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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C09B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C09B 審判 全部申し立て 2項進歩性 C09B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09B |
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管理番号 | 1107916 |
異議申立番号 | 異議2003-70631 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-08-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-07 |
確定日 | 2004-09-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3323371号「電子写真トナーおよび現像剤用顔料」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3323371号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3323371号は、平成7年10月4日に出願され(優先権主張:1994年10月5日、ドイツ(DE))、平成14年6月28日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、大日本インキ化学工業株式会社より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月7日付けで訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否 1.訂正事項 本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次のとおりである。 〔訂正事項a〕 特許請求の範囲の請求項1の、 「45m2/gより大きい」との記載を、 「55m2/gより大きい」と訂正する。 〔訂正事項b〕 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 〔訂正事項c〕 特許請求の範囲の請求項番号「【請求項3】」〜「【請求項12】」を、それぞれ一つずつ繰り上げて「【請求項2】」〜「【請求項11】」と訂正するとともに、各請求項において引用する項を示す記載について、「請求項1または2」を「請求項1」に、「請求項1〜3のいずれか1項に」を「請求項1または2」に、「請求項7」を「請求項6」に、「請求項7または8」を「請求項6または7」に、「請求項10」を「請求項9」に、「請求項10または11」を「請求項9または10」に、それぞれ訂正する。 〔訂正事項d〕 明細書段落【0013】の、 「45m2/gより大きい、好ましくは55m2/gより大きい、そして特に60m2/gより大きい」との記載を、 「55m2/gより大きい、そして特に60m2/gより大きい」と訂正する。 〔訂正事項e〕 明細書段落【0014】の、 「【化1】」との記載を、 「【化18】」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲請求項1において、顔料粉末の比表面積を「45m2/gより大きい」から「55m2/gより大きい」と訂正するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、訂正前の請求項2の記載により支持されており、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 訂正事項bは、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 訂正事項cは、請求項2の削除に伴い訂正前の請求項3〜12の項番号を繰上げ、かつ引用する項番号の整合をはかるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるが、訂正後の請求項2〜11は、減縮された請求項1を引用するものであることから、結果として特許請求の範囲の減縮を目的とするものにも該当する。そしてこれらの訂正は、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 訂正事項dは、特許請求の範囲の訂正によって生じた明細書の記載中の不整合部分を訂正後の特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、訂正事項eは、明細書中に誤って「【化1】」と記載されていたものを、出願当初の明細書に記載のとおり「【化18】」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。そしてこれらの訂正は、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 3.訂正の適否の結論 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立について 1.本件発明 上記のとおり訂正が認められるので、訂正後の本件請求項1ないし請求項11に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明11」という)は、訂正後の明細書の特許請求の範囲請求項1ないし請求項11に記載された事項により特定される以下のとおりである。 「【請求項1】55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する式(1) 【化1】 で表されるアゾ顔料。 【請求項2】1.6:1より小さい、顔料粒子の長さ/幅比を有する、請求項1記載のアゾ顔料。 【請求項3】1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタンビスジアゾニウム塩(ジアゾ成分)と5-アセトアセチルアミノベンズイミダゾール-2-オン(カップリング成分)とのアゾカップリングによる請求項1または2記載のアゾ顔料の製造方法であって、アゾカップリングを5〜35℃の温度で行い、最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を30分以内の時間にわたって添加し、この際アゾカップリングの前、間または後にイオン界面活性剤または非イオン界面活性剤を添加しまたは添加せず、次いで形成された凝集したプレ顔料の溶剤仕上げを有機性または有機性/水性媒体中で行なうことを特徴とする、上記製造方法。 【請求項4】印刷インク、被覆材料、ペイント、プラスチック、ゴム材料、事務用品、清浄および研磨用組成物、木材ペイントならびに絵画用絵の具を着色するための請求項1または2記載のアゾ顔料の使用。 【請求項5】着色剤としての、電子写真トナーおよび現像剤中、粉体塗料およびエレクトレット材料中での、ならびにプラスチックの内部着色のための請求項1または2記載のアゾ顔料の使用。 【請求項6】トナー結合剤、0.01〜50重量%の請求項1または2記載のアゾ顔料および0.01〜20重量%のトリフェニルメタン;アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン);環状に連結したオリゴ糖(シクロデキストリン);ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンおよびオキサジンからなる群からの電荷制御剤を含む電子写真トナーまたは現像剤。 【請求項7】電荷制御剤が、式(17) 【化2】 で表される化合物;または式(3) 【化3】 〔式中R13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、R23、R33およびR43は同一であるかまたは異なっていてC1〜C5-アルキルであり、そしてY-はテトラフルオロボラートまたはテトラフェニルボラートアニオンである。〕で表される化合物;または式(5) 【化4】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルでありそしてA-はテトラフェニルボラートアニオンである。〕で表される化合物;または式(6) 【化5】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルであり、A- はテトラフェニルボラートアニオンでありそしてnは5000〜500,000の分子量に相当する値である。〕で表される化合物;または式(7) 【化6】 〔式中R17、R27、R37およびR47は同一または異なるC1〜C5-アルキル基でありそしてR57は二価基-S-、-S-S-、-SO-または-SO2-である。〕で表される化合物;または式(13) 【化7】 〔式中R113は塩素であり、R213およびR313は水素であり、M′はクロム、コバルトまたは鉄であり、そしてGは1つまたは2つのプロトンである。〕で表される化合物;または、アニオン成分が成分a)、b)およびc)そして所望であればd)およびe){但し、a)はジカルボン酸またはジカルボン酸の反応性誘導体であり、それはスルホ基を持たず、b)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである二官能性芳香族、脂肪族または脂環式スルホ化合物であり、c)は脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカルボナートジオールであり、d)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである多官能性化合物(官能性>2)であり、そしてe)はモノカルボン酸である。}の反応生成物からなるポリエステルであり、カチオン成分が水素原子または金属カチオンからなる高分子塩または式(11) 【化8】 〔式中Rは水素、ハロゲン、好ましくは塩素、直鎖または分枝の炭素原子数1〜12のアルキル、アラルキル、好ましくはベンジルもしくはフェネチル、-NO2、-NH2またはNHR111(R111 は炭素原子数1〜8のアルキル、置換されていないかもしくはC1〜C4-アルキル置換されているフェニルまたは-Si(CH3)3である)である。〕で表される化合物;または式(16) 【化9】 〔式中n16は3〜100の数であり、R116およびR216はOHまたはOR316(R316は置換されているかもしくは置換されていないC1〜C18-アルキル、C6〜C12-アリールまたはトシルである)であり、そしてX16はCH2OHまたはCH2COR316である。〕で表される化合物である、請求項6記載の電子写真トナーまたは現像剤。 【請求項8】アゾ顔料および電荷制御剤をトナー結合剤に均質に混入することを特徴とする、請求項6または7記載の電子写真トナーまたは現像剤の製造方法。 【請求項9】エポキシド、カルボキシルまたはヒドロキシル基を含むアクリル樹脂またはポリエステル樹脂、あるいはこれらの樹脂の組み合わせ、0.01〜50重量%の請求項1または2記載のアゾ顔料、および0.01〜20重量%のトリフェニルメタン;アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン);環状に連結したオリゴ糖(シクロデキストリン);ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンおよびオキサジンからなる群からの電荷制御剤を含む粉末または粉体塗料。 【請求項10】電荷制御剤が、式(17) 【化10】 で表される化合物;または式(3) 【化11】 〔式中R13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、R23、R33およびR43は同一であるかまたは異なっていてC1〜C5-アルキルであり、そしてY-はテトラフルオロボラートまたはテトラフェニルボラートアニオンである。〕で表される化合物;または式(5) 【化12】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルでありそしてA-はテトラフェニルボラートアニオンである。〕で表される化合物;または式(6) 【化13】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルであり、A-はテトラフェニルボラートアニオンでありそしてnは5000〜500,000の分子量に相当する値である。〕で表される化合物;または式(7) 【化14】 〔式中R17、R27、R37およびR47は同一または異なるC1〜C5-アルキル基でありそしてR57は二価基-S-、-S-S-、-SO-または-SO2-である。〕で表される化合物;または式(13) 【化15】 〔式中R113は塩素であり、R213およびR313は水素であり、M′はクロム、コバルトまたは鉄であり、そしてGは1つまたは2つのプロトンである。〕で表される化合物;または、アニオン成分が成分a)、b)およびc)そして所望であればd)およびe){但し、a)はジカルボン酸またはジカルボン酸の反応性誘導体であり、それはスルホ基を持たず、b)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである二官能性芳香族、脂肪族もしくは脂環式スルホ化合物であり、c)は脂肪族、脂環式または芳香族ジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカルボナートジオールであり、d)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである多官能性化合物(官能性>2)であり、そしてe)はモノカルボン酸である。}の反応生成物からなるポリエステルであり、カチオン成分が水素原子または金属カチオンからなる高分子塩;または式(11) 【化16】 〔式中Rは水素、ハロゲン、好ましくは塩素、直鎖または分枝の炭素原子数1〜12のアルキル、アラルキル、好ましくはベンジルもしくはフェネチル、-NO2、-NH2またはNHR111(R111は炭素原子数1〜8のアルキル、置換されていないかもしくはC1〜C4-アルキル置換されているフェニルまたは-Si(CH3)3である)である。〕で表される化合物;または式(16) 【化17】 〔式中n16は3〜100の数であり、R116 およびR216はOHまたはOR316(R316は置換されているかもしくは置換されていないC1〜C18-アルキル、C6〜C12-アリールまたはトシルである。)であり、そしてX16はCH2OHまたはCH2COR316である。〕で表される化合物である、請求項9記載の粉末または粉体塗料。 【請求項11】アゾ顔料および電荷制御剤を樹脂に均質に混入することを特徴とする、請求項9または10記載の粉末または粉体塗料の製造方法。」 2.申立ての理由及び当審における取消理由の概要 (1)特許異議申立人大日本インキ化学工業株式会社は、証拠として本願出願日前に頒布されたことが明らかな刊行物である下記の甲第1号証ないし甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証、及び実験証明書である甲第7号証を提出し、訂正前の本件請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証、甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件出願の明細書には記載不備があるため特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしておらず、したがって訂正前の本件請求項1ないし12に係る発明の特許は、特許法第113条2号及び4号の規定により取り消されるべきものであると主張している。 記 甲第1号証:特開平6-266163号公報 甲第2号証:特開平1-154161号公報 甲第3号証:PETER A.LEWIS 編「PIGMENT HANDBOOK、Volume I、 PROPERTIES AND ECONOMICS (Second Edition)」、 John Wiley & Sons, Inc.1988年、第429〜435頁 甲第4号証:「第35回 顔料入門講座 テキスト」社団法人色材協会、 顔料技術研究会、日本顔料技術協会、1993年6月15日 発行、第8頁 甲第5号証:Shunjiro Takijiri,“Effect of Particle size and shape on Lightfastness of Organic Pigments”22 Australian OCCA Proceedings and News, September 1981 甲第6号証:特開昭56-38354号公報 甲第7号証:大日本インキ化学工業株式会社顔料技術グループ 嶋田勝徳 による平成15年3月5日付け実験証明書 甲第8号証:(社)色材協会編「色材工学ハンドブック」株式会社朝倉書 店、1989年11月25日発行、第235頁 甲第9号証:特開平2-201378号公報 (2)当審において通知した取消しの理由の趣旨は、訂正前の本件請求項1、2、5、6に係る発明は、下記の実験証明書を参酌すれば、下記の刊行物1あるい5に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものであり、また、訂正前の本件請求項1ないし3、5ないし12に係る発明は、同じく下記の実験証明書を参酌すれば、下記の刊行物1ないし6に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、本件出願は明細書の記載不備があるため特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、したがって訂正前の本件請求項1ないし12に係る発明の特許は取り消すべきものである、というものである。 記 刊行物1:特開昭56-38354号公報(上記甲第6号証と同じ) 刊行物2:PETER A.LEWIS 編「PIGMENT HANDBOOK Volume I、 PROPERTIES AND ECONOMICS (Second Edition)」、 John Wiley & Sons, Inc. 1988年、第429〜435頁 (上記甲第3号証と同じ) 刊行物3:「第35回 顔料入門講座 テキスト」社団法人色材協会、顔 料技術研究会、日本顔料技術協会、1993年6月15日発行 、第8頁(上記甲第4号証と同じ) 刊行物4:(社)色材協会編「色材工学ハンドブック」株式会社朝倉書店 、1989年11月25日発行、第235頁(上記甲第8号証 と同じ) 刊行物5:特開平6-266163号公報(上記甲第1号証と同じ) 刊行物6:特開平2-201378号公報(上記甲第9号証と同じ) 実験証明書:大日本インキ化学工業株式会社顔料技術グループ 嶋田勝徳 による平成15年3月5日付け実験証明書(上記甲第7号証 と同じ) 3.甲号各証の記載 甲第1号証には、「結着樹脂中に下記式(I)で示される化合物を含有することを特徴とするイエロートナー。 【化1】 」 が記載されており(特許請求の範囲請求項1)、式(I)で示される化合物について、「本発明のイエロートナーに含有させる上記式(I)で示される化合物は、C.I.ピグメントイエロー180であって、優れた耐熱性、耐光性を有し、また定着における加熱に際して有害物質を発生することがない。また、これを用いて形成されるイエロートナーは、透明性、発色性、彩度等が優れているという特徴を有している。」と記載され(明細書段落【0006】参照)、帯電制御剤について、「本発明のイエロートナーにおいて、帯電制御は、結着樹脂、または染顔料自体で行ってもよいが、必要に応じて色再現上問題の生じないような帯電制御剤を併用して行ってもよい。帯電制御剤の例としては、4級アンモニウム塩等の塩基性電子供与性物質、金属キレート類、または、含金属染料等の酸性または電子吸引性物質をあげることができる。これらの中より、所望の帯電性が得られるよう適宜選択して用いることができる。」と記載されている(明細書段落【0011】参照)。 甲第2号証には、「下記一般式(式及び符号の説明省略)で表わされ平均粒径0.5μm以下のキナクリドン系顔料及び結着樹脂を主成分としてなることを特徴とするカラー電子写真用透明マゼンタトナー」が記載されており(特許請求の範囲第1項)、実施例1〜10及び比較例1〜10について、「結着樹脂とマゼンタ顔料と帯電制御剤との組み合せをヘンシェルミキサーで混合後、約130℃のロールミルにて30分間溶融混連し、冷却後粉砕分級して粒径5〜15μmのマゼンタトナーを得た。」と記載され(公報第4頁左上欄1行〜6行)、表-1には各実施例及び比較例においてトナーに用いた顔料のそれぞれの平均粒径と、トナーを現像・加熱定着した後のヘーズ度が記載されている(公報第5頁参照)。 甲第3号証には、ハンザイエロー及びオレンジに係る記述の中で、顔料の粒径が増すにしたがって比表面積が小さくなる旨の記載がある(第433頁左欄34行〜37行参照)。 甲第4号証には、顔料の着色力、隠ぺい力、透明性に係る記述があり、「隠ぺい力は下地を完全に隠すことができる能力で、一般に顔料粒子が小さくなるほど増大するが、光の波長の半分(0.3〜0.4μm)より小さくなるにつれて光を透過し透明性を増す。」と記載されている(第8頁7行〜9行)。 甲第5号証には、キナクリドン系顔料に係る記述があり、キナクリドン顔料のRed BNの粒子径が0.1〜0.3μm、比表面積が51m2/g、同じくRed YEの粒子径が0.2〜0.5μm、比表面積が34m2/gであることが記載されている(第2頁右欄15行〜21行参照)。 甲第6号証には、「1.一般式1 (式中残基R1は同一か又は異なっていることができそして水素-、塩素-又は臭素原子、メチル-又はメトキシ基を意味し、同様に同一か又は異なっていることができる残基R2は水素原子であるか又は、同一環系に属する置換分R1が水素原子である場合には、又メチル-又はエチル基であることができそしてnは1-4の数である)の対称及び非対称ジスアゾ化合物及びそれらの混合物。」が記載されており(特許請求の範囲第1項)、その用途について、「本発明によるジスアゾ化合物及びそれらの混合物は価値ある黄色着色剤である。これらは水不溶性でありそして通常の有機溶剤に不溶でありそして高分子有機材料の顔料着色に著しく適する。・・・これらは合成物質、天然及び合成樹脂、ゴム、・・・ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリグリコールテレフタレート・・・の染色・・・並びにプリントインキ、レーキ顔料又はデスパージョンペイントの製造に及びグラフィックプリント及び捺染用並びに合成物質-及び金属表面上でのプリント用のプリントペーストの顔料着色に著しく適する。」と記載されている(公報第5頁右上欄10行〜左下欄8行)。そして実施例1には、カップリング成分とビスジアゾニウム塩溶液のカップリングについて、「前記ビスジアゾニウム塩溶液とのカップリングは2-3時間以内に18-20℃の温度で行われ、その際ビスジアゾニウム塩溶液を強く撹拌したカップリング懸濁液の表面下に、カップリング混合物中の過剰のジアゾニウム塩が検出し得ない様に、導入する。」と記載されている(公報第6頁左上欄13行〜18行)。 甲第7号証には、本件請求項1において式(1)で表される顔料粉末を合成し、該顔料と、商業的に入手できる式(1)で表される顔料粉末のいくつかについて比表面積を測定し、さらにこれらの顔料を含むインキについて透明性を測定した結果が示されている。 甲第8号証には、顔料の一般的性質についての記述があり、粒子の大きさと形について、「顔料粒子の大きさと形状は,色,隠ぺい力,着色力,分散性,粘性および塗膜強度などと関係している.顔料粒子の形状は,特定の場合を除き表面エネルギーの低いそろった球状が望ましい.」と記載されている(第235頁下から7行〜下から5行)。 甲第9号証には、「1.下記一般式〔I〕で示されるカリックス(n)アレン化合物の少なくとも1種を含有する静電荷像現像用トナー。(一般式及び符号の説明省略) 2.請求項1記載の一般式〔I〕で示されるカリックス(n)アレン化合物が樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部配合されている静電荷像現像用トナー。」が記載されており(特許請求の範囲)、 発明の効果について、「カリックス(n)アレン化合物を荷電制御剤として含有する本発明のトナーは、実施例からも明らかな通り、耐環境性、保存安定性に優れると共に、鮮明且つ細線再現性のある画像を形成することができる。」と記載されている(公報第8頁右上欄12行〜16行)。 4.対比・判断 (1)特許法第29条第1項について 〔本件発明1について〕 本件発明1と、上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載の発明とを比較すると、甲第1号証及び甲第6号証のいずれにも本件発明1の式(1)で表されるアゾ顔料が記載されているものと認められるが、本件発明1のアゾ顔料はさらに、「55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する」として顔料粉末の比表面積が特定されているのに対し、上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載のアゾ顔料の顔料粉末の比表面積は不明である。 この点について検討するに、本件明細書にはアゾ顔料の製造方法について、「上記特徴を有する式(1)で表される顔料の製造方法は、その合成を、異常に低い温度でかつ最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を素早く添加する──2,3秒以内に注ぎ入れることさえ可能である──ことによって、イオンまたは非イオン界面活性剤の存在下または不存在下に行なうことを含む。この方法は実質的に支配的な定説──これによればアゾ顔料は低い濃度勾配で、すなわち最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を除々に添加して、カップリング懸濁液中で製造される──から逸脱している。この先入観に打ち勝つことによって、顔料を、所望されない分解生成物を含まない、これまで知られていない、極めて微細なしかし非常に凝集した(aggregated and agglomerated) 形(プレ顔料)で合成することができる。それ自体所望されない凝集(aggregation) 傾向は、有機溶剤で後処理することによって除去され得る。このような処理の過程で、結晶障害を除去し、比表面エネルギーを低下させる。この方法は、顔料のBET表面積の、後処理の間の10〜100倍までの急激な増大によって特徴づけられる。」と記載されており(段落【0016】参照)、この記載によれば、本件発明1のアゾ顔料は従来とは異なった製法により製造されるため、大きな比表面積を有するものであると認められる。 これに対して、甲第1号証には、式(1)で表される化合物の製造方法は一切記載されておらず、また甲第6号証には、カップリング反応について「前記ビスジアゾニウム塩溶液とのカップリングは2-3時間以内に18-20℃の温度で行われ、その際ビスジアゾニウム塩溶液を強く撹拌したカップリング懸濁液の表面下に、カップリング混合物中の過剰のジアゾニウム塩が検出し得ない様に、導入する。」(公報第6頁左上欄13行〜18行参照)と記載されているものの、この方法は本件発明1において用いられている上記のような方法とは明らかに異なるものであり、このような方法で得られた顔料が本件発明1と同程度の比表面積を有していると推定することはできない。また、異議申立人が甲第7号証として提出した実験証明書において表1に示されている市販の顔料粉末の比表面積は、一番大きい値でも46.7m2/gにとどまっており、55m2/gより大きい比表面積の値を有する顔料が普通のものであったということはできない。なお、上記実験証明書には、比表面積が55m2/gより大きい顔料粉末が示されているが、これらの顔料粉末を製造した方法は甲第6号証記載の方法とは異なるものであり、かつ、上記実験証明書で用いられた方法が、従来のアゾ顔料の製造方法として一般的なものだったとする理由もないことから、上記実験証明書で示された顔料粉末が上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載のアゾ顔料と同じものであるとは認めることができない。 このように、上記甲第1号証あるいは甲第6号証に記載されているアゾ顔料の比表面積が55m2/gより大きいものであるということを裏付ける根拠は何もないことから、比表面積が55m2/gより大きい顔料が上記甲第1号証あるいは甲第6号証に記載されているとすることはできない。 したがって、本件発明1のアゾ顔料は「55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する」点において上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載のアゾ顔料とは明らかに異なるものであるから、本件発明1は上記甲第1号証あるいは甲第6号証に記載された発明ではない。 〔本件発明4及び5について〕 本件発明4及び5は、いずれも本件発明1の構成をその主たる構成として含むものである。そして上述したように本件発明1は上記甲第1号証あるいは甲第6号証にそれぞれ記載された発明ではなく、したがって同様の理由により、本件発明4及び5も、上記甲第1号証あるいは甲第6号証にそれぞれ記載された発明ではない。 (2)特許法第29条第2項について 〔本件発明1について〕 本件発明1と、上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載の発明とを比較すると、上述したとおり、これらは本件発明1の式(1)で表されるアゾ顔料である点で一致するが、本件発明1のアゾ顔料はさらに「55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する」ものである点で、上記甲第1号証あるいは甲第6号証記載のアゾ顔料の顔料粉末とは相違している。 上記相違点について検討するに、上記甲第1号証あるいは甲第6号証には、式(1)で表されるアゾ顔料の顔料粉末の比表面積について検討することは何も記載されておらず、甲第2号証ないし甲第5号証、甲第8号証及び甲第9号証には式(1)で表されるアゾ顔料の顔料粉末の比表面積の具体的な数値は全く記載されていないので、これらを併せて勘案しても、「55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する」という構成を導き出すことはできない。 そして、本件発明1は、「55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する」という構成を備えることにより、優れた色相、熱安定性、耐光性を保持したまま、透明度が非常に改善された顔料が得られるという明細書記載の効果(本件明細書段落【0028】、【0029】参照)を奏するものであると認められる。 したがって、本件発明1は上記甲第1号証ないし甲第6号証、甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明ではない。 〔本件発明2ないし11について〕 本件発明2ないし11は、いずれも本件発明1の構成をその主たる構成として含むものである。そして上述したように本件発明1は上記甲第1号証ないし甲第6号証、甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明ではなく、したがって同様の理由により、本件発明2ないし11も、上記甲第1号証ないし第6号証、甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明ではない。 (3)特許法第36条について 異議申立人は、本件出願の明細書において、顔料粉末の比表面積の上限が示されていないこと、「電子写真トナーまたは現像剤」と「粉末または粉体塗料」の区別が明らかでないこと、実施例の記載が不十分であることを挙げ、明細書の記載が不備である旨主張している。しかし、顔料粉末という用途が明らかである以上、その比表面積の値の上限は常識的な範囲で定まるものであり、また、「電子写真トナーまたは現像剤」とは電子写真に用いられるトナーまたは現像剤、「粉末または粉体塗料」とは物品の表面を被覆するために使用される粉末塗料または粉体塗料を意味するものであることは、明細書の記載全般から見ても明らかであり、さらに、実施例の記載が一部不十分であるとしても、発明自体は明細書の記載から明確に把握できるものであることから、異議申立人の上記の主張は採用できない。 なお、当審において、実施例で用いられている試験方法の詳細が不明である旨の取消理由を通知したが、特許異議意見書とともに提出された参考資料を参照すれば明細書に記載された試験方法を特定することができるため、当審における取消理由は解消した。 IV.むすび 以上のとおりであるから特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし11に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし11に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電子写真トナーおよび現像剤用顔料 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 55m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する式(1) 【化1】 で表されるアゾ顔料。 【請求項2】 1.6:1より小さい、顔料粒子の長さ/幅比を有する、請求項1記載のアゾ顔料。 【請求項3】 1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタンビスジアゾニウム塩(ジアゾ成分)と5-アセトアセチルアミノベンズイミダゾール-2-オン(カップリング成分)とのアゾカップリングによる請求項1または2記載のアゾ顔料の製造方法であって、アゾカップリングを5〜35℃の温度で行い、最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を30分以内の時間にわたって添加し、この際アゾカップリングの前、間または後にイオン界面活性剤または非イオン界面活性剤を添加しまたは添加せず、次いで形成された凝集したプレ顔料の溶剤仕上げを有機性または有機性/水性媒体中で行なうことを特徴とする、上記製造方法。 【請求項4】 印刷インク、被覆材料、ペイント、プラスチック、ゴム材料、事務用品、清浄および研磨用組成物、木材ペイントならびに絵画用絵の具を着色するための請求項1または2記載のアゾ顔料の使用。 【請求項5】 着色剤としての、電子写真トナーおよび現像剤中、粉体塗料およびエレクトレット材料中での、ならびにプラスチックの内部着色のためにの請求項1または2記載のアゾ顔料の使用。 【請求項6】 トナー結合剤、0.01〜50重量%の請求項1または2記載のアゾ顔料および0.01〜20重量%のトリフェニルメタン;アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン);環状に連結したオリゴ糖(シクロデキストリン);ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンおよびオキサジンからなる群からの電荷制御剤を含む電子写真トナーまたは現像剤。 【請求項7】 電荷制御剤が、 式(17) 【化2】 で表される化合物; または式(3) 【化3】 〔式中R13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、R23、R33およびR43は同一であるかまたは異なっていてC1〜C5-アルキルであり、そしてY-はテトラフルオロボラートまたはテトラフェニルボラートアニオンである。〕 で表される化合物; または式(5) 【化4】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルでありそしてA-はテトラフェニルボラートアニオンである。〕 で表される化合物; または式(6) 【化5】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルであり、A-はテトラフェニルボラートアニオンでありそしてnは5000〜500,000の分子量に相当する値である。〕 で表される化合物; または式(7) 【化6】 〔式中R17、R27、R37およびR47は同一または異なるC1〜C5-アルキル基でありそしてR57は二価基-S-、-S-S-、-SO-または-SO2-である。〕 で表される化合物; または式(13) 【化7】 〔式中R113は塩素であり、R213およびR313は水素であり、M′はクロム、コバルトまたは鉄であり、そしてGは1つまたは2つのプロトンである。〕 で表される化合物; または、アニオン成分が成分a)、b)およびc)そして所望であればd)およびe) {但し、a)はジカルボン酸またはジカルボン酸の反応性誘導体であり、それはスルホ基を持たず、 b)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである二官能性芳香族、脂肪族または脂環式スルホ化合物であり、 c)は脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカルボナートジオールであり、 d)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである多官能性化合物(官能性>2)であり、そして e)はモノカルボン酸である。} の反応生成物からなるポリエステルであり、カチオン成分が水素原子または金属カチオンからなる高分子塩 または式(11) 【化8】 〔式中 Rは水素、ハロゲン、好ましくは塩素、直鎖または分枝の炭素原子数1〜12のアルキル、アラルキル、好ましくはベンジルもしくはフェネチル、-NO2、-NH2またはNHR111(R111は炭素原子数1〜8のアルキル、置換されていないかもしくはC1〜C4-アルキル置換されているフェニルまたは-Si(CH3)3である)である。〕 で表される化合物; または式(16) 【化9】 〔式中n16は3〜100の数であり、R116およびR216はOHまたはOR316(R316は置換されているかもしくは置換されていないC1〜C18-アルキル、C6〜C12-アリールまたはトシルである)であり、そしてX16はCH2OHまたはCH2COR316である。〕 で表される化合物である、請求項6記載の電子写真トナーまたは現像剤。 【請求項8】 アゾ顔料および電荷制御剤をトナー結合剤に均質に混入することを特徴とする、請求項6または7記載の電子写真トナーまたは現像剤の製造方法。 【請求項9】 エポキシド、カルボキシルまたはヒドロキシル基を含むアクリル樹脂またはポリエステル樹脂、あるいはこれらの樹脂の組み合わせ、0.01〜50重量%の請求項1または2記載のアゾ顔料、および0.01〜20重量%のトリフェニルメタン;アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン);環状に連結したオリゴ糖(シクロデキストリン);ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンおよびオキサジンからなる群からの電荷制御剤を含む粉末または粉体塗料。 【請求項10】 電荷制御剤が、 式(17) 【化10】 で表される化合物; または式(3) 【化11】 〔式中R13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、R23、R33およびR43は同一であるかまたは異なっていてC1〜C5-アルキルであり、そしてY-はテトラフルオロボラートまたはテトラフェニルボラートアニオンである。〕 で表される化合物; または式(5) 【化12】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルでありそしてA-はテトラフェニルボラートアニオンである。〕 で表される化合物; または式(6) 【化13】 〔式中R15およびR25はそれぞれメチルであり、A-はテトラフェニルボラートアニオンでありそしてnは5000〜500,000の分子量に相当する値である。〕 で表される化合物; または式(7) 【化14】 〔式中R17、R27、R37およびR47は同一または異なるC1〜C5-アルキル基でありそしてR57は二価基-S-、-S-S-、-SO-または-SO2-である。〕 で表される化合物; または式(13) 【化15】 〔式中R113は塩素であり、R213およびR313は水素であり、M′はクロム、コバルトまたは鉄であり、そしてGは1つまたは2つのプロトンである。〕 で表される化合物; または、アニオン成分が成分a)、b)およびc)そして所望であればd)およびe) {但し、a)はジカルボン酸またはジカルボン酸の反応性誘導体であり、それはスルホ基を持たず、 b)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである二官能性芳香族、脂肪族もしくは脂環式スルホ化合物であり、 c)は脂肪族、脂環式または芳香族ジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカルボナートジオールであり、 d)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである多官能性化合物(官能性>2)であり、そして e)はモノカルボン酸である。} の反応生成物からなるポリエステルであり、カチオン成分が水素原子または金属カチオンからなる高分子塩; または式(11) 【化16】 〔式中 Rは水素、ハロゲン、好ましくは塩素、直鎖または分枝の炭素原子数1〜12のアルキル、アラルキル、好ましくはベンジルもしくはフェネチル、-NO2、-NH2またはNHR111(R111は炭素原子数1〜8のアルキル、置換されていないかもしくはC1〜C4-アルキル置換されているフェニルまたは-Si(CH3)3である)である。〕 で表される化合物; または式(16) 【化17】 〔式中n16は3〜100の数であり、R116およびR216はOHまたはOR316(R316は置換されているかもしくは置換されていないC1〜C18-アルキル、C6〜C12-アリールまたはトシルである。)であり、そしてX16はCH2OHまたはCH2COR316である。〕 で表される化合物である、請求項9記載の粉末または粉体塗料。 【請求項11】 アゾ顔料および電荷制御剤を樹脂に均質に混入することを特徴とする、請求項9または10記載の粉末または粉体塗料の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、電子写真トナーおよび現像剤中の着色剤としての、C.I.ピグメント・イエロー180をベースにした改善された顔料に関する。 【0002】 【従来の技術】 電子写真記録方法において、「電荷潜像」が感光体上につくられる。この「電荷潜像」は、静電的に帯電したトナーの適用により現像され、次いで、例えば紙、織物、フィルムまたはプラスチックに移され、そして、例えば圧力、放射線、熱または溶剤の作用によって定着される。典型的なトナーは一成分または二成分の粉末トナー(一成分または二成分現像剤ともいう)であるが、特別なトナー、例えば磁気または液体トナーおよび重合トナーも使用される(L.B.Schein,“Electrophotography and Development Physics”;Springer Series in Electrophysics 14;Springer-Verlag,第2版,1992)。 【0003】 トナーの品質の1つの基準は、トナーの比電荷q/m(単位質量あたりの電荷)である。静電荷の極性および高さに加えて、主な、決定的な品質基準は、所望の電荷レベルに迅速に到達することおよび長期の活性化期間中この電荷が変わらないことである。これに加えて、気候、例えば温度および大気湿度に対するトナーの非感応性が、その適性のための付加的な重要な基準である。 【0004】 正にも負にも帯電可能なトナーが、プロセスのタイプおよび装置のタイプに応じて、写真複写、レーザープリンター、LED(発光ダイオード)およびLCS(液晶シャッター)プリンターまたは電子写真技術をベースにする他のデジタルプリンターにおいて使用される。 正または負の電荷を有する電子写真トナーまたは現像剤を得るために、一般に電荷制御剤が添加される。発色団成分として、カラートナー中で、典型的には、有機カラー顔料が使用される。カラー顔料は、染料に比べて、適用媒体中での不溶性のために、著しい利点、例えばより良好な熱安定性および耐光性を有する。 【0005】 減法混色の原則に基づいて、三原色であるイエロー、シアンおよびマゼンタを使用して、可視色スペクトル全部をつくり出すことができる。正確な色の再生は、それぞれの原色が正確に決められた色に関する要求に合う場合にのみ可能である。さもなければ、いくつかの色合いを再生することができず、色のコントラストが不十分である。 【0006】 フルカラートナーの場合、正確に決められた色に関する要求に加えて、イエロー、シアンおよびマゼンタの三色のトナーを、摩擦帯電性に関しても互いに正確に調和させなければならない。なぜならば、それらは同一装置中で連続して転写されるからである。 着色剤はトナーの摩擦電荷に持続した影響を及ぼし得る場合があり得ることが知られている(H.-T.Macholdt,A.Sieber,Dyes & Pigments 9(1988),119-127)。着色剤の種々の摩擦帯電効果およびその結果生じる、時には非常に著しいこともある、トナー帯電可能性に及ぼす効果のために、着色剤を、あらかじめ作成されたトナーベース配合物に単純に添加することはできない。それどころか、それぞれの着色剤のために別個の配合――必要な電荷制御剤の種類と量とが特に別に調合されている――を作成する必要があり得る。従ってこの処置は非常に労力がかかりそして、三色法のためのカラートナーの場合には、既に上で記載した難しさに加えて、さらに困難性を増大させる。 【0007】 他の重要な実際上の要求は、着色剤が高い熱安定性および良好な分散性を有するべきことである。電荷制御剤をトナー樹脂に混入する典型的な温度は、混練装置または押出機を用いる場合、100℃〜200℃である。従って、200℃、より、好ましくはさらに250℃の熱安定性を有することが非常に有利である。熱安定性が比較的長期間(約30分)にわたって、種々のバインダー系中で保証されることも重要である。典型的なトナーバインダーは、付加重合樹脂、重付加樹脂および縮合重合樹脂、例えばスチレン、スチレン/アクリラート、スチレン/ブタジエン、アクリラート、ポリエステル、フェノールエポキシ樹脂、ポリスルホンおよびポリウレタン単独またはそれらの組み合わせであり、それは、さらに電化制御剤、ワックスまたは流動助剤のような成分を含むこともでき、または、これらの成分を後から添加することができる。 【0008】 電子写真トナーおよび現像剤のための黄色の顔料は、多数の形で使用されている。一般に、アゾベースの顔料が、特にその色、色の濃さおよび分散性のために、好ましい。典型的に使用される黄色のアゾ顔料はC.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー13、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー174およびC.I.ピグメント・イエロー176である。 【0009】 これらの顔料の欠点は、それらのいくつかが熱安定性を欠いていること(特にジアリーリド(diarylide)顔料)、および有機結合塩素または重金属が分子中に存在するという環境衛生上の問題がある。 環境衛生上の要求にも合う少数のアゾ顔料の1つはC.I.ピグメント・イエロー180である。しかし、市販のピグメント・イエロー180は、その最も透明な形でさえも、フルカラートナー中で使用するには透明性が不十分であるという欠点を有し、このことはそれのこの分野での使用を最初から不可能にする。さらに、この顔料は摩擦帯電効果を有し、これは負の極性に対するトナー帯電性に影響を及ぼす。 【0010】 フルカラーコピーまたは印刷において、イエロー、シアンおよびマゼンタ色はかさなりあってコピーまたは印刷され、その際色の順序は装置によって決まるので、透明性は中心的重要性を有する。もし、その時、上にある色の透明性が十分でないと、その下にある色は、十分に透けて見えず、色の再生が歪曲する。オーバーヘッド・シート上にコピーまたは印刷する時、透明性はなおより重要である。なぜならば、一色だけでも透明性を欠いていると、投影された像全体が灰色になるからである。 【0011】 原則的に、最小の固有の摩擦帯電効果を有する顔料が必要である。なぜならば、この顔料は、その時、正に帯電できるトナーにも負に帯電できるトナーにも問題なく使用できるからである。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、より少ない負の固有の摩擦帯電効果を有しかつさらに生態学的見地から上記の必要条件を満たす透明な黄色の顔料を提供することであった。 【0013】 【課題を解決するための手段】 この目的は驚くべきことに、下記に詳述するアゾ顔料――その特徴は、それの特に大きい表面積である――によって達成された。本発明は、55m2/gより大きい、そして特に60m2/gより大きい顔料粉末の比表面積を有する式(1) 【0014】 【化18】 で表されるアゾ顔料を提供する。 式(1)で表される顔料はそれ自体既に公知であり(米国特許第4,870,164号明細書および同第4,935,502号明細書)、Novoperum-Gelb(商標)P-HGという名称で市販されている。この公知の顔料は、しかしながら、それの従来最も透明な形でも、せいぜい44m2/gの比表面積――少なくとも140nmの平均粒度d50に関して――を有する。45m2/gより大きい比表面積――120nmまたはそれ以下の平均粒度d50に関して――を有する式(1)で表される顔料は、これまで開示されていない。 【0015】 改善された、より大きい比表面積およびこれと同時に現れる改善された、より小さい平均粒度に加えて、本発明の顔料は、異なる粒子形態も有している。今までに知られている最も透明な形は、棒型粒子を有しているが、本発明の顔料は立方体形に結晶している。このことは、顔料粒子の長さ/幅比によっても説明できる。今まで知られている顔料の粒子は、2:1より大きい長さ/幅比を有しているが、本発明の顔料は1.6:1より小さい長さ/幅比を有している。 【0016】 上記特徴を有する式(1)で表される顔料の製造方法は、その合成を、異常に低い温度でかつ最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を素早く添加する――2,3秒以内に注ぎ入れることさえ可能である――ことによって、イオンまたは非イオン界面活性剤の存在下または不存在下に行なうことを含む。この方法は実質的に支配的な定説――これによればアゾ顔料は低い濃度勾配で、すなわち最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を除々に添加して、カップリング懸濁液中で製造される――から逸脱している。この先入観に打ち勝つことによって、顔料を、所望されない分解生成物を含まない、これまで知られていない、極めて微細なしかし非常に凝集した(aggregated and agglomerated)形(プレ顔料)で合成することができる。それ自体所望されない凝集(aggregation)傾向は、有機溶剤で後処理することによって除去され得る。このような処理の過程で、結晶障害を除去し、比表面エネルギーを低下させる。この方法は、顔料のBET表面積の、後処理の間の10〜100倍までの急激な増大によって特徴づけられる。 【0017】 本発明はまた、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタンビスジアゾニウム塩(ジアゾ成分)と5-アセトアセチルアミノベンズイミダゾール-2-オン(カップリング成分)とのアゾカップリングによる上記の特別の特徴を有する式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法であって、アゾカップリングを5〜35℃、好ましくは10〜30℃の温度で行い、最初に仕込んだカップリング成分にジアゾ成分を30分以内の時間、好ましくは15分以内の時間にわたって添加し、アゾカップリングの前、間または後にイオン界面活性剤または非イオン界面活性剤を添加しまたは添加せず、次いで形成された凝集したプレ顔料の溶剤仕上げ――有機性または水性有機性媒体が特に好ましい――を行なうことを包含する方法を提供する。 【0018】 本発明において特に適当な界面活性剤は、アルコール、脂肪アルコール、フェノール、アルキルフェノール、ナフトール、アルキルナフトールおよび脂肪アミンと、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの非イオンアルコキシラート、ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックポリマーである;酸素または窒素原子を介して次の種類の基に結合しているポリ(エチレンオキシ)鎖またはポリ(エチレンオキシ)-ポリ(メチルエチレンオキシ)鎖を含む化合物も適している:炭素原子数6〜26の第一または第二アルキル基、特に鎖長が炭素原子数10〜18のアルキル基、殊にノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、2-ブチルオクチル、2-フェニルオクチル、2-ヘキルデシル、2-ヘプチルウンデシル、2-オクチルドデシル、2-ノニルトリデシル、2-デシルテトラデシル、10-ウンデセニル、オレイル、9-オクタデセニル、リノレイルまたはリノレニル基;炭素原子数6〜30の脂環式基;芳香族基、例えば置換されいないかまたは3つまでの第一または第二アルキル基で置換されているフェニルまたはアルキルフェニル基、好ましくはヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、イソノニルフェニル、トリブチルフェニルまたはジノニルフェニル基、その際フェニル基は、ベンジル-p-フェニルフェニル基のように、さらに芳香族基で置換されていることができる;ナフチルまたはアルキルナフチル基、好ましくはα-ナフチルまたはβ-ナフチル基または、1〜3個の枝分かれしていないかもしくは枝分かれしているアルキル基、例えばメチル、ブチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルもしくはテトラデシルを有するアルキル-β-ナフチル基;置換されていないかもしくはアルキル置換されているヘテロ環式基またはヘテロ環式基で置換されているアルキル基、例えば2-[2-(8-ヘプタデセン-1-イル)-4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル]エチル基。 【0019】 上記化合物の混合物、特に、オキソ合成からの合成脂肪アルコールまたは天然原料から(脂肪の分解および還元後)得られる脂肪アルコールの、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを用いるアルコキシル化で得られる混合物を使用することもできる。天然原料としては、ココナツ油、パーム核油、綿実油、ヒマワリ油、ダイズ油、アマニ油、アブラナ油、獣油および魚油を挙げることができる。これらの天然原料、特にココナツ脂肪アミン、獣脂アミン、オレイルアミンまたはジアルキル-脂肪アミンオキシド、例えばジメチルココアルキルアミンオキシドから得られる脂肪アミンアルコキシラートもまた適している。その他、例えば次の文献:ドイツ連邦共和国特許出願公開第2730223号明細書、ドイツ連邦共和国特許発明第2156603号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3026127号明細書、ドイツ連邦共和国特許発明第2421606号明細書およびヨーロッパ特許出願公開第0017189号明細書に記載されているようなアルコキシル化された、比較的高分子量の界面活性助剤(界面活性剤)もまた挙げることができる。 【0020】 さらに、糖アルキラートのような再生可能な原料をベースにした現代の非イオン界面活性剤を使用することもでき、その際記載した非イオン界面活性剤の全てはアニオンまたはカチオン界面活性剤と混合して使用することもできる。アニオン界面活性剤のうち、極性親水性基として、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸部分エステルまたはカルボキラート官能基を含むものが特に重要である。カチオン界面活性剤は一般に、第四アミン官能基および適当な対イオン、例えばハロゲン化物またはアニオン――主族元素のオキソ酸から誘導される――を含む。 【0021】 溶剤仕上げは、例えば米国特許第4,870,164号明細書および同第4,935,502号明細書に記載されているような、慣用の条件下に行なわれる。最も好都合な方法は、有機性媒体としてイソブタノールまたはイソブタノール/水混合物を使用し、50〜150℃、好ましくは90〜110℃で、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜2時間、そして特に好ましくは60〜70分間加熱することである。 【0022】 本発明の製造方法によって、上記アゾ顔料は、電子写真トナーおよび現像剤中で着色剤として使用できる形で得られる、すなわち、上記アゾ顔料は、以前に知られているC.I.ピグメント・イエロー180と比較して、著しく改善された透明性およびより少ない負の固有の摩擦帯電効果を持っている。 電子写真トナーおよび現像剤中で使用される他、顔料の摩擦電気的に変えられた固有の効果は、特に、例えば金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、織物材料、紙またはゴムから作られた物品の表面を被覆するために使用される、摩擦電気的または界面動電的(electrokinetically)に噴霧される塗料中で、粉末および塗料の静電荷をも改善することができる。粉体塗装技術は、例えば、小さい物品、例えば、庭園家具、キャンプ用品、家具、乗物部品、冷蔵庫およびたなを被覆する時に、また、複雑な形状の半製品を被覆するために使用される。粉体塗料または粉末は、一般に次の2つの方法の中の1つによって、その静電荷を持つようになる: a)コロナ方法において、粉体塗料または粉末を、帯電したコロナのそばを通過させて、それによって帯電させる; b)摩擦電気的または界面動電的な方法において、摩擦電気の原理を使用する。 【0023】 噴霧装置において、粉体塗料または粉末は、その摩擦パートナー、一般に、例えばポリテトラフルオロエチレンから作られた、ホースまたはスプレー管の電荷と反対の静電荷を持つようになる。上記2つの方法を組み合わせることもできる。 使用される典型的な粉体塗料用樹脂は、慣用の硬化剤と一緒のエポキシ樹脂、カルボキシルおよびヒドロキシル基を含むポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂である。樹脂の組み合わせも使用される。例えば、エポキシ樹脂はしばしば、カルボキシルおよびヒドロキシル基を含むポリエステル樹脂と組み合わせて使用される。エポキシ樹脂のための典型的な硬化成分は、例えば、酸無水物、イミダゾールおよびジシアンジアミド、ならびにそれらの誘導体である。ヒドロキシル基を含むポリエステル樹脂のための典型的な硬化成分は、例えば、酸無水物、ブロックトイソシアナート、ビスアシルウレタン、フェノール樹脂およびメラミン樹脂である。カルボキシル基を含むポリエステル樹脂のための典型的硬化成分は、例えば、トリグリシジルイソシアヌラートまたはエポキシ樹脂である。アクリル樹脂中で使用される典型的な硬化成分は、例えば、オキサゾリン、イソシアナート、トリグリシジルイソシアヌラートまたはジカルボン酸である。 【0024】 不十分な帯電の欠点は、とりわけ、摩擦電気的にまたは界面動電的に噴霧される、ポリエステル樹脂、特にカルボキシル基を含むポリエステルを用いて、またはいわゆる混合粉体――ハイブリッド粉末とも呼ばれる――を用いて作られた粉末および粉体塗料で見られる。混合粉末とは、樹脂ベースがエポキシ樹脂と、カルボキシル基を含むポリエステル樹脂との組み合わせからなる粉体塗料である。混合粉末は、実際上最も代表的な粉体塗料のベースである。上記粉末および粉体塗料の不十分な帯電から、被覆すべき半製品上で付着率およびつきまわり性(throwing power)が不十分で、その際、ある環境下で、顔料の固有の摩擦帯電効果が、それ自体適当な樹脂系の帯電性の喪失の原因にもなり得ることが知られている(H.-T.Macholdt,“Ladungssteuermittel als Konzept fuer die triboelektrische Aufladung”[摩擦電気帯電における概念としての電荷制御剤];EPSシリーズ“Praxis Forum,Fachbroschuere Oberflaechentechnik 27/91”第102-111頁;Technik+Kommunikations Verlags GmbH,Berlin(1991))。術語「つきまわり性」は、粉末または粉体塗料が、被覆すべき材料――後面、空洞、亀裂および、特に内部縁および角を含む――上に付着される程度の尺度である。 【0025】 さらに、顔料の変えられた固有の摩擦帯電効果は、着色された(染色された)エレクトレット材料のエレクトレット特性を改善し得、その際、典型的なエレクトレット材料は、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリアクリラート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレンまたはフッ素化ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンならびに過フッ素化エチレンおよびプロピレンをベースにするか、あるいはポリエステル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、セルロールエステル、ポリアルキレンテレフタラートおよびそれらの混合物をベースにする。エレクトレット材料は、多数の適用分野を有し、コロナ帯電または摩擦電気帯電によりその電荷を持ち得る(G.M.Sessler,“Electret”,Topics in Applied Physics,第33巻,Springer Verlag,New York,Heidelberg,第2版,1987を参照のこと)。 【0026】 さらに、顔料の変えられた固有の摩擦帯電効果は、静電方法によって分離される着色された(染色された)ポリマーの分離特性を高め得る(Y.Higashiyau,J.of Electrostatics,30,1993,203-212,およびそれに引用された文献,ならびにJ.A.Cross“Electrostatics-Principles,Problems and Applications”,Adam Hilger,Bristol,1987,特に第5.3章“Electrostatic Separation”およびそれに引用された文献を参照のこと)。従って、顔料の固有の摩擦帯電効果は、プラスチックの内部着色の際にも重要である。この固有の摩擦帯電効果は、激しい摩擦接触がある方法または加工工程、例えば、紡糸プロセス、フィルム-延伸プロセスまたは他の造形方法においても重要である。 【0027】 さらに、本発明のアゾ顔料は、印刷インク、被覆材料、塗料、プラスチック、ゴム材料、事務用品、木材塗料、清浄および研磨用組成物、画家用絵の具中の、ならびに水性および非水性のインクジェットインク中の、ならびに、ホットメルト技術によって作用するインク中の着色剤としても適している。典型的な印刷インクの例は、オフセット印刷インク、ハーフトーングラビア印刷インクならびに水性および溶剤含有包装印刷およびフレキソグラフ印刷用の印刷インクである。典型的な被覆材料は、自動車OEM仕上材料および再仕上材料、工業用仕上材料、ならびに建築塗料(例えばポリマー下塗りまたはエマルション塗料)である。ポリマーの着色の典型的な例は、硬質および軟質PVC(ポリビニルクロリド)、ポリオレフィンまたはポリスチレン中での着色である。 【0028】 P.Y.180をベースにした本発明のアゾ顔料の、特にトナー結合剤中での、特別な利点は、P.Y.180の今までの標準(Novoperm Gelb P-HG)と比べて識別できることである。例えば、Novoperm Gelb P-HGと比べて、例えば、本発明に従って合成された顔料(例1)は、-1.98のdL値まで高めれた透明度(より透明な3までの評価単位)を有しており、これは実施のために非常に著しい改善を表す。特に強調すべき点は、本発明の顔料が、既知の標準と比べて、より小さい粒度を有するばかりでなく、著しい針状形状から立方体形状への変化を示す改善された粒子形態を有することである。この改善は、高分子材料および(有機)溶剤中でのずっと容易な分散性および懸濁性を引き起こす。 【0029】 得られる透明度の改善は、実施のために非常に有利でありまた人の目にも直ちに識別できる。さらに、非常にずっと大きな比表面積のために透明度が非常に改善されたにもかかわらず、該顔料の他の有利な色特性、例えば色相、熱安定性および耐光性が失われていないことは驚くべきことである。このことは、例えば、X線回折図中で結晶変態と、反射バンドの位置および半ピーク高さ値での幅がもとのままであることからわかる。 【0030】 さらに、本発明の顔料の固有の摩擦帯電効果の改善は、先行技術(Novoperm Gelb P-HG)と比較して、明らかに識別できる。Novoperum Gelb P-HGが著しい負の摩擦帯電効果を示す(表1,比較)にもかかわらず、本発明の顔料においては、この負の帯電効果ははっきりと減ぜられている(表1)。例えば、本発明の顔料(顔料1.1)を5%含む試験トナーは、-8μC/gのピーク値までしか変化しないが、従来技術の顔料を含む比較試験トナー(比較例)は-20μC/gのピーク値まで変化する。 この減ぜられた負の固有の摩擦帯電効果は、本発明の黄色の顔料を多数の電荷制御剤と、すなわち正に制御できる電荷制御剤とも負に制御できる電荷制御剤とも組み合わせることができ、良好な実行効率の帯電性を示す。 【0031】 本発明による黄色の顔料と組み合わせて使用するのに適した電荷制御剤は: 顔料、溶剤染料、塩基性染料または酸性染料としてカラーインデックスに列挙されているトリフェニルメタン;アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン)(calix[n]arenes);環状に連結したオリゴ糖(シクロデキストリン);ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンまたはオキサジン である。 【0032】 以下に挙げた電荷制御剤――これらは、単独でまたは互いに組み合わせて、本発明による黄色の顔料と組み合わせられる――が特に好ましい: トリアリールメタン誘導体、例えば: カラーインデックスピグメント・ブルー1、1:2、2、3、8、9、9:1、10、10:1、11、12、14、18、19、24、53、56、57、58、59、61、62、67または、例えば、カラーインデックスソルベント・ブルー2、3、4、5、6、23、43、54、66、71、72、81、124、125、およびカラーインデックス中酸性ブルーおよび塩基性染料の下で列挙されているトリアリールメタン化合物――それらが、その温度安定性および加工性に関して適当であれば――、例えば、カラーインデックスベーシック・ブルー1、2、5、7、8、11、15、18、20、23、26、36、55、56、57、77、81、83、88、89、カラーインデックスベーシック・グリーン1、3、4、9、10、その際順番にカラーインデックスソルベント・ブルー125、66および124が非常に特に適している。特に適当な物質は、非常に結晶性のスルファートまたはトリクロロトリフェニルメチルテトラクロロアルミナートの形のカラーインデックスソルベント・ブルー124である。 【0033】 エレクトレット繊維の製造に特に適しているトリフェニルメタン系の電荷制御剤の例は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1919724号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第1644619号明細書に記載されている化合物である。 他の適当なトリフェニルメタンは、米国特許第5,051,585号明細書に記載されているもの、特に式(2) 【0034】 【化19】 〔式中 R1およびR3は同一であるかまたは異なっていて、-NH2、モノ-またはジ-アルキルアミノ基――そのアルキル基は1〜4個、好ましくは1または2個の炭素原子を有する――、モノ-またはジ-ω-ヒドロキシアルキルアミノ基――そのアルキル基は2〜4個、好ましくは2個の炭素原子を有する――、置換されていないかまたはN-アルキル置換されているフェニルアミノまたはフェンアルキルアミノ基――そのアルキル基は1〜4個、好ましくは1または2個の炭素原子を有し、そのフェンアルキル基は脂肪族橋中に1〜4個、好ましくは1または2個の炭素原子を有し、そしてそのフェニル環は次の置換基の中の1つまたは2つを有し得:炭素原子数1または2のアルキル、炭素原子数1または2のアルコキシおよびスルホ基、 R2は水素であるかまたはR1およびR3について定義されている通りであり、 R4およびR5は水素、ハロゲン、好ましくは塩素、またはスルホ基であるか、あるいはR4はR5と一緒に、縮合フェニル環を形成し、 R6、R7、R9およびR10はそれぞれ水素または炭素原子数1または2のアルキル基、好ましくはメチルであり、そして R8は水素またはハロゲン、好ましくは塩素であり、そして X-はアニオン、特に塩素、スルファート、モリブダート、ホスホロモリブダートまたはボラートアニオンの化学量論的当量である。〕 で表されるものである。 【0035】 R1およびR3がフェニルアミノ基であり、R2がm-メチルフェニルアミノ基でありそしてR4〜R10基が全て水素である式(2)で表される電荷制御剤が特に好ましい。 米国特許第5,015,676号明細書に記載されているアンモニウムおよびイミニウム化合物も適している。 【0036】 さらに適当な化合物は、米国特許第5,069,994号明細書に記載されているフッ素化されたアンモニウムおよびイミニウム化合物、特に式(3) 【0037】 【化20】 〔式中 R13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、 R23、R33およびR43は同一であるかまたは異なっていて炭素原子数1〜5、好ましくは1または2のアルキルであり、そして Y-はアニオン、好ましくはテトラフルオロボラートまたはテトラフェニルボラートアニオンの化学量論的当量である。〕 で表されるものである。好ましくはR13は炭素原子数5〜11の過フッ素化アルキルであり、R23およびR33はエチルでありそしてR43はメチルである。 【0038】 米国特許第5,342,723号明細書に記載されているビスカチオン酸アミド、特に式(4) 【0039】 【化21】 〔式中 R14、R24およびR34は同一または異なる炭素原子数1〜5のアルキル基、好ましくはメチルであり、 nは2〜5の整数であり、そして Z-はアニオン、好ましくはテトラフェニルボラートアニオンの化学量論的当量である。〕 で表されるものもまた適している。 【0040】 カナダ特許発明第2,085,809号明細書に記載されているジアリルアンモニウム化合物、特に式(5) 【0041】 【化22】 〔式中 R15およびR25は同一または異なる炭素原子数1〜5、好ましくは1または2のアルキル基であるが、特にメチル基でありそして A-はアニオン、好ましくはテトラフェニルボラートアニオンの化学量論的当量である。〕 で表される化合物、 および、米国特許第5,401,809号明細書または米国特許第5,187,038号明細書に記載されているような、式(5)で表される化合物から得られ得る式(6) 【0042】 【化23】 〔式中nは5000〜500,000の分子量に相当する値である。〕 で表される高分子アンモニウム化合物も適している。しかし、40,000〜400,000の分子量を有する式(6)で表される化合物が特に好ましい。 さらに適当な化合物は、米国特許第5,378,571号明細書に記載されているアリールスルフィド誘導体、特に式(7) 【0043】 【化24】 〔式中 R17、R27、R37およびR47は同一または異なる炭素原子数1〜5、好ましくは2または3のアルキル基でありそして R57は二価基-S-、-S-S-、-SO-または-SO2-の1つである。〕 で表されるものである。 【0044】 例えば、R17〜R47はプロピル基でありそしてR57は基-S-S-である。 米国特許第4,795,690号明細書に記載されているフェノール誘導体、特に式(8) 【0045】 【化25】 〔式中 R18およびR38は炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキルまたはアルケニル基であり、そしてR28およびR48は水素または炭素原子数1〜3のアルキル、好ましくはメチルである。〕 で表されるものも適している。 【0046】 このような化合物の例は、R18〜R48がメチル基であるものか、またはR28およびR48が水素でありそしてR18およびR38が-CH2-CH=CH2基であるものである。 さらに、米国特許第5,021,473号明細書および米国特許第5,147,748号明細書に記載されているホスホニウム化合物およびフッ素化されたホスホニウム化合物、特に式(9) 【0047】 【化26】 〔式中 R19、R29、R39およびR49は同一または異なる炭素原子数1〜8、好ましくは3〜6のアルキル基でありそしてE-はアニオン、好ましくはハロゲン化物アニオンの化学量論的当量である。〕 で表されるものおよび式(10) 【0048】 【化27】 〔式中 R110は炭素原子数5〜15、好ましくは6〜10の高度にフッ素化されたアルキル基であり、 R210、R310およびR410は炭素原子数3〜10のアルキル基またはフェニルである。〕 で表されるものが適している。 【0049】 式(9)で表される化合物の例は、テトラブチルホスホニウムブロミドであり、式(10)で表される化合物の例は、R110=C8F17-CH2-CH2-、R210=R310=R410=フェニル、そしてE-=PF-6またはテトラフェニルボラートアニオンの化合物である。 さらに、米国特許第5,049,467号明細書および米国特許第5,275,905号明細書に記載されているカリキサレン(カリナレン)(calix[n]arens)、特に式(11) 【0050】 【化28】 〔式中 Rは水素、ハロゲン、好ましくは塩素、直鎖または分枝の炭素原子数1〜12のアルキル、アラルキル、例えばベンジルもしくはフェネチル、-NO2、-NH2あるいはNHR111(R111は炭素原子数1〜8のアルキル、置換されていないかもしくはC1〜C4-アルキル置換されているフェニルまたは-Si(CH3)3である。)である。〕 で表されるものも適している。 【0051】 さらに、金属錯体化合物、例えば式(12)、(13)および(14) 【0052】 【化29】 〔式中 Mは二価または三価金属原子、好ましくはクロム、コバルト、鉄、亜鉛またはアルミニウム、あるいは非金属、例えばホウ素またはSiであり、 Y′およびZ′は二価芳香族環、好ましくは式 【0053】 【化30】 で表されるものであり、 そしてmは1または2である。〕; 【0054】 【化31】 〔式中 M′は二価または三価金属原子、好ましくはクロム、コバルトまたは鉄であり、 R113は水素、ハロゲン、好ましくはCl、ニトロまたはアミド-スルホニルであり、 R213は水素またはニトロであり、 R313は水素、スルホ、-CO-NH-R413(R413はフェニルまたは炭素原子数1〜5のアルキル――これは置換されていないかまたはモノ-、ジ-もしくはトリ-アルキルアミノ基によって置換されている――である)であり、そして 式(12)および式(13)中のGはそれぞれ、錯体の中性を与える対イオン、好ましくは1つまたはそれ以上のプロトン、1つまたはそれ以上のアルカリ金属イオンあるいはアンモニウムイオンである。〕; 【0055】 【化32】 〔式中 M*は二価中心金属原子、好ましくは亜鉛原子であり、そして R114およびR214は同一または異なる、直鎖または分枝の炭素原子数1〜8、好ましくは3〜6のアルキル基、例えばt-ブチルである。〕 で表されるクロム、コバルト、鉄、亜鉛またはアルミニウム-アゾ錯体あるいはクロム、コバルト、鉄、亜鉛またはアルミニウム-サリチル酸またはホウ酸錯体も適している。 【0056】 この種の化合物は、ヨーロッパ特許出願公開第0162632号明細書、米国特許第4,908,225号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0393479号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0360617号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0291930号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0280272号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0255925号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0251326号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0180655号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第0141377号明細書、米国特許第4,939,061号明細書、米国特許第4,623,606号明細書、米国特許第4,590,141号明細書に記載されているおよび/またはCASナンバー31714-55-3、104815-18-1、84179-68-8、110941-75-8、32517-36-5、38833-00-00、95692-86-7、85414-43-3、136709-14-3、135534-82-6、135534-81-5、127800-82-2、114803-10-0、114803-08-6によって特徴づけられる。 【0057】 式(13)で表される特に好ましい金属錯体化合物の例を次の表2に示す: さらに、ヨーロッパ特許出願公開第0347695号明細書に記載されているベンズイミダゾロン、特に式(15) 【0058】 【化33】 〔式中 R115は炭素原子数1〜5のアルキルでありそしてR215は炭素原子数1〜12のアルキルでありそしてLはアニオン、特に塩素またはテトラフルオロボラートアニオンの化学量論的当量である。〕 で表されるものも適している。 【0059】 例として、R115=CH3そしてR215=C11H23の化合物が挙げられる。 さらに、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4418842号明細書に記載されている環状に連結したオリゴ糖、特に式(16) 【0060】 【化34】 〔式中n16は3〜100の数であり、R116およびR216はOH、OR316(R316は置換されているかもしくは置換されていないC1〜C18-アルキル、C6〜C12-アリールまたはトシルである)であり、そしてX16はCH2OHまたはCH2COR316である。〕 で表されるものも適している。例として、 n16=6、R116およびR216=OH、X16=CH2OH n16=7、R116およびR216=OH、X16=CH2OH n16=8、R116およびR216=OH、X16=CH2OH のものが挙げられる。 【0061】 他の適当な化合物は、カナダ特許発明第2,132,577号明細書に記載されているポリマー塩であり、そのアニオン成分は、成分a)、b)およびc)そして所望であればd)およびe) {但し、a)はジカルボン酸またはジカルボン酸の反応性誘導体であり、それはスルホ基を持たず、 b)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである二官能性芳香族、脂肪族または脂環式スルホ化合物であり、 c)は脂肪族、脂環式もしくは芳香族ジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカルボナートジオールであり、 d)は、官能基がヒドロキシルまたはカルボキシルまたはヒドロキシルおよびカルボキシルである多官能性化合物(官能性>2)であり、そして e)はモノカルボン酸である。} の反応生成物からなるポリエステルであり、そのカチオン成分は、水素原子または金属カチオンからなる。 【0062】 さらに次のカラーインデックスナンバーのアジンも適している:C.I.ソルベント・ブラック5、5:1、5:2、7、31および50;C.I.ピグメント・ブラック1、C.I.ベーシック・レッド2ならびにC.I.ベーシック・ブラック1および2。 原則的に、本発明の顔料は、正および負の電荷制御剤(CCAs)と組み合わせるのが特に適している。例えば例4.4.2〜4.4.5によって示されているように、少量(例えば1%)のCCAでも所望の極性を確立するのに十分である。この際、ピーク帯電値への素早い達成およびその非常に良好な不変性が特に有利である。良好な摩擦電気(トナー)帯電には、高いトナー体積抵抗(=低い導電率)が必要であるので、本発明による黄色の顔料の誘電特性は、良好な摩擦電気挙動に寄与する(Ku/Liepins“Electrical Properties of Polymers”Hanser Publishers,Munich-Vienna-New York,1987)。 【0063】 顔料および電荷制御剤は、顔料合成の間、仕上げ操作の間に物理的に混合することによって、または顔料表面への適当な適用(顔料被覆)によって、組み合わせられ得る。 本発明はまた、慣用のトナー結合剤、0.01〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の本発明のアゾ顔料および0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%の、トリフェニルメタン、アンモニウムおよびイミニウム化合物;フッ素化アンモニウムおよびイミニウム化合物;ビスカチオン酸アミド;高分子アンモニウム化合物;ジアリルアンモニウム化合物;アリールスルフィド誘導体;フェノール誘導体;ホスホニウム化合物およびフッ素化ホスホニウム化合物;カリキサレン(カリナレン);シクロデキストリン;ポリエステル塩;金属錯体化合物;ベンズイミダゾロン;アジン、チアジンおよびオキサジンからなる群からの電荷制御剤を含む電子写真トナーまたは現像剤を提供する。 【0064】 電荷制御剤として、式(17) 【0065】 【化35】 で表される化合物; または上述した式(3)で表される化合物; またはR15およびR25がそれぞれメチルでありそしてA-がテトラフェニルボラートアニオンである上述した式(5)で表される化合物; またはR15およびR25がそれぞれメチルであり、A-がテトラフェニルボラートアニオンでありそしてnが5000〜500,000の分子量に相当する値である式(6)で表される化合物; または上述した式(7)で表される化合物; またはR113が塩素であり、R213およびR313が水素であり、M′がクロム、コバルトまたは鉄であり、そしてGが1つまたは2つのプロトンである式(13)で表される化合物; またはアニオン成分がポリエステルである上述したポリマー塩 を含む電子写真トナーまたは現像剤が特に好ましい。 【0066】 粉体塗装に使用するための本発明による黄色の顔料の良好な適性は、3barの噴霧圧でも非常に高い帯電流から明らかであり(例4.5.5で1.7μAまたは例3.4.5で1.5μA)、その際一般に1μAの帯電流が適当な帯電のための最小の必要条件と考えられる。この高い帯電流は、それぞれ明らかに80%より高い良好な付着率と同時に現れる。 【0067】 本発明はさらに、エポキシド、カルボキシルまたはヒドロキシル基を含むアクリル樹脂またはポリエステル樹脂、あるいはこれらの樹脂の組み合わせ、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜5重量%の本発明によるアゾ顔料、および0.01〜20重量%、好ましくは1〜5重量%の、電子写真トナーのために上述した群から選択される電荷制御剤、ならびに好ましい化合物を含む粉末または粉体塗料を提供する。 【0068】 本発明により使用される顔料は、均質に――例えば押出または混練によって――、混合物全体に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%そして特に好ましくは0.1〜5.0重量%の濃度で、それぞれのトナー、現像剤、被覆材料、粉体塗料、エレクトレット材料の、または静電的に分離されるポリマーの結合剤に混入される。その際、本発明により使用される顔料は、乾燥し、粉砕した粉末、有機溶剤または無機溶剤中の分散体または懸濁物、ろ過ケーキ、マスターバッチ、調製品、完成したペーストとして、適当な支持体、例えば珪藻土、TiO2、Al2O3に水性または非水性溶液から被覆した化合物として、あるいはそれ以外形で添加され得る。同様に、本発明により使用される顔料を、それぞれの結合剤の製造の間にも、すなわちそれらの付加重合、重付加または重縮合の過程で添加することも原則的に可能である。 【0069】 本発明による顔料が均質に混入されている電子写真トナーのまたは粉体塗料の静電荷の高さは、予測され得ずそして標準試験系において同一条件(同一分散時間、同一粒度分布、同一粒子形態)下で約20℃かつ50%の相対大気湿度で測定される。トナーは、ローラーベンチ(1分あたり150回転)上でキャリヤーと、すなわち標準化摩擦共成分(キャリヤー97重量部に対してトナー3重量部)と一緒に渦動させることによって、静電的に帯電させる。次いで静電荷を、慣用のq/m測定機構で測定する(J.H.Dessauer,H.E.Clark,“Xerography and related Processes”,Focal Press,N.Y.,1965,第289頁;J.F.Hughes,“Electrostatic Powder Coating”,Research Studies Press Ltd.Letchworth,Hertfordshire,England,1984,第2章)。粉体塗料のq/m値または摩擦電荷を測定する場合、粒度が大きい影響を持っており、このために、ふるい分けによって得られるトナーまたは粉体塗料をふるい分けする時、均一の粒度分布に厳しい注意を払う。トナーについては、10μmの平均粒度を得ることを目指すが、粉体塗料については、50μmの平均粒度が実際的であり得る。 【0070】 粉末または粉体塗料の摩擦電気的噴霧は、標準噴霧管および星型内部ロッドを有する噴霧装置を用いて、最大粉末流量で3barの噴霧圧で行なわれる。このために、噴霧する物品は噴霧ブースに吊るして、それに約20cm離れたところから前方から直接に、噴霧装置をそれ以上動かさないで噴霧する。次いで噴霧された粉末それぞれの電荷を、Intec(Dortmund)の「粉末の摩擦電荷測定装置」を用いて測定する。測定を行なうために、測定装置のアンテナを、噴霧装置から発生する粉末雲中に直接保持する。粉体塗料または粉末の静電荷から生じる電流の強さはμAで示される。次いで、付着率(%)を、噴霧した粉体塗料と付着した粉体塗料の示差秤量により測定する。 【0071】 本発明による黄色の顔料のトナー結合剤系中での透明度は、次のようにして調べる:70重量部の粗製ワニス(15重量部のそれぞれのトナー樹脂および85重量部の酢酸エチルからなる)に30重量部の染色された試験トナー(製法について使用例1を参照のこと)を、溶解機(5000rpmで5分)で攪拌することによって混入する。 【0072】 こうしてつくられた試験トナーワニスを、同じ方法で作られた標準の染色されたワニスに対して、ハンドコーター(Handcoater)(RK Chemical Co.Ltd.,England製)を用いて適当な紙(例えば凸版印刷紙)にへら付けする。ドクターナイフの適当な大きさは例えばK bar N 3(=24μmの層厚さ)である。透明度をより容易に測定するために、紙に黒い棒を印刷し、そして透明度の違いを、dL値に換算して、DIN55988に従って、または、1990年9月13日のPigments Marketing,Hoechst AG“Visuelle und Farbmetrische Bewertung”[視覚および比色評価](No.1/1)に従って測定する。 【0073】 顔料を特徴づける際に示される残留塩含有量は、水性顔料懸濁物の抽出物の比導電率を表し(Pigment Marketing,Hoechst AG No.1/10(2/91)からの試験方法“Bestimmung der spezifischen Lietfaehigkeit am Extrakt einer waessrigen Pigmentsuspension”[水性顔料懸濁物の抽出物の比導電率の測定]に従う)、対応するpHは、Pigment Marketing,Hoechst AG No.1/9(2/91)からの試験方法“Bestimmung des pH-Wertes am Extrakt einer waessrigen Pigmentsuspension”[水性顔料懸濁物の抽出物のpHの測定]に従って測定され、その際、両方の測定方法の際に、試験方法において具体的に挙げられている脱イオン水の代わりに二重に蒸留した水が使用される。 【0074】 【実施例】 例1 1.1 顔料合成 a)73.2g(0.3モル)の1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタンを300mlの水の中で、150mlの塩酸(31%HCl)を用いて塩酸塩に変え、そして温度を氷を使って0〜5℃に調整する。次いで、ジアゾ化を引き起こすために、40重量%のNaNO2を含む水溶液の形の41.8gの亜硝酸ナトリウムを添加する。過剰の亜硝酸塩を15分後にアミドスルホン酸を用いて破壊する。 【0075】 b)150.8g(0.68モル)の5-アセトアセチルアミノベンズイミダゾール-2-オンを900mlの水に150mlの水酸化ナトリウム溶液(33重量%のNaOH)と共に溶解させ、温度を氷を用いて5℃に調整し、そして12gのジメチルココアルキルアミンオキシドの存在下にpH5.3まで酢酸を用いて沈澱させる。 【0076】 C)続くカップリングは、25℃で10分間にわたって行なわれる。40gの粉末チョークを添加し、10分後にpHを5に調整する。顔料をろ過しそして塩がなくなるまで洗浄する。 収率:実質的に定量的。 ろ過ケーキの乾燥試料のBETによる比表面積を測定する:1m2/g(「プレ顔料」) d)110gの顔料を1400gの水と910gのイソブタノールと共に2時間110℃でオートクレーブ中で自己圧力下で加熱する。顔料を慣用の方法で単離する。乾燥した試料は78m2/gの比表面積を有している。 【0077】 1.2 顔料特性 BET表面積: 78m2/g 残余含水率: 0.7%(カール-フィッシャー) 残余塩含有量: 0.1mS/cm pH: 7 熱安定性:分解の開始約350℃、最大分解約365℃(DTA、加熱速度3℃/分;密閉ガラスアンプル); 粒度および粒子形態(電子顕微鏡を用いて計数したマス分布): 粒度および粒子形態は、顔料粉末の電子顕微鏡写真を撮って測定する。このために、顔料を15分間水に分散させ、次いで吹き付ける。顕微鏡写真は、3700および34,000撮影倍率で撮る。 【0078】 粒度: d50=61nm;d10=44nm;d95=118nm。 粒子形態: 長さ/幅比は、1.53:1と測定された。顕微鏡写真はほぼ立方体の粒子を示す(比較顔料のような顕著な針状の形状でない)。 【0079】 ならびに、2,3の別の比較的小さいバンドおよび肩。 【0080】 1.3 透明度 トナー樹脂(ビスフェノールAをベースにしたポリエステル)中で、改善された透明度が測定され(24μmの層厚さ)、その際染色された試験トナーは例1.4.1と同様にして作られた。 比較例において示される基準と比較して、黒い棒により、-1.98のdL値が測定される(即ち黒い棒はよりあいまいに見える)、すなわち、本顔料は、比較物より透明で約3である。 【0081】 試験方法1/1による透明度の違いの評価:1は僅少、2は僅かにより透明、3は目に見えるほどより透明、4は明らかにより透明、5は実質的により透明、6は顕著により透明に対応する。 1.4 静電特性 例1.1からの顔料5部を、混練装置を用いて、95部のトナー結合剤(ビスフェノールAをベースにしたポリエステル)に45分間にわたって均質に混入する。次いで、この組成物を、実験室万能ミルで摩砕し次いで遠心スクリーン分級機で分級する。所望の粒子フラクション(4〜25μm)を、粒度が50〜200μm(かさ密度2.75g/cm3)のシリコーン被覆磁性粒子(FBM96-110;Power Techn.製)からなるキャリヤーを用いて活性化する。 【0082】 慣用のq/m測定機構を用いて測定を行なう。メッシュサイズが25μmのふるいを用いることによって、トナーが舞い上がる際に、キャリヤーが連行されないようにする。測定は40〜60%相対大気湿度で行なわれる。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 例2 2.1 顔料合成 例1の手順に従うが、次の点を変える: a)12gのジメチルココアルキルアミンオキシドの代わりに、それぞれ6gのアルキルエチレンオキシドポリグリコールホスファート、例えばHostaphat(商標)L、および、イソトリデシルアルコールをベースにした脂肪アルコールプロピレングリコールエーテル、例えばGenapol(商標)X 060(Hoechst AG)を加え、そして b)続くカップリングを25℃で30分間行なう。 【0083】 溶剤処理なしでの比BET表面積(乾燥ろ過ケーキ):9.6m2/g。溶剤処理後の最終顔料:62m2/g 2.2 顔料特性 BET表面積: 62m2/g 残余含水率: 0.5%(カール-フィッシャー) 残余塩含有量: 0.1mS/cm pH: 7.1 ならびに、2,3の別の比較的小さいバンドおよび肩。 【0084】 2.3 透明度 例1.3に記載した通りに透明度を測定する。比較物と比べて、-1.28のdL(すなわちより透明でかろうじて3である)が見出される。 2.4 静電特性 例1.4に記載したように5部の顔料を、ポリエステルの代わりに60:40のスチレン-アクリラートコポリマーからなるトナー結合剤、例えばDialec(商標)S 309を混入し、そして測定する。 例3 3.1 顔料合成 例2の手順に従うが、カップリングを25℃で30分間行なう。 【0085】 3.2 顔料特性 BET表面積: 70m2/g 残余含水率: 0.2% H2O(カール-フィッシャー) 残余塩含有量: 0.1mS/cm pH: 7.1 熱安定性:分解の開始約350℃、最大分解約360℃(DTA、加熱速度3℃/分;密閉ガラスアンプル); 粒度および粒子形態(電子顕微鏡を用いて計数したマス分布): 粒度: d50=104nm;d10=70nm;d95=170nm。 【0086】 粒子形態: 長さ/幅比は、1.45:1と測定された。顕微鏡写真はほぼ立方体の粒子を示す(比較顔料のような顕著な針状の形状でない)。 ならびに、2,3の別の比較的小さいバンドおよび肩。 【0087】 誘電特性: Ω・cm: 1012 ε: 4.4(1kHz) tanδ: 5・10-2(1kHz) 3.3 透明度 例1.3に記載した通りに透明度を測定する。比較物と比べて、-1.91のdL(すなわちより透明で約3)が見出される。 【0088】 3.4 静電特性 3.4.1 例3.1からの顔料5部を、混練装置を用いて、95部のトナー結合剤(ビスフェノールAをベースにしたポリエステル)に、45分間にわたって均質に混入する。次いで、この組成物を、実験室万能ミルで摩砕し次いで遠心スクリーン分級機で分級する。所望の粒子フラクション(4〜25μm)を、粒度が50〜200μm(かさ密度2.75g/cm3)のシリコーン被覆磁性粒子(FBM96-110;Power Techn.製)からなるキャリヤーを用いて活性化する。 【0089】 慣用のq/m測定機構を用いて測定を行なう。メッシュサイズが25μmのふるいを用いることによって、トナーが舞い上がる際に、キャリヤーが連行されないようにする。測定は40〜60%相対大気湿度で行なわれる。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 3.4.2 顔料5部およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3901153号明細書、製造例1に記載されている式 【0090】 【化36】 で表される電荷調節剤(高度にフッ素化されたアンモニウム塩)1部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 3.4.3 顔料5部および米国特許第5,187,038号明細書、製造例2に記載されている式 【0091】 【化37】 で表される電荷調節剤(カチオンポリマー)1部を、例1.4.1に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 3.4.4 顔料5部およびヨーロッパ特許出願公開第0664463号明細書、製造例1.2.4に記載されている電荷調節剤(ポリエステル塩)1部を、例1.4.に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 3.4.5 製造例3.1からの顔料5部を、使用例1.4に記載したように、トリグリシジルイソシアヌラート(TGIC)ポリエステルをベースにした粉体塗料結合剤95部に均質に混入する。付着率を測定するために、30gの試験粉体塗料を、摩擦電気ガン(triboelectric gun)を用いて決められた圧力で噴霧する。示差秤量によって、付着した粉体塗料の量を求め、付着率(%)を定めることができ、電荷移動から電流(μA)を求めることができる。 【0092】 3.5 印刷インクの特性 3.5.1 NC(ニトロセルロース)印刷 Pigments Marketing,Hoechst AG“NC-Tiefdruck”[NC凹版印刷],発行7/94(No.3/3)からの試験手順に従って、混合物AおよびB(透明および隠ぺい)において試験を行なう。 【0093】 比較例(100%,Novoperm-Gelb P-HG)において示される基準と比べて、次の値が測定された: 色の濃さ: 110% 色相: 3 より緑の 純粋さ: 3 より純粋な 透明度: 4 より透明な 光沢: 4 より光沢のある 3.6 プラスチックの特性 3.6.1 PVC(ポリビニルクロリド) 軟質および硬質PVCの試験を、DIN53775を参照して、Pigment Marketing,Hoechst AG“Pruefung in Weich PVC”[軟質PVCの試験](発行7/93,No.4/3)および“Pruefung in Hart-PVC”[硬質PVCの試験](発行4/87,No.4/4)に従って行なう。 【0094】 比較例(100%,Novoperm-Gelb P-HG)において示される基準と比べて、130℃および160℃の混入温度で、次の値が測定された: 色の濃さ: 112% 色相: 3 より緑の 純粋さ: 2 より純粋な 透明度: 3〜4 より透明な ブリード堅牢性: 不変 分散性: 不変 3.6.2 ポリオレフィン(ポリエチレン) ポリエチレンの試験を、Pigment Marketing,Hoechst AG“Coloristische Pruefung von Farbmitteln in thermoplastischen Kunststoffen”[熱可塑物質中の着色剤の色の試験](発行4/93,No.4/12)および“Pruefung von Farbmitteln auf ihre Hitzebestaendigkeit in thermoplastischen Kunststoffen im Spritzgiessverfahren nach DIN 53722”[DIN 53722による射出成形された熱可塑物質中での熱安定性に関する着色剤の試験]からの試験手順に従って行なう。 【0095】 比較例(100%,Hovoperm-Gelb P-HG)において示される基準と比べて、次の値が見出された: 色の濃さ: 114% 温度抵抗性: 290℃(比較例からの基準:290℃) 例4 4.1 顔料合成 例3の手順に従う。但し、プレ顔料の最終溶剤処理を、水/イソブタノール中で約90℃で2時間行なう。 【0096】 4.2 顔料特性 BET表面積: 76m2/g 残余含水率: 0.6% H2O(カール-フィッシャー) 残余塩含有量: 0.12mS/cm pH: 7.1 熱安定性:(DTA,例1.2の通り 分解の開始約350℃、最大分解約355℃) 粒度および粒子形態(電子顕微鏡により計数したマス分布): 粒度: d50=119nm;d10=73nm;d95=185nm。 【0097】 粒子形態: 長さ/幅比は、1.48:1と測定された。顕微鏡写真はほぼ立方体の粒子を示す(比較顔料のような顕著な針状の形状でない)。 ならびに、2,3の別の小さいバンドおよび肩。 【0098】 誘電特性: Ω・cm: 1012 ε: 4.6(1kHz) tanδ: 4・10-2(1kHz) 4.3 透明度 例1.3に記載した通りに透明度を測定し、より透明で約3と求められる。 【0099】 4.4 静電特性 4.4.1 例4.1からの顔料5部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定を行なう。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.2 顔料5部および米国特許第5,378,571号、例5に記載されている式 【0100】 【化38】 で表される電荷調節剤1部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.3 顔料5部およびドイツ連邦共和国特許出願公開第3901153号明細書、製造例1に記載されている式 【0101】 【化39】 で表される電荷調節剤(高度にフッ素化されたアンモニウム塩)1部を、例1.4.1に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.4 顔料5部および米国特許第5,187,038号明細書、製造例2に記載されている式 【0102】 【化40】 で表される電荷調節剤(カチオンポリマー)1部を、例1.4.に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.5 顔料5部およびヨーロッパ特許出願公開第0664463号明細書、製造例1.2.4に記載されている電荷調節剤(ポリエステル塩)1部を、例1.4.に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.6 製造例4.1からの顔料5部を、使用例1.4に記載したように、TGICポリエステルをベースにした粉体塗料結合剤、例えばUralac(商標)P 5010(DSM,オランダ)95部に均質に混入する。付着率を測定するために、30gの試験粉体塗料を、摩擦電気ガンを用いて決められた圧力で噴霧する。示差秤量によって、付着した粉体塗料の量を求め、付着率(%)を定めることができ、電荷移動から電流(μA)を求めることができる。 【0103】 4.4.7 製造例4.1からの顔料5部およびBontron(商標)E 89(オリエント化学工業,日本)(カリキサレン化合物)1部を、例1.4.に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.8 製造例4.1からの顔料5部およびBontron(商標)E 84(オリエント化学工業,日本)(サリチル酸亜鉛化合物)1部を、例1.4.に記載したように、ポリエステルトナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 4.4.9 製造例4.1からの顔料5部およびドイツ連邦共和国特許出願公開第4418842号明細書、使用例2に記載されている式 【0104】 【化41】 で表される電荷調節剤(β-シクロデキストリン)1部を、例1.4に記載したように、ポリエステルトナー結合剤に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 例5 5.1 顔料合成 例1の手順に従うが、アセトロンの沈澱を、ジメチルココアルキルアミンオキシドを添加しないで行なう。 【0105】 5.2 顔料特性 BET表面積: 75m2/g 残余含水率: 0.6% 残余塩含有量: 0.1mS/cm pH: 7 熱安定性:分解の開始約350℃、最大分解約355℃(DTA、加熱速度3℃/分;密閉ガラスアンプル) 比較例 使用する比較顔料は、市販のピグメント・イエロー180(Novoperm-Gelb(商標)P-HG;Hoechst AG)であった。 【0106】 顔料特性 BET表面積: 44m2/g 残余含水率: 0.5%(カール-フィッシャー) 残余塩含有量: 0.2mS/cm pH: 6.9 熱安定性:分解の開始約350℃、最大分解約365℃(DTA、例1.2と同様) 粒度: d50=141nm;d10=87nm;d95=245nm。 【0107】 粒子形態: 長さ/幅比は、2.07:1と測定された。粒子は顕著な針状の形状を示す。 ならびに、いくつかの別の小さいバンドおよび肩。 【0108】 誘電特性: Ω・cm: 2×1010 ε: 4.3 tanδ: 11・10-2 静電特性 例A 比較顔料5部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤に混入し、そして測定を行なう。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 例B 比較顔料5部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤(使用するトナー結合剤は、ポリエステル樹脂の代わりに、60:40スチレン-アクリラートコポリマー、例えばDialec S 309である)に混入し、そして測定を行なう。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: 例C 比較顔料5部および米国特許第5,378,571号明細書、例5に記載されている式 【0109】 【化42】 で表される電荷調節剤1部を、例1.4に記載したように、トナー結合剤Dialec S 309に混入し、そして測定する。次のq/m値[μC/g]が活性化時間の関数として測定される: |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-26 |
出願番号 | 特願平7-257811 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(C09B)
P 1 651・ 537- YA (C09B) P 1 651・ 121- YA (C09B) P 1 651・ 113- YA (C09B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 星野 紹英 |
特許庁審判長 |
鐘尾 みや子 |
特許庁審判官 |
関 美祝 後藤 圭次 |
登録日 | 2002-06-28 |
登録番号 | 特許第3323371号(P3323371) |
権利者 | クラリアント・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング |
発明の名称 | 電子写真トナーおよび現像剤用顔料 |
代理人 | 奥村 義道 |
代理人 | 高橋 勝利 |
代理人 | 三原 恒男 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 奥村 義道 |
代理人 | 三原 恒男 |
代理人 | 江崎 光史 |