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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G03G
管理番号 1107838
異議申立番号 異議2003-71379  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-07-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-23 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3350833号「電子写真用感光体」の請求項1、3、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3350833号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3350833号の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第41条に基づく優先権を主張して平成6年10月5日に特許出願され(優先権主張日 平成5年10月8日)、平成14年9月20日にその特許の設定登録がなされたものである。
本件特許掲載公報は、平成14年11月25日に発行され、その請求項1、3、4に係る特許に対して、東谷満(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年3月30日に意見書が提出されると共に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1 訂正の内容
特許権者が、本件特許明細書に関して、訂正を請求する事項は、次のとおりである。
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は実質的に水素のみを有し、
前記第2の層は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を有し、
前記第2の層が、窒素を有する場合には、前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であり、
前記第2の層が、フッ素を有する場合には、前記第2の層は、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であると共に前記感光層は、有機光導電材料を含むことを特徴とする電子写真用感光体。」
・訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3の記載を、次のとおりに訂正する。
「【請求項3】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜はフッ素および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は、フッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C)が0.001以下であり、
前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であることを特徴とする電子写真用感光体。」
・訂正事項c
段落【0011】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】本発明によれば、導電体(導電性支持体)上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜(表面保護層)とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は実質的に水素のみを有し、前記第2の層は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を有し、前記第2の層が、窒素を有する場合には、前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であり、前記第2の層が、フッ素を有する場合には、前記第2の層は、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であると共に前記感光層は、有機光導電材料を含むことを特徴とする電子写真用感光体が提供され、さらに、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、前記炭素膜は単層からなり、前記炭素膜は、前記窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素の炭素に対する比が、前記炭素膜と前記感光層とが接する面よりも前記炭素膜の表面の方が大きいことを特徴とする電子写真用感光体が提供される。」と訂正する。
・訂正事項d
段落【0012】の記載を、次のとおりに訂正する。
「また本発明によれば、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は炭素に対する前記窒素の比(N/C)が0.005以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であることを特徴とする電子写真用感光体が提供され、さらに、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜はフッ素および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は、フッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C)が0.001以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であることを特徴とする電子写真用感光体が提供される。」と訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1に係る発明を特定する事項である、炭素膜に含有させる元素の種類を減縮し、その含有比を限定すると共に、感光層を、有機光導電材料を含むものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
訂正事項bは、請求項3に係る発明を特定する事項である、第1の層に関して、フッ素を有しないものを排除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
また、上記訂正事項cは、上記訂正事項aの訂正との、上記訂正事項dは、訂正事項bの訂正との整合をそれぞれ図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3 訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1 特許異議申立ての理由及び当審での取消理由通知の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証ないし甲第3号証を提出して、
(1) 請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、請求項4に係る発明は甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであること、
(2) 請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、請求項4に係る発明は甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであること、
(3) 請求項1、3、4の記載及び発明の詳細な説明の記載が明確でないので、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないこと、
を理由として請求項1、3、4に係る発明の特許を取り消すべき旨主張する。
甲第1号証:特開平1-130165号公報
甲第2号証:特開昭62-63937号公報
甲第3号証:特開昭63-13050号公報

当審では、刊行物1ないし3(上記甲第1号証ないし甲第3号証)、及び、以下に示す刊行物4ないし10を提示し、上記の理由(1)、(3)に加えて、
(4) 請求項1、3に係る発明は、刊行物1、4、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、刊行物1〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることを理由として取消理由を通知した。
刊行物4:特開平2-132455号公報
刊行物5:特開平3-135571号公報
刊行物6:特開昭63-220166号公報
刊行物7:特開昭63-220167号公報
刊行物8:特開昭63-220168号公報
刊行物9:特開昭63-220169号公報
刊行物10:特開昭64-4754号公報

3-2 請求項1、3、4に係る発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1、3、4に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明3」、「本件発明4」という)は、平成16年3月30日付訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲、請求項1、3、4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は実質的に水素のみを有し、
前記第2の層は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を有し、
前記第2の層が、窒素を有する場合には、前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であり、
前記第2の層が、フッ素を有する場合には、前記第2の層は、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であると共に前記感光層は、有機光導電材料を含むことを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項3】 導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜はフッ素および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は、フッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C)が0.001以下であり、
前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であることを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項4】 導電体上に設けられた感光層と、
前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜は窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、
前記炭素膜は単層からなり、
前記炭素膜は、前記窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素の炭素に対する比が、前記炭素膜と前記感光層とが接する面よりも前記炭素膜の表面の方が大きいことを特徴とする電子写真用感光体。」

3-3 刊行物に記載された事項
刊行物1には、図面と共に、次の事項が記載されている。
a.「導電性基体上にアモルファスシリコン系材料からなる光導電層を有し、該光導電層がバッファ層を介して炭素を主体としたアモルファス物質よりなる表面層で被覆されている電子写真感光体において、該表面層がバッファ層に接した第1の層と、第1の層より電気抵抗が低く自由表面側にある第2の層の2層構造であることを特徴とする電子写真感光体。」(特許請求の範囲第1項)、
b.「特許請求の範囲1項記載の電子写真感光体において、該第2の層が1ないし30原子パーセントの弗素を含む水素化弗素化アモルファス炭素であることを特徴とする電子写真感光体。」(特許請求の範囲第2項)、
c.「光導電層3は対象とする光の吸収能に優れ、かつ光導電率の大きい材料が好ましく、a-Si(H),a-Si(F,H),a-Si1-xCx(H)(0<x<0.3),a-SiNx(H)(0<x<0.2),a-SiOx(H)(0<x<0.1),a-Si1-xGex(H)などや、これらに周期律表III族,V族の元素などをドープした材料が好ましい。」(3頁右上欄7〜12行)、
d.「バッファ層4の目的はより基体側の層、例えば光導電層3と表面層5との材料的異質性を緩和することである。材料的には、a-C(H)、a-C(H,F)、a-Si1-xCx(H)(0<x<1)、a-Si1-xCx(F,H)(0<x<1)、a-SiNx(H)(0<x<4/3)、a-SiO2(H)(0<x<2)、a-SiO2(F,H)(0<x<2)などを使用できる。」(3頁右上欄14〜19行)
e.実施例1には、導電性基体上に、原料ガスとしてSiH4およびB2H6を使用してブロッキング層と光導電層を、この順で形成し、その上に、a-Si0.7C0.3(H)の組成のバッファ層を形成し、さらにその上にC3H8を原料ガスとしてバッファ層側の層と自由表面側の層とからなる表面層を積層して感光体を製作したこと、カールソン方式の普通紙複写機に装着して5万枚のコピーを実施したが、感光体の特性劣化が認められなかったこと(4頁右上欄4行〜右下欄16行)、
f.実施例2には、バッファ層までを実施例1と同1条件で作成し、表面層は、原料ガスとしてC3H8を使用してバッファ層側の層を、同じくC3H8とCF4を使用して自由表面側の層を形成したこと、自由表面側の層には、弗素が10原子%含有されていたこと、弗素が1原子%以下では添加効果はなく、20%以上では膜表面が粗く画像不良を生じたこと(5頁左上欄3行〜右上欄10行)。

刊行物2には、次の事項が記載されている。
g.「電荷発生層と電荷輸送層とを有する機能分離型感光体において、電荷輸送層としてダイアモンド状炭素膜を有することを特徴とする感光体。」(特許請求の範囲)、
h.「本発明にとって好ましいダイアモンド状炭素層中の水素含量は、0〜40atomic%・・・・である」(2頁左下欄19行〜右下欄3行)、
i.「上記のごときダイアモンド状炭素の電荷輸送層の帯電特性を調整するために、IIIA族またはVA族元素を混入させてもよい」(3頁左上欄13〜15行)、
j.「この様な極性調整は単一層内でのIIIA族またはVA族元素の含量を徐々に基板側または表面側に増加させることによって行なってもよく、あるいは、均一な濃度のIIIA族またはVA族元素を含有する単一のダイアモンド状炭素の電荷輸送層を基板側または表面側に設けてもよい。」(3頁右上欄2〜7行)。
k.第2図には、基板1上に電荷発生層3が形成され、その上にダイアモンド状炭素膜2が形成された感光体が、第3図には、基板1上にバリアー層4を介して電荷発生層3が形成され、その上にさらにダイアモンド状炭素膜2が形成された感光体が示されている。

刊行物3には、次の事項が記載されている。
l.「少くとも水素原子またはハロゲン原子を含有し、かつシリコンおよびゲルマニウムの少なくとも一方を主成分とする無機光導電層と、少くとも水素原子またはハロゲン原子を含有する非晶質カーボンを主成分とする電荷輸送層とを含む積層構造を、導電性支持体上に形成したものからなり、前記電荷輸送層内の水素原子またはハロゲン原子の少なくともどちらか一方の層厚方向の濃度分布が不均一であることを特徴とする電子写真感光体。」(特許請求の範囲第1項)、
m.「第2図に示すように支持体(2)上に無機光導電層(4)をまず形成し、この上から電荷輸送層(3)を積層形成した電子写真感光体(6)としても、第1図の構成と同様な特性を得ることができる」(3頁左下欄9〜13行、第2図参照)、
n.「電荷輸送層(3)は、少なくとも水素原子またはハロゲン原子を含有する非晶質カーボン〔以下a-C(:H:X)(但し、X=F、CI、Br、I)と略記する〕で構成され」(3頁右上欄15〜18行)、
o.「電荷輸送層(3)中にハロゲン原子を含有する場合、ハロゲン原子の層厚方向の濃度分布は、同時に含有する水素原子の・・・・濃度分布と相似であっても良く、また、水素原子の濃度分布と異なっていても良い。すなわち、・・・・ハロゲン原子の層厚方向の濃度分布が不均一な場合、水素原子の層厚方向の濃度分布は均一でも不均一でも良い。」(3頁右下欄3〜13行)。

刊行物4には、次の事項が記載されている。
p.「1.導電性支持体上に有機系感光層、必要に応じて中間層、最表面に保護層をこの順に積層した構成の電子写真用感光体において、保護層が第1および第2の炭素または炭素を主成分とする被膜からなり、前記第2の被膜の比抵抗は、前記第1の被膜の比抵抗に比べて1桁以上小さいことを特徴とする電子写真用感光体。
2.特許請求の範囲第1項において、第2の被膜は硬度が第1の被膜に比べて50%以上大きく有せしめたことを特徴とする電子写真用感光体。」(特許請求の範囲)、
q.「反応気体として例えばエチレンと弗化窒素とを導入すると、窒素と弗素が添加されたダイヤモンド状炭素膜・・・・が成膜できる。反応性気体は、例えばエチレンと弗化窒素の混合気体とし、その割合はNF3/C2H4=1/20〜4/1とする。この割合を可変することにより、透過率および比抵抗を制御することができる。・・・・
上記のような方法で作成された炭素または炭素を主成分とする被膜の代表的な特性はSP3軌道を有するダイヤモンドと類似のC-C結合を作り、・・・・ダイヤモンドと類似の特性を有するものである。本発明に用いる第1の炭素または炭素を主成分とする被膜は帯電保持層として作用させるため、比抵抗は1010〜1015Ωcm、・・・・とするのが良い。また、同時に膜の剥がれや割れを防止するバッファー層として作用させるため、硬度はビッカース硬度・・・・とするのが良い。また、第2の炭素または炭素を主成分とする被膜は電荷を速やかに帯電保持層である第1の炭素または炭素を主成分とする被膜に伝導させるため、比抵抗は109〜1014Ωcm、・・・・とするのが良い。」(6頁左下欄19行〜7頁左上欄11行)。
r.実施例1には、アルミ製シリンダー上支持体上に下引層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、電荷輸送層上に第1の炭素または炭素を主成分とする被膜を設けたこと、被膜の形成は、「第2図の装置を用い、前述の方法でNF3の流量を・・・・C2H4の流量を・・・・として有機系感光体上に比抵抗1×1013Ωcmの赤外または可視光に対し、透光性のアモルファス構造または結晶構造を有する第1の炭素または炭素を主成分とする被膜を0.1μm生成させた。・・・・。同様に第1の被膜上にNF3の流量を・・・・、C2H4の流量を・・・・アモルファス構造または結晶構造を有する第2の炭素または炭素を主成分とする被膜を0.5μm生成させた。」(8頁左上欄7行〜右上欄6行)こと。

刊行物5には、次の事項が記載されている。
s.「(1)導電性基体、もしくは導電層が形成された絶縁性基体上に有機感光層を形成し、前記有機感光層上に防御層を形成し、さらに前記防御層上に炭素膜を形成した電子写真感光体。
(2)防御層が炭素と水素、あるいは炭素と弗素、あるいは炭素と水素と弗素を主成分とする請求項1記載の電子写真感光体。」(特許請求の範囲)、
t.「従来の技術ではダイヤモンド状薄膜に代表される硬質炭素膜を形成することで耐刷性は向上するものの、硬質炭素膜を形成する際に感光体としての特性が劣化するという問題があり、・・・・これはダイヤモンド状薄膜の形成の際、プラズマ、イオン等の粒子が感光層6に直接、衝突することで、軟質な感光層が損傷を受け、その感光特性が劣化してしまうためであった。」(2頁左上欄2〜10行)、
u.「前記防御層は、プラズマ、イオン等の粒子に対して耐エッチング性を有し、・・・・ダイヤモンド状薄膜の特性を劣化させにくいものであることが望ましい。そのような物質として、炭素と水素、あるいは炭素と弗素、あるいは炭素と水素と弗素を主成分とするいずれかを用いることができる。」(2頁左上欄18行〜右上欄5行)、
v.実施例では、感光層3上に主成分が炭素と弗素の防御層2を形成し、次にCH4ガスとArガスを用い、ダイヤモンド状薄膜1を形成したこと(2頁左下欄9行〜3頁左上欄下から5行、第1、2図参照)。

刊行物6ないし10には、
w.有機系感光層の表面上に、単層の炭素膜を形成してなる電子写真感光体が記載され、さらに、刊行物7には、炭素膜中に、フッ素、硼素または塩素、水素を含有させることが、刊行物9には、炭素膜中に、リン、水素を含有させることが、刊行物10には、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、窒素、硼素またはリン、および水素を含有させることが記載されている。

3-4 当審の判断
(1)特許法第29条第1項違反について
i)本件発明1
刊行物1に記載された「バッファ層」は、光導電層に接している点で、本件発明1の「第1の層」に、刊行物1の「第2の層」は、感光体の自由表面側にある点で、本件発明1の「第2の層」に相当するものと認められる。さらに、刊行物1には、第1の層の例示として「a-C(H)」(水素を含む非晶質炭素)が挙げられ、実施例に記載された第2の層は、フッ素原子を10原子%含有するから、炭素に対するフッ素の比は0.005以上であることが計算される。
したがって、本件発明1と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜はフッ素、および水素を有し、前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は実質的に水素のみを有し、前記第2の層はフッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上である電子写真用感光体。」である点で一致するものの、本件発明1は、「感光層は、有機光導電材料を含む」ものであるのに対し、刊行物1の電子写真用感光体は、感光層がアモルファスシリコン系である点で相違する(a,c,e,f)。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。

ii)本件発明3
本件発明3と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜はフッ素および水素を有し、前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上である電子写真用感光体。」である点で一致するものの、本件発明3は、第1の層が、フッ素を有し、炭素に対するフッ素の比(F/C比)が0.001以下であるのに対し、刊行物1には第1の膜として「a-C(H,F)」(水素、フッ素を含む非晶質炭素)が例示されているが、このような特定のF/C比のものであることは記載されていない点で相違する。
したがって、本件発明3は、刊行物1に記載された発明ではない。

iii)本件発明4
本件発明4と、刊行物2、3に記載された発明とを対比すると、刊行物2、3に記載された濃度勾配を形成した炭素膜は、電荷輸送層であって(g,k,l,o)、本件発明4で規定する「感光層」の一部をなすものである。それに対して、本件発明4において、炭素膜は、感光層とは別層として形成されるものであるから、その機能も、形態も相違している。
したがって、本件発明4は、刊行物2、3に記載された発明ではない。

(2)特許法第29条第2項違反について
i)本件発明1
本件発明1と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記(1)i)に記載のとおりの相違点が認められるので、この相違点について検討する。
刊行物1記載の発明において第1の層を実質的に水素のみを有する炭素膜とするものは、アモルファスシリコン系感光層と表面層の材料異質性をなくすための材料の一例として示されているものであるから(d)、異なる材料である有機光導電材料を有する感光層に適用可能か否か予測することはできない。
刊行物4には、有機感光体の表面に、第1の炭素または炭素を主成分とする被膜と、第2の炭素または炭素を主成分とする被膜からなる保護層を形成することが記載されている(p,q)。しかしながら、該保護層について炭素中に含有されるフッ素原子の濃度は示されておらず、しかも、実施例における感光層に接する第1の層は、原料ガスとしてNF3を使用しており(r)、窒素とフッ素が含有されることは明らかであるから、刊行物4には、実質的に水素のみを有する炭素膜を有機感光体の表面に設けることは示されていない。したがって、刊行物4に、炭素または炭素を主成分とする被膜を、有機光導電材料を含有する感光層に適用することが示されているとしても、刊行物1に記載の特定の第1の層と第2の層を有する炭素膜を、有機光導電材料を有する感光層に適用することが、当業者に容易になしうるとすることはできない。
刊行物5にも、有機光導電材料を含有する感光層の上に2層以上の炭素または炭素を主成分とする被膜を形成することが記載され、感光層に接触する層を炭素と水素化からなる層とすることが示されている。しかしながら、本件発明1の第2の層が、窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を必須とするものであるのに対し、刊行物5の炭素または炭素を主成分とする2つの層のうち、硬質炭素膜層、すなわち本件発明1の第2の層に相当する表面側の層は、炭素および水素以外の元素を含まないものであるから(v)、有機光導電材料を有する感光層と表面側の窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素および水素を含む炭素膜の間に位置する、炭素と水素からなる層の作用について、何ら示唆するものではない。したがって、刊行物1に記載の特定の第1の層と第2の層を有する炭素膜を、有機光導電材料を有する感光層に適用することが、当業者に容易になしうるとすることはできない。
また、刊行物2、3、6〜10には、有機光導電材料を含有する感光層の上にダイヤモンド状または非晶質炭素膜を2層以上設けることは記載されていない。
そして、上記構成により本件発明1は、有機光導電材料を含有する感光層の上に、炭素を主成分とし窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有する保護層を設けた感光体の耐剥離性を向上させる等の明細書記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1、4、5或いは、刊行物1〜10に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

ii)本件発明3
本件発明3と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記(1)ii)に記載のとおりの相違点が認められる。
相違点について検討すると、刊行物4には、感光体の表面に、炭素または炭素を主成分とする第1の被膜(本件発明3の第1の層に相当する。)と、第2の被膜(同じく第2の被膜の相当する。)からなる保護層を形成することが記載されており、実施例に記載された第1の被膜と第2の被膜は、原料としてエチレンと弗化窒素を用いるもので、炭素膜はフッ素、水素を含むものであるが、フッ素と炭素の割合については示されていない。また、刊行物5記載の発明においては、本件発明3の第2の層に相当する表面側の硬質炭素膜層は、炭素および水素以外の元素を含まないものであり、本件発明3の特定のフッ素・炭素比を有する第1の層、第2の層については、刊行物4、5に記載されていない。
刊行物2、3、6〜10には、有機光導電材料を含有する感光層の上にダイヤモンド状または非晶質炭素膜を2層以上設けることは記載されていない。
そして、上記構成により本件発明3は、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明3は、刊行物1、4、5或いは、刊行物1〜10に記載された発明に基づいて容易に発明し得たものとすることはできない。

iii)本件発明4
本件発明4と、刊行物2、3に記載された発明とを対比すると、刊行物2、3に記載された濃度勾配を形成した炭素膜は、電荷輸送層であって(g,h,l,n)、本件発明4で規定する「感光層」の一部をなすものであり、本件発明4において、炭素膜は、感光層とは別層として形成されるものであるから、その機能も、形態も相違している。
そして、刊行物1、4〜10には、感光層上に設けたダイヤモンド状または非晶質炭素膜中に他の元素を添加し、それについて濃度勾配を付すことは一切、記載されていない。
したがって、本件発明4は、刊行物1〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)特許法第36条違反について
申立人が、本件明細書について、記載不備を申し立てる趣旨は、
ア.請求項3において、第1の層のCに対するFの比を0.001以下と規定するが、実施例では、F/C=0と、F/C=0.0005の2例のみであるから、限定の範囲に臨界的意義がない。
イ.請求項1、3、4には、「ダイヤモンド状または非晶質炭素膜」とあるが、実施例では、非晶質炭素膜の例のみで、ダイヤモンド状炭素膜である例については記載されていないので、発明を特定するために必要と認める事項の全てを記載していない。
とするものであり、当審で明細書の記載について指摘した事項は、
ウ.接着性は、接着する物質と接着される物質との関係により変るものなのに、接着される一方の側の材質である感光層の材質について規定しないのは、効果が不明りょうである。
とするものである。
以下、検討する。
ア.について
明細書の段落【0013】には、「本発明の電子写真用感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を順次積層した構成を持つ感光体において、上記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有する膜からなり、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きいものとしたことから、感光体の保護層の耐剥離性が向上し、しかも本感光体によると長期的に安定した画像形成を行うことができる。・・・・。または前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に少なくともフッ素を含有する膜からなり、しかもフッ素と炭素の含有原子量比(F/C比)が、感光層近傍付近では0.001以下であり且つ最表層付近では0.005以上であるものとしたことから、更に前記特性を向上させることができる。」ことが記載されており、同じく、段落【0031】には、「本発明において、表面保護層は、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有し、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きい高硬度薄膜より構成されるものである。・・・・またフッ素を含有する表面保護層は、感光体近傍付近のF/C比が0.001以下であり、最表層付近のF/C比が0.005以上であることが望ましい。また、表面保護層の感光体近傍付近においては、添加物元素は存在しない方が望ましい。なお、表面保護層の膜厚は、5,000Å〜50,000Åであることが望ましい。」と記載されている。それによれば、「F/C比が0.001」という境界値は、望ましい範囲を限定するものとして当初から記載していた範囲であり、具体例には明示されていなくても、発明を完成して行く過程で把握されたものと推定されるから、限定根拠がないとはいえない。また、請求項3については、訂正により、第1の層はフッ素を含むものに限定された。
イ.について
特許権者の提出した平成16年3月30日付け意見書に添付された参考資料(長田義仁編「低温プラズマ材料化学」)によれば、ダイヤモンド状炭素膜は、i-カーボン、硬質炭素膜、水素化炭素膜などの呼称と共に、非晶質炭素膜とも称されていてことは明らかである。すなわち、ダイヤモンド状炭素膜と、非晶質状炭素膜とは、ほぼ同等の物質を意味することが理解されるから、本件明細書に記載された実施例は、非晶質炭素膜のみのであって、ダイヤモンド状炭素膜については確認されていないとすることはできない。
ウ.について
上記刊行物1〜10、特許権者が上記意見書に添付した特開平5-188706号公報等によれば、ダイヤモンド状または非晶質状炭素膜は、無機質的な膜であっても、無機系の感光体、有機高分子系の感光層にそれなりの接着性を有することは、本件発明の出願前より知られていたことであるから、従来知られている感光層の表面に設ける限り、感光層と炭素膜との間に強固な接着性が得られないするすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1、3、4に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3、4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1、3、4に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子写真用感光体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は実質的に水素のみを有し、
前記第2の層は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を有し、
前記第2の層が、窒素を有する場合には、前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であり、
前記第2の層が、フッ素を有する場合には、前記第2の層は、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であると共に前記感光層は、有機光導電材料を含むことを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項2】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素および水素を有し、前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は炭素に対する前記窒素の比(N/C)が0.005以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であることを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項3】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、
前記炭素膜はフッ素および水素を有し、
前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、
前記第1の層は、フッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C)が0.001以下であり、
前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であることを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項4】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、前記炭素膜は単層からなり、前記炭素膜は、前記窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素の炭素に対する比が、前記炭素膜と前記感光層とが接する面よりも前記炭素膜の表面の方が大きいことを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項5】導電体上に設けられた感光層と、前記感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は硼素および水素を有し、前記炭素膜は、前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は炭素に対する前記硼素の比(B/C)が0.0007以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記硼素の比(B/C比)が0.01以上であることを特徴とする電子写真用感光体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子写真用感光体に関し、更に詳しくは感光層上に耐剥離性に優れた表面保護層を有する電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真方式において使用される感光体としては、導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする感光層を設けたもの、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどの無機系光導電材料をバインダー中に分散させたもの、ポリ-N-ビニルカルバゾールとトリニトロフルオレノンあるいはアゾ顔料などの有機光導電材料を用いたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたもの等が一般に知られている。
【0003】ところで、一般に「電子写真方式」とは、光導電性の感光体をまず暗所で例えばコロナ放電によって帯電させ、次いで像露光し、露光部のみの電荷を選択的に散逸せしめて静電潜像を得、この潜像部を染料、顔料などの着色剤と高分子物質などの結合剤とから構成される検電微粒子(トナー)で現像し可視化して画像を形成するようにした画像形成法の一つである。
【0004】このような電子写真法において、感光体に要求される基本的な特性としては、(1)暗所で適当な電位に帯電できること、(2)暗所において、電荷の散逸が少ないこと、(3)光照射によっで速やかに電荷を散逸できること、などが挙げられる。近年、電子写真複写機の高速化、大型化が進むなか、感光体に対して上記特性以外に、長期繰返し使用に際しても高画質を保つことのできる信頼性が強く要求される様になっている。
【0005】複写機の中で感光体の寿命を損なっている主な原因としては、大きく分けて二つ考えられており、一つは、現像プロセス、クリーニングプロセス、コピー紙などから受ける機械的なストレスによって引き起こされる摩耗やスクラッチによるもの、もう一つは帯電、転写、分離過程等で受けるコロナ放電によって引き起こされる化学的な損傷によるものである。
【0006】前者の感光体の摩耗を防ぐ方法として、感光体表面に保護層を設ける技術が知られている。例えば、感光層の表面に有機フィルムを設ける方法(特公昭38-15466号公報)、無機酸化物を設ける方法(特公昭43-14517号公報)、接着層を設けた後絶縁層を積層する方法(特公昭43-27591号公報)、あるいはプラズマCVD法、光CVD法等によってa-Si層、a-Si:N:H層、a-Si:O:H層等を積層する方法(特開昭57-179859号、特開昭59-58437号各公報)等が開示されている。
【0007】また、近年プラズマCVD法、光CVD法、スパッタ法等の方法で得られる、炭素又は炭素を主成分とする高硬度膜(a-C:H膜、無定形炭素膜、非晶質炭素膜、ダイアモンド状炭素膜等と称されている、)の感光体保護層への応用が活発化している。例えば、感光層の表面に無定形炭素又は硬質炭素からなる保護層を設けたもの(特開昭60-249155号公報)、最表面にダイアモンド状カーボン保護層を設けたもの(特開昭61-255352号公報)、感光層上に炭素を主成分とする高硬度絶縁層を形成したもの(特開昭61-264355号公報)あるいは有機感光層上に窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子、アルカリ金属原子等の原子を少なくとも含むグロー放電により生成された非晶質炭化水素膜からなる保護層を設けたもの(特開昭63-220166〜9号各公報)などが挙げられる。
【0008】これらの方法により、表面硬度が非常に向上した耐摩耗性に優れた感光体が得られるようになった。しかし、これらの感光体は、電子写真複写プロセスにより受ける局部的で且つ長期的な機械的ストレスにより発生する表面保護層の剥離に対しては充分な抵抗力を有していない。
【0009】そこで、表面保護層である非晶質炭化水素膜に含有されるフッ素濃度を膜厚方向に且つ感光層側に大きくなるように変化させることにより、耐久性、耐湿性を改善すると共に画像かぶりを防ぐこと(特開平1-227161号公報)などが提案されているが、表面保護層の剥離抵抗性という点では未だ不充分である。更に、これらの感光体を電子写真プロセスの中で繰り返し使用すると、一次帯電後の画像露光後における光照射部の感光体表面電位が短期的あるいは長期的に増加する、いわゆる残留電位の上昇傾向が認められるようになり、正常な画像を得ることができなくなるという問題が判明し、総合的な耐久性がそれ程向上していないことが明らかとなった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、感光層上に炭素を主成分とする保護層を有する感光体の耐剥離性を向上させ、且つ長期的に安定した画像形成を行うことが可能な電子写真用感光体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、導電体(導電性支持体)上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜(表面保護層)とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は実質的に水素のみを有し、前記第2の層は窒素、フッ素、塩素、臭素または沃素を有し、前記第2の層が、窒素を有する場合には、前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であり、前記第2の層が、フッ素を有する場合には、前記第2の層は、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であると共に前記感光層は、有機光導電材料を含むことを特徴とする電子写真用感光体が提供され、さらに、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素、および水素を有し、前記炭素膜は単層からなり、前記炭素膜は、前記窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素または沃素の炭素に対する比が、前記炭素膜と前記感光層とが接する面よりも前記炭素膜の表面の方が大きいことを特徴とする電子写真用感光体が提供される。
【0012】また本発明によれば、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜は窒素および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は炭素に対する前記窒素の比(N/C)が0.005以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記窒素の比(N/C比)が0.05以上であることを特徴とする電子写真用感光体が提供され、さらに、導電体上に設けられた感光層と、その感光層上に設けられ、ダイヤモンド状または非晶質炭素膜とを有する電子写真感光体であって、前記炭素膜はフッ素および水素を有し、かつ前記感光層と接する第1の層と表面を有する第2の層とを含む複数の層からなり、前記第1の層は、フッ素を有し、前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C)が0.001以下であり、前記第2の層は前記炭素に対する前記フッ素の比(F/C比)が0.005以上であることを特徴とする電子写真用感光体が提供される。
【0013】本発明の電子写真用感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を順次積層した構成を持つ感光体において、上記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有する膜からなり、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きいものとしたことから、感光体の保護層の耐剥離性が向上し、しかも本感光体によると長期的に安定した画像形成を行うことができる。更に、本発明の電子写真用感光体は、前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に少なくとも窒素を含有する膜からなり、しかも窒素と炭素の含有原子量比(N/C比)が、感光層近傍付近では0.005以下であり且つ最表層付近では0.05以上であるか、または前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に少なくともフッ素を含有する膜からなり、しかもフッ素と炭素の含有原子量比(F/C比)が、感光層近傍付近では0.001以下であり且つ最表層付近では0.005以上であるものとしたことから、更に前記特性を向上させることができる。
【0014】詳しく言うと、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する表面保護層に、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等の添加物元素を含有させることにより、残留電位の上昇の低減化、良好な帯電能等の電気的特性の改善を行い、更に透光性の高い高硬度の表面保護層を形成できる。ただ、上記添加物元素を多く含有する表面保護層は、感光層との接着性が問題となる。そこで表面保護層を作製する際にまず上記添加物元素の含有量が少ない若しくは含有しない水素含有炭素膜を感光層近傍付近に設けることにより、表面保護層の接着性を高め、更に、この膜上に上記添加物元素の含有量が多い表面保護層を設ける。このようにすることにより、上記添加物元素の含有量が多い表面保護層を作製する際に使用されるN2、NH3、C2F6、NF3、B2H6、BCl3、BBr、BF3、PH3、PF3、PCl3等のエッチングガスになり得る添加物ガスによる感光層へのダメージ防止や、感光層と表面保護層の接触抵抗の減少などにより、感光体の保護層の耐剥離性が向上し、且つ長期的安定した画像形成が行えるようになるものと推定される。
【0015】以下、図面に沿って本発明を更に詳しく説明する。図1〜8はそれぞれ本発明の電子写真用感光体の構成例を示す。即ち、図1は導電性支持体1上に感光層2、表面保護層3を順次設けたものであり、図2は導電性支持体1上に下引層4を介して感光層2、表面保護層3を順次設けたものであり、図3は感光層2が電荷発生層(CGL)2aと電荷輸送層(CTL)2bより構成される機能分離型タイプのもの、図4は機能分離型タイプの感光層2のCGL、CTLの積層順序が逆になっているものをそれぞれ示したものである。また、図5〜図8は、それぞれ図1〜図4の構成において、表面保護層を積層として設けたものであり、この場合、該保護層は第1表面保護層3aと第2表面保護層3bとから構成される。なお、導電性支持体1上に感光層2と表面保護層3を少なくとも有していれば、上記のその他の層及び感光層のタイプは任意に組み合わされていても構わない。
【0016】本発明において電子写真用感光体に使用される導電性支持体としては、導電体あるいは導電処理をした絶縁体、例えばAl、Fe、Cu、Auなどの金属あるいはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn2O3、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの、導電処理をした紙等が使用できる。導電性支持体の形状は特に制約はなく板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれかのものも使用できる。
【0017】導電性支持体と光導電層との間に必要に応じ設けられる下引層は、感光特性の改善、接着性の向上等の目的で設けられ、その材料としてはSiO、Al2O3、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等の無機材料やポリアミド樹脂、アルコール可溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、PVA等の接着性の良いバインダー樹脂等が使用される。その他、前記接着性の良い樹脂にZnO、TiO2、ZnS等を分散したものも使用できる。下引層の形成方法としては無機材料単独の場合はスパッタリング、蒸着等の方法が、また、有機材料を用いた場合は通常の塗布法が採用される。なお、下引層の厚さは5μm以下が適当である。
【0018】前記導電性支持体に直接あるいは下引層を介して設けられる感光層の種類は、前述したSe系、OPC系等のいずれもが、またその構成は単層型、機能分離型のいずれもが適用できる。これらのうちOPC系について以下に簡単に説明する。
【0019】単層型有機感光層の例としては、色素増感された酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸亜鉛等の光導電性粉体、無定形シリコン粉体、スタアリック塩顔料、フタロシアニン顔料、アズレニウム塩顔料、アゾ顔料等を必要に応じて結着剤樹脂及び/又は後述する電子供与性化合物と共に塗布形成されたもの、またビリリウム系染料とビスフフェノールA系のポリカーボネートとから形成される共晶錯体に電子供与性化合物を添加した組成物を用いたもの等が挙げられる。結着樹脂としては後述する機能分離型感光体と同様のものを使用することができる。この単層型感光体の厚さは5〜30μmが適当である。
【0020】一方、機能分離型感光層の例としては、電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)を積層したものが例示される。画像露光により潜像電荷を発生分離させるための電荷発生層(CGL)としては、結晶セレン、セレン化ヒ素等の無機光導電性粉体あるいは有機系染顔料を結着剤樹脂に分散若しくは溶解させたものが用いられる。
【0021】電荷発生物質としての有機系染顔料としては、例えば、シーアイピグメントブルー25{カラーインデックス(CI)21180}、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、更にポリフィリン骨格を有するフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクアリック塩顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53-95033号公報に記載)、スチリルスチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53-138229号公報に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53-132547号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54-21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54-12742号公報に記載)、フレオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54-22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格をアゾ顔料(特開昭54-17733号公報に記載)。ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54-2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54-17734号公報に記載)、カルバゾール骨格を有するトリアゾ顔料(特開昭57-195767号公報、同57-195768号公報に記載)等、更にシーアイピグメントブルー16(CI74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバッドブラウン5(CI73410)、シーアイバッドダイ(CI73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイオレット社製)インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料等を使用することができる。これらの電荷発生物質は単独であるいは2種以上併用して用いられる。
【0022】これら有機染顔料と併用される結着剤樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルなど縮合系樹脂並びにポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体等の重合体及び共重合体等の接着性、絶縁性樹脂が挙げられる。結着剤樹脂は、電荷発生物質100重量部に対して0〜100重量部用いるのが適当であり、好ましくは0〜50重量部である。
【0023】電荷発生層は、電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロルエタン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適当に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行うことができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0024】また、本発明において、電荷発生物質として結晶セレン又はセレン化ヒ素合金等の粒子を用いる場合には、電子供与性粘着剤及び/又は電子供与性有機化合物とが併用される。このような電子供与性物質としてはポリビニルカルバゾール及びその誘導体(例えばカルバゾー骨格に塩素、臭素などのハロゲン、メチル基、アミノ基などの置換基を有するもの)、ポリビニルピレン、オキサジアゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、ジアリールメタン、α-フェニルスチルベン、トリフェニルアミン系化合物などの窒素含有化合物及びその誘導体が好ましい。この種の無機系電荷発生物質の含有量は層全体の30〜90重量%が適当である。また、無機系電荷発生物質を用いた場合の電荷発生層の厚さは0.2〜5μm程度が適当である。
【0025】電荷輸送層(CTL)は帯電電荷を保持させ、且つ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく且つ電荷移動性が良いことが要求される。これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質及び必要に応じて用いられるバインダー樹脂より構成される。即ち、以上の物質を適当な溶剤に溶解ないし分散してこれを塗布乾燥することにより電荷輸送層を形成することができる。
【0026】電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。正孔輸送物質としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ-γ-カルバゾリルエチルグルタメ-ト及びその誘導体、ピレン-ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9-(p-ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1-ビス-(4-ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α-フェニルスチルベン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。
【0027】電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノンジメタン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレン、2,4,5,7-テトラニトロキサントン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、2,6,8-トリニトロ-4H-インデノ(1,2-b)チオフェノン-4-オン、1,3,7-トリニトロジベンゾチオフェノン-5,5-ジオキサイドなどの電子受容物質が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。
【0028】また、必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジェン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレンなどが用いられる。
【0029】電荷輸送層の厚さは5〜100μm程度が適当である。また電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類が使用され、その使用量はバインダー樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
【0030】これらのCGLとCTLは支持体上に支持体側からCGL,CTLの順に積層しても、CTL、CGLの順に積層してもかまわない。
【0031】本発明において、表面保護層は、水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有し、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きい高硬度薄膜より構成されるものである。水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有し、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きい表面保護層は、好ましくはSP3軌道を有するダイアモンドと類似のC-C結合を有する方が望ましい。なお、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものでも構わない。更に窒素を含有する表面保護層は、感光層近傍付近のN/C比が0.005以下であり、最表層付近のN/C比が0.05以上であることが望ましく、またフッ素を含有する表面保護層は、感光体近傍付近のF/C比が0.001以下であり、最表層付近のF/C比が0.005以上であることが望ましい。また、表面保護層の感光体近傍付近においては、添加物元素は存在しない方が望ましい。なお、表面保護層の膜厚は、5,000Å〜50,000Åであることが望ましい。
【0032】更に表面保護層は、添加物の有無、種類等を制御した多層構造からなっていても構わない。この多層構成の例としては、添加物元素の含有量が少ない第1表面保護層と、添加物元素の含有量が第1表面保護層と比較して大きい第2表面保護層とを積層してなる2層構成がある。更に層構成を、膜質などを制御した多層構成にすることは可能である。更に積層構成ではなく、添加物元素の炭素に対する含有原子量比の濃度勾配がついた明確な界面のない単層構造でも構わない。また、表面保護層に含有される添加物元素の炭素に対する含有原子量比は、感光体近傍付近よりも最表層付近が大きければよく、その条件を満たしていれば表面保護層中の含有原子量比は、どのようになっていても構わない。
【0033】表面保護層を作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H2、Ar等のキャリアガスを用いる。更に、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるものであれば構わない。例えば窒素を供給するガスとしてNH3、N2等を用い、フッ素を供給するガスとしてC2F6、CH3F等を用い、硼素を供給するガスとしてはB2H6等を用い、リンを供給するガスとしてはPH3等を用い、塩素を供給するガスとしてはCH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4等を用い、臭素を供給するガスとしてはCH3Br等を用い、沃素を供給するガスとしてはCH3I等を用いることができる。また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF3、BCl3、BBr、BF3、PF3、PCl3等を用いる。上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により形成される。特にその製膜法は限定されるものではないが、保護層として良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法(特開昭58-49609号公報)等が知られている。
【0034】プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする保護層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に保護層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。この炭素を主成分とする保護層の膜厚は製膜時間の制御等により調節できる。なお、表面保護層の膜組成を分析する方法としては、XPS、AES、SIMS等の測定法が用いられる。
【0035】
【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、これにより本発明の態様が限定されるものではない。部はいずれも重量基準である。
【0036】実施例1
アルミニウム製シリンダー状支持体(外径80mmΦ、長さ340mm)に下記組成比の混合物をボールミルで12時間分散し、調製した下引層形成液を乾燥後の膜厚が約2μmになるように浸積法で塗工し、下引層を形成した。
TiO2(石原産業社製タイペーク)1部
ポリアミド樹脂(東レ社製CM8000)1部
メタノール25部
【0037】この下引層上に下記化1で示される構造のトリスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液を浸積塗工し、120℃で10分間乾燥させ、膜厚約0.15μmのCGLを形成した。
【化1】

30部
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン200) 12部
シクロヘキサノン360部[上記混合物をボールミルで72時間分散した後、更にシクロヘキサノン:メチルエチルケトン=1:1(重量比)の混合溶媒500部で稀釈調整する。]
【0038】次いで、このCGL上に下記組成の電荷輸送層塗工液を乾燥後の膜厚が約30μmになるように浸積塗工して有機感光層を作製した。
【化2】

10部
ポリカーボネート(帝人化成社製パンライトC-1400) 10部
テトラヒドロフラン 80部
シリコーンオイル(信越シリコーン社製KF50) 0.001部
【0039】このようにして作製した有機感光層を図9〜図11に示すようなプラズマCVD装置にセットし、炭素又は炭素を主成分とする薄膜よりなる保護層を形成した。ここで図9中、107はプラズマCVD装置の真空槽であり、ゲート弁109によりロード/アンロード用予備室117と仕切られている。真空槽107内は排気系120(圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122、ロータリーポンプ123よりなる)により真空排気され、また一定圧力に保たれるようになっている。真空槽107内には反応槽150が設けられている。反応槽は図10、図11に示すような枠状構造体102(電極側より見て四角又は六角形状を有している)と、この両端の開口部を覆うようにしたフード108、118、更にこのフード108、118に配設された一対の同一形状を有する第一及び第二の電極103、113(アルミニウム等の金属メッシュを用いている)より構成されている。130は反応槽150内へ導入するガスラインを示しており、各種材料ガス容器が接続されており、それぞれ流量計129を経てノズル125より反応槽150の中へ導入される。
【0040】枠状構造体102中には、前記感光層を形成した支持体101(101-1、101-2…101-n)が図10、図11のように配置される。なおこのそれぞれの支持体は、後述するように第三の電極として配置される。電極103、113には、それぞれ第一の交番電圧を印加するための一対の電源115(115-1、115-2)が用意されている。第一の交番電圧の周波数は、1〜100MHzである。これらの電源は、それぞれマッチングトランス116-1、116-2とつながる。このマッチングトランスでの位相は位相調整器126により調整し、互いに180°又は0°ずれて供給できる。即ち、対称型又は同相型の出力を有している。マッチンズトランスの一端104及び他端114は、それぞれ第一及び第二の電極103、113に連結されている。また、トランスの出力側中点105は接地レベルに保持されている。更に、この中点105と第三の電極、即ち支持体101(101-1、101-2…101-n)又はそれらに電気的に連結するホルダ102の間に第二の交番電圧を印加するための電源119が配設されている。この第二の交番電圧の周波数は、1〜500KHzである。この第一及び第二の電極に印加する第一の交番電圧の出力は、13.56MHzの周波数の場合0.1〜1KWであり、第三の電極即ち支持体に印加する第二の交番電圧の出力は、150KHzの周波数の場合約100Wである。
【0041】保護層を2層構成とし、感光層に接している側の保護層を第1表面保護層とし、最表層側の保護層を第2表面保護層とした。第1表面保護層は、水素を含む非晶質炭素であって、更に窒素を含有する膜からなる。その製膜条件は以下の通りで行った。
CH4流量 :200sccmN2
流量 :5sccm
反応圧力 :0.03torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-200V
膜厚 :500Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及び窒素を含有しており、N/C比が0.002であることが判明した。
【0042】第2表面保護層は、水素を含む非晶質炭素であって、更に窒素を含有する膜からなる。その製膜条件は以下の通りで行った。
C2H4流量 :90sccm
H2流量 :210sccm
N2流量 :45sccm
反応圧力 :0.02torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-5V
膜厚:30,000Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及び窒素を含有し、N/C比が0.14であることが判明した。
【0043】このようにして作成した感光体について、初期及び市販デジタル複写機イマジオ420V[(株)リコー製]を用いて10万枚及び40万枚の通紙試験を行った後、感光体表面の保護層の剥離状況、感度などの評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】実施例2
第1表面保護層の製膜条件を下記に示す条件としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作成し、評価を行った。
CH4流量 :200sccm
反応圧力 :0.03torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-200V
膜厚 :500Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素及び水素のみを含有していることが判明した。評価結果を表1に示す。
【0045】実施例3
第1表面保護層、第2表面保護層の作製条件を下記のようにしたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。
第1表面保護層
CH4流量 :200sccm
C2F6流量 :5sccm
反応圧力 :0.01torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-200V
膜厚 :500Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及びフッ素を含有し、F/C比が0.0005であることが判明した。
【0046】
第2表面保護層
C2H4流量 :90sccm
H2流量 :210sccm
C2F6流量 :25sccm
反応圧力 :0.02torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-5V
膜厚 :30,000Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及びフッ素を含有し、F/C比が0.008であることが判明した。評価結果を表1に示す。
【0047】実施例4
第1表面保護層の作製条件を下記のようにしたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。
C2H4流量 :200sccm
反応圧力 :0.01torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-180V
膜厚 :500Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素及び水素のみを含有していることが判明した。評価結果を表1に示す。
【0048】実施例5
第1表面保護層及び第2表面保護層の作製条件を下記のようにしたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。
第1表面保護層
CH4流量 :150sccm
B2H6流量 :5sccm
反応圧力 :0.01torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-200V
膜厚 :400Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及び硼素を含有し、B/C比が0.0007であることが判明した。
【0049】
第2表面保護層
C2H4流量 :90sccm
H2流量 :210sccm
B2H6流量 :30sccm
反応圧力 :0.02torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-10V
膜厚 :25,000Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素及び硼素を含有し、B/C比が0.01であることが判明した。評価結果を表1に示す。
【0050】比較例1
保護層として実施例1で記載した第2表面保護層のみを単層として設けたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0051】比較例2
保護層として実施例3で記載した第2表面保護層のみを単層として設けたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0052】比較例3
保護層として実施例5で記載した第2表面保護層のみを単層として設けたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0053】比較例4
保護層として実施例1で記載した第1表面保護層のみを単層として、膜厚30,000Åで設けたこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0054】比較例5
保護層として実施例3で記載した第1表面保護層のみを単層として、膜厚30,000Åで設けたこと以外は、すべて実施例3と同様にして感光体を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0055】実施例6
表面保護層を3層構成とし、感光層に近い側から、第1表面保護層、第2表面保護層、第3表面保護層とし、下記のような条件で製膜したこと以外は、すべて実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を行った。
第1表面保護層
C2H4流量 :90sccm
反応圧力 :0.01torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-200V
膜厚 :300Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素及び水素のみを含有していることが判明した。
【0056】
第2表面保護層
C2H4流量 :90sccm
H2流量 :210sccm
NF3流量 :45sccm
反応圧力 :0.03torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-5V
膜厚 :10,000Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素、窒素及びフッ素を含有し、N/C比が0.15であり、F/C比が0.019であることが判明した。
【0057】
第3表面保護層
C2H4流量 :90sccm
H2流量 :210sccm
NF3流量 :45sccm
反応圧力 :0.01torr
第一の交番電圧出力 :100W13.56MHz
バイアス電圧(直流分):-5V
膜厚 :10,000Å
この膜の組成分析(XPS法)を行った結果、膜の組成が、炭素、水素、窒素及びフッ素を含有し、N/C比が0.14であり、F/C比が0.020であることが判明した。評価結果を表1に示す。
【0058】実施例7
実施例6の電子写真感光体の製造に関して、300Åの第1表面保護層を形成後、第1表面保護層の製膜条件から第2表面保護層の製膜条件に至るまで徐々に変化させ、厚さ3,000Åの層を形成し、更に第2表面保護層の製膜条件のもとで、全第2表面保護層の膜厚が10,000Åとなる様に製膜が継続された。次に、第2表面保護層の製膜条件から第3表面保護層の製膜条件に到るまで徐々に変化させ、厚さ1,000Åの層を形成し、更に第3表面保護層の製膜条件のもとで、全第3表面保護層の膜厚が10,000Åとなる様に製膜が継続された以外は、実施例6と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
【0059】
【表1】

註)感度:コロナ放電により感光体を帯電させ、感光体表面に光をあてて、表面電位が800Vから1/5の160Vになるまでの時間(sec)を求め、感度(E1/5)を算出した。
剥離特性:感光体表面に剥離が認められなかった場合○、局部的な剥離が認められた場合△、全面剥離が認められた場合×
△VL:露光部電位の変化量(10万枚及び40万枚時点とスタート時点での地肌部電位の差)
【0060】
【表2】

註)感度:コロナ放電により感光体を帯電させ、感光体表面に光をあてて、表面電位が800Vから1/5の160Vになるまでの時間(sec)を求め、感度(E1/5)を算出した。
剥離特性:感光体表面に剥離が認められなかった場合○、局部的な剥離が認められた場合△、全面剥離が認められた場合×
△VL:露光部電位の変化量(10万枚及び40万枚時点とスタート時点での地肌部電位の差)
【0061】
【発明の効果】請求項1の電子写真用感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を順次積層した構成を持つ電子写真用感光体において、前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素及び沃素等から選ばれた少なくとも一種の添加物元素を含有する膜からなり、しかも該添加物元素の炭素に対する含有原子量比が、表面保護層の感光層近傍付近よりも最表層付近の方が大きいものとしたことから、炭素を主成分とする保護層を有する感光体の耐剥離性を向上させ、且つ長期的に安定した画像形成を行うことが可能になる。
【0062】請求項2及び3の電子写真用感光体は、前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に少なくとも窒素を含有する膜からなり、しかも窒素と炭素の含有原子量比(N/C比)が、感光層近傍付近では0.005以下であり且つ最表層付近では0.05以上であるものとするか、又は前記表面保護層が水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有し、更に少なくともフッ素を含有する膜からなり、しかもフッ素と炭素の含有原子量比(F/C比)が、感光層近傍付近では0.001以下であり且つ最表層付近では0.005以上であるものとしたことから、更に前記特性を向上させることが可能になる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-31 
出願番号 特願平6-266240
審決分類 P 1 652・ 113- YA (G03G)
P 1 652・ 534- YA (G03G)
P 1 652・ 531- YA (G03G)
P 1 652・ 121- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 六車 江一
伏見 隆夫
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3350833号(P3350833)
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所 株式会社リコー
発明の名称 電子写真用感光体  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  

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