• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1107867
異議申立番号 異議2003-70855  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-07 
確定日 2004-09-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3331221号「弾性複合体とその製造法」の請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3331221号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3331221号の請求項1ないし14に係る発明についての出願は、平成4年2月13日の出願であって、平成14年7月19日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議の申立て(特許異議申立人 中野馥子。以下、「申立人」という。)がなされ、平成15年10月30日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年1月9日付けで訂正請求及び特許異議意見書の提出がなされ、平成16年4月28日付けで再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月24日付けで再度訂正請求及び特許異議意見書の提出がなされると共に、平成16年1月9日付けの訂正請求については取下げられたものである。
なお、平成16年5月24日付けの訂正請求書は、方式指令に対応して、平成16年8月10日付けで手続補正がなされている。

II.平成16年8月10日付けで手続補正がなされた平成16年5月24日付け訂正請求書による訂正の適否について

1.訂正の内容
平成16年8月10日付けで手続補正がなされた平成16年5月24日付け訂正請求書による訂正の内容は、次のとおりである。
『訂正事項(a)
特許請求の範囲の請求項1ないし9を削除する。

訂正事項(b)
特許請求の範囲の請求項10の記載について、
「【請求項10】 シート状弾性体として熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押し出し、冷却した後に不織布よりなる前記シート状基材と圧着し、さらに溝を有するロール間を通過させて、ストランド状の強圧着部を形成させる請求項9記載の弾性複合体の製造法。」
とあるのを、
「【請求項1】 熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押出し、冷却した後の緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等程度の伸長性は有するが、伸長回復性は持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを圧着し、さらに溝を有するロール間を通過させてストランド状の強圧着部を形成し、シートの長さ方向(MD)に連続的に、シートの横方向(CD)に不連続的に結合することを特徴とする弾性複合体の製造法。」
と訂正する。

訂正事項(c)
特許請求の範囲の請求項11の記載について、
「【請求項11】 緩和状態のシート状の弾性体と、伸長されたひだを形成されているシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とからなり、前記弾性体は前記シート状基材にシートの長さ方向(MD)に連続的に結合してなり、横方向(CD)には不連続性をもって結合されてなることを特徴とする弾性複合体。」
とあるのを、
「【請求項2】 緩和状態のシート状の弾性体と、伸長されたひだを形成されているシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とからなり、前記弾性体は前記シート状基材にシートの長さ方向(MD)に連続的に結合してなり、横方向(CD)には不連続性をもって結合されてなることを特徴とする弾性複合体。」
と訂正する。

訂正事項(d)
特許請求の範囲の請求項12の記載について、
「【請求項12】 請求項11において、弾性部材の長さ(P)と、ひだの部分を含む基材の全長(Q)との関係がQ/P≧1.5である弾性複合体。」
とあるのを、
「【請求項3】 請求項2において、弾性部材の長さ(P)と、ひだの部分を含む基材の全長(Q)との関係がQ/P≧1.5である弾性複合体。」
と訂正する。

訂正事項(e)
特許請求の範囲の請求項13の記載について、
「【請求項13】 請求項12において、ひだを有する前記シート状基材が、弾性体を芯材としてその両面に形成されている弾性複合体。」
とあるのを、
「【請求項4】 請求項3において、ひだを有する前記シート状基材が、弾性体を芯材としてその両面に形成されている弾性複合体。」
と訂正する。

訂正事項(f)
特許請求の範囲の請求項14の記載について、
「【請求項14】 緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等の伸長性を有するが、伸長回復性を持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを、長さ方向(MD)に連続的に、横方向(CD)に不連続性を持って結合して弾性複合体を形成し、ついでこの弾性複合体を弾性体に基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、基材に永久変形を生起せしめた後、伸長を緩和することを特徴とする弾性複合体の製造法。」
とあるのを、
「【請求項5】 緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等の伸長性を有するが、伸長回復性を持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを、長さ方向(MD)に連続的に、横方向(CD)に不連続性を持って結合して弾性複合体を形成し、ついでこの弾性複合体を弾性体に前記シート状基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、前記シート状基材に永久変形を生起せしめた後、伸長を緩和することを特徴とする弾性複合体の製造法。」
と訂正する。』

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項(a)について
訂正事項(a)は、請求項を削除しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項(b)について
訂正事項(b)は、訂正事項(a)における請求項1ないし9の削除に伴い、請求項9を引用して記載していた請求項10を、独立形式の記載に書き改めるとともに請求項1に繰り上げようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項(c)、(d)、(e)について
訂正事項(c)、(d)、(e)は、訂正事項(a)及び(b)に伴い、請求項の繰り上げを行おうとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項(f)について
訂正事項(f)は、訂正事項(a)ないし(e)に伴い請求項の項番の繰り上げを行い、加えて請求項14において複数回用いられていた「基材」との用語について、全てが同じ「シート状基材」を指すものであることを明確にして用語の記載の統一を図ろうとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて

1.本件発明
上記のとおり訂正は認められるから、本件請求項1ないし5に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項によって特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】 熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押出し、冷却した後の緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等程度の伸長性は有するが、伸長回復性は持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを圧着し、さらに溝を有するロール間を通過させてストランド状の強圧着部を形成し、シートの長さ方向(MD)に連続的に、シートの横方向(CD)に不連続的に結合することを特徴とする弾性複合体の製造法。
【請求項2】 緩和状態のシート状の弾性体と、伸長されたひだを形成されているシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とからなり、前記弾性体は前記シート状基材にシートの長さ方向(MD)に連続的に結合してなり、横方向(CD)には不連続性をもって結合されてなることを特徴とする弾性複合体。
【請求項3】 請求項2において、弾性部材の長さ(P)と、ひだの部分を含む基材の全長(Q)との関係がQ/P≧1.5である弾性複合体。
【請求項4】 請求項3において、ひだを有する前記シート状基材が、弾性体を芯材としてその両面に形成されている弾性複合体。
【請求項5】 緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等の伸長性を有するが、伸長回復性を持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを、長さ方向(MD)に連続的に、横方向(CD)に不連続性を持って結合して弾性複合体を形成し、ついでこの弾性複合体を弾性体に前記シート状基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、前記シート状基材に永久変形を生起せしめた後、伸長を緩和することを特徴とする弾性複合体の製造法。」

2.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠として下記甲第1ないし4号証を提示し、訂正前の本件請求項1、2、9、11及び14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、その特許は特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであり(以下、「申立ての理由1」という。)、訂正前の本件請求項第1ないし14に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(以下、「申立ての理由2」という。)、また、訂正前の本件請求項1ないし3の記載並びに本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない(以下、「申立ての理由3」という。)。
よって、訂正前の本件請求項1ないし14に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)甲第1号証 特開昭59-59901号公報
(2)甲第2号証 三浦義人著「不織布要論」(昭和60年2月25日 株式会社高分子刊行会発行)第133〜153頁
(3)甲第3号証 白樫他著「不織布」(昭和40年4月24日 日刊工業新聞社発行)第79〜89頁
(4)甲第4号証 特開昭58-124636号公報

3.甲各号証の記載事項
3-1.甲第1号証の記載事項
申立人の提示した甲第1号証には、以下のA-1〜A-8の記載が認められる。
A-1.「(1)緩和状態の弾性部材と、伸張されていないかあるいはひだを形成されていない基体とからなり、前記弾性部材は前記基体へ不連続に結合されており、かつ前記基体は前記弾性部材よりも伸張性が低い、ことを特徴とする、選択的に伸張性のある弾性複合体。」(特許請求の範囲第1項)
A-2.「(3)前記網状弾性体は熱可塑性ゴムとオレフィンポリマーとの混合物からなる、特許請求の範囲第2項記載の複合体。
(4)前記基体はプラスチックフィルムである、特許請求の範囲第1項記載の複合体。」(特許請求の範囲第3,4項)
A-3.「(9)緩和状態の弾性部材と、伸張され、ひだを形成されている基体と、からなり、前記弾性部材は前記基体へ不連続に結合されている、ことを特徴とする、ひだが形成された、伸張性の弾性複合体。」(特許請求の範囲第9項)」
A-4.「(11)(a)伸張されない弾性部材を前記弾性部材よりも伸張性が低い基体へ不連続に結合して、弾性複合体を形成する、ことを特徴とする、選択的に伸張性の弾性複合体の製造法
(12)(a)伸張されない弾性部材を前記弾性部材よりも伸張性が低い基体へ不連続に結合して、弾性複合体を形成し、そして(b)前記複合体の選択した区域を選択した程度に伸張して、前記基体を永久的に伸ばし、そして(c)複合体を緩和させる、ことを特徴とする、選択的に伸張性の弾性複合体の製造法。」(特許請求の範囲第11,12項)
A-5.「第1図は、分解した斜視図において、本発明による弾性複合体の1つの実施態様の要素を図解する。示された実施態様は、開口をもたない弾性部材10と伸張しない、縮めない基体12からなる。基体12は、伸張前、弾性部材よりも伸張性が低く、かつ弾性部材よりも弾性回復性が低い。好ましい実施態様において基体はプラスチックフィルムからなる。」(公報第3頁右上欄下から7行〜同左下欄第1行及び第1図を参照)
A-6.「第2図に示すように、弾性部材と基体は14において規則的または不規則的なパターンで不連続に結合される。結合は、普通の手段、たとえば、接着剤のスポツト結合、ヒートシール、音波の縮合などにより行うことができる。基体は、別法として、要求する伸張性および弾性回復性をもつ織布、不織布、編製布または溶融性布からなることができる。
第2図に示すように、複合体は任意の方向に伸張して、伸張性および弾性を複合体に付与することができる。弾性体は、張力を解放したとき、第3図に16で示すように、基体にひだを形成するかあるいはそれを縮めさせるために十分な強さを有する。」(公報第3頁左下欄第3〜16行及び第2図を参照)
A-7.「第6図は、2層の基体と弾性部材を示すためにはがした、第5図の組み合わせた弾性複合体を図解する。好ましい実施態様において、基体はプラスチックフィルムからなることができる。・・・最も好ましい実施態様において、基体は・・・できる。
第7図は、長手方向に伸張した第6図の複合体を図解する。基体は伸張しかつ衣類を伸張させるが、弾性部材へ不連続的に結合されたままである。網状弾性体を使用する場合、第6図に20で示すように、網状弾性体中の開口を経る基体の結合は複合体の伸張時にはがれ、弾性体および基体は横方向のストランドおよび/または縦方向のストランドの中間部位において結合されたままである。基体はある程度の弾性回復性を有するが、一般にそれへ結合された弾性部材よりも低い弾性回復性をもたなくてはならない。
第8図は、加えられた張力がいったん解放されかつ複合体がもとの長さにもどった、第7図の複合体を図解する。図解するように、基体は永久的に伸張されているが、それが収縮するとき、弾性によりひだが形成される。第9図は、第8図に示す弾性複合体の分解図である。第9図に示すように、ひだ34の形成は、弾性部材の横方向のストランド22に沿って残る中間の結合部の間に起こる。」(公報第4頁左上欄第2行〜同右上欄下から5行及び第5〜9図を参照)
A-8.「第12図は、本発明によるおむつの好ましい実施態様を図解する。脚の開口区域は、本発明による弾性複合体136および137からなることができる。腰に適合する部分も、本発明による弾性複合体138および139を含むことができる。弾性部材は、複合体とともに、伸張されないかあるいは部分的に伸張された状態で組み込まれることができる。」(公報第4頁左下欄第1〜8行及び第12図を参照)

3-2.甲第2号証の記載事項
申立人の提示した甲第2号証には、使い捨てオムツ等に用いられる不織布について記載されており、「表6.3 各種使い捨て不織布の機械的性質」において、乾式不織布の乾伸度がたて10%、よこ22.5%であること、「表6.4 使い捨てパンティの性能」において、3種類の布(A,B,C)の伸度(%)は、「たて/15,17.5,2.5 ,よこ/56,98,55」であって、「たて」に比べ「よこ」が大幅に大きいことが認められる。(第135頁の表6.3、第138〜139頁の表6.4に係る記載を参照)

3-3.甲第3号証の記載事項
申立人の提示した甲第3号証には、引張伸度等の不織布の性能について記載されており、不織布と各種織物との引張伸度(%)の比較を示した図4.4において、乾式法のFabric typeの不織布(A)の引張伸度はタテ20%強、ヨコ30%強であり、同じく不織布(B)ではタテ20%強、ヨコ40%強程度と、ヨコがタテに比べ大幅に大きいことが認められる(第81頁の表4.1に係る記載、第86頁の図4.4を参照)。

3-4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下のB-1〜B-8の記載が認められる。
B-1.「テープ状又は糸状の熱可塑ウレタン樹脂を1.5〜5倍の伸度に保って、繊維シート材料と重ね合わせ、該熱可塑ウレタン樹脂の表面積の20分の1〜2分の1を該シート材料の伸縮方向に対し不連続となるよう接着せしめることを特徴とする伸縮性シート材料積層体の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
B-2.「テープ状又は糸状の熱可塑ウレタン樹脂・・・をシート材料に点または線接着せしめる・・・」(特許請求の範囲第4項)
B-3.「本発明で製造される伸縮性シート材料積層体は・・・例えば紙オムツの股、腰部分のバンド部分・・・等に用いられる。」(公報第1頁右下欄第8〜12行)
B-4.「本発明に使用される繊維シート材料としては不織布・・・などがあり、・・・線状に接着する場合はシート材料あるいはウレタン樹脂の伸縮する方向に対して不連続になるよう直角あるいは傾斜をつけて接着する。」(公報第4頁右上欄第16行〜同左下欄第5行)
B-5.「熱可塑ウレタン樹脂を挟み、上下にシート材料を積層してもよくより強度の強い積層体を得ようとする場合は熱可塑ウレタン樹脂-シート材料を順次2枚以上重ねて積層してもよい。」(公報第4頁右下欄第10〜13行)
B-6.「接着が完了すると、伸縮自在の積層複合体となり、張力を解除すると熱可塑ウレタン樹脂を有する部分が収縮してバンドの役をはたすようになる。」(公報第4頁右下欄第14〜16行)
B-7.「接着面積は通常表面積の20分の1〜2分の1・・・であり、」(公報第5頁左下欄第5〜7行)
B-8.「図4はその収縮した状態の断面図である。」(図面の簡単な説明)

4.取消理由通知について
4-1.平成15年10月30日付けの取消理由通知について
内容は、概略以下のとおりである。
『 理 由
本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記(1)〜(4)の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用例等
(1)特開昭59-59901号公報
(特許異議申立人中野馥子の甲第1号証参照)
(2)特開昭58-124636号公報
(特許異議申立人中野馥子の甲第4号証参照)
(3)三浦義人著「不織布要論」(昭和60年2月25日 株式会社高分子刊行会発行)第133〜153頁
(特許異議申立人中野馥子の甲第2号証参照)
(4)白樫他著「不織布」(昭和40年4月24日 日刊工業新聞社発行)第79〜89頁
(特許異議申立人中野馥子の甲第3号証参照)』

4-2.平成16年4月28日付けの取消理由通知について
内容は、概略以下のとおりである。
『 理 由
本件の請求項1ないし5に係る特許は、明細書及び図面の記載が下記の(a)〜(c)の点で不備な特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、特許とされたものである。


(a)平成16年1月9日付けの訂正請求書により訂正された請求項1の記載において、「熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押出し、冷却した緩和状態のシート状の弾性体を、・・・不織布からなるシート状基材を圧着し」との記載は、何を圧着するのかが日本語として不明りょうである。(「・・・弾性体と、・・・シート状基材とを圧着」する意味か?)
(b)平成16年1月9日付けの訂正請求書により訂正された請求項1の記載において、「・・・溝を有するロール間を通過させて、シートの長さ方向(MD)に連続的に、シートの横方向(CD)に不連続的に結合し、ストランド状の強圧着部を形成する」との記載では、ストランド強圧着部をどのように形成するのかが日本語として不明りょうである。(訂正前の請求項10によれば、ストランド状の強圧着部は、溝を有するロール間を通過させて形成するものであったのではないか?)
(c)平成16年1月9日付けの訂正請求書により訂正された請求項5の記載において、「弾性複合体を弾性体に基材の切断、破壊を生じない範囲」における「基材」がシート状基材を意味するものであるのか否かが不明りょうである。

したがって、請求項1、5に係る発明の構成は不明りょうであって、請求項1、5は構成に欠くことができない事項のみが記載されたものであるとはいえない。』

5.当審の判断
5-1.特許法第36条第4項、第5項第2号及び第6項について
(1)申立ての理由3について
申立人は、特許法第36条第5項第2号違反の具体的な理由として、本件特許明細書の【0016】【表1】には4種類の不織布a〜dの物性等が記載されており、これらはいずれも訂正前の本件請求項1〜3に係る特許発明に包含される実施例と考えられるが、本件特許明細書の【0032】の「不織布a、不織布bの合体物は殆ど伸縮弾性は示さなかった。」との記載、【0033】【表2】の複合体の性能に関する記載からすれば、不織布a、bは、本件特許発明の「伸縮度が大きく、安定している」(明細書の【0038】)という効果が奏されないものであり、不織布c、dが該効果の奏されるものであることは明らかであるから、訂正前の本件請求項1〜3の記載は特許を受けようとする構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない旨主張し、特許法第36条第4項違反の具体的な理由として、【表1】、【表2】、【0017】、【0018】及び【0032】の記載と請求項1との記載の整合性がない旨主張している。
しかしながら、訂正前の請求項1〜3は、上記したとおり、平成16年5月24日付け訂正請求に係る訂正によって削除され、それにより申立ての理由3は解消しているばかりでなく、以下に述べるように申立ての理由3に係る申立人の主張はそもそも理由がない。
即ち、上記4種類の不織布に関する訂正前の本件特許明細書の記載が、一つには訂正前の請求項1に記載された「長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布」という構成に欠くことができない事項を受け、MD方向とCD方向との伸長性の差をどの程度とすれば本件発明の目的、効果に沿うものとなるかを具体的な例によって示したものであることは、例えば明細書の【0017】、【0018】の記載からも明らかであるから、訂正前の請求項1〜3の記載において例示された不織布a〜dに係る必須の発明構成要件が欠けているとはいえないし、訂正前の請求項1の記載と発明の詳細な説明との整合性にも問題はない。

(2)平成16年4月28日付けの取消理由通知で示した理由(a)〜(c)について
理由(a)〜(c)については、平成16年1月9日付けの訂正請求は取り下げられ、
上記平成16年5月24日付け訂正請求に係る訂正により、記載が明りょうとなったので、解消された。

5-2.特許法第29条第1項第3号について(申立ての理由1に係る訂正前の請求項1、2、9、11及び14)
訂正により、訂正前の請求項1〜9は削除され、同じく請求項10〜14は繰り上げられたので、訂正前の請求項11に対応する新たな請求項2に係る発明、訂正前の請求項14に対応する新たな請求項5に係る発明について、甲第1号証に係る発明との対比・判断を行い、申立ての理由1についての検討を行う。

(1)訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)について
本件発明2と甲第1号証の特許請求の範囲第9項に記載された発明(「引用例発明9」という。)とを対比すると、引用例発明9における「伸張され、ひだを形成されている基体」は本件発明2における「伸張されたひだを形成されているシート状基材」に対応するから、両者は、
「緩和状態のシート状弾性体と、伸長されたひだを形成されているシート状基材とからなり、前記弾性体は前記シート状基材に結合されてなる弾性複合体」
である点で一致し、
本件発明2では、シート状基材は長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性より少ない不織布からなることが特定されているのに対し、引用例発明9では、基体(シート状基材)は、好ましくはプラスチックフィルムであり(上記摘示記載A-2,A-5)、別法として、要求する伸張性および弾性回復性をもつ不織布等からなることができる(上記摘示記載A-6)とされていて、基体の伸長度の方向性について明記されていない点(「相違点1-2」という。)、
本件発明2では、弾性体は基材にシートの長さ方向(MD)には連続的に結合されてなり、横方向(CD)には不連続性を持って結合されてなるのに対し、引用例発明9では、結合される方向について、長さ方向(MD)と横方向(CD)との関係において明記されていない点(「相違点2-2」という。)、
で相違している。
上記相違点について検討する。
まず、申立人は、これら相違点1-2、2-2について、文言上相違していても実質的なものではない旨主張しており、このうち相違点2-2については、甲第1号証の第12図に弾性体が表面層のMD方向に連続的に結合されている形態、CD方向に連続的に結合されている形態の両方が開示されている点を指摘している(特許異議申立書第18頁の「相違点2について」の項等)。しかしながら、甲第1号証の上記摘示記載A-8によれば、弾性複合体136〜139自体が甲第1号証に係る発明の複合弾性体として弾性体と(シート状)基材の結合によるものであると認められるものであって、ここでいうMD方向、CD方向はあくまでもその弾性複合体が組み込まれるおむつにおける方向を意味しているにすぎないから、この指摘に係る開示は相違点2-2に係る構成とは別異のものである。
そして、本件発明2は、これら相違点に係る構成を具えることにより、特に使い捨てオムツ等の腰部や股部に適用して肌にやさしいものである等、明細書記載の格別な効果を奏するものであるから、これら相違点1-2、2-2は実質的なものであって、申立人の主張は採用できない。

(2)訂正後の請求項5に係る発明(以下、「本件発明5」という。)について
本件発明5と甲第1号証の特許請求の範囲第12項に記載された発明(「引用例発明12」という。)とを対比すると、引用例発明12における基体は本件発明5におけるシート状基材に対応するとともに、本件発明5の「伸長回復性を持たない」ことについては弾性体のような100%の伸長回復はしないことであると解され、引用例発明12における「弾性部材よりも伸張性が低い」ことが弾性回復性の低いことを意味していることとなるから、両者は、
「緩和状態のシート状の弾性体と、伸長回復性を持たないシート状基材とを結合して弾性複合体を形成し、ついでこの弾性複合体を弾性体に前記シート状基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、前記シート状基材に永久変形を生起せしめた後、伸長を緩和することを特徴とする弾性複合体の製造法」
である点で一致し、
本件発明5では、シート状基材は、弾性体と同等の伸長性を有し、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性より少ない不織布からなることが特定されているのに対し、引用例発明12では、基体(シート状基材)は、好ましくはプラスチックフィルムであり(上記摘示記載A-2,A-5)、別法として、要求する伸張性および弾性回復性をもつ不織布等からなることができる(上記摘示記載A-6)とされていて、基体の伸長度の方向性について明記されていない点(「相違点1-5」という。)、
本件発明5では、弾性体は基材にシートの長さ方向(MD)には連続的に結合されてなり、横方向(CD)には不連続性を持って結合されてなるのに対し、引用例発明12では、結合される方向について、長さ方向(MD)と横方向(CD)との関係において明記されていない点(「相違点2-5」という。)、
で相違している。
上記相違点について検討する。
申立人は、これら相違点1-5、2-5について、それぞれ本件発明2について上記で検討した相違点1-2、2-2と同様に、文言上相違していても実質的なものではない旨主張しているが、上記で検討した相違点1-2、2-2についてと同様の理由により、これら相違点1-5、2-5も実質的なものであって、申立人の主張は採用できない。

5-3.特許法第29条第2項について(申立ての理由2に係る訂正前の請求項1〜14)
訂正により、訂正前の請求項1〜9は削除され、同じく請求項10〜14は繰り上げられたので、訂正前の請求項1〜9について平成15年10月30日付けの取消理由通知で示した理由については存在しなくなった。
そこで、訂正前の請求項10〜14に対応する新たな請求項1〜5に係る発明について、甲第1号証に係る発明との対比・判断を行い、申立ての理由2についての検討を行う。

(1)訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
本件発明1と甲第1号証の特許請求の範囲第11項に記載された発明(「引用例発明11」という。)とを対比すると、引用例発明11における基体は本件発明1におけるシート状基材に対応するとともに、本件発明1の「伸長回復性は持たない」ことについては弾性体のような100%の伸長回復はしないことであると解され、引用例発明11における「弾性部材よりも伸張性が低い」ことが弾性回復性の低いことを意味していることとなるから、両者は、
「緩和状態のシート状の弾性体と、伸長回復性は持たないシート状基材とを結合する弾性複合体の製造法」
である点で一致し、
本件発明1では、シート状基材は、弾性体と同等程度の伸長性を有し、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性より少ない不織布からなることが特定されているのに対し、引用例発明11では、基体(シート状基材)は、好ましくはプラスチックフィルムであり(上記摘示記載A-2,A-5)、別法として、要求する伸張性および弾性回復性をもつ不織布等からなることができる(上記摘示記載A-6)とされていて、基体の伸長度の方向性について明記されていない点(「相違点1-1」という。)、
本件発明1では、弾性体は基材と圧着し、さらに溝を有するロール間を通過させてストランド状の強圧着部を形成し、シートの長さ方向(MD)には連続的に結合されてなり、横方向(CD)には不連続性を持って結合されてなる点(「相違点2-1」という。)、
本件発明1では、シート状の弾性体が、熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押出し、冷却した後の緩和状態のものである点(「相違点3-1」という。)
で相違している。
まず、相違点2-1について検討する。
相違点2-1のうち、溝を有するローラ間を通過させてストランド状の強圧着部を形成する構成については、甲第1号証には、シート状弾性体とシート状基材との結合手段として、上記摘示記載A-6に示されたような接着剤のスポット結合、ヒートシール、音波の結合などの普通の手段であると示されるだけであって、それを示唆する記載はない。また、甲第2〜4号証においても、上記に摘示した記載(3-2.、3-3.、3-4.のB-1〜B-8)があるだけで、いずれにも相違点2-1に係る上記構成についての記載は認められない。
申立人は、シート状弾性体をシート状基材と圧着して複合体とする場合に、これらを溝を有するローラ間を通過させること、それによりストランド状の強圧着部を形成することは説明するまでもない周知技術である旨主張しているが、引用例発明11におけるシート状弾性体とシート状基材との結合手段は、甲第1号証に記載された上記したとおりのものであって、特に相違点2-1に係る構成を選択するための動機付けとなるものも見当たらない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第1〜4号証に記載された発明から容易に想到できたものとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2と引用例発明9とを対比すると、上記5-2.(1)で述べたように、両者は、相違点1-2、2-2で相違している。
まず、相違点2-2について検討する。
申立人は、甲第4号証の上記摘示記載B-1,3,4に、同様の目的で用いられる伸縮性シート材料積層体において、伸縮方向に不連続かつその直角方向には線状に接着することが記載されていることにより、相違点は当業者が容易になし得ることである旨主張している。
そこで、甲第4号証の記載について検討するに、甲第4号証に記載された発明において、シート材料あるいはウレタン樹脂の伸縮方向に不連続に接着しているのは、上記摘示記載B-1により、熱可塑ウレタン樹脂(引用例発明9の弾性体に相当)を伸ばした状態でシート材料と重ね合わせて接着したことに由来し、上記摘示記載B-6にあるように、接着が完了した後に張力を解除して熱可塑ウレタン樹脂を有する部分が収縮してバンドの役を果たすようにすることを目的とした結果であると認められる。
これに対し、引用例発明9では、上記摘示記載A-1,A-6にあるように、弾性体と基体(甲第4号証におけるシート材料に相当)との接着後にその複合体を伸張し、弾性体と基体の弾性回復性の差によってひだを形成しているのであって、このため基体としては弾性体よりも伸張性が低いものを選択しているものである。してみれば、当業者が甲第4号証の記載を参酌したとしても、少なくとも伸張してひだを形成する方向、即ち不連続に接着している方向について、相違点2-2のように横方向(CD)を特に選択する根拠は見いだすことができない。
そして、甲第1号証の上記摘示A-7の第8図に係る記載は、弾性部材と基体が、連続し、かつ所定間隔で設けられた互いに平行で連続的な複数の結合部のみにおいて貼合され、互いに隣接する結合部間において弾性部材と基体との間は非結合部とされていることを示すものであるが、この連続的な複数の結合部は基体の横方向に延びるものであり、シート状基体の長さ方向が不連続に結合されているものであるから、相違点2-2に係る本件発明2の構成を示唆するものではない。
さらに、引用例発明9における基体が、仮に、その長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性より少ないものであったとしても、不連続に接着する方向を選択するための技術思想はやはり甲第4号証に記載された発明とは異なるから、やはり相違点2-2のように横方向(CD)を特に選択して不連続に接着する根拠は見いだすことができない。
次に、相違点1-2について検討する。
甲第1号証に記載された引用例発明9においては、基体は好ましくはプラスチックフィルムであるところ(上記摘示記載A-2,A-5)、不織布は別法として記載されているのであって、不織布を基体として選択した場合の特定の作用効果について明記したところはない。また、甲第2,3号証の記載を参酌するに、伸長度の方向性を有した不織布は周知であることは認められるが、そもそも不織布については、伸長度が等方性のもの、方向性を有したものはいずれも周知であると認められるところ、引用例発明9における不織布として、どちらかを特定して選択することについて記載もしくは示唆されているとまではいえない。
以上のことから、相違点1-2、2-2を兼ね備える構成を有することについては、上記のとおり、甲第1〜4号証の記載から導き出せるとはいえない。
そして、本件発明2においては、相違点1-2に係りシート基材として特に不織布を選択することと併せ、相違点2-2に係る構成を兼ね備えることにより、それらが相まって、特に使い捨てオムツ等の腰部や股部に適用して肌にやさしいものである等、明細書記載の格別な効果を奏するものである。
よって、本件発明2は、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(3)訂正後の請求項3、4に係る発明(それぞれ「本件発明3,4」という。)について
本件発明3,4の構成に欠くことができない事項は、本件発明2を技術的に限定するものであるから、本件発明2が、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3,4は、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明5について
本件発明5と引用例発明12とを対比すると、上記5-2.(2)で述べたように、両者は、相違点1-5、2-5で相違している。
これら相違点1-5、2-5については、上記5-3.(2)で本件発明2について検討した相違点1-2、2-2にそれぞれ対応すると認められるものであり、上記5-3.(2)で検討した相違点1-2、2-2についてと同様の理由により、これら相違点1-5、2-5を兼ね備える構成を有することについては、甲第1〜4号証の記載から導き出せるとはいえない。
よって、本件発明5は、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(5)その他
上記の検討に加え、平成16年3月16日に提出された刊行物等提出書の内容についても検討したが、本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由は見当たらない。

6.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によって本件発明1〜5についての特許を取り消すことはできず、他に本件発明1〜5についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弾性複合体とその製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱圧着性を有するポリオレフィンエラストマーを溶融状態で押出し、冷却した後の緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等程度の伸長性は有するが、伸長回復性は持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを圧着し、さらに溝を有するロール間を通過させてストランド状の強圧着部を形成し、シートの長さ方向(MD)に連続的に、シートの横方向(CD)に不連続的に結合することを特徴とする弾性複合体の製造法。
【請求項2】 緩和状態のシート状の弾性体と、伸長されたひだを形成されているシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とからなり、前記弾性体は前記シート状基材にシートの長さ方向(MD)に連続的に結合してなり、横方向(CD)には不連続性をもって結合されてなることを特徴とする弾性複合体。
【請求項3】 請求項2において、弾性部材の長さ(P)と、ひだの部分を含む基材の全長(Q)との関係がQ/P≧1.5である弾性複合体。
【請求項4】 請求項3において、ひだを有する前記シート状基材が、弾性体を芯材としてその両面に形成されている弾性複合体。
【請求項5】 緩和状態のシート状の弾性体と、該弾性体と同等の伸長性を有するが、伸長回復性を持たないシート状基材であって、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性よりも少ない不織布からなるシート状基材とを、長さ方向(MD)に連続的に、横方向(CD)に不連続性を持って結合して弾性複合体を形成し、ついでこの弾性複合体を弾性体に前記シート状基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、前記シート状基材に永久変形を生起せしめた後、伸長を緩和することを特徴とする弾性複合体の製造法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シート状弾性体と不織布の如きシート状基材とを複合させて、特にオムツ等の使い捨て商品に適用して好適な弾性複合体とその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
肌着類、靴下類等の日用品、使い捨てオムツのウエスト部、股部、伸縮性包帯、外科用ガウンの袖口等には、人体への密着性を増強、改良するために各種の弾性体が使用されている。これらには、天然ゴム、合成ゴム、ウレタン樹脂等の素材を、糸状、フォーム状、フィルム状、ネット状の形態で、しかも人体への直接接触を避けるために、織物、不織物、糸でカバリングされた状態で使用されているのが一般的である。
【0003】
一般に使い捨て商品に用いるためには、価格が安く、大量高速生産に適応するための作業性にすぐれ、しかも乳幼児の敏感な肌に対して厳しい安全性を要求される極めて商品設計上難度の高い素材が求められる。
【0004】
上記のような目的に使用される従来技術としては次の三つが知られている。
【0005】
(1)いわゆるStretched Bonded Laminateという方法であって、図19で示したような工程からなっている。すなわち、まず弾性体を伸長し、その伸長した緊張状態で、熱、超音波、接着剤等により素材と結合して結合体とし、その結合体の緊張をとり除き緩和状態にすると、ひだのよった弾性複合体が得られる。現在市販されている使い捨てのオムツ等の腰部、股部に適用されている弾性体は殆どがこの方法によって製造されている。
【0006】
(2)熱収縮によって弾性を発揮させる方法であって、図20で示したような工程からなっている。すなわち、熱収縮性を有する潜在弾性体と非伸長性素材とを超音波、接着剤等により結合したのち、その結合体を無緊張状態で熱雰囲気で処理することにより、ひだのよった弾性複合体を得る方法である。この方法によるものとしては腰部の弾性体として一部市販されている。
【0007】
(3)特開昭59-59901号によって提案されている方法であって、図21に示したような工程からなっている。すなわち、緩和状態にあるネット状の弾性体と、PE、EVA含有フィルム等の伸長性の相対的に低い非伸長性基材とを、部分的、不連続的に結合し、その部分結合体を必要な程度まで基材の許容伸度の範囲で高い緊張下で伸長すると、基材部分の非結合部が結合部に比較してより大きな永久変形を起こしながら伸長される。このような伸長結合体を緊張を取り除き弾性体部を緩和状態にすると、伸縮性を有する弾性複合体が得られる。このものは弾性包帯バンド等に応用されはじめているが、均一な弾性複合体を得るには伸縮度が比較的少なく、シートの長さ方向に伸縮性を有する素材を製造するには工業的に優れた方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記第3の方法の改良に関するものであって、用いる素材の選択と結合条件の最適化によって、弾性体を工業的に安価に得られるようにし、かかる弾性体を用いて新規な複合弾性体を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、まず緩和状態のシート状弾性体と、伸長されていない、あるいはひだを形成していないシート状素材とからなり、前記シート状基材は、長さ方向(MD)の伸長性が横方向(CD)の伸長性より少ない不織布からなり、かつ、前記弾性体は前記基材にシートの長さ方向(MD)には連続的に結合されてなり、横方向(CD)には不連続性を持って結合されてなり、かつ前記基材は横方向の伸長性を有するが、伸長回復性は持たないものであることを特徴とする弾性複合体並びにその製造方法である。
本発明はさらに、緩和状態のシート状の弾性体と伸長されたひだを形成されているシート状基材とからなり、前記弾性体は前記基材にシートの長さ方向(MD)に連続的に結合してなり、横方向(CD)には不連続性をもって結合されてなることを特徴とする弾性複合体である。かかる弾性複合体は最初に述べた弾性複合体を弾性体と基材の切断、破壊を生じない範囲で伸長限界まで伸長して、基材に永久変形(ひだ)を生起せしめた後、伸長を緩和することによって製造することができる。
【0010】
本発明の構成要素は、まず第一は弾性複合体を構成する素材である弾性体と基材に関してであり、第二はその構成素材の結合状態に関してであり、第三は弾性複合体の伸縮性を最適化するための伸長条件に関してであり、第四は得られた弾性複合体の機能、性能に関するものである。まず第一に構成素材であるシート状弾性体とシート状基材について説明する。
【0011】
まず第一に本発明に用いるシート状弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム等の薄層シート、ポリウレタンフィルム、ポリウレタンメルトブローン不織布、スチレンブタジエン・ブロックポリマーフィルム、ポリオレフィン系エラストマーフィルム等のシート状弾性体が使用可能であるが、コスト基材との接着性等から考えると、EVA、超低密度のLLDPE、エチレン・プロピレンエラストマー、エチレン・メチルアクリレートエラストマー等のポリオレフィンエラストマーの単独あるいはこれらの合成ゴム、スチレンエチレンブタジエン・スチレンブロックポリマー(SEBS)のブレンド体あるいはポリウレタン系エラストマーと、ポリオレフィン系エラストマーとの共押出しフィルム等が望ましい。これらのポリオレフィンエラストマーの特徴は樹脂コストも安く、溶融押出し成形も容易で、工業的に極めて安価に製造される素材である。後述する基材との接合も、熱圧着、超音波接着等により接合性も極めて良好である。しかも重要なことは、これらポリオレフィン系エラストマーは単独フィルムでは極めて使用しにくい素材である。すなわち融点も低く、エラストマーの性質によりいわゆる自己接着を起し易く、もし単独フィルムを形成し巻取状態のロール状フィルムを得ても、室温下で容易に自己接着を起こし、安定巻出しを行うのは極めてむずかしい。もしこれを可能にするためには、シートの成形、巻取時も、保存、移送、保管状態を30℃以下の低温下で行う必要があり、単独フィルムで扱うのは極めて難度の高い素材であり、そのため消費者商品に用いることがむずかしい素材と考えられてきた。
【0012】
ところが、本発明のような不織布との複合体とすることによって、これらのハンドリング上の問題も解決されると同時に、きわめて優れた性能をもった弾性複合体が得られることが判明したのである。なお本発明に用いられる弾性体は高分子の配向しやすいシート方向の弾性は必要でなく、横方向の弾性のみがあればよく、この意味でも生産上のメリットは益々強調される。
【0013】
本発明に用いられる基材の性能としては、まずCD方向の伸度の高い素材であることが必要である。いわゆるMD方向とCD方向の異方性すなわちMD方向は伸度が少なく、方向安定性に優れ、CD方向は伸度が大きく変形し易い不織布が望ましい。
【0014】
図1にかかる不織布基材の伸長方向別とCD方向に伸長した状態を示す。又、図2には本発明に望ましい基材の強度、伸度曲線をモデル的に示す。
【0015】
表1には不織布の典型的な例を示す。
【0016】
◎ 【表1】

【0017】
この表1の中、番号c,dに示すものが、相対的にMD方向に配向している不織布である。パラレルカードウェブを高圧水流により結合してなる不織布、フィラメント、トウを分織してなる不織布は上述のような性質をもち、本発明の基材として使用可能である。反対に、MD,CDの方向差の少ないランダム性の高い不織布、例えば溶融紡糸になるスパンボンド不織布、クロスラッパーウェブによって形成された不織布等の不織布はCD方向が安定していて、本発明の目的にはそぐわない。
【0018】
特に上述の不織布の中では伸度が大きくしかも強度もあるねばりのあるタフネスの高い不織布である水流交絡法によって得られる不織布が適している。特に必要なCDの伸度については、少なくとも100%以上(2倍)好ましくは150%(2.5倍)以上の破断伸度を持つことが望ましい。不織布の原料繊維としては、好ましくは水濡れの少ない、肌に対する刺激性も少なく安全性を持った疎水性繊維であるPE,PP,PET等の1.5d〜3dの合成繊維ステープルが望ましい。
【0019】
第二の重要な要件である基材と弾性体の結合状態について詳細に説明する。基材と弾性体とは図3の斜視図、図4の断面図に示したように、弾性体と基材とはシートのMD方向には連続的に結合(A部)されており、シートのCD方向には不連続性を持って結合(B)されていることが必要である。結合部Aは基材と弾性体との接合部で、この部位は基材と弾性体の固定部であると同時に、基材による弾性体の強度補強が行われている。非結合部Bは基材と弾性体とが接合していないか、接合が行われていてもA部に比較してB部は弱い接合状態になっていることが必要である。B部は後述する伸長操作によって伸長する部分であり、A部は伸長によって離れないような安定結合状態になっていることが必要であるが、B部は伸長性をできるだけ阻害しない状態であることが必要である。
【0020】
接合方法については、基材と弾性体との結合性にすぐれた粘着剤でストランド状に結合処理することもよいが、超音波、熱圧着を用いることによって、価格上、生産工程上は有利である。最も好ましい方法としては、弾性体の製造工程時に不織布との結合を完了する方法で、その方法とは例えば図5のフローチャートに示すように、弾性体としての原料エラストマー樹脂▲1▼の溶剤押出▲2▼、冷却ロール▲3▼によるフィルム形成時に基材としての不織布▲4▼を合体させ、その後グリッドロールを通過させて、グリッド部の圧着強化▲5▼〜▲6▼により、グリッド部が結合部Aに変換される。その際、グリッドロールは加熱状態にすることも有効である。ついで巻取▲7▼って製品とする、AとBとの存在比、望ましい状態については後述する。図6はこの製造装置の概念図である。
【0021】
第三の重要な要件である弾性体と基材との結合体を伸長して如何に良好な弾性複合体を発現させるかについて詳細な説明をする。本発明になる弾性複合体の伸縮性能は弾性体と基材の伸長度の大きさによってきまってくる。この原理を図7、図8によって説明する。ここで伸長限界点を破断伸度に至る直前の伸長度と定義すると、もし弾性体の伸長限界点が200%、基材となる不織布の伸長限界点が100%とすると図7のように弾性複合体は100%以上は伸長できないし得られる弾性複合体は100%以内での範囲の伸縮弾性を持つことになる。
【0022】
もし弾性体の伸長限界点が200%、基材となる不織布の伸長限界点が250%とすると図8のように弾性複合体は200%の伸縮弾性を持つことになる。従ってより望ましい弾性複合体を得るためには弾性体、基材の最適な選択、その伸長条件が如何に重要かがわかる。図9は弾性体の物性と基材の物性とその結合複合体の物性と伸長限界点の関係をモデル的に示したものである。
【0023】
一般に弾性体として使用されている伸長度は50%〜200%(1.5倍〜3倍)の範囲であり50%未満では伸長度としては不充分であり、一方弾性体として500%以上の破断伸度を持つものも多いが、伸縮回復性を考えると実用に供せられる伸度範囲は280%、より好ましくは250%以下である。
【0024】
伸長限界点は基材の伸長限界点と弾性体の伸長限界点を比較して、数値の低い方の伸長限界点で弾性複合体の伸長限界点がきまる。したがって伸縮弾性をできるだけ高くするためには弾性体の性能を目一ぱい生かす必要があり、基材のCD方向の伸長性を高くする理由がここにある。図9の例では基材の伸長限界点の225%が弾性複合体のもつ限界能力であることになる。然しのこのような潜在能力も伸長度を低くすれば図10に示すように100%しか伸長しなければ100%以内の伸縮弾性、150%の伸長すれば150%以下の伸縮弾性、伸長限界点である225%伸長できれば225%以下の伸縮弾性を有することになる。
【0025】
第四は上述のようにして得られた本発明になる弾性複合体を、使捨てオムツの腰部弾性体、股部弾性体等により効果的に使用するには、どんな配慮が必要かについて説明する。期待される効果を発揮するためには複合化によって弾性体と基材の持つ効果が相乗的に高められなければならない。
【0026】
まず▲1▼重要な効果の1つは基材による弾性体のカバリング効果であり、不織布のソフトな感触と安全性により、人体の皮膚面に対する化学的、物理的刺激を軽減することができる。▲2▼期待される効果は、複合化による結合部の存在によって弾性体が強化、安定されることである。しかし結合部(A)が多くなれば複合化の強度は増大していくが、一方伸縮弾性は低下することになる。そこで図11に示したように結合部(A)の数値と結合部(A)と非結合部(B)との割合即ちA/(A+B)×100(%)を適切にする必要がある。Aは0.5m/m以上の幅が必要であり、好ましくは1m/m〜10m/m、更に好ましくは2m/m〜5m/mである。0.5m/m以下では簡単に切断、分離を起こしやすい。またA/(A+B)×100(%)で示される割合は50%以下にすることが必要であり、好ましくは40%〜50%を越えると複合弾性体としての伸縮性がいちぢるしく低下することになる。更に期待される効果として取扱い、加工上の安定化に寄与することである。弾性体は工程上のテンションの影響を受けやすい、また巻取り、巻出し等の取扱いが極めてむずかしい、特に融点の低いポリオレフィンエラストマーの場合には自己接着を起こしやすく、工業的取扱いが非常に難しい。しかし不織布との複合体にすることによってこれらの問題はすべて容易に解決ができる。
【0027】
弾性複合体の形状としては、図12、図13のように両側に基材を結合した、サンドイッチ状のものも可能であり、図12は一枚フィルム状の弾性部材に対して両側に基材を結合させたものであり、図13は弾性複合体を弾性部材面で重ね合わせたものである。これらのサンドイッチ状弾性複合体も極めて良好な伸縮弾性を示す。
【0028】
以下実施例を用いて説明する。
【0029】
【実施例】
実施例1
弾性体として日本ユニカ製ポリオレフィンエラストマー(E.V.Aと合成ゴムの共重合体)PFB-75を50m/min.で溶融押出し形成し、40g/m2の弾性フィルムを得た。このフィルムの25℃に於ける破断伸度MD180%、CD580%であった。5回のサイクルテストの結果ではCD方向で250%以内であれば、応用緩和はあるものの良好な弾性回復性を示した。このフィルムを連結的に巻取1000mの巻取ロール2本を作成した。巻取ロールは2本とも巻取直後は再巻出し可能であった。1本は35℃の室温時に一昼夜放置した。もう1本は20℃の冷室に一昼夜放置した。20℃の室温のものは再巻出し可能であったが35℃の室温に放置したものはフィルム間で自己接着を起こし巻出しは不能となっていた。
【0030】
一方不織布基材として、表1のようにa.スパンボンド、b.サーマルボンド、c.水流結合、d.トウ開織の4種類用意した。その各不織布の物性は表1に示したとおりである。
【0031】
図14の第一ステップに示したような工程に従ってまず弾性部材として上述と全く同じ条件でエラストマーフィルムを溶融押し出しを行い、フィルム成形後に上記4種類の不織布とフィルムを重ね合わせて線圧0.5kg/cmで加圧を行なった。プレスロールはフィルム側にテフロン・表面加工ロール、不織布側はクロムメッキロールであった。圧縮後は巻取りロールを作成した。巻取直後は問題なく、巻出し可能であった。このロールを35℃の室温中に一昼夜放置した。この場合は若干巻出し荷重は増加したものの、安定な巻出しが可能であった。得られた圧搾シートは不織布と弾性フィルムが仮接着状態を示し、常態では分離せず、一体化シートとして取扱いできる程度に接合し、剥離しようとすればフィルム不織布に損傷が起こらない程度に分離できる程度であった。
【0032】
上記4種類の不織布と弾性部材を上記条件下で図14の第一ステップの工程を通過させた仮接着状態の合体物の性能は表2のとおりである。即ち不織布a、不織布bの合体物は殆ど伸縮弾性は示さなかった。不織布c、不織布dは破断に至るまえに100%前後の伸長時から不織布、フィルムの2層に相分離を生じてしまった。
【0033】
◎【表2】

【0034】
一方実験として不織布cの場合に加圧ロールとして100℃の加熱ロールを用意し、不織布側から熱を与えながら通過させたところ不織布とフィルムは完全に接着し、破断に至るまで相分離は起きなかったが、弾性体の伸縮弾性は殆ど喪失してしまった。
【0035】
次に上記の第一ステップのプロセスから得られた合体物のうち、不織布c、不織布dについて図15のステップ2のプロセスを通過させた。即ち、図16で示したようなロール円周方向に満切りをしたロール(グリッドロール)を100℃に加熱し、下部にシリコンゴムロールを組合せ、加熱ロール側に不織布が接するようにして線圧0.5kg/cmで30m/min.の速度で通過させたところ、溝の部分が完全に接合され他の部分は疑似接着状態になっている複合弾性体が得られた。その特徴を表2の右に示した。この結果わかるように弾性フィルムと不織布c、不織布dをグリット加工して得られた弾性複合体は良好な伸縮弾性を示した。
【0036】
実施例2
不織布基材として表1の不織布Cを用意し、弾性部材として東燃化学製ラブレーズ樹脂を用い(E.V.A.SRRの共重合体)の製造工程中に図5に示すような工程を組込み、35μのラブレーズフィルムを溶融押出ししながら不織布と合体圧縮したのち、スチーム加熱装置を内部に備えた山の突起部の幅2m/m、グリットとグリットの谷部の間隔10m/m、深さ1m/mの直径200m/mのクロムメッキした溝つきロールとシリコンゴムの組合わせプレスの間を、不織布、弾性部材の圧着物を100℃、30m/minの速度で通過させた。グリッドロールの面には不織布面を接触させた。これにより得られた弾性複合体は溝部分は完全に接着されていた。本弾性複合体は200%溝方向に伸長させたのち、緊張を緩和させたところグリット部はフィルムと不織布は結合されたままであるが、他の部分はフィルムと不織布が分離し不織布部分がひだ状になった伸縮性良好な弾性複合体が得られた。この弾性複合体を再度約180%に引き伸ばしたのち、フィルム部分と図17のように市販紙おむつのウェスト部分の不織布面と貼り合わせたところ、伸縮性のすぐれたウェストギャザーを持った紙おむつが得られた。
【0037】
その結合部断面構造は図18のようであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、特に使い捨てオムツ等の腰部や股部に適用して好適な弾性複合体であって、伸縮度が大きくしかも安定していて、しかも肌にやさしいものであり、かつ、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明基材に好適な不織布の伸長についての説明図である。
【図2】
本発明基材の強度、伸度の関係を示すモデル曲線である。
【図3】
本発明における基材と弾性体の結合状態を示す斜視図である。
【図4】
本発明における基材と弾性体の結合状態を示す断面図である。
【図5】
本発明の製造工程の概念を示す工程図である。
【図6】
本発明の製造法に適した装置の概念図である。
【図7】
本発明の弾性複合体の伸長により弾性を発揮することの説明図である。
【図8】
本発明の弾性複合体の伸長により弾性を発揮することの説明図である。
【図9】
本発明の基材、弾性体、同複合材の物性と伸長限界点のグラフである。
【図10】
本発明の弾性複合体の伸長限界の説明図である。
【図11】
本発明における弾性体と基材の結合部、非結合部の関係の説明図である。
【図12】
本発明の複合弾性体の一例の説明図である。
【図13】
本発明の複合弾性体の他の例の説明図である。
【図14】
本発明の実施例の第一ステップの説明図である。
【図15】
本発明の実施例の第二ステップの説明図である。
【図16】
本発明の製造法に用いる加熱ロールの説明図である。
【図17】
本発明の他の実施例に用いたオムツの説明図である。
【図18】
実施例2の断面構造の説明図である。
【図19】
従来例の一例の説明図である。
【図20】
従来例の他の例の説明図である。
【図21】
従来例の他の例の説明図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-26 
出願番号 特願平4-26818
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B32B)
P 1 651・ 531- YA (B32B)
P 1 651・ 534- YA (B32B)
P 1 651・ 113- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川端 康之  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 菊地 則義
鴨野 研一
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3331221号(P3331221)
権利者 株式会社日本吸収体技術研究所
発明の名称 弾性複合体とその製造法  
代理人 酒井 正己  
代理人 加々美 紀雄  
代理人 加々美 紀雄  
代理人 小松 純  
代理人 小松 純  
代理人 酒井 正己  
代理人 小松 秀岳  
代理人 小松 秀岳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ