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審決分類 |
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない H01J |
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管理番号 | 1107185 |
審判番号 | 訂正2003-39102 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-04-09 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2003-05-20 |
確定日 | 2004-11-10 |
事件の表示 | 特許第3139077号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第3139077号に関する手続きの出願の経緯は次のとおりである。 平成 3年 9月27日 特許出願(特願平3-249190号) 平成12年12月15日 特許の設定登録 平成13年 8月20日 小松和子より特許異議申立(異議2001-72267号) 平成13年 8月27日 田中正昭より特許異議申立(異議2001-72267号) 平成14年 9月 9日 異議の決定 平成14年10月29日 取消決定取消請求訴訟(平成14年(行ケ)第553号) 平成15年 5月20日 本件訂正審判請求 平成15年 6月20日 訂正拒絶理由通知 平成15年 8月21日 意見書 第2.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3139077号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、次の【訂正事項1】及び【訂正事項2】のとおりに訂正しようとするものである。 【訂正事項1】 特許請求の範囲の【請求項1】に記載されている 「管状バルブの外面に、互いに周方向に離間して一対の電極を設け、この一対の電極のバルブ長手方向の一端側に高周波電源の配線が接続された低圧放電灯において、上記一対の導電体間に位置するバルブの一側面を有効発光面とした場合、この有効発光面に沿う上記導電体間の距離をA、反対側の面に沿う上記導電体間の距離をBとした場合、A>Bの関係を有するとともに、距離Bは、一対の導電体に印加する電圧に対して1mm/1kV以上の間隔を有していることを特徴とする低圧放電灯。」を 「管状バルブの外面に、互いに周方向に離間して一対の電極を設け、この一対の電極のバルブ長手方向の一端 に高周波電源が配設接続された低圧放電灯において、上記一対の電極間に位置するバルブの一側面を有効発光面とした場合、この有効発光面に沿う上記電極間の距離をA、反対側の面に沿う上記電極間の距離をBとした場合、A>Bの関係を有するとともに、距離Bで離間する一対の電極間は1mm/1kV以上の間隔を有し、かつ、これらの電極間には、1kV以上の電圧が印加されることを特徴とする低圧放電灯。」 に訂正する。 【訂正事項2】 【課題を解決するための手段】に記載されている 「本発明 は、管状バルブの外面に、互いに周方向に離間して一対の電極を設け、この一対の電極のバルブ長手方向の一端側に高周波電源の配線が接続された低圧放電灯において、上記一対の導電体間に位置するバルブの一側面を有効発光面とした場合、この有効発光面に沿う上記導電体間の距離をA、反対側の面に沿う上記導電体間の距離をBとした場合、A>Bの関係を有するとともに、距離Bは、一対の導電体に印加する電圧に対して1mm/1kV以上の間隔を有していることを特徴とする。」を 「本発明の低圧放電灯は、管状バルブの外面に、互いに周方向に離間して一対の電極を設け、この一対の電極のバルブ長手方向の一端 に高周波電源が配設接続された低圧放電灯において、上記一対の電極間に位置するバルブの一側面を有効発光面とした場合、この有効発光面に沿う上記電極間の距離をA、反対側の面に沿う上記電極間の距離をBとした場合、A>Bの関係を有するとともに、距離Bで離間する一対の電極間は1mm/1kV以上の間隔を有し、かつ、これらの電極間には、1kV以上の電圧が印加されることを特徴とする。」 に訂正する。 第3 当審の判断 上記訂正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の項の記載において、「これらの電極には、1kV以上の電圧が印加される」という事項を挿入する訂正を含むものであるが、該「これらの電極には、1kV以上の電圧が印加される」という事項が、本件明細書及び図面に記載された事項の範囲内であるか否かについて以下に検討する。 上記訂正事項の「電極間には、1kV以上の電圧が印加される」に関連する記載として、願書に添付した明細書又は図面には、 (1)「距離Bは、一対の導電体に印加する電圧に対して1mm/1kV以上の間隔を有していることを特徴とする低圧放電灯。」(特許請求の範囲の【請求項1】(特許公報第1頁左欄第9行〜同第11行)) (2)「距離Bは、一対の導電体に印加する電圧に対して1mm/1kV以上の間隔を有していることを特徴とする。」(段落番号【0010】(特許公報第2頁左欄第47行〜同第49行)) (3)「外部電極2、3間の離間寸法Bは、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔をもつように設定されている。」(段落番号【0015】(特許公報第2頁右欄第28行〜同第30行)) (4)「外部電極2、3の離間寸法Bが小さくなるが、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔であれば沿面放電を防止することができる。」(段落番号【0018】(特許公報第2頁右欄第46行〜同第48行)) (5)「但し、この場合も外部電極2、3の離間寸法は、開口部11側および反対側ともに、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔にすることが必要である。」(段落番号【0020】(特許公報第3頁左欄第7行〜同第10行)) と記載されている。 しかし、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)には、「距離Bは、1mm/1kV以上の間隔」又は「離間寸法Bは、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔」の記載があるのみであって、「電極間には、1kV以上の電圧が印加される」そのものの記載はない。 そして、「距離Bは、1mm/1kV以上の間隔」又は「離間寸法Bは、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔」は、「距離Bと印加電圧との比が1(mm/kV)以上」を意味するのであって、それらの記載が、「電極間には、1kV以上の電圧が印加される」を示唆しているとすることもできないし、これらの記載から「電極間には、1kV以上の電圧が印加される」ことが自明ということもできない。 なぜなら、距離Bが、印加電圧1kV当り1mm以上の間隔であって、印加電圧が1kV未満のものが、例えば、距離Bが1mmで印加電圧0.9kV、0.8kV、距離Bが2mmで印加電圧0.9kV、0.8kVというように、いくらでも可能であるからである。 したがって、上記訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものに該当しない。 第4 請求人の主張について 本件訂正が、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものでない訂正を含むことは前項「第3 当審の判断」において述べたとおりであるが、請求人は、平成15年8月21日付意見書において、概ね、次の(ア)ないし(ウ)の主張をしているので、以下に検討しておく。 (ア)先願の明細書に記載された技術思想は、先願明細書の段落【0016】の「上記幅約2mmの電極間には、ランプ外周面での電極間の絶縁破壊を防止するための絶縁材18が設けられている。」と記載されているように、電極間の絶縁破壊を、絶縁材を介在することにより防止するものであるのに対して、本件特許発明の技術思想は、電極間の絶縁破壊を、絶縁材を介在することなく防止するものであり、両者の技術思想は明確に異なっている。このため、本件訂正請求は、特許請求の範囲の記載に、「外部電極間に印加する電圧が1kV以上である」ことを明示することにより、本件特許発明の技術思想とは明らかに異なるにもかかわらず、特許法第29条の2の規定により、本件特許請求の範囲に包含される怖れがある先願の技術をその特許請求の範囲から除外する目的で請求したものである。 (イ)本件明細書段落【0015】、【0018】及び【0020】には、一貫して「印加電圧1kV当り1mm以上の間隔」というように印加電圧をkVを単位として記載されている。該記載は数学的な厳密さから解釈すると、1kV以下の電圧に対しても適用される表現ではあるが、本件特許発明が対象としているような、低圧放電灯の電極構造においては、1kV以下の電圧が印加される場合には、本件特許発明が解決しようとする絶縁破壊の問題は生じない。したがって、本件特許明細書における上記段落の記載は、訂正事項である「電極間に、1kV以上の電圧が印加される」ことを十分に示唆するものである。 (ウ)特許法29条の2の規定を適用して後願を排除するためには、先願の明細書又は図面に発明が明確に記載されていることが条件となる。一般に発明とは、目的、構成および効果の3要素を有すると解されるが、上記先願の明細書又は図面には発明の構成の一部が断片的に記載されているだけであり、同一の発明が明確に記載されているとは解されない。 このような事項を考慮しても、本件訂正請求に対して、「明細書又は図面に記載された事項の範囲内」という訂正の要件を余りに厳格に解釈することは、訂正審判制度の趣旨を生かすことができずそれによって特許権者の保護を十分に行うことができないという結果を招来する怖れがある。 (ア)について 先願(特願平3-129307号)の明細書には、以下の記載がある。 「【請求項2】内部に放電用媒体を封入した容器と、上記容器内部の放電空間を励起するように設けられ、所定の電圧を印加される複数個の面状電極とを備え、上記面状電極の少なくとも一端縁間を、電気的に絶縁を確保できる距離を置いて互いに接近させたことを特徴とする放電ランプ。」 「【0008】また、内部に放電用媒体を封入した容器と、容器内部の放電空間を励起するように設けられ、所定の電圧を印加される複数個の面状電極とを備え、面状電極の少なくとも一端縁間を、電気的に絶縁を確保できる距離を置いて互いに接近させた。」 「【0016】・・・ガラスバルブ2の光出力部4以外の外側周面には幅約12mmの一対の外部電極5aおよび5bがランプの全長にわたり、光出力部4の反対側に光出力部4の幅より狭く約2mmの間隔を置いて設けられている。上記幅約2mmの電極間上には、ランプ外周面での電極間の絶縁破壊を防止するための絶縁材18が設けられている。・・・」 「【0025】図5は封入ガス圧30Torrにおいて、外部電極5a、5bの間隔を変化させたときの放電開始電圧を示したものである。この図から放電開始電圧は電極間隔にほぼ比例して高くなることがわかる。つまりこのランプの放電方式も、電極間隔、封入圧力が増加すると放電開始圧力が高くなるというPaschenの法則に従うものと考えられる。したがって、電極間隔はできるだけ狭いほうが良いが、実用的には3mm以下にすることが望ましい。この実施例におけるランプは、電極から離れた位置に発生する陽光柱の発光を利用する蛍光ランプと異なり、電極間隔が狭くても効率が低下せず、効果的に放電開始電圧を低下させることができる。」 「【0029】実施例3.図7は面状電極5a、5bを円筒状のガラスバルブ2の周囲を巻くように設け、軸方向に隣り合うように配置した場合の他の実施例である。この構成においても放電は電極部表面で一様に発生するため、同様の効果を有する。なお図示してはいないが、電極間に絶縁材を設けたほうが絶縁破壊防止に役立つ。」 これらの記載からみて、先願の明細書及び図面に記載された発明(以下、「先願発明」という)は、電極を、電気的に絶縁を確保できる距離を置いて互いに接近させたものであって、絶縁材は、さらに絶縁破壊防止するために設けられるものであるから、請求人の「絶縁材を介在することにより防止するものである」という主張は誤りである。 また、先願の明細書及び図面に記載された実施例1では、800Vの電圧が印加されているが、段落【0025】及び図5の記載から明らかなように、先願発明では、放電開始電圧と電極間隔が比例関係にあることが記載されており、図5の例では、印加電圧が800Vに限定されないことも明らかであるうえ、図5からは、印加する電圧に対して1mm/1kV以上となっていることが明らかである。 よって、「電極間に、1kV以上の電圧が印加される」という限定をしても、依然として、先願発明と同一部分を包含するものである。 (イ)について 本件特許明細書中には、沿面放電を防止する条件として、「印加電圧1kVあたり1mm以上の間隔」を設けることを挙げるのみで、電極に印加する電圧自体の値については、記載されていない。 このことは、言い換えれば、上記条件が適用される印加電圧の範囲について、明細書中に何ら記載されていないことになる。 そして、本件発明のような低圧放電灯において、1kV以上の電圧を印加することが常識であるとしても、上記条件の適用される範囲を1kV以上とすることまでは、常識的事項であるとは言えない。 そうすると、訂正事項1において、請求項1に「これらの電極間には、1kV以上の電圧が印加される」をつけ加える訂正は、上記条件が適用される印加電圧の範囲を新たに明示するものであって、新規事項の追加に該当すると言うべきものである。 (ウ)について 発明の適正な保護を図ることを目的として、特許法第29条の2に係る先願明細書又は図面に記載された事項のみを、いわゆる「除くクレーム」によって、請求項に記載した事項から除外する訂正は、新規事項の追加には該当しないものとして取り扱われる場合がある。 しかしながら、その趣旨から明らかなように、このような取り扱いが認められるのは、先願発明と重複する部分が適切に除かれていることを条件として、後願の発明を保護する場合に限られるものであるところ、前述のとおり、本件訂正によっても、依然として、訂正後の本件発明は、先願発明と同一部分を包含するものであるから、そのような場合にまで、新規事項の追加には該当しないとする、例外的な取り扱いをするべきものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-30 |
結審通知日 | 2003-10-03 |
審決日 | 2003-10-15 |
出願番号 | 特願平3-249190 |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(H01J)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 山川 雅也 西川 一 瀧 廣往 |
登録日 | 2000-12-15 |
登録番号 | 特許第3139077号(P3139077) |
発明の名称 | 低圧放電灯 |
代理人 | 大胡 典夫 |
代理人 | 宇治 弘 |
代理人 | 竹花 喜久男 |