• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61M
管理番号 1107857
異議申立番号 異議2003-71374  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-26 
確定日 2004-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3350678号「口腔用エアゾール製品」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3350678号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3350678号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成5年1月25日(国内優先権主張平成4年2月27日)を出願日とする出願であって、平成14年9月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人矢辺ゆり子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月8日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載において、「有効成分を含有した原液と、不活性ガスおよび15〜35重量%の酸素を含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有したことを特徴とする口腔用エアゾール製品。」とあるのを、
「有効成分を含有した原液と、不活性ガスおよび15〜35重量%の酸素を含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有し、内圧が35℃で5〜8kg/cm2であることを特徴とする口腔用エアゾール製品。」と訂正する。
イ.訂正事項b
特許明細書の段落【0005】について、「すなわち本発明は、有効成分を含有した原液と、酸素および不活性ガスを含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有したことを特徴とする口腔用エアゾール製品に関する。」とあるのを「すなわち本発明は、有効成分を含有した原液と、酸素および不活性ガスを含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有し、内圧が35℃で5〜8kg/cm2であることを特徴とする口腔用エアゾール製品に関する。」と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許明細書の段落【0008】について、「有効成分としては、、たとえば」とあるのを「有効成分としては、たとえば」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1に、特許明細書の段落【0016】に記載された「内圧が35℃で5〜8kg/cm2である」という限定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加にも該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、訂正事項bは、訂正事項aの訂正にともない、特許明細書の段落【0005】の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項cは、連続する読点の1つを削除するものであるから、誤記の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件の請求項1及び2に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係る発明は 、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
請求項1:「有効成分を含有した原液と、不活性ガスおよび15〜35重量%の酸素を含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有し、内圧が35℃で5〜8kg/cm2であることを特徴とする口腔用エアゾール製品。」
請求項2:「不活性ガスがチッ素ガスまたは二酸化炭素ガスである請求項1記載の口腔用エアゾール製品。」

(2)引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1(特開平3-193729号公報)には、次の事項が記載されている。
「本発明による薬用組成物は、中位pHあるいは中性に近いpHに緩衝された積極的な生理溶液より成る組成物の非推進部分、エ-ロゾル、あるいは噴霧の形状で提供される。この溶液における積極部分つまりアクティブ部の濃度は、約0.1%と約10%(w/v)の間である。特に、約2〜5%(w/v)の範囲内に入る濃度が用いられる。
推進剤は、窒素、空気、酸素のような不活性ガス、ジクロロジフルオロメタンのようなハロゲン化脂肪属炭化水素、およびこれらの混合物から選ばれた薬用ガスである。
推進部分に対する非推進部分の割合は、薬用として投与することを意図された噴霧とエ-ロゾルを作るための薬の調剤を専門とする薬剤師はよく知つているものである。」(2頁右下欄9行〜3頁左上欄3行)
「この薬効は、治療学的見地からみると好都合なので、血管収縮用アルフア刺激剤を局所的に投与する必要がある。(例えば、鼻や口を介して吸入する)。」(3頁右上欄1〜4行)
「本発明による薬用製品は、心臓病患者の側になされる連続処置、あるいは例えば患者を集中治療する前になされる臨時処置を用いられるものであり、このためこの製品は、エ-ロゾル缶タイプの圧力容器、あるいはネブライザ内に充填することができる。」(3頁右上欄9〜14行)
上記記載事項から、引用刊行物1には、
「アクティブ部を生理溶液に溶かした非推進部分と、推進剤としての空気をエーロゾル缶タイプの圧力容器に充填し、薬用組成物をエーロゾルの形状で口を介して吸入させるエーロゾル製品」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本件請求項1に係る発明と引用発明とを対比すると、後者の「アクティブ部を生理溶液に溶かした非推進部分」は前者における、有効成分および水から構成される「原液 」に相当し、後者の「推進剤」、「エーロゾル」がそれぞれ前者の「噴射剤」、「エアゾール」を意味していることは明らかであり、エーロゾル組成物は通常、薬剤、推進剤を主成分とするものであり、また、空気は約20%の酸素と、不活性ガスである窒素を含有しているから、両者は、
「有効成分を含有した原液と、不活性ガスおよび15〜35重量%の酸素を含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有したことを特徴とするエアゾール製品。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:前者は内圧が35℃で5〜8kg/cm2であるのに対し、後者において内圧がどの程度であるのか不明である点。
相違点2:前者においては、「口腔用」とされているのに対し、後者はそのように規定されていない点。
本件請求項2に係る発明と引用発明とを対比すると、空気は約20%の酸素と、不活性ガスである窒素を含有しているから、両者の相違点は上記相違点1、2と同じである。

(4)判断
上記相違点1について検討すると、エアゾール製品の噴射剤の内圧を5〜8kg/cm2 程度とすることは通常なされていることであり、経口吸入用のエアロゾルとして圧縮空気を用いるものにおいて、この範囲内の値とすることも例えば特開昭63-225380号公報(4頁右下欄14〜16行参照)により知られているから、相違点1に係る構成とすることは当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎない。また、噴射剤の内圧を35℃で5〜8kg/cm2としたことによって予測できない効果を奏するものとも認められない。
相違点2について検討すると、本件請求項1に係る発明は、薬の有効成分については規定されておらず、単に「口腔用」としているものであって、口腔の特定部位に薬剤を噴射するものとは認められないから、引用発明のような口腔内にエーロゾルを噴射させるものと差異はなく、相違点2は実質的相違点とはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1及び2に係る発明は上記引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件の請求項1及び2についての特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1及び2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基く、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
口腔用エアゾール製品
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分を含有した原液と、不活性ガスおよび15〜35重量%の酸素を含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有し、内圧が35℃で5〜8kg/cm2であることを特徴とする口腔用エアゾール製品。
【請求項2】 不活性ガスがチッ素ガスまたは二酸化炭素ガスである請求項1記載の口腔用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は口腔用エアゾール製品に関する。さらに詳しくは、たとえば鼻腔、口蓋、口腔、咽頭、舌などの口腔の特定部位に有効成分を確実に直接作用させることができ、使用時にむせることがない口腔用エアゾール製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、口腔内に味覚、薬効などを付与する有効成分は、一般に顆粒、液体、固形物などの形態で用いられている。しかしながら、これらの形態で有効成分を用いたばあいには、口腔内の部位によっては該有効成分が直接作用しないことがあり、またその効果が発現するまでに長時間を要したり、不必要な部位にまで作用するので無駄が多く、その他の部位で副作用を生じるおそれがあった。
【0003】
また、前記液体の有効成分を所望の部位に直接作用させるために、いわゆる霧吹き型の指押し式エアーポンプを用いて口腔内の所望の部位に液体の有効成分を噴霧することが考えられているが、エアーポンプを操作する際にノズルが上下方向に移動するため、有効成分を特定部位のみに正確に噴霧することがきわめて困難であり、さらに噴霧したのちノズルをもとの位置に復元させる際に、外部の空気がポンプ内に吸入され、空気中に存在する雑菌などによってエアーポンプ内が汚染されるおそれがあるなどの問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、前記従来技術に鑑みて有効成分を特定部位に確実に直接作用させることができる手段を開発するべく鋭意研究を重ねた結果、意外なことに、有効成分を特定の組成からなる噴射剤と併用したエアゾール組成物を用いたばあいには、有効成分を口腔内の所望の部位に正確に付与することができ、しかも該エアゾール組成物を含有したエアゾール製品は、製品外部の空気がその内部に侵入することがなく、衛生面にすぐれたものであるので、口腔内で好適に使用しうるというまったく新しい事実をようやく見出し、本発明を完成するにいたった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、有効成分を含有した原液と、酸素および不活性ガスを含有した噴射剤とを主成分としたエアゾール組成物を含有し、内圧が35℃で5〜8kg/cm2であることを特徴とする口腔用エアゾール製品に関する。
【0006】
【作用および実施例】
本発明の口腔用エアゾール製品に用いられるエアゾール組成物は、主として原液および噴射剤から構成され、該原液は有効成分および水から構成される。
【0007】
前記原液に含有される有効成分は、本発明の口腔用エアゾール製品の目的および用途に応じて適宜選択して用いられるので一概には決定することができない。
【0008】
前記有効成分としては、たとえば口臭予防効果、抗炎症効果、鎮痛効果、鎮咳効果、去痰効果、消毒効果、粘膜軟化効果などを付与する有効成分があげられる。
【0009】
前記有効成分の具体例としては、キキョウ根エキス、ニンジンエキス、トコンエキス、マオウエキス、カッコンエキス、ケイヒ油、キョウニン、カンゾウ、セネガ、シャゼンソウ、アセンヤク、安息香酸ナトリウム、カフェイン、ノスカピン、マレイン酸クロルフェニラミン、硫酸サルブタモール、硫酸オルンプレナリン、塩酸トリメトキシノール、塩酸クロルプレナリン、臭化水素酸フェノテロール、塩酸プロカテロール、アセチルシステイン、臭化イプラトロピウム、フェノールフタレイン酸デキストロメトルファン、塩酸クロルヘキシジン、塩化デカリウムなどの鎮咳去痰剤;ユーカリ油、ポピヨンヨード、臭化ドミフェン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸ヒドロコルチゾン、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ハッカ水、液状フェノール、チョウジ油、塩化ベンゼトニウム、チモール、塩化デカリウムなどの口腔殺菌剤;アズレンスルホン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸クロルヘキシジン、アセチルキタサマイシン、塩酸テトラサイクリン、バシトラシン、オキシテトラサイクリン、硫酸フラジオマイシン、塩酸グラミシジン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、塩化デカリウム、塩化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム、マレイン酸クロルフェニラミン、塩化リゾチーム、アクリノール、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウムなどの鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、舌炎、歯肉炎などのための口腔抗炎症剤;アミノ安息香酸エチル、塩酸ジブカイン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸テトラカイン、ホモスルファミン、塩化ベンザルコニウム、リドカイン、テーカイン、ベンジルアルコール、クレオソート、エーテルなどの歯科用麻酔剤;ミルラ流エキス、塩化亜鉛、サリチル酸メチル、グアレナートナトリウム、クロルヘキシジン、チモール、d-ポルネオール、dl-カンフル、l-メントール、安息香酸、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ビオゾールなどの口臭予防、消毒のためのうがい薬、アセチルシステイン、セネガなどの去痰剤などがあげられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、これらの有効成分は通常単独でまたは2種類以上を混合して用いられる。原液中の有効成分の配合量は、その種類によって異なり、一概に決めることはできないので、目的に応じて適宜配合することが好ましい。なお、前記有効成分の配合量が多すぎるとたとえば水などの他の成分の配合量が相対的に少なくなくなり、有効成分の溶解性が低下したり、吸収されにくくなることがあるので、原液中の有効成分の配合量を10%(重量%、以下同様)以下、なかんづく5%以下とするのが好ましい。また、通常、有効成分を配合することによる効果を充分に発現させるためには0.01%以上、なかんづく0.1%以上とすることが好ましい。
【0010】
前記のように、本発明に用いられる原液は、前記有効成分および水を配合したものである。ここで配合される水としては、通常エアゾール組成物の原液に用いられる精製水が用いられる。なお、前記水の配合量は、有効成分の種類および配合量によって異なるので一概には決定することができず、通常本発明のエアゾール製品の目的および用途に応じて適宜調整される。
【0011】
本発明に用いられる原液には、前記有効成分および水のほかにも必要に応じてたとえば乳糖、はちみつ、水あめ、ショ糖、D-ソルビット、D-マンニトール、D-キシロース、l-メントール、ユーカリ油、カンゾウエキス、香料、ハッカ水などの矯味剤;各種天然合成香料などの矯臭剤;グリセリン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの増粘剤;エタノール、エーテルなどの溶解補助剤;クエン酸、炭酸水素ナトリウムなどのpH調整剤;パラ安息香酸エステルなどの保存剤;タール色素、各種天然色素、ビタミン類(β-カロチン、リボフラビン、銅クロロフィリンナトリウム)などの色素などを適宜添加してもよい。
【0012】
前記エアゾール組成物に用いられる噴射剤は、酸素および不活性ガスを含有したものであり、該噴射剤の配合量は、エアゾール組成物中に0.05%以上、好ましくは0.3%以上含有されるように調整されることが望ましい。かかる噴射剤の配合量が前記範囲よりも少ないばあいには、エアゾール組成物が充分に噴出されないようになる傾向がある。また、口腔内の所望の部位に正確にエアゾール組成物を付与するためには、該エアゾール組成物の噴射状態は糸状であることが好ましい。したがって、このような糸状に噴射させるためには噴射剤の配合量は、5%以下とすることが好ましい。
【0013】
前記噴射剤に含有される不活性ガスとしては、たとえばチッ素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスなどがあげられるが、組成物の噴射状態および酸素との混合性の面からチッ素ガスまたは二酸化炭素ガスが好ましい。また、酸素は前記噴射剤中に15〜35%、好ましくは20〜25%含有される。かかる酸素の含有量が15%未満であるばあいには、本発明のエアゾール組成物を口腔内に噴射したときに酸素量が少ないことに起因して使用者がむせたり、息苦しさを感じるようになり、また35%をこえるばあいには、原液または有効成分と反応する傾向がある。
【0014】
前記原液と噴射剤とを混合することにより、本発明に用いられるエアゾール組成物がえられ、該エアゾール組成物は、通常の方法でエアゾール用耐圧容器に充填され、口腔用エアゾール製品とされる。
【0015】
前記エアゾール用耐圧容器としては、とくに限定がなく一般に使用されているものを適用することができる。
【0016】
このようにしてえられる口腔用エアゾール製品に充填されるエアゾール組成物の量は、通常製品の内圧が35℃で5〜8kg/cm2となるように調整することが好ましい。かかる内圧が5kg/cm2未満であるばあいには、相対的に噴射剤量の増量が必要となり、望ましい噴射形態を付与することが困難となる傾向があり、また8kg/cm2をこえるばあいには、取り扱いが困難となったり、適切な噴射状態がえられなくなる傾向がある。
【0017】
前記口腔用エアゾール製品の使用回数は、とくに限定がなく、用途、症状などに応じて適宜調節することが好ましい。
【0018】
前記口腔用エアゾール組成物の噴射状態としては、たとえばフォーム状、ミスト状、糸状などがあげられるが、口腔内の所望の部位に正確に適用するためには、糸状であることがとくに好ましい。
【0019】
なお、本発明においては、定量的に有効成分を含有した原液をエアゾール製品から噴射させることができるようにするためには、たとえば図1に示されるような構造を有する定量バルブを用いることができる。
【0020】
図1に示された定量バルブは、定常状態(静止状態)のものである。
【0021】
ノズル1は、ステム2と連接され、該ステム2の下方に設けられたスプリング3によってステムラバー4がマウンティングキャップ5に押圧され、エアゾール製品が密閉状態に保たれる。ステムラバー4を固定しているガイドブッシュ6の外周には、たとえばゴムなどの可撓性を有する材料からなるタンク7が設けられ、該タンク7は、ハウジング8によって固定されている。ハウジング8の下面には、ディップチューブ9が接続されている。なお、エアゾール容器(図示せず)は、マウンティングキャップ5とハウジングのあいだでガスケット10を介してシールして固定される。
【0022】
エアゾール容器内に充填された有効成分を含有した原液は、ディップチューブ9を介してハウジング8内に入り、ステム2とタンク7との間隙およびステム2とガイドブッシュ6との間隙を介してガイドブッシュ6の内部に入り、ついでホール11を介してガイドブッシュ6とタンク7とのあいだに形成された定量室12内に充填される。
【0023】
前記バルブは、ノズル1を下方に押圧することにより、図2に示されるように作動させることができる。
【0024】
エアゾール容器(図示せず)内の有効成分を含有した原液は、ディップチューブ9を介してハウジング8の内部に入るが、ステム2とタンク7とが完全にシールされているので、ガイドブッシュ6内には該原液は導入されない。
【0025】
エアゾール容器の内圧は、エアゾール容器の外圧(大気圧)よりも大であるから、ノズル1を下方に押圧したときにノズル1のガス導入孔13と定量室12とが導通孔14、ガイドブッシュ6を介して連通されたときに、連通ホール15を介して導入されたエアゾール容器内の原液の圧力によって図2に示されるように、タンク7が変形し、定量室12内の原液がホール11、ガイドブッシュ6、導通孔14およびガス導入孔13を順次介して吐出孔16から吐出される。
【0026】
このように、図1に示されるような定量バルブを用いたばあいには、定量室12内に充填された原液を一定量でノズル1の吐出孔16を介して外部に噴出させることができる。
【0027】
つぎに本発明の口腔用エアゾール製品を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
実施例1(鎮咳去痰薬)
表1に示す組成からなる原液60gと、酸素20%およびチッ素ガス80%からなる噴射剤0.3gとを均一に混合してエアゾール組成物をえた。
【0029】
えられたエアゾール組成物をエアゾール用耐圧容器(満注量:100ml)に、35℃で内圧が6.5kg/cm2となるように充填し、エアゾール用バルブとして図1に示された構造を有する定量バルブを用い、該定量バルブおよびノズルを取り付けて口腔用エアゾール製品をつくった。
【0030】
【表1】

【0031】
えられた口腔用エアゾール製品を、咳、痰の喀出症状が激しく現れる患者の咽喉頭部に直接噴射したところ、正確にその咽喉頭部に噴射することができた。したがって、前記口腔用エアゾール製品は、エアゾール組成物を調製する際に矯味、矯臭の必要がなく調製が簡易であった。また、噴射の際には患者がむせることがなく、呼吸の状態は通常と変わらなかった。
【0032】
また、えられた口腔用エアゾール製品を繰返して使用したが、ほぼ一定量(約0.1ml)だけ原液を繰返して噴射させることができた。
【0033】
実施例2(うがい薬)
表2に示す組成からなる原液50gと、酸素20%および二酸化炭素ガス80%からなる噴射剤1gとを用いたほかは実施例1と同様にしてエアゾール組成物をえ、これをエアゾール用耐圧容器に、35℃で内圧が6.5kg/cm2となるように充填して口腔用エアゾール製品をつくった。
【0034】
【表2】

【0035】
えられた口腔用エアゾール製品を、のどの炎症が激しい患者の咽喉頭部に直接噴射したところ、その咽喉頭部に正確に噴射することができた。また、実施例1と同様に噴射の際には患者がむせることがなく、呼吸の状態は通常と変わらなかった。
【0036】
実施例3(歯痛止め)
表3に示す組成からなる原液60gと、酸素20%およびチッ素ガス80%からなる噴射剤0.3gとを用いたほかは実施例1と同様にしてエアゾール組成物をえ、これをエアゾール用耐圧容器に35℃で内圧が6.5kg/cm2となるように充填して口腔用エアゾール製品をつくった。
【0037】
【表3】

【0038】
えられた口腔用エアゾール製品を、激しく痛む患者の抜歯後の患部に直接噴射したところ、その患部に正確に噴射することができた。また、実施例1に準じて噴射した際には、患者がむせることがなく、呼吸の状態は通常と変わらなかった。
【0039】
実施例4(うがい薬)
表4に示す組成からなる原液60gと、酸素25%および二酸化炭素ガス75%からなる噴射剤1gとを用いたほかは実施例1と同様にしてエアゾール組成物をえ、これをエアゾール用耐圧容器に35℃で内圧が6.0kg/cm2となるように充填して口腔用エアゾール製品をつくった。
【0040】
【表4】

【0041】
えられた口腔用エアゾール製品を、のどの炎症が激しい患者の咽喉頭部に直接噴射したところ、その咽喉頭部に正確に噴射することができた。また、実施例1と同様に噴射したが、噴射の際には、患者がむせることがなく、呼吸の状態は通常と変わらなかった。
【0042】
実施例5(口内炎薬)
表5に示す組成からなる原液50gと、酸素20%および二酸化炭素ガス80%からなる噴射剤1gとを用いたほかは実施例1と同様にしてエアゾール組成物をえ、これをエアゾール用耐圧容器に35℃で内圧が6.0kg/cm2となるように充填して口腔用エアゾール製品をつくった。
【0043】
【表5】

【0044】
えられた口腔用エアゾール製品を、患者の口腔内の炎症部位に直接噴射したところ、その炎症部位に正確に噴射することができた。また、実施例1に準じて噴射したが、噴射の際には患者がむせることがなく、呼吸の状態は通常と変わらなかった。
【0045】
実験例1〜3
実施例1、実施例2および実施例5でえられた口腔用エアゾール製品を用いて患部への到達の正確さ、息づまり、味および密閉性を被験者5名により調べ、以下の評価基準にもとづいて評価した。その結果を表6に示す。
【0046】
なお、実験例1、2および3には、それぞれ実施例1、2および5でえられた口腔用エアゾール製品を用いた。
【0047】
(評価基準)
○:被験者5名のうち、4名以上がよい状態と感じた。
△:被験者5名のうち、2〜3名がよい状態と感じた。
×:被験者5名のうち、1名以下がよい状態と感じた。
【0048】
比較実験例1〜3
実施例1において噴射剤を液化石油ガスに置換したもの(比較実験例1)、実施例2において噴射剤をチッ素ガスに置換したもの(比較実験例2)、または実施例5でえられた原液を噴射剤を用いずにいわゆる噴射タイプのポンプを用いたもの(比較実験例3)を用いて実験例1〜3と同様にして実験を行ない、評価した。その結果を表6に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
以上の結果から、実験例1〜3で用いられた本発明の実施例1、2および5による口腔用エアゾール製品は、患部への到達の正確さ、息づまり、味および密閉性のいずれの点においてもすぐれたものであることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の口腔用エアゾール製品は、有効成分を特定部位に確実に直接作用させることができ、他の箇所への副作用の影響が少なく、有効成分の速効性を期待することができ、また使用時にむせることもなく、衛生面にもすぐれているので、口腔内で好適に使用しうるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の口腔用エアゾール製品に用いられうる定量バルブの静止状態における概略断面図である。
【図2】
本発明の口腔用エアゾール製品に用いられうる定量バルブの作動状態における概略断面図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-11 
出願番号 特願平5-9752
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A61M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安井 寿儀  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 一色 貞好
和泉 等
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3350678号(P3350678)
権利者 株式会社ダイゾー
発明の名称 口腔用エアゾール製品  
代理人 朝日奈 宗太  
代理人 朝日奈 宗太  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ