• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A47K
管理番号 1107851
異議申立番号 異議2001-70554  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-03-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-19 
確定日 2004-10-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3078527号「ウエットシート収納箱およびその製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3078527号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3078527号に係る出願は、平成10年9月8日の出願であって、平成12年6月16日に特許の設定登録がなされ、その後、株式会社フクヨーから特許異議の申立がなされ、取消理由通知が通知され、その指定期間内である平成13年7月6日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の要旨
訂正事項a:特許請求の範囲を、次のように訂正する。
「【請求項1】 ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した、柔軟で気密性のある収納袋と、該収納袋を収納し、その上面に開口を形成した、形状保持性を有する紙製箱と、該紙製箱の開口の周囲表面とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された、合成樹脂製であり、わずかな変形のみ許容する剛性の開閉蓋ユニットとからなり、該開閉蓋ユニットは、略中央に上取出口が形成された取付板と、該取付板にヒンジを介して開閉自在に取付けられた蓋とからなり、前記紙製箱の開口は、前記収納袋の下取出口より大きく、前記開閉蓋ユニットの上取出口は前記収納袋の下取出口とほぼ同じか又はより小さい大きさであり、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されていることを特徴とするウエットシート収納箱。
【請求項2】 前記開閉蓋ユニットは、取付板と蓋の双方に係合部を形成して、蓋を取付板に形成した上取出口の周囲を塞ぐように閉じたり、開けたりできるようにしたことを特徴とする請求項1記載のウエットシート収納箱。
【請求項3】 前記開閉蓋ユニットは、蓋と取付板との間に、蓋を開放方向に付勢するゴム片を介在させ、かつ蓋と取付板の係合部同士の係合を外すように取付板を変形させるために該取付板に形成した押ボタン部を有することを特徴とする請求項2記載のウエットシート収納箱。
【請求項4】 前記開閉蓋ユニットの上取出口に、該上取出口を繰り返して開閉できる開閉ラベルが貼付されたことを特徴とする請求項1、2または3記載のウエットシート収納箱。
【請求項5】 ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した収納袋を、その上面に前記下取出口より大きい開口を形成した紙製箱に収容し、該紙製箱の開口の周囲とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に接着剤を塗布し、その上に、上取出口を形成した取付板にヒンジを介して蓋を取付けた開閉蓋ユニットの取付板の裏面を接着し、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面を、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接合することを特徴とするウエットシート収納箱の製造方法。」
訂正事項b:明細書の段落【0007】の記載を、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】
請求項1のウエットシート収納箱は、ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した、柔軟で気密性のある収納袋と、該収納袋を収納し、その上面に開口を形成した、形状保持性を有する紙製箱と、該紙製箱の開口の周囲表面とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された、合成樹脂製であり、わずかな変形のみ許容する剛性の開閉蓋ユニットとからなり、該開閉蓋ユニットは、略中央に上取出口が形成された取付板と、該取付板にヒンジを介して開閉自在に取付けられた蓋とからなり、前記紙製箱の開口は、前記収納袋の下取出口より大きく、前記開閉蓋ユニットの上取出口は前記収納袋の下取出口とほぼ同じか又はより小さい大きさであり、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されていることを特徴とする。
請求項2のウエットシート収納箱は、請求項1記載の前記開閉蓋ユニットは、取付板と蓋の双方に係合部を形成して、蓋を取付板に形成した上取出口の周囲を塞ぐように閉じたり、開けたりできるようにしたことを特徴とする。
請求項3のウエットシート収納箱は、請求項2記載の前記開閉蓋ユニットは、蓋と取付板との間に、蓋を開放方向に付勢するゴム片を介在させ、かつ蓋と取付板の係合部同士の係合を外すように取付板を変形させるために該取付板に形成した押ボタン部を有することを特徴とする。
請求項4のウエットシート収納箱は、請求項1、2または3記載の前記開閉蓋ユニットの上取出口に、該上取出口を繰り返して開閉できる開閉ラベルが貼付されたことを特徴とする。
請求項5のウエットシート収納箱の製造方法は、ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した収納袋を、その上面に前記下取出口より大きい開口を形成した紙製箱に収容し、該紙製箱の開口の周囲とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に接着剤を塗布し、その上に、上取出口を形成した取付板にヒンジを介して蓋を取付けた開閉蓋ユニットの取付板の裏面を接着し、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面を、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接合することを特徴とする。」
訂正事項c:明細書の段落【0008】の記載を、次のように訂正する。
「請求項1の発明によれば、開閉蓋ユニットの上取出口はわずかな変形しか許容しない剛性を有しているので、ウエットシートを取り出すとき適度な抵抗をウエットシートに与え、1枚づつ取り出すとき2枚目の引きずり出しを防止するので、確実に1枚づつ取り出すことができる。
また、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布して、開閉蓋ユニットの裏面を接着させているので、開閉蓋ユニットを紙製箱に強固に接合できる。しかも、この作業は外から押圧するだけの作業であり、位置決めもさほどの正確さを要しないので、完全自動化が容易であり、生産性を大きく向上させることができる。
さらに、開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が紙製箱の開口の周囲だけでなく収納袋の下取出口の周囲にも接着されているので、開閉蓋ユニットが収納袋に対しても強固に接合できる。そして、上取出口と下取出口との間にある紙製箱の開口が上取出口および下取出口の内縁より外方にあるので、ウエットシートのもつ湿気によって、素材である紙が弱くなったり劣化することがなく、ウエットシートを全部使用するまでの間、紙製箱の形が崩れることがない。
請求項2の発明によれば、係合部によって蓋が自然と開くことがないので、収納袋中のウエットシートへの異物の付着が避けられる。
請求項3の発明によれば、押ボタン部を指で押すと取付板が変形して係合部が外れ、ゴム片によって蓋が自然に開くので、ワンタッチで蓋が開けられ、操作が容易である。
請求項4の発明によれば、密閉ラベルを開閉蓋の上取出口に対して繰り返し開閉できるので、残りのウエットシートが乾燥するのを防止できる。
請求項5の発明によれば、主として、紙製箱に収納袋を入れる動作と、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布する操作と、この接着剤を塗布した開口の周囲表面に開閉蓋ユニットを押圧して接着する動作のみで、製造が完了する。これらの各工程はいずれも簡単であり、外から押圧するだけの作業で足り、紙製箱の内部での作業が不要であるので、完全機械化が可能である。よって、高い生産性を発揮できる。しかも、開閉蓋ユニットが紙製箱にも、その内部の収納袋にも強固に接合されたウエットトシート収納箱が得られる。」
訂正事項d:明細書の段落【0029】の記載を、次のように訂正する。
「【発明の効果】
請求項1のウエットシートによれば、開閉蓋ユニットの上取出口はわずかな変形しか許容しない剛性を有しているので、ウエットシートを取り出すとき適度な抵抗をウエットシートに与え、1枚づつ取り出すとき2枚目の引きずり出しを防止するので、確実に1枚づつ取り出すことができる。
また、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布して、開閉蓋ユニットの裏面を接着させているので、開閉蓋ユニットを紙製箱に強固に接合できる。しかも、この作業は外から押圧するだけの作業であり、位置決めもさほどの正確さを要しないので、完全自動化が容易であり、生産性を大きく向上させることができる。
さらに、開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が紙製箱の開口の周囲だけでなく収納袋の下取出口の周囲にも接着されているので、開閉蓋ユニットが収納袋に対しても強固に接合できる。そして、上取出口と下取出口との間にある紙製箱の開口が上取出口および下取出口の内縁より外方にあるので、ウエットシートのもつ湿気によって、素材である紙が弱くなったり劣化することがなく、ウエットシートを全部使用するまでの間、紙製箱の形が崩れることがない。
請求項2のウエットシート収納箱によれば、係合部によって蓋が自然と開くことがないので、収納袋中のウエットシートへの異物の付着が避けられる。
請求項3のウエットシート収納箱によれば、押ボタン部を指で押すと取付板が変形して係合部が外れ、ゴム片によって蓋が自然に開くので、ワンタッチで蓋が開けられ、操作が容易である。
請求項4のウエットシート収納箱によれば、密閉ラベルを開閉蓋の上取出口に対して繰り返し開閉できるので、残りのウエットシートが乾燥するのを防止できる。
請求項5のウエットシート収納箱の製造方法によれば、主として、紙製箱に収納袋を入れる動作と、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布する操作と、この接着剤を塗布した開口の周囲表面に開閉蓋ユニットを押圧して接着する動作のみで、製造が完了する。これらの各工程はいずれも簡単であり、外から押圧するだけの作業で足り、紙製箱の内部での作業が不要であるので、完全機械化が可能である。よって、高い生産性を発揮できる。しかも、開閉蓋ユニットが紙製箱にも、その内部の収納袋にも強固に接合されたウエットトシート収納箱が得られる。」

3.訂正の適否
上記訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項b〜dに係る訂正は、訂正事項aに関連してなされた明りょうでない記載の釈明に該当し、いずれの訂正も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

4.異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記のように訂正が認められるから、本件の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1ないし5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.訂正事項a参照)
(2)引用刊行物記載の発明
これに対して、当審が先に通知した取消理由通知で引用した、特開平9-2547号公報(異議申立人提出の甲第1号証。以下、「刊行物1」という。)には、段落【0025】〜【0033】および図1〜3の記載を参照すると、「ウエットティッシュの積層体を収納し、その上面部にウエットティッシュ取出口を形成した、柔軟で気密性のある封入袋と、該封入袋を収納し、その上面部に型材を嵌合させるためのかなり大きな開口部を形成した、形状保持性を有する紙箱と、該紙箱の開口縁部上面とともに、前記封入袋のウエットティッシュ取出口周囲上面部に、接着剤によって、その下面が接着された、紙箱とともに外装体を構成するプラスチック製の型材とからなり、該型材は、略中央に開口部が形成された枠体と、該枠体に、これを中心にして上下に弧回動開閉し得る薄肉状の連結部で連結された蓋板とからなり、前記紙箱の開口部は、前記封入袋のウエットティッシュ取出口より大きく、型枠の開口部は、前記封入袋のウエットティッシュ取出口より大きいウエットティッシュ包装体」及び「ウエットティッシュの積層体を収納し、その上面部にウエットティッシュ取出口を形成した封入袋を、その上面部に前記ウエットティッシュ取出口より大きい開口部を形成した紙箱に収納し、該紙箱の開口縁部とともに、前記封入袋のウエットティッシュ取出口周囲上面部に、接着剤によって、その上に、開口部が形成された枠体に、これを中心にして上下に弧回動開閉し得る薄肉状の連結部で蓋板を連結した型材の枠体の下面を接着するウエットティッシュ包装体の製造方法」という発明が記載されている。
また、同、特開平8-244861号公報(異議申立人提出の甲第2号証。以下、「刊行物2」という。)には、段落【0015】〜【0018】、【0029】および図1、3、4の記載を参照すると、「ウエットティッシュの積層体を収納し、その上面に連結口を形成した密閉袋と、該密閉袋を収納する上方開口型の容器本体と、容器本体に嵌込まれる蓋装置とからなり、該蓋装置は、容器本体の開口を密閉し、取出口と取出口周縁に設けられ密閉袋の連結口の周囲を係合する延長部を形成した薄板をその略中央部に有する蓋本体と、蓋本体にヒンジ部を介して一体形成された開閉蓋とからなり、蓋装置は、開閉蓋が取出口を密閉するようになっていて、蓋本体の一側縁には係止片が、開閉蓋には係止片に係合する係合片が取り付けられており、蓋装置の取出口は密閉袋の連結口より小さいウエットティッシュ用容器」という発明が記載されている。
同、特開平9-39996号公報(異議申立人提出の甲第3号証。以下、「刊行物3」という。)には、特許請求の範囲の請求項1、段落【0014】、【0022】、【0023】、【0028】および図1〜4の記載を参照すると、「ウエットペーパーを収納する容器を箱体と中蓋とから構成し、箱体の上縁部に嵌着された、可撓性を有するプラスチック製の中蓋の天面部に開口部が形成され、該天面部にヒンジにより回動可能に接合されて上記開口部を覆う蓋のヒンジ近傍に弾性復元力により上記蓋を全開可能とするゴム状弾性体が配設され、天面部の蓋が被着される部分の両側には押圧指定部としてのエンボスが形成されており、蓋の閉蓋状態で、押圧指定部が押圧されると、天面部等の撓み変形によって、係止機構部(天面部側の係止凹部と蓋側の係止凸部)の係止作用が解除され、このときゴム状弾性体の弾性復元力により蓋が全開する」という発明が記載されている。
同、実公平6-353号公報(異議申立人提出の甲第5号証。以下、「刊行物4」という。)には、実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を参照すると、「重合する湿式シート材を収納する容器本体の取出口の周縁に圧着されて取出口を密閉する蓋材を多数回繰り返して剥離、圧着可能に設ける」という発明が記載されている。
(3)対比・判断
ア.本件発明1について
対比・判断に先立て検討すると、本件発明1において「紙製箱の開口の周囲」、「収納袋の下取出口の周囲」とあるが、これら「紙製箱の開口の周囲」、「収納袋の下取出口の周囲」の意味する部分は、「紙製箱の開口の周囲」とともに「収納袋の下取出口の周囲」に塗布された接着剤によって、開閉蓋ユニットの裏面が接着されるのであるから、開閉蓋ユニットの裏面と接する部分となるものと解される。また、「開閉蓋ユニットの裏面」と「開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面」との関係は、「取付板」の構成が明記されていないのではっきりはしないが、少なくとも、「開閉蓋ユニットの裏面」に「開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面」は含まれると解され、そうなると、本件発明1における「紙製箱の開口の周囲表面とともに、収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された・・・開閉蓋ユニット」と「開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、紙製箱の開口の周囲および収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されている」とは、同じ構成を言い換えているにすぎないものといえる。
その上で、本件発明1と、刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明の「ウエットティッシュの積層体」、「ウエットティッシュ取出口」、「封入袋」、「紙箱の開口部」、「紙箱」、「紙箱の開口縁部上面」、「封入袋のウエットティッシュ取出口周囲上面部」、「下面」、「型材」、「型材の開口部」、「枠体」、「これを中心にして上下に弧回動開閉し得る薄肉状の連結部」、「蓋板」及び「ウエットティッシュ包装体」は、それぞれ、本件発明1の「ウエットシートの集積物」、「下取出口」、「収納袋」、「開口」、「紙製箱」、「紙製箱の開口の周囲表面」、「収納袋の下取出口の周囲表面」、「裏面」、「開閉蓋ユニット」、「上取出口」、「取付板」、「ヒンジ」、「蓋」及び「ウエットシート収納箱」に相当するから、両者は、ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した、柔軟で気密性のある収納袋と、該収納袋を収納し、その上面に開口を形成した、形状保持性を有する紙製箱と、該紙製箱の開口の周囲表面とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された、合成樹脂製である開閉蓋ユニットとからなり、該開閉蓋ユニットは、略中央に上取出口が形成された取付板と、該取付板にヒンジを介して開閉自在に取付けられた蓋とからなり、前記紙製箱の開口は、前記収納袋の下取出口より大きく、開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されているウエットシート収納箱の点で一致し、下記の点で相違している。
a.開閉蓋ユニットは、本件発明1では、わずかな変形のみ許容する剛性のものであるのに対し、刊行物1に記載された発明では、そのような限定がない点。
b.開閉蓋ユニットの上取出口は収納袋の下取出口と、本件発明1では、ほぼ同じか又はより小さい大きさであるのに対し、刊行物1に記載された発明では、逆により大きい大きさである点。
しかしながら、刊行物1に記載された発明において型枠は、紙箱とともに外装体を構成し、柔軟な封入袋を収納するものであり、上記相違点aにおける本件発明1のように、わずかな変形のみ許容する剛性のものとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
上記相違点bを検討するために、刊行物2に記載された発明をみると、刊行物2に記載された発明の「ウエットティッシュの積層体」、「連結口」、「密閉袋」、「上方開口」、「蓋装置」、「取出口」、「薄板をその略中央部に有する蓋本体」、「開閉蓋」及び「ウエットティッシュ用容器」は、それぞれ、本件発明1の「ウエットシートの集積物」、「下取出口」、「収納袋」、「開口」、「開閉蓋ユニット」、「上取出口」、「取付板」、「蓋」及び「ウエットシート収納箱」に相当し、刊行物2に記載された発明の「容器本体」は、本件発明1の「紙製箱」に対応するから、刊行物2には、本件発明1及び刊行物1に記載された発明と同様なウエットシート収納箱において、開閉蓋ユニットの上取出口は収納袋の下取出口より小さい大きさであるという、上記相違点bにおける本件発明1の構成が記載されているといえ、これを、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。そして、本件発明1が奏する作用効果は、刊行物1及び2に記載された発明から予測できる程度のものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
イ.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、さらに「前記開閉蓋ユニットは、取付板と蓋の双方に係合部を形成して、蓋を取付板に形成した上取出口の周囲を塞ぐように閉じたり、開けたりできるようにした」という構成を付加し技術的に限定したものであるが、刊行物2に記載された発明の「蓋装置は、開閉蓋が取出口を密閉するようになっていて、蓋本体の一側縁には係止片が、開閉蓋には係止片に係合する係合片が取り付けられており」という構成は、刊行物2に記載された発明の「蓋本体の係止片と、開閉蓋の係止片に係合する係合片」が、本件発明2の「取付板と蓋の双方に形成した係合部」に相当するから、本件発明2の上記限定された構成と同様といえる。また、本件発明1は、上記で検討したとおりである。
したがって、本件発明2は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
ウ.本件発明3について
本件発明3は、本件発明2を引用し、さらに「前記開閉蓋ユニットは、蓋と取付板との間に、蓋を開放方向に付勢するゴム片を介在させ、かつ蓋と取付板の係合部同士の係合を外すように取付板を変形させるために該取付板に形成した押ボタン部を有する」という構成を付加し技術的に限定したものである。
ここで、本件発明2は、上記で検討したとおりであるので、それを踏まえて限定された構成について検討するために刊行物3を見ると、刊行物3には、本件発明3及び刊行物1、2に記載された発明と同様なウエットシート収納箱において、「可撓性を有するプラスチック製の中蓋(本件発明3の「開閉蓋ユニット」に相当)の天面部(本件発明3の「取付板」に相当)に開口部(本件発明3の「上取出口」に相当)が形成され、該天面部にヒンジにより回動可能に接合されて上記開口部を覆う蓋のヒンジ近傍に弾性復元力により上記蓋を全開可能とするゴム状弾性体(本件発明3の「ゴム片」に相当)が配設され、天面部の蓋が被着される部分の両側には押圧指定部(本件発明3の「押ボタン部」に相当)としてのエンボスが形成されており、蓋の閉蓋状態で、押圧指定部が押圧されると、天面部等の撓み変形によって、係止機構部(天面部側の係止凹部と蓋側の係止凸部)(本件発明3の「蓋と取付板の係合部」に相当)の係止作用が解除され、このときゴム状弾性体の弾性復元力により蓋が全開する」という構成が記載されている。これは、本件発明3の上記限定された構成と同様といえ、この構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。そして、本件発明3が奏する作用効果は、刊行物1ないし3に記載された発明から予測できる程度のものである。
したがって、本件発明3は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
エ.本件発明4について
本件発明4は、本件発明1、2または3を引用し、さらに「前記開閉蓋ユニットの上取出口に、該上取出口を繰り返して開閉できる開閉ラベルが貼付された」という構成を付加し技術的に限定したものである。
ここで、本件発明1ないし3は、上記で検討したとおりであるので、それを踏まえて限定された構成について検討するために刊行物4を見ると、刊行物4には、本件発明4及び刊行物1ないし3に記載された発明と同様な密封包装容器収納箱において、収納した重合する湿式シート材(本件発明4の「ウエットシート」に相当)を取り出す取出口(本件発明4の「上取出口」に相当)の周縁に圧着されて取出口を密閉する蓋材(本件発明4の「開閉ラベル」に相当)を多数回繰り返して剥離、圧着可能に設ける(本件発明4の「繰り返して開閉できるように貼付」に相当)」という構成が記載されている。これは、本件発明4の上記限定された構成と同様といえ、この構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。そして、本件発明4が奏する作用効果は、刊行物1ないし4に記載された発明から予測できる程度のものである。
したがって、本件発明4は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
オ.本件発明5について
上記ア.本件発明1についてで、先だって検討した事項を踏まえると、本件発明5における「紙製箱の開口の周囲とともに、収納袋の下取出口の周囲表面に接着剤を塗布し、その上に、・・・開閉蓋ユニットの取付板の裏面を接着し」と「開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面を、紙製箱の開口の周囲および収納袋の下取出口の周囲に接合する」とは、同じ構成を言い換えているにすぎないものといえる。
その上で、本件発明5と、刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明の「ウエットティッシュの積層体」、「ウエットティッシュ取出口」、「封入袋」、「紙箱の開口部」、「紙箱」、「紙箱の開口縁部」、「封入袋のウエットティッシュ取出口周囲上面部」、「下面」、「型材」、「型材の開口部」、「枠体」、「これを中心にして上下に弧回動開閉し得る薄肉状の連結部」、「蓋板」及び「ウエットティッシュ包装体の製造方法」は、それぞれ、本件発明5の「ウエットシートの集積物」、「下取出口」、「収納袋」、「開口」、「紙製箱」、「紙製箱の開口の周囲」、「収納袋の下取出口の周囲表面」、「裏面」、「開閉蓋ユニット」、「上取出口」、「取付板」、「ヒンジ」、「蓋」及び「ウエットシート収納箱の製造方法」に相当するから、本件発明5は、刊行物1に記載されているといえる。
したがって、本件発明5は、刊行物1に記載された発明と同一である。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定に、また、本件発明5は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
したがって、本件発明1ないし5の特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ウエットシート収納箱およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した、柔軟で気密性のある収納袋と、
該収納袋を収納し、その上面に開口を形成した、形状保持性を有する紙製箱と、
該紙製箱の開口の周囲表面とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された、合成樹脂製であり、わずかな変形のみ許容する剛性の開閉蓋ユニットとからなり、
該開閉蓋ユニットは、略中央に上取出口が形成された取付板と、該取付板にヒンジを介して開閉自在に取付けられた蓋とからなり、
前記紙製箱の開口は、前記収納袋の下取出口より大きく、前記開閉蓋ユニットの上取出口は前記収納袋の下取出口とほぼ同じか又はより小さい大きさであり、
前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されている
ことを特徴とするウエットシート収納箱。
【請求項2】
前記開閉蓋ユニットは、取付板と蓋の双方に係合部を形成して、蓋を取付板に形成した上取出口の周囲を塞ぐように閉じたり、開けたりできるようにした
ことを特徴とする請求項1記載のウエットシート収納箱。
【請求項3】
前記開閉蓋ユニットは、蓋と取付板との間に、蓋を開放方向に付勢するゴム片を介在させ、かつ蓋と取付板の係合部同士の係合を外すように取付板を変形させるために該取付板に形成した押ボタン部を有する
ことを特徴とする請求項2記載のウエットシート収納箱。
【請求項4】
前記開閉蓋ユニットの上取出口に、該上取出口を繰り返して開閉できる開閉ラベルが貼付された
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のウエットシート収納箱。
【請求項5】
ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した収納袋を、その上面に前記下取出口より大きい開口を形成した紙製箱に収容し、
該紙製箱の開口の周囲とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に接着剤を塗布し、
その上に、上取出口を形成した取付板にヒンジを介して蓋を取付けた開閉蓋ユニットの取付板の裏面を接着し、
前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面を、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接合する
ことを特徴とするウエットシート収納箱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエットシート収納箱およびその製造方法に関する。
本明細書にいうウエットシートには、便器などを清掃するための厚みのある清掃用ウエットシートや、赤ちゃんのお尻を拭いたり、油の付いた手から油を拭い取ったりするための薄いウエットティッシュなどがある。このウエットシートは、清掃用ウエットシートやウエットシートのいずれであっても、湿っているからこそ、前記のごとく汚れや油を効率よく落とすことができる。
これらのウエットシートは使いやすくするため、多数枚を気密性のある収納袋あるいは収納箱に入れておき、取出口から1枚づつ取り出せるようにされている。そして、何度、ウエットシートを取り出しても、収納箱や袋の内部を気密に閉じることができ、収納された残りのウエットシートの乾燥を防止できるものでなければならない。
【0002】
【従来の技術】
従来例I
特開平7-291370号公報や特開平8-198350号公報に記載された従来例Iは、柔軟な樹脂製で気密性のあるシートから収納袋を作成し、その内部にウエットシートを数10枚程度入れておき、収納袋の上面に長楕円形の取出口を形成し、この取出口は、感圧接着剤等を塗布した貼付剥離自在な開閉ラベルで密閉できるよう構成されている。
しかるに、この従来例Iは、収納袋を構成する樹脂製シートが柔軟なものであるので、取出口の周囲が柔らかく、形状を一定に保持する力が弱い。このため、ウエットシートを1枚づつ取り出そうとしたとき、取出口がウエットシートの通過に応じて変形し、ウエットシートが何枚もズルズルと出てくることがある。
とくに、この現象は、ウエットシートをジグザグ折りして一方のウエットシートの真ん中に他方のウエットシートの一端縁が交互に入れ合わして集積物とし、重ね合わされた上面の一枚のウエットシートをつまみ上げると、そのすぐ下面のウエットシートが追従して持ち上げられるようにしたものに著しい。
また、取出口の周囲が変形したりしわが付いた状態で開閉ラベルを貼付しても、密閉性が無くなるので、内部のウエットシートが乾燥してしまうという不都合も生じやすい。
【0003】
従来例II
特開平7-215379号公報に記載された従来例IIは、従来例Iと同様の樹脂シート製の収納袋を紙製のある程度しっかりした収納箱に入れ、その収納箱にプラスチック製の開閉蓋ユニットを取付けたものである。開閉蓋ユニットは、開口部がほぼ中央に形成された本体と、この本体にヒンジを介して連絡された蓋とからなり、蓋は開口部を密閉できるようになっている。そして、この収納箱に収納袋を入れると、収納袋の取出口の真上に開閉蓋ユニットの開口部が位置するようになっている。したがって、収納箱の開閉蓋ユニットの蓋を開くと、その下の収納袋の取出口からウエットシートを取り出すことができる。
しかし、この従来例IIでは、収納袋の取出口は柔らかい樹脂シートに形成されているため変形しやすく、取出中のウエットシートに抵抗をかけられない。このため、従来例Iと同様にウエットシートを1枚づつ取り出すことができない。
また、紙製等の収納箱にプラスチック製の開閉蓋ユニットを取付ける方法は、種々の手段が採用されているが、例えば、紙製箱の上面に、開閉蓋ユニットの本体の下面に形成した段差がきちんと嵌まる形状の穴を開け、その穴に段差部分を位置決めして入れてから接着する、等の方法がとられている。
しかるに、このような穴あけや正確な位置決めを要する製法では、手間と時間がかかり、生産性が悪いという問題がある。例えば、1分間に50個位が限度である。
【0004】
従来例III
特開平8-318977号公報に記載の従来例IIIは、柔らかい樹脂シート製の収納袋に、直接、プラスチック製の開閉蓋ユニットを取付けたものである。そして、開閉蓋ユニットの細部の形状は異なるものの、その基本構造は前記従来例IIと同様である。
しかるに、この従来例は製造が困難で生産性に劣るという問題がある。すなわち、開閉蓋ユニットの本体には開口部の周囲にリブを設け、その周囲に平坦な外縁部を設けており、一方、収納袋の上面には穴を形成し、本体を収納袋の内部に挿入し、前記穴から開口部の周囲のリブと蓋のみ外方に露出させ、収納袋の穴の周囲の裏面に開閉蓋ユニットの平坦な外縁部を接着させるようにしている。
このように、外に露出させるべき部材(開閉蓋ユニット)をいったん収納袋の内部に挿入しなければならないのは、大変作業が困難なことであり、また、穴にリブを正確に位置合せするのも、機械では困難なことから、全自動で製造できず、部分的にしろ手作業が不可欠となっているからである。
【0005】
従来例IV
特開平8-337276号公報に記載された従来例IVは、紙製のしっかりした収納箱にプラスチック製の開閉蓋ユニットを取付けたものである。この開閉蓋ユニットの取付け方も、収納箱の上面に穴を形成し、開閉蓋ユニットを収納箱の中に入れ、収納箱の裏面に開閉蓋ユニットの本体表側を接着するものであるため、前記従来例IIIと同様の欠点である生産性の悪さを有するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑み、ウエットシートを確実に1枚づつ取出せ、しかも生産性が良好で、密閉性も高いウエットシート収納箱とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1のウエットシート収納箱は、ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した、柔軟で気密性のある収納袋と、該収納袋を収納し、その上面に開口を形成した、形状保持性を有する紙製箱と、該紙製箱の開口の周囲表面とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に、接着剤によって、その裏面が接着された、合成樹脂製であり、わずかな変形のみ許容する剛性の開閉蓋ユニットとからなり、該開閉蓋ユニットは、略中央に上取出口が形成された取付板と、該取付板にヒンジを介して開閉自在に取付けられた蓋とからなり、前記紙製箱の開口は、前記収納袋の下取出口より大きく、前記開閉蓋ユニットの上取出口は前記収納袋の下取出口とほぼ同じか又はより小さい大きさであり、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接着剤で接合されていることを特徴とする。
請求項2のウエットシート収納箱は、請求項1記載の前記開閉蓋ユニットは、取付板と蓋の双方に係合部を形成して、蓋を取付板に形成した上取出口の周囲を塞ぐように閉じたり、開けたりできるようにしたことを特徴とする。
請求項3のウエットシート収納箱は、請求項2記載の前記開閉蓋ユニットは、蓋と取付板との間に、蓋を開放方向に付勢するゴム片を介在させ、かつ蓋と取付板の係合部同士の係合を外すように取付板を変形させるために該取付板に形成した押ボタン部を有することを特徴とする。
請求項4のウエットシート収納箱は、請求項1、2または3記載の前記開閉蓋ユニットの上取出口に、該上取出口を繰り返して開閉できる開閉ラベルが貼付されたことを特徴とする。
請求項5のウエットシート収納箱の製造方法は、ウエットシートの集積物を収納し、その上面に下取出口を形成した収納袋を、その上面に前記下取出口より大きい開口を形成した紙製箱に収容し、該紙製箱の開口の周囲とともに、前記収納袋の下取出口の周囲表面に接着剤を塗布し、その上に、上取出口を形成した取付板にヒンジを介して蓋を取付けた開閉蓋ユニットの取付板の裏面を接着し、前記開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面を、前記紙製箱の開口の周囲および前記収納袋の下取出口の周囲に接合することを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、開閉蓋ユニットの上取出口はわずかな変形しか許容しない剛性を有しているので、ウエットシートを取り出すとき適度な抵抗をウエットシートに与え、1枚づつ取り出すとき2枚目の引きずり出しを防止するので、確実に1枚づつ取り出すことができる。
また、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布して、開閉蓋ユニットの裏面を接着させているので、開閉蓋ユニットを紙製箱に強固に接合できる。しかも、この作業は外から押圧するだけの作業であり、位置決めもさほどの正確さを要しないので、完全自動化が容易であり、生産性を大きく向上させることができる。
さらに、開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が紙製箱の開口の周囲だけでなく収納袋の下取出口の周囲にも接着されているので、開閉蓋ユニットが収納袋に対しても強固に接合できる。そして、上取出口と下取出口との間にある紙製箱の開口が上取出口および下取出口の内縁より外方にあるので、ウエットシートのもつ湿気によって、素材である紙が弱くなったり劣化することがなく、ウエットシートを全部使用するまでの間、紙製箱の形が崩れることがない。
請求項2の発明によれば、係合部によって蓋が自然と開くことがないので、収納袋中のウエットシートへの異物の付着が避けられる。
請求項3の発明によれば、押ボタン部を指で押すと取付板が変形して係合部が外れ、ゴム片によって蓋が自然に開くので、ワンタッチで蓋が開けられ、操作が容易である。
請求項4の発明によれば、密閉ラベルを開閉蓋の上取出口に対して繰り返し開閉できるので、残りのウエットシートが乾燥するのを防止できる。
請求項5の発明によれば、主として、紙製箱に収納袋を入れる動作と、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布する操作と、この接着剤を塗布した開口の周囲表面に開閉蓋ユニットを押圧して接着する動作のみで、製造が完了する。これらの各工程はいずれも簡単であり、外から押圧するだけの作業で足り、紙製箱の内部での作業が不要であるので、完全機械化が可能である。よって、高い生産性を発揮できる。しかも、開閉蓋ユニットが紙製箱にも、その内部の収納袋にも強固に接合されたウエットシート収納箱が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るウエットシート収納箱の斜視図である。図2は収納袋10と紙製箱20とそれらの収容状態の斜視図である。図3は紙製箱20への接着剤塗布状態と、開閉蓋ユニット30を付けた状態の斜視図である。
図1〜図3に示すように、本実施形態のウエットシート収納箱は、ウエットシートWSが内部に収納された収納袋10と、この収納袋10が収納された紙製箱20と、この紙製箱20の上面に接着剤40で取り付けられた開閉蓋ユニット30とから構成されたものである。
【0010】
まず、収納袋10を説明する。
図2において、(a)は収納袋10を示している。
収納袋10は、図示しないウエットシートWSの集積物を収納するために、腰の強い気密性のある1枚のシートを袋状に密封したものである。この収納袋10の上面には、ウエットシートWSを取り出すための下取出口11が形成されている。
この収納袋10の素材としては、柔軟で気密性のある合成樹脂シートやアルミニウムフォイルなどを使用しており、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シートの単材または複合材の石油化学製品によるフィルムシート、アルミニウムフォイル単体、あるいは、これら合成樹脂フィルムシートとアルミニウムフォイル、紙等とを張り合わせた複合シートなどが例示できる。
【0011】
つぎに、紙製箱20を説明する。
図2(B)、(C)に示すように、この紙製箱20は、前記収納袋10を収納するためのものである。この紙製箱20の上面には、開口21が形成されている。この開口21は、前記収納袋10の下取出口11よりも大きく形成されている。
収納袋10を紙製箱20に収納して、紙製箱20を組み立てると、開口21は下取出口11より大きいので、平面視で、紙製箱20の開口21から収納袋10の下取出口11が露出して見えるのである。
なお、紙製箱20の素材としては、形状保持性を有する紙であればよく、種々の紙を採択しうる。
【0012】
つぎに、接着剤40を説明する。
図3(A)に示すように、紙製箱20の開口21の周囲表面に、接着剤40が塗布される。すると、紙製箱20の開口21の周囲表面だけでなく、収納袋10の下取出口11の周囲表面にも、接着剤40が塗布されるが、その効果については後述する。
図3(B)に示すように、紙製箱20の上面に、開閉蓋ユニット30を押圧して接着する。すると、開閉蓋ユニット30を接着剤40によって紙製箱20を取り付けることができるのである。
【0013】
この接着剤40としては、ポリエステル系、アクリル系、ゴム系等の感圧接着剤が好ましく、この感圧接着剤は、何度も着脱動作を繰り返しても密着する性質を有している。
【0014】
つぎに、開閉蓋ユニット30を説明する。
図4は開閉蓋ユニット30の分解斜視図である。図5は開閉蓋ユニット30の組立状態の斜視図である。図6は図1のウエットシート収納箱の断面図である。図4、図5および図6に示すように、この開閉蓋ユニット30は、取付板31、蓋32、ゴム片33および密閉ラベル35から構成されたものである。開閉蓋ユニット30は、合成樹脂製であり、わずかな変形のみ許容する剛性を有している。
【0015】
取付板31は、その裏面が、前記紙製箱20の上面に接着剤40によって接着される板である。この取付板31の表面における略中央には、楕円状の下密閉リブ31Cが形成されている。取付板31において、下密閉リブ31Cの内側領域の中央部には、上取出口34が形成されている。この上取出口34は、前記収納袋10の下取出口11とほぼ同じか又はより小さい大きさであり、前記紙製箱20の開口21より小さい。
【0016】
そして、下密閉リブ31Cの外側前部には、押ボタン部31Bが形成されている。下密閉リブ31Cの内側前部には、掛合部31Aが形成されている。押しボタン部31Bを押し下げたり放したりすることによって、この押しボタン部31Bに連動して、掛合部31Aが上下に揺動するが、その詳細は後述する。
【0017】
取付板31の後縁部には、蓋32がその下端部で、ヒンジを介して開閉自在に取り付けられている。そして、蓋32の裏面における略中央部分には、前記下密閉リブ31Cの外周よりもわずかに大きな上密閉リブ32Cが形成されている。蓋32を閉じたとき、この蓋32の上密閉リブ32Cは取付板31の下密閉リブ31Cと重なり合うのである。
【0018】
さらに、上密閉リブ32Cの外側前部には、掛合部32Aが形成されている。蓋32を閉じたときには、蓋32の掛合部32Aが取付板31の掛合部31Aに掛止されるので、蓋32が自然に開くことがない。
【0019】
前記取付板31と蓋32との間には、ゴム片33が取り付けられている。このゴム片33は、蓋32を常時開く方向に付勢させるためのものである。このため、前記掛合部32Aを掛合部31Aから開放すれば、ゴム片33によって、蓋32は開くのである。
【0020】
なお、図6では、内側の掛合部32Aに外側の掛合部31Aが掛合しているが、図7に示すように、外側の掛合部32Aに外側の掛合部31Aが掛合する構造にしてもよい。この場合、押ボタン部31Bは必要でなく、蓋32を開くときには、蓋32の先端部分を上方に、押し上げればよい。
【0021】
前記取付板31の上取出口34の周囲表面には、図示しない接着剤を介して、密閉ラベル35が貼付されている。この密閉ラベル35は、前記収納袋10の内部を密閉して、ウエットシートWSが乾くのを防止するためのものである。
前記接着剤は感圧接着剤なので、密閉ラベル35を上取出口34に対して、何度も着脱動作を繰り返しても密閉ラベル35は上取出口34に密着するのである。
【0022】
なお、図8に示すように、開閉蓋ユニット30を取付板31、蓋32および密閉ラベル35から構成させ、しかも、取付板31に掛合部31Aを形成せず、蓋32に掛合部31Aを形成せず、押ボタン部31Bを形成しない構造にしてもよい。この場合、開閉蓋ユニット30はシンプルな構造で、製造費が安価であり、好適である。
【0023】
つぎに、ウエットシート収納箱の製造方法を説明する。
本実施形態のウエットシート収納箱を製造するには、第1に、紙製箱20に収納袋10を入れる。
第2に、紙製箱20の開口21の周囲表面に接着剤40を塗布する。すると、その下側の収納袋10の下取出口11の周囲表面にも接着剤40の層を形成できるので、開閉蓋ユニット30を紙製箱20だけでなく収納袋10に対しても強固に接合できるという効果を奏する。
第3に、接着剤40が塗布された開口21の周囲表面に、開閉蓋ユニット30を押圧して接着すると、製造が完了する。
【0024】
これらの各工程はいずれも簡単であり、外から押圧するだけの作業で足り、紙製箱20の内部での作業が不要であるので、完全機械化が可能である。よって、高い生産性を発揮できるという効果を奏する。
【0025】
つぎに、本実施形態のウエットシート収納箱の作用・効果を説明する。
まず、本実施形態のウエットシート収納箱の押ボタン部31Bを指で下方へ押し下げると、掛合部31Aが変形して32Aから外れ、ゴム片33によって蓋32が自然に開くので、ワンタッチで蓋32を開けることができ、操作が容易であるという効果を奏する。
【0026】
つぎに、開閉蓋ユニット30の上取出口34からウエットシートWSを取り出すときに、この上取出口34はわずかな変形しか許容しない剛性を有しているので、適度な抵抗をウエットシートWSに与える。したがって、ウエットシートWSを1枚づつ取り出すときには、2枚目のウエットシートWSの引きずり出しを防止するので、確実にウエットシートWSを1枚づつ取り出すことができるという効果を奏する。
【0027】
最後に、蓋32を閉じると、掛合部32Aが掛合部31Aに掛止されるので、蓋32が自然に開くことがない。このため、収納袋10の中のウエットシートWSへの異物の付着が避けられるという効果を奏する。
【0028】
さらに、開閉蓋ユニット30の上取出口34と収納袋10の下取出口11との間にある紙製箱20の開口21が、下取出口11より外方にあるので、ウエットシートWSのもつ湿気によって、紙製箱20が弱くなったり劣化することがなく、ウエットシートWSを全部使用するまでの間、紙製箱20の形が崩れることがないという効果を奏する。
【0029】
【発明の効果】
請求項1のウエットシート収納箱によれば、開閉蓋ユニットの上取出口はわずかな変形しか許容しない剛性を有しているので、ウエットシートを取り出すとき適度な抵抗をウエットシートに与え、1枚づつ取り出すとき2枚目の引きずり出しを防止するので、確実に1枚づつ取り出すことができる。
また、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布して、開閉蓋ユニットの裏面を接着させているので、開閉蓋ユニットを紙製箱に強固に接合できる。しかも、この作業は外から押圧するだけの作業であり、位置決めもさほどの正確さを要しないので、完全自動化が容易であり、生産性を大きく向上させることができる。
さらに、開閉蓋ユニットの上取出口の周囲における取付板の裏面が紙製箱の開口の周囲だけでなく収納袋の下取出口の周囲にも接着されているので、開閉蓋ユニットが収納袋に対しても強固に接合できる。そして、上取出口と下取出口との間にある紙製箱の開口が上取出口および下取出口の内縁より外方にあるので、ウエットシートのもつ湿気によって、素材である紙が弱くなったり劣化することがなく、ウエットシートを全部使用するまでの間、紙製箱の形が崩れることがない。
請求項2のウエットシート収納箱によれば、係合部によって蓋が自然と開くことがないので、収納袋中のウエットシートへの異物の付着が避けられる。
請求項3のウエットシート収納箱によれば、押ボタン部を指で押すと取付板が変形して係合部が外れ、ゴム片によって蓋が自然に開くので、ワンタッチで蓋が開けられ、操作が容易である。
請求項4のウエットシート収納箱によれば、ラベルを開閉蓋の上取出口に対して繰り返し開閉できるので、残りのウエットシートが乾燥するのを防止できる。
請求項5のウエットシート収納箱の製造方法によれば、主として、紙製箱に収納袋を入れる動作と、紙製箱の開口の周囲表面に接着剤を塗布する操作と、この接着剤を塗布した開口の周囲表面に開閉蓋ユニットを押圧して接着する動作のみで、製造が完了する。これらの各工程はいずれも簡単であり、外からの作業で足り、箱の内部での作業が不要であるので、完全機械化が可能である。よって、高い生産性を発揮できる。しかも、開閉蓋ユニットが紙製箱にも、その内部の収納袋にも強固に接合されたウエットシート収納箱が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態に係るウエットシート収納箱の斜視図である。
【図2】
収納袋10と紙製箱20とそれらの収容状態の斜視図である。
【図3】
紙製箱20への接着剤塗布状態と、開閉蓋ユニット30を付けた状態の斜視図である。
【図4】
開閉蓋ユニット30の分解斜視図である。
【図5】
開閉蓋ユニット30の組立状態の斜視図である。
【図6】
図1のウエットシート収納箱の断面図である。
【図7】
他の実施形態のウエットシート収納箱の断面図である。
【図8】
開閉蓋ユニット30の他の例の斜視図である。
【符号の説明】
10 収納袋
11 下取出口
20 紙製箱
21 開口
30 開閉蓋ユニット
31 取付板
31A 掛合部
31B 押しボタン部
32 蓋
32A 掛合部
33 ゴム片
34 上取出口
35 密閉ラベル
40 接着剤
WS ウエットシート
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2001-08-20 
出願番号 特願平10-253137
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A47K)
P 1 651・ 113- ZA (A47K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 鈴木 公子
鈴木 憲子
登録日 2000-06-16 
登録番号 特許第3078527号(P3078527)
権利者 東亜機工株式会社
発明の名称 ウエットシート収納箱およびその製造方法  
代理人 山内 康伸  
代理人 山内 康伸  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ