用いられるテレフタル酸以外のジカルボン酸としては、具体的に、フタル酸(オルトフタル酸)、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸およびこれらのエステル誘導体などが挙げられる。これらは2種以上組合わせて用いてもよい。これらの中ではイソフタル酸を用いることが好ましい。
【0016】
またエチレングリコール以外のジヒドロキシ化合物としては、具体的には、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール(プロピレングリコール)、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物類およびこれらのエステル誘導体などが挙げられる。これらは2種以上組合わせて用いてもよい。これらの中ではジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
【0017】
前記テレフタル酸以外のジカルボン酸は、ジカルボン酸を100モル%として0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜3モル%の割合で用いられることが望ましく、エチレングリコール以外のジヒドロキシ化合物は、ジヒドロキシ化合物を100モル%として0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、より好ましくは0〜3モル%の割合で用いられることが望ましい。
【0018】
また本発明では、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から誘導される構成単位を少量たとえば2モル%以下の量で用いてもよい。
【0019】
液相重縮合工程においては、上記のようなジカルボン酸またはそのエステル誘導体(以下、単に「ジカルボン酸」ということがある)と、ジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体(以下、単に「ジヒドロキシ化合物」ということがある)とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造するが、この液相重縮合工程では、通常まずジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とをエステル化反応させ〔エステル化反応工程(A-1)〕、次いで液相重縮合反応〔重縮合反応工程(A-2)〕させる。
【0020】
具体的には、まずジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを含むスラリーを調製する。このようなスラリーには、ジカルボン酸1モルに対して1.02〜2.0モル、好ましくは1.03〜1.5モルのジヒドロキシ化合物が含まれる。
【0021】
このスラリーは、エステル化反応工程(A-1)に連続的に供給される。エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いてジヒドロキシ化合物が還流する条件下で、反応によって生成した水あるいはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施される。
【0022】
エステル化反応工程(A-1)は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gの条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度250〜280℃、好ましくは255〜275℃、圧力0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gの条件下で行われる。
【0023】
エステル化反応工程(A-1)を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までを、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件下で行う。たとえばエステル化反応工程を3段階で実施する場合には、第2段目のエステル化反応は、通常、反応温度245〜275℃、好ましくは250〜270℃、圧力0〜2kg/cm2G、好ましくは0.2〜1.5kg/cm2Gの条件下で行われる。
【0024】
これらの各段におけるエステル化反応の反応率は、特に制限されないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0025】
これらのエステル化工程(A-1)によりジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とのエステル化物(低次縮合物)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量は、通常、500〜5000である。
【0026】
このようなエステル化反応は、ジカルボン酸およびジヒドロキシ化合物以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であるが、さらにトリメチルアミン、トリn-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの第4級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施することができる。これらの塩基性化合物は、エステル化反応器のすべてに添加してもよいし、第1段目あるいは第2段目以降の特定の反応器に添加してもよい。
【0027】
このようにして得られたエステル化物は、液相重縮合反応器に連続的に供給される。液相重縮合反応器では、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエステル樹脂の融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコールを系外に留去させながら重縮合させる。
【0028】
本発明では、重縮合反応工程(A-2)を、1段階で行っても複数段階に分けて行ってもよい。重縮合反応工程が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、通常、反応温度250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrの条件下で行われ、また最終段の重縮合反応は、通常反応温度265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.1Torr、特に好ましくは2〜0.1Torrの条件下で行われる。
【0029】
重縮合反応工程が3段階以上で実施される場合には、第2段目から最終段目の1段前までの重縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件下で行われる。たとえば重縮合反応工程が3段階で実施される場合には、第2段目の重縮合反応は、通常、反応温度260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力50〜2Torr、好ましくは40〜5Torrの条件下で行われる。
【0030】
上記のような(A)液相重縮合工程において製造されるポリエステル樹脂の、25℃のo-クロロフェノール中で測定される極限粘度は、通常0.8〜1.5dl/g、好ましくは0.8〜1.2dl/gである。なおこれらの液相重縮合反応工程の最終段目を除く各段階において到達される極限粘度は特に制限されないが、各段階における極限粘度の上昇の度合が滑らかに分配されることが好ましい。
【0031】
なお本明細書において、極限粘度[η]は、ポリエステル樹脂1.2gをo-クロロフェノール15ml中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。
【0032】
上記のような液相重縮合反応は、重縮合触媒の存在下に行われる。重縮合触媒としては、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒またはチタニウムテトラブトキシドなどのチタン触媒を用いることができる。
【0033】
これらの重縮合触媒のうち二酸化ゲルマニウム化合物を用いると、色相および透明性に優れたポリエステル樹脂が得られるので好ましい。重縮合触媒は、ジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との合計重量に対して、重縮合触媒中の金属重量換算で、0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の割合で用いられることが望ましい。
【0034】
重縮合反応は、安定剤の共存下に実施されることが好ましい。安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステルおよびリン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0035】
上記のような安定剤は、ジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との合計重量に対して、安定剤中のリン原子重量換算で、0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜0.02重量%の割合で用いられることが望ましい。
【0036】
これらの重縮合触媒および安定剤は、前記のようなエステル化工程(A-1)において供給することもできるし、重縮合反応工程(A-2)の第1段目の反応器に供給することもできる。
【0037】
このようにして、最終液相重縮合反応器から得られたポリエステル樹脂(a)は、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。
(B)予備結晶化工程
本発明では、必要に応じてこのようにして得られたポリエステル樹脂(a)に予備結晶化を行ってもよい。
【0038】
この予備結晶化工程は、ポリエステル樹脂(a)を、乾燥状態で昇温結晶化温度(Tc1)〜融点未満の温度、好ましくはTc1より10℃高くかつ融点より40℃以上低い温度下に、1〜30分間、好ましくは5〜20分間保つことによって行われる。
【0039】
たとえばポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートである場合には、具体的に、160〜200℃、好ましくは165〜190℃の温度に1〜30分間加熱する。
【0040】
この予備結晶化工程は、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気中、好ましくは10ppm以下の不活性ガス雰囲気中、より好ましくは5ppm以下の不活性ガス雰囲気中で行われることが望ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0041】
このような条件でポリエステル樹脂(a)を予備結晶化すると、ホルムアルデヒド含有率が極めて少ないポリエステル樹脂を製造することができる。予備結晶化されたポリエステル樹脂(a)は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。
【0042】
予備結晶化工程では、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂(a)の極限粘度は、液相重縮合工程(A)で得られたポリエステル樹脂(a)の極限粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂(a)の極限粘度と、予備結晶化前のポリエステル樹脂(a)の極限粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
【0043】
(C)固相重縮合工程
本発明では、前記のようにして得られたポリエステル樹脂(a)、または予備結晶化されたポリエステル樹脂(a)を固相重縮合する。
【0044】
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、重縮合温度が通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が通常、1kg/cm2G〜10Torr、好ましくは常圧〜100Torrの条件下で、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で固相重縮合反応が実施される。これらの不活性ガスの中では窒素ガスが好ましい。この不活性ガスの酸素濃度は15ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下であることが望ましい。
【0045】
なお、酸素濃度は、微量酸素濃度計により測定する。このような条件でポエステル樹脂(a)を固相重縮合すると、ホルムアルデヒド含有率が極めて少ないポリエステル樹脂を製造することができる。
【0046】
このようして得られたポリエステル樹脂(b)の極限粘度は、通常0.5〜1.4dl/g、好ましくは0.7〜1.3dl/gであることが望ましい。また、このポリエステル樹脂(b)の密度は、通常1.37g/cm3以上、好ましくは1.38g/cm3以上、さらに好ましくは1.39g/cm3以上であることが望ましい。
【0047】
上記のようにポリエステル樹脂(a)を固相重縮合することによって、ホルムアルデヒド含有率が極めて少ないポリエステル樹脂を製造することができる。本発明の方法により得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率は、通常40ppb以下、好ましくは30ppb以下、特に好ましくは20ppb以下である。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ化合物またはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下に液相重縮合させ、次に必要に応じて酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で予備結晶化した後、酸素濃度が15ppm以下の不活性ガス雰囲気で融点以下の温度に加熱して固相重縮合して得られ、o-クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.4dl/gの範囲にあり、ホルムアルデヒド含有率が40ppb以下である。
【0049】
従来のポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率は、通常60〜1000ppb程度であり、このようにホルムアルデヒド含有率が極めて低いポリエステル樹脂は現在まで知られていない。本発明のポリエステル樹脂は、たとえば食品包装用のシート、フィルムまたはボトルなどの用途に好適に用いられる。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、ホルムアルデヒド含有率が極めて低いポリエステル樹脂が得られる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂は、ホルムアルデヒド含有率が極めて低いのでボトル形成用プリフォーム、ボトル、シートなどに好適に用いられる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
なお、ホルムアルデヒド含有率の測定および成形物の透明性の評価は、下記のようにして行った。
[ホルムアルデヒド含有率の測定]
ポリエステル樹脂から試験片を約2g採取し、SPEX社製冷凍粉砕機にて冷凍粉砕する。得られたポリエステル樹脂粉末1gをバイヤル瓶に入れ、蒸留水2mlを加え、水とポリエステル樹脂粉末とをよく混ぜる。キャップをしめた後バイヤル瓶を120℃で1時間加熱する。加熱後氷水中にて冷却し、水溶液を別のバイヤル瓶に移し、0.25%2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン 6N塩酸溶液0.2mlとヘキサン1mlを加え、密栓する。攪拌し誘導体化反応後、ヘキサン相をガスクロマトグラフ測定した。
【0054】
【実施例1】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:10ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:5ppm)して極限粘度[η]が0.70dl/g、ジヒドロキシ化合物成分中のジエチレングリコール(DEG)成分含有率が2.3モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
【実施例2】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:10ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:5ppm)して極限粘度[η]が0.70dl/g、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
【実施例3】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:5ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:2ppm)して極限粘度[η]が0.75dl/g、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸成分含有率が2モル%、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
【実施例4】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:10ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:5ppm)して極限粘度[η]が0.85dl/g、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
【実施例5】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:10ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:5ppm)して極限粘度[η]が0.75dl/g、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分含有率が2モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【実施例6】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:10ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:5ppm)して極限粘度[η]が1.10dl/g、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【比較例1】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:100ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:45ppm)して極限粘度[η]が0.70dl/gの、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が3.6モル%ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂中のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【比較例2】
表1に示すジカルボン酸とジヒドロキシ化合物とを、液相重縮合し、次いで予備結晶化(酸素濃度:120ppm)後、固相重縮合(酸素濃度:60ppm)して極限粘度[η]が0.75dl/gの、ジヒドロキシ化合物成分中のDEG成分含有率が2.3モル%ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂中のホルムアルデヒド含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-10 
出願番号 特願平6-161492
審決分類 P 1 652・ 113- YA (C08G)
P 1 652・ 121- YA (C08G)
P 1 652・ 161- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3365687号(P3365687)
権利者 三井化学株式会社
発明の名称 ポリエステル樹脂の製造方法およびポリエステル樹脂  
代理人 柿澤 紀世雄  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 牧村 浩次  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 牧村 浩次  

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