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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1107551
審判番号 不服2002-22426  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2004-11-24 
事件の表示 平成10年特許願第215115号「光データ通信装置搭載プリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 43367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年7月30日の出願であって、平成14年10月15日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月18日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定]
平成14年12月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正は、【請求項1】において、「外装ケース」と「排紙口」(補正前の【請求項1】には排紙口との文言はないが当然存するものと認める。)及び「通信窓」の関係を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする(特許法17条の2第4項2号該当)ものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「外装ケースの正面に設けられた用紙の排紙口と、
前記外装ケースに形成され正面を含む複数方向に面する通信窓と、
前記外装ケース内に設けられ前記通信窓を介して外部装置との間で赤外線センサを用いて光データ通信する光データ通信装置と、
前記赤外線センサを回動する支軸で支持しこの支軸の回動によって前記赤外線センサの光路を選択的に切り替えて複数方向に面する前記通信窓のそれぞれから選択的に赤外線データを送受信できるようにする通信方向切替手段と、
前記外部装置から送信された印字データに基づいて用紙に所定事項を印字する印字部と、
を有することを特徴とする光データ通信装置搭載プリンタ。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-053153号(実開昭60-167450号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜キの記載が図面とともにある。
ア.「発光素子と受光素子の少なくとも一方を収納支持するとともに光透過用開口が設けられた収納体と、
前記光透過用開口面を上下方向及び左右方向に回動させるために互いに直行(審決注;「直交」の誤記と解する。)した2軸の回りに前記収納体を回動可能に支持する支持部材と、
前記収納体に取着された手動操作部材と、
を備え、
前記手動操作部材を操作することにより前記発光素子及び受光素子の発光及び受光角度を可変にしたことを特徴とする光通信可能な電子機器。」(1頁実用新案登録請求の範囲)
イ.「従来、コンピュータ相互間あるいはコンピュータとプリンタ等の周辺機器との間におけるデータ信号は、ケーブルを介して行なうのが一般的であった。・・・最近、光通信により機器相互間のデータ信号の通信を行なうものが提案されている。」(2頁1〜12行)
ウ.「現在の機器では発光及び受光角度の操作性において、まだなお満足のいくものではなく」(3頁1〜3行)
エ.「収納体1の内部には、支持板5が固定されており、その支持板5の開口3側には発光素子6及び受光素子7が支持されている。。・・・収納体1の上壁8には、上端に操作つまみ9を有する手動操作部材10が取着されている。」(4頁4〜11行)
オ.「11は第2図に示す如くU字状をなし、収納体1を回動可能に支持する支持部材であり、底板12と・・・側板13とより構成される。底板12の中央部からは下方に支持軸14が突設されており、・・・収納体1を支持軸14の周りに、即ち矢印A方向に回動可能、かつ任意の回動位置にて保持可能に支持するものである。」(4頁12行〜5頁1行)
カ.「手動操作部材10は長孔22を介して機器本体15外から前記収納体1の矢印A方向の回動及び矢印B方向への回動を可能ならしめるためのものである。」(5頁12〜15行)
キ.「23は機器本体15の側壁24に形成された窓であり、収納体1の光透過用開口3を機器本体15外へ臨ましめている。」(5頁17〜19行)

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載イによれば、「光通信可能な電子機器」はコンピュータと「光通信可能なプリンタ」であってよい。
引用例1の全記載及び第1図によれば、機器本体には「外装ケース」と称しうるものがあり(記載キの「側壁24」はその一面である。)、収納体は外装ケース内に設けられている。
したがって、記載ア〜キを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1に記載された「光通信可能なプリンタ」は次のようなものである。
「発光素子と受光素子を収納支持するとともに光透過用開口が設けられた収納体と、
前記収納体を支持軸周りに回動させるための操作つまみを有する手動操作部材とを有するプリンタであって、
前記収納体は外装ケースの内に設けてあり、
前記外装ケースの一面には前記光透過用開口をプリンタ外へ臨ませる窓が形成されているコンピュータと光通信可能なプリンタ。」(以下「引用発明1」という。)

4.補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1はプリンタであるから、「用紙の排紙口」を有することは自明である。また、引用発明1の「コンピュータ」は補正発明の「外部装置」に相当するから、引用発明1が「外部装置から送信された印字データに基づいて用紙に所定事項を印字する印字部」を有することは自明である。
引用発明1の「収納体」は「発光素子と受光素子を収納支持」しており、補正発明の「赤外線センサ」とは「光センサ」である点で一致するから、引用発明1が「通信窓を介して外部装置との間で光センサを用いて光データ通信する光データ通信装置」を有することは明らかである。
引用発明1の「窓」、「収納体」、「支持軸」及び「操作つまみを有する手動操作部材」は、補正発明の「通信窓」、「光データ通信装置」、「支軸」及び「通信方向切替手段」にそれぞれ相当する。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「用紙の排紙口と、
前記外装ケースに形成された通信窓と、
前記外装ケース内に設けられ前記通信窓を介して外部装置との間で光センサを用いて光データ通信する光データ通信装置と、
前記光センサを回動する支軸で支持しこの支軸の回動によって前記光センサの光路を選択的に切り替えて光データを送受信できるようにする通信方向切替手段と、
前記外部装置から送信された印字データに基づいて用紙に所定事項を印字する印字部と、
を有する光データ通信装置搭載プリンタ。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉外部装置とプリンタ間の通信に用いる光について、補正発明では赤外線を用いているのに対し、引用発明1ではその点明らかでない点。この相違点には、補正発明の「光センサ」が「赤外線センサ」であることも含まれる。
〈相違点2〉用紙の排紙口について、補正発明では「外装ケースの正面に設けられた」としているのに対し、引用発明1では排紙口の位置が不明である点。
〈相違点3〉「通信窓」及び「通信方向切替手段」について、補正発明では「正面を含む複数方向に面する通信窓」及び「光センサの光路を選択的に切り替えて複数方向に面する前記通信窓のそれぞれから選択的に光データを送受信できるようにする通信方向切替手段」としているのに対し、引用発明1の「通信窓」が複数方向に面するとはいえず、「通信方向切替手段」によって切り替えられるのは同一方向に面する通信窓内での方向である点。「赤外線センサ」及び「赤外線データ」の点は、相違点1で採り上げたので、この相違点には含まない。

5.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
(1)相違点1について
外部装置とプリンタ間の通信に用いる光としては、赤外線とすることが最も一般的である(例えば特開平8-300773号公報参照。外部装置とプリンタ間の通信に限定したものではないが、後記引用例2でも赤外線を用いている。)。
したがって、相違点1は設計事項程度の軽微な相違点にすぎない。

(2)相違点2について
用紙の排紙口をどの位置とするかは、プリンタの大きさ、給紙トレイの位置及び配置環境等を考慮して定められる事項にすぎない。前掲特開平8-300773号公報に「プリンタ本体11の正面に排紙口15が設けられている。」(段落【0007】)と記載があることをも考慮すると、相違点2も設計事項程度の軽微な相違点にすぎない。

(3)相違点3について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-91068号公報(以下「引用例2」という。)には、
「従来の技術による赤外線通信における送受光部の構造を有する携帯情報機器においては、各種情報機器と赤外線通信を行うときに赤外線送受光部同士を向かい合わせて配置する必要があることから、機器同士の配置が限定されるため携帯情報機器を横向きや上下逆さ向きに配置して操作しなければならない等、使い勝手が悪いという問題があった。」(段落【0006】)及び
「赤外線通信における送受光部の構造において、・・・該発光素子及び該受光素子を収容した筐体と、該筐体の互いに隣接する二側面にまたがる窓部と、前記発光素子及び前記受光素子の発光及び受光を前記窓部を通して第一及び第二に方向で送受させる操作手段と、前記発光及び受光を前記第一の方向で送受し、前記発光及び受光を前記第二の方向に反射させて送受するよう前記該操作手段の回動に連動して回動する鏡板とを有していることを特徴とする赤外線通信における送受光部の構造が得られる。」(段落【0008】)との各記載がある。
上記段落【0006】記載の課題は引用発明1にも共通する課題であることは明らかであり、引用発明1では同一方向に面する通信窓内で通信方向を切り替えているのであるが、引用例2の段落【0008】にあるように、筐体(補正発明の「外装ケースに相当する。)の互いに隣接する二側面にまたがる窓部(同「通信窓」に相当する。)を設けておき、この窓部全体に亘って通信方向を切り替えられるようにすれば、機器同士の配置の制約が減少し使い勝手がよくなることは明らかである。すなわち、引用発明1の通信窓を、引用例2記載の発明のようにすること(筐体の互いに隣接する二側面にまたがる窓部とすること)は当業者にとって想到容易といわざるを得ない。
その際、引用例2記載の発明では、「回動する鏡板」を利用しているけれども、引用発明1には元来回動機能が備わっているのであるから、この回動範囲を拡大すればよく、わざわざ鏡板を利用する必要はないことは明らかである。
また、「筐体の互いに隣接する二側面」を選択するに当たり、引用発明1は「コンピュータと光通信可能なプリンタ」であることを忘れてはならない。プリンタは通常、適宜の台上に設置され、背面は壁となることが多いから、これら面を通信窓設置面とすることは、特別の設置状況でもない限り不自然である。さらに、コンピュータがプリンタの上方に位置することも珍しいから、コンピュータとプリンタの通常の設置状況を考慮すれば、「筐体の互いに隣接する二側面」として正面とその隣接側面を選択することが最も自然である。前掲特開平8-300773号公報に記載のプリンタは、必要なときに机上等に置かれて使用される携帯性を重視したパソコン用プリンタであり、据え置き型プリンタと比較すると、コンピュータとの通信方向の制約は薄れるのであるが、それでも1つの通信方向が正面方向とされている(【図2】参照。)。
そうすると、引用発明1を据え置き型プリンタとした場合(そのことが設計事項であることはいうまでもない。)には特に、引用例2記載の発明を適用するに当たり、通信窓を「正面を含む複数方向に面する」ように構成することは設計事項というべきであり、引用発明1を携帯型プリンタとした場合であっても、そのように構成することには別段困難性はない。
結局、相違点3に係る補正発明の構成全体をみても、引用発明1に引用例2記載の発明を適用することにより、当業者が容易に想到できる範囲内というよりない。

(4)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1〜相違点3に係る補正発明の構成は、設計事項であるか、当業者にとって想到容易な構成ばかりであり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反している。
よって、平成14年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年8月26日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「プリンタの外装ケースに形成された複数方向に面する通信窓と、
前記外装ケース内に設けられ、前記通信窓を介して外部装置との間で赤外線センサを用いて光データ通信する光データ通信装置と、
前記赤外線センサを回動する支軸で支持し、この支軸の回動によって前記赤外線センサの光路を選択的に切り替えて複数方向に面する前記通信窓のそれぞれから選択的に赤外線データを送受信できるようにする通信方向切替手段と、
前記外部装置から送信された印字データに基づいて用紙に所定事項を印字する印字部と、
を有することを特徴とする光データ通信装置搭載プリンタ。」

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明1とは、
「プリンタの外装ケースに形成された通信窓と、
前記外装ケース内に設けられ前記通信窓を介して外部装置との間で光センサを用いて光データ通信する光データ通信装置と、
前記光センサを回動する支軸で支持し、この支軸の回動によって前記光センサの光路を選択的に切り替えて光データを送受信できるようにする通信方向切替手段と、
前記外部装置から送信された印字データに基づいて用紙に所定事項を印字する印字部と、
を有する光データ通信装置搭載プリンタ。」である点で一致し、相違点1(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)及び次の相違点3’で相違する。
〈相違点3’〉「通信窓」及び「通信方向切替手段」について、本願発明では「複数方向に面する通信窓」及び「光センサの光路を選択的に切り替えて複数方向に面する前記通信窓のそれぞれから選択的に光データを送受信できるようにする通信方向切替手段」としているのに対し、引用発明1の「通信窓」が複数方向に面するとはいえず、「通信方向切替手段」によって切り替えられるのは同一方向に面する通信窓内での方向である点。

3.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
相違点1については、第2[理由]5.(1)で述べたとおりである(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。
相違点3’については、これをさらに限定した相違点3に係る補正発明の構成が当業者にとって想到容易であることは第2[理由]5.(3)で述べたとおりであるから、同様の理由により、相違点3’に係る本願発明の構成も当業者にとって想到容易である。
そして、相違点1及び相違点3’に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-15 
結審通知日 2004-09-21 
審決日 2004-10-04 
出願番号 特願平10-215115
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 藤井 靖子
津田 俊明
発明の名称 光データ通信装置搭載プリンタ  
代理人 井上 正則  

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