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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1109292
審判番号 不服2003-16079  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-21 
確定日 2005-01-04 
事件の表示 平成 8年特許願第309013号「光ディスク基板成形方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 2日出願公開、特開平10-149587〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月20日の出願であって、平成15年7月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は下記の請求項1〜5と補正された。なお、下線は、請求人により付されているものである。
「【請求項1】 光ディスク基板成形方法において、スタンパと金型コアとの間に溶融樹脂の冷却速度を遅くするセラミックスによる断熱層を形成することを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項2】 請求項1において、該セラミックスの熱伝導率は4.1W/mK以下であることを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項3】 請求項1又は2において、前記断熱層の厚みをゲートからの距離に応じて変化させたことを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項4】 請求項1又は2において、ゲートを基板中心部に設ける場合、光ディスク基板の中心部における断熱層を光ディスク基板の外周部における断熱層よりも厚くすることを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項5】 請求項4において、光ディスク基板の中心部における断熱層の厚みが0.13mm以上で、光ディスク基板の外周部における断熱層の厚みが0.2mm以上であることを特徴とする光ディスク基板成形方法。 」

(2)補正の適否
本件補正は、特許法第17条の2第1項第3号において準用する同法第121条第1項の審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするときになされたものであるところ、同法第17条の2第4項において、同条第1項第3号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、同項第1号乃至第4号に掲げる事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明)を目的とするものに限るとされているので、その規定を満たすか検討する。

本件補正前の特許請求の範囲の記載は、平成15年6月16日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりである。なお、付されていた下線は省略した。
「【請求項1】 光ディスク基板成形方法において、スタンパと金型コアとの間に断熱性セラミックスによる断熱層を形成し、該断熱層の厚みを0.2mm〜1.0mmの範囲としたことを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項2】 請求項1において、前記断熱性セラミックスの熱伝導率は、4.1W/mK以下であることを特徴とする光ディスク基板成形方法。
【請求項3】 光ディスク基板成形方法において、スタンパと金型コアとの間にセラミックスによる断熱層を形成させたことを特徴とする光ディスク基板成形方法。」

請求人は、請求理由において、補正後の請求項1〜5は、補正前の請求項3を減縮するものである旨を主張しているところ、仮に補正後の請求項1が補正前の請求項3を減縮するものであるとしても、残りの補正後の請求項は対応する補正前の請求項がない。 なお、補正後の請求項2に関しては、補正前の請求項2の文言どおりである旨を主張しているけれども、補正前の請求項2で引用している請求項1の構成である断熱層の厚みが少なくとも削除されているから、補正前の請求項2ではないし、また補正前の請求項2を減縮したものでもない。
結局のところ、本件補正は、請求項数が3から5に増加しているから、その点で、特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号のに掲げるいずれの事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明)を目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3にかかる発明は、平成15年6月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項3にかかる発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
【請求項3】「光ディスク基板成形方法において、スタンパと金型コアとの間にセラミックスによる断熱層を形成させたことを特徴とする光ディスク基板成形方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平8-267514号公報(以下、引用例という。)には、図面とともに、次のように記載されている。 なお、下線は当審が付したものである。
(i)「【請求項1】 ベース型の型閉面内に嵌装した円形の盤体の表面にドーナツ状のスタンパを当て設け、そのスタンパをベース型の型閉面外周に取付けた外周リングと、盤体中央部に嵌装した内周リングとにより固定してなるディスク成形用射出金型において、上記スタンパよりも厚肉でスタンパと接する表面を鏡面仕上した薄肉円盤をスタンパの裏面に表面を密に当接し、その薄肉円盤を介してスタンパを上記盤体に当て設けてなることを特徴とするディスク成形用射出金型。」(特許請求の範囲の請求項1参照)、及び、
(ii)「【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、コンパクトディスク、ビデオディスクなどの情報記録用のディスクを射出成形する場合に用いられる金型に関するものである。」(段落【0001】参照)こと、
(iii)「【0012】 【作 用】 予めスタンパの裏面に鏡面仕上した薄肉円盤の表面を密に当接して、スタンパを運んだり取付けたりすることができるので、スタンパの交換に際して鏡面にごみが付着するのが防止され、したがって、金型を成形機に取付けた状態でのスタンパの交換をこれまでよりも容易になし得る。」(段落【0012】参照)こと、
(iv)「【0013】 【実施例】以下この発明を図1及び図2に示す実施例により詳説する。図中11はベース型、12はベース型の型閉面内に設けた凹所内に入子13と重ねて嵌装した盤体で、型面となる表面は平坦面に仕上げてある。
【0014】 この盤体2の中央部に形成した穴部には、片側の開口縁をドーナツ状のスタンパ14の内周縁を抑えるリング15に形成した筒体16が表側から嵌挿して、図では省略したが、ねじなどにより止着できるようにしてある。この筒体16の内側に位置する受部材19の中央部には、図では省略したが、図3と同様にスプルブッシュが貫挿してある。
【0015】 17はベース型11の型閉面外周にビス18などを用いて着脱自在に取付け外周リングで、内周縁の内側はスタンパ14の外周縁を抑える環状縁17aに突出形成してある。
【0016】 20はスタンパ14と同形の薄肉円盤で、該スタンパ14より肉厚(例えば、0.3〜1.0mm)の超硬合金盤、セラミック盤等からなり、その表面は鏡面仕上してある。この薄肉円盤20は表面をスタンパ裏面に密に当接してスタンパ14に重ねて用いられ、薄肉円盤20とともにスタンパ14は金型まで運ばれて、上記盤体12の平坦仕上した表面に薄肉円盤20を介して当て設けられる。
【0017】 上記薄肉円盤20を介してのスタンパ14の当て設けは、内周リング15を有する筒体16と外周リング17とを外した状態で行う。先ずクリーンルームなどでスタンパ14と薄肉円盤20とを重ねて筒体6に挿通し、その筒体6と共に金型の所まで持って行く。そして従来と同様に筒体16を盤体中央に嵌挿して薄肉円盤20を盤体12に当接し、その盤体12にスタンパ14を当接して内周リング15によりスタンパ内周を抑え込む。しかるのち外周リング17を取付けてスタンパ外周を抑える。これによりスタンパ14は鏡面仕上した盤体12の表面と密着して、盤体12に当て設けられることになる。」(段落【0013】〜【0017】参照)こと。
そして、図1、図2として、次の図が示されている。


これらの記載によれば、引用例には、
「ベース型の型閉面内に嵌装した円形の盤体の表面にドーナツ状のスタンパ14を当て設け、そのスタンパをベース型の型閉面外周に取付けた外周リングと、盤体中央部に嵌装した内周リングとにより固定してなるディスク成形用射出金型において、上記スタンパ14よりも厚肉でスタンパと接する表面を鏡面仕上した薄肉円盤(セラミックス盤など)20をスタンパ14の裏面に表面を密に当接し、その薄肉円盤20を介してスタンパ14を上記盤体に当て設けてなることを特徴とするディスク成形用射出金型を用いて、コンパクトディスクなどの情報記録用のディスクを射出成形する方法。」との発明(以下「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比、判断
そこで、本願発明と引用例発明とを比較する。
引用例発明の「コンパクトディスクなどの情報記録用のディスクを射出成形する方法」は、本願発明の「光ディスク基板成形方法」に相当する。 そして、引用例発明の「ベース型の型閉面内に嵌装した円形の盤体」は、本願発明の「金型コア」に相当するから、引用例発明の「薄肉円盤(セラミックス盤など)20をスタンパ14の裏面に表面を密に当接し、その薄肉円盤20を介してスタンパ14を上記盤体に当て設けてなる」ことは、本願発明の「スタンパと金型コアとの間にセラミックスによる層を形成させたこと」に相当する。
してみると、両発明は、「光ディスク基板成形方法において、スタンパと金型コアとの間にセラミックスによる層を形成させたことを特徴とする光ディスク基板成形方法。」の発明で一致している。
ただ、本願発明は、該「セラミックスによる層」が「断熱層」であると規定しているのに対し、引用例発明ではそのような規定がなされていない点で一応相違している。

この点に関して、請求人は請求理由において、「世の中には本明細書中のスタンパの熱伝導率が127W/mKを越えるセラミックスも存在しますので、セラミックスが一般的に断熱性を備えているとするには無理があります。 また、一部の低熱伝導率のセラミックスが周知であったとしても、ディスク基板の形成にそのようなセラミックスを用いることまで周知であるとは云えません。」(審判請求書第6頁参照)と主張している。
しかしながら、セラミックスが、一般的に、ニッケル製スタンパ(本願明細書表1に熱伝導率127W/mKと記載)の熱伝導率より大きいとは理解しがたく、仮に127W/mKより大きいセラミックスがあったとしても(請求人はその例を提示しておらず根拠が不明である)特殊なものと解すべきであって、そのような特殊なものを引用例発明で使用する必然性はないから、請求人の前記主張は採用できない。 なお、樹脂成形装置において、断熱性スペーサとしてセラミックスを利用している例として、例えば特開昭58-12715号公報や特開平1-297221号公報などを参照されたい。
結局のところ、断熱層との表現はなくとも、セラミックスによって実質的に断熱層が形成されていると理解するのが相当である。
乃至、スタンパを断熱性材料を介して金型コアに取り付けることは知られている[例えば特開昭62-5824号公報(第2頁右上欄〜左下欄の転写性を向上させるために射出された溶融樹脂のキャビティ内圧が十分伝達されるまでは溶融樹脂の熱を奪い取らない方がよい旨の記載も参照)や特開平7-178774号公報など参照]から、スタンパと金型コアの間に介在するセラミックスを断熱性のものと標榜することは当業者が容易になし得る程度のことと認められる。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるか、乃至少なくとも周知技術を勘案し引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、乃至は同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-20 
結審通知日 2004-10-26 
審決日 2004-11-12 
出願番号 特願平8-309013
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G11B)
P 1 8・ 113- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橘 均憲中村 豊  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 小林 秀美
川上 美秀
発明の名称 光ディスク基板成形方法  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  

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