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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  C08F
管理番号 1109593
異議申立番号 異議2001-72779  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-09 
確定日 2004-10-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3155006号「水性流体吸収性微粉の重合器への再循環方法」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3155006号の請求項1ないし11に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3155006号の発明は、平成4年5月4日(優先権主張1991年5月16日、米国)に特許出願され、平成13年2月2日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後小寺成子より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年8月1日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出されたものである。
[2]訂正の適否
[訂正の内容]
訂正事項a:
特許請求の範囲を
『【請求項1】乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉を前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合工程を含むプロセスに再利用する方法において、前記水性流体吸収性ポリマーから、粒度200μm未満の乾燥ポリマー徴粉を回収する工程と;前記徴粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、前記水性流体吸収性ポリマーを製造する工程とを含む方法。
【請求項2】前記重合工程からの水性流体吸収性ポリマーを粉砕する工程と;前記徴粉ポリマーを乾燥させる工程と;前記乾燥ポリマー粒状物を所望の最小粒度を有する部分と前記所望粒度未満の微粉部分とに分類する工程と;前記微粉部分を前記水性流体吸収性ポリマーを形成するための重合工程に再利用させる工程とをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】前記モノマー溶液が水溶性エチレン系不飽和モノマー混合物又はそれらの塩を含む請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】前記エチレン系不飽和モノマーがアミド、カルボン酸もしくはそのエステル、ビニルアミンもしくはそれらの塩又はこれらの混合物である請求項3記載の方法。
【請求項5】前記ポリマーがポリビニルモノマーによって架橋した、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらのコポリマーの架橋したポリマーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】前記モノマー溶液が前記モノマー溶液の少なくとも1種の他の成分とグラフト重合することができるモノマーを含む請求項4の方法。
【請求項7】前記モノマー溶液が開始剤を含む請求項4記載の方法。
【請求項8】前記重合工程が水膨潤性の水性流体吸収性ポリマー又はコポリマーゲルを製造する請求項1記載の方法。
【請求項9】前記ポリマー微粉が全固体を基準にして30重量%以下の水性流体吸収性ポリマーを占める請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記微粉と、他の生成物の処理からのこのような微粉とを再利用するために水性流体吸収性ポリマーの製造方法において、前記粒度200μm未満の微粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、所望の粒度の乾燥粒状製品にさらに加工するためのゲル生成物を形成する工程と、を含み、再利用微粉が固体含量を基準として約30重量%以下の重合した水性流体吸収性ゲルを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】前記ポリマーがアクリル酸及びそのアルカリ塩の部分的に架橋した水膨潤性コポリマーである請求項10記載の方法。』に訂正する。
[訂正の適否]
上記訂正aは、本発明にかかる水性流体吸収性ポリマーから回収する、乾燥ポリマー微粉の粒度が200μm未満であり、前記徴粉と重合可能なモノマー溶液とを混合する工程において、架橋剤の存在量が反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%に限定したものである。
上記の訂正事項aは、本件特許明細書の請求項9、第3頁第2〜4行(特許公報第3頁第5欄第10〜14行)、及び第6頁第8〜10行(特許公報第4頁第7欄第33〜36行)等の記載に基づくものであり、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下「平成六年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成六年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]訂正後の本件発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜11に係る発明(以下、「訂正後の本件発明1〜11」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された(ただし、請求項3の「ポリマー」の記載は「製法」に読み替える。)次のとおりのものと認める。
「【請求項1】乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉を前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合工程を含むプロセスに再利用する方法において、前記水性流体吸収性ポリマーから、粒度200μm未満の乾燥ポリマー微粉を回収する工程と;前記微粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;徴粉とモノマーとの前記混合物を重合して、前記水性流体吸収性ポリマーを製造する工程とを含む方法。
【請求項2】前記重合工程からの水性流体吸収性ポリマーを粉砕する工程と;前記微粉ポリマーを乾燥させる工程と;前記乾燥ポリマー粒状物を所望の最小粒度を有する部分と前記所望粒度未満の徴粉部分とに分類する工程と;前記の数粉部分を前記水性流体吸収性ポリマーを形成するための重合工程に再利用させる工程とをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】前記モノマー溶液が水溶性エチレン系不飽和モノマー混合物又はそれらの塩を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】前記エチレン系不飽和モノマーがアミド、カルボン酸もしくはそのエステル、ビニルアミンもしくはそれらの塩又はこれらの混合物である請求項3記載の方法。
【請求項5】前記ポリマーがポリビニルモノマーによって架橋した、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらのコポリマーの架橋したポリマーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】前記モノマー溶液が前記モノマー溶液の少なくとも1種の他の成分とグラフト重合することができるモノマーを含む請求項4の方法。
【請求項7】前記モノマー溶液が開始剤を含む請求項4記載の方法。
【請求項8】前記重合工程が水膨潤性の水性流体吸収性ポリマー又はコポリマーゲルを製造する請求項1記載の方法。
【請求項9】前記ポリマー徴粉が全固体を基準にして30重量%以下の水性流体吸収性ポリマーを占める請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記徴粉と、他の生成物の処理からのこのような微粉とを再利用するために水性流体吸収性ポリマーの製造方法において、前記粒度200μm未満の徴粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;徴粉とモノマーとの前記混合物を重合して、所望の粒度の乾燥粒状製品にさらに加工するためのゲル生成物を形成する工程と、を含み、再利用徴粉が固体含量を基準として約30重量%以下の重合した水性流体吸収性ゲルを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】前記ポリマーがアクリル酸及びそのアルカリ塩の部分的に架橋した水膨性コポリマーである請求項10記載の方法。」
尚、請求項3は、「・・・請求項1又は2に記載のポリマー。」と記載されてはいるが、引用している請求項1も、請求項2も製法であり、また、この請求項3を引用している請求項4も製法であることの整合性から、「ポリマー」は「製法」と解するのが相当といえるので、「製法」に読み替えて本件発明3を認定した。
このことは、特許権者が平成14年8月1日付けで提出した意見書7頁下から2行〜1行「本件訂正後請求項1に従属する請求項に記載された発明も同様であることは明白である。」との主張からも裏付けられているものと認める。
[4]取消理由2の概要
本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、本件の出願日前の出願であって、その出願後に出願公開された下記2の願書に最初に添付した明細書に記載された発明(以下、「先願明細書記載の発明」という。)と同一であると認められ、しかも、本件特許の発明者が先願明細書記載の発明の発明をした者と同一であるとも、また、本件出願の時にその出願人が先願明細書記載の発明の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

先願明細書2:特願平3-95215号(特開平4-227705号公報参照)(甲第2号証)
[5]先願明細書2の記載事項
(イ)「不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(A)の水溶液を、該単量体成分(A)100重量部当たり吸水性樹脂(B)1〜30重量部の割合で存在させて水溶液重合することよりなる耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項1)
(ロ)「単量体成分(A)に対して架橋剤を0.001〜0.1モル%の量で用いる請求項1に記載の耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項5)
(ハ)「該吸水性樹脂(B)の90〜100重量%が1〜149μmの粒径を有するものである請求項1に記載の耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項8)
(ニ)「該吸水性樹脂(B)が単量体成分(A)を重合することにより得られるものである請求項1に記載の耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項10)
(ホ)「単量体成分(A)が(メタ)アクリル酸およびそれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものである請求項1に記載の耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項12)
(ヘ)「本発明に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等が、また不飽和カルボン酸の塩としては、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩のおよび置換アンモニウム塩等を挙げることができ、これらの中から1種または2種以上を用いることができる。」(3頁左欄47〜同頁右欄3行目)
(ト)「他の不飽和単量体としては、例えば・・・N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミン化合物およびそれらの塩;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、Nーヘキシル(メタ)アクリルアミド、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、N,Nジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド:・・・を挙げることができ、」(3頁右欄14〜36行目)
(チ)「グラフト化を効率よく起こして優れた耐塩性吸水性樹脂を得るために、」(4頁左欄10〜12行目)
(リ)「本発明の製造方法の水溶液重合を行った後、乾燥、分級して得られる耐塩性吸水性樹脂中に含まれる吸水性樹脂(B)と同様の粒度範囲の樹脂(C)を除去し、再度吸水性樹脂(B)として繰り返し用いてもよい。」(4頁左欄32〜35行目)
(ヌ)「本発明に用いることができる架橋剤としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、N,N′-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物」(4頁右欄9〜20行目)
(ル)「水溶液重合は単量体成分(A)中に吸水性樹脂(B)を均一に分散し、グラフト反応等を効率よく行わせるために、撹拌混合下に行うことが好ましい。」(5頁左欄6〜9行目)。
(ヲ)「重合の開始方法としては、例えばラジカル重合開始触媒を用いる方法、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。ラジカル重合開始触媒としては、例えば過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物」(5頁左欄16〜20行目)
(ヨ)「実施例1 ・・・アクリル酸ナトリウム75モル%およびアクリル酸25モル%からなる単量体成分(A)の水溶液4400g(・・・)と、架橋剤としてのトリメチルメチロールプロパンアクリート2.72g(0.05モル%対単量体成分(A))とを入れ、窒素ガスを吹き込んで反応系内を窒素置換した。次いで・・・吸水性樹脂(日本触媒化学工業株式会社製、アクアリックCA)をハンマーミルで粉砕し、100メッシュの金網を通過させて得られた粒子径1〜149μmの吸水性樹脂(B)162g(10重量%対単量体成分(A))を入れ、・・・反応径(径は、系の誤記と認められる。)内を加熱しながら、開始剤として過硫酸ナトリウム1.20gと亜硫酸水素ナトリウム1.10gとを添加した。重合反応開始後更に60分間重合反応を続行して得られたゲル重合体は、約3mmの径の細粒に細分化されていた。」(5頁右欄36行〜6頁左欄4行目)
(タ)「重合反応開始後更に90分間重合反応を続行して得られたゲル重合体は、約3mmの径の細粒に細分化されていた。得られたゲル重合体を金網上で150℃の温度条件下に2時間熱風乾燥した。この乾燥物をハンマーミルを用いて粉砕し、耐塩性吸水性樹脂を得た。」(6頁左欄31〜36行目)
[6]対比・判断
先願明細書2には、(イ)「不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(A)の水溶液を該単量体成分(A)100重量部当たり吸水性樹脂(B)1〜30重量部の割合で存在させて水溶液重合することよりなる耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」(請求項1)の発明が記載されている。
さらに、先願明細書2には、(ニ)「該吸水性樹脂(B)が単量体成分(A)を重合することにより得られるものである。」(請求項10)ことが記載され、また、(リ)「本発明の製造方法の水溶液重合を行った後、乾燥、分級して得られる耐塩性吸水性樹脂中に含まれる吸水性樹脂(B)と同様の粒度範囲の樹脂(C)を除去し、再度吸水性樹脂(B)として繰り返し用いてもよい。」(4頁左欄32〜35行)との記載がある。
また、先願明細書2には、(ハ)「該吸水性樹脂(B)の90〜100重量%が1〜149μmの粒径を有するものである」(請求項8)との記載がある。
したがって、先願明細書2には、「不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(A)の水溶液を該単量体成分(A)100重量部当たり、単量体成分(A)を重合することにより得られる吸水性樹脂(B)1〜30重量部の割合で存在させて水溶液重合することよりなる耐塩性吸水性樹脂の製造方法において、水溶液重合を行った後、乾燥、分級して得られる耐塩性吸水性樹脂中に含まれる吸水性樹脂(B)と同様の粒度範囲である90〜100重量%が1〜149μmの粒径を有するの樹脂(C)を除去し、再度吸水性樹脂(B)として繰り返し用いる製造方法」の発明が記載されているといえる。
そこで、訂正後の本件発明1と先願明細書2に記載された発明とを比較、検討すると、両者は、乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉を前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合工程を含むプロセスに再利用する方法という発明の目的で一致しており、その構成において、粒度200μm未満の乾燥ポリマー徴粉を回収する工程と;前記徴粉を、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、前記水性流体吸収性ポリマーを製造する工程とを含む方法という点で実質的に一致しており、ただ、訂正後の本件発明1が、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、としているのに対し、先願明細書2には、架橋剤の量として(ロ)「単量体成分(A)に対して架橋剤を0.001〜0.1モル%の量で用いる」、そして「単量体成分(A)に対して、0.001〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モル%の量で用いるのがより好ましい」(段落【0022】)と記載され、実施例1では反応器中の固体の重量を基準として計算上0.058%の架橋剤(特許権者の提出した平成14年8月1日付け意見書参照)と訂正後の本件発明1の架橋剤の量より少ない点で一応相違しているものと認める。
そこで、この一応の相違点について検討する。
先願明細書2に記載された発明は、実施例1に限定されるものではなく、明細書全体の記載から把握されるべきであることは当然である。
さすれば、例えば、先願明細書2の実施例5は、単量体成分(A)に対して、架橋剤を0.04モル%の量用いたものであり、これは反応器中の固体の重量を基準として計算するすると約0.0811%であるが、この量は、先願明細書2の明細書に単量体成分(A)に対して、架橋剤は上限として0.1モル%までは記載されているのであるから、これを反応器中の固体の重量を基準として換算すると計算上約0.203%となり、訂正後の本件発明1の架橋剤の量と一致することからも、上記一応の相違点は、実質的な相違点とはいえない。
尚、実施例4の計算は次のとおりである。
0.888g(架橋剤)÷[996g(アクリル酸とアクリル酸ナトリウムで、水溶液2490g×濃度40重量%)+0.888g(架橋剤)+0.938g(重合開始剤)+97g(吸水性樹脂)]×100=0.0811%。
したがって、訂正後の本件発明1は、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明2は、訂正後の本件発明1に「前記重合工程からの水性流体吸収性ポリマーを粉砕する工程と;前記微粉ポリマーを乾燥させる工程と;前記乾燥ポリマー粒状物を所望の最小粒度を有する部分と前記所望粒度未満の徴粉部分とに分類する工程と;前記の数粉部分を前記水性流体吸収性ポリマーを形成するための重合工程に再利用させる工程とをさらに含む」ものという構成を付加するものである。
先願明細書2には、実施例4として(タ)「重合反応開始後更に90分間重合反応を続行して得られたゲル重合体は、約3mmの径の細粒に細分化されていた。得られたゲル重合体を金網上で150℃の温度条件下に2時間熱風乾燥した。この乾燥物をハンマーミルを用いて粉砕し、耐塩性吸水性樹脂を得た」(6頁左欄31〜36行)との記載と(リ)「本願発明の製造方法の水溶液重合を行った後、乾燥、分級して得られる耐塩性吸水性樹脂中に含まれる吸水性樹脂(B)と同様の粒度範囲の樹脂(C)を除去し、再度吸水性樹脂(B)として繰り返し用いてもよい」(4頁左欄32〜35行)との記載から、上記付加された構成は自明のものである。
したがって、訂正後の本件発明2は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明3は、訂正後の本件発明1又は2に「前記モノマー溶液が水溶性エチレン系不飽和モノマー混合物又はそれらの塩を含む
」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(イ)、(ヘ)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明3は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明4は、訂正後の本件発明3に「前記エチレン系不飽和モノマーがアミド、カルボン酸もしくはそのエステル、ビニルアミンもしくはそれらの塩又はこれらの混合物である」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(ヘ)、(ト)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明4は、訂正後の本件発明3と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明5は、訂正後の本件発明1又は2に「前記ポリマーがポリビニルモノマーによって架橋した、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらのコポリマーの架橋したポリマーである」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(ロ)、(ホ)、(ヌ)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明5は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明6は、訂正後の本件発明4に「前記モノマー溶液が前記モノマー溶液の少なくとも1種の他の成分とグラフト重合することができるモノマーを含む」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(チ)、(ル)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明6は、訂正後の本件発明4と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明7は、訂正後の本件発明4に「前記モノマー溶液が開始剤を含む」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(ヲ)、(ヨ)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明7は、訂正後の本件発明4と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明8は、訂正後の本件発明1に「前記重合工程が水膨潤性の水性流体吸収性ポリマー又はコポリマーゲルを製造する」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(タ)に記載されてるように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明8は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明9は、訂正後の本件発明1又は2に「前記ポリマー徴粉が全固体を基準にして30重量%以下の水性流体吸収性ポリマーを占める」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(イ)、(リ)に記載されているように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明9は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明10は、「モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記徴粉と、他の生成物の処理からのこのような微粉とを再利用するために水性流体吸収性ポリマーの製造方法において、前記粒度200μm未満の徴粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;徴粉とモノマーとの前記混合物を重合して、所望の粒度の乾燥粒状製品にさらに加工するためのゲル生成物を形成する工程と、を含み、再利用徴粉が固体含量を基準として約30重量%以下の重合した水性流体吸収性ゲルを含むことを特徴とする方法。」の発明である。
これは、訂正後の本件発明1の「乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉」を「モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記徴粉」と具体化し、「所望の粒度の乾燥粒状製品にさらに加工するためのゲル生成物を形成する工程と、を含み、再利用徴粉が固体含量を基準として約30重量%以下の重合した水性流体吸収性ゲルを含むことを特徴とする方法」との構成を付加するものである。
先願明細書2には、「モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記徴粉」は、(ヨ)、(タ)に実質的に記載され、また、(イ)、(リ)、(ヨ)、(タ)に記載されているように、付加する構成は、先願明細書2に記載されているものといえる。
したがって、訂正後の本件発明10は、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
次に、訂正後の本件発明11は、訂正後の本件発明10に「前記ポリマーがアクリル酸及びそのアルカリ塩の部分的に架橋した水膨性コポリマーである」とその構成を限定するものである。
先願明細書2には、(ロ)、(ホ)、(ヌ)に記載されているように、この限定する構成は、先願明細書2に記載されており、格別意味のある構成とはいえない。
したがって、訂正後の本件発明11は、訂正後の本件発明10と同様の理由により、先願明細書2に記載された発明と同一のものといえる。
[7]むすび
以上のとおりであるから、訂正後の本件発明1〜11の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水性流体吸収性微粉の重合器への再循環方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉を前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合工程を含むプロセスに再利用する方法において、
前記水性流体吸収性ポリマーから、粒度200μm未満の乾燥ポリマー微粉を回収する工程と;
前記微粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;
微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、前記水性流体吸収性ポリマーを製造する工程と
を含む方法。
【請求項2】前記重合工程からの水性流体吸収性ポリマーを粉砕する工程と;
前記微粉ポリマーを乾燥させる工程と;
前記乾燥ポリマー粒状物を所望の最小粒度を有する部分と前記所望粒度未満の微粉部分とに分類する工程と;
前記微粉部分を前記水性流体吸収性ポリマーを形成するための重合工程に再利用させる工程とをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】前記モノマー溶液が水溶性エチレン系不飽和モノマー混合物又はそれらの塩を含む請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】前記エチレン系不飽和モノマーがアミド、カルボン酸もしくはそのエステル、ビニルアミンもしくはそれらの塩又はこれらの混合物である請求項3記載の方法。
【請求項5】前記ポリマーがポリビニルモノマーによって架橋した、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらのコポリマーの架橋したポリマーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】前記モノマー溶液が前記モノマー溶液の少なくとも1種の他の成分とグラフト重合することができるモノマーを含む請求項4の方法。
【請求項7】前記モノマー溶液が開始剤を含む請求項4記載の方法。
【請求項8】前記重合工程が水膨潤性の水性流体吸収性ポリマー又はコポリマーゲルを製造する請求項1記載の方法。
【請求項9】前記ポリマー微粉が全固体を基準にして30重量%以下の水性流体吸収性ポリマーを占める請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】モノマー溶液を重合してゲルポリマーを形成し、前記ゲルを粉砕し、乾燥させ、分類して、粒状微粉から所望の粒度の粒状生成物を分離し、前記微粉と、他の生成物の処理からのこのような微粉とを再利用するために水性流体吸収性ポリマーの製造方法において、
前記粒度200m未満の微粉を、反応器中の固体の重量を基準として0.2〜5%の架橋剤の存在下で、前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合可能なモノマー溶液と混合する工程と;
微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、所望の粒度の乾燥粒状製品にさらに加工するためのゲル生成物を形成する工程と、
を含み、
再利用微粉が固体含量を基準として約30重量%以下の重合した水性流体吸収性ゲルを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項11】前記ポリマーがアクリル酸及びそのアルカリ塩の部分的に架橋した水膨潤性コポリマーである請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
本発明は、水和して主生成物流中に加えることが一般に困難である乾燥微粉の再利用に関する。さらに詳しくは、本発明は流体吸収性ポリマー及びコポリマーの製造中に発生する微粉の再処理に関する。
水膨潤性ポリマー及びコポリマーはおむつ(diaper)及び衛生製品中の水性流体の吸収剤としてのそれらの使用に関して周知である。これらのポリマーの或るものは、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸又はこれらのそれぞれのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩のモノマーから製造されるポリマー及び少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する架橋用モノマーによって典型的に軽度に架橋したポリマーは、非常に高い液体吸収容量を有し、加工及び使用において良好な物理的結合性を有することをさらに特徴とする。
これらの水膨潤性ポリマー/コポリマーは、被吸収流体との接触を効果的に促進する、好ましい粒度の粒状形でしばしば用いられる。ゲル形成法によるアクリル酸ベースド(acrylic acid□based)コポリマーの製造では、かなりの部分の“微粉”物質、すなわち約75メッシュ(200μm)未満の粒状物質が吸収性製品の製造プロセスから典型的に発生する。これらのプロセスは一般に、ゲルポリマー又はコポリマーゲルが形成された後に、微細な許容される粒度範囲の生成物の任意量が得られるまで、幾つかの乾燥、ゲル分解及び粉砕の単位操作を含む。プロセ

終用途に適した、所望の最小サイズよりも微細な粒状ポリマーである。
最初のうちは、ユーザーはかれらの吸収性製品に、微粉を含めた乾燥生成物全体を用いていた。しかし、微粉の混入が製品の性能を低下させることが間もなく発見された。微粒子が水性流体と最初に接触するときにしばしば生ずる1つの困難性は、“ゲル ブロッキング”現象である。微粉は毛管作用又は拡散が内部粒子と均一に接触させる流体の浸透を可能にしないほどの、密なポリマーネットワークを形成するので、緻密充填量の微粉の水和時には、外側層のみが湿潤される。この結果は吸収性ポリマーが水性流体を吸収して保持する総能力の実質的な低下である。さらに、例えばおむつのような或る種の製品では、微粉物質が製品から振り落とされる。
微粉問題の最初の解決法は単に微粉を製品からふるい分けることである。結果として生ずる微粉は、微粉をプロセス中に再循環させる又は微粉を凝集によってより大きいサイズの粒子に再加工する意図で、規格外製品として貯蔵した。しかし、微粉をプロセスに再利用させる試みは今までに一般に不成功に終わると判明しており、重大な付加的処理工程及び装置を必要とする。微粉粒子に伴う主要な困難性は、微粉粒子を主生成物流に均一に混入するために再湿潤することが非常に困難であることである。
米国特許第4,950,692号では、超吸収性ポリアクリレート微粉を比較的長期間、

に主ゲル生成物流と混和するか又は乾燥してから乾燥製品と混和する。米国特許出願第07/407,840号では、微粉を高い剪断条件下で再湿潤することによって、微粉を再水和する。微粉の再湿潤するための滞留時間は米国特許第4,950,692号を凌駕して大きく減少するが、再循環プロセスは比較的高性能の装置のプロセスへの導入を必要とする。
多くの研究者が微粉を凝集させて、生成物流中に再導入するためのより大きいサイズの粒子を製造することを試みている。これらの凝集技術は一般に例えば流動床のような環境において水その他の結合剤による微粉の処理を含むものであった。このアプローチに伴う困難性は、充分に共に結合して、完成製品への混入を免れ、水性流体吸収剤の製造プロセス中又は顧客のプラントもしくは製品中で好ましくない微粉物質を消耗しない又は再形成しないような生成物を製造することができないことである。
従って、水性流体吸収性ポリマー微粉を再利用させる先行技術の努力を考えると、完成製品の吸収容量と粒状結合性とが好ましい粒度の通常製造される物質に等しくなるように、ポリマー/コポリマーの主生成物流中に微粉を再利用させるプロセスを提供することが望ましい。このようなプロセスは有意な処理工程又は処理時間を加えるものであってはならない。
本発明の方法は、乾燥した水性流体吸収性ポリマー微粉、一般に好ましいサイズ未満のポリマーを前記超吸収性ポリマーを製造するための重合工程を含むプロセスに再利用させることに関する。再利用微粉は一般に約75メッシュ(200μm)未満である。このプロセスは次の工程:前記水性流体吸収性ポリマーから乾燥ポリマー微粉を回収する工程と;
前記微粉に前記水性流体吸収性ポリマーを製造するための重合性モノマー溶液を混合する工程と;
微粉とモノマーとの前記混合物を重合して、前記水性流体吸収性ポリマーを形成する工程とを含む。
一般に、この方法は好ましくはさらに次の工程:前記重合工程からの水性流体吸収性ポリマーを粉砕する工程と;
前記粉砕ポリマーを乾燥させる工程と;
前記乾燥ポリマー粒状物を所望の最小粒度を有する部分と前記所望粒度未満の微粉部分とに分類する工程と;
前記微粉部分を前記水性流体吸収性ポリマーを形成するための重合工程に再利用させる工程とを含む。
問題の好ましい水性流体吸収性ポリマー、すなわち、それの製造原料であるモノマー溶液は水溶性エチレン系不飽和モノマー混合物もしくはそれらの塩、好ましくはアミド、カルボン酸もしくはそのエステル、ビニルアミンもしくはそれらの塩又はこれらの混合物を含む。
最も好ましくは、前記ポリマーはポリビニルモノマーによって架橋した、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらのコポリマーの架橋ポリマーである。
前記モノマー溶液は前記モノマー混合物の少なくとも1種の他の成分とグラフト重合することができるモノマーを含む。
本発明の水性流体吸収性物質は好ましくは水膨潤性流体吸収性ゲル、すなわち、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸又はイソクロトン酸の軽度に架橋した、部分的中和コポリマーである。
前記モノマー溶液中に混入される微粉量は前記ポリマーの所望の水性流体吸収特性に不利な影響を与えないような量に限定される。本発明の方法の利点は、ポリマー生成物に望ましい水性流体吸収特性に有意に不利な影響を与えないで、比較的多量の微粉が再利用又は再加工されることである。再利用される量は一般に、

じて、本発明のポリマーゲルの固形分を基準にして30重量%以下の範囲であるこ

になる。
例えばおむつのような、パーソナルケア製品に混入するために適した、好ましい粒度を有する粒状生成物を製造するための固体の水性流体吸収性ポリマーの製造と取り扱いにおいて、典型的なゲルプロセスの乾燥及び粉砕部分は当然、予定用途には不適切に小さい粒子の微粉画分を生ずる。この粒度画分(以下では、“微粉”と呼ぶ)は、予定用途には不適切に小さいことの他に、しばしば製造中にダスチング問題を生ずるほど小さい。このようなダスティ(dusty)微粉はプロセス中に物質取り扱い問題を生ずるばかりでなく、製造設備内で空中に浮揚するという危険性も有する。微粉物質はそれが用いられる製品中で、初期湿潤時にゲルブロックする周知の傾向を有するので、微粉物質がしばしば性能問題の発生源になる。さらに、製品中に微粉が含まれる場合にも問題が生ずる。
本発明は水性流体吸収性ポリマーの製造中又は有用製品への混入中に自然の摩耗によって生ずる水性流体吸収性ポリマーの微粉部分を、本来水性流体ポリマーを製造する重合反応中に再利用させる方法である。この方法を用いると、これまでにこのような物質の製造及び取り扱い中にしばしば容認される収率低下をであったものが、今や最小になる又は除去される。この結果は、低倍率顕微鏡下で水和プロセスを観察することによって容易に知ることができるように、水和によって与えられる応力下でも性質においてユニタリに留まる生成物の水性流体吸収性粒状物である。
本発明の微粉再利用プロセスで特に重要である水膨潤性又は軽度に架橋したポリマーもしくはコポリマーは、多量の水性流体を吸収することができるものである。
このようなポリマーの例及びそれらの製造方法は米国特許第3,997,484号、第3,926,891号、第3,935,099号,第4,090,013号及び第4,190,562号に見られる。一般に、このようなポリマーは例えばモノカルボン酸、ポリカルボン酸、アクリルアミド又はこれらの誘導体のような、水溶性α,β□エチレン系不飽和モノマーから製造される。適当なモノカルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸又はイソクロトン酸とそれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、並びにスルホエチルメタクリレートとそのナトリウム塩又は2□アクリルアミド□2□メチルプロパンスルホン酸又はそのナトリウム塩を含む。適当なポリカルボン酸はマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸を含む。適当なアクリルアミド誘導体はメチルアクリルアミドとN,N□ジメチルアクリルアミドを含む。好ましいモノマーはアクリル酸とメタクリル酸及びそれらのそれぞれのアルカリ金属塩とアンモニウム塩を含む。これらのポリマーは例えばモノマー溶液中にグラフト可能な成分(moiety)を混入することによって改質される。
水溶性モノマーと共重合可能なエチレン基を2個以上有する有機化合物を架橋用モノマーとして用いることができる。典型的な多官能架橋用モノマーは、米国特許第4,286,082号に認められるように、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及び1,4□ブタンジオールのジアクリレートもしくはジメタクリレートエステルを含む。他の架橋用モノマーはメチレンビスアクリルアミド、ジアリルアミン、トリアリルアミン及びアリルメタクリレートエステルである。ポリマーの吸水容量が低下しないように、又は吸収剤が流体との接触時に粘着性になり、低い初期吸収速度を示すほど、低くないように、架橋度を選択する。
好ましい水性流体吸収性粒状物はポリアクリル酸を含むモノマー溶液から誘導される。最も好ましい溶液では、ポリアクリル酸が少なくとも部分的に中和され、部分的に架橋した塩である。モノマー混合物溶液は例えば澱粉とポリビニルアルコールのようなグラフト重合可能な成分と、ポリアクリル酸又はその塩と共重合する他のモノマーとを含む。このプロセスでは、アクリル酸が例えばナトリウム、アンモニウム、カリウムの水酸化物又は炭酸塩のようなアルカリ塩基によって中和される。
部分的に中和され、部分的に架橋したポリアクリル酸モノマー系では、重合相

が好ましい範囲である。プロセスに再循環されるポリマー微粉は反応器中の固体の重量を基準にして少なくとも約30重量%までを成す。製品の水性流体吸収性能

ゲル重合生成物を製造する方法及び装置は、重合工程の前に微粉をモノマー溶液中に再利用させる以外は、全く慣習的である。用いる装置も慣習的であり、主反応器は典型的に単純な縦型撹拌容器又は、米国特許第4,769,427号及びヨーロッパ特許第0238050号に述べられているような、横型単軸シリンダーミキサーである。技術上公知の他の反応器も適切であり、例えば米国特許第4,625,001号に述べられている二軸押出機又は米国特許第4,851,610号に述べられているベルト重合器のような、他の反応装置も使用可能である。
重合工程では、完全に熱開始剤に基づく開始系ならびにレドックス開始系の多くの種々な組合せを含めた、全ての周知のフリーラジカル開始系を用いることができる。技術上周知であるように、開始剤使用量は特定の重合装置のニーズ、その装置を操作するために望ましい温度と圧力の条件に基づいて選択される量であり、他のやり方で強要される量ではない。
一般に、水溶性モノマーと架橋用モノマーとは重合開始剤の存在下で、ゲル状反応生成物が生ずるような公知やり方で重合される。ゲルポリマーを好ましくは

ーを粉砕して、所望の粒度の粒状物を含む粒状生成物にする。
下記実施例は本発明の生成物と方法とを説明するが、本発明をそれらの範囲にのみ限定しようと意図するものではない。
【実施例】
実施例1、2及び比較例A
撹拌機を備えた1リットル反応器にアクリル酸を装入し、次にトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)架橋剤を添加した、この架橋剤は数分間の撹拌後にアクリル酸に溶解した。この溶液にVersenexR80キレート化剤(Dow Chemical Companyから入手可能な、ジエチレントリアミンペンタ酢酸の五ナトリ

シルバニヤ州アレンタウンによって製造)とを水性媒質中のTMPTAの安定化のために加えた。次に、このモノマー溶液を炭酸ナトリウム溶液によって約65%中和度まで中和した。アルカリ物質の添加速度はCO2発生に合わせて調節した。
本発明によると、ポリマー微粉を中和されたモノマーミックスに撹拌しながら加えた。再び、撹拌速度はCO2過飽和モノマー混合物の過剰な起泡を避けるように制御した。比較例Aには微粉を加えなかった。
窒素で60分間スパージすることによって反応器内容物を脱酸素し、開始剤を導入した。重合を開始させ、温度を初期の所望のレベルにまで上昇させた。次に反応器を所望の保持温度に、高いモノマー転化率を得るために必要な時間、維持した。高いレベルの微粉を重合に加える場合には、総熱放出量が比較例Aの重合に比べて減少する。全ての重合に対して同じ温度プロフィルを保証するために、加熱浴を用いて、熱ヒストリーの差に起因する全ての差異を除去した。
モノマーからポリマーへの転化によって実証される反応の完成まで、反応を進行させる。転化が完成した後に、ゲルを反応器から少量ずつ取り出し、ナイロンスクリーン上に広げ、オーブン内で約100℃において約16時間乾燥させた。乾燥後に、ポリマーを室温に冷却し、所望の粒度に微粉砕した。
ポリマーを乾燥させ、最終粒度に粉砕した後に、ポリマーを残留アクリル酸、抽出物遠心分離容量(extractable centrifuge capacity)、剪断弾性率及び荷重下吸収に関して分析した。
モノマー溶液へのポリマー微粉の導入量を、乾燥した完成ポリマー中に残留す

繰り返した。このプロセスに用いた成分を下記表Iに示す。

実施例に用いた微粉は、米国特許第4,833,222e号に述べられている比較例Aに従ってDow Chemical Companyによって製造された、部分的中和され、部分的架橋されたアクリル酸ベースド水性流体吸収性ポリマーである、慣習的生産のDRYTECHRポリマーからふるい分けした。用いたDRYTECHRポリマー微粉物質は約140メッシュ(110μm)未満であり、30.5g/gの平均30分間遠心分離容量、7.2%の4時間水性抽出物及び470ppmの残留アクリル酸モノマーを有する生産物質から誘導されたものであった。
重合工程に対する各レベルの微粉添加に関する乾燥した粒状の水性流体吸収性ポリマーの性質の特徴を、80℃と50℃の重合保持温度に関して表IIに報告する。

1.遠心分離容量の測定方法はヨーロッパ特許第0349241号に記載。
2.荷重下吸収(AUL)の測定方法はヨーロッパ特許第0339461号に記載。
3.抽出物%と残留アクリル酸との測定方法は、0.9%生理食塩溶液370ml中に80/100メッシュスクリーンカット2gを分散させ、4時間振とうし、濾過することによって実施する。次に、濾液に液体クロマトグラフィーを実施して、残留アクリル酸を測定し、濾過されたものを酸含量に関して分析して、抽出物%を測定する。4.弾性率の測定方法はRE32,649に記載。
表IIは重合生成物の30分間遠心分離容量に対する微粉添加の効果を示す。微粉添加によって遠心分離容量が低下する。
実施例3
実施例1と2の重合と同じ重合シリーズを8.3%と16.7%の微粉レベルに対して、TMPTA架橋剤の量を変えて実施した。表IIIはこの2種の微粉含量の遠心分離容量に対する架橋剤変化の影響を報告する。
荷重下吸収(AUL)はポリマーが加圧下で膨潤する形式を測定する。先行技術の方法によってゲルに再利用再水和微粉を添加した場合には、微粉添加レベルの増加に伴うAULの減少が経験された。重合前に本発明によってモノマーに微粉を添加すると、AULを実質的に低下させずに満足できるAULが達成される。高い架橋剤レベルによってAULが若干低下する場合にも、得られる乾燥生成物の総合特性を考慮すると、その低下度は受容される。

実施例3の表IIIは2種類の微粉添加レベルでのTMPTAレベルの変化に対する遠心分離容量の反応を示す。30分間遠心分離容量を零微粉レベルにまで戻すに、80℃全体温度での16.6%微粉において0.7%TMPTAから0.3%TMPTAまでの有意な減少が必要であった。さらに低い全体温度においてはTMPTAレベルのさらに大きい減少が必要であると思われる。
実施例4-6
200リットル反応器を用いて、より大きい固体レベルで上記実験室レシピの拡大形によって、アクリル酸ナトリウム水性流体吸収性ポリマーを製造した。ゲル生成物の固体含量を基準にして約7、15、20%で微粉をモノマーに加えた。表IVはこれらの実験結果を報告する、これらの結果は上記結果と一致し、再循環微粉レベルが増加すると遠心分離容量は減少するが、他の全ての性質は正常な、受容される範囲に留まる。

実施例7及び比較例BとC
試験方法
生理食塩溶液40mlを含むビーカーを電磁気ミキサー上で激しく撹拌した。水性流体吸収性ポリマー2gを加え、電磁気スターラーによって生じた渦が消失する時間を記録した。青色染料を含む生理食塩溶液の第2の10ml部分を加えて、吸収性を観察した。
試験例
(1)微粉凝集物(比較例Bと名付ける);(2)水和微粉粒子をゲルに配合することによって得られた生成物(比較例Cと名付ける);(3)重合プロセスへの微粉の再利用を必要とする本発明の生成物(実施例7と名付ける)を含む水性流体吸収性製品を上記のように試験した。

メッシュ粒状物を得ることによって製造した。比較例Cは米国特許第5,064,582号によって微粉を高い剪断速度で水和するプロセスによって製造した。
結果
先行技術の比較例BとCによって製造した物質では、青色染料がオリジナルの膨潤ゲルの体積の約1/4のみに浸透した。本発明の方法の生成物である実施例7の試験では、青色はビーカーの容積全体に現れた。
最初の試験での青色の不均一性は粒子が水和中にばらばらになるときのゲルブロッキングを実証する。水和時に生成物が小片に分解することは低倍率顕微鏡で観察された。本発明の生成物によって均一な青色が現れたことは、ゲルブロッキングが生じないこと及び生成物が水和によって課せられる応力下でさえもユニタリな性質を保持することを実証する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-04-23 
出願番号 特願平4-511497
審決分類 P 1 651・ 16- ZA (C08F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原田 隆興  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
中島 次一
登録日 2001-02-02 
登録番号 特許第3155006号(P3155006)
権利者 ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー
発明の名称 水性流体吸収性微粉の重合器への再循環方法  
代理人 戸水 辰男  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 今井 庄亮  
代理人 社本 一夫  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 今井 庄亮  
代理人 戸水 辰男  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  

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