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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01T 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H01T |
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管理番号 | 1107975 |
異議申立番号 | 異議2003-72036 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-09-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-08 |
確定日 | 2004-11-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3379197号「コロナ放電装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3379197号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許第3379197号(平成6年2月25日出願、平成14年12月13日設定登録。)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「複数の突起状電極を所定間隔を隔てて配列した放電部材と、前記複数の突起状電極の先端が並んでいる部分と被帯電部材との間に、複数のグリッド線を持ったグリッド電極と、を備えたスコロトロン放電方式のコロナ放電装置であって、 前記複数の突起状電極が並ぶ方向と前記複数のグリッド線が並ぶ方向が同じであり、 以下の条件式(1)を満足することで、放電部材の突起状電極の先端とこれに近接するグリッド線との位置関係が、どの突起状電極についても同じであることを特徴とするコロナ放電装置。 P/(D+L)=n・・・・・(1) 但し、 P:突起状電極の間隔 D:グリッド線の間隔 L:グリッド線の幅 n:整数(=1、2、3、・・・・)」 2.特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人・中石幸明は、甲第1号証ないし甲第4号証をもとに、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(以下、「申立理由1」という。)、また、本件発明は特許を受けようとする発明が明確ではないため、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないものである(以下、「申立理由2」という。)から、本件発明の特許を取り消すべきと主張している。 3.申立理由1について (1)甲各号証記載の発明 (1-1)甲第1号証(特開昭60-80870号公報)には、コロナ放電装置に関し、第3、4図と共に、以下の事項が記載されている。 ・「第3図は全体斜視図であり、接地金属板10は底壁10aと両側壁10b,10bとによりコ字状長尺形状となり、底壁10aにはピン支持体11が取付られ、該ピン支持体11にはピン電極12が長手方向に等間隔で多数設けられてコロナ放電電極としてあると共に、接地金属板10の開口端(つまり、被帯電物の近傍)にはグリッド電極13が設けてある。前記ピン電極12は第4図に示すように、先端12aが円弧状でかつ略同一高さとなり、一定間隔tで一直線上に配列してある。」(第2頁右上欄第14行〜左下欄第4行) ・また、第3図には、多数のピン電極12がピン支持体11の長手方向に等間隔で一直線上に配列すると共に、多数のピン電極12の配列と平行に張架したグリッド電極13が、等間隔に複数配列された構成が示されている。 (1-2)甲第2号証(特開平5-94078号公報)には、帯電装置に関し、第4、5、8図と共に、以下の事項が記載されている。 ・「この実施例においては図4に示すように、上記絶縁性基体12上にコーン状に突出した突出電極11を一列に多数設け、各突出電極11をリード電極13によって接続させるようにした。」(第3頁段落【0025】) ・「一方、上記のように絶縁性基体12上に設けられた各突出電極11と所要間隔を介して対向電極14を設けるにあたっては、この対向電極14として、上記のように突出電極11を形成した際に使用したパターンマスク25自体を使用することもできるが、この実施例においては、図4に示すように、上記絶縁性基体12上に設けられた突出電極11と対応するようにして細長い平板部材15に多数の孔15aを設け、この各孔15aの周囲に電極14aを設け、これらの各電極14aを引出電極14bによって接続させるようにした。」(第3頁段落【0026】) ・「そして、上記のようにコーン状の突出電極11が多数設けられた絶縁性基体12を支持部材16上にセットすると共に、このようにセットされた絶縁性基体12の上に内部が中空になったスペーサー部材17を配し、このスペーサー部材17の上に、上記のように多数の孔15aの周囲に電極14aが設けられた平板部材15をセットし、各突出電極11に対して対向電極14を所要間隔を介して設けるようにした。なお、この実施例のものにおいては、図5に示されるd1の距離が10〜100μmになるようにした。」(第3頁段落【0027】) ・「そして、この帯電装置10において、上記のようにコーン状に突出するように設けられた多数の突出電極11と、この突出電極11と所要間隔を介して設けられた対向電極14との間に、電源(図示せず)から700V〜2KVの電圧を印加して、各突出電極11と対向電極14との間で放電を行い、これによって感光体1を帯電させるようにした。」(第4頁段落【0033】) ・「なお、このようにして感光体1の表面を帯電させた場合、一般に用いられているスコロトロンチャージャーに4〜8KVの電圧を印加させて感光体1を帯電させた場合と同様の状態に感光体1が帯電されるようになり、また放電によるオゾンや窒素酸化物等のガスの発生量は、スコロトロンチャージャーを用いた場合に比べて1/30以下になっていた。」(第4頁段落【0035】) ・「また、この実施例の帯電装置10において、図8に示すように、突出電極11が設けられた上記絶縁性基体12と、対向電極14が設けられた平板部材15との間に配されたスペーサー部材17内に空気を導く空気流通ノズル18を設け、この空気流通ノズル18により上記スペーサー部材17内に空気を導き、突出電極11と対向電極14との間の放電により発生した帯電ガスを、このように導かれた空気と一緒に対向電極14に設けられた上記孔25aから感光体1の表面に送り出すようにすると、感光体1の帯電効率がさらに向上した。」(第4頁段落【0040】) ・また、第4図には、リング状の対向電極14が一定間隔で互いに接続されたものが示されている。 (1-3)甲第3号証(特開平5-36490号公報)には、除電装置に関し、第1、2図と共に、以下の事項が記載されている。 ・「前記の放電電極2は、金属材料によって針状に形成されており、棒状の柄部8の長手方向に所定間隔を存して複数整列して設けられている。この柄部8は、フレーム9に両端部が支持されており、図2に示すように、その中心部に延在する供電線10と、供電線10の周囲に絶縁体で形成された絶縁部11を介して設けられた金属製の筒状体12と、この筒状体12を被覆する絶縁体によって形成された被覆部13とにより構成されている。供電線10には、交流高電圧を発生してその電圧を放電電極2に印加する交流高電圧発生装置6が接続されている。これにより、供電線10と筒状体12とは、絶縁部11を介して接続され容量結合され、交流高電圧発生装置6と放電電極2とを直接的に接続することなく、十分な電圧を放電電極2に安全に印加することができる。なお、本実施例においては、交流高電圧を放電電極2に印加するが、放電電極2に印加する高電圧は、直流や、交流に直流を重畳した電圧であってもよい。」(第3頁段落【0027】) ・また、第1、2図には、板状部材に円孔14が等間隔に形成された接地電極3の構成、及び、流高電圧発生装置6で発生した交流高電圧が、放電電極2と接地電極3との間に印加する構成が示されている。 (1-4)甲第4号証(特開平4-211971号公報)には、静電記録装置に関し、第3、62、63、64図と共に、以下の事項が記載されている。 ・「図3において、イオン発生器20は絶縁性基板21(例えばセラミック基板)と、基板21上に形成された厚さ数μm(2〜3μm)の誘導電極22および厚さ数10μm(〜20μm)程度の絶縁体層23と、絶縁体層23上に形成された厚さ数10μm(〜18μm)のイオン発生電極24、およびイオン発生電極24と同電位でイオン発生電極24との間に約40μm幅のスリット26を介して設けられた遮蔽電極25によって構成される。」(第7頁段落【0051】) ・「一方、制御基板30は絶縁性基板31と、この基板31の両面に形成された第1および第2の制御電極32,33からなり、基板31と制御電極32,33を貫通した多数のイオン通過孔29を有する。」(第7頁段落【0052】) ・「図62にはイオン通過孔29′の他の例として、(a)に6角形の例、また(b)には4角形の例を示した。この様に多角形のイオン通過孔を使用することによって、隣り合うイオン通過孔の間の距離を一定にすることができる。従って、エッチングなどによって隣どうしの孔が繋がらないだけの充分な距離さえ離してあれば、この条件の下でのイオン通過孔29′の面積を円形の場合よりも大きくすることが可能である。すなわち、イオン通過孔の形状は、円形の場合と比較すると、多角形の場合の方がイオンの通過する部分の面積を大きくできるため、より効率の良い記録を実現ることができるのである。」(第26頁段落【0231】) ・「更に、この他に多数の孔の開いた銅箔の代わりに、図63(a)(b)に示したような導電性の繊維から形成されているメッシュを使用する方法もある。つまり片面銅張り基板として第1の制御電極32とイオン通過孔29を形成した基板を使用し、絶縁性基板31を挟んで第1の制御電極32と反対側の面に、このメッシュを第2の制御電極33として張り付けることによって制御基板30が製造される。図63(a)は導電性の細い糸を縦横に編んで形成したメッシュの例であり、その拡大図を図63(b)に示す。図63(c)は更に別のメッシュの例である。」(第27頁段落【0233】) ・「例えば図64(a)(b)に示したような構造のイオン流記録ヘッドを構成することができる。すなわち、例えば僅かに100μmには満たないが、はぼ100μmのピッチで制御電極32または33を一列に並べることが可能となるのである。」(第27頁段落【0238】) ・「図64(a)は第1の制御電極32が4角形の例であり、図64(b)は第1の制御電極32が円形の例である。いずれの場合にも、小さな多数の円形イオン通過孔29′が形成されている。この様に小さい多数のイオン通過孔29′を使用することによって、イオン通過孔を主走査方向に一列に並べることが可能となる。また、イオン流記録ヘッド3の端面近くまで第1の制御電極32を形成することができるので、記録ドラム1をはじめとして、装置の小型化に大きく寄与することも可能となる。」(第27頁段落【0239】) ・「第1および第2の制御電極の少なくとも一方に形成されるイオン通過孔を1つの画点に対して複数個ずつ設けると、イオン通過孔の幾つかが現像用トナーなどによって目詰まりを生じても、目詰まりを生じてない他のイオン通過孔をイオンが通過できるので、画点が記録できる。これによって、イオン流記録ヘッドの長寿命化を図ることができる。」(第28頁段落【0247】) (2)対比・判断 そこで、本件発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の発明は、複数の突起状電極(「多数のピン電極12」が相当)を所定間隔を隔てて配列した放電部材(「コロナ放電電極」が相当)と、前記複数の突起状電極の先端が並んでいる部分と被帯電部材(「被帯電物」が相当)との間に、複数のグリッド線(「複数のグリッド電極13」が相当)を持ったグリッド電極と、を備えたスコロトロン放電方式のコロナ放電装置(「コロナ放電装置」が相当)ではあるが、複数のグリッド線の各々は、複数の突起状電極が並ぶ方向と平行に張架されているため、複数の突起状電極が並ぶ方向と複数のグリッド線が並ぶ方向とは互いに直交する関係にあるといえる。 そうすると、甲第1号証に記載の発明は、少なくとも本件発明の構成要件である「複数の突起状電極が並ぶ方向と複数のグリッド線が並ぶ方向が同じ」であり、かつ、この配置関係を前提とした「条件式(1)」、即ち、 「P/(D+L)=n・・・・・(1) 但し、 P:突起状電極の間隔 D:グリッド線の間隔 L:グリッド線の幅 n:整数(=1、2、3、・・・・)」を満足する構成を具備しているとはいえず、また、甲第1号証には、かかる構成を示唆する記載もない。 また、かかる構成は、甲第2号証ないし甲第4号証にも記載あるいは示唆されていない。 確かに、甲第2号証には、突出電極11と対向電極14が1対1の関係で配置された例が記載されているが、このものは、突出電極11と対向電極14との間に電圧を印加して、突出電極11と対向電極14との間で放電を行うものであるから、「突起状電極の先端が並んだ部分と、被帯電部材との間に、定電圧制御されたグリッド電極を配置し、この状態で突起状電極から、グリッド電極を介し被帯電部材側にコロナ放電を行うスコロトロン放電方式」(本件明細書の段落【0004】参照)のコロナ放電装置とは異なるものである。したがって、甲第2号証に記載の対向電極14は、本件発明の「グリッド電極」に相当するものとはいえない。仮に、甲第2号証に記載の対向電極14がグリッド電極であるといえるとしても、リング状の対向電極14が一定間隔で互いに接続されたものが、複数の突起状電極が並ぶ方向と並ぶ方向が同じ「グリッド線」に相当するとはいえず、上記の条件式(1)を満たすものでないことも明らかである。 また、甲第3号証には、放電電極2と接地電極3が1対1の関係で配置された例が記載されているが、このものは、放電電極2と接地電極3との間に電圧を印加して、放電電極2と接地電極3との間で放電を行うものであるから、上記と同様の理由により、甲第3号証に記載の接地電極3は、本件発明の「グリッド電極」に相当するものとはいえない。仮に、甲第3号証に記載の接地電極3がグリッド電極であるといえるとしても、板状部材に円孔14が等間隔に形成された接地電極3が、複数の突起状電極が並ぶ方向と複数の「グリッド線」が並ぶ方向が同じとしたものとはいえず、上記の条件式(1)を満たすものでないことも明らかである。 さらに、甲第4号証には、メッシュ状の制御電極(「グリッド電極」に相当)を使用したり、多数のイオン通過孔が形成された四角形あるいは円形の(即ち、平板状の)制御電極を等間隔に配列したことにより、イオン通過孔の形状による効率化、目詰まり対策による長寿命化を図るようにした例が記載されているが、このものは、そもそも放電部材としての突起状電極を備えていない構成であると共に、メッシュ状の制御電極を使用した例は、グリッド線が放電部材の配列方向に単に均等であるというだけであり、平板状の制御電極を使用した例では、放電部材の配列方向に1対1の関係で配列されているものの、線状ではないため、いずれの例も、上記の条件式(1)を満たすものでないことは明らかである。 そして本件発明は、上記の構成により、「放電部材に配列された突起状電極のそれぞれに、ごみ、Si等が先端部に付着したり、先端部が丸くなる現象が生じて各突起状電極から電場干渉が発生しても、放電量大の各突起状電極のそれぞれには、これに等しい位置関係で近接するグリッド線があって、各突起状電極からの電荷はこれらに等しい条件で対応し近接する各グリッド線によってそれぞれ等しく引き寄せられてグリッド電極に流れるようにするので、放電むらを少なくすることができる」という明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。 そうすると、本件発明が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとは到底いえない。 (3)まとめ したがって、申立理由1には理由がない。 4.申立理由2について 申立理由2に関し、特許異議申立人は、『本件特許発明の要件D「前記複数の突起状電極が並ぶ方向と前記複数のグリッド線が並ぶ方向が同じであり」の記載は、突起状電極とグリッド線の位置関係が不明であります。複数の突起状電極12は、図1、図4(a)などに記載されているように、長尺状の放電部材1の先端に長手方向に1列に形成されております。すなわち、「複数の突起状電極が並ぶ方向」とは、放電部材1の長手方向であるものと考えられます。通常、二つの部材の「並ぶ方向が同じ」という場合には、二つの部材は平行に配置されていると解されます。すなわち、このような表現は、甲第1号証の第3図に記載されたような突起状電極とグリッド線の配置関係を含みうるものであります。甲第1号証の第3図に記載されたような突起状電極とグリッド線の配置関係を除外するのであれば、本件特許の図4(b)に示されているように、グリッド線が接地金属板の長辺方向ではなく短辺方向、すなわち、複数の突起状電極に向かう方向に配置されるものであることを明確にすべきであります。したがいまして、特許請求の範囲の記載が不明でありますので、請求項1に係る本件特許発明は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないものであります。』(特許異議申立書第11頁第17行〜第12頁第3行)と主張している。 なお、特許法第36条第6項第2号の規定は、平成6年法の規定であり、本件の出願に適用される平成5年法には存在しないが、一応検討するに、本件発明において、「複数のグリッド線が並ぶ方向」とは、グリッド線の長さ方向ではなく、グリッド線が複数並べられた方向を指しているものと解されるところ、「複数の突起状電極が並ぶ方向」と「複数のグリッド線が並ぶ方向」が「同じ」とする事項は、甲第1号証の第3図に示されたような突起状電極とグリッド線との配置関係(即ち、複数の突起状電極が並ぶ方向と各グリッド線の張架方向が同じであって、複数の突起状電極が並ぶ方向と複数のグリッド線が並ぶ方向が直交関係)にあるものを含まないことは明らかであり、本件発明に関し、特許請求の範囲の記載が不明であるとは到底いえない。 また、本件発明に関する特許請求の範囲の記載が、平成5年法の第36条第5項に規定する要件を満たしていないとすることもできない。 したがって、申立理由2にも理由がない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-11-02 |
出願番号 | 特願平6-27120 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
Y
(H01T)
P 1 651・ 121- Y (H01T) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中田 善邦 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 内藤 真徳 |
登録日 | 2002-12-13 |
登録番号 | 特許第3379197号(P3379197) |
権利者 | ミノルタ株式会社 |
発明の名称 | コロナ放電装置 |