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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D
管理番号 1109446
審判番号 不服2003-25085  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2005-01-06 
事件の表示 特願2000-512045「熱伝達要素組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/14543、平成13年10月 2日国内公表、特表2001-516866〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成10年9月11日(パリ条約による優先権主張1997年9月15日、アメリカ合衆国)の出願であって、原審における平成14年7月19日付けの拒絶理由通知書に記載した理由により平成15年10月3日付けで拒絶査定されたが、同年12月25日に審判が請求され、同日付けで特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正書が提出されたものである。

2.補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年12月25日付けの手続補正書を却下する。

[理 由]

(1)平成15年12月25日付けの手続補正書の補正内容

平成15年12月25日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載について、次の補正を行うものである。
ア 本件補正前の請求項1、2、4、5、6、7に係る発明に記載された「熱伝熱板」を「熱伝達板」と補正する。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明に記載された「前記真直なひだ及び前記斜めのひだの各々が前記熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体」を、「前記真直なひだの各々が前記熱伝達板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記斜めのひだの各々が前記熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体」と補正する。
ウ 本件補正前の請求項6に係る発明に記載された「前記第1の熱伝達板の真直なひだ及び斜めのひだの各々が前記第1の熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記第2の熱伝熱板の斜めのひだの各々が前記第2の熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体」を、「前記第1の熱伝達板の真直なひだの各々が前記第1の熱伝達板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記第1の熱伝達板の斜めのひだの各々が前記熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っており、かつ前記第2の熱伝達板の斜めのひだの各々が前記第2の熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体」と補正する。
エ 本件補正前の発明の詳細な説明中の段落番号0007、0008、0009、0011、0012、0015の記載を補正する。(補正内容の詳細は省略。)

(2)本件補正の適否の判断(独立特許要件を除く)

上記アに記載した補正事項は、特許請求の範囲について誤記の訂正を目的とする補正であると認められる。
上記イ及びウに記載した補正事項は、本件補正前の「熱伝熱板」を「熱伝達板」と補正することは、特許請求の範囲について誤記の訂正を目的とする補正であり、その他の補正は、特許請求の範囲の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前と同一の技術分野で同一の課題を解決するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められる。
そして、上記アないしエの補正事項は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(3)独立特許要件の判断

(3-1)本件補正に係る特許請求の範囲

本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された各請求項に係る発明は、次のとおりのものである。
【請求項1】 ロータを有する回転再生式空気予熱器のための熱伝達要素組立体であって、複数の積重されて互いに間隔を置いている熱伝達板を包含し、これらの熱伝達板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、前記複数の熱伝達板の各々が、
a 前記熱伝達板に互いに間隔を置いて形成されて前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に延びている複数の真直なひだと、
b 前記熱伝達板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記熱伝達板の平らな部分により分離され、かつ前記真直なひだ及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記真直なひだ間に延びている複数の斜めのひだと、
を包含し、前記真直なひだの各々が前記熱伝達板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記斜めのひだの各々が前記熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体。
【請求項2】 前記真直なひだが前記熱伝達板の平面よりも高い第1の選定高さを有すると共に、前記斜めのひだが前記熱伝達板の平面よりも高い第2の選定高さを有し、前記第2の高さが前記第1の高さと等しいか又はそれよりも小さい請求項1記載の熱伝達要素組立体。
【請求項3】 前記第2の高さが前記第1の高さよりも小さい請求項2記載の熱伝達要素組立体。
【請求項4】 前記軸方向に測定される前記斜めのひだ間の前記熱伝達板の前記平らな部分の寸法が前記第2の選定高さの少なくとも3倍である請求項2記載の熱伝達要素組立体。
【請求項5】 隣接して積重されて間隔を置いている2枚の前記熱伝達板における前記斜めのひだと前記流体流れの方向との間に形成される斜めの角度が、前記流体流れの方向に正反対の角度で延びている請求項1記載の熱伝達要素組立体。
【請求項6】 ロータを有する回転再生式空気予熱器のための熱伝達要素組立体であって、複数の種重(審決注:「積重」の誤記と認める。)されて互いに間隔を置いている熱伝達板を包含し、これらの熱伝達板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、
前記複数の熱伝達板が複数の第1の熱伝達板と複数の第2の熱伝達板とから成って、前記第1の熱伝達板が前記第2の熱伝達板と交互に並び、
前記第1の熱伝達板の各々が、前記第1の熱伝達板に互いに間隔を置いてかつ前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に形成されている複数の真直なひだと、前記第1の熱伝達板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記第1の熱伝達板の平らな部分により分離され、かつ前記真直なひだ及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記真直なひだ間に延びている複数の斜めのひだとを包含し、
前記第2の熱伝達板の各々が、真直なひだを包含しないで、前記第2の熱伝達板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記第2の熱伝達板の平らな部分により分離され、かつ前記第2の熱伝達板を横切って前記流体流れの方向に対して斜めに延びている複数の斜めのひだを包含し、
前記第1の熱伝達板の真直なひだの各々が前記第1の熱伝達板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記第1の熱伝達板の斜めのひだの各々が前記熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っており、かつ前記第2の熱伝達板の斜めのひだの各々が前記第2の熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体。
【請求項7】 隣接する前記第1及び第2の熱伝達板における前記斜めのひだと前記流体流れの方向との間に形成される斜めの角度が、前記流体流れの方向に正反対の角度で延びている請求項6記載の熱伝達要素組立体。

(3-2)引用例に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開昭58-95196号公報(以下、「引用例」という。)には、熱交換器用の熱伝達要素組立体の発明について、図面と共に次の記載がある。

(a)「本発明は、熱伝達要素、殊に熱い熱交換流体から冷い熱交換流体に熱を伝達するために熱交換器に使用される熱伝達要素の組立体に関する。更に詳述すれば、本発明は、回転再生式の熱交換器に使用される熱伝達要素の組立体に関する。このような回転再生式の熱交換器において、熱伝達要素は、熱い熱交換気体に接触することにより加熱され、その後冷い熱交換気体に接触して熱を伝達する。
本発明を特別に適用できる熱交換器のひとつのタイプは、非常によく知られている回転再生式加熱器である。典型的な回転再生式加熱器は多数の室に分割された円筒形のロータを有し、これら室にはそれぞれ間隔を置いて積重された複数の熱吸収板(熱伝達要素又は板)が配置されている。これら熱吸収板は、ロータが回転するにしたがって、加熱ガス流れと加熱しようとする冷い空気又は他の気体の流れとに交互にさらされる。熱吸収板は、加熱ガスにさらされると、これら加熱ガスから熱を吸収し、それから加熱しようとする冷い空気又は他の気体にさらされたときに、これら熱吸収板により加熱ガスから吸収した熱が冷い気体に伝達される。このような型式の多くの熱交換器は、間隔を置いた関係で接近して積重され、隣接するもの同志がそれぞれその間に熱交換流体を流すための通路を形成する複数の熱吸収板を有する。」(2頁上左欄3行〜上右欄8行)

(b)「理想的には、熱吸収板は、これら熱吸収板への熱交換流体からの熱伝達を増加するためにこれら板間の通路を通して流れる熱交換流体に大きな乱流を生じさせ、また同時に通路間の流れに対する抵抗を相当小さくしかつこれら板の表面が容易に掃除できるような形状であることが良い。
熱吸収板を掃除するために、スートブロワを設けることが一般的である。このスートブロワは、積重した複数の熱吸収板間の通路を通して高圧空気又は蒸気の吹きつけをおこない、これによりこれら板の表面から微粒子堆積物を取除いて運び去り、これら板の表面をきれいにする。このような掃除の方法では、しかしながら、次のような問題があった。すなわち、設計上ある一定強さの構造的剛性が熱吸収板の積重組立体に与えられていないときには、比較的薄い熱吸収板に加わる高圧吹きつけ媒体の力によって、これら板にクラックが生じてしまうことである。
このような問題を解消するひとつの方法として、それぞれの熱吸収板を多数の間隔を置いて縮らし、これにより第1の方向へ板から外向きに突出する第1のたぶ(ローブ)と第1の方向とは対向する第2の方向へ板から外向きに突出する第2のたぶとを有する二たぶ状ノッチ(二裂状ひだ)形成する方法がある。これら熱吸収板は、それから、一緒に積重されて熱伝達要素組立体を形成し、それらのノッチは、隣接する板を互いに適当な間隔を置いて維持するのみならず、これら隣接する板間の支持体を形成し、これによりすす吹き作業中にこれら板に加わる力を熱伝達要素組立体を構成する多数の板間で平衡させる働きをなす。この型式の熱伝達要素組立体は、米国特許第2,596,642号明細書に開示されている。」(2頁上右欄19行〜下右欄12行)

(c)「第1図は、本発明による熱伝達要素組立体を使用している回転再生式熱交換器2を示す。
この回転再生式交換器2はロータが12を囲繞するハウジング10を包含し、ロータ10の中には本発明による熱伝達要素組立体が担持されている。ロータ12は、半径方向に延びる複数の仕切によりロータ柱16に接続した円筒形のシエル14を包含する。加熱流体4はダスト18を通してハウジング10に入り、一方加熱しようとする流体Bはダスト22を通して加熱流体とは対向する端からハウジング10に入る。
ロータ12は、ロータ柱16に接続したモータにより適当な減速装置を介してその軸線まわりに回転させられる。これたモータ及び減速装置は、第1図には示していない。ロータ12が回転すると、このロータ内に担持した熱伝達要素は、最初にダスト18を通してハウジング10に入つてきた加熱流体に接触するように動かされてこの加熱流体から熱を吸収し、それからダクト22を通してハウジング10に入つてきた加熱しようとする流体に接触するように動かされる。加熱流体が熱伝達要素を通過するとき、これら熱伝達要素は加熱流体から熱を吸収する。加熱しようとする流体がその後熱伝達要素を通過するとき、この加熱しようとする流体は熱伝達要素からこれら要素が加熱流体に接触したときに吸収した熱を吸収する。
第1図において、加熱流体Aは熱ガスまた加熱しようとする流体Bは冷空気であり、このような熱交換器2は空気予熱器としてしばしば使用される。」(3頁下左欄4行〜下右欄13行)

(d)「第2図、第3図及び第4図は、本発明にしたがつて構成した熱伝達要素組立体30の3つの異なる実施例を示す。これら図面に示すように、各々の熱伝達要素組立体は複数の第1の熱吸収板32と複数の第2の熱吸収板34とを包含する。これら第1及び2の熱吸収板32及び34は間隔を置いた関係で交互に積重され、これにより隣接する第1及び2の熱吸収板32及び34同志はそれぞれの間に通路36を形成する。これら通路36は、熱吸収板による熱交換関係で熱交換流体が流れるための流路を形成する。スペーサ38A及び38Bは、隣接する板32及び34が所定の距離の間隔を維持して流路36の開きを保持するために設けられている。
板32及び34は、通常、所望する形状に圧延又は鍛造することができる薄い金属シ-トである。しかしながら、本発明は、このような金属シートを使用することに必ずしも限定されるものではない。板32及び34は、種々の表面形状、例えば、限定されるものではないが、第2図に示すような平らな表面又は好適には第3及び4図に示すような波状の表面を有することができる。このような波状板32及び34は、隣接する板間の間隔に比べて比較的浅い一連の傾斜溝を形成する。典型的に、これら溝は、第3及び4図に示すように、板32及び34間を通過する熱交換流体の流れに対して鋭角に傾斜されている。隣接する板32及び34の各波状部は、第3図に示されるように互いに同一方向に配列される方法で、又は所望するならば第4図に示すように互いに異なる方向に配列される方法で、これら板間を通過する熱交換流体の流れに対して傾斜して延びるようにすることができる。
スペーサ38A及び38Bは、金属板32及び34を縮らすことにより形成され、間隔を置いて板に複数の二裂状ひだを構成する。これら二裂状ひだ38A及び38Bは、それぞれ、板の表面から正反対のふたつの方向へ外向きに突出する第1及び2のたぶ40及び50である。好適には、各たぶ40、50は、板から外向きに向けたVの頂部を有する実質的にV形の溝の形である。更に、複数の第1の板32の各ひだ38A及び複数の第2の板34の各38Bをそれぞれ熱伝達要素組立体を通る流体流れのライン上に整列して位置させ、これによりその溝が要素組立体を通る流体流れに対する大きな抵抗とならないようにすることが好ましい。」(4頁上右欄1行〜下右欄6行)

(3-3)周知例に記載された事項

原査定の備考で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-273996号公報(以下、「周知例」という。)には、伝熱要素板の積層体の発明について、図面と共に次の記載がある。

(e)「本発明は、再生式熱交換器の拡大伝熱面を有する伝熱要素板の複数枚を積層して構成された積層体の改良に関する。」(1頁下左欄19行〜下右欄1行)
(f)「以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
第1図(a)はFNC型の伝熱要素板の1対の積層体の断面図であり、第1図(b)はその上面図である。
この積層体は、大波型1(Notched groove型)の高さH1の7.5倍以下のピッチP1の波を有する断面であって、更に平板部17(Flat plate)の上面と大波型1の山5,5を連ねた線との距離と、平板部17の下面と大波型1の谷15,15を連ねた線との距離とを等しくすることによって、伝熱要素板18,19間に構成されている流路断面16の面積を大波型1の谷15,15を連ねた線で2等分するために、大波型1の高さH1の中央部に谷15,15を連ねた線に平行に配置し、且つ波のピッチP1の中間部に配置し、流路断面16の水力直径を小さい値に押えるために、大型波1の巾Wより広い巾F(図は省略図であってWより狭い巾となっている)を持った平板部17を有する断面である拡大伝熱面を形成している伝熱要素板18と、該伝熱要素板18を前後を反転することによって鏡面対称の形状とした伝熱要素板19とを交互に積層し、積層された伝熱要素板18,19間に構成される流体の流路断面16の水力直径が7.5mm以上である伝熱要素板の積層体(FNC型と称する)である。流体の流路は複数対の積層体が積層されて構成される。」(4頁上左欄17行〜下左欄3行)

(3-4)引用例に記載された発明

引用例の上記(a)ないし(d)に摘示した記載によれば、引用例の第3図と第4図が図示する各実施例には、次の発明が記載されていると認められる。
「空気予熱器として使用される回転再生式熱交換器2が使用するロータ12の中に担持される熱伝達要素組立体であって、複数の積重されて互いに間隔を置いている熱吸収板を包含し、これらの熱吸収板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、前記複数の熱吸収板の各々が、
前記熱吸収板に互いに間隔を置いて形成されて前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に延びている複数の第1のたぶ40及び第2のたぶ50と、
前記熱吸収板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に、かつ前記第1のたぶ40及び第2のたぶ50及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記第1のたぶ40及び第2のたぶ50間に延びている複数の斜めの波とを包含し、前記斜めの波の各々が熱吸収板の対向する両側面から外向きに全体的に波状に形成されている熱伝達要素組立体。」(以下「引用例の発明」という。)

(3-5) 対比・一致点・相違点

本件補正に係る請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)と引用例の発明を対比すると、引用例の発明の「空気予熱器として使用される回転再生式熱交換器2」、「熱吸収板」、「第1のたぶ40及び第2のたぶ50」、「波」は、それぞれ本願補正発明の「回転再生式空気予熱器」、「熱伝達板」、「真直なひだ」、「ひだ」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用例の発明は、次の一致点の構成について一致し、下記の相違点の構成について相違するものと認められる。
《一致点》
「ロータを有する回転再生式空気予熱器のための熱伝達要素組立体であって、複数の積重されて互いに間隔を置いている熱伝達板を包含し、これらの熱伝達板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、前記複数の熱伝達板の各々が、
前記熱伝達板に互いに間隔を置いて形成されて前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に延びている複数の真直なひだと、
前記熱伝達板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に、かつ前記真直なひだ及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記真直なひだ間に延びている複数の斜めのひだと、
を包含し、前記真直なひだの各々が前記熱伝達板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起状から成っている熱伝達要素組立体。」
《相違点》
本願補正発明は、複数の斜めのひだが「前記熱伝達板の平らな部分により分離され」たものであって、「前記斜めのひだの各々が前記熱伝達板の前記平らな部分の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている」ものであるのに対し、引用例の発明は、複数の斜めのひだの各々が熱伝達板(熱吸収板)の対向する両側面に全体的に波状に形成されたものであって、熱伝達板には平らな部分が設けられていない点。

(3-6)相違点の検討

周知例の上記(e)及び(f)に摘示した記載によれば、周知例の特に第1図(a)及び(b)には、再生式熱交換器の各伝熱要素板について、大型波と隣接する大型波の間に平板部17が設けられていることが開示されている。そして、周知例に記載された「再生式熱交換器」は、引用例の発明の「空気予熱器として使用される回転再生式熱交換器」と同種のものであるから、本願補正発明の「回転再生式空気予熱器」に相当し、同じく「伝熱要素板」は、引用例の「熱吸収板」に相当するものであから、本願補正発明の「熱伝達板」に相当する。
引用例の上記(a)ないし(d)に摘示した記載によれば、引用例の第2図が図示する実施例には、空気予熱器として使用される回転再生式熱交換器の熱伝達要素組立体が包含する各熱吸収板について、第1たぶ及び第2たぶが形成された波部と隣接する波部の間に平板部が設けられていることが開示されており、また、熱吸収板は、通常、薄い金属シートを圧延又は鍛造することにより所望の形状に製作されることが記載されている。そして、引用例に記載された「空気予熱器として使用される回転再生式熱交換器」と「熱吸収板」は、それぞれ本願補正発明の「回転再生式空気予熱器」と「熱伝達板」に相当することは前示のとおりである。
上記の事実によれば、回転再生式空気予熱器の熱伝達要素組立体の熱伝達板を、シート状の金属平板から成形して製作すること、及び、熱伝達板に成形された波部と波部の間に平板部を設けることは、本願補正発明の技術分野における当業者にはその出願前に周知の技術的事項(以下「周知技術」という。)であると認められる。
そうすると、相違点に係る本願補正発明の構成は、引用例の発明に周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たことというべきである。

そして、本願補正発明の効果を検討しても、引用例の発明及び周知の技術から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、それを超えるような顕著な効果は見出せない。

(3-7)むすび

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明

本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成14年10月23日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1ないし7に記載されたとおりの次のものである。
【請求項1】 ロータを有する回転再生式空気予熱器のための熱伝達要素組立体であって、複数の積重されて互いに間隔を置いている熱伝熱板を包含し、これらの熱伝熱板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、前記複数の熱伝熱板の各々が、
a 前記熱伝熱板に互いに間隔を置いて形成されて前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に延びている複数の真直なひだと、
b 前記熱伝熱板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記熱伝熱板の平らな部分により分離され、かつ前記真直なひだ及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記真直なひだ間に延びている複数の斜めのひだと、
を包含し、前記真直なひだ及び前記斜めのひだの各々が前記熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体。
【請求項2】 前記真直なひだが前記熱伝熱板の平面よりも高い第1の選定高さを有すると共に、前記斜めのひだが前記熱伝熱板の平面よりも高い第2の選定高さを有し、前記第2の高さが前記第1の高さと等しいか又はそれよりも小さい請求項1記載の熱伝達要素組立体。
【請求項3】 前記第2の高さが前記第1の高さよりも小さい請求項2記載の熱伝達要素組立体。
【請求項4】 前記軸方向に測定される前記斜めのひだ間の前記熱伝熱板の前記平らな部分の寸法が前記第2の選定高さの少なくとも3倍である請求項2記載の熱伝達要素組立体。
【請求項5】 隣接して積重されて間隔を置いている2枚の前記熱伝熱板における前記斜めのひだと前記流体流れの方向との間に形成される斜めの角度が、前記流体流れの方向に正反対の角度で延びている請求項1記載の熱伝達要素組立体。
【請求項6】 ロータを有する回転再生式空気予熱器のための熱伝達要素組立体であって、複数の種重(審決注:「積重」の誤記と認める。)されて互いに間隔を置いている熱伝熱板を包含し、これらの熱伝熱板が前記ロータ内に配置されて、それらの間に前記ロータを通してほぼ軸方向への流体流れのための流路を形成している熱伝達要素組立体において、
前記複数の熱伝熱板が複数の第1の熱伝熱板と複数の第2の熱伝熱板とから成って、前記第1の熱伝熱板が前記第2の熱伝熱板と交互に並び、
前記第1の熱伝熱板の各々が、前記第1の熱伝熱板に互いに間隔を置いてかつ前記流体流れの方向とほぼ平行な方向に形成されている複数の真直なひだと、前記第1の熱伝熱板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記第1の熱伝熱板の平らな部分により分離され、かつ前記真直なひだ及び前記流体流れの方向に対して斜めに延びていると共に隣接する前記真直なひだ間に延びている複数の斜めのひだとを包含し、
前記第2の熱伝熱板の各々が、真直なひだを包含しないで、前記第2の熱伝熱板に互いに平行に間隔を置いて形成されていると共に前記第2の熱伝熱板の平らな部分により分離され、かつ前記第2の熱伝熱板を横切って前記流体流れの方向に対して斜めに延びている複数の斜めのひだを包含し、
前記第1の熱伝熱板の真直なひだ及び斜めのひだの各々が前記第1の熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っていると共に、前記第2の熱伝熱板の斜めのひだの各々が前記第2の熱伝熱板の対向する両表面から外向きに突出して隣接する2重の隆起条から成っている熱伝達要素組立体。
【請求項7】 隣接する前記第1及び第2の熱伝熱板における前記斜めのひだと前記流体流れの方向との間に形成される斜めの角度が、前記流体流れの方向に正反対の角度で延びている請求項6記載の熱伝達要素組立体。

(2)本願の請求項1に係る発明について容易想到性について

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)についてみると、上記2.(2)に記載したとおり、特許請求の範囲について誤記の訂正を目的とする補正と特許請求の範囲の減縮を目的とする補正により、本願発明を補正したものが本願補正発明であるところ、本願補正発明は、前示のとおり、引用例の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断された。
そうすると、本願発明は、本願補正発明についてと同じ引用例の発明及び周知技術に基づいて同様な理由により、容易想到であったものというべきである。

(3)まとめ

したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願のその余の請求項に係る発明を判断するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-10 
結審通知日 2004-08-11 
審決日 2004-08-26 
出願番号 特願2000-512045(P2000-512045)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F28D)
P 1 8・ 121- Z (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
発明の名称 熱伝達要素組立体  
代理人 朝倉 勝三  

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