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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1107869
異議申立番号 異議2003-70765  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-24 
確定日 2004-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3326538号「コールドウォール形成膜処理装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3326538号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第3326538号の発明についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成4年10月23日(優先日:平成3年10月24日、出願番号:特願平3-305347号)の出願であって、平成14年7月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、本橋俊弘より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月26日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否について

1.訂正の内容
(1)訂正事項a
本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載について、「クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置。」とあるのを、「クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0008】の記載について、「クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去する構成とした。」とあるのを、「クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去する構成とした。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明の構成に欠くことができない事項である「前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置」を、「クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置」に限定したものであり、しかも、「クリーニングガスのプラズマを生成することなく」という点については、特許明細書の段落【0010】、【0023】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、特許明細書又は図面の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について

1.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1〜6号証を提出して、訂正前の請求項1〜7に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、これを取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開平2-185977号公報
甲第2号証:特開平3-252130号公報
甲第3号証:特開平3-243688号公報
甲第4号証:特開平1-231936号公報
甲第5号証:特開平3-31479号公報
甲第6号証:特開平4-280987号公報

2.本件発明
本件特許第3326538号の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」という。)は、平成16年4月26日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 真空可能な処理容器と、
前記処理容器内で被処理基板を載せて支持する基板設置台と、
成膜処理工程において前記被処理基板を前記基板設置台を介して加熱する加熱手段と、
成膜処理工程において成膜用の所定の処理ガスを前記基板設置台と対向する多孔板を介して前記処理容器内に供給する処理ガス供給手段と、
クリーニング工程においてClF3を含むクリーニングガスを前記多孔板を介して前記処理容器内に供給するクリーニングガス供給手段と、
成膜処理工程およびクリーニング工程の各工程において前記処理容器内を所定の真空度に維持しつつ前記処理容器内のガスを所定の排気路を介して排出する真空排気手段とを有し、
クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項2】 前記基板設置台の材質は石英であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項3】 前記基板設置台の材質はアルミナ(Al2O3)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項4】 前記基板設置台の材質は炭化シリコン(SiC)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項5】 前記基板設置台の材質は窒化アルミニウム(AlN)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項6】 前記クリーニング工程において前記真空排気手段が前記処理容器内を1〜50Torrの圧力に排気することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコールドウォール形処理装置。
【請求項7】 前記クリーニング工程において前記クリーニングガス供給手段が前記処理容器内にClF3とN2とを含むエッチングガスをN2の流量に対するClF3の流量の比が0.2以上となる流量で供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコールドウォール形処理装置。」

3.本件発明1〜7についての判断の基準日
本件発明1〜7の構成に欠くことができない事項である「クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去する」点は、国内優先権の主張の基礎とされた先の出願(特願平3-305347号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項ではないから、本件発明1〜7は、国内優先の利益を享受することができず、現実の出願日である平成4年10月23日を基準として特許法第29条第2項に係る判断をする。

4.当審で通知した取消理由において引用した各刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開平2-185977号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平3-252130号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平3-243688号公報(甲第3号証)
刊行物4:特開平1-231936号公報(甲第4号証)
刊行物5:特開平3-31479号公報(甲第5号証)
刊行物6:特開平4-280987号公報(甲第6号証)
刊行物7:特開平3-228317号公報
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、第1、4図とともに以下の事項が記載されている。
(1-a)「(イ)産業上の利用分野
本発明は、半導体、太陽電池、感光体ドラム等の製造に使用されるプラズマCVD装置、熱CVD装置、光CVD装置に代表されるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、及び超電導材料、絶縁材料、金属材料等の製造に利用されるスパッタ装置や蒸着装置に代表されるPVD(Physical Vapor Deposition)装置等の膜形成用真空装置に関する。」(第1頁左下欄最下行〜右下欄第8行)
(1-b)「(ハ)発明が解決しようとする課題
しかしながら、上記湿式洗浄化方法にあっては、真空容器を一旦大気圧まで戻す必要があり、且つ、洗浄後には大気圧となった真空容器の真空度を再び元の状態にまで戻すために、ベーキング等が必要であり、非常に手間がかかる。
また、上記乾式洗浄化方法によれば、真空状態を破ることなく洗浄化が行える点で、上記湿式洗浄化方法より作業性の点で優れてはいるものの、洗浄性が弱く、かつ洗浄ガスの導入が薄膜形成用の原料ガスを導入するために設けられた導入口から行われるために、洗浄のために導入される洗浄ガスを最適な状態で真空容器内に導入することができるとは言えず、従って、例えば最適なプラズマ領域が形成されず、プラズマ領域から遠く離れた位置にある電極、薄膜形成用基板の固定台の裏側あるいは真空容器内壁部分等の洗浄を十分に行うことはできない。」(第2頁左上欄第12行〜右上欄第9行)
(1-c)「(へ)実施例
第1図は本発明の第1実施例としてのプラズマCVD装置を示す概略的断面図であり、(1)は真空容器、(2)(3)は一対の平行平板型の放電電極であり、一方の放電電極(2)の他方の放電電極(3)と対向する面には、多数の小孔が穿たれており、他方の放電電極(3)は、アースに連結され、また図示していないがヒータ及び薄膜形成用の基板を保持する基板ホルダが配設されている。(4)は薄膜形成用の原料ガス導入口であり、放電電極(2)に連結されており、原料ガスは放電電極(2)の小孔より真空容器(1)内に導入される。(5)は放電電極(2)に接続された高周波電源、(6)は真空容器(1)内を排気する排気口、(7)は真空容器(1)の上下に設けられた洗浄ガス導入用の専用導入口である。
この装置において、アモルファスシリコンの形成を行い、その結果、真空容器(1)の内壁等に黄褐色のパウダー状の生成物が多量に堆積した状態のものを洗浄して除去するに当り、専用導入口(7)より、ClF、ClF3、ClF5、等のハロゲン間化合物、又はBF2、NF3、PF3、等の無機フッ素化合物を含む洗浄ガス、例えばArベースの5%ClF3ガスを300SCCMの流量で真空容器(1)内に導入しつつ真空容器(1)内の圧力を10Torrに保持すると共に、基板ホルダの温度を200-300℃、真空容器(1)の内壁ヒータ(図示しない)の温度を200-300℃及び高周波電力を1W/cm2として、1時間の洗浄を行った。その後、H2ガスにて真空容器(1)内のパージ、真空引きを数回繰り返した。
この洗浄後、真空容器(1)を大気圧に戻して、真空容器(1)内の観察を行ったところ、真空容器(1)内のあらゆるところに堆積していたアモルファスシリコン及びパウダー状の生成物は完全に除去されていることが明かとなった。」(第2頁左下欄第2行〜右下欄第17行、第1図)
(1-d)「比較のために、本発明者等は、洗浄ガスを原料ガス導入口(4)より真空容器(1)内に導入し、その他は上記洗浄条件と同じ条件にて真空容器(1)内の洗浄を行ったところ、プラズマの届かない放電電極(2)(3)の裏面側や真空容器(1)の内壁部分に、反応生成物が堆積したままの状態で残っていた。」(第2頁右下欄下から3行目〜第3頁左上欄第4行)
(1-e)「第4図は本発明の第4実施例としてのホットウォール型減圧CVD装置を示しており、真空容器(1)は石英ガラスからなるボトル状をしており、この外壁には図示していないが加熱手段が配設されている。また、原料ガス導入口(4)は真空容器(1)内に挿入されたノズル状である。更に、洗浄ガス導入用の専用導入口(7)は原料ガス導入口(4)及び成膜が施される基板(11)を保持する基板ホルダ(12)を挟むような配置で真空容器(1)の内部に配されたオリフィス付きノズルからなる。この専用ガス導入口(7)はノズルの形状が基板ホルダ(12)の回りを取り囲むように螺旋状とされると効果的である。
斯る装置において、多結晶シリコン膜を10数回にわたって形成した後、100%のClF3ガスを圧力350Torrの状態に真空容器(1)内に封入した状態で30分間洗浄を行ったところ、良好な洗浄結果を得ることができた。」(第3頁左下欄第10行〜右下欄第7行、第4図)
(1-f)「尚、洗浄ガスは専用導入口からのみ導入することに限らず、同時に原料ガス導入口等他のガス導入口から導入してもよい。」(第4頁左上欄第7〜9行)
(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には、第1図とともに以下の事項が記載されている。
(2-a)「ウェーハの気相成膜の前工程として清浄なSi表面を露出させる気相エッチングにおいて、装置系内に十分なN2ガスを流して炉内の水分、O2を除去した後、1000ppm以下の稀薄なClF3ガスをエッチングガスとして導入し、外部加熱することなく気相エッチングすることを特徴とするウェーハの気相エッチング方法。」(特許請求の範囲)
(2-b)「この発明は、ウェーハに気相成膜する際の前処理としで行なわれる気相エッチング方法の改良に係り、エッチングガスとしてハロゲン化弗素ガスを用い加熱することなく気相エッチングすることにより、高温反応時間が短縮されてスリップ発生率が低減し、反応器全体のクリーン化が計られ、パーティクル起因の結晶欠陥を低減できるウェーハの気相エッチング方法に関する。」(第1頁左下欄下から5行目〜右下欄第3頁)
(2-c)「この発明は、熱歪を発生させない温度域でエッチング可能な気相エッチング方法を目的に、エッチングガスについて種々検討した結果、極めて活性なClF3ガスを特定の濃度までN2ガスで希釈して用いると、室温でかつ短時間で気相エッチングでき、さらに微少パーティクルの除去が可能なことを知見し、この発明を完成した。」(第2頁左上欄第9〜15行)
(2-d)「ClF3ガス濃度は、エッチング反応による発熱とN2ガスの熱排除能力を考慮して定めるが、希釈されたガスでも反応温度が100℃以上になると、炉内で用いられるSUS403、SUS316のステンレス鋼材や、サセプターのコート材であるSiCの内でアモルファス部が激しくエッチングされて好ましくないため、100℃以下で反応させる必要があり、ガス濃度は1000ppm以下とし、また、炉内で部分的に発熱することを考慮し、反応温度が室温程度となるよう100ppm以下の濃度でエッチングするのが最も好ましい。」(第2頁右上欄第12行〜左下欄第2行)
(2-e)「第1図は、この発明による気相エッチングを含む気相成膜の工程図である。
ClF3ガスは、強いエッチング力を有するため、室温で充分な効果を示す。従ってClF3ガスの気相エッチングは、第1図に示す如く加熱なしで行なわれる。
まず、多量のN2ガスを流し、炉内の水分、O2を除く。水分等が残留するとClF3ガスの分解反応が起こり、気相エッチングのコントロールが困難となる。
充分なガス置換が行なわれたのち、1000ppm以下の稀薄なClF3ガスを導入する。エッチング速度は量との関数となるため、濃度を適宜選定する必要がある。
また、ClF3ガスによる気相エッチング反応は、強い発熱をともなうため温度分布が生じやすいため、均一なエッチングを行なうには、十分稀薄なClF3ガスの使用が望ましい。
エッチングは以下の反応式で行われる。
Si(固)+2ClF3(気)→SiF4(気)↑+2ClF(気)↑
気相エッチング終了後、N2ガスで充分ガス置換を行なう。ClF3ガスが残留すると、水素導入に伴い分解を起こし塩酸と弗酸を生じさせる。石英ベルジャーの弗酸への耐食温度は100℃と低温である。従って、装置の安全上充分な置換が必要である。」(第2頁左下欄下から6行目〜第3頁左上欄第2行、第1図)
(3)刊行物3の記載事項
刊行物3には、第1、2表とともに以下の事項が記載されている。
(3-a)「(1)ClF、ClF3、ClF5のうち、少なくとも1種以上を含有するフッ化塩素ガスをSiOX(1≦X<2)と接触させることを特徴とするフッ化塩素ガスによるSiOXのクリーニング方法。
(2)請求項(1)記載のフッ化塩素ガスによるSiOXのクリーニング方法において、室温以上でフッ化塩素の分圧が50torr以上でかつ空搭速度が20cm/min以上の条件による流通方式で行うことを特徴とするフッ化塩素ガスによるSiOXのクリーニング方法。
(3)請求項(1)記載のフッ化塩素ガスによるSiOXのクリーニング方法において、100℃以上でかつフッ化塩素の分圧が760torr以上の条件による静置方式で行うことを特徴とするフッ化塩素ガスによるSiOXのクリーニング方法。」(特許請求の範囲)
(3-b)「[産業上の利用分野]
本発明は、単結晶シリコン製造装置内等に発生するSiOX組成の堆積物または付着物を、フッ化塩素系のガスを用いてクリーニングする方法に関するものである。
[従来技術]
従来より半導体製造等の薄膜形成プロセス、すなわちCVD、真空薫着、PVD、シリコンエピタキシー等においては、薄膜を形成すべき目的物のみでなく装置部部材、各種治具等にも多量の堆積物、付着物が生成することが知られているが、シリコンの単結晶を製造する装置においても容器からの由来と考えられる酸素により、同様に必ずしも組成のはっきりしないSiOX組成の組成物や付着物が生成する。
従来は、上記SiOX組成の堆積物を除去する手段としてアルカリ等による洗浄しか有効でないとされており、アルカリ溶液を使用した湿式のクリーニング法が実施されていた。
しかし、アルカリ等による洗浄においては長期間装置を停止する必要があるほか操作が煩雑で、装置、治具自体が損傷を受けやすいという問題点があった。」(第1頁右下欄第1行〜第2頁左上欄第3行)
(3-c)「本発明で使用するガスは、ClF、ClF3、ClF5であり、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよいが、ClF3を単独で使用するか、または主成分として使用するのが好ましい。また、これらフッ化塩素ガスはそのまま装置内に導入してクリーニングを行つてもよいが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで希釈して用いてもよい。」(第2頁右上欄第8〜15行)
(3-d)「室温においてフッ化塩素ガスの圧力が50torrより低いか、または空搭速度が20cm/min未満の場合は、最初はガス化反応が進行するが、次第に表面がSi02に変化し、反応は停止してしまうため、温度をさらに上げる必要がある。しかし、反応の温度が上がるに従い、必要なフッ化塩素ガスの圧力または空搭速度も低下する。
一方、フッ化塩素ガスを装置内に封入する静置方式においては、材料表面にフッ化塩素ガスが供給されにくいためガス圧力および反応温度を高く設定する必要があり、温度100℃以上でかつフッ化塩素分圧760torr以上で初めてガス化反応が進行する。上記条件を満たさない場合は、Si02が生威し、反応は進行しない、ただし、温度が上がるに従い、必要なフッ化塩素ガスの圧力は低下していく。
上記した条件では雰囲気温度が余り高くないため、装置材料は殆ど腐食せず、装置自体を傷つけることなしにクリーニングを行うことができる。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第12行)
(3-e)「[実施例〕
以下、実施例により本発明の詳細な説明する。
実施例1〜6、比較例1、2
シリコン単結晶製造装置内で発生したSiOX組成(x=1.3)の堆積物を採取したちの0.2gをニッケル製の容器に入れ、この容器をパイレックスガラス管(直径50mm、長さ700mm)内に設置した。
但し、実施例6だけはSiOXの組成は(x=1.7)である。次に、ガラス管の両端は、SUS316製でガスが導入できるように導入口を有する金属製容器で密封されている。このガラス管の周囲に管状電気炉を設け、反応温度を任意に設定できるようにした。
次に、ClF3ボンベとArボンベからガラス管内に混合ガスが導入できるようガス管を設置し、出口より排気ポンプで排気しながら所定の圧力、流量でClF3ガス単独かまたはArとの混合ガスをガラス管に導入し、2時間反応を行つた。結果を第1表に示す。
この結果より、室温でもClF3の分圧が50torr以上、流量が20cm/min以上であれば、サンプルを完全にガス化させ、クリーニングできることがわかる。
実施例7〜11、比較例3、4
実施例1〜6と同じ装置を使用し、同じ組成のSiOX(x=1.3)を使用してクリーニングを実施したが、ガラス管の出口はバルブを閉し、所定の圧力になるようClF3単独またはArとの混合ガスを封入して2時間保ち、反応状態をチェックした。結果を第2表に示す。この結果より、温度が100℃以上、分圧が760torr以上であればガス化が進行し、クリーニングできることがわかる。」(第2頁右下欄下から4行目〜第3頁右上欄最下行、第1、2表)
(4)刊行物4の記載事項
刊行物4には、第1〜6図とともに以下の事項が記載されている。
(4-a)「三フッ化塩素ガス(ClF3)をプロセスチューブ内に供給し、
上記ガスを用いてプロセスチューブ内をドライエッチングして洗浄することを特徴とする反応炉システムの洗浄方法。」(特許請求の範囲)
(4-b)「(従来の技術)
反応炉例えば半導体ウエハを熱処理反応さぜるCVD、拡散炉等では、プロセス中にウエハ以外の反応容器等に反応生成物が付着し、これをそのまま放置しておくとコンタミネーシヨンの発生をまねき、半導体製品の歩留まりが悪化するので、定期的に反応管等を洗浄する必要があつた。」(第1頁左下欄下から6行目〜右下欄第1行)
(4-c)「(作用)
ClF3は、プラズマレスでしかも低濃度、低温でのドライエッチングが可能であり、例えば従来のクリーニングガスとしての三フッ化チッ素ガス(NF3)がプラズマの元でクリーニングが可能であるのに対し、ClF3がプラズマレスでクリーニング可能であることから、プラズマによる弊害もなく、またプラズマ発生に必要な電源設備等も要せずに洗浄を実施できる。
また、ClF3結合は、N-F結合に比較して結合エネルギーが小さく、他の物質をフッ素化する能力が極めて高いため、洗浄能力の面でも優れている。
さらに、NF3が化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)によってその供給量が規制を受けるのに対し、本ガスは難分解性を有さ無いため制限がなく、しかもデバイスに悪影響を与えるC、Sなどの元素を含まず、また供給圧力も低圧で良いなどの特性を有する。」(第2頁左下欄第4行〜右下欄第2行)
(4-d)「(実施例)
以下、本発明をシリコン気相エピタキシャル成長装置での実施に適用した一実施例について、図面を参照して具体的に説明する。
この装置は縦型反応炉で、軸方向を垂直軸とするプロセスチューブ1を有し、このプロセスチューブ1は、第2図に示すように、外筒1aと内筒1bとから成り、内筒1bの周面には多数の孔1cが形成されている。また、この内筒1bには、プロセスガスの導入管(ノズルともいう)2aがその下端より上端に向かって挿入支持されており、内筒1b内にプロセスガス等を導入可能となつている。そして、このプロセスガス等の排気としては、前記内筒1bに形成された孔1cを介して外筒1aに導びき、外筒1aの下端に接続されているガス導出管2bを介して排気するようになっている。
前記プロセスチューブ1の周囲には、加熱装置として例えば電気抵抗式ヒータ3を配置している。なお、図示していないが、上記ヒータの周囲には断熱材がこれを包囲するように配置されている。
前記プロセスチューブ1内には、図示しない半導体ウエハを水平状態で、かつ、上下で離間した状態で複数枚配置支持した石英ボート4を、垂直方向に沿って搬入可能であり、また、このボート4の下端には、ボート4を炉芯に位置させるための保温筒5が配置され、この保温筒5を上下動して前記ボート4をプロセスチューブ1に対してロード、アンロードするローダ装置6が設けられている。・・・・
次に、上記プロセスチューブ1へのガス供給系およびガス排気系について、第3図を参照して説明する。
先ず、ガス供給系について説明すると、前記ガス導入管2aに接続されるガス供給管10は、フィルターFを介して例えば5種類のガスが供給可能となっている。この5種類のガスとは2種類のプロセスガス(シリコン気相エピタキシャル成長の場合には、例えばSiCl2とH2)、洗浄用ガスとしてのClF3.その希釈用ガスであるArおよびパージ用の不活性ガスであるN2である。・・・・
ここで、希釈用ガスを必要とする理由は、ClF3を100%とするとエッチングレートが高すぎ、洗浄のコントロールが不能となるためである。なお、希釈用ガスとしては不活性ガスであればよく、その希釈率としては、除去すべき反応生成物の種類およびその膜厚によって適宜選択する必要があり、通常は5%〜25%程度の希釈率として使用する。」(第2頁右下欄第10行〜第3頁左下欄下から5行目、第1〜3図)
(4-e)「次に、上記実施例装置での洗浄方法について説明する。
シリコン気相エピタキシャル成長プロセスは、第4図に示すオペレーシヨンタイム(T)に実行される各種プロセスより実施され、このプロセスについては公知であるので詳述しないが、本発明の洗浄方法は、このプロセスが終了後、例えば200℃〜500℃程度に降温された後にドライエッチングタイム(D)として実行される。・・・・
そして、このような洗浄を実施する場合には、ウエハを搭載しない状態のボート4をプロセスチューブ1内に搬入し、プロセスチューブ1のほか、石英ボート4、保温筒5等も一緒に洗浄することができる。また、本実施例の場合、洗浄ガスを通常のガス供給系を用いてプロセスチューブ1内に導入し、ガス排気系を介して排出しているので、このガス供給系特にノズル2a及びガス排出系をも同時に洗浄することができる。・・・・
スルー方式でない方式を例にとり説明すると、先ず、エッチングすべき石英ボート4等をプロセスチューブ1内にロードした状態とし、供給側のバルブVを閉とし、ガス導出管2bに接続されているロータリポンプR.P、メカニカルブースターポンプM.B.Pを駆動してプロセスチュープ1内を1〜10Torr程度の圧力とする。この後、排出側バルブを閉とし、供給側バルブを開として、(ClF3+Ar)の混合ガスをプロセスチューブ1内に導入する。そして、供給圧力と同圧力となるまでバルブを開のままとし、ガス流入が跡絶えたときにバルブを閉とする。その後、ヒータ3の昇温によつて200°C〜500°Cとしてエッチングを開始する。エッチング終了後は、排出側バルブを開とし、ポンプ駆動によつて排気し、その後、ガス置換を行なうために、真空引きとN2パージとを2回程度繰り返すことで洗浄工程が終了することになる。
なお、このうよな洗浄は、上記シリコン気相エピタキシャル成長装置の反応炉にのみ適用されるものではなく、第5図、第6図に示すように、CVDプロセス、酸化プロセスにも同様に適用することができる。
ここで、この洗浄ガスを用いた洗浄では、そのエッチングレートがエッチング温度とClF3の濃度とにより定まるので、予めシーケンスを組み込んだプロセスコントローラにて、プロセスの種別毎に洗浄条件を事前に設定しておき、このようにしてIN-LINEで洗浄工程を実施することが好ましい。
特に、用いる装置、プロセス(どのような膜をどの程度エッチングするか)により上記温度、濃度を設定する必要があり、したがって、そのような特性を見極めた上で実施する必要がある。」(第4頁左下欄最下行〜第5頁右下欄第2行、第4〜6図)
(5)刊行物5の記載事項
刊行物5には、第1、2図とともに以下の事項が記載されている。
(5-a)「反応管に均熱領域を形成し、この均熱領域に被処理体を設けて熱処理することにより反応管内壁に付着した反応付着物を除去するに際し、上記反応管内を予め定められた真空度に排気した後、反応管内に少なくともClF3等ハロゲン元素化合物を含んだエッチングガスを導入し、充満させて上記均熱領域以外に付着した反応付着物を除去することを特徴とする熱処理方法。」(特許請求の範囲)
(5-b)「(作用効果)
少なくともClF3等のハロゲン元素化合物が含まれたエッチングガスを反応管内部に導入し、充満させるので、反応管内の均熱領域外の内壁面に付着した剥がれてゴミとなる生成付着物質を除去し、ゴミの発生を防止した熱処理方法を得るものである。
従って、プラズマ作用を施すことなく反応付着物を除去することが可能であるため、反応管を取り外すことなく被処理体の熱処理後の適宜のタイミングでクリーニング工程を実行できる。」(第2頁右上欄第3〜13行)
(5-c)「(実施例)
以下、本発明方法を半導体ウエハのバッチ式熱処理工程に適用した一実施例について図面を参照して説明する。
まず、熱処理装置について第2図を参照して説明する。横型反応管(1)からなる処理部(2)と、この処理部(2)内に挿入される多数枚被処理体、例えばウエハ(3)を収納した収納台、例えばウエハボート(4)を予め定められた位置にロード・アンロードするローディング機構(5)とから構成されている。
上記処理部(2)は耐熱性で処理ガスに対して反応しにくい材質例えば石英からなる反応管(1)と、この反応管(1)と同軸的に囲繞される如く筒状加熱機構、例えばコイル状に巻回されたヒーター(6)とから構成されている。・・・・
さらに、上記ガス供給口(9)と接続した配管系には切換え弁(11)を設け、二系統のガスが選択可能に導入するようになつている。即ち、一系統の配管系からは反応ガス、例えばモノシラン(SiH4)と、亜酸化窒素(N2O)を反応管(3)に導入する如く反応ガス供給源(9a)に配管されている。
また、他方の一系統は成膜工程で付着した反応物質をエッチングするガスとして、例えば三弗化塩素(ClF3)と酸素(O2)とからなるエッチングガスを反応管(1)内に導入する如くエッチングガス供給源(9b)に配管されている。」(第2頁右上欄第14行〜右下欄第13行、第2図)
(5-d)「次に、一回の熱処理後または予め定められた熱処理回数の後、反応管(1)の内壁面(13)に付着した剥がれやすいポリ・シリコン(poly-Si)またはアモルファスシリコン(Si)等の付着物質(14)を除去する工程について述べる。先ず、第1図に示すように反応管中を加熱する必要がないので、ヒーター(6)の電源をオフ(OFF)にする。反応管(1)内を気密にするために、ウエハボート(4)を載置させない状態でローディング機構(5)を駆動させてローディング機構(5)を搬入させ、反応管(1)の開口部(8)を蓋体(12)で気密封止する。
この気密封止した反応管(1)内を0.1Torr程度の真空に排気する。上記反応管(1)のガス供給口(9)と接続した配管系の切換え弁(11)でエッチングガス供給源(9b)側を選択する。この供給源(9b)からエッチングガス例えば三弗化塩素(ClF3)ガスと、5%程度の酸素を含んだエッチングガスを常温の上記反応管内に流速、例えば500cc/分で反応管(1)内に導入して充満させる。この時、適当な排気量で排気工程が継続されている。この排気流はエッチングレートと関係して選択が可能である。このエッチングガスの三弗化塩素(ClF3)は反応管(1)の内壁面及びローディング機構に付着したアモルファスシリコン(Si)と接触してエッチングする。このエッチング物は排気と共に反応管(1)外に排出することになる。換言すれば、上記成膜工程において、ウエハ周辺領域(7)では反応管(1)の内壁面(13)にアモルファス(SiO2)が付着するが、均熱領域(7)以外の反応管(1)の内壁面(13)にはポリ・シリコン(poly-Si)やアモルファスシリコン(Si)が多量に付着している。これら均熱領域(7)以外の内壁面(13)に付着した付着物質(14)は三弗化塩素(ClF3)を含むエッチングガス(16)でエッチングして反応管(1)内でのパーテイクルの発生を防止する。この時アモルファス(SiO2)は殆どエッチングされないことから剥がれ易いpoly-Si、アモルファスシリコン(Si)のみが選択時にエッチングされ、パーティクルの発生のみが防止され、均熱部分の温度特性に変化を与えることがない。上記実施例の効果は従来の洗浄方法と比較するとエッチングガスをプラズマ化させ、炭素を分解し、この分解された化合物で反応管(1)内の付着物質(14)を除去するのと異なり、プラズマ生起電源の配設等により温度プロファイルを乱すこともなく、しかも操作が容易である。また、この方法を用いた装置では、プラズマ装置を設ける必要がない。
上記実施例では常温(25℃)で説明したが、高温、例えば25℃〜800℃であつても洗浄可能である。又、縦型炉でも同一の洗浄性能が得られる。」(第3頁右上欄下から2行目〜第4頁第7行、第1図)
(6)刊行物6の記載事項
刊行物6には、第1〜3図、表1、3とともに以下の事項が記載されている。
(6-a)「【産業上の利用分野】本発明は、薄膜形成装置または該装置の治具に堆積した金属、非金属またはその化合物あるいはセラミックスをクリーニングガスと接触させて除去するクリーニング装置に関する。
【従来技術とその問題点】
従来より半導体製造等の薄膜形成プロセス、すなわちCVD、真空蒸着、PVD、シリコンエピタキシー等の方法においては、薄膜を形成すべき装置目的物だけでなく装置の部材、各種治具等にも多量の堆積物、付着物が生成する。
これらを除去する手段として強酸、強アルカリ等の液体による洗浄、機械的研摩、CF4 、SF6 、NF3 等をクリーニングガスとして用いプラズマ雰囲気下でクリーニングする方法が実施されている。
しかし、強酸、強アルカリ等による洗浄や機械的研摩による方法は、長期間装置を停止する必要がある他操作が煩雑で、装置、治具等が損傷を受けるという問題がある。また、CF4 、SF6 、NF3 等を用いプラズマ雰囲気下でクリーニングする方法においては、プラズマ雰囲気を必要とするため装置上の制約が大きい。
そこで、最近装置、治具等をクリーニングガスと接触させることにより、それらを傷つけず簡単に堆積物だけを除去できる方法として、フッ素やClF3等のフッ化ハロゲンガスをクリーニングガスとして使用したクリーニング方法が注目を集めているが、前記ガスを使用して効率よく、短時間で簡単にクリーニングできる装置がないのが現状である。」(段落【0001】〜【0005】)
(6-b)「まず、本発明の対象とする薄膜形成装置または治具の堆積物とは、P,As,W,Si,Ti,V,Nb,Ta,Se,Te,Mo,Re,Os,Ir,Sb,Ge等の金属およびその窒化物、炭化物およびSiO 等の酸化物が挙げられる。また、本発明で使用するクリーニングガスとしては、フッ素(F2)およびClF,ClF3,ClF5,BrF,BrF3,BrF5,IF,IF3,IF5等のフッ化ハロゲンガスが挙げられるが、化学的に安定で取扱いやすいガスとして、F2,ClF3 が好ましい。」(段落【0008】)
(6-c)「次に、本発明の装置の一例についての概略的なフロー図を図1に示すが、この図を基に本発明の装置について詳述する。前記したクリーニングガスは、所定の容器に貯蔵されたクリーニングガスボンベ2により供給されるが、クリーニングガス単独でクリーニングする場合と窒素、アルゴン等の不活性ガスで希釈してクリーニングする場合の二つの方法をとることができる。また、クリーニングガス単独で使用する場合も、上記したクリーニングガスをそれぞれ適当な割合に混合して使用する場合もあり、各ボンベ(希釈ガスボンベ1,クリーニングガスボンベ2)からの配管は、一本の供給配管8に統合されて反応器4に接続されている。」(段落【0009】、図1)
(6-d)「次に反応器4についてであるが、該装置の一例を少し詳しく描いた図2を基に説明すると、反応器4は堆積したクリーニング対象物が反応した場合に発生するガスを速やかに除去し、新たなクリーニングガスを対象物に接触させるため、反応器内のクリーニングガスを充分に攪拌するための攪拌機14を備えている。攪拌機14は、充分ガスの混合、攪拌が行われるように、プロペラ形、かい形のものが好ましい。また導入されたガスが迅速にクリーニング対象物に接触するように、供給配管8のガス導入口に近い場所に設置するのが好ましい。この攪拌機による効果は、クリーニングガスの圧力が数十Torr以上になった場合に顕著である。」(段落【0011】、図2)
(6-e)「反応器4は、上記の条件を満足するものならどんなものでもよいが、その一例が図2に示す装置であり、円筒型の容器で円筒の周囲にヒーターが設置されており、円筒の一端または両端には開閉が行えるように円形の扉15を設けている。扉の部分は、普通余り温度が上昇しないように水冷のジャケット12を設けており、扉の内側には何枚かの熱遮蔽板11を設置している。これにより、反応器内部で温度が上昇する場合にも、この部分は温度が余り上昇しない。ただし、このような温度の低い部分には、クリーニングガスが吸着しやすいので、クリーニング後に反応器中のクリーニングガスを完全にパージできるよう、遮蔽板付近に希釈ガスの配管13を設けることにより短時間で反応器中のクリーニングガスを完全にパージすることができる。」(段落【0014】、図2)
(6-f)「実施例1
図1に示すようなクリーニング装置を用い、図2に示すような120 mmφ×350 mmLのニッケル製反応管を用い、この反応管の図3(側面図ならびに平面図)で示す1〜12の各点に20×20×3mm のSUS304基板上に厚さ10μmのa-Siを成膜したサンプルを設置した。
ClF3を10V%(100cc/min) 、N290V%(900cc/min) の組成に配管中で予め混合したガスを供給配管8より導入し、反応器内部圧力760Torr、反応器内部温度18℃でガス流通を行い、10分間クリーニング処理を行った。処理後のa-Si膜厚測定の結果を表1に示す。」(段落【0023】、【0024】、図1、2、表1)
(6-g)「実施例2
図3に示すような反応器内部の点5,8,13の位置に35×35×3 mmのSUS304基板に1μmの SiNXを成膜したサンプルを設置し、プロペラ型の攪拌羽根を回転させ(600r.p.m.) 反応器内部温度150℃、反応器内部圧力700、100、10、5Torr、ClF3濃度10V%(100cc/min) 、N2濃度90V%(900cc/min) でエッチングレートの測定を行った。その結果を表3に示す。」(段落【0030】、図3、表3)
(7)刊行物7の記載事項
刊行物7には、第1〜4図とともに以下の事項が記載されている。
(7-a)「1.半導体プロセスガスに反応せず、脱ガス量の少ない薄膜で被覆した焼結炭素から成る基板支持治具において、その周囲をガスが透過しない被覆材でおおつたことを特徴とする半導体結晶成長用基板支持治具。
2.被覆材の内側を真空にして封じ込めることを特徴とする請求項第1項記載の半導体結晶成長用基板支持治具。
3.被覆材の内側を真空にして封じ込め、被覆材と焼結炭素との間にスペーサを設置することを特徴とする請求範囲第1項記載の半導体結晶成長用基板支持治具。
4.被覆材でおおう際に開口部を設け、そこから脱ガスを流し出すことを特徴とする請求項第1項記載の半導体結晶成長用基板支持治具。
5.被覆材の上に熱吸収体を設置したことを特徴とする請求項第1項記載の半導体結晶成長用基板支持治具。」(特許請求の範囲)
(7-b)「〔従来の技術〕
高周波誘導加熱により基板を加熱し、化学的気相堆積法(CVD)により半導体結晶を成長させる装置において、基板を支持する治具としては、焼結した炭素をSiCで被覆したものが用いられている。」(第1頁右下欄第7〜12行)
(7-c)「〔実施例〕
以下、本発明を実施例を参照して説明する。
第2図に示すような従来技術による焼結炭素1とこれを被覆するSiC2からなる基板支持治具を、第1図のように石英ガラス4によって封じ込めた。その際、石英ガラス4と基板支持治具との間は真空排気しながら封じ込め、かつ石英スペーサ3を挿入しておくことにより石英ガラス4の変形を防いだ。石英スペーサ3の厚さは2mm、石英ガラス4の厚さは1mmである。石英ガラスのかわりにアルミナ、スピネル、酸化マグネシウム、フッ化カルシウムなどを用いることも可能である。
また、第3図はSiC被覆を設けていない焼結炭素1を石英ガラス4でおおったもの、第4図は石英スペーサを設置せずに石英ガラス4でおおったものである。」(第2頁左上欄下から2行目〜右上欄第14行、第1〜4図)

5.対比・判断
(1)本件発明1について
刊行物1の上記摘記事項(1-c)、(1-f)及び第1図の態様からみて、刊行物1の第1図には、「真空容器(1)、一方の放電電極(2)の他方の放電電極(3)と対向する面には、多数の小孔が穿たれており、他方の放電電極(3)には、ヒータ及び薄膜形成用の基板を保持する基板ホルダが配設されている一対の平行平板型の放電電極(2)、(3)、放電電極(2)に連結されており、原料ガスを放電電極(2)の小孔より真空容器(1)内に導入する薄膜形成用の原料ガス導入口(4)、及び真空容器(1)内を排気する排気口(6)を具備するものであって、アモルファスシリコンの形成を行った結果、真空容器(1)の内壁等に堆積した生成物を洗浄して除去するに当り、ClF3ガスを含む洗浄ガスを原料ガス導入口(4)からも真空容器(1)内に導入しつつ真空容器(1)内の圧力を10Torrに保持すると共に、基板ホルダの温度を200-300℃及び高周波電力を1W/cm2として洗浄を行うようにしたコールドウォール形のプラズマCVD成膜処理装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているといえる。
そこで、本件発明1と引用発明とを対比する。
上記引用発明における「真空容器(1)」、「基板ホルダ」、「ヒータ」、多数の小孔が穿たれた「放電電極(2)の他方の放電電極(3)と対向する面」、「アモルファスシリコンの形成」、「洗浄して除去する」、「原料ガス」、「ClF3ガスを含む洗浄ガス」は、それぞれ本件発明1における「真空可能な処理容器」、「基板設置台」、「加熱手段」、「多孔板」、「成膜処理工程」、「クリーニング工程」、「処理ガス」、「ClF3ガスを含むクリーニングガス」に相当するものである。
そして、引用発明における原料ガス導入口(4)は、アモルファスシリコン形成工程(成膜処理工程)においては原料ガス(処理ガス)を供給する手段と、生成物を洗浄して除去する工程(クリーニング工程)においては洗浄ガス(クリーニングガス)を供給する手段と それぞれ連結されることは明らかであり、同様に引用発明における排気口(6)も真空排気手段に連なるものである。また、摘記事項(1-b)、(1-d)からみて、引用発明における生成物を洗浄して除去する工程(クリーニング工程)は、基板ホルダ(基板設置台)に堆積(付着)している生成物(被膜)を除去することも意図していると解される。
してみると、本件発明1と引用発明とは、
「真空可能な処理容器と、
前記処理容器内で被処理基板を載せて支持する基板設置台と、
成膜処理工程において前記被処理基板を前記基板設置台を介して加熱する加熱手段と、
成膜処理工程において成膜用の所定の処理ガスを前記基板設置台と対向する多孔板を介して前記処理容器内に供給する処理ガス供給手段と、
クリーニング工程においてClF3を含むクリーニングガスを前記多孔板を介して前記処理容器内に供給するクリーニングガス供給手段と、
成膜処理工程およびクリーニング工程の各工程において前記処理容器内を所定の真空度に維持しつつ前記処理容器内のガスを所定の排気路を介して排出する真空排気手段とを有し、
クリーニング工程において前記基板設置台を加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置。」
である点で一致し、
本件発明1は、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するのに対して、引用発明は、クリーニングガスに高周波電力を付与しそのプラズマ化を図っているとともに、基板設置台の加熱温度と該基板設置台の耐食温度との関係を規定していない点で相違している。
上記相違点について、次に検討する。
ホットウォール形の成膜処理装置において、ClF3ガスのプラズマレスでのドライエッチング作用(クリーニング作用)を利用し、成膜処理時に装置内に付着する不所望な被膜を除去することは、上記摘記事項(1-e)、(4-c)、(5-b)などに記載されているように、本願出願前既に知られた周知技術であるといえる(特許異議申立書の第13頁下から3行目〜第14頁第5行参照)。
そこで、まず、当該周知技術と引用発明との組合せについて、すなわち、引用発明におけるプラズマ化されたClF3ガスを、周知技術に基づいてプラズマレスのClF3ガスに置換することを考えてみると、刊行物1、4、5などには前述の周知技術の例として、ClF3ガスをプラズマレスで使用する装置の態様が種々記載されているが、これらを仔細にみても、ホットウォール形成膜処理装置は認められるものの、ClF3を含むクリーニングガスを多孔板を介して処理容器内に供給する構成を採用するコールドウォール形の成膜処理装置は何ら記載されていないし、当該コールドウォール形の成膜処理装置への周知技術の適用を示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明1は、ClF3ガスを含むクリーニングガスを、減圧下の処理容器内の基板設置台に向けて、プラズマを生成することなく多孔板を介して均一に供給することによって、プラズマを生成させたときには難しかった、基板設置台(サセプタ)の外周縁部などの被膜除去を可能にする、という作用効果を奏するものである。
してみると、当該周知技術と引用発明とを組み合わせて本件発明1とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
次に、上記周知技術と、成膜処理時にプラズマを使用しないコールドウォール形の成膜処理装置との組合せについても一応検討してみると、刊行物1の摘記事項(1-a)には、プラズマCVD装置の他に、熱CVD装置や光CVD装置が例示されているが、当該熱CVD装置あるいは光CVD装置がどのような態様のものを想定するものかは判断し得ないから、当該摘記事項が、クリーニングガスを基板設置台と対向する多孔板を介して処理容器内に供給する構成を有するコールドウォール形の成膜処理装置を示唆する記載であるということはできない。同様に刊行物2〜7にも、クリーニングガスを基板設置台と対向する多孔板を介して処理容器内に供給する構成を有するコールドウォール形の成膜処理装置については記載されておらず、ましてや、当該装置において、さらにクリーニング工程時に基板設置台を加熱することを示唆する記載を見出すことはできない。
そして、前述の本件発明1に係る作用効果には、クリーニングガスを基板設置台と対向する多孔板を介して均一に供給するという構成が寄与していることに加えて、クリーニング工程時に基板設置台を加熱することにより、大きなクリーニング速度で効率よく被膜の除去ができるという作用効果をも奏するものである。
したがって、上記周知技術と、成膜処理時にプラズマを使用しないコールドウォール形の成膜処理装置とを組み合わせて本件発明1とすることも当業者にとって容易であるとはいえない。

(2)本件発明2〜7について
本件発明2〜7はいずれも請求項1を引用する発明であって、本件発明1の構成を全て含むものであるから、本件発明1が刊行物1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることはできない以上、本件発明2〜7についても同じく刊行物1〜7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV.むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜7に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コールドウォール形成膜処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 真空可能な処理容器と、
前記処理容器内で被処理基板を載せて支持する基板設置台と、
成膜処理工程において前記被処理基板を前記基板設置台を介して加熱する加熱手段と、
成膜処理工程において成膜用の所定の処理ガスを前記基板設置台と対向する多孔板を介して前記処理容器内に供給する処理ガス供給手段と、
クリーニング工程においてClF3を含むクリーニングガスを前記多孔板を介して前記処理容器内に供給するクリーニングガス供給手段と、
成膜処理工程およびクリーニング工程の各工程において前記処理容器内を所定の真空度に維持しつつ前記処理容器内のガスを所定の排気路を介して排出する真空排気手段とを有し、
クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去するコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項2】 前記基板設置台の材質は石英であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項3】 前記基板設置台の材質はアルミナ(Al2O3)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項4】 前記基板設置台の材質は炭化シリコン(SiC)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項5】 前記基板設置台の材質は窒化アルミニウム(AlN)であることを特徴とする請求項1に記載のコールドウォール形成膜処理装置。
【請求項6】 前記クリーニング工程において前記真空排気手段が前記処理容器内を1〜50Torrの圧力に排気することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコールドウォール形処理装置。
【請求項7】 前記クリーニング工程において前記クリーニングガス供給手段が前記処理容器内にClF3とN2とを含むエッチングガスをN2の流量に対するClF3の流量の比が0.2以上となる流量で供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコールドウォール形処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールドウォール形成膜処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路の成膜工程に使用されるCVD装置は、処理容器全体を電気炉の中に入れて半導体ウエハを加熱するホットウォール形と、処理容器自体は常温(室温)のままで半導体ウエハだけを加熱するコールドウォール形とに分けられる。一般に、ホットウォール形が一度に多数枚の半導体ウエハを成膜するバッチ処理に用いられるのに対し、コールドウォール形は半導体ウエハを1枚毎に成膜する枚葉処理に用いられる。
【0003】
コールドウォール形CVD装置では、サセプタ(基板設置台)に半導体ウエハを設置し、適当なヒータによりサセプタを介して半導体ウエハを加熱しながら、あるいはサセプタを介さず外部よりウエハに直接光を当てて加熱しながら、半導体ウエハの表面に所定のガスを供給し、そのガスの分解生成物あるいは反応生成物をウエハ上に堆積させる。このようにして半導体ウエハ上に被膜が形成される時、半導体ウエハ周囲のサセプタ、ウエハ保持手段等の表面にも、反応ガスの分解生成物あるいは反応生成物が堆積して被膜が付着する。また、処理容器の内側壁面にもそのような被膜が付着することがある。
【0004】
従来から、コールドウォール形CVD装置内をクリーニングする方法として、NF3を含むクリーニングガスを装置内に供給し、このクリーニングガスで上記のようなサセプタやウエハ保持手段等に付着した被膜をエッチングして除去する方法が知られている。このクリーニング方法では、NF3自体の分解性がよくないので、プラズマを利用する。つまり、処理容器においてサセプタと対向する位置に電極板を配置し、サセプタと該電極板との間に高周波電圧を印加して、そこにプラズマを発生させ、そのプラズマによってNF3を活性状態に励起するようにしている。
【0005】
コールドウォール形処理装置では、被処理基板を載置して支持するサセプタ(基板設置台)が必須の治具であるとともに、不所望な被膜が最も多く付着しやすい部材でもある。しかるに、上記のようなNF3プラズマ方式のクリーニング方法は、プラズマを生成するための高周波電源や電極板等を必要とするだけでなく、処理容器内でプラズマの及ばないサセプタ部位(特にサセプタ外周縁部)の被膜を除去するのが難しいうえ、クリーニング速度(被膜除去のエッチングレート)が低いという問題もあった。
【0006】
また、排ガス規制の面から、CVD装置においても排気ガスから有害、危険なガス成分を分解除去するための高価な除去装置を付設するのが通例となっているが、NF3は分解しにくいガスであるため、反応ガス等の他の排気ガスと共通の除去装置が使えず、別個に専用の除去装置が必要であり、このため2台の除去装置を設置しなければならなかった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、コールドウォール形の処理容器内で不所望な被膜が最も多く付着する基板設置台から大きなクリーニング速度で効率よく、かつ安全に被膜を除去するようにしたコールドウォール形成膜処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のコールドウォール形成膜処理装置は、真空可能な処理容器と、前記処理容器内で被処理基板を載せて支持する基板設置台と、成膜処理工程において前記被処理基板を前記基板設置台を介して加熱する加熱手段と、成膜処理工程において成膜用の所定の処理ガスを前記基板設置台と対向する多孔板を介して前記処理容器内に供給する処理ガス供給手段と、クリーニング工程においてClF3を含むクリーニングガスを前記多孔板を介して前記処理容器内に供給するクリーニングガス供給手段と、成膜処理工程およびクリーニング工程の各工程において前記処理容器内を所定の真空度に維持しつつ前記処理容器内のガスを所定の排気路を介して排出する真空排気手段とを有し、クリーニング工程において前記基板設置台に対する前記加熱手段の加熱動作をオンにし、クリーニングガスのプラズマを生成することなく、前記基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱した状態で前記基板設置台に付着している被膜を除去する構成とした。
【0009】
【0010】
【作用】
本発明のコールドウォール形成膜処理装置では、所定の成膜処理工程が何回か行われ、処理容器内の基板設置台に成膜材料の不所望な被膜が付着した時点で、クリーニング工程が行われてよい。このクリーニング工程においては、被処理基板の載置されていない基板設置台を加熱手段が加熱し、そこにクリーニングガス供給手段によりClF3を含むクリーニングガスが減圧下の処理容器内の基板設置台に向けて多孔板より均一に供給される。供給されたClF3ガスは、プラズマがなくても基板設置台上の被膜と容易に反応する。つまり、ClF3ガスの一部が反応して反応熱を発生すると、その反応熱で付近のClF3ガスが活性化されて反応し、その反応熱によってさらに多くのClF3ガスが活性化されて反応するという具合に自発的にエッチングを展開する。このClF3ガスによる自発性エッチングは常温下でも可能であるが、本発明者は、クリーニング温度を高くするほど被膜除去のエッチングレートを上げられることを突き止めた。同時に、加熱手段によって加熱される基板設置台の温度がその耐食温度を越えたならば、逆に基板設置台からパーティクルが発生するおそれがあることも判った。かかる観点から、本発明では、基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱しながらClF3ガスによる自発性エッチングを行うことにより、基板設置台に付着している成膜材料の不所望な被膜を大きなクリーニング速度で効率よく、かつ安全に除去することができる。
【0011】
【実施例】
以下、添付図を参照して、本発明をコールドウォール形の枚葉式CVD装置に適用した実施例を説明する。
【0012】
図1において、このCVD装置の処理容器10はたとえばアルミニウムからなる円筒状のチャンバで、その中央部にサセプタ(基板設置台)12が配設されている。成膜処理が行われる時、サセプタ12上には点線で示すように半導体ウエハ14が載置される。処理容器10の一側壁にはゲートバルブ16が設けられ、このゲートバルブ16を介して半導体ウエハ14が出し入れされるようになっている。
【0013】
サセプタ12の上方にはガスを均一に供給するための多孔板18が取付され、この多孔板18の奥(上部)よりガス導入管20のガス吐出部20aが垂直に容器内に入れられている。このガス導入管20には、反応ガス供給系22とクリーニングガス供給系24とが接続されており、これらの切り替えはバルブ26,28によって行われる。
【0014】
クリーニングガス供給系24には、エッチングガスとしてClF3を供給するClF3ガス供給部30と、希釈用キャリアガスとしてN2ガスを供給するN2ガス供給部32とが備えられ、これらのガス供給部30,32はそれぞれガス流量調整器(MFC)34,36およびバルブ38,40等を介してガス導入管20に接続される。ガス流量調整器34,36でClF3ガスおよびN2ガスそれぞれの供給流量が調節されることによって、ClF3が所定の濃度に希釈されたクリーニングガスがガス導入管20に供給されるようになっている。
【0015】
処理容器10の下部において、容器底面10aには複数の排気口42が設けられている。処理容器10内で発生した反応生成物のガスや余った反応ガスまたはクリーニングガスは、これらの排気口42から排気管44を通って真空ポンプ46側へ排出される。この真空ポンプ46としては、オイルフリーのドライポンプを用いるのが好ましい。これは、クリーニングガスとしてClF3を用いるために、ウェットポンプを使用するとポンプオイルの劣化やオイル中に混入した塩素やフッ素によってポンプ自体の劣化を生ずるおそれがあるからである。
【0016】
真空ポンプ46より後段の排出系には、このポンプから排出された反応ガスまたはクリーニングガスの排ガスから有害、危険なガス成分を除去するための除去装置48が設けられている。この除去装置48には、有害、危険なガス成分を吸着または分解するための薬剤が入った筒50が収容されている。
【0017】
また、サセプタ12の下方の容器底面にはクォーツウィンドウ52が取付されその下に加熱用のハロゲンランプ54が配設されている。成膜工程時、このハロゲンランプ54からの光はクォーツウィンドウ52を通ってサセプタ12の裏面を照射し、その光エネルギでサセプタ12がたとえば650〜700°Cに加熱され、この加熱されたサセプタ12を介して半導体ウエハ14がたとえば500〜550°C程度に加熱されるようになっている。
【0018】
次に、このCVD装置におけるタングステン系被膜の成膜工程と、このCVD装置のクリーニング工程について説明する。
【0019】
先ず、タングステン系被膜の成膜工程について説明する。成膜処理を受ける半導体ウエハ14は、ゲートバルブ16を介してハンドアーム等のウエハ搬送機構(図示せず)によりサセプタ12上にローディングされる。次に、反応ガスとして、たとえばWF6(六フッ化タングステン)およびSiH2C12(ジクロールシラン)がそれぞれ所定の流量で反応ガス供給系22よりガス導入管20を介して処理容器10内に導入され、この導入された反応ガスが多孔板18を通って半導体ウエハ14に吹き付けられることにより、半導体ウエハ14の表面にWSi(タングステン・シリサイド)の被膜が形成される。また、別の反応ガスとしてWF6とH2を用いたときは、W(タングステン)の被膜が半導体ウエハ14の表面に形成される。
【0020】
この成膜工程において、半導体ウエハ14はサセプタ12を介して加熱ランプ54によって加熱されるが、処理容器10自体は常温(室温)状態におかれる。また、反応ガスの分解生成物または反応生成物の大部分は半導体ウエハ14の表面に堆積するが、一部はサセプタ12の外周縁部やウエハ保持部材(図示せず)に付着し、処理容器10の内壁面にもわずかであるが付着する。そして、成膜工程が終了すると、半導体ウエハ14は上記ウエハ搬送機構によりサセプタ12からアンローディングされる。このアンローディングまたはローディングの際に、半導体ウエハ14あるいはサセプタ12、ウエハ保持部材等から被膜が剥がれ落ちることがあり、その剥がれ落ちた被膜片は処理容器10の底面10a等に付着する。
【0021】
上記のような成膜工程が所定回数実施されると、成膜工程が一時中断され、反応ガス供給系22および加熱ランプ54がオフに切り替えられ、処理容器10内に半導体ウエハ14が入っていない状態で、常温のまま、本実施例によるクリーニングが行われる。このクリーニングに先立ち、H2ガスまたはN2ガス等によるパージが行われ、処理容器10から反応ガスが除去される。
【0022】
本実施例によるクリーニングにおいては、上記のようにクリーニングガス供給系24よりClF3ガスをN2ガスで所定の濃度に希釈したクリーニングガスがガス導入管20を介して処理容器10内に導入され、その導入されたクリーニングガスは多孔板18からサセプタ12その他の装置各部へ供給される。
【0023】
ClF3ガスは化学的に活性なガスで、プラズマがなくても、被膜、特にタングステン系の被膜とよく反応する。したがって、クリーニングガスが処理容器10内に充満するようにその供給流量が制御されることで、ClF3ガスが処理容器10内の隅々まで行き渡り、各部に付着しているWSi被膜もしくはW被膜はClF3ガスの供給を受けるだけで効果的にエッチングされることになる。
【0024】
これにより、従来のNF3のプラズマ式クリーニング方法によっては除去することが難しい容器底面10a上の被膜も、本実施例のクリーニング方法によれば容易に除去される。したがって、作業員の手を煩わせるマニュアルクリーニングは不要である。なお、ClF3ガスが排気口42、排気管44を通る際に、そこに付着している被膜もエッチングされ除去される。
【0025】
また、ClF3ガスは分解性がよく、アリカリ溶液等にも容易に溶けるため、その排ガスを反応ガスの排ガスと同様に共通の除去装置48で処理することができる。したがって、クリーニング用の特別な除去装置は不要である。
【0026】
図2〜図5は、本実施例のクリーニング方法によるエッチング効果を示すグラフである。図示のデータは、表面にW被膜が形成された半導体ウエハを試験材としてサセプタ12上に置き、種々の条件の下で上記のClF3ガスを含むクリーニングガスを供給したときの該半導体ウエハのW被膜のエッチングレートを測定した実験例で得られたものである。
【0027】
まず、図2のグラフは、室温下で、クリーニングガス中のClF3ガス、N2ガスの流量をそれぞれ500sccmに一定に保ち、ガスの圧力を変化させたときのエッチングレートの特性を示す。この図2に示されるように、ガス圧を高くするほど、ClF3ガスとW被膜との反応が促進されてエッチングレートが上がり、10〜50Toorの圧力に対して約2000〜4000オングストローム/minのエッチングレートが得られることが判る。
【0028】
図3のグラフは、室温下で、N2ガスの流量を1500sccm、圧力を10Toorにそれぞれ一定に保ち、ClF3ガスの流量を変えたときのエッチングレートの特性を示す。この図3から、ClF3ガスの流量を大きくするほどClF3ガスの供給量が増大してエッチングレートが上がり、400〜1000sccmのClF3ガス流量に対して約3000〜6000オングストローム/minのエッチングレートが得られることが判る。
【0029】
図4のグラフは、室温下で、ClF3ガスの流量を500sccm、圧力を10Toorにそれぞれ一定に保ち、N2ガスの流量を変えたときのエッチングレートの特性を示す。この図4から、N2ガスの流量を大きくするほどClF3ガスが希釈されてエッチングレートが下がり、500〜5000sccmのN2ガス流量に対して約4500〜2500オングストローム/minのエッチングレートが得られることが判る。
【0030】
図5のグラフは、室温下で、圧力を10Torrに保ち、ClF3ガスとN2ガスの流量比を一定(1:3)にして全流量を変化させたときのエッチングレートの特性を示す。この図から、クリーニングガスの流量を上げるほどClF3ガスの供給量が増大してエッチングレートが上がり、400/1200〜1000/3000のClF3/N2ガスの流量に対して約3600〜4800オングストローム/minのエッチングレートが得られることが判る。
【0031】
このように、本実施例のクリーニング方法によれば、室温でも、ガスの流量、圧力、ClF3ガスの濃度等の条件を適当に選ぶことで、3000オングストローム/min以上のエッチングレートを容易に得ることができる。なお、WSi被膜においても同様のエッチングレートが得られることが実験で確認できた。この点、従来のNF3ガスによるプラズマ式のクリーニング方法で得られるエッチングレートは高々2000オングストローム/min程度であるから、クリーニング効率においても従来方法に勝るとも劣らない効果が得られる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、コールドウォール形の処理装置、たとえば図1に示すような処理装置において、サセプタ14、ウエハ保持部材(図示せず)、処理容器10の内壁等の加熱可能な部分をClF3に対して耐食温度の範囲内で高温に維持した状態で、そこにClF3を含むクリーニングガスを供給して、容器10等の各部、特に加熱可能な部分のクリーニングを行うものである。
【0033】
図6は、コールドウォール形処理装置内の加熱可能な部分に利用可能な種々の材質のClF3に対する各耐食温度を示す。これらの材料をサセプタ、ウエハ保持部材、処理容器等の加熱可能な部分に用いた場合は、それらを高温にするほどクリーニング速度が大きくなる。しかし、耐食温度の範囲を越えると、その部材自体から逆にパーティクルが発生するので、具合が悪い。したがって、高温にするとはいっても、各部の耐食温度の上限値以下に抑えるのが望ましい。
【0034】
図7は、コールドウォール形処理装置内の加熱可能部分を炭化シリコン(SiC)で構成し、容器内の真空度(10Torr)、クリーニングガス(ClF3/N2)の流量(100/2000sccm)、クリーニングガス供給法(ClF3/N2の同時出し)、クリーニング時間(20秒間)の諸条件を固定し、クリーニング温度を変化させたときのエッチングレートの特性を示す。この図7に示されるように、クリーニング温度を高くするほどエッチングレートは上昇し、200°C付近の高温下では約3200オングストローム/minのエッチングレートが得られることがわかる。
【0035】
なお、加熱手段としては、図1のハロゲンランプ54のような加熱処理用の加熱手段を利用してよい。さらには、クリーニング用としてニクロム線等の発熱手段を処理容器10の壁等の内部に埋設してもよい。
【0036】
上述した実施例はW被膜またはWSi被膜を除去してクリーニングを行うものであったが、タングステン系の被膜に限らず、他の成膜材料の不所望な被膜に対しても本発明のクリーニング方法を用いることができる。また、上述した実施形態におけるコールドウォール形処理装置は枚葉式CVD装置であったが、本発明のクリーニング方法はその種の成膜処理装置に限定されるものではなく、スパッタ装置等の他の方式のコールドウォール形成膜処理装置にも使用できるものである。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のコールドウォール形成膜処理装置によれば、処理容器内の基板設置台から成膜材料の不所望な被膜を除去するに際して、ClF3を含むクリーニングガスを減圧下の処理容器内の基板設置台に向けて多孔板を介して供給するとともに、処理容器内で基板設置台に対する加熱手段を働かせて基板設置台をその耐食温度の範囲内で加熱することにより、大きなクリーニング速度で効率よく、かつ安全に被膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるクリーニング方法を実施するためのコールドウォール形枚葉式CVD装置の全体構成を示す略断面図である。
【図2】 実施例のクリーニング方法において圧力に対するエッチングレートの特性を示すグラフである。
【図3】 実施例のクリーニング方法においてClF3ガスの流量に対するエッチングレートの特性を示すグラフである。
【図4】 実施例のクリーニング方法においてN2ガスの流量に対するエッチングレートの特性を示すグラフである。
【図5】 実施例のクリーニング方法においてクリーニングガスの総流量に対するエッチングレートの特性を示すグラフである。
【図6】 コールドウォール形処理装置内の加熱可能部分に利用可能な種々の材質のClF3に対する各耐食温度を示す表である。
【図7】 第2の実施例のクリーニング方法において温度に対するエッチングレートの特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10 処理容器
12 サセプタ
14 半導体ウエハ
22 反応ガス供給系
24 クリーニングガス供給系
30 ClF3ガス供給部
32 N2ガス供給部
48 除去装置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-31 
出願番号 特願平4-309258
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 日比野 隆治
市川 裕司
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3326538号(P3326538)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 コールドウォール形成膜処理装置  
代理人 井上 俊夫  
代理人 井上 俊夫  

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