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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A23L
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない A23L
管理番号 1106967
審判番号 無効2003-35308  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-25 
確定日 2004-09-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2092094号発明「アルカリ性健康食品及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
I.手続の経緯

本件特許209294号の請求項1乃至請求項2に係る発明についての出願は、平成5年11月30日に特願昭5-326134号として出願され、平成7年12月6日に特公昭7-112416号として出願公告後、平成8年9月18日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、平輝有限会社より平成15年7月25日に本件無効審判の請求がなされ、平成15年10月14日付で被請求人キパワー株式会社より訂正請求がなされ、平成16年1月5日付で請求人より弁駁書が提出された後、平成16年2月19日付で当審の職権審理による無効理由通知が通知されたところ、平成16年4月26日付で被請求人から意見書が提出され、その後平成16年6月4日付で当審の職権審理による審尋が通知され、平成16年6月23日付で被請求人から回答書が提出されたものである。

II.訂正請求について

1.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に係る記載、
「500〜2000℃で焼成してなる」を、
「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示す」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に係る記載、
「500〜2000℃で焼成した後」を、
「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示す」と訂正し、
「冷却して粉砕する」を、
「冷却して粉砕し、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品を得る」と訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0005】の記載「500〜2000℃で焼成してなる」を、
「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示す」と訂正し、
明細書の段落【0006】の記載「天然塩を500℃〜2000℃で焼成した後、冷却して粉砕する」を、
「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した後、冷却して粉砕し、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品を得る」と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0019】の「実験例6〜8」を「実験例6〜11」と、明細書の段落【0021】の「実験例11及び12」を「実験例13及び14」と、「実験例13〜18」を「実験例15〜18」と訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、「500〜2000℃で焼成する」という内容をより具体的に「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり」と限定するものであると共に、「アルカリ性健康食品」の内容をより具体的に、「水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品」と限定するのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書には、「次いで、上記の竹筒に詰めた塩を焼成する。焼成は数回に分けて行うのが好ましい。例えば、第1回目の焼成は900℃程度で行う。・・・2回目の焼成は1000〜1200℃で行う。・・・最後(9回目)に特殊ステンレス溶解炉の中に塩の柱を入れ、1500℃で12時間焼成すると真っ赤に溶けた溶液が得られ、これを冷却して外観灰色の塊となったものが得られる。・・・」(段落【0010】〜【0012】)と、また「しかも本発明のアルカリ性健康食品を水に溶かしたものは、従来の市販の電解装置で作られるアルカリイオン水と比較して、大きなマイナスの酸化還元電位を示しており、還元電位の高い超アルカリイオン水が得られる。・・・」(段落【0025】)と記載されているから、上記訂正事項は、願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1と同様の理由で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1、2に伴うものであり、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、発明の詳細な説明欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものに該当し、願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、平成15年改正前特許法第134条第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.当事者の主張

1.請求人の主張
請求人は、「第2092094号の請求項1乃至2に係る発明についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第7号証及び参考資料1,2を提出して、その理由として、
(1)参考資料1,2を斟酌すれば、本件明細書の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである、
(2)本件請求項1乃至2に係る発明は、甲第1、2及び4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、旨主張している。

甲第1号証:特開平3-257015号公報
甲第2号証:大韓民国特許公開公報(公開番号:特1990-000020)
甲第3号証:甲第2号証の日本語翻訳文
甲第4号証:大韓民国特許公開公報(公開番号:特1991-005774)
甲第5号証:甲第3号証の日本語翻訳文
甲第6号証:カタログ
甲第7号証:警告書
参考資料1,2:インターネット上の「Qi Power Salt」の紹介

2.被請求人の主張
一方、被請求人は、請求人の提出した証拠方法によっては、本件特許を無効にすることができないと主張し、証拠方法として、以下の乙第1号証を提出している。

乙第1号証:ホームページ「こだわりショップ」のハードコピー

3.当審の無効理由通知の概要
当審の職権審理により平成16年2月19日付で通知した無効理由の概要は、次の通りである。
1)本件発明細書は、3段階焼成として各段階の焼成温度を限定する焼成温度条件の技術的意義が不明であるため、当業者が本件発明を容易に実施しうる程度に本件発明が記載されていないし、或いは、特許請求の範囲に発明の構成に欠くことのできない事項が記載されていないから、本件発明の特許は、特許法第36条第4乃至5項の規定に違反してされたものである。
2)本件発明1乃至2は、その出願前日本国または韓国において頒布された刊行物1乃至3(夫々、上記甲第1、2及び4号証に相当する。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に規定に違反してされたものである。

IV.本件発明

訂正後の本件請求項1乃至2に係る発明(以下、「本件発明1乃至2」という。)は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】天然塩を900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すことを特徴とするアルカリ性健康食品。
【請求項2】天然塩を容器に詰め、該容器に蓋をして900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した後、冷却して粉砕し、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品を得ることを特徴とするアルカリ性健康食品の製造方法。」

V.当審の判断

V-I.特許法第36条第4項違反について

請求人は、審判請求書において、「本件発明1及び2における温度条件を特定する技術的特徴の理由説明が、発明の詳細な説明に無いので、公知技術から本件特許発明を特定できない。」旨主張し、また、平成16年1月5日付弁駁書により、更に詳細に、1)本件発明1乃至2における「焼成温度条件」にすれば、如何なる天然塩を焼成しても(天然塩の成分が相違しても)、大きなマイナスの酸化還元電位を示し、酸化還元電位の低い超アルカリイオン水が得られるとする合理的理由が記載されておらず、当分野の技術常識に鑑みても、如何なる天然塩を焼成しても、大きなマイナスの酸化還元電位を示すものとは認められない、2)本件明細書の表1に示すものは、本件発明1乃至2に係る焼成された天然塩の1例を示す成分表であるが、原料となる焼成前の天然塩の成分表が示されていないので、焼成による効果を具体的に確認できない、3)表2には、本件発明1乃至2に係る焼成された天然塩を100ccの水道水に溶かした溶液の酸化還元電位の測定値の対照として、水道水のみの酸化還元電位を示しているだけでがあり、対照として、焼成前の天然塩を100ccの水道水に溶かした溶液の酸化還元電位の測定値を示していないから、本件発明1及び2の「焼成温度条件」により充分なマイナスの酸化還元電位のアルカリ性健康食品が得られることが具体的に確認できない、4)本件発明1乃至2において、「天然塩を900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり」及び「容器に蓋をして900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した後、冷却して粉砕し」と規定しているが、それらを決定する根拠が明細書に開示されていない旨主張している。(当審の職権審理により平成16年2月19日付で通知した無効理由も同様である。)
そこで、焼成温度条件の技術的意味について、本件明細書の記載を検討する。
本件明細書の段落【0007】に、「本発明において、上記焼成温度が上記範囲を外れると充分なマイナスの酸化還元電位が得られない。」と記載され、表2によれば、本件発明の実験例1〜4の酸化還元電位が-131mV〜-303mVであることが示されており、本件発明の効果として、段落【0025】には、「しかも本発明のアルカリ性健康食品を水に溶かしたものは、従来の市販の電解装置で作られるアルカリイオン水と比較して、大きなマイナスの酸化還元電位を示しており、還元電位の高い超アルカリイオン水が得られる。従来、このような大きなマイナスの酸化還元電位を示す物質はなかった。そのため、本発明品を食したり水に溶かして飲むことで、より効果的なフリーラジカルの捕捉効果が期待できる。」と記載されているから、当業者であれば、本件発明1及び2の焼成温度条件により充分なマイナスの酸化還元電位のアルカリ性健康食品が得られることが理解できる。
次に、本件明細書の段落【0023】に「表2〜4より本発明品は化学塩や天然塩等のような単なる塩ではないことは、明らかである。本発明品を水に溶かした場合のpHと酸化還元電位は、塩を水に溶かした場合と著しく異なる値を示す。また、電解装置を使用して製造されたアルカリイオン水と比べて、還元電位が大きく、更に還元電位の値の経時的な変化も小さいことが判る。」と記載され、本件発明の効果として、段落【0024】には、「以上説明したように、本発明のアルカリ性健康食品は水に溶かすだけでアルカリイオン水が得られる。従って、従来のアルカリイオン水のように電解装置が不要であり、しかも、通常は固体であるため水に溶解しないかぎり能力が低下しないので、携帯性に便利であり保存性に優れ、本品を携帯することでアルカリイオン水をどこでも飲むことが可能である。」と記載されているから、当業者であれば、本件発明1及び2の焼成温度条件により酸化還元電位の値の経時的な変化も小さいアルカリ性健康食品が得られることが理解できる。
そうすると、「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成」という構成に係る作用効果は、本件明細書中に十分開示されているいえるから、この構成に係る技術的意義が不明であるということはできない。
そして、被請求人の提出した、平成16年4月26日付意見書に添付された実験成績証明書及び平成16年6月23日付回答書によれば、次のことが具体的に見て取れる。
1)韓国産塩田塩と韓国で市販されている天然塩(試料A)と日本で市販されている赤穂の塩(試料B)を、本件発明の焼成温度で3段階焼成したところ、焼成前の酸化還元電位は、夫々225mv、238mv、262mvであったものが、焼成後には、夫々-306mv、-85mv、-47mvになったことから、本件発明の焼成温度で種々の天然塩を3段階焼成することにより、充分なマイナスの酸化還元電位の焼成塩が得られる。
2)韓国で市販されている天然塩(試料A)と日本で市販されている赤穂の塩(試料B)を、(a)900℃、1500℃で2段階焼成したところ、酸化還元電位は、焼成後には、夫々0mv、-3mvになったこと、(b)1500℃で1段階焼成したところ、酸化還元電位は、焼成後には、夫々12mv、15mvになったこと、(c)400℃、700℃、1000℃で3段階焼成したところ、酸化還元電位は、焼成後には、夫々30mv、57mvになったことから、本件発明の温度条件でも1或いは2段階焼成では、充分なマイナスの酸化還元電位の焼成塩は得られず、また本件発明の温度条件を外れると3段階焼成しても、充分なマイナスの酸化還元電位の焼成塩は得られない。
そうすると、「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成」という構成に係る作用効果は、この実験成績証明書によっても具体的に確認できるから、この構成に係る技術的意義が不明であるということはできない。
したがって、請求人の主張及び提出された証拠方法によっては、本件明細書の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものとすることはできない。

V-II.特許法第29条第2項違反について

1.甲号証の記載事項
甲第1、2及び4号証には、以下の事項が記載されている。

甲第1号証:特開平3-257015号公報
(1-1)Mg塩の含有量が0.05重量%以上の塩を500〜700℃で焼成することを特徴とする焼塩の製造方法。(特許請求の範囲)
(1-2)本発明の方法によれば、塩を500〜700℃という高温度で焼成することにより塩に付着ないし含有されている塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)の殆どが酸化マグネシウム(MgO)に変化し、これが塩の表面をコーティングした状態になる。このMgOのコーティングにより塩の吸湿性は著しく低くなり、長期間にわたってサラサラ性が持続する。(公報2頁左下欄17行〜右下欄4行)

甲第2号証:大韓民国特許公開公報(公開番号:特1990-000020)
(2-1)塩を竹筒に押し入れて粘土で密封する段階と、上記竹筒を炭火の加熱炉に入れて竹筒が完全に燃焼されるまで加熱して、竹筒が燃焼された次に塩の塊を選別して粉砕と上記密封の段階を数回反復加熱する段階と、最終9回の加熱で松脂を燃焼させる高熱で加熱して竹筒が燃焼された後で、塩が溶けて、溶融された塩を収集して冷却して固化する段階を特徴とする竹塩の製造方法。(特許請求の範囲)
(2-2)この発明は竹塩の製造方法に関するものである。
人類は非常に古くから塩を食してきた。そして、塩味はあらゆる味の基礎となっている。
塩は多くの飲食物と共に絶えず摂取されるので、人の健康維持にも密接に関連していることが知られていて、多数の健康関連団体から塩の適切な摂取量に関する勧告が出されている。
この発明の目的は、上記のように食生活にとって切っても切り離せない食塩の製造方法に関するもので、薬性を含有した竹塩に代用することのできる常食用竹塩の製造方法を提供することである。この発明の他の目的は、上記の常食用食塩によもぎ、ニンニク、松葉等の薬性を添加した竹塩の製造方法を提供することであり、また、この発明の他の目的は竹に含有される薬性を食塩に添加させた常食用竹塩の製造方法を提供することである。
この発明は西海岸の天日塩を主原料として、竹特に薬性が充分に含有されている3年生以上の竹、そして破砕したよもぎ、ニンニクまたは松葉を薬性添加材として使用し、薬性を添加のための加熱手段として木炭と松脂を使用することを特徴とする。
この発明の竹塩製造方法を実施例をあげて説明すると次のようになる。
3年生以上の竹(1')を竹筒(1)になるように節の部分を切断する。
竹筒(1)に8/10前後で塩(2)を固めて入れ、またぐっと、ニンニク及び松葉を破砕したもの等薬性物(3)を固めて入れ、次に、有機物が混ざらない清潔な山の粘土(4)で竹筒(2)の入口を密封する。
加熱炉(5)は筒形のステンレス炉であり、低部に火口(6)を有す燃焼室(7)を設け、鉄棒(8)と鉄網(9)をかける燃焼台(10)を構成して、上部に保温排気口(11)を設けている。
塩を焼く順序は上記塩(2)と薬性物(3)を固めて入れて粘土(4)密封した竹筒(1)を上記加熱炉(5)の燃焼袋(10)上に密封部が上部へ行くように2-4層に密接して置き、その後に、燃焼室に火をつけて竹筒が完全に燃焼するまで、塩を加熱する。
竹筒が完全に焼けた後、塩の塊を選別して、粉砕した次に、上記と同じ過程を9回まで反復する。
ただし9回目の焼く過程では、松葉だけを燃料に使用して燃料の灰が余らないように加熱し、松葉を高熱で燃焼させて、塩が溶けて流れるようにし、溶けた塩を収集して固めれば、所望する竹塩を得られる。
上記の方法で得た竹塩は竹の薬性またはよもぎ、ニンニク、松葉の薬性が火気によって塩に添加されており、このような竹塩の常食によって竹の薬性などを摂取できるようになる。(発明の詳細な説明)

甲第4号証:大韓民国特許公開公報(公開番号:特1991-005774)
(3-1)竹筒に天日塩を押し入れて黄土で密封した後で、木で燃焼して硬い塊にしたものを粉末化して、竹筒に前記粉末化させた天日塩を押し入れて黄土に密封燃焼する上記過程を8回した後、最後粉末化させた天日塩に木の皮の粉末を混合して竹筒に押し入れて黄土で密封させて加熱筒の内に入れて木と松脂を燃料にして温度1,000℃以上で加熱して溶融・冷却させることを特徴とする竹塩の製造方法。(特許請求の範囲)
(3-2)発明は食用としてはもちろん薬用でも使用できる竹塩の製造方法に関するものである。
飲食物の味付けをする目的で広く利用されている既存の天日塩は、人体組織構成及び活動に重要な役割を果すが、一方で過度の使用によっては胃を害する等色々な疾病を誘発させているのも実情である。
本発明は上記の点を勘案してなされたものであり、天日塩と胃腸病治癒に薬理作用が卓越しているにれの皮の粉末を混ぜて、3年生以上の王竹の中に詰め、異物質が全く混ざらない深い山中の黄土を捏ねて密閉した後、松の木で焼いて、玉竹に含有している人体に有益な竹の物質とにれの皮に含有している有益な物質が天日塩に浸透するようにし、上記の薬理作用によって食塩としてはもちろん、薬用にも適し健康な人体を維持させることができるようにした竹塩の製造方法を提案する。
次に、本発明の実施例を工程順に詳細に説明する。
実施例
第1工程 下部分は密閉されて上部分は開放されるように節の部分を切断した3年生以上の王竹の中に天日塩粉を詰め、王竹の開放部を異物質が含有しないように捏ねる黄土で密閉する。
第2工程 火鉢の網版の上に載せて加熱し、王竹が全部燃えて灰ができるまで、松の木で焼く。王竹が燃焼する際に、王竹に含有していた有益物質が天日塩内に浸透し、王竹が全部燃えて灰ができる時には天日塩は硬い塊になる。
第3工程 第2工程によって硬い塊ができた天日塩を粉末化させ、また、王竹に詰めた後、捏ねた黄土で密閉させて第2工程と同一の作業をする。
第4工程 第3工程を繰り返し(第1、2、3工程 合計8回)行った後、粉末化させた天日塩ににれの皮の粉末を混ぜた後、王竹の中に詰め、捏ねた黄土で密閉し、下方に排出口がある加熱筒の内に入れて、松の木や松脂を燃料として加熱筒の内の温度を1000度以上に温度を高め、天日塩とにれの皮の粉末を熔融冷却させて完成品とする。
本発明によれば、天日塩に人体に非常に有益な竹の液とにれの物質が混合されているので、これの薬理作用によって食塩または薬用に使用時、健康を増進させる効果がある。

2.対比判断

本件発明1乃至2と甲第1、2、4号証刊行物に記載された発明とを比較すると、甲第1号証刊行物には、塩を500〜700℃で焼成することが記載されているだけであり、甲第2号証刊行物には天然塩を焼成した後溶融することが記載されているが、塩の焼成温度については記載されておらず、甲第4号証刊行物には、天然塩を焼成した後、温度1000℃以上で、溶融することが記載されているが、塩の焼成温度については記載されていない。
そうすると、甲第1、2、4号証刊行物には、本件発明1乃至2の構成である「天然塩を900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成」することは記載されていないし、又それを示唆する記載もない。
そして、本件発明1乃至2は、この構成の相違により、「酸化還元電位のマイナスの数値が大きく、しかも、保存及び携帯性に優れるアルカリ性健康食品を得る」という、天然塩の単なる焼成では得られない、明細書記載の格別の効果を奏するものである。
請求人は、この相違点について、「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した」点は、それを特定する理由の開示が明細書に記載されていないので、単なる恣意的な特定にすぎないから、当業者が容易になし得る旨主張している。
しかしながら、V-Iに記載したとおり、「900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した」ことにより、酸化還元電位のマイナスの数値が大きく、更に酸化還元電位の値の経時的な変化も小さいアルカリ性健康食品が得られることが理解できるから、本件発明1及び2の焼成温度条件を決定することは、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明1乃至2が、甲第1、2及び4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

VII.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1乃至2に係る発明の特許を無効とすることができない。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルカリ性健康食品及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 天然塩を900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すことを特徴とするアルカリ性健康食品。
【請求項2】 天然塩を容器に詰め、該容器に蓋をして900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した後、冷却して粉砕し、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品を得ることを特徴とするアルカリ性健康食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアルカリ性健康食品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリイオン水が健康飲料として公知である。アルカリイオン水は電解装置により作られ、ミネラルを多量に含み又その高いpHにより腸内異常醗酵、消化不良及び胃酸過多等に有効であるとされている。また、アルカリイオン水は酸化還元電位が高いマイナスの数値を示すことが知られている。近年、体内で発生する活性酸素(フリーラジカル)が、細胞を攻撃し肉体を老化させたり疾病を発生させるとする説がある。これに対しアルカリイオン水を体内に摂取することで、酸化還元電位のマイナスの物質(還元物質)が体内のフリーラジカルに電子を与えて生体の分子から電子が奪われるのを防止し、老化や疾病を防ぐ効果が期待できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電解装置等で作られた従来のアルカリイオン水は、電解直後にはある程度マイナスの酸化還元電位を示すが、作った後でタンク等に保存しておいて時間が経過すると、その酸化還元電位がプラス側に移行してしまい、保存が効かず持ち運びできないという欠点があった。また、健康食品としては、より酸化還元電位のマイナスの数値の大きなものが要望されている。
【0004】
本発明は上記の従来技術の欠点を解消しようとするものであり、酸化還元電位のマイナスの数値が大きく、しかも、保存及び携帯性に優れるアルカリ性健康食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルカリ性健康食品は、天然塩を900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成してなり、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のアルカリ性健康食品の製造方法は、天然塩を容器に詰め、該容器に蓋をして900℃で焼成した後、1000〜1200℃で焼成し、次いで1500℃で焼成した後、冷却して粉砕し、水に溶かしたときにマイナスの酸化還元電位を示すアルカリ性健康食品を得ることを特徴とする。
【0007】
本発明において、上記焼成温度が上記範囲を外れると充分なマイナスの酸化還元電位が得られない。
【0008】
【実施例】
以下、本発明のアルカリ性健康食品の実施例について説明する。本発明のアルカリ性健康食品は、原料として天然塩が用いられるが、天日塩のような海の塩を用いるのが望ましく、更に本発明アルカリ性健康食品の好ましい製造方法は下記の通りである。
【0009】
先ず、天然塩を詰める容器として節を片方だけ残し片側端部が開口した竹を用い、該竹の開口部から天然塩を固く詰める。この塩の上から松葉及びもぐさを詰め、更に黄土を水でこねたものを詰めて蓋をする。
【0010】
次いで、上記の竹筒に詰めた塩を焼成する。焼成は数回に分けて行うのが好ましい。例えば、第1回目の焼成は900℃程度で行う。焼成は燃料として松の木と松ヤニを用い、窯の中に塩を詰めた竹筒を置いて12時間焼成した後12時間自然冷却すると、焼成後には塩の柱だけが残る。
【0011】
2回目の焼成は上記の塩の柱を細かく砕き、1回目の焼成と同様に竹筒に詰めその上から松葉ともぐさを詰め更に黄土で蓋をして2回目の焼成を行う。2回目の焼成は1000〜1200℃で行う。更に、3回目から8回目の焼成を行う。これは2回目と全く同じ操作を6回繰り返して行う。
【0012】
最後(9回目)に特殊ステンレス溶解炉の中に塩の柱を入れ、1500℃で12時間焼成すると真っ赤に溶けた溶液が得られ、これを冷却して外観灰色の塊となったものが得られる。得られたものは食塩の味はするがさほど塩辛くはない。この塊は粉砕して粉末状や果粒状にする。
【0013】
更に必要に応じて本品に無機塩類や、シナモン、乾燥生姜等を添加して粒状としてもよい。
【0014】
本発明のアルカリ性健康食品は、ミネラル及び栄養補給として、そのままの状態で食したり、水に溶かしてアルカリイオン水として飲んだりして、健康食品の用途に最適に利用できる。
【0015】
上記の製造方法にて得られた本発明アルカリ性健康食品の成分組成の1例を下記の表1に示す。
【0016】
【表1】

尚、炭素と窒素は検出されなかった(CNデコーダーによる)。
【0017】
〔実験例〕
上記の製造方法に示した9回焼成を繰り返して製造した本発明品を水に溶かした溶液を作り、水素イオン濃度(pH)及び酸化還元電位を測定した結果を実験例1〜4として下記の表2に示す。尚、実験例5として本発明品を溶解するのに用いた水を測定した結果をブランクとして示す。
【0018】
【表2】

【0019】
また、比較のために通常の化学塩及び天然塩を水(蒸留水)に溶解した溶液を作り水素イオン濃度及び酸化還元電位を測定して実験例6〜11とし、塩を溶かすのに用いた蒸留水をブランクとして測定し実験例12とし、下記の表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
更に、参考のために家庭用の電解装置で作った従来のアルカリイオン水の作りたてと保存した後の水素イオン濃度及び酸化還元電位を測定し実験例13及び14とし、市販のスポーツドリンク、水に溶かして飲むタイプのビタミンC錠剤及び外国産のミネラルウォーター2種類について、同様に水素イオン濃度及び酸化還元電位を測定し実験例15〜18として下記の表4に示す。
【0022】
【表4】

※1:ドリンク1.0gを水道水100ccに溶解したもの。
※2:錠剤3個を水道水100ccに溶解したもの。
【0023】
表2〜4より本発明品は化学塩や天然塩等のような単なる塩ではないことは、明らかである。本発明品を水に溶かした場合のpHと酸化還元電位は、塩を水に溶かした場合と著しく異なる値を示す。また、電解装置を使用して製造されたアルカリイオン水と比べて、還元電位が大きく、更に還元電位の値の経時的な変化も小さいことが判る。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルカリ性健康食品は水に溶かすだけでアルカリイオン水が得られる。従って、従来のアルカリイオン水のように電解装置が不要であり、しかも、通常は固体であるため水に溶解しないかぎり能力が低下しないので、携帯性に便利であり保存性に優れ、本品を携帯することでアルカリイオン水をどこでも飲むことが可能である。
【0025】
しかも本発明のアルカリ性健康食品を水に溶かしたものは、従来の市販の電解装置で作られるアルカリイオン水と比較して、大きなマイナスの酸化還元電位を示しており、還元電位の高い超アルカリイオン水が得られる。従来、このような大きなマイナスの酸化還元電位を示す物質はなかった。そのため、本発明品を食したり水に溶かして飲むことで、より効果的なフリーラジカルの捕捉効果が期待できる。
【0026】
また、本品から得られるアルカリイオン水をpHとミネラルの含有量で評価した場合にも、本品は従来のアルカリイオン水よりも高いpHを示し、更にミネラル分を豊富に含有するので、アルカリイオン水よりも優れていると言える。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-07-05 
結審通知日 2004-07-07 
審決日 2004-07-23 
出願番号 特願平5-326134
審決分類 P 1 112・ 531- YA (A23L)
P 1 112・ 121- YA (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 浩志  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
柿沢 恵子
登録日 1996-09-18 
登録番号 特許第2092094号(P2092094)
発明の名称 アルカリ性健康食品及びその製造方法  
代理人 細井 勇  
代理人 細井 勇  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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