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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G03G 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 G03G 審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1105925 |
異議申立番号 | 異議2003-71943 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-03-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-04 |
確定日 | 2004-09-13 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3372571号「非磁性一成分トナー」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3372571号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3372571号に係る発明は、平成4年9月1日に特許出願され、平成14年11月22日に特許の設定登録がなされた。 本件特許掲載公報は、平成15年2月4日に発行され、その特許に対して、近藤英生(以下、「申立人1」という)および小寺成子(以下、「申立人2」という)より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月26日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1 訂正の内容 本件特許明細書について、訂正を請求する事項は、次のとおりである。 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載を、 「【請求項1】 現像ロール及び該現像ロール上に形成されるトナー層の厚さを均一に規制し、トナーに電荷を付与するブレードを有する現像装置に使用される非磁性のトナーであり、コールター・マルチサイザー(コールター社製)にて測定した粒径の個数分布において、32チャンネルに分割して得られる各チャンネルの個数分率が、下記式(I)〜(III)で表される条件をすべて満たすことを特徴とする非磁性一成分トナー。 【数1】 (式中、Niはiチャンネル目の個数分率、mは個数分布の中位粒径を含むチャンネルの番号を表す。但し式(I)及び(II)において、i<mである。)」と訂正する。 訂正事項b 段落【0006】の記載を、 「【0006】 【数2】 」 と訂正する。 2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、請求項1に係る発明を特定する事項である、式(I)〜(III) で規定される不等式において、式(I)、(II)の上限を引き下げ、式(III) の下限を増加させるものであるから、発明の包含する範囲を縮小するものであり、したがって、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。 また、訂正事項bは、上記訂正事項aの訂正との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、これらの上限値・下限値は、実施例1,2として出願当初の明細書に記載されていた事項であるから、訂正事項a、bは、新規事項の追加にも、特許請求の範囲を拡張しまたは変更する訂正にも該当しない。 2-3 訂正の適否の結論 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3-1 申立ての理由の概要及び当審での取消理由通知 申立人1は、甲第1号証(特開平2-877号公報。以下、「刊行物1」という)を提出して、 (1) 請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであること、 (2) 請求項1に記載の「中位粒径」の位置によっては、本件発明の限定範囲の内外に分かれることがあるにもかかわらず、発明の効果に差が生じるとは考えられないから、発明が明確でない。そのため、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第5項第2号に規定する要件を満たしていないこと、 を理由として請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張する。 申立人2は、甲第1号証(特開昭63-276064号公報。以下、「刊行物2」という)、甲第2号証(特開平1-112253号公報。以下、「刊行物3」という)および甲第3号証(「合成高分子I」朝倉書店 昭和50年3月30日。以下、「刊行物4」という)を提出して、 (3) 請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであること、 (4) 請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであること、 (5) 本件明細書には、どのようにすれば式(I)〜(III) の条件を満たすトナーが得られるのか、当業者が実施できる程度に記載されていないし、また、式(I)〜(III) の上限・下限を導き出した説明がなく、限界値の臨界性についても明らかでないし、さらに、式(II)のΣi と記載する意味が不明であるから、特許法第36条第4項及び第5項第2号に規定する要件を満たしていないこと、 を理由として請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張する。 当審では、上記申立の理由(1)、(2)、(5)に加えて、 (6) 請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであることを理由として取消理由を通知した。 3-2 本件請求項1に係る発明 上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、平成16年7月26日付全文訂正明細書の特許請求の範囲、請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記、訂正事項a参照)。 3-3 各証拠に記載された発明 刊行物1には、 a.「5μm以下の粒径を有する非磁性トナー粒子が17〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有する非磁性トナー粒子が1〜30個数%含有され、16μm以上の粒径を有する非磁性トナー粒子が2.0体積%以下含有され、非磁性トナーの体積平均粒径が4〜10μmであり、5μm以下の非磁性トナー粒子群が下記式 N/V = -0.04N+k [式中、Nは5μm以下の粒径を有する非磁性トナー粒子の個数%を示し、Vは5μm以下の粒径を有する非磁性トナー粒子の体積%を示し、kは4.5乃至6.5の正数を示す。但し、Nは17乃至60の正数を示す。] を満足する粒度分布を有することを特徴とする非磁性トナー。」(特許請求の範囲)、 b.「さらに本発明の目的は、長時間の使用で性能の変化のない一成分系現像剤用非磁性トナーを提供するものである。」(3頁左上欄2〜4行)、 c.実施例1として、スチレン/アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン共重合体、ニグロシン、低分子量プロピレン-エチレン共重合体、カーボンブラックからなる材料を混練、粉砕、分級して黒色微粉体である非磁性トナーを作成したこと、その粒度分布を100μのアパチャーを具備するコールターカウンターTAII型を用いて測定したこと(13頁左上欄3行〜右上欄5行)、調製した非磁性トナーにフェライトキャリアを加えて二成分現像剤として現像特性を評価したこと(13頁右下欄4〜15行)が記載され、粒度分布の測定結果は第1表に示され、2.00〜50.80μmの間を14チャンネルに分割し、各チャンネルの個数%が示されている。 刊行物2には、 d.「少なくともトナー搬送部材およびトナー層厚規制部材を備え、このトナー搬送部材とトナー層厚規制部材が当接している構造を有する現像装置に使用されるトナーにおいて、コールカウンターで測定したこのトナー粒子の個数平均粒子径と体積平均粒子径との関係が、 1.0 ≦ 体積平均粒子径(μm)/ 個数平均粒子径(μm)≦1.2 であり、かつ体積平均粒子径が3μm〜25μmであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」(特許請求の範囲)、 e.「[目的] 本発明は、従来技術の上記問題点を解決するため、トナー搬送部材上にトナーの薄層を形成させて現像を行い、良質の画像を形成するようにした電子写真における現像方法において、連続複写後もトナー粒径およびトナーの帯電量が変化せず、その結果、初期画像と同等の品質の画像が得られるようなトナーを提供することを目的としている。」(2頁右上欄8行〜16行)、 f.「なお、トナーの粒径はコールターカウンター Model TA II(コールターエレクトロニクス社製)により測定する。」(2頁左下欄9行〜11行)、 刊行物3には、 g.「結着樹脂及び磁性粉を少なくとも有する磁性トナーにおいて、5μm以下の粒径を有する磁性トナー粒子が17〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有する磁性トナー粒子が1〜23個数%含有され、16μm以上の粒径を有する磁性トナー粒子が2.0体積%以下で含有され、磁性トナーの体積平均粒径が4〜9μmであり、5μm以下の磁性トナー粒子群が下記式 N/V = -0.04N+k 〔式中、Nは5μm以下の粒径を有する磁性トナー粒子の個数%を示し、Vは5μm以下の粒径を有する磁性トナー粒子の体積%を示し、kは4.5乃至6.5の正数を示す。但し、Nは17乃至60の正数を示す。〕 を満足する粒度分布を有することを特徴とする磁性トナー。」(特許請求の範囲)、 h.実施例1として、スチレン/アクリル酸ブチル/ジビニルベンゼン共重合体、四三酸化鉄、ニグロシン、低分子量プロピレン-エチレン共重合体からなる材料を混練、粉砕、分級して黒色微粉体である磁性トナーを作成したこと、その粒度分布を100μのアパチャーを具備するコールターカウンターTAII型を用いて測定し、結果を第1表に示すこと(12頁左下欄10行〜右下欄13行)、 i.比較例1として、分級機以外は実施例1と同様にして、第3表に示す黒色微粉体(磁性トナー)を調製した。比較例1の黒色微粉体である磁性トナーは、5μmの粒径を有する磁性トナー粒子の個数%が本発明で規定する範囲よりも少なく、体積平均粒径が本発明で規定する範囲よりも大きく、5μm以下の粒径を有する磁性トナー粒子の個数%(N)/体積%(V)の値も大きくて、本発明が規定している条件を満足していない。得られた磁性トナーの粒度分布を第2表に示す(15頁左下欄8〜20行)こと、 j.第2表の測定結果には、2.00〜50.80μmの間を14チャンネルに分割し、各チャンネルの個数%を示していること、 刊行物4には、 k.合成高分子重合体の、数平均分子量Mnと、重量平均分子量Mwとの比Mw/Mnから、該重合体の不均一性を推察できること(15〜16頁)、 が記載されている。 3-4 当審の判断 申立の理由(1) および取消理由(6) について 申立人1は、刊行物1の実施例1で得られた非磁性トナーの粒度分布測定結果(c)について、14チャンネルから、本件発明で規定する32チャンネルに変換して各チャンネルごとの個数%を求め、本件発明の式(I)〜 式(III)に当てはめた計算を行った結果、式(I)が2.3%、式(II)が12.5%、式(III) が92.9%となると主張している。 しかしながら、本件発明は、上記の訂正により、式(I)が2.9%以下、式(II)が12.4%以下、式(III) が94.8%以上に訂正されたため、式(II)および式(III) の限定範囲において、刊行物1の発明とは重複しないものとなった。また、本件発明の数値範囲とすることを当業者が容易に想到し得たともいえない。 そして、上記構成により本件発明は、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 申立の理由(3) (4) について 申立人2は、刊行物3の比較例1で得られた磁性トナーの粒度分布測定結果(j)について、14チャンネルから、本件発明で規定する32チャンネルに変換して各チャンネルごとの個数%を求め、本件発明の式(I)〜 式(III)に当てはめた計算を行った結果、式(I)が、1.9%、式(II)が10.1%、式(III) が91.4%となる。これは、訂正前の本件請求項1に規定されていた限定範囲内である。一方、刊行物3の比較例1の磁性トナーについて体積平均粒径/個数平均粒径を計算すると、刊行物2に規定する範囲を満たす。その結果から推察すると、刊行物2のトナーのうち少なくとも一部は、本件発明の式(I)〜式(III) を満たしている可能性が高いと主張している。 しかしながら、本件発明は、上記の訂正により、式(I)が、2.9%以下、式(II)が、12.4%以下、式(III) が94.8%以上に訂正されたため、式(III) の限定範囲において、刊行物3の発明とは重複しないものとなった。また、本件発明の数値範囲とすることを当業者が容易に想到し得たともいえない。 そして、上記構成により本件発明は、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。したがって、本件発明を、刊行物2に記載された発明ではないし、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 申立の理由(2) (5) について 申立人1は、申立の理由(2) に関して、粒度分布の異なる2種類の粉体モデルを仮定して、両者はただ中位粒径の位置が1チャンネル異なるだけで粒度分布曲線が極めて近似しているにもかかわらず、本件発明で規定する式(I)〜(III) を満たしたり満たさなかったりする。それに対して、両者のトナーは、効果がそれほど大きく異なるとは考えられない。そのため、本件発明は構成が明確でないと主張している。 しかしながら、この2種類の粉体モデルはいずれも、上記訂正後の式(I)〜(III) を満たしていない。そのため、上記仮定の上に立った主張は、意味のないものとなった。そして本件発明は、効果がある範囲により規定されるのではなく、3つの式を満たすことを要件とするものであり、その要件を外れた範囲のものは、たとえ本件発明が目指す効果を奏するとしても、特許発明の範囲外であることは論を俟たない。 したがって、本件明細書には、申立の理由(2) に主張する記載不備は認められない。 次に、申立人2の理由(5)の主張について検討する。 本件発明は、特定関係式を満たすトナーを製造するための方法を提供するものではなく、いわば、目的に合致するトナーを選抜する方法を見出したことに基づくものである。したがって、トナー製造方法については、通常行われる製造方法が記載されていれば足り、本件明細書の具体例に基づけば、トナーを製造することは可能である。 次に、式(I)〜(III) の上限値・下限値については、上記訂正により、実施例により明記されている範囲に限定されたから、導き出した根拠は明らかである。 また、本件明細書に記載されている「Σ」は、数学公式上、ある範囲からある範囲までの数式の和を示すものであることは明らかであり、Niはiチャンネルにおける粒子の個数分率、mは個数分布の中位粒径を含むチャンネル番号、i<mという定義から、|Nm-i-Nm+i|の値を計算することができることも明白である。そして、 「Σ|Nm-i-Nm+i|」 i と記載すれば、|Nm-i-Nm+i|について、i=1から、i=m-1までの和をとることを意味することは、容易に理解できるものである。 したがって、本件明細書には、申立の理由(5) に主張する記載不備も認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 非磁性一成分トナー (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 現像ロール及び該現像ロール上に形成されるトナー層の厚さを均一に規制し、トナーに電荷を付与するブレードを有する現像装置に使用される非磁性のトナーであり、コールター・マルチサイザー(コールター社製)にて測定した粒径の個数分布において、32チャンネルに分割して得られる各チャンネルの個数分率が、下記式(I)〜(III)で表される条件をすべて満たすことを特徴とする非磁性一成分トナー。 【数1】 (式中、Niはiチャンネル目の個数分率、mは個数分布の中位粒径を含むチャンネルの番号を表す。但し式(I)及び(II)において、i<mである。) 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、電子写真、静電記録等に於いて光半導体上に形成された潜像を可視画像化するために用いられる粉体トナーの中でも、特に、小型プリンター、普通紙ファックス等に都合良く用いられる、非磁性一成分現像法に適したトナーに関する。 【0002】 【従来の技術】 電子写真、静電記録等に於いて光半導体上に形成された静電潜像を粉体トナーにより可視画像化する方法として、着色微粉体であるトナーと、トナーに電荷を付与し磁力によりトナーを静電潜像部に搬送する為に用いられるキャリアとの二成分よりなる現像剤を用いる二成分磁気ブラシ現像法が従来最も都合良く用いられてきた。 しかしながら、二成分磁気ブラシ現像法は現像剤の搬送に磁力を用いるため、現像ロール中に磁石が必要であり、キャリアも鉄粉、ニッケル粉、フェライト等、金属もしくはその酸化物である為、現像器及び現像剤が重くなり記録装置の小型軽量化を阻害する原因となる。 また一方、例えば、米国特許第3,909,258号及び同第4,121,931号に提案されている様に、キャリアを用いずトナー内部に磁性体を内包させトナーの有する磁力によりトナーを静電潜像部に搬送する磁性一成分現像法も従来より良く用いられてきた。しかしながら、この現像法も現像ロール内部には磁石が必要であり現像装置の軽量化という観点からは不利である。 【0003】 これらの現像法の上記問題点を解消するために、米国特許第2,895,847号、同第3,152,012号、特公昭41-9475号、同45-2877号、同54-3624号等に記載されている磁性粉を含有しないトナーのみを使用する非磁性一成分現像法があり、これらの検討・改良が近年盛んになされてきている。 しかしながら、非磁性一成分現像法においては、トナーは帯電ブレードを通過する瞬間のみにしか電荷を付与され得ないため、用いられるトナーの帯電制御はきわめて困難なものとなっている。 かかる問題点を解決するために、特開昭59-231549号等に示されるが如く、特殊な表面処理を施したシリカ微粉体をトナー表面に添加したり、特開昭63-226666号に提案されているように、特殊な帯電制御剤を用いたりしている。 一方、トナーと帯電ブレードとの接触効率の改善も重要であり、特開昭64-77075号、特開平3-294864号等にみられるように種々の外添剤が検討されている。また、粒径の大きなトナーによる粒径の小さなトナーの帯電阻害を防止する目的で特開昭63-279261号に示されるように粒径分布の検討もなされている。 しかしながら、上記手法により初期的には良好な画像を提供しうるトナーも繰り返し複写を行いトナーの補給を繰り返すとかぶりが増加したり、画像の解像度が低下するなどの問題がある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、前記の問題点を解決し、非磁性一成分現像法に対し現像性及びその経時安定性に優れたトナーを提供し、またそのトナーを使用することにより、適正な画像濃度の地かぶりの無い高品位な複写画像を安定に提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明を完成するに到った。 即ち、本発明は、現像ロール及び該現像ロール上に形成されるトナー層の厚さを均一に規制し、トナーに電荷を付与するブレードを有する現像装置に使用される非磁性のトナーであり、コールター・マルチサイザー(コールター社製)にて測定した粒径の個数分布において、32チャンネルに分割して得られる各チャンネルの個数分率が、下記式(I)〜(III)で表される条件をすべて満たすことを特徴とする非磁性一成分トナーを提供するものである。 【0006】 【数2】 【0007】 (式中、Niはiチャンネル目の個数分率、mは個数分布の中位粒径を含むチャンネルの番号を表す。但し式(I)及び(II)において、i<mである。) 本発明でいうコールター・マルチサイザーとはコールター社製の粒径測定装置の一種である。 本発明のトナーの粒径分布を測定するためには、100μmの口径を有するアパーチャーの装着されたコールター・マルチサイザーが用いられる。この測定法による個数分布の測定は電気ノイズ・分散液中のゴミ等により再現性が損なわれがちであるので、電源にノイズフィルターをかけるなどの注意が必要となる。 【0008】 本発明に使用されるトナーの組成としては従来より公知である材料が使用可能である。 本発明に使用されるトナーの樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類:エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。また更には、天然及び合成ワックス類、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、石油樹脂等を用いる事ができる。これらのトナー用樹脂の中で非磁性一成分現像機中の帯電ブレードによる摩擦により破壊されない靭性を持った樹脂設計がなされる事が好ましい。 【0009】 また、本発明のトナーに使用される着色剤としては、カーボンブラック:C.I.ピグメント・イエロー1、同3、同74、同97、同98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料:C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同14、同17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料:C.I.ソルベント・イエロー19、同77、同79、C.I.ディスパース・イエロー164等の黄色染料:C.I.ピグメント・レッド48、同49:1、同53:1、同57、同57:1、同81、同122、同5等の赤色もしくは紅色顔料:C.I.ソルベント・レッド49、同52、同58、同8等の赤色系染料:C.I.ピグメント・ブルー15:3等の銅フタロシアニン及びその誘導体の青色系染顔料:C.I.ピグメント・グリーン7、同36(フタロシアニン・グリーン)等の緑色顔料等が使用可能である。これらの染顔料は、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。 【0010】 また更に、本発明のトナーに使用できる帯電制御剤としては、負帯電トナー用として、クロム・アゾ錯体染料、鉄・アゾ錯体染料、コバルト・アゾ錯体染料、サリチル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ナフトール酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、ベンジル酸もしくはその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体もしくは塩化合物、長鎖アルキル・カルボン酸塩、長鎖アルキル・スルホン酸塩などの界面活性剤類を、正帯電トナー用として、ニグロシン染料及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等が挙げられる。 【0011】 また、本発明のトナー中には、フェライト等の磁性体、導電性調整剤、酸化錫、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛等の金属酸化物、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、離型剤等が必要に応じて加えられても良い。 更に、本発明のトナー表面には、流動性を調整し現像ロール上へのトナー搬送を制御するためや、感光体上へのトナー・フィルミングを防止したり、感光体上の残留トナーのクリーニング性を向上させるために各種添加剤が添加される。これらの添加剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機酸化物、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン等の単独もしくは共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ステアリン酸等の高級脂肪酸及びその金属塩、カーボンブラック、フッ化黒鉛、炭化珪素、窒化ホウ素等が挙げられる。 【0012】 本発明のトナーの製造方法としては、混連粉砕法、スプレイドライ法、重合法等の従来より公知の製造法が使用可能である。 本発明の特定粒径分布をもつトナーを製造するには、混練条件を慎重にコントロールしたり粉砕・分級したものをうまく配合したりする方法がとられる。 【0013】 【作用・効果】 従来のトナーを用いた場合帯電ブレードから現像ローラーに供給され現像されるトナーが正規分布に近い分布形状をしており一定粒径のトナーが選択的に消費され、現像機内のトナーは粒径分布が大きく変化している。これに対し、本発明のトナーは粒径分布が正規分布に近い分布形状をしているため、帯電ブレードから現像ローラーに供給されるトナーの粒径分布と本来の粒径分布が極めて良く類似している。そのため、本発明のトナーを用いると連続複写によるトナーの粒径変化が小さくかぶりのない解像力に優れた良好な画像が安定して得られる。 【0014】 【実施例】 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は勿論これらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、部と表示するものは、特にことわりのない限り重量部を表す。 【0015】 実施例1 ポリエステル樹脂1(酸価=25mgKOH/g、水酸基価=26mgKOH/g、ガラス転移点=74℃、重量平均分子量=18万) 100 部 カーボンブラック 4 部 クロム・アゾ錯体 1.5部 低分子量ポリプロピレン・ワックス 2 部 上記組成物を予備混合し加圧ニーダーで混練した後、粉砕分級したもの100部に対し、疎水性シリカ0.5部を高速攪拌機を用い混合しトナーとした。 得られたトナーを界面活性剤により、電解液(ISOTON-II)に良く分散させたのち、100μmの口径のアパーチャーを装着したコールター・マルチサイザーで粒径を測定した。結果を表1に示す。 【0016】 比較例1 実施例1と同様の組成物を、混練し、粉砕分級条件を変えて製造した後、実施例1と同様に疎水性シリカ0.5部を混合しトナーとした。 得られたトナーの粒径を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示す。 【0017】 実施例2 ポリエステル樹脂2(酸価=22mgKOH/g、水酸基価=26mgKOH/g、ガラス転移点=65℃、重量平均分子量=22万) 100 部 カーボンブラック 3 部 クロム・アゾ錯体 1.5部 低分子量ポリプロピレン・ワックス 1 部 上記組成物を予備混合し加圧ニーダーで混練した後、粉砕分級したもの100部に対し、疎水性シリカ0.2部を高速攪拌機を用い混合しトナーとした。 得られたトナーの粒径を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示す。 【0018】 比較例2〜3 実施例2と同様の組成物を、混練し、粉砕分級条件を変えて粉砕分級した後、実施例2と同様に疎水性シリカ0.2部を混合しトナーとした。 得られたトナーの粒径を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示す。 【0019】 【表1】 【0020】 試験例 実施例1及び2、比較例1〜3のトナーを、沖電気工業製マイクロライン801改造機を使用し、トナーを補給しながら15,000枚の連続実写テストを行いテスト前後の画像濃度及び感光体上のかぶり、及び15,000枚後の現像器中に残存したトナーの粒径を測定した。結果を表2に示す。 【0021】 【表2】 【0022】 注) *1:マクベス濃度計にて測定 *2:感光体上の画像をメンディング・テープに写し取り、色差計CR-221(ミノルタカメラ(株)製)でY値を測定し、もとのテープのY値との差で示した。 【0023】 表2に示すとおり、本発明のトナーが15,000枚の連続プリントを行っても安定に良好な画像を提供したのに対し、粒径分布が本発明の範囲外のトナーは連続プリントによりかぶりが増加し、トナー粒径が大粒径化している事が判明した。また、粒径分布の広い比較例3のトナーは初期からかぶりが多く、感光体上のみならずプリント紙上にもかぶりが認められた。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-20 |
出願番号 | 特願平4-233552 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
YA
(G03G)
P 1 651・ 113- YA (G03G) P 1 651・ 121- YA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 淺野 美奈 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
六車 江一 秋月 美紀子 |
登録日 | 2002-11-22 |
登録番号 | 特許第3372571号(P3372571) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 非磁性一成分トナー |
代理人 | 義経 和昌 |
代理人 | 義経 和昌 |
代理人 | 持田 信二 |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 溝部 孝彦 |
代理人 | 持田 信二 |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 溝部 孝彦 |