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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1107795 |
審判番号 | 不服2003-12194 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-05-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-30 |
確定日 | 2004-12-22 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第123612号「パラメータをローカル表示装置において容易に表示するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月 6日出願公開、特開平10-116220、請求項の数(51)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.本願発明 本願は平成9年5月14日(パリ条約による優先権主張1996年5月31日、米国)の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし51に係る発明は、平成15年6月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、請求項1ないし51に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである。 【請求項1】 リモート・サイトにありローカル表示装置に結合された通信ネットワークを介してアクセス可能な所望の情報に関係するパラメータを、クライアントとしてのローカル表示装置において容易に表示する方法であって、 前記通信ネットワークに結合された、前記所望の情報へのユーザ選択可能なリンクを表示する段階と、 前記ユーザ選択可能リンクに関連付けられた前記所望の情報へのアクセス以外のときに、ユーザが関知する必要なく前記クライアントによって前記所望の情報のパラメータに関係する情報を獲得する段階と、 前記クライアントによって前記リモート・サイトから獲得された所望の情報のパラメータに関係する情報に従って、前記ローカル表示装置に表示されている情報を編集する段階と、 表示された前記ユーザ選択可能リンクと関連して、前記パラメータに関係する標識を提供する段階と を含む方法。 2.補正の適否 平成15年6月30日付けの補正では、請求項1の記載において「クライアントによって前記所望の情報パラメータに関係する情報を獲得する段階」に「ユーザが関知する必要なく」という文言が追加されており、この「ユーザが関知する必要なく」という事項が本願出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内かどうかを検討する。 当初明細書において、「クライアントによって前記所望の情報パラメータに関係する情報を獲得する段階」に関係する記載は以下の箇所にある。 「【0039】 このレベルで説明した機能は、本質的には、従来のブラウザの機能と同じである。しかし、本発明によれば、ハイパーリンクしたページをダウンロードするための所要時間を推定する機能が追加される。熟練したプログラマなら、図1のようなシステム内のこの機能を実施する適切な方法を見つけるであろう。 【0040】 1つの可能な実施態様は、図2に示したものである。図2は、本発明を実施するために、図1の遊休段階2に追加されるアクティビティの一部を示すフローチャートである。 【0041】 ブラウザが遊休状態の間に、ウェブ・ページが表示され、ユーザがそのページを調べていると仮定する。ユーザは、ハイパーリンクをクリックして別のページにハイパーリンクすることを考えており、そのいくつかが、ウェブ・ページの一部として表示されていると仮定する。しかし、現在表示されているページのダウンロード完了以降、ユーザは何のアクションも取っていない。 【0042】 段階12で、システムは、表示されたハイパーリンクのうちの1つを識別する。次のタスクは、そのハイパーリンクのウェブ・ページをダウンロードするのにどれだけかかるかの視覚的指示をユーザに示すことである。ダウンロード時間は、ページのサイズ、その内容(イメージかそれとも単なるテキストか)、ユーザとそのページがあるリモート・サーバとの間のウェブ・トラフィックの量などの要因の影響を受ける。 【0043】 トラフィックによって生じるダウンロード遅延は、単にローカル・ユーザからリモート・サーバにテスト・メッセージを送ることによって測定される(段階14)。テスト・メッセージは、リモート・サーバからの応答メッセージを要求すること以外は特定の形態でなくてもよい。テスト・メッセージとその応答は共に継続時間が短いことが好ましい。そうすると、システムは、ユーザに著しい遅延を与えることなく、表示された他のすべてのハイパーリンクについて、同様のテスト・メッセージの送信を行うことができる。」 上記39段落から41段落の記載によれば、ハイパーリンクしたページをダウンロードするための所要時間を推定する機能は、従来のブラウザの機能における遊休段階2に追加されるとされており、ブラウザの遊休状態とはユーザが関知していない状態である。 このブラウザの遊休段階に行われるハイパーリンクしたページをダウンロードするための所要時間を推定する機能は、図2に示される段階12から段階20までである。段階12に関して、上記42段落には「システムは、表示されたハイパーリンクのうちの1つを識別する」と記載され、又、図2に示される段階12には「表示されたウェブ・ページ上でハイパーリンクを見つける」と記載されているが、システムがハイパーリンクを見つけるためにユーザの関与が必要であることは記載されてなく、又、ユーザの関与が必要であることを何ら示唆してもいない。 更に、上記43段落には 「システムは、ユーザに著しい遅延を与えることなく、表示された他のすべてのハイパーリンクについて、同様のテスト・メッセージの送信を行うことができる」と記載されており、本願発明のシステムでは、特定のハイパーリンクについてダウンロードのための所要時間を推定するものではなく、表示された全てのハイパーリンクについて、ダウンロードのための所要時間を推定することを前提としている。このように表示されている全てのハイパーリンクについて所要時間を推定するよう設計されているとすれば、ユーザが表示されたハイパーリンクを指定しなくてもシステムが自動的に全てのハイパーリンクについて所要時間を推定するように動作すると考える方が自然である。 以上、総合的に考えれば、本システムではハイパーリンクしたページをダウンロードするための所要時間を推定するためにユーザの関知が必要ないものと考えるのが至当である。 次に前置報告書において、 「図2及び明細書段落0043-0045の記載によれば、段階14でテストメッセージを送り、「段落16で、ユーザはリモートサーバから応答を受け取る。次に、ユーザは、その応答を評価する(段階18)。」(段落0045)と明記されているのであるから、明細書には、「前記クライアントによって前記所望の情報のパラメータに関係する情報を獲得する段階」にユーザが関与していることが記載されていることは明らかである。」 と指摘しているので、この点について考察する。 上記箇所の記載は、表面的にはユーザが関与しているように見えるが、子細に検討すれば、ユーザが応答を受け取り、その応答の評価をするとは、テスト・メッセージの送信とその応答の受信の間の実時間の長さを測定することであるから、これは利用者としての「ユーザ」が行うことではなく、利用者側のシステム、つまりクライアントコンピュータが行うことである。本願明細書においては「ユーザ」という用語が、利用者を意味したり、利用者側のシステムであるクライアントを意味したりしており、明細書作成において配慮を欠く点はあるが、上記箇所においては「ユーザ」はクライアントを意味することは明らかであるから、上記の記載をもって、「前記クライアントによって前記所望の情報のパラメータに関係する情報を獲得する段階」にユーザが関与しているということはできない。ちなみに、請求項に記載されている「ユーザが関知する必要なく」の「ユーザ」は利用者と捉えられるものである。 従って、「クライアントによって前記所望の情報パラメータに関係する情報を獲得する段階」に「ユーザが関知する必要なく」と追加する補正は、当初明細書の記載された事項の範囲内のものである。 また、「クライアントによって前記所望の情報パラメータに関係する情報を獲得する段階」に「ユーザが関知する必要なく」という文言が追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第17条の2の規定を満たすものである。 3.先願発明との同一性 原査定の拒絶の理由で引用された特願平8-62227号(特開平9-259028号公報)の先願発明は、ハイパーリンクにより他の情報とリンク付けられた情報の呈示において、利用者がリンク付けられた情報にアクセスする前に、関連付けられた情報についての概要の呈示やリンク先サーバの混雑状況等を入手する情報呈示方法であるが、情報を入手するためにはリンク付けされた箇所を利用者が指定する必要がある。これに対し、本願発明は、「クライアントによって前記所望の情報パラメータに関係する情報を獲得する段階」にユーザが関知する必要ないことが明確になっている。従って、本願発明が、特願平8-62227号(特開平9-259028号公報)の先願発明と同一ということはできない。 請求項18に係る発明は請求項1に係る発明を実施するためのシステムであり、請求項36に係る発明は、請求項18に係る発明のシステムで使用するコンピュータ・プログラムを記録したコンピュータ可読媒体であるから、上記先願発明と同一ではない。更に、請求項2-17に係る発明は、請求項1の従属項に係る発明であり、請求項19-35に係る発明は、請求項18の従属項に係る発明であり、また、請求項36-51に係る発明は請求項36の従属項に係る発明であるから、上記先願発明と同一ではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求項1ないし51に係る発明を特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとした原査定の判断は妥当ではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2004-12-08 |
出願番号 | 特願平9-123612 |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
堀江 義隆 松浦 功 |
発明の名称 | パラメータをローカル表示装置において容易に表示するシステムおよび方法 |
代理人 | 坂口 博 |
復代理人 | 林 茂則 |
代理人 | 市位 嘉宏 |