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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1109568
異議申立番号 異議2003-71603  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-20 
確定日 2004-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3364379号「基板処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3364379号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3364379号の請求項1に係る発明は、平成8年3月18日に特許出願され、平成14年10月25日にその特許権の設定登録がされ、その後特許異議申立人永田大樹により請求項1に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月2日に訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
訂正の内容は、次の訂正事項aないしbに示すとおりのものである。
(1)訂正事項a
設定登録時の願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の
「【請求項1】 基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、薬液を貯留する薬液タンクと、ピストンとシリンダとを有し、前記シリンダ内への薬液の吸入と前記シリンダ内からの薬液の吐出とを前記ピストンの移動により実行するシリンジ機構と、純水の供給源から前記処理槽に純水を供給するための純水供給路と、前記純水供給路中の純水に前記シリンジ機構より吐出された薬液を混合するための混合手段と、前記薬液タンクから前記シリンジ機構に至る薬液の供給経路と、前記シリンジ機構から前記混合手段に至る薬液の供給経路とを選択的に開放する開閉手段と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。」を
「【請求項1】 基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、薬液を貯留する薬液タンクと、ピストンとシリンダとを有し、前記シリンダ内への薬液の吸入と前記シリンダ内からの薬液の吐出とを前記ピストンの移動により実行するシリンジ機構と、純水の供給源から前記処理槽に純水を供給するための純水供給路と、前記純水供給路中の純水に前記シリンジ機構より吐出された薬液を混合するための混合手段と、前記薬液タンクから前記シリンジ機構に至る薬液の供給経路と、前記シリンジ機構から前記混合手段に至る薬液の供給経路とを選択的に開放する開閉手段と、前記シリンダの外側に配設されたボールネジと、前記ボールネジと螺合するナットと、前記ナットと前記ピストンとを連結する連結具と、前記ボールネジを駆動させて前記ナットを移動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0007】の
「この発明は、基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、・・開閉手段と、を備えたことを特徴とする。」を
「この発明は、基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、・・開閉手段と、前記シリンダの外側に配設されたボールネジと、前記ボールネジと螺合するナットと、前記ナットと前記ピストンとを連結する連結具と、前記ボールネジを駆動させて前記ナットを移動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載されたシリンジ機構の駆動手段を「前記シリンダの外側に配設されたボールネジと、前記ボールネジと螺合するナットと、前記ナットと前記ピストンとを連結する連結具と、前記ボールネジを駆動させて前記ナットを移動させる駆動手段」に限定することを求めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の記載について、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについての判断
1 特許異議の申立て及び取消しの理由の概要
特許異議申立人永田大樹は、証拠として甲第1号証(特開平7-22369号公報:以下「刊行物1」という。)、甲第2号証(特開平6-61208号公報:以下「刊行物2」という。)及び甲第3号証(特開平4-162415号公報:以下「刊行物3」という。)を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきである、旨主張している。
また、当審で通知した取消しの理由の概要は、上記特許異議の申立ての理由と同様のものである。

2 本件発明
上記第2で示したとおり上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2 1 (1)」参照。以下「本件発明1」という)。

3 刊行物1ないし3記載の発明(事項)
当審が通知した取消しの理由に引用された、本件特許出願前に日本国内で頒布された刊行物である刊行物1ないし3には、以下の事項が記載されていると認める。
(1)刊行物1
ア 公報第3欄第38行-第4欄第12行
「洗浄処理部5は、図3に示すように、各基板洗浄槽12へ下方より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部13と、各基板洗浄槽12よりオーバーフローした洗浄液を排出する洗浄液排出部14とを有している。・・洗浄液供給部13は、各基板洗浄槽12の下部にそれぞれ連結された純水供給管18を備えている。純水供給管18には、基板洗浄槽12より上流側へ順に導入弁連結管19、流量計26及び制御弁27が配置されている。純水供給管18には、常温のまたは所定温度に加熱された純水DWが供給される。導入弁連結管19には、上流側(洗浄槽12と逆側)の端部から順に、純水供給弁23と、排液弁25と、複数の薬液導入弁20A〜20Dとが設けられている。各薬液導入弁20A〜20Dには、薬液QA〜QDを供給するための薬液圧送部21が連結されている(薬液導入弁20A用のみを図示)。この薬液導入弁20A〜20Dは選択的に開閉制御され、薬液圧送部21からの所定の薬液を純水供給管18に導入する。」
イ 公報第4欄第35-40行
「各薬液圧送部21は、1種類の薬液を貯溜するための薬液貯溜容器22A(22B〜22D)を有している。薬液貯溜容器22A(22B〜22D)は密閉型の容器であり、この容器22A には、窒素ガス配管39と薬液供給配管40とが接続されている。」
したがって、上記摘記事項アないしイ及び図3の記載からみて、刊行物1には、次の「基板処理装置」についての発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
[刊行物1記載の発明]
基板を処理する基板洗浄槽12に薬液QA〜QDと純水DWとを混合して供給するようにした基板処理装置であって、薬液QA〜QDを貯留する薬液貯溜容器22A〜22Dと、純水DWの供給源から前記基板洗浄槽12に純水DWを供給するための純水供給管18と、前記純水供給管18中の純水DWに薬液QA〜QDを混合するための導入弁連結管19と、前記薬液貯溜容器22A〜22Dから前記導入弁連結管19に至る薬液QA〜QDの薬液供給配管40を選択的に開放する薬液導入弁20A〜20Dと、を備えた基板処理装置。
(2)刊行物2
ア 公報第3欄第1-13行
「図1において、1は薬液ボトル、2は薬液、3は薬液を循環させるポンプ1、4は循環する薬液のパ-チィクルを除去するためのフィルタ-、6は薬液秤量槽としてのシリンダ、7は秤量された薬液、9は秤量位置で薬液を止めるための秤量センサ、10は薬液秤量点で働くストップセンサ、12はウエハ-処理槽、13は洗浄液、14は秤量槽内に薬液を導入するためのピストン、15はピストン内側に設けたセンサ感知用ライン(感知箇所)、16はピストンを自動で動かすためのピストン駆動用モ-タ、17はシリンダ-内へ薬液を導入する際開く薬液導入バルブとしての逆止弁1、18はシリンダ-内から秤量された薬液を排出する際開く薬液排出バルブとしての逆止弁2である。」
イ 公報第4欄第14-18行
「ピストンを正確にゆっくり動かすことにより、正確な量の薬液を確実に秤量することか可能となる。更に、薬液量が少量の場合においてもシリンダーや、ピストンを細くするなど、構造を変えることにより簡単に確実な秤量ができる。」
ウ 図1
ピストン駆動用モータ16が、秤量槽(シリンダ)6の外側に配設されていること。
(3)刊行物3
ア 公報第1頁右下欄第1-14行
「従来、この種の塗布膜形成装置の薬液滴下部は第3図の構成図に示すように、不活性ガス18を用いて薬液16の入った容器を置換することにより薬液16を配管を通して被塗布物20上に滴下し、また、滴下作業を長時間行わない場合には、配管内での薬液の固化を防ぐために、配管内を大量のイソプロピルアルコール17(以下IPAと呼ぶ)で置換することが必要であり、滴下作業時には、IPAで満たされた配管を配管量の2倍以上の薬液で置換した後、滴下作業を行っていた。また、滴下量は不活性ガス18を流し込む時間によって決まるため、不活性ガス18の圧力の変化によって滴下量に影響を及ぼすという欠点があった。」
イ 公報第2頁左上欄第6-11行
「本発明の滴下用シリンダーは、薬液吸入および滴下の動力となるステッピングモーターと、ステッピングモーターの回転運動をシリンダ内を往復するピストンの上下運動に変換するボールネジ機構部と、シリンダ先端に設けられ使用する薬液によって交換可能なノズルとを有する。」
ウ 第1図(a)
ボールネジ機構部4とピストン5を連結すること。

4 対比・判断
本件発明1と、刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「基板洗浄槽12」は前者の「処理槽」に相当し、以下同様に、「薬液貯溜容器22A〜22D」は「薬液タンク」に、「純水供給管18」は「純水供給路」に、「導入弁連結管19」は「混合手段」に、「薬液供給配管40」は「薬液の供給経路」にそれぞれ相当している。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、薬液を貯留する薬液タンクと、純水の供給源から前記処理槽に純水を供給するための純水供給路と、前記純水供給路中の純水に薬液を混合するための混合手段と、を備えた基板処理装置。
[相違点]
前者では、「ピストンとシリンダとを有し、シリンダ内への薬液の吸入とシリンダ内からの薬液の吐出とをピストンの移動により実行するシリンジ機構」と、「薬液タンクからシリンジ機構に至る薬液の供給経路と、シリンジ機構から混合手段に至る薬液の供給経路とを選択的に開放する開閉手段」と、「シリンダの外側に配設されたボールネジと、ボールネジと螺合するナットと、ナットとピストンとを連結する連結具と、ボールネジを駆動させてナットを移動させる駆動手段」とを設け、純水供給路中の純水にシリンジ機構より吐出された薬液を混合するのに対し、後者では、そのように特定されていない点。
上記相違点について、以下検討する。
[相違点について]
刊行物2には、「ピストン14とシリンダ6とを有し、シリンダ6内への薬液2の吸入とシリンダ6内からの薬液2の吐出とをピストン14の移動により実行する機構と、薬液ボトル1から当該機構に至る薬液2の供給経路と、当該機構からウエハー処理槽12に至る薬液2の供給経路とを選択的に開放する逆止弁1及び2と、シリンダ6の外側に配設され、ピストン14を移動させるピストン駆動用モータ16」とを設け、処理槽に薬液を供給することが記載されている(上記摘記事項(2)アないしウを参照。以下「刊行物2記載の事項」という)。
また、刊行物2記載の事項のような、液体を秤量する機構におけるピストンの駆動にボールネジ機構を用いること、すなわち、「ボールネジと、ボールネジと螺合するナットと、ナットとピストンとを連結する連結具」とを設け、ボールネジを駆動させてナットを移動させることによりピストンを駆動することも従来周知である(上記摘記事項(3)アないしウを参照)。
刊行物1記載の発明と刊行物2記載のものは、処理槽に薬液を供給する技術の分野、及び正確な量の薬液を確実に秤量し、薬液量が少量の場合でも確実に秤量して供給するとの課題において共通し、また、液体を秤量する機構におけるピストンの駆動にボールネジ機構を用いることも従来周知であるから、刊行物1記載の発明において、処理槽に薬液を供給する手段として、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項を採用し、相違点に係る本件発明1の構成となすことは、当業者にとって容易になし得たことである。
そして、本件発明1の効果は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された事項及び上記従来周知の事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された事項及び上記従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、
薬液を貯留する薬液タンクと、
ピストンとシリンダとを有し、前記シリンダ内への薬液の吸入と前記シリンダ内からの薬液の吐出とを前記ピストンの移動により実行するシリンジ機構と、
純水の供給源から前記処理槽に純水を供給するための純水供給路と、
前記純水供給路中の純水に前記シリンジ機構より吐出された薬液を混合するための混合手段と、
前記薬液タンクから前記シリンジ機構に至る薬液の供給経路と、前記シリンジ機構から前記混合手段に至る薬液の供給経路とを選択的に開放する開閉手段と、
前記シリンダの外側に配設されたボールネジと、前記ボールネジと螺合するナットと、前記ナットと前記ピストンとを連結する連結具と、前記ボールネジを駆動させて前記ナットを移動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板等の基板に対し、洗浄等の処理を施すための基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような基板処理装置の一種として、純水中に薬液を混合させることにより生成した処理液を処理槽に供給し、この処理液により基板を処理するものが知られている。この基板処理装置は、例えば、特開平7-22369号公報に記載されているように、純水の供給源から処理槽に純水を供給するための純水供給路と、耐圧密閉構造を有し薬液を貯留する薬液タンクと、この薬液タンク内に窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段と、薬液タンクから純水供給路に向けて薬液を導くための薬液の供給経路と、純水供給路中の純水に薬液を混合させるための薬液導入弁とを備える。そして、薬液タンク内に窒素ガスを供給することにより薬液タンク内の薬液を加圧した後、薬液導入弁を開放することにより、純水中に薬液を圧送し、これにより純水と薬液とを混合している。
【0003】
このような基板処理装置においては、薬液の供給経路における圧力損失が一定であれば、窒素ガスにより加圧された薬液の圧力と純水の供給圧力とを一定値となるように制御することにより、薬液を純水中に正確に供給することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような基板処理装置において、例えば処理の工程に応じて、常温の純水にかえて高温の温純水を使用する場合がある。このような場合においては、熱膨張の影響によって、純水供給路に接続する薬液の供給経路のオリフィスが大きくなることにより、薬液の供給経路において薬液が受ける圧力損失が変化する。このため、窒素ガスにより加圧された薬液の圧力と純水の供給圧力とを一定値となるように制御した場合においても、薬液の供給量は正確には一定とはならない。
【0005】
また、このような問題点を解消するため、薬液の供給経路に流量調整弁を配設し、この流量調整弁を調整することにより流量を制御することも考えられるが、特に極めて小さい流量の薬液を供給する場合においては、流量調整弁では流量を正確に調整することは困難であり、また、調整誤差が発生しやすい。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、純水中に薬液を極めて正確に混合することのできる基板処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板を処理する処理槽に薬液と純水とを混合して供給するようにした基板処理装置であって、薬液を貯留する薬液タンクと、ピストンとシリンダとを有し、前記シリンダ内への薬液の吸入と前記シリンダ内からの薬液の吐出とを前記ピストンの移動により実行するシリンジ機構と、純水の供給源から前記処理槽に純水を供給するための純水供給路と、前記純水供給路中の純水に前記シリンジ機構より吐出された薬液を混合するための混合手段と、前記薬液タンクから前記シリンジ機構に至る薬液の供給経路と、前記シリンジ機構から前記混合手段に至る薬液の供給経路とを選択的に開放する開閉手段と、前記シリンダの外側に配設されたボールネジと、前記ボールネジと螺合するナットと、前記ナットと前記ピストンとを連結する連結具と、前記ボールネジを駆動させて前記ナットを移動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る基板処理装置の概要を示す図である。
【0009】
この基板処理装置は、基板Wを処理するための処理槽2と、薬液を貯留する薬液タンク3と、複数の薬液導入弁7a、7b、7c、7dおよび純水供給弁10を有する薬液混合部4と、薬液混合部4に純水を供給するための純水供給部5と、薬液混合部4に薬液タンク3内の薬液を供給するためのシリンジ機構6とを備える。
【0010】
処理槽2は、例えばその材質が石英により構成され、そこに貯留した、あるいはオーバフローする処理液中に基板Wを浸漬して処理するものである。この処理槽2の周囲には、処理槽2の上端からオーバフローする処理液を回収するための回収部12が配設されており、この回収部12は、図示しないドレインに接続されている。
【0011】
純水供給部5は、常温の純水を供給する純水供給源13aと、摂氏50〜80度程度の高温の純水を供給する温純水供給源13bと、開閉弁14a、14bと、レギュレータ15a、15bと、流量計16と、圧力センサ17とを有する。開閉弁14aを開放した場合には、純水が純水供給源13aから薬液混合部4に向けて供給される。このとき、純水供給部5から薬液混合部4に至る純水供給路19aにおける純水の圧力は、圧力センサ17により検出される。そして、その検出値がレギュレータ15aにフィードバックされることにより、純水の供給圧が一定に制御される。また、開閉弁14aを閉鎖し開閉弁14bを開放した場合には、温純水が一定の圧力で温純水供給源13bから薬液混合部4に向けて供給される。
【0012】
シリンジ機構6は薬液タンク3内の薬液を薬液混合部4に供給するためのものであり、図2に示すように、基台22に固定されたシリンダ8と、このシリンダ8の内径とほぼ同一の外径を有するピストン9とからなるシリンジを有する。ピストン9は、連結具23を介してボールネジ24と螺合するナット25に連結されている。また、ボールネジ24は、同期ベルト26を介してピストン9の駆動手段としてのパルスモータ27と接続されている。このため、パルスモータ27の回転させると、ナット25は、ボールネジ24の駆動を受け、ガイド部材28に案内されながら昇降する。これに伴い、ピストン9は、シリンダ8内を上下方向に移動する。なお、図2においては、シリンダ8およびピストン9を断面で表現している。
【0013】
薬液タンク3からシリンジ機構6に至る薬液の供給経路を構成する配管32には、図1に示すように、開閉弁33が配設されている。また、シリンジ機構6から薬液混合部4に至る薬液の供給経路を構成する配管34には、開閉弁35と、フィルタ36と、流量計37とが配設されている。これらの開閉弁33、35は、開閉手段を構成する。
【0014】
薬液混合部4は、図3に示すように、本体44の内部に直線状の流体通路45を有する。そして、この流体通路45は、純水供給部5から薬液混合部4に至る純水供給路19aと、薬液混合部4から処理槽2に至る純水供給路19bとに接続されている。純水供給路19aから供給される純水は、純水供給ポート47を通って流体通路45内に進入する。また、純水供給ポート47の下流側には、排液管49に接続する排液ポート48が配設されている。これらの純水供給ポート47および排液ポート48は、各々純水供給弁10および排液弁50により開閉制御される。なお、図1においては、排液管49および排液弁50は、図示を省略している。
【0015】
流体通路45の内壁には、4個の薬液導入弁7a、7b、7c、7dの二次側流路が開口している。また、本体44の側面には薬液導入口46a、46b、46c、46d(図3においては46aのみ図示している)が形成されている。これらの薬液導入口46a、46b、46c、46dのうち、薬液導入口46aは、前述した薬液タンク3およびシリンジ機構6より成る薬液供給部と接続されており、薬液タンク3内の薬液はこの薬液導入口46aを介して流体通路45中の純水に混合される。また、他の薬液導入口46b、46c、46dは、各々、薬液タンクおよびシリンジ機構より成る他の薬液供給部と接続されており、薬液タンク3内の薬液とは異なる薬液の供給を受け、その薬液を流体通路45中の純水に混合する。
【0016】
なお、この実施の形態においては、薬液導入口46aと接続する薬液タンク3にはフッ化水素が貯留されている。また、各薬液導入口46b、46c、46dと接続する薬液タンクには、各々、アンモニア、塩酸、過酸化水素が貯留されている。そして、基板Wに対しフッ酸によるエッチングを行う場合においては、開閉弁14aと純水供給弁10とを開放して薬液混合部4の流体通路45内に純水を供給すると共に、薬液導入弁7aを開放してシリンジ機構6により供給される薬液タンク3内のフッ化水素を流体通路45内に導入する。同様に、基板Wに対し通常SC1と呼称される洗浄処理を行う場合においては、開閉弁14bと純水供給弁10とを開放して流体通路45内に温純水を供給すると共に、薬液導入弁7bおよび7dを開放してアンモニアと過酸化水素を流体通路45内に導入する。さらに、基板Wに対し通常SC2と呼称される洗浄処理を行う場合においては、開閉弁14bと純水供給弁10とを開放して流体通路45内に温純水を供給すると共に、薬液導入弁7cおよび7dを開放して塩酸と過酸化水素を流体通路45内に導入する。
【0017】
次に、上述した基板処理装置において、薬液タンク3に貯留された薬液と純水とを混合して処理槽2に供給する動作について説明する。
【0018】
薬液を供給するに先立ち、予め、シリンジ機構6におけるシリンダ8内に薬液タンク3内の薬液を吸入しておく。この吸入動作は、開閉弁33を開放し、かつ、開閉弁35を閉鎖した状態で、パルスモータ27の駆動によりナット25および連結具23を介してピストン9を上昇させることにより行う。そして、純水供給路19aにおける開閉弁14aと薬液混合部4における純水供給弁10とを開放し、純水供給源13aから薬液混合部4の流体通路45に純水を導入する。
【0019】
続いて、開閉弁33を閉鎖すると共に開閉弁35を開放する。また、薬液混合部4における薬液導入弁7aを開放する。そして、パルスモータ27の駆動により、ナット25および連結具23を介してピストン9を一定の速度で下降させ、薬液を吐出する。これにより、シリンジ機構6のシリンダ8内の薬液は、フィルタ36および流量計37を通過して、薬液導入弁7aから流体通路45内に進入し、そこを通過している純水と混合される。
【0020】
このとき、ピストン9の下降速度を低速とすることにより、微量の薬液を純水中に混合させることが可能となる。また、純水中に混合される薬液の単位時間当たりの供給量は、ピストン9の下降速度をパルスモータ27によって正確に制御することにより、所望の値に制御することができる。このため、前行程において温純水を使用する処理を行ったことにより、薬液導入弁7aにおける二次側の流路の大きさが変化していたような場合においても、薬液の供給量が変化することはない。
【0021】
なお、例えば、処理槽2にフッ化水素と純水とを供給することにより、ゲート酸化前の半導体基板に対しフッ酸によるエッチングを行う工程等においては、フッ化水素と純水との混合比率は1:200であり、フッ化水素の供給流量は毎分100cc程度である。上述したシリンジ機構6によれば、このような微量の薬液を、その流量を一定としつつ正確に供給することが可能となる。また、これよりももっとフッ化水素の濃度を希薄にすることがあり、例えばフッ化水素の供給流量を毎分20〜30cc程度とすることがある。この様に、単位時間当たりの薬液の供給量がさらに少量となった場合においても、上述したシリンジ機構6によれば、ピストン9の下降速度を低速で正確に制御することや、シリンダ8として内径の小さなものを使用すること等により、薬液の供給精度を高精度に維持することが可能となる。
【0022】
シリンジ機構6におけるピストン9が、図2において二点鎖線で示すように、最下端部まで下降しシリンダ8内の薬液がなくなった場合においては、上述した動作と同様の動作を繰り返すことによりシリンダ8内に薬液を導入して処理を継続する。すなわち、ピストン9を上昇させてシリンダ8内に薬液を吸入する際には、開閉弁33を開くことにより薬液タンク3からシリンジ機構6に至る配管32を開放すると共に、開閉弁35を閉じることによりシリンジ機構6から薬液混合部4に至る配管34を閉鎖し、また、ピストン9を下降させてシリンダ8内から薬液を吐出する際には、開閉弁35を開くことによりシリンジ機構6から薬液混合部4に至る配管34を開放すると共に、開閉弁33を閉じることにより薬液タンク3からシリンジ機構6に至る配管32を閉鎖するように制御する。
【0023】
なお、上述した実施の形態においては、シリンジ機構6と薬液タンク3とを連結する配管32に開閉弁33をまた、シリンジ機構6と薬液混合部4とを連結する配管34に開閉弁35を各々配設した場合について述べたが、開閉弁33のかわりに薬液タンク3からシリンジ機構6方向への薬液の通過のみを許容する逆止弁を配設し、開閉弁34のかわりにシリンジ機構6から薬液混合部4方向への薬液の通過のみを許容する逆止弁を配設する構成としてもよい。同様に、薬液タンク3からシリンジ機構6に至る薬液の供給経路とシリンジ機構6から薬液混合部4に至る薬液の供給経路とを切り替え可能な単一の電磁弁等を使用してもよい。
【0024】
【発明の効果】
この発明に係る基板処理装置によれば、シリンジ機構におけるピストンの移動量により純水中に供給する薬液の供給量を制御することができる。このため、例えば薬液の供給経路において薬液が受ける圧力損失が変化した場合や純水の供給圧力が変化した場合、さらには、単位時間当たりにごく少量の薬液を供給する場合等においても、薬液を極めて正確に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明に係る基板処理装置の概要を示す図である。
【図2】
シリンジ機構6を示す側面図である。
【図3】
薬液導入部4を示す断面図である。
【符号の説明】
2 処理槽
3 薬液タンク
4 薬液混合部
5 純水供給部
6 シリンジ機構
7a 薬液導入弁
8 シリンダ
9 ピストン
10 純水供給弁
19a 純水供給路
19b 純水供給路
27 パルスモータ
32 配管
33 開閉弁
34 配管
35 開閉弁
W 基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-24 
出願番号 特願平8-90200
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 神崎 孝之
鈴木 孝幸
登録日 2002-10-25 
登録番号 特許第3364379号(P3364379)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板処理装置  
代理人 大坪 隆司  
代理人 大坪 隆司  

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