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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
管理番号 1107866
異議申立番号 異議2003-71008  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-21 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3337716号「難燃性岩盤固結用注入材薬液」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3337716号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3337716号の請求項1に係る発明は、平成4年5月26日に出願され、平成14年8月9日にその特許権の設定登録がなされ、その後、近藤武より特許異議の申立てがあり、取消理由通知後、その指定期間内である平成16年6月1日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容

訂正請求は、本件特許明細書を訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、下記のとおりである。
a.特許請求の範囲を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 ケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを主成分とするA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、該ウレタン反応触媒がテトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチルノルマルオクチルアミンを主成分とする難燃性岩盤固結用注入材薬液において、前記イソシアネートが、ポリメリックMDI 100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したものであることを特徴とする難燃性岩盤固結用注入材薬液。」
b.明細書の段落[0008]を次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを主成分とするA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、該ウレタン反応触媒がテトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチルノルマルオクチルアミンを主成分とする難燃性岩盤固結用注入材薬液において、前記イソシアネートが、ポリメリックMDI 100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したものであることを特徴とする難燃性岩盤固結用注入材薬液である。」と訂正する。
c.段落[0017]を次のとおりに訂正する。
「アミン系触媒としては、N,N,N',N'-テトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチル-N-オクチルアミンが挙げられる。」と訂正する。
d.段落[0020]の末行の「、そのうち一種又は二種以上の使用が可能である。」を「、そのうち一種又は二種以上の使用が可能であるが、本発明においては、少なくとも、ポリメリックMDIを使用する。」と訂正する。
e.段落[0028]の表1の実験No.1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、1-8、1-9の備考の「実施例」を、それぞれ、「比較例」に訂正し、実験No.1-12、1-13、1-14の備考の「実施例」を、それぞれ、「参考例」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

上記の訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されていたウレタン反応触媒から「ジメチルノルマルドデシルアミン」を削除し「テトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチルノルマルオクチルアミン」に限定し、かつ、「イソシアネート」を明細書の段落[0020]に有効なものとして記載され、且つ実施例1-10および1-11に具体的に示されている「ポリメリックMDI 100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したもの」に限定したものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b〜eは、訂正事項aの特許請求の範囲の減縮に伴い、明細書の発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させたもの、及び本件発明の範囲外となった実施例を比較例又は参考例としたもので、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、この訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断

(1)本件発明

上記のとおり、訂正が認められるので、本件請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された上記2.(1)のa.に記載されたとおりのものである。

(2)特許異議の申立ての理由の概要

異議申立人 近藤武は、甲第1号証ないし甲第5号証を提示し、本件の訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、と主張している。また、ウレタン反応触媒のうち「ジメチルノルマルドデシルアミン」については効果が認められず、さらに、列記されたウレタン反応触媒が「及び」で結ばれるものなのか、「又は」で結ばれるものなのか不明であるから、特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第5項に違反していると主張している。

甲第1号証:特開昭55-160079号公報
甲第2号証:特開昭63-41524号公報
甲第3号証:プラスチック材料講座2「ポリウレタン樹脂」第26〜29 頁、昭和44年11月30日 日刊工業新聞社発行
甲第4号証:特公平1-38130号公報
甲第5号証:特開昭50-19885号公報

(3)取消理由の概要

当審における取消理由は、刊行物1〜5(それぞれ、甲第1号証〜甲第5号証に対応)を引用し、その理由は、特許異議の申立ての理由と同じである。

(4)甲号各証に記載の発明

甲第1号証には、「水ガラス溶液とポリイソシアネートをよく混合し、得られたエマルジョンを団結化を要する対象物内で硬化させることを特徴とする自然の地層、石灰層、または人為的に堆積形成された岩石・土砂層等を団結化乃至封止する方法。」(特許請求の範囲)に係る発明が記載され、「本発明の目的を達成するためのポリイソシアネートとしては、・・・・・、ポリウレタン化学の分野で通常用いられている室温で液状を呈する芳香族ポリイソシアネートを用いるのが好ましい。かかるポリイソシアネートの例としては、・・・・・、アニリン・ホルムアルデヒドを縮合させた後ホスゲンを作用させて生成しうるポリフェニール・ポリメチレン ポリイシシアネート(MDI)及びこれらのポリイソシアネートの誘導体であってカルボジイミド結合、ビュレット結合、ウレタン結合、又はアロフェネート結合を有し、室温で液状をなすものなどが挙げられる。アニリン・ホルムアルデヒド縮合物にホスゲンを作用させて得られた室温で液状を呈するポリイシシアネート混合物(MDI)、及びそれらを略等量(・・・)の、分子量62乃至3,000の範囲の多価アルコール、特に分子量134乃至3,000でエーテル基を含むポリオール、と反応させて得られるイソシアネート含有反応生成物が好適である。」(3頁左下欄7行〜右下欄14行)と説明されている。また、混入可能な添加剤として「ポリウレタン化学の分野で通常使用されている促進剤:例えば・・・トリエチレンアミンの如き第三アミン」(4頁左下欄1〜2行)が挙げられ、「上記の混合物は、岩層等の処理対象に或は処理対象に穿設した孔内に通常ノズル或はパイプを介して圧入される。」(4頁右上欄5〜7行)と説明されている。
甲第2号証には、「ポリイソシアネートとアルカリシリケート溶液とを触媒の存在下で反応させることにより得られた有機無機発泡材料及びその製法」に係る発明が記載され、触媒としてテトラメチルヘキサメチレンジアミンが示されている(請求項5)。
甲第3号証には、イソシアネート反応時における各触媒の触媒定数が示され、「表2・14のとおり分子内にアミン基の多いものほど高い価を示す。」と説明されている。
甲第4号証には、「少なくても2つの活性水素を有する化合物とポリイソシアネートと水および/または発泡剤とからなるポリウレタンフォームを製造する方法において、一般式[I](CH3)2>N-CnH2n+1(式中、nは6から10の整数を示す。)で表される触媒を特徴とするポリウレタンフォームの製造法。」(特許請求の範囲)の発明が記載され、「炭素数がこのように狭く限定される理由は、アルキル基の炭素数が10を越えると触媒としての活性が小さくなり、形成時間を短縮するという目的を達成することができなくなる。」と説明されている(3欄40〜43行)。(注:nが8のものは、本件発明の触媒の一つであるN,N-ジメチルノルマルオクチルアミンである)
甲第5号証には、「(1)けい酸塩水溶液および/または水性シリカゲル、(2a)重付加および/または重縮合および/または重合をすることができる反応性基と、少なくとも1個の非イオン性の親水性基とを含有する有機プレポリマーと、必要に応じて(2b)化合物および(c)化合物と共に混合することを特徴とする、無機-有機プラスチック複合物質を製造する方法。」(特許請求の範囲第1項)に関する発明が記載され、(1)成分のけい酸塩水溶液はけい酸アルカリ金属塩の水溶液であり(4頁右上欄14行)、その一つはけい酸ナトリウム水溶液であることが記載されている(11頁右下欄3〜5行)。また、(2a)成分の有機プレポリマーとしては、イソシアネートの重付加物が好適であり(4頁右上欄3〜9行)、工業的に容易に入手することができるポリイソシアネートを使用することが特に好適であり、その例として、TDI、粗MDI、変性したポリイソシアネートが示され、ポリイソシアネートのいかなる混合物を使用してもよいことが示されている(7頁右上欄)。さらに、触媒として第3級アミンが使用できることが記載されている。
そして、例1には「水ガラス、アミン触媒およびフォーム安定剤の混合物を、トリクロロフルオロメタンで希釈した、非イオン性-親水性プレポリマーAに加えた。」とあり、非イオン性-親水性プレポリマーAの調製(21頁右下欄)を見ると、「I)ポリイソシアネート成分:アニリン/ホルムアルデヒド縮合物の粗ホスゲン処理物から・・・・を留出させる。NCO含量:30〜31重量% II)非イオン性-親水性成分:(P1・・・P8・・)実験操作:ポリイソシアネート成分(I)および非イオン性-親水性ポリエーテル成分(II)を一緒にし、一定なNCO含量を持つ均質なプレポリマーが得られるまで、かきまぜながら、80℃で互いに反応させた。」と記載されO〜Nのプレポリマーの反応時間、NCO(重量%)等が表示されている(21頁右下欄〜22頁右上欄)。また、用途として、「砂丘または湿地のように通行不能であるか、またはあまりにぼろぼろの地帯に、これらの混合物をスプレーする場合には、それは短時間内に堅固で通行可能となり、浸蝕に対して防護される。」、「地下および路面工事さらに道路建設において、壁および小屋の建設のために、またシール用化合物として、継目の充てん、・・・・・に使用することができ、」(18頁右上欄下から2行〜右下欄8行)と記載されている。

(5)対比・判断

i.特許法第29条第2項違反について

本件請求項1に係る発明と甲号各証に記載された発明を比較すると、いずれにも本件請求項1に係る発明の構成要件である、イソシアネート成分が「ポリメリックMDI 100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したものである」点が記載されていない。
そして、上記の構成により、高い圧縮強度の硬化物を得ることができることは実施例から明らかであるから、「ポリメリックMDI 100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用する」ことについての知見がない甲第1号証ないし甲第5号証に基いて本件請求項1に係る発明を想到することは当業者にとって容易なことではない。

ii.特許法第36条第5項違反について

上記訂正により、効果がない触媒である「ジメチルノルマルドデシルアミン」は削除され、かつ列記されたウレタン反応触媒が「又は」で結ばれたので、特許法第36条第5項違反は解消した。

(6)むすび

以上のとおりであるから、取消理由並びに特許異議の申立ての理由および証拠をもっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に、該特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
難燃性岩盤固結用注入材薬液
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを主成分とするA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、該ウレタン反応触媒がテトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチルノルマルオクチルアミンを主成分とする難燃性岩盤固結用注入材薬液において、前記イソシアネートが、ポリメリックMDI100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したものであることを特徴とする難燃性岩盤固結用注入材薬液。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟弱な地盤に注入して、強固な地盤に改善する難燃性岩盤固結用注入材薬液に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、軟弱な地盤に注入してこれを強固にする薬液としては、水ガラス系や速硬性セメント系などの無機系と、アクリルアミド系やウレタン系などの有機系等種々の注入材薬液が提案されている。しかしながら、いずれも一長一短があり、地盤安定化処理工事で要求する条件を全て満足する性能は得られていないのが現状である。
【0003】一般にトンネルのように密閉化された場所での地盤安定化処理工事で最も恐ろしいものは坑内火災である。
【0004】無機系薬液は、不燃性又は難燃性であるため、このような火災時に燃焼するなどの問題は全く無いが、注入工事に手間がかかり、かつ、注入後の固結時間が長く強度の発生に時間がかかるので、現場の工事を長期間停止しなければならない等の課題があり、それを改良した2液型ウレタン系薬液が提案されている(特開昭63-8477号公報、特開平4-73313号公報)。
【0005】ウレタン系薬液は固結時間が短く、かつ、注入工事も簡単で工事の進行にも余り障害にならない極めて優れた岩盤固結用薬液として知られている。しかしながら、ウレタン系薬液は、多価アルコールとイソシアネートとが反応しポリウレタンフォームを形成する、主成分が有機物のものであり、坑内火災が発生した場合、その硬化物が燃焼して状況をますます悪化させる恐れがあるという課題があった。
【0006】また、ポリウレタンは高価な樹脂であり、これを多量に地盤中に注入することは経済的にも実現性を欠くものであった。
【0007】本発明者は、種々検討した結果、特定の成分を使用することによって、前記の無機系薬液や有機系薬液のもつ課題を解決できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを主成分とするA液と、イソシアネートを主成分とするB液とからなり、該ウレタン反応触媒がテトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチルノルマルオクチルアミンを主成分とする難燃性岩盤固結用注入材薬液において、前記イソシアネートが、ポリメリックMDI100重量部に対して、イソシアネート基含有量が3〜20重量%である変性イソシアネート1〜20重量部を併用したものであることを特徴とする難燃性岩盤固結用注入材薬液である。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明は、A液として難燃性の無機系薬液であるケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを、B液としては、このケイ酸ナトリウム水溶液を、例えば、2分以内のように速やかに固結するイソシアネートを用いて、ケイ酸ナトリウムを骨格とする強固な難燃性硬化物を地盤中に形成し、軟弱地盤を安定化させるものである。特に、この反応によって地盤中に形成した硬化物は、難燃性のケイ酸ナトリウムを骨格としているため、坑内火災に対しても問題はほとんどみられないものである。
【0011】また、この反応はいわゆるイソシアネート基によるウレタン反応であるため、その固結反応は極めて迅速で、無機系薬液のみの場合のように、注入後の固結時間が長く、強度の発生に時間がかかるものではなく、工事の進行の障害にはならないものである。
【0012】本発明に係るA液とは、ケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒とを主成分とするものである。
【0013】ここで、ケイ酸ナトリウム水溶液は、一般には水ガラスとして市販されておりJIS規格で1号〜4号まで規定されている。
【0014】本発明に使用されるケイ酸ナトリウム水溶液は、硬化物の強度の面から、なるべく固形分濃度の高いものが好ましいが、地盤中に注入した場合、粘度が小さい程B液との混合性が良く、粘度が高いと岩盤への浸透が阻害されて工事が困難となることから、本発明では、20℃の水溶液粘度が500cps以下が好ましく、300cps以下がより好ましい。具体的には、粘度が150cps以下の市販の水ガラスのJIS 2号やJIS 3号の使用が好ましく、特にJIS 2号の水ガラスの使用がより好ましい。
【0015】本発明では、ケイ酸ナトリウム水溶液とイソシアネートとを混合することにより、ケイ酸ナトリウムとイソシアネート基との反応は直ちに開始されるが、注入工事を順調に進行させるためにはウレタン反応触媒をA液中に配合してその反応速度を促進させることが必要である。
【0016】一般に、イソシアネート基によりウレタンを生成するウレタン反応触媒としては、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒とジブチル錫ジラウレートのような有機金属系触媒など各種があるが、本発明のケイ酸ナトリウム水溶液は、酸、アルカリ、及び金属等によりゲルが析出しやすくなるため、ケイ酸ナトリウム水溶液に難溶な、アミン系触媒を使用することが必要である。
【0017】アミン系触媒としては、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン又はN,N-ジメチル-N-オクチルアミンが挙げられる。
【0018】ウレタン反応触媒の使用量は、その工事のやり方や要求される硬化速度などによって決定されるものであるが、A液100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。0.5重量部未満では、反応速度が遅く実用的でない。
【0019】本発明に係るB液とは、前記A液と接触すると、A液中のケイ酸ナトリウム水溶液を、例えば、2分以内で速やかに固結するイソシアネートを主成分とするものである。
【0020】ここで、イソシアネートとしては、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレン・ポリフェニル・ポリイソシアネート(ポリメリックMDI又はクルードMDI)、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等が好ましく、そのうちの一種又は二種以上の使用が可能であるが、本発明においては、少なくとも、ポリメリックMDIを使用する。
【0021】本発明で用いるイソシアネートのイソシアネート基含有量は、特に制限されるものではないが、通常、イソシアネート基含有量が20〜50重量%程度であるイソシアネートの使用が好ましく、イソシアネート基含有量30〜35重量%のポリメリックMDIの使用がより好ましい。
【0022】また、本発明では、例へば、ポリメリックMDIと、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、又はポリブタジエン等との反応生成物でイソシアネート基含有量が3〜20重量%である、いわゆる、変性イソシアネートを、ポリメリックMDI100重量部に対して、1〜20重量部併用することは、硬化物の発泡倍率や硬化物の実用強度などの物性を改良する面から有効である。
【0023】A液とB液の混合割合は、A液100重量部に対して、B液50〜200重量部が好ましい。A液に対するB液の割合が少なくなると、難燃性物質であるケイ酸ナトリウム水溶液の割合が多くなるので硬化物の難燃性は増加するが、発泡性がほとんど無くなり岩盤への浸透性は低下する。一方、A液に対するB液の割合が多くなると、ケイ酸ナトリウム水溶液の割合が低下するので硬化物の難燃性は低下するが、イソシアネート基と水との反応で発生する炭酸ガスによる発泡倍率は1.5〜2.5倍となり岩盤への浸透性は向上する。A液100重量部に対して、B液100重量部とすると、A液とB液の2液混合後の硬化時間が10〜60秒と極めて短時間で硬化を終了し、必要強度を発現することが可能である。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明する。
【0025】実施例1
表1に示すようにケイ酸ナトリウム水溶液とウレタン反応触媒を用いてA液とし、A液100重量部に対して、表1に示すイソシアネート液(B液)を配合し、その固結時間、発泡倍率、及び圧縮強度を測定し、難燃性の評価を行った。結果を表1に併記する。
【0026】<試験方法>
固結時間:A液とB液を混合してから、最大に発泡した時点までの時間
発泡倍率:A液とB液の合計の容積に対する最大発泡時の容積
圧縮強度:縦2cm×横2cm×高さ2cmの型枠にA液とB液の混合液を入れ、成形1日後の強度を測定した。
難燃性:JIS K 7201に基づき、3mm厚のシートを作成して酸素指数を測定。
難燃性の評価は、酸素指数30以上を良好、30未満を不良とした。
【0027】<使用材料>
ケイ酸ナトリウム水溶液a:日本化学工業(株)製水ガラス、JIS 2号
ケイ酸ナトリウム水溶液b:日本化学工業(株)製水ガラス、JIS 3号
ウレタン反応触媒A:テトラメチルヘキサメチレンジアミン
ウレタン反応触媒B:N,N-ジメチル-ノルマルオクチルアミン
イソシアネートα:三井東圧(株)製ポリメリックMDI、イソシアネート基含有量31重量%
〃β:ポリブタジエン系プレポリマー
〃γ:エチレングリコール系プレポリマー
【0028】
【表1】

【0029】実施例2
実験No.1-4の配合のA液とB液を用いて、3mのフォアパイリング施工を行った。ボルト1本当たり60kgのA液とB液の混合物を注入圧力20kg/cm2で注入し、トンネル断面当たり18本のボルトの打ち込み施工を行った。A液とB液の混合物は混合後30秒でゲル化した。ボルトの打ち込み施工終了後3時間でトンネル掘削を実施したが、注入前には落下した岩盤が、本発明の薬液の注入後はまったく落下がなく、十分に注入目的が達せられた。また、崩れやすかった地山が完全に自立し、湧水も完全に止めることができた。
【0030】
【発明の効果】本発明の難燃性岩盤固結用注入材薬液を使用することによって、ケイ酸ナトリウム水溶液とイソシアネートとの化学反応によって2分以内に固結は完了するため土木工事のスピードアップが可能となる。また、生成した硬化物は無機物であるケイ酸ナトリウムを骨格としているために極めて難燃性で、たとえ、坑内火災が発生しても燃焼に対する抵抗性がある。さらに、本発明の反応は、イソシアネート基によるウレタンフォームを生成するウレタン反応であるため、反応が極めて迅速であり、無機系薬液のみの場合のように強度の発現に時間がかかるものではなく、注入工事も簡単である。このように、ウレタン系薬液の長所を残しながら難燃性硬化物を得られ、薬液の半分以上がケイ酸ナトリウム水溶液であるため、ウレタン系薬液に比較してその価格も大巾に低く、経済的にも実現化が容易となる、等の効果を奏する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-02 
出願番号 特願平4-157320
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09K)
P 1 651・ 531- YA (C09K)
最終処分 維持  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 佐藤 修
唐木 以知良
登録日 2002-08-09 
登録番号 特許第3337716号(P3337716)
権利者 電気化学工業株式会社
発明の名称 難燃性岩盤固結用注入材薬液  
代理人 松本 悟  
代理人 松本 悟  

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