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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1107844
異議申立番号 異議2003-73234  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-12-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-19 
確定日 2004-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3436656号「印刷処理システム」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3436656号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件の出願から本決定に至るまでの主だった経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成9年5月19日 本件出願
・平成15年6月6日 特許第3436656号として設定登録(請求項1〜2)
・同年12月19日 特許異議申立人神田泰貴より、請求項1〜2に係る特許に対して特許異議申立
・平成16年4月8日付け 当審にて取消理由通知
・同年6月15日 特許権者より意見書及び訂正請求書提出

第2 訂正の許否の判断
1.訂正事項
[訂正事項1]訂正前請求項1記載の「印刷データをページ単位に縮小して」を「印刷データを、前記印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズと1ページに合成するページ数を示すページ数データとから算出した縮小率で、ページ単位に縮小して」と訂正する。
[訂正事項2]訂正前請求項1記載の「前記縮小したビットマップデータを合成するページごとに印刷装置に送信する」を「前記ページ単位に縮小したビットマップデータを合成するページ単位ごとに印刷装置に送信する」と訂正する。
[訂正事項3]訂正前請求項1記載の「上位装置から受信した縮小データの1ラスタを格納した後」を「上位装置から受信した前記縮小したビットマップデータの1ラスタを合成データのメモリエリアに格納した後」と訂正する。
[訂正事項4]訂正前請求項1記載の「他のページのラスタサイズ分だけメモリエリアを空けて次のラスタを格納することにより複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段」を「前記合成データのメモリエリアにおいて他のページのラスタサイズ分だけメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返し、次のページのビットマップデータを前記処理で空けたメモリエリアに前記処理と同じ様に格納する処理を1ページ分繰り返すことにより複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段」と訂正する。

2.訂正目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1,4は特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項2,3は明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。
訂正事項1〜4が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内での訂正(訂正事項1は段落【0034】の記載に基づくものであり、他は自明である。)であり、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかである。

3.訂正の許否の判断の結論
以上のとおり、本件訂正請求は、平成15年改正前特許法120条の4第2項ただし書き、並びに同第3項で準用する同法126条2項及び3項に適合する。
よって、平成16年6月15日付け訂正請求による訂正を認める。

第2 特許異議申立についての当審の判断
1.本件発明の認定
訂正が認められるから、本件の請求項1,2に係る発明(請求項番号に応じて、以下「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正請求書に添付した訂正明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものと認める
「【請求項1】 複数ページの印刷データを1ページに合成して印刷する印刷処理を行う印刷処理システムにおいて、
1ページに合成する複数ページの印刷データを、前記印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズと1ページに合成するページ数を示すページ数データとから算出した縮小率で、ページ単位に縮小してビットマップデータを作成する印刷データ縮小手段と、前記ページ単位に縮小したビットマップデータを合成するページ単位ごとに印刷装置に送信する送信手段とを有する上位装置と、
前記縮小したビットマップデータを上位装置から受信する受信手段と、上位装置から受信した前記縮小したビットマップデータの1ラスタを合成データのメモリエリアに格納した後、前記合成データのメモリエリアにおいて他のページのラスタサイズ分だけメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返し、次のページのビットマップデータを前記処理で空けたメモリエリアに前記処理と同じ様に格納する処理を1ページ分繰り返すことにより複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段と、前記1ページに合成したビットマップデータを印刷する印刷手段とを有する印刷装置とを備えることを特徴とする印刷処理システム。
【請求項2】 請求項1記載の印刷システムにおいて、前記上位装置の送信手段は、作成したビットマップデータを圧縮して印刷装置に送信し、前記印刷装置の展開手段は、受信したデータをビットマップデータに伸張しながら合成することを特徴とする印刷処理システム。」

2.引用刊行物の記載事項
この項以下では、「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いる。
取消理由に引用した特開平5-112054号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証。以下「引用例1」という。)には、以下のア〜カの記載が図示とともにある。
ア.「【産業上の利用分野】本発明は画像処理装置、特にPDL(Page Description Language)データに基づいてラスタ画像を展開し、画像の形成を行う画像処理装置に関する。」(段落【0001】)
イ.「本発明は、・・・入力したPDLデータに基づいて複数の画像を1枚の記録媒体上に形成できる画像処理装置を提供することを目的とする。」(段落【0005】)
ウ.「図示するように、ホストコンピュータ12からインターフェース11を介して送られてきたカラーPDLデータは、外部インターフェース6を通して入力され、モード判定部13によって後述するノーマルモードで処理するのか、リピートモードで処理するのかが判定される。そして、判定結果に応じてカラーイメージデータが展開され、フルページ画像メモリ7-1〜4にそれぞれ書き込まれる。一方、画像形成部8は、例えば複数の出力色成分(C,M,Y,K)について、面順次に画像形成を行うものであり、各出力色成分にフルページ画像メモリ7-1〜4がそれぞれ対応している。また、アドレス発生部9は、画像形成部8からの同期信号51に基づいてフルページ画像メモリ7-1〜4の読み出しアドレス52を発生し、そのアドレス52に格納されているデータ53が画像形成部8に出力される。」(段落【0012】)
エ.「図7・・・(b)はリピートモードであり、図示するように、複数ページ分の画像がカラーPDLプリンタの用紙1枚に組み合わせられて出力されるモードである。」(段落【0019】)
オ.「リピートモードであれば、用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのかというページ数情報をRAM3に一時記憶し、リピートする内容が同一内容か異なる内容かを識別情報により判断する(ステップS103)。・・・用紙1枚分の画像がメモリに格納されると、画像形成部8に転送され、用紙にプリントされる(ステップS107)。」(段落【0023】)
カ.「ステップS103において複数ページの内容が異なる場合、ページ数のカウンタnを“1”に初期化し(ステップS108)、PDLデータの1単位を解析する(ステップS109)。そして、ラスタ画像に展開した後、そのラスタ画像をページ数情報に基づいて縮小処理し、各ページメモリ7ー1〜4内のページ数情報に応じた複数の箇所に格納する(ステップS110)。次に、1ページ分ラスタ画像の展開及び格納処理が終了したか否かを判断し(ステップS111)、終了していなければステップS109へ処理を戻し、上述の処理を繰り返す。その後、用紙1枚分の画像がメモリに格納されると、カウンタnの値がページ数情報と等しいか否かをチェックする(ステップS112)。その結果、等しくなければカウンタnの値をインクリメントし(ステップS113)、次のPDLデータを受信する(ステップS114)。そして、ステップS109へ処理を戻し、上述の処理を繰り返し、カウンタnがページ数情報と等しくなれば、前述したプリント動作を行い(ステップS107)、複数ページの画像を1枚の用紙にプリントする。」(段落【0024】)

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載カの「ページ数情報に基づいて縮小処理」とは、用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのか(記載オ参照)に従って縮小率を決定した上で縮小処理を行うことである。
引用例1の記載カにおける「前述したプリント動作」とは、記載ウの「フルページ画像メモリ7-1〜4の読み出しアドレス52を発生し、そのアドレス52に格納されているデータ53が画像形成部8に出力される」こと、及び記載オの「用紙1枚分の画像がメモリに格納されると、画像形成部8に転送され、用紙にプリントされる」ことである。
引用例1記載のホストコンピュータと画像処理装置からなる印刷処理システムは、リピートモードとして、内容が異なる複数ページを1枚の用紙にプリントするシステムであり、それは次のようなものである。
「内容が異なる複数ページを1枚の用紙にプリントする印刷処理システムであって、
ホストコンピュータは各ページをPDLデータとして画像処理装置に送信し、
画像処理装置は、1ページのPDLデータを受信すると、それをラスタ画像に展開した後、そのラスタ画像を用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのかというページ数情報によって定まる縮小率に従って縮小処理し、ページメモリ内のページ数情報に応じた複数の箇所に格納することを繰り返し、すべてのページの処理が終了すれば、ページメモリに格納されているデータを画像形成部に出力しプリント動作を行う印刷処理システム。」(以下「引用例発明1」という。)

4.本件発明1と引用例発明1との一致点及び相違点の認定
引用例発明1において「内容が異なる複数ページを1枚の用紙にプリントする」ことと本件発明1において「複数ページの印刷データを1ページに合成して印刷する印刷処理を行う」ことに相違はない。
引用例発明1の「ホストコンピュータ」、「画像処理装置」及び「画像形成部」は本件発明1の「上位装置」、「印刷装置」及び「印刷手段」にそれぞれ相当し、引用例発明1の「ホストコンピュータ」及び「画像処理装置」が「印刷装置に送信する送信手段」及び「上位装置から受信する受信手段」をそれぞれ有することは自明である。また、送受信されるものがページ単位での印刷データである点で、本件発明1と引用例発明1に相違はない。
引用例発明1において、「ラスタ画像に展開した後、そのラスタ画像を用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのかというページ数情報によって定まる縮小率に従って縮小処理」することと、本件発明1において「印刷データを、前記印刷データのページサイズと実際に出力する用紙サイズと1ページに合成するページ数を示すページ数データとから算出した縮小率で、ページ単位に縮小してビットマップデータを作成する」こととは、縮小率の算出基準を除いて異ならない。すなわち、引用例発明1の「ページメモリ」と本件発明1の「合成データのメモリエリア」は、縮小したビットマップデータを格納する点で一致し、以下では「ページメモリ」を「メモリエリア」ということもある。
本件発明1と引用例発明1は、縮小処理とメモリエリアへの格納をページ単位で繰り返し行う点で一致し、引用例発明1も「複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段」を有するといえる。
したがって、本件発明1と引用例発明1は、
「複数ページの印刷データを1ページに合成して印刷する印刷処理を行う印刷処理システムにおいて、
印刷処理システムは、ページ単位での印刷データを印刷装置に送信する送信手段とを有する上位装置と、前記印刷データを上位装置から受信する受信手段を有する印刷装置からなり、
印刷処理システム全体としては、1ページに合成する複数ページの印刷データを、適当な算出基準にも基づく縮小率で、ページ単位に縮小してビットマップデータを作成する印刷データ縮小手段を有し、
前記縮小したビットマップデータを合成データのメモリエリアに格納する処理をページ単位で繰り返すことにより複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段と、前記1ページに合成したビットマップデータを印刷する印刷手段とを有する印刷装置とを備えることを特徴とする印刷処理システム。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉縮小率算出のための算出基準につき、本件発明1では「前記印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズと1ページに合成するページ数を示すページ数データとから算出」としているのに対し、引用例発明1では「用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのかというページ数情報によって定まる」としている点。
〈相違点2〉縮小したビットマップデータをメモリエリアに格納する処理につき、本件発明1では「ビットマップデータの1ラスタを合成データのメモリエリアに格納した後、前記合成データのメモリエリアにおいて他のページのラスタサイズ分だけメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返し、次のページのビットマップデータを前記処理で空けたメモリエリアに前記処理と同じ様に格納する処理を1ページ分繰り返す」のに対し、引用例発明1がそのような処理をしているのかどうか不明である点。
〈相違点3〉本件発明1では「印刷データ縮小手段」が印刷装置に備わっており、上位装置から印刷装置へ送信される印刷データは「縮小したビットマップデータ」であるのに対し、引用例発明1では「印刷データ縮小手段」がホストコンピュータ(上位装置)に備わっており、ホストコンピュータ(上位装置)から画像処理装置(印刷装置)へ送信される印刷データはPDLデータである点。この相違点には、本件発明1において印刷装置が受信するデータ及びメモリエリアに格納するデータが「縮小したビットマップデータ」である点も含まれる。

5.相違点についての判断及び本件発明1の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例発明1の「用紙1枚に何ページ分の画像を出力するのかというページ数情報」と本件発明1の「1ページに合成するページ数を示すページ数データ」自体に相違はない。要するに、この相違点は、印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズが同一サイズである場合だけを予定している(引用例発明1)のか、異なるサイズの場合をも予定している(本件発明1)のかに起因する相違点である。
複数ページの印刷データを1枚の用紙に印刷するに当たり、印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズを同一としなければならない理由はないし、現実に異なるサイズをも予定して、縮小率の算出基準に印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズを含めることは周知である(例えば特開平6-183095号公報又は特開平9-26865号公報参照。)。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成をなすことは設計事項にすぎない。

(2)相違点2について
取消理由に引用した特開平2-194977号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証。以下「引用例2」という。)には、「前述した実施例では、4ページ同時印刷時に4ページ分のデータを1ページのデータとして一旦編集したが、これに限定されるものではない。ここでは、第6図に示す如く、ページ編集を1ページづつ編集していつて、ビツトマツプメモリ107に各々のページのデータを決められた位置に展開する場合を説明する。・・・第1ページに対応するパターンデータはビツトマツプメモリ107(x,y)座標に従つて展開する。第2ページは1ページの紙幅分だけ右にシフトして展開する。つまり紙幅分の定数Xを第2ページデータのx座標に付加する。同様に第3ページは1ページ分の紙の長さYをy座標に付加、第4ページはx,y共に付加することで、図示の様な展開結果を得る。」(5頁左下欄1〜15行)との記載があり、「1ページづつ編集」とは前述した実施例における「4ページ分のデータを1ページのデータとして一旦編集」と対立する概念として用いられている用語であるから、第6図(8頁)のビットマップメモリにおいて「ページ1」として示された領域(x座標がX以下、y座標がY以下の領域)への展開処理が終わってから、次の「ページ2」の展開処理を行うものと認められる。
そして、「ビツトマツプメモリ107(x,y)座標に従つて展開する。第2ページは1ページの紙幅分だけ右にシフトして展開する」ということは、第1ページの展開時においては、ビツトマツプメモリ107x座標がX以下の領域にとどめられ、x座標がX+1以上の領域を空けてあるものと認めることができる。x座標がX+1以上の領域は、本件発明1の「他のページのラスタサイズ分」だけ空けたメモリエリアに相当する。もっとも、引用例2の上記記載だけでは、各ページのデータをビツトマツプメモリに展開するに当たり、1ラスタずつビツトマツプメモリに展開していることまでは断定できない。しかし、ビツトマツプメモリへの展開を1ラスタずつ行うことは最も基本的であるばかりか、引用例2には「ページの先頭から所定のライン数の展開が終了したら」(3頁右下欄11〜12行)との記載があるところ、これは1ラスタずつビツトマツプメモリに展開することを意味するものであって、第6図の説明記載ではないけれども、第6図実施例においてもこのような展開処理をするものと理解するのが自然である。少なくとも、第6図実施例において1ラスタずつビツトマツプメモリに展開することは示唆されている。
そうすると、相違点2に係る本件発明1の構成たる展開処理は、引用例2記載の展開処理と同一というべきであり、この展開処理を引用例発明1に適用して相違点2に係る本件発明1の構成をなすことが当業者にとって想到容易であることは明らかである。
特許権者は、「引用例2の印刷装置では、文字コード、制御コードを含む印字データを受信することから、ホストインタフェース104と、ページバッファメモリ105と、ビットマップメモリ107とが必須であるのに対し、本件請求項1発明の印刷装置では、・・・引用例2に記載されたページバッファメモリ105は不要です。」(意見書11頁5〜10行)と主張する。しかし、引用例2記載のページバッファメモリ105は、特許権者が主張するとおり文字コード、制御コードを含む印字データを受信するために必要となった構成であり、上位装置から印刷装置へ送信される印刷データがPDLデータであるのかビットマップデータであるのかは、別途相違点3として採り上げているのだから、相違点2として問題となるのは合成データのメモリエリアへの展開処理だけである。特許権者の上記主張は採用できない。
したがって、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用例発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3)相違点3について
取消理由に引用した特開平7-244566号公報(特許異議申立人の提出した甲第3号証。以下「引用例3」という。)には、「ホストコンピュータ10で出力要求中の画像データを、ステップS403で得られたレーザビームプリンタ12の出力可能な用紙サイズに納まるように間引き等、公知の縮小変倍処理を行う。そして、ステップS408に進み、レーザビームプリンタ12の入出力制御部1へネットワークケーブル13を介して、縮小された画像データを転送する。」(段落【0048】)との記載があり、この記載によると、印刷データの縮小処理がホストコンピュータ(本件発明1の「上位装置」に相当する。)で行われることが記載されており、その縮小処理は「間引き等、公知の縮小変倍処理」とされていることからみて、ビットマップデータに展開した後の縮小処理であって、縮小したビットマップデータをレーザビームプリンタ(本件発明1の「印刷装置」に相当する。)に送信すると解するのが自然である。
この点特許権者は、「ホストコンピュータ10が作成する縮小画像データは・・・PDLデータのようなデータである可能性が高い」(意見書7頁11〜15行)、及び「ホストコンピュータ10が、画像情報、文書情報及び強調文字等を指定する制御コードから成る縮小画像データを作成し、レーザビームプリンタに出力し、レーザビームプリンタが、受信した画像情報、文書情報及び強調文字等を指定する制御コード等から成る画像データをページメモリ2に格納し、その画像情報、文書情報及び強調文字等を指定する制御コード等から成る画像データを読み出し、キャラクタジェネレータ部3を用いてビットマップメモリ5にビットパターンとして展開するものである」(同頁19〜26行)と主張する。しかし、上記記載では縮小処理の代表的技術として間引きがあげられているが、ビットマップ以外のデータであれば、間引きによる縮小はできない。
のみならず、上位装置から印刷装置へ送信する印刷データをビットマップデータとすることは周知である(後記引用例4もその1つである。)ばかりか、ビットマップデータ展開処理や縮小処理を上位装置・印刷装置のどちらで行うかといったことは、上位装置と印刷装置の能力・負担等を考慮して設計されており、ビットマップデータ展開処理を上位装置で行い、縮小したビットマップデータを印刷装置に送信することも周知である(例えば特開平8-186724号公報(特に段落【0003】)又は前掲特開平9-26865号公報参照。)。
これらのことを考慮すれば、引用例3に接した当業者であれば、上記認定のとおり、縮小したビットマップデータをレーザビームプリンタに送信すると理解するものと認められる。少なくとも、上位装置にて縮小したビットマップデータを作成し、これを印刷装置に送信するとの、相違点3に係る本件発明1の構成を想到することに困難性があると認めることはできない。
すなわち、特許権者の上記主張を採用することはできず、相違点3に係る本件発明1の構成は当業者にとって想到容易である。

(4)本件発明1の進歩性の判断
相違点1〜相違点3に係る本件発明1の構成は、いずれも設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明1は引用例発明1並びに引用例2,3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

6.本件発明2の進歩性の判断
本件発明2は、本件発明1に「前記上位装置の送信手段は、作成したビットマップデータを圧縮して印刷装置に送信し、前記印刷装置の展開手段は、受信したデータをビットマップデータに伸張しながら合成することを特徴とする」との限定を加えたものであるが、印刷装置の展開手段が受信したデータを合成することは、本件発明1の構成に含まれているから、ここでの実質的な限定事項は、送受信されるデータが作成したビットマップデータを圧縮したデータであることである(上位装置で圧縮すること、及び印刷装置の展開手段が伸張しながら合成することは、送受信データが圧縮データであることの必然的結果である。)。
しかし、上記本件発明2の限定構成、すなわち、送受信されるデータを作成したビットマップデータを圧縮したデータとすることは、取消理由に引用した特開平2-190078号公報(特許異議申立人の提出した甲第4号証。以下「引用例4」という。)に記載されているほか、ファクシミリ通信においては普通に行われている(ファクシミリ通信で上位装置に当たるのは、送信側ファクシミリである。)ことであり、これを引用例1記載の発明に適用する(その前提として、相違点3に係る本件発明1の構成を採用した上で)ことにより、上記限定構成をなすことは設計事項程度である。なお、引用例4にはビットマップデータとの明示的記載はないけれども、「スキャナなどから読み取った」(1頁右下欄13〜14行)、「画像データの回転処理」(2頁右上欄14〜15行)等の記載からみて明らかといえる。
したがって、本件発明2は引用例発明1並びに引用例2〜4記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされた特許であるから、平成15年改正前特許法113条2号の規定により取り消されなければならない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
印刷処理システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数ページの印刷データを1ページに合成して印刷する印刷処理を行う印刷処理システムにおいて、
1ページに合成する複数ページの印刷データを、前記印刷データのページサイズと実際に印刷出力する用紙サイズと1ページに合成するページ数を示すページ数データとから算出した縮小率で、ページ単位に縮小してビットマップデータを作成する印刷データ縮小手段と、前記ページ単位に縮小したビットマップデータを合成するページ単位ごとに印刷装置に送信する送信手段とを有する上位装置と、
前記縮小したビットマップデータを上位装置から受信する受信手段と、上位装置から受信した前記縮小したビットマップデータの1ラスタを合成データのメモリエリアに格納した後、前記合成データのメモリエリアにおいて他のページのラスタサイズ分だけメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返し、次のページのビットマップデータを前記処理で空けたメモリエリアに前記処理と同じ様に格納する処理を1ページ分繰り返すことにより複数ページのビットマップデータを1ページのビットマップデータに合成する展開手段と、前記1ページに合成したビットマップデータを印刷する印刷手段とを有する印刷装置とを備えることを特徴とする印刷処理システム。
【請求項2】 請求項1記載の印刷システムにおいて、前記上位装置の送信手段は、作成したビットマップデータを圧縮して印刷装置に送信し、前記印刷装置の展開手段は、受信したデータをビットマップデータに伸張しながら合成することを特徴とする印刷処理システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上位装置から送信された印刷データを印刷する印刷処理システムに関し、特に、複数ページの文書データを1ページに合成して印刷を行う印刷処理システムに適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上位装置から印刷装置に印刷データを送信して印刷を行う種々の印刷処理が行われており、その印刷処理の1つに複数のページの文書データを1ページに合成して印刷する段組印刷がある。
【0003】
従来の印刷処理システムで前記の段組印刷を行う場合には、例えば特開平6-7688号公報に記載されている様に、上位装置から受信したデータを印刷装置で縮小してビットマップデータをメモリに蓄積し、複数ページを1ページに合成して出力している。
【0004】
前記の様に上位装置で文書データをビットマップデータにラスタライズして印刷装置にビットマップデータを送信して印刷するものでは、例えば2ページ分の文書データを1ページに合成して印刷出力する場合に、2ページ分のビットマップデータを印刷装置に送信するのでデータの送信時間が2倍となる。また、印刷装置で受信したビットマップデータを縮小しながらメモリに格納しなければならず、受信データをメモリに格納するまでの処理時間が増大する。
【0005】
複数のページを1ページに合成するページ合成については、その他に特開平7-125331号公報や特開平7-148990号公報に記載されており、これらも同様に印刷装置でビットマップデータの縮小をしている。また、これらの印刷装置では、印刷装置におけるビットマップデータの格納時間を短縮する目的で、上位装置でビットマップデータの圧縮等を行うことはしておらず、印刷装置でも圧縮データの伸長処理を行っていない。
【0006】
上位装置で文書データを縮小及びラスタライズしてビットマップデータを作成する際に、複数ページのビットマップデータを上位装置で合成する方法も考えられるが、この方法では、同一のページに印刷出力する複数ページの文書データの縮小及びラスタライズと、複数ページのビットマップデータの合成処理が完了するまで印刷装置にビットマップデータを送信することができないので、印刷装置へのビットマップデータの送信が遅れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術において、1ページに複数ページの印刷データを印刷する段組印刷を行う際に上位装置で印刷データをビットマップデータにラスタライズして印刷装置にビットマップデータを送信し印刷装置で縮小して印刷する場合には、上位装置から印刷装置へのデータ送信時間と印刷装置側での縮小処理時間の増加により印刷時間が長くかかるという問題がある。
【0008】
また、従来の技術において、上位装置で複数ページのビットマップデータを合成して印刷装置に送信する場合には、印刷装置へのビットマップデータの送信が遅れるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記問題を解決し、複数ページを縮小及び合成して印刷する印刷処理を高速に行うことが可能な技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数ページの印刷データを1ページに合成して印刷する印刷処理を行う印刷処理システムにおいて、1ページに合成する複数ページの印刷データを上位装置で縮小してビットマップデータを作成し、前記縮小した複数ページのビットマップデータを印刷装置で1ページのビットマップデータに合成して印刷するものである。
【0011】
本発明の印刷処理システムでは、上位装置の印刷データ縮小手段により複数ページの印刷データを縮小してビットマップデータを作成し、前記縮小したビットマップデータを送信手段により印刷装置に送信する。
【0012】
印刷装置は、前記縮小したビットマップデータを受信手段により上位装置から受信し、受信した複数ページのビットマップデータを展開手段により1ページのビットマップデータに合成した後、前記1ページに合成したビットマップデータを印刷手段により印刷する。
【0013】
以上の様に、本発明の印刷処理システムによれば、上位装置で複数のページを縮小したデータを作成して印刷装置に送信し、印刷装置で複数ページのデータを1ページに合成して印刷するので、複数ページを縮小及び合成して印刷する印刷処理を高速に行うことが可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下に、A4サイズ2ページの文書データをA4サイズ1ページに合成して印刷する段組印刷を行う実施形態1の印刷処理システムについて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の印刷処理システムの概略構成を示す図である。図1に示す様に本実施形態の印刷処理システムでは、複数ページの印刷データ120を縮小及びラスタライズする上位装置100と、複数ページの縮小データ122を受信して合成データ125を作成し印刷する印刷装置110とが接続されている。
【0016】
上位装置100は、上位装置100全体の動作を制御するCPU101と、印刷データ120やプリンタドライバ121をロードするRAM102(ランダムアクセスメモリ)と、印刷データ120の印刷処理の指示を入力するキーボード103と、印刷データ120の内容等を表示するディスプレイ104と、印刷データ120やプリンタドライバ121を格納するHDD105(ハードディスクドライブ)と、縮小データ122を印刷装置110に送信するI/F106(インタフェース)とを備えている。
【0017】
上位装置100のRAM102には、1ページに合成する複数ページの印刷データ120と、印刷データ120の縮小及びラスタライズを行うプリンタドライバ121と、プリンタドライバ121により出力される縮小データ122及び1ページに合成するページ数を示すページ数データ123とが格納される。
【0018】
印刷装置110は、印刷装置110全体の動作を制御するCPU111と、縮小データ122や展開部124をロードするRAM112と、制御プログラム等を格納するROM113(リードオンリメモリ)と、展開部124での処理や印刷処理に必要なデータを格納するHDD114と、印刷装置110を操作する操作パネル115と、縮小データ122を上位装置100から受信するCHA116(チャネルアダプタ)と、合成データ125を印刷部118に送るI/Oアダプタ117と、複数ページを1ページに合成した合成データ125を印刷用紙に印刷する印刷部118とを備えている。尚、HDD114の代わりにEEPROM(書き換え可能ROM)等の記憶装置を用いても良い。
【0019】
印刷装置110のRAM112には、上位装置100で縮小した複数ページの縮小データ122と、縮小データ122の各ページのラスタデータを連結して合成データ125を作成する展開部124と、展開部124によって出力される合成データ125とが格納される。
【0020】
本実施形態の印刷処理システムのプリンタドライバ121は、1ページに合成する複数ページの印刷データ120を縮小して縮小データ122を作成する印刷データ縮小手段に相当し、I/F106は、前記縮小した縮小データ122を印刷装置110に送信する送信手段に相当している。
【0021】
また、CHA116は、前記縮小した縮小データ122を上位装置100から受信する受信手段に相当し、展開部124は、上位装置100から受信した複数ページの縮小データ122を1ページの合成データ125に合成する展開手段に相当し、印刷部118は、前記1ページに合成した合成データ125を印刷する印刷手段に相当している。
【0022】
上位装置100のプリンタドライバ121や印刷装置110の展開部124はFD(プロッピーディスク)等の記録媒体に格納され、前記記録媒体から上位装置100のRAM102及びHDD105や印刷装置110のRAM112及びHDD114またはEEPROM等に読み込まれるものとする。尚、前記記録媒体としてFD以外の媒体を用いても良い。
【0023】
図2は、本実施形態の段組印刷処理の概要を示す図である。図2に示す様に本実施形態の段組印刷処理では、「A」及び「B」で示されるA4サイズの2ページの文書データ201及び202を縮小及びラスタライズし、印刷装置110に送信して1ページに印刷する処理を表している。
【0024】
上位装置100上のプリンタドライバ121は、文書データ201及び202のページサイズと、実際に印刷出力する用紙サイズと、1ページに合成するページ数を示すページ数データ123とから縮小率として例えば70%を算出し、2ページ分の文書データ201及び202を70%に縮小してビットマップに展開したビットマップデータ211及び212を作成し、合成時の大きさに縮小したビットマップデータ211及び212を印刷装置110に送信する。
【0025】
その際、ページ数データ123を送信データの先頭に付加し、ページ数データ123、ビットマップデータ211及び212の順序で印刷装置110に送信する。
【0026】
印刷装置110では、上位装置100から送信されたビットマップデータ211及び212を受信し、受信したビットマップデータ211及び212を展開部124で1ラスタづつ読み出し、合成データ125として格納していく。
【0027】
図3は、本実施形態のビットマップデータ211の合成処理の概要を示す図である。図3に示す様に本実施形態のビットマップデータ211の合成処理では、1ページ目のビットマップデータ211を合成データ125として格納する処理を表しており、1ページ目のビットマップデータ211を格納する時には、合成データ125のメモリエリアの先頭から格納し始める。1ページ目のビットマップデータ211を1ラスタ格納する毎に、2ページ目のビットマップデータ212の1ラスタ分のメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返し、この様にして1ページ分のビットマップデータ211を合成データ125として順に格納していく。
【0028】
図4は、本実施形態のビットマップデータ212の合成処理の概要を示す図である。図4に示す様に本実施形態のビットマップデータ212の合成処理では、2ページ目のビットマップデータ212を合成データ125として格納する処理を表しており、2ページ目のビットマップデータ212を格納する時には、1ページ分のビットマップデータ211を格納する際に空けたメモリエリアに、1ラスタ毎に格納していく。
【0029】
この際、1ページ目のビットマップデータ211を格納したラスタ部にはデータを格納しない様に、1ページ目のビットマップデータ211を格納した時と同じ様に、1ページ目のビットマップデータ211が格納されているメモリエリアを空けながらビットマップデータ212を合成データ125として格納する。
【0030】
この様にして1ページ目と2ページ目のビットマップデータ211及び212の1ラスタ分が連結されたデータが、結果的に実際に印刷される合成データ125の1ラスタ分のデータとして格納される。
【0031】
前記の様にビットマップデータ211及び212を合成データ125として順次格納し、全てのビットマップデータ211及び212を格納できたところで、合成データ125の内容を印刷部118に送信する。
【0032】
印刷部118は、展開部124から送信されてきた合成データ125の内容を実際に1枚の用紙に印刷することで、A4サイズ2ページ分の文書データ201及び202をA4サイズ1ページ分の用紙に合成して印刷することが可能となり、段組印刷が実現できる。
【0033】
図5は、本実施形態のページ合成の縮小率と合成結果の例を示す図である。図5に示す様に本実施形態のページ合成の縮小率と合成結果では、種々の印刷データ120を1ページに合成する処理の例を表しており、図5(1)は種々のサイズの2ページの印刷データ120を1ページに合成する際の縮小率と合成結果、図5(2)は4ページの印刷データ120を1ページに合成する際の縮小率と合成結果を示している。
【0034】
図5の様に本実施形態の印刷処理システムの上位装置100では、1ページに合成して印刷する印刷データ120のページサイズと、実際に印刷出力する用紙サイズと、印刷データ120のページ数データ123とを基に印刷データ120の縮小率を算出することで、2ページ以外の複数ページの印刷データ120の縮小及びラスタライズを行って縮小データ122を作成することが可能である。
【0035】
印刷装置110では、実際に印刷出力する用紙サイズと1ページに合成して印刷する印刷データ120のページ数データ123とを上位装置100から受信することで、各ページの縮小データ122の1ラスタのサイズを求める。
【0036】
印刷装置110の展開部124は、1ページ目の縮小データ122の1ラスタを合成データ125に格納した後、他のページのラスタサイズ分だけ合成データ125のメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返す。
【0037】
次に展開部124は、2ページ目の縮小データ122の1ラスタを1ページ目で空けておいたメモリエリアに格納した後、他のページのラスタサイズ分だけ合成データ125のメモリエリアを空けて次のラスタを格納する処理を1ページ分繰り返す。
【0038】
この処理を、1ページに合成して印刷する印刷データ120のページ数データ123分繰り返すことにより、複数ページの印刷データ120を実際に印刷する用紙の1ページに合成することができ、この合成した合成データ125を印刷することで複数ページを実際に印刷出力する用紙の1ページに印刷することが可能となる。
【0039】
以上説明した様に、本実施形態の印刷処理システムによれば、上位装置で複数のページを縮小したデータを作成して印刷装置に送信し、印刷装置で複数ページのデータを1ページに合成して印刷するので、複数ページを縮小及び合成して印刷する印刷処理を高速に行うことが可能である。
【0040】
(実施形態2)
以下に、A4サイズ2ページの文書データを圧縮して印刷装置に送り、A4サイズ1ページに合成して印刷する段組印刷を行う実施形態2の印刷処理システムについて説明する。
【0041】
図6は、本実施形態の印刷処理システムの概略構成を示す図である。図6に示す様に本実施形態の印刷処理システムでは、複数ページの印刷データ120を縮小及びラスタライズして圧縮する上位装置100と、複数ページの圧縮データ601から合成データ125を作成して印刷する印刷装置110とが接続されている。
【0042】
本実施形態の印刷処理システムの上位装置100は、複数ページの印刷データ120を縮小及びラスタライズして圧縮するプリンタドライバ121を有しており、また印刷装置110はプリンタドライバ121により圧縮した圧縮データ601を伸長する伸長回路600を有している。
【0043】
上位装置100のRAM102には、段組印刷する複数ページの印刷データ120と、印刷データ120を縮小及びラスタライズして圧縮するプリンタドライバ121と、プリンタドライバ121により出力される圧縮データ601及び1ページに合成するページ数を示すページ数データ123とが格納される。
【0044】
印刷装置110のRAM112には、上位装置100で縮小、ラスタライズ及び圧縮を行った複数ページの圧縮データ601と、圧縮データ601の各ページのラスタデータを連結して合成データ125を作成する展開部124と、展開部124によって出力される合成データ125とが格納される。尚、本実施形態の印刷処理システムの他の構成については、図1に示した構成と同じものとする。
【0045】
図7は、本実施形態の圧縮を伴う段組印刷処理の概要を示す図である。図7に示す様に本実施形態の圧縮を伴う段組印刷処理では、「A」及び「B」で示されるA4サイズの2ページの文書データ201及び202を縮小及びラスタライズした後に圧縮し、印刷装置110に送信して1ページに印刷する処理を表している。
【0046】
上位装置100上のプリンタドライバ121は、文書データ201及び202のページサイズと、実際に印刷出力する用紙サイズと、1ページに合成するページ数を示すページ数データ123とから縮小率として例えば70%を算出し、2ページ分の文書データ201及び202を70%に縮小してビットマップに展開したデータを作成する。
【0047】
次に、縮小してビットマップに展開したデータを、例えばMH(Modified Huffman)圧縮、MMR(Modified Modified Read)圧縮等の圧縮方式を用いて圧縮して圧縮データ701及び702を作成し、ページ数データ123を送信データの先頭に付加し、ページ数データ123、圧縮データ701及び702の順序で印刷装置110に送信する。
【0048】
図8は、本実施形態の圧縮データ701及び702の合成の概要を示す図である。図8に示す様に本実施形態の圧縮データ701及び702の合成では、印刷装置110上で2ページの圧縮データ701及び702を合成する際の順序を表しており、印刷装置110では、上位装置100から送信された圧縮データ701及び702を受信し、受信した圧縮データ701及び702を展開部124で合成データ125として格納する。
【0049】
その際、圧縮データ701及び702の1圧縮単位を合成データ125として格納し、格納したアドレスを圧縮データ格納アドレス711に設定すると共に格納した圧縮データ長を圧縮データ長設定テーブル712に設定する。
【0050】
その後、1ページに合成するページ数を示すページ数データ123分の圧縮データ701及び702を1圧縮データ毎に格納しながら、圧縮データ格納アドレス711及び圧縮データ長設定テーブル712に全ての圧縮データ分の開始アドレス及び圧縮データ長を設定し、ページ数データ123分の全ての圧縮データ701及び702を格納して、伸長回路600に圧縮データ格納アドレス711及び圧縮データ長設定テーブル712を入力する。
【0051】
伸長回路600は、入力された圧縮データ格納アドレス711及び圧縮データ長設定テーブル712から、1ページ目と2ページ目の圧縮データ701及び702を読み出し、ビットマップのデータに伸長して印刷部118に送信する。
【0052】
この際、伸長回路600は1ページ目の1ラスタ目の圧縮データ701を伸長したビットマップのデータと、2ページ目の1ラスタ目の圧縮データ702を伸長したビットマップのデータとを連結して印刷部118に送信する。
【0053】
その後、1ページ目及び2ページ目の圧縮データ701及び702を伸長したビットマップのデータを連結して印刷部118に送信することを繰り返し、以上の様に2ページ分の圧縮したビットマップのデータを合成して実際に印刷出力する用紙の1ページに段組印刷する。
【0054】
また、同様にして2ページ以外の複数ページの印刷データ120についても圧縮したビットマップのデータを合成して1ページに段組印刷することも可能である。
【0055】
以上説明した様に、本実施形態の印刷処理システムによれば、上位装置で複数のページを縮小したデータを作成して印刷装置に送信し、印刷装置で複数ページのデータを1ページに合成して印刷するので、複数ページを縮小及び合成して印刷する印刷処理を高速に行うことが可能である。
【0056】
以上、本発明を前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、上位装置で複数のページを縮小したデータを作成して印刷装置に送信し、印刷装置で複数ページのデータを1ページに合成して印刷するので、複数ページを縮小及び合成して印刷する印刷処理を高速に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施形態1の印刷処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】
実施形態1の段組印刷処理の概要を示す図である。
【図3】
実施形態1のビットマップデータ211の合成処理の概要を示す図である。
【図4】
実施形態1のビットマップデータ212の合成処理の概要を示す図である。
【図5】
実施形態1のページ合成の縮小率と合成結果の例を示す図である。
【図6】
実施形態2の印刷処理システムの概略構成を示す図である。
【図7】
実施形態2の圧縮を伴う段組印刷処理の概要を示す図である。
【図8】
実施形態2の圧縮データ701及び702の合成の概要を示す図である。
【符号の説明】
100…上位装置、101…CPU、102…RAM、103…キーボード、104…ディスプレイ、105…HDD、106…I/F、110…印刷装置、111…CPU、112…RAM、113…ROM、114…HDD、115…操作パネル、116…CHA、117…I/Oアダプタ、118…印刷部、120…印刷データ、121…プリンタドライバ、122…縮小データ、123…ページ数データ、124…展開部、125…合成データ、201及び202…文書データ、211及び212…ビットマップデータ、600…伸長回路、601…圧縮データ、701及び702…圧縮データ、711…圧縮データ格納アドレス、712…圧縮データ長設定テーブル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-15 
出願番号 特願平9-128579
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 清水 康司
津田 俊明
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3436656号(P3436656)
権利者 株式会社日立製作所 株式会社日立インフォメーションテクノロジー
発明の名称 印刷処理システム  
代理人 秋田 収喜  
代理人 秋田 収喜  
代理人 秋田 収喜  

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