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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) E01C |
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管理番号 | 1106047 |
判定請求番号 | 判定2004-60024 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1996-08-06 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2004-03-11 |
確定日 | 2004-11-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2859550号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号説明書に示す「路面の凍結防止法」は、特許第2859550号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書及びイ号図面に示す「路面の凍結防止法」(以下、イ号方法という)は、特許第2859550号の特許請求の範囲第1項記載の発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 2 本件発明 本件特許第2859550号は、平成7年1月24日の出願に係り、平成10年12月4日に設定登録されたものであって、特許請求の範囲第1項に記載された発明(本件発明)は、特許請求の範囲第1項に記載された以下のとおりのものである。 「舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管とこの供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。」 そして本件発明は次のように分説される。 A 舗装道路の路面下の舗装体内に、 B 凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管と C この供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、 D 該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、 E 前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させる F ことを特徴とする路面の凍結防止法。 (以下、上記A〜Fを本件発明の構成要件A〜Fという。) 3 イ号方法 イ号方法は、平成16年7月29日に特許庁審判廷における口頭審理において、請求人は、被請求人の提出した乙第4号証に示された装置を用いて、答弁書の4頁2行ないし15行において特定されるものであると陳述したことを考慮し、当審において次のとおり特定する。 a 舗装道路の路面下の舗装体内に、 b 凍結防止剤を供給し端部の開口から凍結防止剤を放出する供給管と c この供給管の端部13に接続された、上面が開放する外装12の内部に本体1を嵌挿し、この本体1の内部に上面が開放する筐枠状のトラップ3を設置し、このトラップ3の上周縁部分に下フタ6を積み重ね、この下フタ6の上面に浅い皿状のフタ2を設け、このフタ2の内部に多孔質構造のしみだしゴム4を収納したしみ出し部とを具備した供給ユニットを、 d この供給ユニットのしみ出し部の上面が路面に露出するように埋設し、 e 供給管に凍結防止剤を供給して、凍結防止剤をしみだしゴムの上面にしみ出させる f 路面の凍結防止法。 なお、イ号方法に用いられる装置は、乙第4号証の組み立て図に記載されているように、凍結防止剤の供給管の端部13が外装12、本体1の下方を貫通して本体1の内部下方に位置するので、供給管の端部13から供給する凍結防止剤が本体1の内部からトラップ3の内部へ流入し、トラップ3の内部、下フタ6により構成される空部を満たすと、フタ2の底部の小孔を上方に通過してしみだしゴム4から上面にしみ出るものである。 4 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか否かについて (1)本件発明の構成要件Bについて 本件発明の構成要件Bである「凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管」という記載において、供給管は、凍結防止剤が供給され、「所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する」ものである。 すなわち、供給管の管壁には、「孔または開口」が設けられ、その「孔または開口」から凍結防止剤が放出されるものである。 一方、イ号方法においては、凍結防止剤が供給される供給管の管壁には孔または開口は設けられておらず、凍結防止剤は供給管の端部に設けられた開口から装置本体の外装12の内部に放出されるものである。 そうすると、イ号方法は本件発明の構成要件Bを充足しないことは明らかである。 (2)本件発明の構成要件Cについて 本件発明の構成要件Cは「この供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロックとを具備した散布ユニット」であり、「ブロック」は、「供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続され」、「透水性を有する」ものである。 つまり、本件発明においては、散布ユニットの透水性を有する「ブロック」は、供給管に設けられた孔開口に対応する位置に接続され、さらに、当該ブロックの上面から凍結防止剤が滲出又は湧出するものであることから、ブロックは全体として透水性を有するものと解される。 一方、イ号方法においては、本件発明のブロックに対応する「供給ユニット」は、供給管の端部に接続されており、さらに、供給ユニットは、「上面が開放する外装12の内部に本体1を嵌挿し、この本体1の内部に上面が開放する筐枠状のトラップ3を設置し、このトラップ3の上周縁部分に下フタ6を積み重ね、この下フタ6の上面に浅い皿状のフタ2を設け、このフタ2の内部に多孔質構造のしみだしゴム4を収納したしみ出し部とを具備した」ものであることから、しみだしゴムは透水性を有するということができるとしても、外装や本体は透水性を有するものでないから、全体として透水性を有しているものではない。 したがって、イ号方法は本件発明の構成要件Cを充足しない。 (3)本件発明の構成要件Eについて 本件発明の構成要件Eは「前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させる」ものであり、上記(2)で検討したように、イ号方法に用いられる「供給ユニット」は、本件発明の「ブロック」を充足しないのであるから、イ号方法は本件発明の構成要件Eも充足しない。 (4)以上のように、イ号方法は、少なくとも本件発明の構成要件B、構成要件C及び構成要件Eを充足しないから、その技術的範囲に属しないというべきである。 5 請求人主張の均等について 請求人は、本件発明とイ号物件とに相違する部分があったとしても、当該相違に係る部分は「均等」である旨主張するので検討する。 (1)均等の要件 最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日第三小法廷判決、民集52巻1号113頁参照)によれば、特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品(以下「対象製品」という。)と異なる部分が存する場合であっても、 1 右部分が特許発明の本質的部分ではなく、 2 右部分を対象製品におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、 3 右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、 4 対象製品が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、 5 対象製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき は、右対象製品は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である旨判示されている。 そこで、本件において、上記異なった部分の存在(本件発明の構成要件B、C、E)にもかかわらず、上記要件1ないし5を満たすことにより、イ号方法が本件発明の特許請求の範囲に記載されたものと均等なものとして、その技術的範囲に属するということができるかどうか検討する。 (2)要件1及び要件5について 出願手続における補正の経緯を検討する。 (ア)本件特許の請求項に係る発明は出願時から次のように補正されて、最終的に特許となった。 (i) 特許出願時における発明は、以下のとおりであった。 【請求項1】 舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給する供給管と透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。 【請求項2】 舗装道路の路面下の舗装体内に凍結防止剤を供給する1本又は所望の間隔を存して複数本の供給管を埋設すると共に、前記舗装道路の路面下の舗装体内に1個又は複数個の透水性を有するブロックをその上面が前記路面に露出するように埋設し、前記各ブロックに前記供給管を少くとも1本接続し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。 【請求項3】 前記透水性を有するブロックは、厚さ50〜200mm、直径60〜200mmの円盤状の多孔性レンガからなり、且つ、路面上を走行する車両の左右の車輪の間隔に対応し所定間隔を存して道路の幅方向に複数個埋設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 【請求項4】 前記供給管は、前記ブロックと接続される部分の上部側の管壁に前記凍結防止剤放出用の孔又は開口を具備し、前記ブロックはその底部側に供給管係合用の溝を具備し、前記ブロックの前記溝に前記供給管の前記孔又は開口を具備する部分を係合して前記供給管と前記ブロックとを接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 【請求項5】 前記凍結防止剤は、前記路面よりも高所に設置された貯留槽に貯留され、前記路面下の供給管に落差を利用して圧送されることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 【請求項6】 前記凍結防止剤は、貯留槽から前記路面下の供給管にポンプ等により圧送されることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 【請求項7】 前記凍結防止剤は酢酸カリウムを主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 (ii) 平成7年6月14日付け手続補正書において、請求項3を次のように補正した。 【請求項3】 前記透水性を有するブロックは、厚さ50〜200mm、直径30〜200mmの円筒状の多孔性レンガからなり、且つ、路面上を走行する車両の左右の車輪の間隔に対応し所定間隔を存して道路の幅方向に複数個埋設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 (iii) 平成9年4月16日付け拒絶理由通知(特許法第17条第2項の要件違反)に対する平成9年6月5日付け手続補正書において、平成7年6月14日付け手続補正書における補正を削除する補正をした。 (iv) 平成9年8月7日付け手続補正書において、請求項3を次のように補正した。 【請求項3】 前記透水性を有するブロックは、厚さ50〜200mm、直径60〜200mmの円盤状の多孔性レンガからなり、且つ、路面上を走行する車両の左右の車輪の間隔に対応し所定間隔を存して道路の幅方向に複数個埋設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の路面の凍結防止法。 (v) 平成10年4月1日付け拒絶理由通知(請求項1〜7に係る発明は特許法第29条第2項に該当する旨)に対する平成10年6月12日付け手続補正書において、請求項1、2が次のように補正された。 【請求項1】 舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管とこの供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。 【請求項2】 舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管を1本又は所定の間隔を存して複数本埋設すると共に、前記舗装道路の路面下の舗装体内に1個又は複数個の透水性を有するブロックをその上面が前記路面に露出するように埋設し、前記各ブロックに前記供給管の少くとも1本を前記孔又は開口の設けられた部分において接続し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。 (イ)そして、上記拒絶理由通知で引用した刊行物である特開平6-146207号公報には、「道路舗装表層を多孔質構造とすると共に、道路舗装中に、凍結防止剤溶液供給用の多孔質チューブを敷設した、道路の融雪及び凍結防止舗装。」に係る発明が記載されていたから、出願人(本件判定請求人)は、拒絶理由通知を回避すべく、請求項1に係る発明を 「舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給する供給管と透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。」から、 「舗装道路の路面下の舗装体内に、凍結防止剤を供給し所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管とこの供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロックとを具備した散布ユニットを、該ユニットの前記ブロックの上面が前記路面に露出するように埋設し、前記供給管に凍結防止剤を供給して、該凍結防止剤を前記ブロックの上面に滲出又は湧出させることを特徴とする路面の凍結防止法。」 と限定するように補正したといえる。 (ウ)そうすると、本件発明における「所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管」及び「この供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロック」とを具備した散布ユニットは、本件発明の本質的部分といえ、さらに、イ号方法のように凍結防止剤を供給管の端部において放出することは、特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるといえる。 (エ)請求人の主張に対して 請求人は、本件発明の本質的な部分は、凍結防止剤を特定の箇所に滲出又は湧出させ走行車輌のタイヤにより拡散させることにあり、配管の接続方法やブロックの材質構造は本質的部分ではない旨(請求書4頁28行ないし32行)、凍結防止剤をブロックの上面に滲出又は湧出させることにあり、ブロックの構造は本質的なものではないから、均等の要件1を満たす旨(平成16年9月10日付上申書2頁2行ないし3頁2行)主張する。 しかしながら、上記したように出願の経緯をみると本件発明の「所定の箇所の管壁に設けられた孔又は開口から凍結防止剤を放出する供給管とこの供給管の前記孔又は開口の設けられた部分に接続された透水性を有するブロック」は引用例との差を明確にするために出願人(本件判定請求人)自らが限定した構成であって、本件発明の本質的部分といえることから、請求人の主張は採用できない。 (3)以上のように、「均等」に関する他の要件を検討するまでもなく、請求人の主張は採用できない。 6 まとめ よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
イ号説明書(イ号方法) a 舗装道路の路面下の舗装体内に、 b 凍結防止剤を供給し端部の開口から凍結防止剤を放出する供給管と c この供給管の端部13に接続された、上面が開放する外装12の内部に本体1を嵌挿し、この本体1の内部に上面が開放する筐枠状のトラップ3を設置し、このトラップ3の上周縁部分に下フタ6を積み重ね、この下フタ6の上面に浅い皿状のフタ2を設け、このフタ2の内部に多孔質構造のしみだしゴム4を収納したしみ出し部とを具備した供給ユニットを、 d この供給ユニットのしみ出し部の上面が路面に露出するように埋設し、 e 供給管に凍結防止剤を供給して、凍結防止剤をしみだしゴムの上面にしみ出させる f 路面の凍結防止法。 イ号方法に用いられる装置の図面 |
判定日 | 2004-11-08 |
出願番号 | 特願平7-27589 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(E01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 恒明、深田 高義 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
山田 忠夫 木原 裕 |
登録日 | 1998-12-04 |
登録番号 | 特許第2859550号(P2859550) |
発明の名称 | 路面の凍結防止法 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 加藤 恭介 |
代理人 | 福田 賢三 |