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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1109523
異議申立番号 異議2003-72166  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-01 
確定日 2004-10-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3383311号「ポリエステルブレンドから得られる高耐衝撃性製品」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3383311号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 [1] 手続きの経緯
本件特許第3383311号の請求項1〜4に係る発明は、1995年2月16日(パリ条約による優先権主張1994年2月28日、米国)に国際出願され、平成14年12月20日に特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社アサヒヤから特許異議の申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月7日に特許異議意見書および訂正請求書が提出されたものである。
[2] 訂正の適否についての判断
〈1〉訂正の内容
特許権者が求める訂正事項は下記の通りである。
1.特許請求の範囲の請求項1,2,4,5,6を削除し、請求項の番号及び引用する請求項の番号を以下のとおり訂正する。
訂正前の 訂正後の 訂正前の引用 訂正後の引用
請求項の番号 請求項の番号 請求項の番号 請求項の番号
3 1
7 2 3 1
8 3 7 2
9 4 7 2
2.発明の詳細な説明について次の(イ)〜(ラ)の訂正をする。
(イ)明細書第1頁第5〜9行「このプラスチック製品は、…から得られる。」を削除する。
(ロ)同第2頁第17〜21行「これとは異なり、…を発見した。」を削除する。
(ハ)同第2頁下から4〜2行「従って、本発明の一つの目的は…ことにある。」を
『従って、本発明の一つの目的は、改良された衝撃強さを示す、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドを含む熱成形容器を提供することにある。』と訂正する。
(ニ)同第2頁最下行〜第3頁第4行「本発明の別の目的は、…ことにある。」を
『本発明の別の目的は、耐衝撃性及び耐応力亀裂性のような優れた機械的性質ならびに耐熱性を示すポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドを含む熱成形容器を提供することにある。』と訂正する。
(ホ)同第3頁第5〜23行「これらの及び他の目的は、…によって達成される。」を
『これらの及び他の目的は、(A)(1)テレフタル酸からの反復単位からなるジカルボン酸成分;及び
(2)エチレングリコールからの反復単位を含むジオール成分からなる、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂90〜95重量%;ならびに
(B)(1)テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル93〜97モル%及びイソフタル酸3〜7モル%からの反復単位を含むジカルボン酸成分;及び(2)1,4-シクロヘキサンジメタノールからの反復単位を含むジオール成分からなる(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で)、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリ1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂5〜10重量%((A)及び(B)の合計重量は100%である)からなるポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドから得られる熱成形容器によって達成される。』と訂正する。
(ヘ)同第7頁下から6〜2行「好ましくは、ジカルボン酸部分は…100モル%からなる。」を
『好ましくは、ジカルボン酸部分はテレフタル酸(またはテレフタル酸ジメチル)95モル%とイソフタル酸5モル%とからなる。好ましくは、ジオール部分は1,4-シクロヘキサンジメチレン100モル%からなる。』と訂正する。
(ト)同第8頁第15〜22行「ブレンド組成の範囲は、…5〜8重量%である。」を削除する。
(チ)同第8頁下から3〜2行「さらに、ブレンドは…フィルムの形態で有用である。」を削除する。
(リ)同第9頁下から3行〜第10頁第7行「(C)エチレングリコール…PCT 3879。」を
『C)イソフタル酸5モル%で改質されたポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、PCTA 6761;
D)イソフタル酸17モル%で改質されたポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、Kodar A150。』と訂正する。
(ヌ)同第10頁第11行「例1」を『例1(参考例)』と訂正する。
(ル)同第10頁下から2行「例2」を『例2(参考例)』と訂正する。
(ヲ)同第11頁第9行「例3〜5」を『例3〜5(参考例)』と訂正する。
(ワ)同第12頁第7行〜第18頁第8行「例6〜10…延性破壊が増大される。」を削除する。
(カ)同第18頁第9行〜最下行「例21〜25…表Vに要約する。」を
『例6〜10(実施例)
例1〜5に記載した方法に従って、例6〜10を製造した。例6は、混ぜもののないPET 10388 対照のフィルムであり、例7はCHDM含有コポリエステルPCTA 6761の混ぜもののないフィルムである。例8〜10は、2,5及び10重量%のCHDM含有コポリエステルPCTA6761とPETとのブレンドである。押出フィルムは、160℃の強制空気炉中に20分間入れることによって結晶化させた。衝撃強さを23℃で測定した。試験結果を表IIに要約する。』と訂正する。
(ヨ)同第19頁の表Vの題及び例番号を以下の通り訂正する。
表Vを表II、例21,22,23,24,25をそれぞれ6,7,8,9,10と訂正する。
(タ)同第20頁第1行「表Vの結果」を『表IIの結果』と訂正する。
(レ)同第20頁第9〜16行「例26〜30…表VIに要約する。」を
『例11〜15
例1〜5に記載された方法に従って、例11〜15を製造した。例11は、混ぜもののないPET 10388対照のフィルムであり、例12はCHDM含有コポリエステルKodar A150の混ぜもののないフィルムである。
例13〜15は、2,5及び10重量%のCHDM含有コポリエステルKodar A150とPETとのブレンドである。押出フィルムは、160℃の強制空気炉中に20分間いれることによって結晶化させた。衝撃強さを23℃で測定した。試験結果を表IIIに要約する。』と訂正する。
(ソ)同第21頁表VIの題及び例番号を以下の通り訂正する。
表VIを表III、例26,27,28,29,30をそれぞれ11,12,13,14,15と訂正する。
(ツ)同第22頁第1行「表VIの試験結果」を『表IIIの試験結果』と訂正する。
(ネ)同第22頁第9行 「例31〜32」を『対照例16及び実施例17』と訂正する。
(ナ)同第22頁第11行〜23行「前記3〜5に記載した方法…効果を示す。」を
『前記例3〜5に記載した方法に従って、対照例16及び実施例17をMPM一軸スクリュー押出機上で製造し、厚さ30milのフィルムに押出した。Hydro-Trim実験室規模熱成型機を使用し、ブレンドを結晶化するために160℃に加熱された金型を用いて、フィルムを厚さ約25milのトレイの形状に熱成形した。トレイの底部を用いて、試験温度-20℃において衝撃試験を行った。対照例16は97重量%のPET 12822及び3重量%の成核剤濃縮物を含む対照製品であった。成核剤濃縮剤は、86.6重量%の線状低密度ポリエチレン、11.7重量%の熱-酸化安定剤及び1.7重量%の二酸化チタン(TiO2 )からなるものであった。実施例17は、87重量%のPET 12822 +10重量%のThermx 6761 +3重量%の線状低密度ポリエチレン成核剤濃縮物を含むブレンドから成形された製品であった。これは、低レベルのCHDM含有ポリエステルの添加の効果を示す。』
(ラ)同第22頁第24行〜第23頁第3行「-20℃における…増大させた。」を
『-20℃における対照例16の平均破壊エネルギーは1.6ft-lbであり、延性破壊は10%であった。低レベルのThermx 6761を含む例32の-20℃における平均破壊エネルギーは、2.87ft-lbであり、30%の延性破壊を示した。従って、-20℃におけるブレンド(実施例17)の破壊エネルギー及び延性破壊の割合は、CHDM含有コポリエステルブレンドの添加によって増大される。さらに、成核剤濃縮物は製品の結晶化度を増大させた。』と訂正する。
〈2〉訂正の可否の判断について
1.訂正事項1について
請求項1,2,4,5,6を削除する訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とした、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、請求項7〜9について、請求項番号及びそこで引用する請求項の番号を変更する訂正は、請求項の削除に伴う番号の繰り上げで、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2.訂正事項2(イ)及び(ロ)について
訂正事項(イ)及び(ロ)は、削除された請求項に対応する発明の詳細な説明の記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3.訂正事項2(ハ)及び(ニ)について
訂正事項(ハ)及び(ニ)は、請求項が削除され、残された請求項がすべて熱成型容器に係る発明となったことに対応し、それに整合するように発明の目的を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
4.訂正事項2(ホ)について
訂正事項(ホ)は、発明の詳細な説明を請求項3(訂正後の請求項1)に整合するように訂正するものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
5.訂正事項2(ヘ)について
訂正事項(ヘ)は、発明の詳細な説明の(B)成分についての好適な態様の記載を請求項3(訂正後の請求項1)に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
6.訂正事項2(ト)について
訂正事項(ト)は、削除された請求項に対応する発明の詳細な説明の記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
7.訂正事項2(チ)について
訂正事項(チ)は、請求項が削除され、残された請求項がすべて熱成型容器に係る発明となったことに対応し、それに整合するように発明の詳細な説明のフィルム形態で用いる場合を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
8.訂正事項2(リ)について
訂正事項(リ)は、削除された請求項に対応するポリエステルC)、D)、G)を削除すると共に、E)をC)、F)をD)とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
9.訂正事項2(ヌ)及び(ル)について
訂正事項(ヌ)及び(ル)は、訂正後の請求項には含まれない例1及び例2をそれぞれ例1(参考例)及び例2(参考例)とし、訂正後の発明の実施例に該当しないことを明確にする訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
10.訂正事項2(ヲ)について
訂正事項(ヲ)は、削除された請求項に対応する例3〜5を例3〜5(参考例)とし、訂正後の発明の実施例でないことを明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
11.訂正事項2(ワ)について
訂正事項(ワ)は、削除された請求項に対応する例6〜20を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
12.訂正事項2(カ)について
訂正事項(カ)は、訂正事項(ワ)によって例6〜20が削除された結果、例の番号を繰り上げ訂正し、訂正後の例6〜10が実施例であることを付記すると共に、試験結果の表の番号も削除された表の番号を埋めるように繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
13.訂正事項2(ソ)について
訂正事項(ソ)は、訂正事項(ワ)及び(カ)によって例の番号が繰り上げられたことに伴い、例番号を繰り上げると共に表の番号も繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
14.訂正事項2(ツ)について
訂正事項(ツ)は、訂正事項(ソ)によって表の番号が繰り上げられたことに伴い、それに整合するように表の番号を繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
15.訂正事項2(ネ)について
訂正事項(ネ)は、「例31及び32」を「対照例16及び実施例17」とするものであるところ、この訂正は、訂正事項(ワ)によって削除された例の番号を埋めるように番号を繰り上げると共に、それが本件発明に含まれる実施例とそうでない対照例とに区別するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
16.訂正事項2(ナ)について
訂正事項(ナ)は、「前記3〜5」が例であることを明確にすると共に、訂正事項(ネ)と同趣旨の訂正、即ち、例31を対照例16、例32を実施例17とする訂正をするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
17.訂正事項2(ラ)について
訂正事項(ラ)は、訂正事項(ネ)と同趣旨の訂正、即ち、例31を対照例16、例32を実施例17とする訂正をするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
18.むすび
以上のとおりであるから、上記各訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]本件発明
訂正後の特許明細書の記載によれば、本件請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1〜4」という)は特許請求の範囲請求項1〜4に記載された次のとおりのものである。
「1.(A)(1)テレフタル酸からの反復単位からなるジカルボン酸成分;及び
(2)エチレングリコールからの反復単位を含むジオール成分からなる、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂90〜95重量%;ならびに
(B)(1)テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル93〜97モル%及びイソフタル酸3〜7モル%からの反復単位を含むジカルボン酸成分;及び(2)1,4-シクロヘキサンジメタノールからの反復単位を含むジオール成分からなる(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で)、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂5〜10重量%((A)及び(B)の合計重量は100%である)からなるポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドから得られる熱成形容器。
2.0.01〜5重量%の成核剤をさらに含む請求の範囲第1項の熱成形容器。
3.前記成核剤が2.5〜3.5重量%の量で存在する請求の範囲第2項の熱成形容器。
4.前記成核剤が線状低密度ポリエチレンである請求の範囲第2項の熱成形容器。」
[4]特許異議申立理由
特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は次のとおりである。なお、請求項の番号は訂正前のものである。
1.本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
2.本件請求項2、3に係る発明は甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
3.本件請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また甲第1号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
4.本件請求項5、7、8に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
5.本件請求項6、9に係る発明は甲第4号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、上記請求項に係る発明の特許は、いずれも同法第113条第2号により取り消されるべきものである。
[5]刊行物の記載
1.刊行物1:PCT国際公開 WO92/13033(特許異議申立人:株式会社アサヒヤの提出した甲第3号証)
刊行物1には、「1.以下の(a)と(b)の混和性のあるブレンドとして特徴付けられる熱可塑性成形材料
(a)テレフタル酸とY1モル%のシクロヘキサンジメタノールおよび100-Y1モル%のエチレングリコールの繰り返し単位から本質的に成るポリエステルまたはコポリエステル
(b)テレフタル酸とY2モル%のシクロヘキサンジメタノールおよび100-Y2モル%のエチレングリコールの繰り返し単位から本質的に成るポリエステルまたはコポリエステル
ここにおいて、50モル%≧Y1-Y2≧18モル%
この材料はこのポリエステルとコポリエステルだけを含んでいる場合は透明である。」(特許請求の範囲1)の発明について記載され、この発明のブレンド物は成形材料としてバランスよい性質を示すこと(3頁20〜22行)が記載され、また、明細書の実施例(表3、8頁)には、100モル%のテレフタル酸と95モル%のエチレングリコール及び5モル%の1,4-シクロヘキサン-ジメタノール(CHDM)からなるコポリエステルAと、100モル%のテレフタル酸と70モル%のエチレングリコール及び30モル%の1,4-シクロヘキサン-ジメタノール(CHDM)からなるコポリエステルBの2つの異なるコポリエステルのブレンド(A/B、100/0、95/5、90/10、85/15、80/20、0/100)の性質(引張強度と曲げモジュラス)が具体的な数値をもって示されている(表3)。
2.刊行物2:特開平6-136140号公報(特許異議申立人:株式会社アサヒヤの提出した甲第4号証)
刊行物2には、「【請求項1】(a)90〜99.9重量%の熱可塑性結晶可能ポリエステル樹脂;
(b)有効な結晶化剤として働くに充分な量のナトリウムイオン;および(c)製品のバリ取り時にヘアーおよびフェザー状の端部が生成するのを減少させ、そして積み重ねるとき、多数の上記製品が互いに粘着しようとする傾向を減少させる、に充分な量のワックス;から本質的に成るブレンド物から製造された熱成型品。
【請求項2】(a)(i)90〜99.9重量%の熱可塑性結晶可能ポリエステル樹脂;
(ii)有効な結晶化剤として働くに充分な量のナトリウムイオン;および(iii)0.05〜1.5重量%のワックス;を一緒にブレンドし;
(b)このブレンド物をシートに押出し;
(c)このシートを製品に熱成型し;そして(d)この熱成型した製品の周囲から過剰の材料をバリ取りする;段階を含んで成る、熱成型品の製造方法。」(特許請求の範囲)の発明について記載され、発明の詳細な説明には「従って、適切なワックスには、ポリオレフィンワックス、例えばポリプロピレンワックスまたはポリエチレンワックス、好適には酸化した高密度ポリエチレンワックス、特に低密度ポリエチレンワックスが含まれる。」(公報第4頁第5欄38〜42行)が記載されている。
3.刊行物3:Journal of Applied Polymer Science 46巻(1992)p.339-351(特許異議申立人:株式会社アサヒヤの提出した甲第2号証)
刊行物3は、「PETの結晶化挙動におけるブレンドの効果」と題する学術論文であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)に、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリメチルメタクリレート(MMA)、芳香族ポリアミド、コポリエステル、などの他の熱可塑性樹脂をブレンドしたときの結晶化について報告されている(339頁、SYNOPSIS)。このブレンドに供したコポリエステルとしてKODAR(PETG)A-150を使用したことが記載され(表1)、PET/PETGの90〜10/10〜90(Vol%)ブレンドについて、結晶化、融解、などに関する熱的挙動についての各種データが示されている。
4.刊行物4:米国特許第4352907号明細書(特許異議申立人:株式会社アサヒヤの提出した甲第1号証)
刊行物4には、「成形品が改良された強靱さを持つ、a,b,cの3成分系ポリエチレンテレフタレートブレンド
a.0.7〜1.0の固有粘度のポリエチレンテレフタレート30-95 重量部
b.0.45-0.75の固有粘度の4,4-ジヒドロキシ-ジ(単核アリル)-A化合物(ここにおいて、アリルは…)のポリカーボネート1-30重量部
c.テレフタル酸と10-90モル%のエチレングリコール及び90-10モル%のシクロヘキサン-1,4-ジメタノールとのコポリエステル2.5-10重量部
但しa,b,cの合計は100重量部」(特許請求の範囲1)の発明について記載され、明細書の実施例には(比較例として)PET/PETG/PCが90/10/0のブレンドが記載されており(表1)、ここにおいてPETGはテレフタル酸と20モル%のエチレングリコール及び80モル%シクロヘキサン-1,4-ジメタノールのコポリエステルであり(例1の説明)、Izod(即ち衝撃テスト)のデータも記載されている(表1)。
[6]特許法第29条第1項第3号について
訂正前の本件請求項1及び4は上記訂正により削除されたので、これ等の請求項に係る発明についての特許法第29条第1項第3号の規定に該当するとの特許異議申立人の主張はその根拠を失った。
[7]特許法第29条第2項について
1.本件発明1について
刊行物1に記載された発明は、2種のポリエステルのブレンドに関するものではあるが、本件発明1の(A)成分に対応する(a)はシクロヘキサンジメタノールを必須の成分として含むものであり、この点で本件発明1の(A)成分と相違し、また、本件発明1の(B)成分に対応する(b)はエチレングリコールを必須の成分として含むものであり、またイソフタル酸は含まないものであるから、これらの点で本件発明1の(B)成分と相違している。してみれば、刊行物1に記載された発明に基づき、本件発明1の2種のポリエステル(A)及び(B)を組み合わせることが、容易に想到し得るものとは言えない。
刊行物2には、ポリエステル、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)に、結晶核剤として働くナトリウムイオンやワックス、具体的には低密度ポリエチレンを配合させることは記載されているが、本件発明1の2種のポリエステル(A)及び(B)を組み合わせることについては何の教示もない。
刊行物3は、「PETの結晶化挙動におけるブレンドの効果」と題する学術論文であり、PETに、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリメチルメタクリレート(MMA)、芳香族ポリアミド、コポリエステル、などの他の熱可塑性樹脂をブレンドしたときの結晶化について報告されているところ(339頁、SYNOPSIS)、このブレンドに供したコポリエステルとしてKODAR(PETG)A-150を使用したことが記載され(表1)、PET/PETGの90〜10/10〜90(Vol%)ブレンドについて、結晶化、融解、などについての熱的挙動に関する各種データが示されている。
しかし、このKODAR(PETG)A-150は、本件明細書によればイソフタル酸17モル%で改質されたポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)とのことであるが、本件発明1の(B)成分ではイソフタル酸の割合が3〜7モル%であるのに対し、刊行物3の上記KODAR(PETG)A-150では17モル%である点で相違している。
また、刊行物3は上記のようにPETに各種熱可塑性樹脂をブレンドしたときの結晶化、融解、などに関する熱的挙動についての研究論文であり、本件発明1の用途物品である熱成形容器について記載も示唆もされていない点でも相違している。
さらに、刊行物3は結晶化、融解、などに関する熱的挙動についての記述はあるが、本件発明1の効果とする耐衝撃性、特に冷凍食品の容器等に使用したときの低温における耐衝撃性については記載されていない。
してみれば、本件発明1と刊行物3に記載された発明とは少なくとも次の2点、即ち、(i)(B)成分のイソフタル酸含有量が本件発明1では3〜7モル%であるのに対し刊行物3では17モル%である点、及び、(ii)樹脂組成物の用途物品が本件発明1では熱成形容器であるのに対し刊行物3ではそれが記載されていない点、で相違していると言える。
そして、刊行物3には、耐衝撃性、特に冷凍食品の容器等に使用したときの低温における耐衝撃性については何の記載もされていないのであるから、そのために(B)成分においてイソフタル酸の割合を変更し、また、用途物品を熱成形容器とすることが、当業者にとって容易に考えつくものと言うことはできない。
刊行物4に記載された発明はポリカーボネートを必須の成分として含む3成分系の組成物であり、これはポリカーボネートを必須とする点で本件発明1と相違し、また、刊行物4には、この3成分系組成物と共に比較例としてPET/PETG(90/10)の2成分系組成物が記載されているが、このPETGはテレフタル酸と20モル%のエチレングリコールと80モル%のシクロヘキサン1,4-ジメタノールのコポリエステルであるから、本件発明1の(B)成分とはエチレングリコールを含有しイソフタル酸を含有しない点で相違するものであり、結局刊行物4は本件発明1を教示するものではない。
以上のとおりであるから、刊行物1〜4に記載された発明を併せ考慮しても、刊行物2は結晶核剤やワックスの添加を主題とするものであり、刊行物1及び4はポリエステルの2者ブレンドについての記載はあるがその成分としてイソフタル酸を含有するものについては記載がなく、刊行物3にはイソフタル酸を含有するポリエステルについての記載はあるがその含有量は本件発明の(B)成分での含有量をはるかに超える(17モル%)ものであり、また、刊行物3には熱成形容器に用いることや冷蔵庫などで使用されること考慮した低温衝撃性について何も記載がないのであるから、本件発明1が容易に発明し得たと言うことはできない。
2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して、更に0.01〜5重量%の成核剤を含むことを要件とするものであるから、本件発明1が刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないのと同様の理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないものである。
3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明2に対して、更に成核剤の含有量を2.5〜3.5重量%と限定するものであるから、本件発明2が刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないのと同様の理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないものである。
4.本件発明4について
本件発明4は、本件発明2に対して、更に成核剤を線状低密度ポリエチレンに限定するものであるから、本件発明2が刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないのと同様の理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて容易に発明し得ないものである。
[8].むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明1〜4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記の通り決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリエステルブレンドから得られる高耐衝撃性製品
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、低温において予想外に高い衝撃強さを示す、冷凍食品用トレイのような熱成形プラスチック製品に関する。
発明の背景
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、押出用及び射出成形用樹脂として、家庭電気器具部品、容器及び自動車部品を含む種々の家庭用または工業用製品の二次加工に広く用いられている。このような製品の多くは、かなりの温度変化及び/または物理的酷使に耐えなければならないので、通常は、ノッチ付きアイゾット衝撃値によって示される耐衝撃性を改良するために、ポリエチレンテレフタレートを他のポリマー、例えば、α-オレフィンのイオン性コポリマー及びポリオレフィンとブレンドしている。一方、PET/ポリマーブレンド中にマトリックス材料としてPETを入れておくと、引張強さ、曲げ弾性率、伸び%、耐候性及び加熱撓み温度を保持できるという利点がある。
PETと1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含むポリエステルまたはコポリエステルとのポリマーブレンドが、米国特許第4,263,364号及び第4,897,448号ならびにResearch Disclosure(リサーチディスクロージャー)No.25244に開示されている。米国特許第4,263,364号は、PETとポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のコポリマーとのブレンドから製造される、型打ち可能な強化多層シートを開示している。ブレンドは、PETまたはPCTと、35重量%より多量の、CHDMを5〜50モル%含むPETのコポリマーまたはエチレングリコールを20〜50モル%含むPCTのコポリマーとのブレンドに限定される。
米国特許第4,897,448号は、ポリエチレンテレフタレート型ポリエステル、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)型ポリエステル、ポリカーボネート、ならびにエチレン-プロピレンゴム及びアクリル酸コア-シェル型ポリマーから選ばれた耐衝撃性改良剤を含む耐衝撃性改良ポリエステル-ポリカーボネートブレンドを開示している。Research Disclosure No.25244は、異なるモル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールで改質された2種のポリエチレンテレフタレートポリエステルをブレンドすることを開示している。
発明の要約
従って、本発明の一つの目的は、改良された衝撃強さを示す、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドを含む熱成形容器を提供することにある。
本発明の別の目的は、耐衝撃性及び耐応力亀裂性のような優れた機械的性質ならびに耐熱性を示すポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドを含む熱成形容器を提供することにある。
これらの及び他の目的は、(A)(1)テレフタル酸からの反復単位からなるジカルボン酸成分;及び
(2)エチレングリコールからの反復単位を含むジオール成分からなる、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂90〜95重量%;ならびに
(B)(1)テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル93〜97モル%及びイソフタル酸3〜7モル%からの反復単位を含むジカルボン酸成分;及び
(2)1,4-シクロヘキサンジメタノールからの反復単位を含むジオール成分
からなる(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で)、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂5〜10重量%((A)及び(B)の合計重量は100%である)からなるポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドから得られる熱成形容器によって達成される。
発明の説明
本発明のポリエステル、成分(A)、は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂である。このポリエチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で、少なくとも95モル%のテレフタル酸及び少なくとも95モル%のエチレングリコールからの反復単位を含む。
ポリエステルのジカルボン酸成分は場合によっては、テレフタル酸以外の1種またはそれ以上の異なるジカルボン酸またはテレフタル酸ジメチルのような適当な合成相当物5モル%以下で改質することもできる。このような追加のジカルボン酸としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸、または炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸と共に含まれるジカルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4′-ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などである。ポリエステルは、2種またはそれ以上の前記ジカルボン酸から製造できる。
これらの酸の対応する酸無水物、エステル及び酸塩化物の使用も用語「ジカルボン酸」に含まれることを理解されたい。
さらに、ポリエステル、成分(A)、は場合によっては、エチレングリコール以外の1種またはそれ以上の異なるジオール5モル%以下で改質できる。このような追加のジオールとしては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオールまたは炭素数が好ましくは3〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。このようなエチレングリコールに含ませるジオールの例は:ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3-メチルペンタンジオール-(2,4)、2-メチルペンタンジオール-(1,4)、2,2,4-トリメチルペンタン-ジオール-(1,3)、2-エチルヘキサンジオール-(1,3)、2,2-ジエチルプロパン-ジオール-(1,3)、ヘキサンジオール-(1,3)、1,4-ジ-(ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチル-シクロブタン、2,2-ビス-(3-ヒドロキシエトキシフェニル)-プロパン及び2,2-ビス-(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)-プロパンである。ポリエステルは、2種またはそれ以上の前記ジオールから製造できる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂また、少量の三官能価または四官能価コモノマー、例えば、無水トリメリット酸、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸二無水物、ペンタエリトリトール及び公知の他のポリエステル形成性多酸またはポリオールを含むことができる。
本発明の実施に有用なポリエステル、成分(A)、は、通常はジメチルエステルとして使用されるテレフタル酸とエチレングリコールとの縮合生成物(以下において、ポリエチレンテレフタレートまたはPETと称する)である。PETは融点(Tm)が255℃±5℃で、ガラス転移温度(Tg)が80℃±5℃である。PETは、0.4〜1.2のインヘレント粘度によって確定される比較的広い分子量範囲を示すことができる。しかしながら、インヘレント粘度は0.5〜1.0が好ましい。
本発明に使用するのに好ましいポリエステルは、インヘレント粘度が0.90の結晶化ポリエチレンテレフタレートであり、EastmanChemical CompanyからTENITE PET 12822として市販されている。
本発明の成分(B)は、ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル少なくとも75モル%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール少なくとも30モル%を含むポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂である。ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂はテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル以外の1種またはそれ以上のジカルボン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の1種またはそれ以上のジオールを含むことができる。たとえば、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、成分(B)、はポリエステルまたはコポリエステルとすることができるが、本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は、「コポリエステル」も含むものとする。成分(B)として有用なポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂はインヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gである。
好ましくは、樹脂はインヘレント粘度が0.6〜1.0dl/gである。
ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のジカルボン酸成分は場合によっては、25モル%以下の、テレフタル酸以外の1種またはそれ以上の異なるジカルボン酸またはテレフタル酸ジメチルのような適当な合成相当物で改質できる。このうよな追加のジカルボン酸としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸、または炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸に含ませるジカルボン酸の例は:フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4′-ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などである。ポリエステルは2種またはそれ以上の前記ジカルボン酸から製造できる。
これらの酸の対応する酸無水物、エステル及び酸塩化物の使用も用語「ジカルボン酸」に含まれることを理解されたい。
さらに、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、成分(B)は場合によっては、70モル%以下の、1,4-シクロヘキサンジメタノール以外の1種またはそれ以上の異なるジオールで改質できる。このような追加のジオールとしては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオールまたは炭素数が好ましくは2〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。1,4-シクロヘキサンジメタノールに含ませるこのようなジオールの例は:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3-メチルペンタンジオール-(2,4)、2-メチルペンタンジオール-(1,4)、2,2,4-トリメチルペンタン-ジオール-(1,3)、2-エチルヘキサンジオール-(1,3)、2,2-ジエチルプロパン-ジオール-(1,3)、ヘキサンジオール-(1,3)、1,4-ジ(ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチル-シクロブタン、2,2-ビス-(3-ヒドロキシエトキシフェニル)-プロパン及び2,2-ビス-(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)-プロパンである。ポリエステルは2種またはそれ以上の前記ジオールから製造できる。
好ましくは、ジカルボン酸部分はテレフタル酸(またはテレフタル酸ジメチル)95モル%とイソフタル酸5モル%とからなる。好ましくは、ジオール部分は1,4-シクロヘキサンジメチレン100モル%からなる。
本発明のポリエステル、成分(A)及び(B)、は公知の常用の重縮合法によって製造できる。このような方法としては、ジカルボン酸のジオールによる直接縮合またはジカルボン酸ジアルキルを用いたエステル交換が挙げられる。たとえば、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸ジアルキルは、高温において触媒の存在下でジオールによってエステル交換する。重合度によっては、ポリエステルは固相重合法を行うこともできる。
本発明のポリエチレンテレフタレート-ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドの製造方法は、前記方法によるポリエステル樹脂の製造を含む。次いで、ポリエステル樹脂は、乾燥空気もしくは乾燥窒素の雰囲気、または減圧下で乾燥させる。ポリエステル樹脂は混合してから、例えば、一軸または二軸スクリュー押出機中で溶融配合する。溶融温度は代表的には275〜325℃の範囲である。溶融配合の完了後に、押出物をフィルムまたはシートの形態で取り出す。
本発明のブレンドは、あらゆる種類の造形品、特にカップ及び食品トレイのような熱成形品の製造のための優れた出発原料として役立つ。
成核剤のような添加剤は、本発明のブレンドの結晶化に有用である。成核剤は組成物の0.01〜5重量%の量で添加する。添加できる成核剤としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテンのようなポリオレフィンが挙げられる。このような無機成核剤としては、TiO2、タルク、炭酸カルシウム、SiO2、カーボンブラック及びゼオライトが挙げられる。特に有用な成核剤は、溶融流量が1〜3g/10分の線状低密度ポリエチレンである。
さらに、本発明のブレンドと合することができる他の添加剤としては、耐衝撃性改良剤、充填剤、安定剤、酸化防止剤、緩衝剤、着色剤、染料、及び顔料が挙げられる。このような添加剤、それらの量及びそれらの使用法は公知である。
本明細書中に示した結果を得るのに使用した材料及び試験法は以下の通りである:
押出フィルムの衝撃強さは、ASTM D3763のInstrumented ImpactStrength法を用いて測定した。
インヘレント粘度(I.V.)は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100ml当たりポリマー0.50gを用いて23℃において測定した。
以下のポリエステルは、例中で使用したものであり、EastmanChemical Companyから入手可能である:
A)ポリ(エチレンテレフタレート)、Tenite PET 10388またはPET 12822;
B)1,4-シクロヘキサンジメタノール31モル%で改質されたポリ(エチレンテレフタレート)、PETG 6763;
C)イソフタル酸5モル%で改質されたポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、PCTA 6761;
D)イソフタル酸17モル%で改質されたポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、Kodar Al50。
本発明の方法をさらに、以下の例を考慮してさらに説明するが、これらの例は本発明を代表するものである。例中の全ての部及び百分率は特に断らない限り、重量基準である。
例1(参考例)
PET ホモポリマーからのフィルムの製造
インヘレント粘度が0.90の結晶化ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーを露点≦-29℃の乾燥性空気中で150℃において16時間乾燥させた。PETを280℃のKillion一軸スクリュー押出機のホッパー中、乾燥N2下に入れ、厚さ約25milのシートに押出した。フィルムを効果的に冷却するために、キャスチングロールの表面温度を約65℃に保持した。フィルムを示差走査熱量法(DSC)によって結晶化度について試験した。
衝撃強さの結果は、23℃及び-40℃で行った同組成の10個の反復試験試料から得たものである。10個の反復試験片の平均破壊エネルギーを測定し、(脆性破壊とは全く異なる)延性破壊したまたは衝撃穴あけ(puncture)によって破壊した試験片の百分率を記録した。試験結果を表Iに要約する。
例2(参考例)
66モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールで改質されたPETからのフィルムの製造
インヘレント粘度が0.75の1,4-シクロヘキサンジメタノール31モル%で改質されたポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマーを、露点≦-29℃の乾燥剤乾燥空気中で70℃において16時間乾燥した。コポリマーを、260℃のKillion一軸スクリュー押出機のホッパー中、乾燥N2 下に入れ、厚さ約25milのシートに押出した。例1と同様にしてフィルムを製造し、分析した。非晶質試験片の試験結果を表Iに要約する。
例3〜5(参考例)
ブレンドからのフィルムの製造
例2で使用した1,4-シクロヘキサンジメタノール31モル%で改質されたポリ(エチレンテレフタレート)のコポリマー2,5及び10重量%のブレンドを例1のPETポリエステルと混合した。混合物をKillion一軸スクリュー押出機中で280℃において溶融ブレンドし、厚さ約25milのフィルムに流延した。例1と同様にしてフィルムを製造し、分析した。非晶質試験片の試験結果を表Iに要約する。

表Iの結果から、CHDM含有ポリエステルの添加によって、-40℃における非晶質ブレンドの破壊エネルギーが、混ぜもののない2種のポリマーの直線補間から予想される値をはるかに超えて増大されることが明白である。さらに、試験片の破壊様式は、CHDM含有ポリエステル樹脂の添加によって、ポリエチレンテレフタレート及びポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の終点のプロットから別個に予想されるよりはるかに高い割合まで延性破壊が増大する。
例6〜10(実施例)
例1〜5に記載した方法に従って、例6〜10を製造した。例6は、混ぜもののないPET 10388対照のフィルムであり、例7はCHDM含有コポリエステルPCTA 6761の混ぜもののないフィルムである。例8〜10は、2,5及び10重量%のCHDM含有コポリエステルPCTA 6761とPETとのブレンドである。押出フィルムは、160℃の強制空気炉中に20分間入れることによって結晶化させた。衝撃強さを23℃で測定した。試験結果を表IIに要約する。

表IIの試験結果から、-40℃及び23℃におけるブレンドの破壊エネルギー及び延性破壊の割合が、CHDM含有コポリエステルの添加によって、混ぜもののない2種のポリマーの直線補間から予想される値をはるかに超えて増大されることが明白である。さらに、CHDM含有ポリエステル樹脂の添加によって、試験片の破壊様式は、ポリエチレンテレフタレート及びポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の終点のプロットから別個に予想される値よりもはるかに高い割合まで延性破壊が増大される。
例11〜15
例1〜5に記載された方法に従って、例11〜15を製造した。例11は、混ぜもののないPET 10388対照のフィルムであり、例12はCHDM含有コポリエステルKodarA150の混ぜもののないフィルムである。
例13〜15は、2,5及び10重量%のCHDM含有コポリエステルKodarA150とPETとのブレンドである。押出フィルムは、160℃の強制空気炉中に20分間入れることによって結晶化させた。衝撃強さを23℃で測定した。試験結果を表IIIに要約する。

表IIIの試験結果から、-40℃及び23℃におけるブレンドの破壊エネルギー及び延性破壊の割合が、CHDM含有コポリエステルの添加によって、混ぜもののない2種のポリマーの直線補間から予想される値をはるかに超えて増大されることが明白である。さらに、CHDM含有ポリエステル樹脂の添加によって、試験片の破壊様式は、ポリエチレンテレフタレート及びポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の終点のプロットから別個に予想される値よりもはるかに高い割合まで延性破壊が増大される。
対照例16及び実施例17
冷凍食品トレイ
前記例3〜5に記載した方法に従って、対照例16及び実施例17をMPM一軸スクリュー押出機上で製造し、厚さ30milのフィルムに押出した。Hydro-Trim実験室規模熱成型機を使用し、ブレンドを結晶化するために160℃に加熱された金型を用いて、フィルムを厚さ約25milのトレイの形状に熱成形した。トレイの底部を用いて、試験温度-20℃において衝撃試験を行った。対照例16は97重量%のPET 12822及び3重量%の成核剤濃縮物を含む対照製品であった。成核剤濃縮剤は、86.6重量%の線状低密度ポリエチレン、11.7重量%の熱-酸化安定剤及び1.7重量%の二酸化チタン(TiO2)からなるものであった。実施例17は、87重量%のPET 12822+10重量%のThermx 6761+3重量%の線状低密度ポリエチレン成核剤濃縮物を含むブレンドから成形された製品であった。これは、低レベルのCHDM含有ポリエステルの添加の効果を示す。
-20℃における対照例16の平均破壊エネルギーは1.61ft-1bであり、延性破壊は10%であった。低レベルのThermx 6761を含む例32の-20℃における平均破壊エネルギーは、2.87ft-1bであり、30%の延性破壊を示した。従って、-20℃におけるブレンド(実施例17)の破壊エネルギー及び延性破壊の割合は、CHDM含有コポリエステルブレンドの添加によって増大される。さらに、成核剤濃縮物は製品の結晶化度を増大させた。
前記の詳細な説明に鑑みて、当業者ならば多くの変更を考えることができる。このような明らかな修正は、添付した請求の範囲の所期の全範囲に含まれる。
(57)【特許請求の範囲】
1.(A)(1)テレフタル酸からの反復単位からなるジカルボン酸成分;及び
(2)エチレングリコールからの反復単位を含むジオール成分
からなる、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂90〜95重量%;ならびに
(B)(1)テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル93〜97モル%及びイソフタル酸3〜7モル%からの反復単位を含むジカルボン酸成分;及び
(2)1,4-シクロヘキサンジメタノールからの反復単位を含むジオール成分
からなる(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で)、インヘレント粘度が0.4〜1.2dl/gのポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂5〜10重量%((A)及び(B)の合計重量は100%である)からなるポリエチレンテレフタレート/ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)ブレンドから得られる熱成形容器。
2.0.01〜5重量%の成核剤をさらに含む請求の範囲第1項の熱成形容器。
3.前記成核剤が2.5〜3.5重量%の量で存在する請求の範囲第2項の熱成形容器。
4.前記成核剤が線状低密度ポリエチレンである請求の範囲第2項の熱成形容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-24 
出願番号 特願平7-522409
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3383311号(P3383311)
権利者 イーストマン ケミカル カンパニー
発明の名称 ポリエステルブレンドから得られる高耐衝撃性製品  
代理人 竹内 浩二  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 西山 雅也  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
代理人 竹内 浩二  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 鶴田 準一  
代理人 樋口 外治  

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