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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H02K 審判 全部申し立て 発明同一 H02K |
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管理番号 | 1107893 |
異議申立番号 | 異議2003-73181 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-25 |
確定日 | 2004-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3422802号「回転電機の固定子」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3422802号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3422802号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成4年2月21日に特許出願され、平成15年4月25日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人澤新により特許異議の申立がされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月15日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2.1 訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許明細書の請求項1において、「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に」を「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許明細書の段落【0013】(公報2頁4欄28〜31行)の「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、」を「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許明細書の段落【0030】【発明の効果】において、上記訂正事項と同様の訂正を行う。 2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張、変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に関して、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」と呼ぶ。)の段落【0019】(公報第5頁第5欄第12〜16行)には、「上記ティース鉄心は、詳細には、鋼板を所定形状に打抜いて積層することにより形成したもので、図2に示すように」と記載され、又図2によれば、ティース25の先端部で回転方向両側にティース間のスロット開口部27を狭めるように突出部が形成され、その形状がT字形状を連想することは、当業者において当然想起しうる形状と認められるから、上記訂正事項は特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。 それゆえ、この訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、又、実質上特許請求の範囲を拡張し・変更するものでもない。 (2)訂正事項2,3について これらの訂正事項は、訂正事項1の訂正に応じて特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を取るための訂正であって、これらの訂正は特許明細書の記載の範囲内においてしたものであり、且つこれらの訂正により特許請求の範囲の記載を拡張・変更するものでもない。 2.3 むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて 3.1 申立の理由の概要 特許異議申立の概要は以下のとおりである。 (1)請求項1,2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第113条第2号の規定により取消されるべきである。 (2)請求項1,2に係る発明は、本件特許の出願前に出願された特願平4-29702号(平成4年2月17日出願)の願書に最初に添付された明細書又は図面(甲第2号証)に記載された発明と同一であって、本件特許の出願後に公開され、この特願平4-29702号を先の出願とする優先権主張を伴う出願である特願平4-328967号(特開平6-6959号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(甲第2号証)と同一であるから、特許法第29条の2の規定に該当し、(同法41条3項)、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 3.2 本件発明 上記2.3のように訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1,2」という。)は、以下のとおりである。 【請求項1】 固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割され、そのティース鉄心が有するスロットにスロット絶縁体が内装されると共にこのスロット絶縁体内部にコイルが巻装して収容され、このティース鉄心にヨーク鉄心が組合わされて構成されるものにおいて、前記ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、スロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とする回転電機の固定子。 【請求項2】 ティース鉄心のスロット開口部をティース間の中心部に設けたことを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。 3.3 引用例 取消理由において通知した引用例は以下のとおりである。 (1)引用例1:特開平2-142331号公報(平成2年5月31日公開、異議申立人の提示した甲第1号証) 引用例1には、「第1図はこの発明の一実施例を示すステータの平面図、第2図は同じくスロット内部に絶縁を施したステータの平面図、第3図は同じく巻線が巻回されたステータの平面図であり、図において(10)は外輪部を形成するヨーク部(図示せずと同心状に設けられたリング、(11)はこのリングの外周より四方に突設され、その先端部が上記ヨーク部に固着される磁極片A、(12)は磁極片Bで、上記磁極片A(11)において対向する一対の磁極片A(11)に所定間隔を有して挟むように複数個設けられている。(13)〜(20)はこの磁極片B、上記A(11)および上記リング(10)よりなるステータ(21)のスロットA〜Hを示す。(22)はこの各スロット内に設けられた絶縁樹脂、(23)、(24)は上記ステータ(21)に巻回された巻線A、巻線B、(25)はこの巻線A,巻線Bおよび上記ステータ(21)からなる固定子である。上記のように構成された電動機の固定子鉄心」(明細書2頁左上欄17行〜右上欄14行)との記載がある。 上記記載および図面の記載によれば、以下のことが明かである。 a.図2,3の記載によれば、ステータ(21)の磁極片(11)、(12)の先端部でのスロット(13)〜(20)の開口部の幅は、スロット(13)〜(20)内に設けられた絶縁樹脂(22)の開口部の幅よりも広く形成されている点。 b.この絶縁樹脂(22)の開口部は、該絶縁樹脂が設けられている磁極片間の中心部よりも片側に寄せて設けられている点。 したがって、これらの点を考慮すると引用例1には、 「固定子鉄心が外輪部を形成するヨーク部とステータ鉄心とに分割され、そのステータ鉄心が有するスロットに絶縁樹脂が内装されると共にこの絶縁樹脂内部に巻線が巻装して収容され、このステータ鉄心にヨーク部が組合わされて構成されるものにおいて、前記ステータ鉄心の各磁極片先端部を、該各磁極片先端部間のスロット開口部が前記絶縁樹脂の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、前記絶縁樹脂の開口部を磁極片間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とする回転電機の固定子。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)引用例2:特願平4-29702号(平成4年2月17日出願、以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先の出願の明細書等」という。) 上記先の出願の明細書等には、以下の記載がある。 「 【0021】 【実施例】 図1〜図12はこの発明の一実施例を示す図であり、図において5はヨーク部で、・・・固定子鉄心6の外輪部を形成する。・・・7は上記ヨーク部5内周より中心方向へスロット8を形成して突設された複数の磁極片で、・・・これらの磁極片7が複数等間隔に集合され内輪磁極部10が形成される。11はこの内輪磁極部を覆うように例えば射出成形により設けられた絶縁部で、上記スロット8および内輪磁極部10の端面12に成形固着されている。13は上記内輪磁極部10の一方の端面14に成形固着された絶縁樹脂で、上記絶縁部10と一体に成形されその形状は漏斗状にて形成され、先端に円形からなる第1の回転軸貫通口15が設けられている。16はこの第1の回転軸貫通口と一体に上記内輪磁極部10の周端に突設されたコイルガードで、上記磁極片7の先端に位置し、巻線用ガイドとなる。17は上記内輪磁極部10内に設けられる回転子で、中央に回転軸18が嵌通されている。19は絶縁カバーで、 単独にて巻線用ガイドとなる複数の巻枠柱20を周設した漏斗状に成形され、中央に上記内輪磁極部10および第1の回転軸貫通口15と連通され、円形からなる第2の回転軸貫通口21を有している。この絶縁カバーは内輪磁極部10の端面12に着脱自在に装着され、これにより上記回転子17の導体部であるエンドリング22は外部と絶縁される。なお、上記巻枠柱20は上記内輪磁極部10を四等分する位置する配設され内輪磁極部10の中心側に位置する内側ポール23と、この内側ポールに対向するように内輪磁極部10の外側に位置する外側ポール24とより構成され、いずれも内輪磁極部10内径内上に配設されるとともに上記コイルガード16より内輪磁極部10中心側に位置される。なお、この内側ポール23は内輪磁極部10にも上記絶縁樹脂13と一体に成形されたコイルガード16より内輪磁極部10内側に設けられている。25はピン本体で、上記巻枠柱20の先端に挿入されるもので、上記内側ポール23には所定間隔にて複数本が装着され、後述されるコイルの端末部および電源リード線が接続される。26はコイルで、・・」 上記記載によれば、以下のことが明かである。 a.内輪磁極部10は複数等間隔に集合されて内輪磁極部を覆うように絶縁部11で射出成形されている点。 b.内輪磁極部10の磁極片7の先端部でのスロット8の開口部の幅が内輪磁極部の周端に設けられたコイルガード16間の開口部よりも広くなるように形成されている点。 c.絶縁部11と内輪磁極部10の一方の端面14に成形固着された絶縁樹脂13及びコイルガード16は一体に形成されている点。この構成により、巻線時の磁極片に対する絶縁作用をしていることは明かである。 d.コイルガード16の開口部は、スロット8の両側の磁極片の内の巻線の巻回されない磁極片側に寄せて設けられている点。 e.図4の記載によれば、複数の磁極片7は同程度の幅であるから、該磁極片間に形成されることになるスロット8の開口部は磁極片間の中心部に設けられている点。 したがって、先の出願の明細書等には、 「固定子鉄心が内輪磁極部と外輪ヨーク部とに分割され、その内輪磁極部が有するスロットに絶縁部、絶縁樹脂及びコイルガードが内装されると共に、この絶縁部、絶縁樹脂及びコイルガードにコイルが巻装して収容され、この内輪磁極部に外輪ヨーク部が組合わされて構成されるものにおいて、前記内輪磁極部の各磁極片先端部を、該各磁極片先端部間のスロット開口部がコイルガードの開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、コイルガードの開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けると共に、磁極片間に形成されることになるスロットの開口部は磁極片間の中心部に設けたことを特徴とする回転電機の固定子。」の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。」 (3)引用例3:特願平4-328967号(平成4年11月16日出願、特願平4年29702号を優先権主張の基礎とした出願、特開平6-6959号として平成6年1月14日公開)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「後の出願の明細書等」という。) 後の出願の明細書等の段落0048〜0051および図1〜6、11には、上記(2)において先の出願の明細書等から摘記した事項の全てが記載されているので、該後の出願の明細書等には先の出願の明細書等で認定した発明が記載され、且つ本件出願後に公開されたものと認められる。 3.4 対比・判断 (1)特許法第29条2項について 【本件発明1について】 本件発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「ステータ」、「ヨーク部」、「ステータ鉄心」、「(スロット内に設けられた)絶縁樹脂」、「巻線」、「磁極片」、「絶縁樹脂の開口部」は本件発明1の「固定子」、「ヨーク鉄心」、「ティース鉄心」、「スロット絶縁体」、「コイル」、「ティース」、「スロット絶縁体の開口部」にそれぞれ相当するから、両者は 固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割され、そのティース鉄心が有するスロットにスロット絶縁体が内装されると共にこのスロット絶縁体内部にコイルが巻装して収容され、このティース鉄心にヨーク鉄心が組合わされて構成されるものにおいて、前記ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、スロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とする回転電機の固定子。」で一致し、本件発明1が各ティースについて「T字形状に鋼板を打抜いて積層することにより」と規定しているのに対し、引用発明は、このような規定をしていない点(相違点1)で相違する。 上記相違点1について検討する。 本件発明に対する従来例(特開昭64-34151号公報)のように、一つ置きのティースの先端部の幅寸法をかなり大きくして、スロット容積の有効利用を図ると共に、コイルのスロット開口部外へのはみ出しがないようにした場合は、一つ置きのティース鉄心の幅がかなり大となってしまい、種々の不都合(変形、異常音の発生、特性の悪化等)が生じることになる。本件発明はこのような課題を克服するため、特に各ティース先端部両側の部分に変形(そり)が生じるとの課題を解決しつつ、スロット容積の有効利用を図るものであると認められる。 しかしながら、引用発明の目的は、巻線の渡り長が短く、巻回高さを低くおさえると共に、巻線使用量が少ない電動機の固定子鉄心を得ることであって、そのため、ヨーク部と結合する磁極片の外方端部の形状まで規定しておらず(図1〜3によればストレート形状と認められる。)。 そして、引用発明において、積層鉄心を用いることは引用例の従来例に記載されているように当然のことであり、かつ電動機(回転電機)の鉄心を鋼板を打ち抜いて形成することも慣用手段にすぎないが、本件発明1のように磁極片先端部(ティース先端部)をT字状に形成する必然性も、示唆も認められない。そして、引用発明において、その磁極片の先端部をT字状に形成することが、当業者において容易になし得るとの根拠も認められない。 したがって、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 【本件発明2について】 本件発明2と引用発明を対比すると、本件発明2は本件発明1を引用し、その構成要件を全て備えているから、上記のように本件発明1が引用発明から容易に発明をすることができない以上、他の構成要件を検討するまでもなく、本件発明2も同じく引用発明に基づいて容易に発明をすることができないものと認められる。 (2)特許法第29条の2について 【本件発明1、2について】 先願発明と本件発明1、2を対比すると、先願発明の「固定子鉄心」、「外輪ヨーク部」、「内輪磁極部」、「磁極片」は 本件発明1、2の「固定子」、「ヨーク鉄心」、「ティース鉄心」、「ティース」にそれぞれ相当し、また、先願発明の「絶縁部」と「絶縁樹脂」及び「コイルガード」が本件発明1、2の「スロット絶縁体」に相当し、さらの先願発明の「コイルガードの開口部」が本件発明1、2の「スロット絶縁体の開口部」に相当するから、本件発明1,2がティース先端部について「T字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成する」との構成を備えているのに対し、先願発明はこのような規定をしていない点で相違し、他の点は一致しているものと認められる。 そして、上記相違点に係る構成は、先願発明において、自明な事項とも認められない。 したがって、本件発明1,2と先願発明は同一であるとは認められない。 3.5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由(3.1-(1)、(2)参照)によっては本件発明1,2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1,2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1,2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
別掲 |
訂正の要旨 (1)訂正事項1 特許明細書の請求項1において、「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に」を「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許明細書の段落【0013】(公報2頁4欄28〜31行)の「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、」を「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許明細書の段落【0030】【発明の効果】(公報4頁7欄7〜9行)において、「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めて形成すると共に、」を「・・・ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、」と訂正する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 回転電機の固定子 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割され、そのティース鉄心が有するスロットにスロット絶縁体が内装されると共にこのスロット絶縁体内部にコイルが巻装して収容され、このティース鉄心にヨーク鉄心が組合わされて構成されるものにおいて、前記ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、スロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とする回転電機の固定子。 【請求項2】 ティース鉄心のスロット開口部をティース間の中心部に設けたことを特徴とする請求項1記載の回転電機の固定子。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割して構成される回転電機の固定子に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割して構成される回転電機の固定子として、例えば特開平2-261028号公報、特開平2-285954号公報、及び特開平3-18251号公報に示されるものが知られている。 【0003】 これらのものは、図4及び図5に示すごとくで、固定子鉄心1がティース鉄心2とヨーク鉄心3とに分割して構成され、そのティース鉄心2が有するスロット4には、それぞれスロット絶縁体5が内装されると共に、このスロット絶縁体5内部にコイル6が収容され、かかるティース鉄心2にヨーク鉄心3が組合わされている。 【0004】 しかして、このものの場合、上記スロット絶縁体5内部へのコイル6の収容を巻線機で行なったとき、図6に示すように、コイル6は例えば二つのスロット4c,4dを隔てた二つのスロット4a,4bにその各スロット開口部7a,7bから入れられてティース8a,8bを抱くように巻装されるもので、そのティース8a,8b部分からそれぞれ反対側のティース8c,8d側に順次その巻厚を増す。そして、その巻厚がある程度に達したところで、コイル6はスロット開口部7a,7bを塞ぐほどになり、スロット絶縁体5a,5b内にかなりのスペースを余しているにもかかわらず、それ以上コイル6を収容することができなくなって、スロット容積の有効使用が図れないという問題を呈していた。 【0005】 又、この場合、スロット絶縁体5a,5b内に収容し切れないコイル6がスロット開口部7a,7b外にはみ出ることにより、品質が高く得られないという問題点をも有していた。 【0006】 そこで、特開昭64-34151号公報に示すようにしたものがある。このものは、図7に示すごとくで、スロット開口部9とスロット絶縁体10の開口部11とをティース12間の中心部より片側(スロット開口部9a及びスロット絶縁体10aの開口部11aの場合はティース12c側、スロット開口部9b及びスロット絶縁体10bの開口部11bの場合はティース12d側)に寄せて設けたものであり、コイル6の巻厚がある程度に達しても、該コイル6がスロット開口部9a,9bを塞ぐことがなく、よって、スロット絶縁体5a,5b内に続けて多くのコイル6を収容でき、スロット容積の有効使用を図り得ると共に、コイル6のスロット開口部9a,9b外へのはみ出しもなくし得、品質の向上を達成することができる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上述のようにしたものでは、一つ置きのティース12(12a,12b)の先端部の幅寸法Aがかなり大となってしまい、この部分でティース鉄心2のヨーク鉄心3に対する接触面積が大となることから、それらティース鉄心2及びヨーク鉄心3を組合わせるときに、ヨーク鉄心3がティース鉄心2に嵌まりにくく、ティース鉄心2の外周部やあるいはヨーク鉄心3の内周部に変形を来たして、特性の悪化、異常音の発生といった問題を惹起していた。 【0008】 又、上述のように幅寸法Aの大なるティース12の先端部は細長い形状となるから、それによって、上記ティース鉄心2及びヨーク鉄心3の組合わせ時に剥がれやすくなり、特性の悪化、異常音の発生といった問題を一層惹起する原因となっていた。 【0009】 更に、ティース鉄心2は、一般に鋼板を所定形状に打抜いて積層することにより形成されているが、その打抜きの折り、上述のように幅寸法Aが大で細長い各ティース12の先端部両側の部分には変形(そり)が生じやすく、これによっても、特性の悪化、異常 音の発生といった問題を惹起していた。 【0010】 加えて、幅寸法Aが大で細長いティース12を有したティース鉄心2用の鋼板を打抜く型は、その製作が困難で、コスト高となる問題点を有していた。 【0011】 なお、先の図4ないし図6に示したものでは、上記図7に示したもののティース12よりティース8の先端部の幅寸法を小さく留め得るが、しかし、それでもそのティース8の先端部の幅寸法は大きく、従って、上述ほどではなくとも、それに近い程度の問題点を 同様に有していた。 【0012】 本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、コイルの巻装収容について、スロット容積の有効使用並びに品質の向上を達成し得るばかりでなく、特にはそれを、特性の悪化や異常音の発生、更にはコストアップといった問題を惹起せずに達成し得る回転電機の固定子を提供するにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明の回転電機の固定子においては、固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割され、そのティース鉄心が有するスロットにスロット絶縁体が内装されると共にこのスロット絶縁体内部にコイルが巻装して収容され、このティース鉄心にヨーク鉄心が組合わされて構成されるものにあって、上記ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、スロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とする。この場合、上記ティース鉄心のスロット開口部は、ティース間の中心部に設けると良い。 【0014】 【作用】 上記手段によれば、スロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大で、そのスロット開口部の範囲内でスロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことにより、そのスロット絶縁体の開口部よりスロット絶縁体内に収容して巻回したコイルの巻厚がある程度に達しても、該コイルがスロット絶縁体の開口部を塞ぐことがなく、よって、スロット絶縁体内に続けて多くのコイルを収容できると共に、コイルのスロット絶縁体開口部外へのはみ出しをも生じないようにできる。 【0015】 そして、この場合、スロット開口部をスロット絶縁体の開口部より大とするのは、ティース鉄心の各ティース先端部をそのような幅寸法に定めて形成することによるものであり、それは、すなわちティース鉄心の各ティース先端部を幅寸法小さく形成することを意味する。 【0016】しかして、このように幅寸法小さく形成したティース鉄心の各ティース先端部では、ヨーク鉄心との組合わせの折りの該ヨーク鉄心との接触面積を減少させ得、又、ティース鉄心の各ティース先端部自体、短くできる。加えて、ティース鉄心のスロット開口部をティース間の中心部に設けたものでは、ティース鉄心の各ティース先端部を揃いの大きさで短くできる。 【0017】 【実施例】 以下、本発明の一実施例につき、図1ないし図3を参照して説明する。 【0018】 まず図1には固定子鉄心21を示しており、ティース鉄心22とヨーク鉄心23とに分割して形成し、それらを嵌合により組合わせて構成している。 【0019】 上記ティース鉄心22は、詳細には、鋼板を所定形状に打抜いて積層することにより形成したもので、図2に示すように、リング部24の周囲にティース25を放射状に多数有し、各ティース25間にスロット26を有している。又、スロット26には、図3に示すように、その内周部からスロット開口部27にかけて、スロット絶縁体28を例えば合成樹脂モールドにより一体に内装している。 【0020】 ここで、上記ティース鉄心22の各ティース25の先端部は幅寸法がBで、スロット開口部27は幅寸法がC、スロット絶縁体28の開口部29は幅寸法がDであり、C>D、すなわち、スロット開口部27の幅寸法がスロット絶縁体28の開口部29のそれより大となるように、各ティース25の先端部を幅寸法Bに定めて形成している。又、この場合、そのスロット開口部27は各ティース25間の中心部に設け、スロット絶縁体28の開口部29は各ティース25間の中心部より片側に寄せて設けている。 【0021】 しかして、上記スロット26のスロット絶縁体28内部の位置には、スロット開口部27及びスロット絶縁体28の開口部29から、コイル30,31を図1に示すように巻装して収容しており、この状態で、その各コイル30,31とスロット絶縁体28の開口部29との間に絶縁ウェッジ32を挿入し、そして、ティース鉄心22に前記ヨーク鉄心23を組合わせている。 【0022】 このように本構成のものでは、スロット開口部27がスロット絶縁体28の開口部28より大で、そのスロット開口部27の範囲内でスロット絶縁体28の開口部29をティース25間の中心部より片側に寄せて設けたことにより、そのスロット絶縁体28の開口部29よりスロット絶縁体28内に収容して巻回したコイル30,31の巻厚がある程度に達しても、該コイル30,31がスロット絶縁体28の開口部29を塞ぐことがなく、よって、スロット絶縁体28内に続けて多くのコイル30,31を収容でき、かくして、スロット容積の有効使用を図ることができる。 【0023】 又、この場合、コイル30,31のスロット絶縁体開口部29外へのはみ出しも生じないようにできるから、品質の向上を達成することができる。 【0024】 そして、上述のようにスロット開口部27をスロット絶縁体28の開口部29より大とするのは、本構成の場合、ティース鉄心22の各ティース25先端部をそのような幅寸法Bに定めて形成したことによるものであり、それは、すなわち、ティース鉄心22の各ティース25先端部を、従来のティース12先端部より幅寸法小さく形成したことを意味するもので、このように幅寸法小さく形成したティース鉄心22の各ティース25先端部では、ヨーク鉄心23との組合わせの折りの該ヨーク鉄心23との接触面積を減少させることができる。よって、ヨーク鉄心23をティース鉄心22に嵌めやすくでき、ティース鉄心22の外周部やあるいはヨーク鉄心23の内周部に変形を来たすことがなくなるから、特性の悪化、異常音の発生といった問題も惹起しないようにできる。 【0025】 又、ティース鉄心22の各ティース25先端部自体、周方向に短くできるもので、かように先端部を短くしたティース25によると、従来のティース12の細長い先端部と違って、ティース鉄心22及びヨーク鉄心23の組合わせ時に剥がれず、特性の悪化、異常音の発生といった問題をより確実に解決することができる。 【0026】 更に、ティース鉄心22用の鋼板を所定形状に打抜く折り、上述のように短くしたティース25の先端部によると、これも従来のティース12の細長い先端部と違って、変形(そり)が生じず、従ってこれによっても、特性の悪化、異常音の発生といった問題を更に 確実に解決することができる。 【0027】 加えて、上述のように短くしたティース25の先端部によると、ティース鉄心22用の鋼板を打抜く型は、その製作が容易にでき、コスト安にできる。更に、上記構成のものでは、ティース鉄心22のスロット開口部27をティース25間の中心部に設けており、これによって、ティース鉄心22の各ティース25先端部の周方向の長さを従来のティース8先端部のそれよりも短くでき、特には、揃いの大きさで短くできる。従って、各ティース25先端部の長さが不揃いのものより、ティース鉄心22用の鋼板を打抜く型の製作が一段と容易にでき、一層コスト安にできる。 【0028】 なお、スロット絶縁体28は、前述の合成樹脂モールドによりスロット26に一体に内装されたものに限られず、別体にてスロット26に挿入することにより内装されるものであっても良い。 【0029】 そのほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。 【0030】 【発明の効果】以上の記述で明らかなように、本発明の回転電機の固定子は、固定子鉄心がティース鉄心とヨーク鉄心とに分割され、そのティース鉄心が有するスロットにスロット絶縁体が内装されると共にこのスロット絶縁体内部にコイルが巻装して収容され、このティース鉄心にヨーク鉄心が組合わされて構成されるものにおいて、上記ティース鉄心の各ティース先端部を、該各ティース先端部間のスロット開口部がスロット絶縁体の開口部より大となる幅寸法に定めてT字形状に鋼板を打抜いて積層することにより形成すると共に、スロット絶縁体の開口部をティース間の中心部より片側に寄せて設けたことを特徴とするものであり、それによって、コイルの収容について、スロット容積の有効使用並びに品質の向上を達成し得、しかも、それを、特性の悪化や異常音の発生、更にはコストアップといった問題を惹起せずに達成し得るという優れた効果を奏する。又、ティース鉄心のスロット開口部をティース間の中心部に設けたことによって、ティース鉄心の各ティース先端部の周方向の長さを揃いの大きさで短くでき、それによって一層コスト安にできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例を示す部分断面図 【図2】ティース鉄心単体の部分平面図 【図3】ティース鉄心のスロット絶縁体を内装した状態での部分平面図 【図4】従来例を示す図1相当図 【図5】図3相当図 【図6】コイル収容途中の状態での図3相当図 【図7】異なる従来例を示す図6相当図 【符号の説明】 21は固定子鉄心、22はティース鉄心、23はヨーク鉄心、25はティース、26はスロット、27はスロット開口部、28はスロット絶縁体、29はスロット絶縁体の開口部、30,31はコイル、Bはティースの先端部の幅寸法、Cはスロット開口部の幅寸法、Dはスロット絶縁体の開口部の幅寸法を示す。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-09-16 |
出願番号 | 特願平4-34585 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H02K)
P 1 651・ 161- YA (H02K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 下原 浩嗣 |
特許庁審判長 |
三友 英二 |
特許庁審判官 |
大野 覚美 村上 哲 |
登録日 | 2003-04-25 |
登録番号 | 特許第3422802号(P3422802) |
権利者 | 株式会社東芝 |
発明の名称 | 回転電機の固定子 |
代理人 | 外川 英明 |
代理人 | 外川 英明 |