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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1107927 |
異議申立番号 | 異議2003-70476 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-02-19 |
確定日 | 2004-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3316972号「乳酸系ポリマー組成物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3316972号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第3316972号の請求項1〜4に係る発明は、平成5年10月22日に特許出願され、平成14年6月14日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1〜4に係る発明の特許に対し菅野 司より特許異議の申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年9月4日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。 II.訂正請求について 1.訂正の内容 訂正事項a 明細書段落【0059】に記載の表4中の「実施例6」を削除する。 訂正事項b 明細書段落【0045】に記載の「(実施例6、比較例11〜14)」を「(比較例11〜14)」と訂正する。 訂正事項c 明細書段落【0046】に記載の「実施例6の本発明の可塑剤は、10重量%以下の添加量でも、引張弾性率は20重量%添加とほぼ同等で、耐クレージング性、耐水性に変化は見られず、良好な結果であった。比較例11のフタル酸ジオクチルは、」を「比較例11のフタル酸ジオクチルは、」と訂正する。 訂正事項d 明細書段落【0048】に記載の「(実施例17)」を「(実施例7)」と訂正する。 2.訂正の適否について 訂正事項aは、請求項1に記載の「酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤」との内容と異なる実施例6を削除するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 訂正事項b〜cは、請求項1に記載の「酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤」との内容と異なる実施例6についての記載を削除するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 訂正事項dは、表5の記載に基づき、実施例の表示番号を正すものであり、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。 そして、訂正事項a〜dは、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.訂正後の請求項1〜4に係る発明 訂正後の請求項1〜4に係る発明は、訂正明細書の請求項1〜4に記載されたとおりのものであって、次のとおりのものである。 「【請求項1】ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマー(A)と、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤(B)とを必須の構成成分として含有することを特徴とする乳酸系ポリマー組成物。 【請求項2】ポリエステル系可塑剤(B)の数平均分子量が、500〜2000である請求項1記載の乳酸系ポリマー組成物。 【請求項3】ポリエステル系可塑剤(B)が、炭素原子数4〜10の二塩基酸と、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールとからなるポリエステルである請求項1記載の乳酸系ポリマー組成物。 【請求項4】乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の配合重量比(A)/(B)が、98/2〜50/50である請求項1〜3のいずれか1つに記載の乳酸系ポリマー組成物。」 IV.当審の取消理由の概要について 1.訂正前の請求項1〜4に係る発明は、刊行物1(特開平4-335060号公報;特許異議申立人 菅野 司提出の甲第1号証)、刊行物2(特開平5-140396号公報;特許異議申立人 菅野 司提出の甲第2号証)、刊行物3(特開昭57-153024号公報;特許異議申立人 菅野 司提出の参考資料1)、刊行物4(特開昭60-199049号公報;特許異議申立人 菅野 司提出の参考資料2)、刊行物5(特開平5-230200号公報;特許異議申立人 菅野 司提出の参考資料3)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.判断 (1)当審が取消の理由に引用した刊行物1、2およびその記載事項 ◆刊行物1(特開平4-335060号公報:甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 可塑剤を含む、柔軟性の高いポリ乳酸、または乳酸とヒドロキシカルボン酸のコポリマー、またはポリ乳酸とヒドロキシカルボン酸のポリマーの混合物を主成分とする熱可塑性分解性ポリマー組成物。 【請求項2】 可塑剤がフタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、またはそれらの混合物である請求項1記載の組成物。 【請求項3】 ポリ乳酸がL-乳酸、D-乳酸、またはそれらの混合物から得られるものであることを特徴とする請求項1記載の組成物。」(請求項1〜3) 「【0015】 【発明が解決しようとする課題】 従って本発明は、前記欠点を克服したフィルム、糸、パッケージ材料等、特に食品包装剤あるいは医科用途に用いることが出来るポリ乳酸を主成分とする柔軟性を持ったポリマー組成物を提供することを課題とする。」 「【0016】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、以上の問題点を解決するために鋭意検討した結果、L-乳酸、D-乳酸あるいはそれらの混合物を脱水縮合するか、またはL-ラクタイド(L-LTD)、D-ラクタイド(D-LTD)、D,L-ラクタイド(DL-LTD)、meso-ラクタイド(meso-LTD)またはそれらの混合物を開環重合させたのち、可塑剤を加えることによりポリマーに柔軟性を与えることができ、さらに、十分な柔軟性を与える量だけ添加量を増やしても、透明なポリマー成形物が得られることを見いだし本発明を完成した。」 「【0025】 添加する可塑剤は食品包装容器等に使用しても安全な物が好ましいが、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルのようなフタル酸エステル、・・・ポリプロピレングリコールアジピン酸エステル、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルのようなポリエステル系可塑剤などが挙げられる。」 「【0026】 添加剤は、通常ポリマー組成物に対して5〜50重量%用いられる。特に好ましくは、5〜20重量%である。これら可塑剤の添加方法としては、溶剤に溶解した状態でポリ乳酸に加えるか、または溶融した状態で加えても良い。」 「【0027】 また、本発明のポリマー組成物は、可塑剤の他に安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等の他の添加剤を含んでいても構わない。」 ◆刊行物2(特開平5-140396号公報:甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 ポリエステル系可塑剤100重量部に、フェノール化合物、有機ホスファイト化合物およびヒンダードアミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種0.01〜5重量部を添加してなる、可塑剤組成物。」(請求項1) 「【0008】本発明におけるポリエステル系可塑剤としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを、必要に応じて末端停止成分として、一価アルコール類および/または一塩基酸を用いて、縮合させることにより製造されるものがあげられる。」 「【0009】上記多塩基酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を主成分とするものがあげられ、・・・用いることもできる。」 「【0010】上記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、・・・等の脂肪族グリコールを主成分とするものがあげられ、・・・用いることもできる。」 「【0011】また、上記末端停止成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第二ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、・・・等の脂肪族一価アルコール及び酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、・・・等の脂肪族一塩基酸があげられる。」 「【0013】上記ポリエステル系可塑剤としては、数平均分子量が600〜5000のものが好ましく、800〜4000のものがより好ましい。また、酸価は1以下であることが好ましく、水酸基価は30以下であることが好ましい。」 「【0021】本発明の可塑剤組成物が添加される合成樹脂としては、特に制限はなく、通常のポリエステル系可塑剤が添加使用される合成樹脂等があげられる。」 (2)判断 【1】訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)について 刊行物1に記載の熱可塑性分解性ポリマー組成物は、請求項1〜3の記載及び明細書段落【0015】〜【0016】の記載から、ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマーとポリエステル系可塑剤からなる組成物といえるものである。 そこで、訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、 「ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマーと、ポリエステル系可塑剤とを必須の構成成分として含有する乳酸系ポリマー組成物」の点で一致し、 次の点で相違している。 (イ)ポリエステル系可塑剤について、訂正発明1が、「二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤」であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、このような限定が特になされていない点 上記相違点(イ)について、以下検討する。 刊行物2には、ポリエステル系可塑剤に関して記載され、ポリエステル系可塑剤は、「多塩基酸成分と多価アルコール成分とを、必要に応じて末端停止成分として、一価アルコール類および/または一塩基酸を用いて、縮合させることにより製造されるもの」であることが記載されている。 また、ポリエステル系可塑剤としては、数平均分子量が600〜5000のものが好ましく、酸価は1以下であることが好ましく、水酸基価は30以下であることが好ましい、ことも記載され、表1〜3にはポリエステル系可塑剤について、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤が示されている。 そうであれば、刊行物2には、「二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤」に相当するポリエステル系可塑剤が記載されているといえる。 そして、刊行物2には、「本発明の可塑剤組成物が添加される合成樹脂としては、特に制限はなく、通常のポリエステル系可塑剤が添加使用される合成樹脂等があげられる」と記載されているのである。 そうすると、刊行物2における、添加される合成樹脂として「通常のポリエステル系可塑剤が添加使用される合成樹脂等があげられる」との記載に接した当業者であれば、通常のポリエステル系可塑剤が添加使用されている刊行物1に記載の乳酸系ポリマー組成物において、ポリエステル系可塑剤として、刊行物2に記載のポリエステル系可塑剤を採用してみることは、容易に想到し得たものというべきである。 また、訂正発明1によってもたらされる効果も、当業者であれば予想し得る範囲内のものであって、格別顕著なものということはできない。 したがって、訂正発明1は刊行物1〜2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【2】訂正後の請求項2に係る発明(以下、「訂正発明2」という。)について 訂正発明2は、訂正発明1のポリエステル系可塑剤において、「数平均分子量が、500〜2000である」とするものであるが、刊行物2には、ポリエステル系可塑剤としては、数平均分子量が600〜5000のものが好ましいことが記載されている。 そうすると、ポリエステル系可塑剤において、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量を500〜2000のものを採用することに格別の困難性があるということはできない。 そして、訂正発明1は、前記のとおり刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明2は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【3】訂正後の請求項3に係る発明(以下、「訂正発明3」という。)について 訂正発明3は、訂正発明1のポリエステル系可塑剤において、「炭素原子数4〜10の二塩基酸と、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールとからなるポリエステルである」とするものであるが、刊行物2には、ポリエステル系可塑剤を構成する成分として、二塩基酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸が例示されており、これらは、炭素数4〜10の二塩基酸に含まれるものである。また、多価アルコール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールが例示され、これらは、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールに含まれるものである。 そうすると、ポリエステル系可塑剤において、構成成分を炭素原子数4〜10の二塩基酸と、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールとからなるポリエステルとすることに格別の困難性があるということはできない。 そして、訂正発明1は、前記のとおり刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明3は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【4】訂正後の請求項4に係る発明(以下、「訂正発明4」という。)について 訂正発明4は、訂正発明1〜3の乳酸系ポリマー組成物において、「乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の配合重量比(A)/(B)が、98/2〜50/50である」とするものであるが、刊行物1には、添加される可塑剤について、「通常ポリマー組成物に対して5〜50重量%用いられる」と記載されており、また、可塑剤の配合量については、組成物全体の物性を勘案して配合されるべきものであることは、当業者間には明らかなことである。 そうすると、ポリマー組成物の物性等を考慮して、ポリエステル系可塑剤の配合量を調整し、「乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の配合重量比(A)/(B)が、98/2〜50/50である」とすることは、当業者であれば容易に成し得たものといえ、格別の創意工夫を要したものということはできない。 そして、訂正発明1〜3は、前記のとおり、刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明4は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 V.むすび 以上のとおり、訂正発明1〜4は、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、訂正発明1〜4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、訂正発明1〜4の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められ、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する 。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 乳酸系ポリマー組成物 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマー(A)と、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤(B)とを必須の構成成分として含有することを特徴とする乳酸系ポリマー組成物。 【請求項2】 ポリエステル系可塑剤(B)の数平均分子量が、500〜2000である請求項1記載の乳酸系ポリマー組成物。 【請求項3】 ポリエステル系可塑剤(B)が、炭素原子数4〜10の二塩基酸と、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールとからなるポリエステルである請求項1記載の乳酸系ポリマー組成物。 【請求項4】 乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の配合重量比(A)/(B)が、98/2〜50/50である請求項1〜3のいずれか1つに記載の乳酸系ポリマー組成物。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、透明性、機械的強度、柔軟性に優れた性質を有し、包装材料、梱包材、緩衝材、農業用マルチフィルム、ラミネート、テープ、ラベル等の特に柔軟性が必要とされる成形物、即ち、袋類、農業用袋、農業用マルチフィルム、結束テープ、ラベル、食品包装用フィルム、シート、工業用品包装材、繊維包装材、雑貨用装材、養生シ-ト、日曜雑貨、苗木ポット、食品用容器、トレー、産業資材、工業用品、特に食品及び農業用包装材に有用な乳酸系ポリマー組成物に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 近年、プラスチックは膨大な量が使用されているが、その廃棄物による、埋立地の不足、景観阻害、海洋生物への脅威、環境汚染等の地球的環境問題を引き起こしている。従来、包装用等に使用される汎用樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が使用され、これら樹脂の処分方法として、焼却、埋立が行われている。 【0003】 しかし、これらの処分方法にも問題があり、焼却では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂は、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くする。また、ポリ塩化ビニルは、燃焼カロリーは低いものの焼却時に有害なガスを発生することが知られている。埋立においても、これらの汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、原形をとどめたまま半永久的に残留する事が知られており、埋立地の不足が深刻化する原因の一つになっている。 【0004】 また、自然環境中に廃棄された場合、この安定性のため美観を損ねたり、海洋生物、鳥類等が誤って補食し貴重なな生物資源が減少するなど環境破壊の一因となっている。これらの問題を解決するため、最近生分解性ポリマーの研究が盛んに行われている。このポリマーは、一般プラスチックと異なり容易に完全分解し、最終的には、水と二酸化炭素になる。 【0005】 生分解性ポリマーで注目されている樹脂の1つに、ポリ乳酸及びそのコポリマーがある。このポリマーは生分解性は無論のこと、燃焼カロリーが低いため、焼却した場合も炉を痛める事がなく、さらに燃焼時に有害なガスを発生しない特徴を有する。出発原料に再生可能な植物資源を利用出来るため、枯渇する石油資源から脱却できる。これらの事から、汎用樹脂の代替として期待されている。 【0006】 しかし、ポリ乳酸は柔軟性がないため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が使用されるフィルム等の用途には適していなかった。また水分との接触時に白化する、いわゆる耐水性が悪いという欠点を有しているため、水分を含むような食品包装、農業材用途には適していなかった。更にフィルムを曲げた際、応力によりクレージングが発生し易い欠点も有している。 【0007】 特開平4-335060号公報には、ポリ乳酸に可塑剤を添加した組成物が開示されており、その中で具体的な例としてアジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジオクチルが効果の良好なものとして記されている。しかしその可塑化効果は小さく、一般フィルム用途に使用するには柔軟性が低い。 【0008】 更に、該公開特許中に、フタル酸系可塑剤としてフタル酸ジオクチル、ポリエステル系可塑剤として、ポリプロピレングリコールアジピン酸、ポリプロピレングリコールセバシン酸が記載されている。フタル酸ジオクチルは、可塑化効果はあるものの、その効果は小さく、他のプラスチックに移行し易いこと、ブリードアウトが発生しやすいこと、揮発し易いこと等の欠点を持っている。 【0009】 またポリプロピレングリコールアジピン酸に代表されるようなポリエステル系可塑剤は、可塑化効果は高いものの、15℃以下の低温雰囲気下では応力によるクレージングが発生する。また、その添加により、更に耐水性が悪くなる等の欠点有している。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明が解決しようとする課題は、フィルム、シ-ト、包装材用に有用な、柔軟性、透明性、耐水性、耐クレージング性に優れ、かつ可塑剤のブリードアウトの無い乳酸系ポリマー組成物を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、耐水性を向上させるため、ポリプロピレングリコール等のような分子量の高い二価アルコールは用いず、二価アルコールの繰り返し単位を有し、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、かつ酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤を用いることにより、ポリマーの透明性を維持したまま、耐水性に優れ、15℃以下での応力によるクレージングの発生も無く、フィルムとしての使用に不可欠な十分な柔軟性を十分に発現できることを見い出し、本発明を完成した。 【0012】 即ち、本発明は、ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマー(A)と、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、かつ末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止された、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤(B)とを必須の構成成分として含有することを特徴とする乳酸系ポリマー組成物である。 【0013】 更に、詳しくは、該ポリエステル系可塑剤(B)の数平均分子量が、500〜2000である乳酸系ポリマー組成物、更に該ポリエステル系可塑剤(B)が、炭素原子数4〜10の二塩基酸と、炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールとからなるポリエステルである乳酸系ポリマー組成物であり、乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の配合重量比(A)/(B)が、98/2〜50/50である乳酸系ポリマー組成物である。 【0014】 本発明の主成分である乳酸系ポリマー(A)としては、ポリ乳酸や、そのコポリマー等があげられる。ポリ乳酸の製造法としては、乳酸から環状二量体であるラクタイドを合成し、開環重合により高分子量のポリ乳酸を得る方法が多く使用されているが、乳酸から直接脱水縮合によりポリ乳酸を合成する方法も用いられる。原料に用いられる乳酸は、砂糖、スターチ等の再生可能な資源を発酵する事により得られる。また光学不活性の乳酸は、石油化学原料から合成可能である。ポリ乳酸は、ピュラック社を始め、数社から工業的に製造され市販されており、本発明には、これら市販のポリ乳酸も十分使用可能である。 【0015】 また、コポリマーは、ポリ乳酸重合時もしくはポリ乳酸重合直後にカプロラクトン、酢酸ビニル、エチレンテレフタレート重合体、エチレンビニルアルコール等の一種以上の副成分を加え重合を更に進めることにより得られる。本発明に用いられる乳酸系ポリマー組成物原料としての乳酸モノマーは、光学異性体であるD体、L体、メソ体、ラセミ体の何れであっても良く、またこれらの混合物であっても良い。その際のL体、D体の比、L/Dは100/0〜0/100まで全ての組成で使用出来る。 【0016】 ポリマーの重合度は、強度が高く成形加工性に優れる点から、150〜20000程度が好ましい。本発明の重要な構成要素であるポリエステル系可塑剤(B)は、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、更に詳しくは、該二塩基酸は炭素原子数4〜10の二塩基酸、また該二価アルコールは炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールであるポリエステルで、かつポリマーとの相溶性、耐水性向上のため、末端停止剤により末端を封止し、酸価と水酸基価を低下させた、酸価と水酸基価の合計が40以下であるポリエステル系可塑剤である。 【0017】 更に詳しくは、炭素数4〜10の二塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。特にアジピン酸が技術的、経済的に好ましい。 【0018】 二価のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。特に分子量が200以下のものが好ましく用いられる。 【0019】 末端停止剤には、一塩基酸及び/又は一価アルコールを通常使用する。末端停止剤として用いられる一価のアルコールは、特に制約はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、n-アミルアルコール、n-ヘキサノール、イソヘキサノール、n-ヘプタノール、イソヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソオクタノール、n-ノナノール、イソノナノール、n-デカノール、イソデカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分岐アルコールが挙げられる。 【0020】 また、一塩基酸も特に制約なく用いることができ、一価の脂肪族カルボン酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、イソデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。 【0021】 ここでポリエステル系可塑剤(B)の酸価と水酸基価の合計を40以下に抑えることにより、乳酸系ポリマー(A)との相溶性向上や、ポリエステル系可塑剤(B)自体の不溶成分析出を起こりにくくすることができる。即ち、本発明のポリエステル系可塑剤(B)の酸価と水酸基価の合計は40以下のものが好ましく、就中20以下が効果的である。 【0022】 ポリエステル系可塑剤の数平均分子量については、特に限定はないが、500〜2000のものが特に好ましい。これは、可塑効果が高く、ブリードアウトが発生しにくくなるからである。 【0023】 この可塑剤の具体例としては、例えば、アジピン酸と1,3-ブチレングリゴールとを主成分とし、n-オクタノールを末端停止剤として用いたポリエステル、セバシン酸とブチレングリゴールとを主成分とし、末端停止剤として2-エチルヘキサノールを用いたポリエステル、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオール、ブチレングリコールとを必須成分とし、末端停止剤としてn-ヘキサノールとn-ノナノールを用いたポリエステル等が挙げられる。 【0024】 本発明の乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の重量比(A)/(B)は、通常98/2〜50/50の範囲であり、なかでも可塑化効果が高く、ブリードアウトがない点で、95/5〜70/30の範囲が特に好ましい。また本発明の実施に際しては、本発明の必須の構成成分である乳酸系ポリマー(A)と、ポリエステル系可塑剤(B)の他に、(A)以外のポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバリレート、スターチ系ポリマー等を加えても良い。 【0025】 更に、(B)以外の可塑剤として、フタル酸ジオクチル、ポリエチレングリコールアジピン酸等を加えても良いが、接触する他の物質への移行、ブリードアウト、応力クレージング等の発生に留意する必要がある。 【0026】 また、この乳酸系ポリマー組成物には、エポキシ化大豆油、カルボジイミドの様な安定剤、2,6-ジ-第三-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)の様な酸化防止剤、シリカ、タルクの様なブロッキング防止剤、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリルの様な防曇剤、酸化チタン、カーボンブラック、群青の様な着色剤等の添加剤を含んでいても差し支えない。 【0027】 本発明のポリマー組成物は、Tダイキャスト成形やインフレーション成形等の押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形等の方法により成形加工を行うことが出来る。乳酸系ポリマーは吸湿性が高く、加水分解性も強いため水分管理が必要であり、一般的な一軸押出機を用い押出成形する場合には、真空乾燥器等により除湿乾燥後、成膜する必要がある。 【0028】 また、ベント式二軸押出機による成膜は、脱水効果が高いため、効率的な成膜が可能である。成膜されたシ-トは、一軸または二軸延伸を行うことにより配向し、耐衝撃性等の物性を改良することが出来る。これらの方法により成形加工された成形物の引張弾性率は、例えば包装材料用フィルムとして使用する場合、折れ曲がり性や風合いを考えた場合、通常1000〜15000kg/cm2であることが好ましい。 【0029】 1000kg/cm2以下であると、過度に柔軟となり、内容物の保持ができなくなり実用的ではない。一方、15000kg/cm2以上では剛直になりすぎて、フィルムとしての風合いが無くなる。透明性も包装材用途には、内容物を美麗に見せるため、商品価値を高める上で重要なファクターである。 【0030】 本発明の乳酸系ポリマー組成物は、優れた透明性を有しており、透明性の指標として、特にヘイズ値20%以下のものが好ましく用いられる。また本発明に用いられるポリエステル系可塑剤は、加水分解性を持っているため、乳酸系ポリマーと共に生分解する利点を備えており、かつ安全性の高いものである為に、食品包装用にも優れている。 【0031】 本発明の乳酸系ポリマー組成物の用途例を以下に述べるが、これらに限定されるものではない。フィルム製造に用いた場合の該フィルムの用途としては、ゴミ袋、レジ袋、一般規格袋、重袋、農業用、結束テープ、食品用、工業用品、繊維、雑貨等の包装材用途や、農業用マルチフィルム等が挙げられる。またシ-ト、射出成形品では、日曜雑貨、食品容器、養生シ-ト、苗木ポット、産業資材、工業用品等が挙げられる。またポリ乳酸ポリマー組成物に比して、耐水性が付与されるため、水分を含む食品包装、農業材用途にも有用である。 【0032】 【実施例】 以下に、本発明を実施例及び比較例によって、詳細に説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。 【0033】 (実施例1〜5)200℃に制御された2本ロールに、絶乾状態の重量平均分子量23万のポリ乳酸(ピュラック社製)20gを仕込み、次に本発明に基づき合成した数平均分子量2000以下、酸価2以下、水酸基価15以下の実施例1〜5の可塑剤を各々5g(20重量%)添加し、5分間混練を行った。 【0034】 続いて、熱プレスにより温度200℃、圧力200kgf/cm2の条件で2分間プレスした後、急冷を行い、0.05mmのフィルムを作製した。得られたフィルムの分子量測定を行うと共に、JIS-K-7127に基づき、幅25mm、長さ200mmの短冊形試験片を作製し、引張試験を行い、引張弾性率、引張強度、引張伸びの測定を行った。 【0035】 また15℃で、180度折り曲げ試験によるクレージングの発生を観察する耐クレージング試験を行った。次に20℃の恒温水槽中における48時間後の白化状態を観察した耐水性試験を行った。クレージングの評価はクレージングの発生程度により4段階で評価した。クレージングが著しく発生したものを×、相当程度発生したもの△、痕跡程度発生したものを○、全然発生しなかったものを◎とした。 【0036】 耐水性も同様に4段階で評価した。白化が著しく発生したものを×、相当程度白化が発生したものを△、痕跡程度の白化が発生したものを○、全く発生しなかったものを◎とした。得られた結果を表1に示す。 【0037】 何れの組成物とも引張弾性率では、13000kg/cm2以下となり、かなりの柔軟性をもったフィルムが得られた。耐クレージング試験ではクレージングの発生は全く見られず、耐水性試験でも白化しないことが確認された。相溶性、透明性はヘイズ値により確認したが、どれも2以下と優れた値が得られた。 【0038】 (比較例1〜10)本発明とは異なる可塑剤を添加したもの、及び無添加の組成物を、実施例1〜5と同様な方法を用いて作製し、同一の試験を行った。比較例2のポリエステル系可塑剤の二価のアルコール及び二塩基酸は、実施例3と同一であるが、末端を封止していないもので、水酸基化が120と高いものである。 【0039】 比較例6で使用したポリプロピレングリコールアジピン酸は、数平均分子量1000、比較例7、8で使用したポリプロピレングリコールアジピン酸、ポリプロピレングリコールセバシン酸は、数平均分子量で2000であり、平均分子量425のポリプロピレングリコールと、アジピン酸及びセバシン酸より合成した。得られた結果を表2に示す。 【0040】 比較例1の可塑剤無添加品は、引張弾性率が25200kg/cm2と硬く、クレージングも発生した。水中での白化も相当程度観察された。比較例2の末端封止を行わなかったものは、相溶性、耐水性とも悪く、クレージングの発生も見られた。 【0041】 比較例3のアジピン酸ジイソブチルは、耐水性に優れるもののクレージングが発生して、十分な引張弾性率の減少も余り認められず、柔軟化に寄与しなかった。比較例4のセバシン酸ジオクチルは、何れの項目にも優れた効果を見い出せなかった。比較例5のフタル酸ジオクチルは、耐水性、耐クレージング性には優れるが、十分な弾性率の低下が認められなかった。 【0042】 また、ブリードアウトの発生を70℃、90%の条件下で、1週間ごとに観察したところ、本発明のポリエステル系可塑剤は1ヶ月経過時点でも、全くブリードアウトが発生しなかったのに対し、フタル酸ジオクチルのブリードアウトの発生は早く、1週目で観察された。比較例6のポリプロピレングリコールアジピン酸は、優れた引張弾性率を示したものの、クレージングの発生や水中浸積時の白化の発生が、無添加のものに比べ促進される欠点が認められた。 【0043】 比較例7の、数平均分子量を2000に上げたポリプロピレングリコールアジピン酸も、数平均分子量1000のものと同様にクレージングの発生や水中浸積時の白化の発生が、無添加のものに比べ促進される欠点が認められた。比較例8のポリプロピレングリコールセバシン酸は、比較例7のポリプロピレングリコールアジピン酸と同様な傾向を示し、弾性率は低下したがクレージングの発生や水中浸積時の白化の発生が促進される傾向があった。 【0044】 比較例9のエポキシ化大豆油、比較例10のエポキシ化脂肪酸エステルは何れの評価も良くなかった。 【0045】 (比較例11〜14)上記の一部の添加剤について、実施例1〜5の方法を用い、ピュラック社製のポリ乳酸18gに可塑剤2g(10重量%)を添加し、本発明による可塑剤と他の可塑剤との比較試験を行った。得られた結果を表4に示す。 【0046】 比較例11のフタル酸ジオクチルは、添加量10%以下では、引張弾性率は20100kg/cm2と増大し、柔軟性が無くなり、耐クレージング性も悪くなった。 【0047】 一方、比較例12のセバシン酸ジオクチルは、透明性は改良されるものの、他の項目は何れも良好な結果は得られなかった。比較例13、14のポリプロピレングリコールアジピン酸、ポリプロピレングリコールセバシン酸は添加量を減少させても、耐水性改善は出来ず、耐クレージング性も悪くなる傾向にあった。 【0048】 (実施例7)芳香族カルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を含むポリエステル(テレフタル酸16モル%、イソフタル酸14モル%、アジピン酸20モル%、エチレングリコール23モル%、ネオペンチルグリコール27モル%、数平均分子量23800(GPC、ポリスチレン換算値))10部に、ピュラック社製のL-ラクタイド90部を加え、不活性ガス雰囲気下で、165℃、1時間、両者を溶融・混合させ、更にエステル化触媒としてオクタン酸錫を0.02部加え、更に6.5時間反応させた。 【0049】 反応終了後、重量平均分子量170000の、ラクタイドとポリエステルとが共重合した乳酸系ポリマーを得た。ラクタイドは2.3%が残留していた。この乳酸系ポリマーに、実施例3と同一の可塑剤20%を添加し、実施例1〜5と同様な方法を用いて、可塑剤とのブレンド物を作製し、同一の試験を行った。得られた結果を表5に示す。ポリ乳酸を用いた場合と同様の透明性を維持し、かつ耐水性、耐クレージング性に優れており、可塑化効果も十分であった。 【0050】 (実施例8)芳香族カルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を含むポリエステル(テレフタル酸14モル%、イソフタル酸16モル%、アジピン酸20モル%、エチレングリコール28モル%、ネオペンチルグリコール22モル%、数平均分子量19800(ポリスチレン換算))10部に、ピュラック社製のL-ラクタイド90部を加え、不活性ガス雰囲気下で、165℃、1時間、両者を溶融・混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫を0.02部を加え、更に7時間反応させた。 【0051】 重量平均分子量161000の、ラクタイドとポリエステルとが共重合した乳酸系ポリマーを得た。ラクタイドは2.8%残留していた。この乳酸系ポリマーに実施例3と同一の可塑剤20%を添加し、実施例1〜5と同様な方法を用いて乳酸系ポリマー組成物を作製し、同一の試験を行った。得られた結果を表5に示す。ポリ乳酸と同様の透明性を維持したまま、耐水性、耐クレージング性に優れ、可塑化効果も十分に得られた。 【0052】 (実施例9)脂肪族系ポリエステル(コハク酸50モル%、エチレングリコール50モル%、ガラス転移点-3.5℃、融点105.0℃)15重量部に、L-ラクタイド78重量部と、MESO-ラクタイド7重量部とを加えて、不活性ガス雰囲気下で、165℃、1時間混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫を0.02部加えて8時間反応を行った。 【0053】 得られた乳酸系ポリマーは、褐色を帯びた透明な樹脂で、重量平均分子量はGPCの結果から71000であった。またラクタイドは、7%が残留していた。この乳酸系ポリマーに、実施例3と同一の可塑剤20%を添加し、実施例1〜5と同様な方法を用いて、乳酸系ポリマー組成物を作製し、同一の試験を行った。得られた結果を表5に示す。このポリマーに対しても、本発明による可塑剤を添加したものは、柔軟性、耐水性、耐クレージング性が大幅に向上し、優れた性能を示した。 【0054】 (実施例10)酢酸ビニル/エチレン共重合体(酢酸ビニル65%、エチレン35%)13部に、ラクタイド87部を加えて、不活性ガス雰囲気下で、165℃、1時間両者を均一に溶解混合し、エステル化触媒としてオクタン酸錫を0.02部加えた。この後、8時間反応を行い、褐色を帯びた透明な重量平均分子量104000の乳酸系共重合体を得た。 【0055】 ラクタイドモノマーは、6.2%残留していた。DSCによる測定の結果、ガラス転移点は41.6℃、融点は196.3℃であった。この乳酸系ポリマーに、実施例3と同一の可塑剤20%を添加し、実施例1〜5と同様な方法を用いて乳酸系ポリマー組成物を作製し、同一の試験を行った。得られた結果を表5に示す。優れた可塑化効果の他、耐水性、耐クレージング性、透明性も向上した。 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 【0058】 【表3】 【0059】 【表4】 【0060】 【表5】 【0061】 【発明の効果】 本発明は、フィルム、シ-ト、包装材用に有用な、柔軟性、透明性、耐水性、耐クレージング性に優れ、かつ可塑剤のブリードアウトの無い乳酸系ポリマー組成物を提供できる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-08-06 |
出願番号 | 特願平5-265048 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(C08L)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 森川 聡 |
特許庁審判長 |
宮坂 初男 |
特許庁審判官 |
舩岡 嘉彦 大熊 幸治 |
登録日 | 2002-06-14 |
登録番号 | 特許第3316972号(P3316972) |
権利者 | 大日本インキ化学工業株式会社 |
発明の名称 | 乳酸系ポリマー組成物 |
代理人 | 高橋 勝利 |
代理人 | 高橋 勝利 |