• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H02K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H02K
管理番号 1111111
異議申立番号 異議2003-73618  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-27 
確定日 2004-10-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3424551号「永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3424551号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由
1.手続の経緯
出願 平成10年 4月23日
特許権設定登録 平成15年 5月 2日
(公報発行日 平成15年 7月 7日)
特許異議申立て 平成15年12月27日(申立人 工藤直一)
取消理由通知 平成16年 4月13日(平成16年4月23日発送)
訂正請求 平成16年 6月21日


2.訂正の適否

2-1 訂正の内容
平成16年6月21日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書の記載によれば、特許権者が求めている訂正の内容は、以下の訂正を行うものと認められる。

訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「かごが定格速度で運転される時の前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、前記エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるように、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数を選定したこと」を「かごが定格速度で運転される時の前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、前記エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れ、かつ、前記かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するような、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数であること」と訂正する。

訂正事項b
請求項2,3を削除し、請求項4乃至7項を、それぞれ請求項2乃至5項に繰り上げる。
これに伴い引用する請求項を、訂正後の請求項2では「請求項1」に、訂正後の請求項3は「請求項1又は2」に、訂正後の請求項4では「請求項1から3のいずれか1項」に、訂正後の請求項5では「請求項1から4のいずれか1項」に訂正する。

訂正事項c
訂正後の請求項3(訂正前の請求項5)中の「最大公倍数」を「最小公倍数」と訂正する。


2-2 訂正の適否

(1)訂正事項aについて
ア.請求項1についての訂正事項aは、「永久磁石同期モータの極数とスロット数」が、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が機械的共振周波数と一致する」ようなものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。

イ.訂正事項aに関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。また、願書に添付した明細書及び図面を、以下「特許明細書・図面」という。)には、
(i)「【請求項2】請求項1記載のエレベータ装置において、前記かごが起動直後および停止直前の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するように、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数を選定したことを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。」、
(ii)「【0033】・・極数を更に多くしてトルクリプル周波数が機械的共振周波数と一致する速度を極めて小さくして、起動直後、および停止直前に機械的共振周波数と一致するようにしたものである。これにより、かごのドア開閉に近接した起動,直後,停止直前にのみかご振動が生じるようにするので、かご振動が乗客には感じにくく、かご振動があっても、さほど不快感を与えないという効果がある。」、
と記載されていることから、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が機械的共振周波数と一致する」ような「永久磁石同期モータの極数とスロット数」は、特許明細書・図面の記載から自明な事項である。よって、訂正事項1は、特許明細書・図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

ウ.そして、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。


(2)訂正事項bについて
ア.(α)訂正事項bにおいて、請求項2を削除することは、訂正事項a(審決注:訂正事項aによる訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2に対して、(i)「起動直後および停止直前の速度」を「ドアの開閉に近接した起動直後および起動直前の速度」と更に限定し、(ii)「極数とスロット数を選定した」を「極数とスロット数である」と単に言い換えた、ものである関係にあり、訂正後の請求項1は訂正前の請求項2を実質的に更に限定するものである。)との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものである。
(β)訂正事項bにおいて、請求項3を削除することは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。
(γ)訂正事項bにおいて、引用する請求項を訂正するのは、訂正事項a及び請求項2,3を削除することとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものである。

イ.訂正事項bは、特許明細書・図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

ウ.(δ)訂正事項aによる訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2に対して、(i)「起動直後および停止直前の速度」を「ドアの開閉に近接した起動直後および起動直前の速度」と更に限定し、(ii)「極数とスロット数を選定した」を「極数とスロット数である」と単に言い換えた、ものである関係にあり、訂正後の請求項1は訂正前の請求項2を実質的に更に限定するものである。よって、引用する請求項を訂正前の請求項2から訂正後の請求項1に訂正することは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
(なお、「AするようにBとCを選定した」ことと「AするようなBとCである」ことは、前者がAするようにBとCを選定するという積極的な行為を要件とするのに対して、後者はAするような関係にBとCがあるという事実を要件とするものであって、形式的には後者は前者を拡張又は変更するものであり、形式的には両者は完全に等価なものとは言えない。しかしながら、永久磁石同期モータの極数とスロット数は、トルク脈動特性の向上等の様々な設計上の要求を考慮して設計者が選定するものであることは自明であるので、上記(ii)の「極数とスロット数を選定した」を「極数とスロット数である」とする言い換えが、直ちに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるとまでは言えない。)

(ε)また、請求項を削除すること及び多数項引用形式請求項の引用請求項を減少することは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。

以上より、訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるとまでは言えないものである。


(3)訂正事項cについて
ア.訂正後の請求項3(訂正前の請求項5)中の「最大公倍数」を「最小公倍数」と訂正することは、誤記の訂正を目的とした訂正に該当するものである。

イ.願書に最初に添付した明細書の0037段落〜0042段落の記載、又は技術常識のいずれからみても、訂正前の請求項5中の「最大公倍数」は「最小公倍数」のな誤記であることは明らかである。よって、訂正事項cは、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

ウ.そして、訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。


2-3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法120条の4第2項及び同条第3項において準用する平成15年改正前の特許法第126条第2項、第3項の規定に適合するので、上記訂正を認める。


3.異議申立てについての判断

3-1 本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件の請求項1乃至5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明5」という。)は、上記訂正請求にかかる訂正明細書の請求項1乃至5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機,かご,ロープ,釣合重りとから構成されるエレベータ装置であって、前記かごが定格速度で運転される時の前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、前記エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れ、かつ、前記かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するような、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。

【請求項2】
請求項1記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数1】
fm<NPv/(40πD) …(1)
の関係にあることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。

【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数2】
fm<FNv/(120πD) …(2)
の関係にあり、Fは極数Pとスロット数Mの最小公倍数であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。

【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータと前記巻上機のシーブを直結したことを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。

【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータは埋め込み型永久磁石の構造であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。


3-2 申立の理由の概要

特許異議申立人工藤直一は、
(A)甲第1、2号証(下記引用刊行物1、3)を提示して、本件の請求項1乃至7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張し、
(B)(i)請求項1の「共振周波数近傍」との記載の「近傍」とはどの範囲をいうのかが不明確であり、(ii)エレベータ装置の駆動系は巻上機シーブ、ロープ、プーリ、釣合重りなどを含む多くの用品により構成されていることから、エレベータの機械的共振周波数は広範囲に存在するため、これらのすべての共振周波数を外してモータを構成することは実質的に困難であるので、本件請求項1乃至5にかかる発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。


3-3 取消理由通知で引用した刊行物

(1)「エレベータ界」1997年7月号、14-19頁(甲第1号証)
(2)特開平8-40676号公報
(3)斉藤文利訳、「ロー・ノイズ・モータ」、総合電子出版社、昭和58年7月10日第1版発行、49頁、97〜98頁(甲第2号証)
(4)特開平7-252039号公報
(5)特開昭60-2580号公報
(6)特開昭62-110468号公報
(7)特開平7-336967号公報
(8)特開平2-46153号公報


3-4 引用刊行物に記載された事項
(1)引用文献1(「エレベータ界」1997年7月号、14-19頁(甲第1号証))
(A)引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア.「永久磁石式電動機を適用した高速エレベーター用新形ギヤレス巻上機」(14頁、技術講座のタイトル名)

イ.「・・希土類永久磁石式電動機を適用した高速エレベーター用巻上機を・・開発した。・・」(14頁、「1.まえがき」欄)

ウ.「新たに開発した高速エレベータ用ギヤレス巻上機の仕様を表1に示す。速度に応じて2機種の電動機を準備した。・・・」(14頁、「2.巻上機の仕様」欄)

エ.「定格速度 120、150m/min 電動機出力 25kw 電動機回転数 157rpm」、「定格速度 180〜240m/min 電動機出力 40kw 電動機回転数 251rpm」の2機種の電動機(14頁、「表1 巻上機の仕様」)

オ.「多極化は、電動機小型化の一般的手法であり、鉄心外径の縮小、コイルエンド長の短縮などの効果がある、・・電源周波数は多極化により高くなるが、パワーエレクトロニクス技術の進歩により、インバータの出力周波数範囲が大幅に広がっており、電動機の計画において周波数限界は殆ど無く、極数は実用上自由に選定できる。永久磁石式電動機においては、磁石材のブロックサイズの制限から単一磁石でカバーできる極弧長の限界があり、極数下限値の目安が定まる。・・永久磁石式電動機では極数に関り無く高効率運転が可能であり、多極化、小型化が実現できる。・・」(14-15頁、「3.2小型化」欄)

カ.「・・極間の非磁性スペーサで押え込む固定方式を採用している。・・外部雰囲気(化学性ガス、水分など)の直接的な影響、塵埃の直接的な堆積を防止する構造となっている。」(15頁、「3.3ロータ構成と保護」)

キ.「・・エレベータ用巻上機には、特に脈動の少ない平滑なトルク特性が要求されるため、電機子に1溝スキューを施すと共に、分数スロット設計や適切な短節度の選定を行い、波形の改善に努めた。・・」(15頁、「トルク脈動対策」)

ク.17頁図4には、「かご」「釣合い錘」が綱車を介してロープの両側に繋げられ、綱車が「PM:永久磁石式電動機」と結合された模式図が、記載されている。

(B)引用文献1のものにおいて次のことが明らかである。
ケ.上記ウ.、ク.より、永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機,かご,ロープ,釣合い錘がエレベータ装置を構成すること

コ.上記オ.より、永久磁石同期モータの極数を多極化すること

サ.上記キ.より極数、スロット数をトルク脈動特性の向上も考慮して選定すること

(C)以上より、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる。
「永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機,かご,ロープ,釣合い錘とから構成されるエレベータ装置であって、かごが運転される定格速度が定められた、永久磁石同期モータの極数が多極であり、極数、スロット数をトルク脈動特性の向上も考慮して選定した、永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。」

(D)以上から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機,かご,ロープ,釣合い錘とから構成されるエレベータ装置であって、かごが運転される定格速度が定められた、永久磁石同期モータの極数が多極化された、永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。」(以下、「引用発明1」という。)


(2)引用文献2
(A)引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア.「【0011】・・エレベータ機械装置1は、エレベータモータ2、エレベータロープ5を駆動するトラクションシーブ4、およびブレーキ3を有している。エレベータモータは、ステータ9、モータシャフト7、ロータ8、およびロータ8とステータ9との間の軸受10からなっている。・・ロータ8は、・・ロータ励起部品15が設けられたロータディスク14からなっている。ロータ励起部品15は、多数の永久磁石をロータディスク8に連続して取り付けることによって形成し、環状の円を形成するようにしている。ロータの磁束は、ロータディスク内を流れる。ロータディスクの永久磁石の下にある部分は、磁気回路の一部を形成し、ロータの材質強度にも貢献している。これらの永久磁石は様々な形にすることができ、小さな磁石に分割して、横に並べたり、あるいは連続して配列することができる。」

イ.「【0013】エレベータモータ2は、例えば同期モータ、または整流直流モータでもよい。」

ウ.「【0023】図4において、エレベータ機械装置はガイドレール6の上端部に図1に示す方法で固定されている。ガイドレール6はエレベータガイドレールまたはカウンタウエイトガイドレールのいずれかでよい。エレベータロープ5の一方の端部はエレベータシャフト51の上部52に点53で取り付けられ、そこからエレベータロープは方向転換プーリ56を介してエレベータカー54の下へエレベータ機械装置1のトラクションシーブ4まで送り上げられ、そこからさらにカウンタウエイト55の方向転換プーリへ送り下げられ、さらにシャフトの最上部の点58まで戻り、ここでエレベータロープの他方の端部が固定される。」

(B)引用文献2のものにおいて次のことが明らかである。
エ.同期モータを用いるエレベータ装置の製品化に際して、エレベータカー54を運転する定格速度を定めることは、自明のことである。

オ.上記ア.の「ロータ励起部品15は、多数の永久磁石をロータディスク8に連続して取り付けることによって形成」、「これらの永久磁石は・・小さな磁石に分割して、横に並べたり、・・して配列することができる。」との記載より、永久磁石同期モータの極数を多極化して形成する点。

カ.図1,図2より、永久磁石同期モータとエレベータ機械装置のトラクションシーブが直結構造であることが明らかである。

(C)以上から、引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。
「永久磁石同期モータを駆動原としたエレベータ機械装置1,エレベータカー54,エレベータロープ5,カウンタウエイト55とから構成されるエレベータ装置であって、エレベータカー54が運転される定格速度が定められた、永久磁石同期モータの極数が多極化された、永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置において、永久磁石同期モータとエレベータ機械装置のトラクションシーブを直結構造とするもの。」


(3)引用文献3(斉藤文利訳、「ロー・ノイズ・モータ」、総合電子出版社、昭和58年7月10日第1版発行、49頁、97〜98頁(甲第2号証))
(A)引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア.「磁気的な力がステータやロータコアーに作用し、また振動する機械的な力が軸受に作用して、特にそれらの加振周波数が機械の一部の固有振動数に等しかったり近い場合には、やっかいな騒音や振動をもたらせる。」(49頁2-4行)

イ.「ステータ/ロータスロット数の選定は、漂遊損、コギングトルク、同期および非同期トルク、またコストや電動機の特性についても考慮せねばならない、・・スロット数を変えたときに、加振力の周波数が電動機構造物の共振と一致せぬように、注意する必要がある。」(98頁9-13行)


(4)引用文献4(特開平7-252039号公報)
(A)引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア.「・・一般に、エレベーターはロープが介在した機構であることから、固有振動数(fL)と呼ばれる領域において、振動ゲインが著しく高くなる振動特性を有している。・・トルクリプルの周波数とエレベーター系の固有振動数とが一致すると、共振して著しく乗り心地を損ねかねない。」(0002段落)


(5)引用文献5(特開昭60-2580号公報)
(A)引用文献5には、次の事項が記載されている。
ア.「・・エレベータは人間が乗るものであるから、乗心地が重視されかご内の振動は5〜15Hzの人間が最も体感の鋭い領域においてピーク対ピークで10〜15Galに抑えるのが望ましい。しかもエレベータのかごはロープを介して巻上機に吊持されているが、このロープの固有振動数は普通3〜10Hzにあり、このロープ系の共振尖鋭度が高いためわずかのトルクリプルが巻上機にあっても、かご内の乗心地が著しく悪化する。・・」(2頁左上欄)

イ.「しかし乍ら機械系の固有振動数はかご位置によって大きく変動する。・・」(2頁右上欄)


(6)引用文献6(特開昭62-110468号公報)
(A)引用文献6には、次の事項が記載されている。
ア.「コギングトルクは1回転につき突極磁極数Mと永久磁石磁極数Pとの最小公倍数の脈動トルクであり、コギングトルクの大きさは脈動数に反比例する。」(2頁右上欄1-4行)

イ.2頁左下欄表1には、「永久磁石磁極数16、突極磁極数12、コギングトルク脈動数48」、「永久磁石磁極数20、突極磁極数15、コギングトルク脈動数60」、「永久磁石磁極数24、突極磁極数18、コギングトルク脈動数72」が例示されている。


(7)引用文献7(特開平7-336967号公報)
(A)引用文献7には、次の事項が記載されている。
ア.「・・スロット数n・・極対数m・・1回転あたり・・山(・・)のコギングトルクを発生する。このコギングトルクの山の数は・・mとnの最小公倍数となる。・・」(0016段落)


(8)引用文献8(特開平2-46153号公報)
(A)引用文献8には、次の事項が記載されている。
ア.「・・界磁磁極数Pとスロット数N・・。有コアモータの場合、・・コギングの次数は通常・・NとPの最小公倍数で発生する。」(1頁右下欄4-10行)

イ.2頁左上第2表には、「磁極数16、スロット数12、コギング次数48」、「磁極数20、スロット数15、コギング次数60」、「磁極数24、スロット数18、コギング次数60」が例示されている。

ロ.「・・一般にコギングの次数が高いほどコギングは少なくなる・・」(3頁左上欄2-3行)


3-5 周知の技術的事項

3-5-1 周知の技術的事項A.
エレベータ装置の永久磁石同期モータの極数を多極化するに際して、16極あるいはそれ以上の極数とすること(下記文献9-11参照。)

(9)特開平9-142761号公報
ア.「【0001】・・この発明はエレベータ用巻上機に係り、特にその小型、軽量を図る技術に関するものである。」
イ.「【0016】・・同期電動機13を構成する。ここで、回転子磁極とする永久磁石片には希土類磁石を使用し、磁極数としては、綱車16に必要な回転数がギアレスで得られるよう、例えば16〜20Pに設定される。」
ウ.「【0017】・・駆動源として、回転子磁極に希土類永久磁石を使用した同期電動機13としたので、いわゆる多極設計の採用が容易となり、・・」
エ.「【0018】また、永久磁石の採用により、抵抗損失が固定子側のみの損失ですむため効率が改善される。更に、同期電動機であるため、誘導機のように多極化に伴う力率悪化の問題もなく高力率運転が可能となり、・・」
オ.「【0020】なお、実施の形態1を採用して実際に製作した試作機を従来品と比較した結果を以下に記す。即ち、40KW定格の具体例で比較した場合、・・この発明による試作巻上機の重量は1,600Kg、軸長は1,000mmと重量、寸法の大幅な低減、コンパクト化が実証された。」

(10)特開平10-17245号公報
ア.「【0001】・・この発明はエレベータ用巻上機に係り、・・」
イ.「【0008】・・この発明によるエレベータ用巻上機に用いた電動機の最も大きい特徴は、磁束の源泉を永久磁石としたことと・・である。・・」
ウ.「【0010】円盤状同期電動機の極数は、・・16極あるいはそれ以上の極数とすることが望ましい。」

(11)特開平9-263367号公報
ア.図4には、1/4周に4極の磁極が記載されており、極数16極の永久磁石同機モータを用いるエレベータ装置が明らかである。


3-5-2 周知の技術的事項B
エレベータ装置の機械的共振周波数が、一般に数Hz〜十数Hz程度であること。高層建築においては、エレベータ装置の一次の共振周波数が1Hz前後〜数Hzであること。(引用文献5(上記(3-4)(5)「・・ロープの固有振動数は普通3〜10Hzにあり・・」参照)、下記文献12-18参照)

(12)特開平6-171841号公報
ア.「【0013】このように制御対象は、乗りかご3がばね系によって吊り下げられているから振動系となり複数の共振振動をもつ。図2にかご位置がエレベータ昇降路の最上階付近にあるときの電動機1のトルクから乗りかご3の加速度までの周波数特性(ゲイン特性,・・)を示した。周波数特性はエレベータ仕様によって異なるが図2の場合、ゲイン特性から約2Hzの1次振動,約4Hzの2次振動,約8.2Hzの3次振動の共振振動があり、それぞれの周波数の外乱があると乗りかご3が大きく振動することがわかる。・・」
イ.「【0017】かご位置が変化するとロープ・・の長さの関係が変わるので乗りかご振動の様子が異なる。図4に乗りかご3の位置が昇降路の中間階付近にあるときの電動機1のトルクから乗りかご3の加速度までの周波数特性(ゲイン特性,・・)を示した。・・1次振動は約1.6Hz,2次振動は約5.7Hz,3次振動は約7Hzの共振振動数となり、図2で示した振動条件と異なる。たとえば、3次振動は8.2Hzから7Hzへと変化し、2次振動は4Hzから5.7Hz へと変化する。・・」

(13)特開平10-45342号公報
ア.「【0004】このようなロープ系を含めたエレベータシステムの固有振動数は、一般に4Hz〜15Hz程度の領域にあり、その共振尖鋭度が高い。・・」

(14)特開平7-187548号公報
ア.「【0123】・・破線で示した従来のエレベータの特性は、2Hz、4Hz、12Hz付近にピークがある。実線の本発明による特性は、0.8Hz、4Hz付近にピークが有る。以上の振動の大きな周波数では、乗りかご14とかご枠5の何れか、またはその両者に固有の振動モードが存在している。」

(15)特開平5-319739号公報
ア.「【0071】・・主ロープ4のバネ定数とかご室1、かご枠2の質量により構成される振動系は、その固有振動数がおおよそ3〜10Hzにあり、かつその共振尖鋭度も高いため、かご室1に垂直方向振動を発生させ乗りごこちを著しく劣化させる。また、問題となる振動の周波数成分も、主ロープ4の長さがかご室1の上下動により変化し、かご室1が最上階の時最短、かご室1が最下階の時最長となり、そのバネ定数も大きく変化し固有振動数も変化するため、かご室1の位置により異なったものとなる。・・」

(16)特開平5-246661号公報
ア.「【0008】・・この各ガイドレール3に沿って乗りかご5が毎分360 m以上の高速で昇降する場合、乗りかご5は横方向へ2〜4Hzで加振されることになる。この乗りかご系の横方向の第1次の固有振動数はこの領域にある場合が多い・・。」

(17)特開平5-24769号公報
ア.「【0005】・・高速エレベータは、乗りかご7の昇降行程が50m以上では、エレベータ全体の上下方向の第1次固有振動数が、約1、5〜4Hz程度の値をとる場合が多い。」
イ.「【0010】又一方、上記各シープ4、5、9は、通常鋳物で造られる関係上、その重心と回転中心とは僅かながらずれを生じて、回転振動を起し、これが低周波の加振源と成りやすくなるため、2:1のローピングの高層エレベータでは、約1、5〜4Hz程度の低周波の上下動を乗りかご7に生じ易いという問題がある。」

(18)特開平5-32384号公報
ア.「【0002】近年、高層建屋が急増すると共に、その建屋内に備えられるエレベータ装置は・・長行程化し、高速化されて来た。特に長行程化されるとエレベータの昇降路内に張られたロープ類は非常に長くなってロープ類の大きく横振動する固有振動数は1Hz以下となって・・」


3-5-3 周知の技術的事項C
永久磁石同期モータのコギングトルク周波数は、一般にモータ一回転につきモータの極数とスロット数の最小公倍数であり、コギングトルクによるトルク脈動の振幅は、最小公倍数が大きいほど小さくなること(引用文献6-8参照)。

3-5-4 周知の技術的事項D
永久磁石同期モータの極数を16極あるいはそれ以上とするに際しての、極数とスロット数選択の具体例として、「極数16、スロット数12、最小公倍数48」、「極数20、スロット数15、最小公倍数60」が、周知例の一つであること(引用文献6、8参照)。

3-5-5 周知の技術的事項E
モータの加振源の加振周波数が機械系の固有振動数に等しかったり近かったりする場合、共振により振動や騒音の問題が発生するおそれがあることは、モータを扱う機械技術者に周知の事項である(例えば、引用文献3(上記3-4(3)(A)ア.参照))。

3-5-6 周知の技術的事項F
エレベータ分野において、モータの加振源の加振周波数とエレベータ装置の機械的共振周波数が一致すると、共振により乗り心地が悪化するという問題があるので、モータの加振源の加振周波数とエレベータ装置の機械的共振周波数とによる共振を避ける或いは抑制する必要があることは、当業者が広く認識するものである(例えば、引用文献4(上記3-4(4)参照)、引用文献5(上記3-4(5)(A)ア.参照))。

3-5-7 周知の技術的事項G
永久磁石同期モータにおいては、トルクリプルを発生させる加振源として主なものに、コギングトルクと電流トルクリプルがあること、そして、その加振周波数に関して、コギングトルク周波数は、モータの極数とスロット数の最小公倍数、及びモータの回転数の積の関係にあること、電流トルクリプル周波数は、モータの相数、極数、及び回転数の積の関係にあることは、いずれもモータ技術者に周知の技術的事項である(コギングトルクについては、必要なら、例えば引用文献6(上記3-4(6)(A)ア.参照)、引用文献7(上記3-4(7)参照)、引用文献8(上記3-4(8)(A)ア.参照)等参照。)。


3-6 対比・判断
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と引用発明1を対比すると、後者における「永久磁石同期モータ」、「巻上機」、「かご」、「ロープ」、「釣合い錘」は、それぞれ前者における「永久磁石同期モータ」、「巻上機」、「かご」、「ロープ」、「釣合重り」に相当する。

したがって、両者は「永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機,かご,ロープ,釣合重りとから構成されるエレベータ装置であって、かごが運転される定格速度を有する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1は、かごが定格速度で運転される時の永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるような、永久磁石同期モータの極数とスロット数であるのに対して、
引用発明1においては、かごが定格速度で運転される時に永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるような、永久磁石同期モータの極数とスロット数であることの明示はないものである点。

(相違点2)
本件発明1は、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数であるのに対して、
引用発明1においては、永久磁石同期モータの極数は多極化されたものであるが、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数であることの明示はないものである点。


(1-2)判断

(1-2-1)相違点1について
(1-2-1-1)
(i)モータの加振源の加振周波数が機械系の固有振動数に等しかったり近かったりする場合、共振により振動や騒音の問題が発生するおそれがあることは、モータを扱う機械技術者に周知の事項である(周知の技術的事項E)。
(ii)そして、エレベータ分野においても、モータの加振源の加振周波数とエレベータ装置の機械的共振周波数が一致すると、共振により乗り心地が悪化するという問題があるので、モータの加振源の加振周波数とエレベータ装置の機械的共振周波数とによる共振を避ける或いは抑制する必要があることは、当業者が広く認識するものである(周知の技術的事項F)。
(iii)また、永久磁石同期モータにおいては、トルクリプルを発生させる加振源として主なものに、コギングトルクと電流トルクリプルがあること、そして、その加振周波数に関して、コギングトルク周波数は、モータの極数とスロット数の最小公倍数、及びモータの回転数の積の関係にあること、電流トルクリプル周波数は、モータの相数、極数、及び回転数の積の関係にあることは、いずれもモータ技術者に周知の技術的事項である(周知の技術的事項G)。
(iv)また、引用文献3には、スロット数の選定は、コギングトルク、同期トルクについても考慮をせねばならないこと、スロット数を変えたときに加振力の周波数が電動機構造物の共振と一致させぬように、注意する必要があること、が記載されている(上記3-4(3)(A)イ.参照)。
(v)上記(i)(iv)より引用文献3は、モータ設計に際して、モータの加振源の周波数が機械系と共振しないようにステータ数等の選定をすることを示唆する。

(1-2-1-2)上記(ii)より、引用発明1におけるエレベータ装置においても、乗り心地の悪化防止の観点から、モータの加振源の加振周波数とエレベータ装置の機械的共振周波数とによる共振を避ける或いは抑制することは、当業者であれば設計上当然に考慮を要する事項である。

引用発明1に記載された発明におけるエレベータ装置は、永久磁石同期モータを駆動源に利用したものであるので、トルクリプルを発生させる加振源の周波数のうち主なものに、コギングトルク周波数、電流トルクリプル周波数があり、これらは、モータの極数とスロット数に依存するものである(上記(iii)参照)から、
トルクリプルを発生させる加振源の周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるように希求する当業者にあっては、モータの極数とスロット数の選定に際して、コギングトルク周波数・電流トルクリプル周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるようにすることは当然に希求することである。

ここで、エレベータ装置の構造と同期モータの性質の上からみて、エレベータ装置の駆動原として巻上機のシーブを直結した永久磁石同期モータにあっては回転数は、エレベータ速度により決まるものであり、永久磁石同期モータにあっては、上記(iii)のとおり、コギングトルク周波数、電流トルクリプル周波数は、モータの回転数に依存するものであるので、エレベータのかごが定格速度で運転される時のモータ回転数条件下におけるモータのコギングトルク周波数及び電流トルクリプル周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるように、モータの極数、スロット数、及び極数とスロット数の最小公倍数を選定することは、当業者であれば通常の設計能力を発揮して容易に為し得た事項である。(定格速度での運転は、通常、エレベータのかごが運転される時間(注:停止している時間を除く)のうち最も長い時間を占めるものであるから、エレベータのかごが定格速度で運転されるときのモータの加振源の加振周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と近くなるような選定をすることは、共振による乗り心地の悪化という問題を引き起こしてしまうおそれがあることは、当業者に明らかであり、エレベータのかごが定格速度で運転される時のモータ回転数条件下におけるモータのコギングトルク周波数及び電流トルクリプル周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍と一致するように、モータの極数、スロット数、極数とスロット数の最小公倍数を選定してしまうと、共振による乗り心地の悪化という問題を引き起こしてしまうおそれがあることが、当業者に明らかである。)

したがって、本件発明1の相違点1の構成は、引用文献1、3に記載された発明、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。


(1-2-2)相違点2について
ア.上記(1-2-1)のとおり、エレベータのかごが定格速度で運転される時のモータ回転数条件下におけるモータのコギングトルク周波数及び電流トルクリプル周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れるように、モータの極数、スロット数、及び極数とスロット数の最小公倍数を選定することは、当業者であれば通常の設計能力を発揮して容易に為し得た事項であり、
その際、モータの極数、スロット数、極数とスロット数の最小公倍数を増加させて、エレベータのかごが定格速度で運転される時のモータ回転数条件下における、モータのコギングトルク周波数及び電流トルクリプル周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数より高くなるように選定することは、当業者が当然に選択し得た事項であって、
この場合、永久磁石同期モータを巻上機のシーブに直結し駆動源としたエレベータ装置にあっては、モータの回転数は、エレベータ速度により決まるものであるから、上記1-2-1(iii)の関係より、必然的に、モータのコギングトルク周波数は、エレベータのかごが定格速度より低いいずれかの速度で運転される時点において、エレベータ装置の機械的共振周波数に一致してしまうことになり、モータの電流トルクリプル周波数についても、エレベータのかごが定格速度より低いいずれかの速度で運転される時点において、必然的に、エレベータ装置の機械的共振周波数に一致してしまうことになる。
これら、モータの電流トルクリプル周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度或いはモータのコギングトルク周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度とすること、及び定格速度の概略1/2以下とすることは、当業者が設計上困難性無く選択し得た程度の事項である。

イ-1.ところで、本件発明1において、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数である」とするのは、
(i)電流トルクリプルの観点では、「【0033】・・極数を更に多くしてトルクリプル周波数が機械的共振周波数と一致する速度を極めて小さくして、起動直後、および停止直前に機械的共振周波数と一致するようにしたものである。これにより、かごのドア開閉に近接した起動,直後,停止直前にのみかご振動が生じるようにするので、かご振動が乗客には感じにくく、かご振動があっても、さほど不快感を与えないという効果がある。」との記載に基づくものであり、永久磁石同期モータの極数の多極化に基づくものであり、
(ii)コギングトルク観点では、「【0042】一回転あたりのコギングトルクを25以上とするには、具体的は、トルクリプルの観点から極数を10とすると、最小公倍数が60となるスロット数12,最小公倍数が30となるスロット15などを選択すればよい。」との記載にみられるように、永久磁石同期モータの極数とスロット数をその最小公倍数がある程度大きくなるように選定することに基づくものである。

イ-2.引用発明1においては、具体的に極数は特定されていないものの、永久磁石同期モータの極数は多極化されたものである。そして、エレベータ装置の永久磁石同期モータの極数を多極化するに際して、16極あるいはそれ以上とすることが周知の技術的事項である(3-5-1周知の技術的事項A参照)。

イ-3.また、(i)引用文献1においては、極数、スロット数はトルク脈動特性の向上も考慮して選定するものであり、
(ii)永久磁石同期モータのコギングトルク周波数は、一般にモータ一回転につきモータの極数とスロット数の最小公倍数であり、コギングトルクによるトルク脈動の振幅は、最小公倍数が大きいほど小さくなることが周知の技術的事項であり(3-5-3周知の技術的事項C)、
(iii)永久磁石同期モータの極数を多極化し、16極あるいはそれ以上とするに際しての、極数とスロット数選択の具体例として、「極数16、スロット数12、最小公倍数48」、「極数20、スロット数15、最小公倍数60」は、周知例の一つである(3-5-4周知の技術的事項D)から、
引用文献1に記載の永久磁石同期モータの極数を多極化するエレベータ装置において、極数とスロット数選択の具体例として、「極数16、スロット数12、最小公倍数48」、あるいは「極数20、スロット数15、最小公倍数60」を想定することは、当業者が適宜になし得ることである。

イ-4.本件の訂正明細書には、「【0022】トルクリプル周波数を考えてみる。ここで、永久磁石モータが相数3,極数Pでは、1回転あたり3Pとなるので、・・」と記載があり、これに基づく電流トルクリプル周波数ft(Hz)は、モータ回転数n(rpm),極数Pとした場合、
ft=3P*n/60 である。
同じく、本件の訂正明細書には、「【0037】・・モータ1回転あたりのコギングトルクの数Ncを求めると、極数Pとスロットル数Mの最小公倍数となる。・・」と記載があり、これに基づくコギングトルク周波数fc(Hz)は、モータ回転数n(rpm),極数Pとスロット数Mの最小公倍数F(P,M)とした場合、
fc=最小公倍数F(P,M)*n/60 である。

イ-5.引用文献1の「表1 巻上機の仕様」の2機種の電動機(モータ)の「定格速度 120、150m/min 電動機出力 25kw 電動機(モータ)回転数 157rpm」、「定格速度 180〜240m/min 電動機出力 40kw 電動機(モータ)回転数 251rpm」(上記3-4(1)(A)エ.参照)において、
極数とスロット数選択の具体例として、上述の、「極数16、スロット数12、最小公倍数48」、あるいは「極数20、スロット数15、最小公倍数60」を想定すると、
モータ回転数157rpm、極数16、スロット数12の場合で、
ft=125.6(Hz) fc=125.6(Hz)
モータ回転数157rpm、極数20、スロット数15の場合で、
ft=157(Hz) fc=157(Hz)
モータ回転数251rpm、極数16、スロット数12の場合で、
ft=200.8(Hz) fc=200.8(Hz)
モータ回転数251rpm、極数20、スロット数15の場合で、
ft=251(Hz) fc=251(Hz)
である。

イ-6.エレベータ装置の機械的共振周波数が、一般に数Hz〜十数Hz程度であり、高層建築においては、エレベータ装置の一次の共振周波数が1Hz前後〜数Hzであること(周知の技術的事項B)を踏まえ、
電流トルクリプル周波数ft(=3P*n/60)やコギングトルク周波数fc(=最小公倍数F(P,M)*n/60)が1Hz〜15Hzとなるモータ回転数nを求めると、

極数16、スロット数12の場合で、
ft=1Hzとなるのは→ n=1.25rpm
fc=1Hzとなるのは→ n=1.25rpm

ft=15Hzとなるのは→n=18.75rpm
fc=15Hzとなるのは→n=18.75rpm

極数20、スロット数15の場合で、
ft=1Hzとなるのは→ n=1rpm
fc=1Hzとなるのは→ n=1rpm

ft=15Hzとなるのは→n=15rpm
fc=15Hzとなるのは→n=15rpm

と、ごく低い回転数であり、これに対応するかごの速度もごく低い速度であって、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度であると言うことができる。

(本件訂正明細書0025段落に記載の5Hz、20Hzにft、fcがなるモータ回転数nも、
極数16、スロット数12の場合で、
ft=5Hzとなるのは →n=6.25rpm
fc=5Hzとなるのは →n=6.25rpm
ft=20Hzとなるのは →n=25rpm
fc=20Hzとなるのは →n=25rpm
極数20、スロット数15の場合で、
ft=5Hzとなるのは →n=5rpm
fc=5Hzとなるのは →n=5rpm
ft=20Hzとなるのは→n=20rpm
fc=20Hzとなるのは→n=20rpm
と、やはりごく低い回転数である。)

イ-7.以上より、引用文献1に記載のエレベータ装置における永久磁石同期モータの極数・スロット数選択の具体例として、上述の、「極数16、スロット数12、最小公倍数48」、あるいは「極数20、スロット数15、最小公倍数60」を想定したものは、
かごが定格速度で運転される時の永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から大きく外れ、かつ、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するような、極数とスロット数の永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置であることが明らかである。

イ-8.このように、引用発明1の如く永久磁石同期モータの極数が多極化された永久磁石同期モータを用いるエレベータ装置において、
周知の技術的事項Aにより極数を16極以上の多極とし、
周知の技術的事項Cによりコギングトルクによるトルク脈動の低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保するスロット数を選択することで、
かごが定格速度で運転される時の永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から大きく外れ、かつ、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するようなものとすることは、当業者が何らの困難性なくなし得たものである。

イ-9.さらに言うと、磁極を一定(例えば16極)以上多極化する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置において、コギングトルクによるトルク脈動の低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保するスロット数を選択することは、常套手段であり、上記で示したのと同様の計算を行えばすぐに確認できるように永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数は、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、エレベータ装置の機械的共振周波数と一致することが、エレベータの定格速度が遅い一部の場合を除きむしろ普通のことである。
そして、特に、高層建築用の長行程の高速エレベータに用いられる場合においては、磁極を一定以上多極化する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置であって、コギングトルクによるトルク脈動低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保できるスロット数を選択するという常套手段を採用したごく一般的なもののトルクリプルの周波数は、通常自ずと起動直後および停止直前の速度においてエレベータ装置の機械的共振周波数と一致せざるを得ないものである。

ウ.したがって、本件発明1の相違点2の構成は、引用文献1、3に記載された発明、周知の技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものである。


(1-2-3)特許権者は「前記かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するような、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数である」という構成を備えることにより、「かごのドア開閉に近接した起動直後、停止直前にのみかご振動が生じるようにするので、かご振動が乗客には感じにくく、かご振動があっても、さほど不快感を与えない」という効果が達成される旨主張する。

しかしながら、上記構成及び上記効果は、磁極を一定以上多極化する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置であって、コギングトルクによるトルク脈動低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保できるスロット数を選択するという常套手段を採用したごく一般的なのものが、エレベータの定格速度が非常に遅い一部の場合を除き普通に備える構成・効果であり、特に高層建築用の長行程の高速エレベータに用いられる場合においては、むしろ通常は自ずと備えざるを得ない構成・効果であるので、上記効果は何ら格別のものとは言えない。


(1-2-4)まとめ
したがって、本件発明1は、引用文献1、3及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1のエレベータ装置において、更に永久磁石同期モータを「前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数1】 fm<NPv/(40πD) …(1)
の関係にあること」(以下、「構成【数1】」という。)と限定をするものである。
そして、本件発明2と引用発明1とは、前記(1-1)で挙げた一致点で一致し、前記(1-1)で挙げた相違点に加え、以下の点で更に相違する。

(相違点3)
本件発明2では、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,エレベータの機械的共振周波数fm(Hz)が、【数1】fm<NPv/(40πD)の関係にある」のに対して、引用発明1では、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,エレベータの機械的共振周波数fm(Hz)が【数1】fm<NPv/(40πD)の関係にある」ことの明記がない点。

以下、上記相違点3について検討する。

(相違点3について)
ア.本件訂正明細書0022-0023段落、0028-0031段落の記載からみて、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,エレベータの機械的共振周波数fm(Hz)が、【数1】fm<NPv/(40πD)の関係にある」ことは、「永久磁石同期モータの電流トルクリプル周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を定格速度の概略1/2以下とする」ことを演算式の関係で特定することに他ならない。
本件発明2が引用する本件発明1のエレベータ装置は、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数である」ことを、構成要件とするものであり、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度」は、「定格速度の概略1/2以下」の速度よりも低い速度であると解されるので、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数である」ものであれば、「永久磁石同期モータの電流トルクリプル周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を定格速度の概略1/2以下とする」ものに該当すると認められるから、永久磁石同期モータを構成【数1】とする限定は、形式的なものであって、実質的なものではない。

イ.また、上記(1-2-2)で述べたとおり、電流トルクリプル周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を、具体的に定格速度の概略1/2以下とすることは、当業者が設計上困難性無く選択し得た程度の事項であり、また演算式の関係で特定する点も設計的事項に過ぎない。

ウ.さらに、引用発明1の如く永久磁石同期モータの極数が多極化された永久磁石同期モータを用いるエレベータ装置において、周知の技術的事項Aにより極数を16極以上の多極とし、かごが定格速度で運転される時の永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から大きく外れ、かつ、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じる電流トルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するようなものとすることは、当業者が何らの困難性なくなし得たものであり、磁極を一定(例えば16極)以上多極化する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置においては、永久磁石同期モータは構成【数1】の関係にあることが、エレベータの定格速度が遅い一部の場合を除きむしろ普通のことである。

エ.以上より、本件発明2の相違点3の構成に困難性は認められない。
したがって、本件発明2は、引用文献1、3及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2のエレベータ装置において、更に永久磁石同期モータを「前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数2】 fm<FNv/(120πD) …(2)
の関係にあり、Fは極数Pとスロット数Mの最小公倍数であること」(以下、「構成【数2】」という。)と限定をするものである。
そして、本件発明3と引用発明1とは、前記(1-1)で挙げた一致点で一致し、前記(1-1)で挙げた相違点に加え、以下の点で更に相違する。

(相違点4)
本件発明3では、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,極数Pとスロット数Mの最小公倍数Fとすると、エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)が、【数2】fm<FNv/(120πD)の関係にある」のに対して、引用発明1では、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,極数Pとスロット数Mの最小公倍数Fとすると、エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)が、【数2】fm<FNv/(120πD)の関係にある」ことの明記がない点。

以下、上記相違点4について検討する。

(相違点4について)
ア.本件訂正明細書0037-0041段落の記載からみて、「永久磁石同期モータの極数P、巻上機のシーブ径D(m)、エレベータの定格速度v(m/min),ローピングN:1,極数Pとスロット数Mの最小公倍数Fとすると、エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)が、【数2】fm<FNv/(120πD)の関係にある」ことは、「永久磁石同期モータのコギングトルク周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を定格速度の概略1/2以下とする」ことを演算式の関係で特定することに他ならない。
本件発明3が引用する本件発明1のエレベータ装置は、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数である」ことを、構成要件とするものであり、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度」は、「定格速度の概略1/2以下」の速度よりも低い速度であると解されるので、「かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数と一致するような、永久磁石同期モータの極数とスロット数である」ものであれば、「永久磁石同期モータのコギングトルク周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を定格速度の概略1/2以下とする」ものに該当すると認められるから、永久磁石同期モータを構成【数2】とする限定は、形式的なものであって、実質的なものではない。

イ.また、上記(1-2-2)で述べたとおり、コギングトルク周波数がエレベータ装置の機械的共振周波数に一致するエレベータ速度を、具体的に定格速度の概略1/2以下とすることは、当業者が設計上困難性無く選択し得た程度の事項であり、また演算式の関係で特定する点も設計的事項に過ぎない。

ウ.さらに、引用発明1の如く永久磁石同期モータの極数が多極化された永久磁石同期モータを用いるエレベータ装置において、周知の技術的事項Aにより極数を16極以上の多極とし、周知の技術的事項Cによりコギングトルクによるトルク脈動の低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保するスロット数を選択することで、
かごが定格速度で運転される時の永久磁石同期モータで生じるコギングトルクの周波数が、エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から大きく外れ、かつ、かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、永久磁石同期モータで生じるコギングトルクの周波数が前記機械的共振周波数と一致するようなものとすることは、当業者が何らの困難性なくなし得たものであり、磁極を一定(例えば16極)以上多極化する永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置であって、コギングトルクによるトルク脈動低減のために磁極とスロット数の最小公倍数の大きさを確保できるスロット数を選択するという常套手段を採用したものにおいては、簡単な計算を行えばすぐに確認できるように永久磁石同期モータは構成【数2】の関係にあることが、エレベータの定格速度が遅い一部の場合を除きむしろ普通のことである。

エ.以上より、本件発明3の相違点4の構成に困難性は認められない。
したがって、本件発明3は、引用文献1、3及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1から3のいずれかのエレベータ装置において、更に永久磁石同期モータを「前記永久磁石同期モータと前記巻上機のシーブを直結したこと」と限定をするものである。
そして、本件発明4と引用発明1とは、前記(1-1)で挙げた一致点で一致し、前記(1-1)で挙げた相違点に加え、以下の点で更に相違する。

(相違点5)
本件発明4では、「永久磁石同期モータと巻上機のシーブを直結した」のに対して、引用発明1では、「永久磁石同期モータと巻上機のシーブを直結した」ことの明記がない点。

以下、上記相違点5について検討する。
(相違点5について)
引用文献1に記載のものは高速エレベータ用ギヤレス巻上機に関するものであるから、永久磁石同期モータと巻上機のシーブを直結したものであることは当業者に自明であり、さらに、永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置において、永久磁石同期モータと巻上機のトラクションシーブを直結構造とすることが、引用文献2に開示されているので、本件発明4の相違点5の構成は、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本件発明4は引用文献1-3に記載された発明、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1から4のいずれかのエレベータ装置において、更に永久磁石同期モータを「前記永久磁石同期モータは埋め込み型永久磁石の構造であること」と限定をするものである。
そして、本件発明5と引用発明1とは、前記(1-1)で挙げた一致点で一致し、前記(1-1)で挙げた相違点に加え、以下の点で更に相違する。

(相違点6)
本件発明5では、「前記永久磁石同期モータは埋め込み型永久磁石の構造であること」のに対して、引用発明1では、「前記永久磁石同期モータは埋め込み型永久磁石の構造であること」ことの明記がない点。

以下、上記相違点6について検討する。
(相違点6について)
永久磁石同期モータとして、埋め込み型永久磁石の構造は慣用されるタイプの1つであり、引用発明1の永久磁石同期モータとして埋め込み型永久磁石の構造を採用するかどうかは当業者が適宜に選択し得た設計的な事項に過ぎないものであるので、本件発明5の相違点6の構成は、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本件発明5は引用文献1-3に記載された発明、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.結論
以上のとおりであるから、本件発明1乃至5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件の(訂正後の)請求項1乃至5に係る発明についての特許は、取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石同期モータを駆動原とした巻上機、かご、ロープ、釣合重りとから構成されるエレベータ装置であって、前記かごが定格速度で運転される時の前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が、前記エレベータ装置の機械的共振周波数の近傍から外れ、かつ、前記かごのドア開閉に近接した起動直後および停止直前の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数が前記機械的共振周波数と一致するような、前記永久磁石同期モータの極数とスロット数であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数1】
fm<NPv/(40πD) …(1)
の関係にあることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータの極数をP、前記巻上機のシーブ径をD(m)、前記エレベータの定格速度をv(m/min),ローピングがN:1,エレベータの機械的共振周波数をfm(Hz)とすると、
【数2】
fm<FNv/(120πD) …(2)
の関係にあり、Fは極数Pとスロット数Mの最小公倍数であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータと前記巻上機のシーブを直結したことを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のエレベータ装置において、前記永久磁石同期モータは埋め込み型永久磁石の構造であることを特徴とする永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置に関わり、特に、エレベータ装置のかご振動を低減するのに好適な永久磁石同期モータの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
かご振動を低減する従来技術としては、例えば特開昭60-2580号公報に記載のように、インバータからモータへ供給される電流の周波数が変化し、モータのトルクリプルの周波数がエレベータの機械的共振周波数近傍に近づいた時に、インバータの周波数を急激に変化させ、機械的共振周波数を飛び越えさせる方式がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
エレベータのかご振動を抑制する従来技術の、インバータの周波数を変更してトルクリプルの周波数を変える方式は、インバータ周波数で決まる同期速度に対して負荷に応じたすべりを保って、同期速度より低い速度で回転する誘導モータを想定したものである。従って、インバータ周波数を変えても、トルク電流を制御し必要なすべりを保ち、所定の速度で回転させることができ、結果として、機械的共振周波数を避けるように、トルクリプルの周波数のみを変更できる。
【0004】
ところが、従来技術は永久磁石同期モータには適用できない。それは、永久同期モータはその名の通り、インバータ周波数で決まる同期速度でのみ回転するからである。すなわち、インバータ周波数はエレベータの速度で一様に決まってしまうので、インバータ周波数の変更はトルクリプルの周波数を変える手段にはならないのである。
【0005】
トルクリプルは、コギングトルクともう少し狭い意味でのトルクリプルに分けられる。コギングトルクは、永久磁石と相対するステータコアとの間に働く磁気的吸引力が、ステータコアの形状,永久磁石の形状の影響で、回転位置によって変動するために生じるトルク脈動のことを称している。永久磁石の磁束によるものなので、コイルの電流には無関係に存在しており、モータの駆動トルクが小さい時には大きな外乱となる。
【0006】
また、後者の狭い意味のトルクリプルと称するものは、電流を通電した際に生じる駆動トルクに重畳する脈動分を指す。これは、3相電流の転流時の電流の断続により発生する、いわゆる電流波形の高調波分により生じるものと、モータの磁束の高調波分により生じるものがある。
【0007】
そこで、永久磁石同期モータの従来技術では、極数とスロット数(突極数)を増加してコギングトルクやトルクリプルの周波数を高くする方法が知られている。
【0008】
従って、この手法を用いてエレベータの定格速度時のトルクリプルの周波数を機械的共振周波数より高くして、避けることが考えられる。
【0009】
しかし、トルクリプルの周波数は駆動周波数によって決まり、駆動周波数は起動時0から定格まで上昇し、停止時に定格から0まで減少するので、かならずどれかの周波数が、機械系の共振周波数に一致し、かご振動を生じせしめる。
【0010】
そこで、本発明では、トルクリプルの周波数が機械的共振周波数と一致する速度を定格速度の近傍からずらし、更にかご振動が生じても、乗客に不快感を与えない速度となるように、巻上機と直結した永久磁石同期モータの極数を選択することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、巻上機のシーブに永久磁石同期モータを直結したエレベータ装置において、定格速度の近傍より十分低い、定格速度の略1/2以下の速度において、前記永久磁石同期同期モータで生じるトルクリプル、およびコギングトルクの周波数が前記機械的共振周波数と一致するように、前記永久磁石同期モータの極数ならびにスロット数を選定することにより解決される。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施例の永久磁石モータの断面構造概略図を示す。固定子1にコイル2が巻かれ、回転子3に永久磁石4が固定される。固定子1の突極数(スロット数、あるいはティース数)はM、永久磁石の極数をPとすると。
【0013】
図2に本発明の実施例の永久磁石同期モータを直結した巻上機を用いたエレベータ装置を示す。
【0014】
図2のエレベータは、図1のモータを組み込んだ巻上機17,かご22,カウンタウェイト16を昇降路21内に配置し、かご22,カウンタウェイト16はそれぞれガイドレールにより上下方向に移動可能に案内されており、昇降路21の頂部に固定端19の一方に一端を固定したロープ12を、かご22の下部に設けた2個のプーリ15,巻上機17のシーブ、およびカウンタウェイト16の上部に設けたプーリ18を介して、固定端19の他方にロープ12の他端が固定されている。
【0015】
従って、先の永久磁石モータが回転することにより、巻上機17はロープ12を駆動し、これによりかご22が上下動し、エレベータとして動作する。
【0016】
図3に図2のエレベータ装置の速度パターンを示す。以下の説明では、煩雑になることを避けるために、コギングトルクには触れず、トルクリプルとかご振動との関係を論じて、本発明の実施例の構成と効果を述べる。
【0017】
上から、速度,加速度,トルク,トルクリプル周波数のそれぞれの時間変化を示したものである。速度カーブは加速領域と定速領域に分けられる。加速,減速領域では、所定の加速度,減速度になるように制御される。この例は、かご上昇で満員の時のトルク変化を示している。従って、トルクT2は、加速分のトルクに満員分のアンバランス質量に応じたトルクが加わり、通常、定格トルクの2倍以上となる。トルクリプル周波数は、速度に比例して変化する。
【0018】
従って、トルクリプル周波数が、エレベータのロープ,かごおよびカウンタウェイトを含めた機械系の共振周波数に一致するとかご振動が発生する。
【0019】
かご振動が、乗客にとって最も不快に感ずるのは、定速走行時に持続して発生することである。これを防止するには、定速走行時のトルクリプル周波数をエレベータの機械系の共振周波数からずらすことが効果的な手段である。
【0020】
そこで、本発明の実施例では、極数を選定する際に、定格速度の概略1/2以下の速度で機械系の共振周波数と一致させるので、定格速度近辺のトルクリプル周波数は、機械系の共振周波数より十分高いので、かご振動が生じることがない。
【0021】
更に、本発明の永久磁石モータで、定格速度の概略1/2以下の速度で、機械系の共振周波数と一致させるために、行った具体的な方策を説明する。
【0022】
まずトルクリプル周波数を考えてみる。ここで、永久磁石モータが相数3,極数Pでは、1回転あたり3Pとなるので、速度v(m/min),シーブ径D(m),ロープ比N:1では、トルクリプル周波数ft(Hz)は、
【0023】
【数3】
ft=3NPv/(60πD)=NPv/(20πD) …(3)
となる。
【0024】
一方、エレベータのロープ,かご,カウンタウェイトからなる機械系の共振周波数fmは、数Hzから十数Hzの範囲である。
【0025】
シーブ径D=400mm,ローピング2:1の場合で、トルクリプル周波数が5Hz、および20Hzに相当する速度vを、極数Pに対して算定すると、図4に示すようなグラフとなる。図の上側の曲線が周波数20Hzの場合、下側の曲線が周波数5Hzの場合である。従って、エレベータの定格速度がこの2つの曲線の間にある場合は、まさに機械系共振周波数とトルクリプル周波数が一致するので、大きなかご振動が発生し易いことになる。
【0026】
低中層ビルのエレベータの速度は60m/min,45m/minが主流であるが、これに対して極数が10以下だと、まさしくエレベータの定格速度時にトルクリプル周波数が機械共振周波数に一致しやすく、極めて不快なかご振動が生じやすい。
【0027】
これに対し、本発明の実施例では、極数を選定する際に、定格速度の概略1/2以下の速度で機械系の共振周波数と一致させる。例えば、エレベータの定格速度が60m/minで、考慮すべき機械系の共振周波数が20Hzであったとすると、その定格速度の略1/2の速度、すなわち30m/min以下で機械共振周波数と一致する極数を選定して、8極や10極以上とする。こうすれば、定格速度付近でトルクリプル周波数が機械共振周波数と一致することもなく、かご振動が小さく良好な乗り心地が得られる。
【0028】
この場合、先のトルクリプル周波数ftを定格速度時で計算すると、エレベータの機械共振周波数fmとの関係は、
【0029】
【数4】
fm<(1/2)ft …(4)
とすれば、定格速度の1/2の速度以下で、トルクリプル周波数が機械共振周波数と一致する。
【0030】
従って、(3)(4)式をまとめて、以下の条件となる。
【0031】
【数5】
fm<NPv/(40πD) …(5)
【0032】
従って、定格速度105m/min,90m/minでは、10極以上に選べば、機械共振周波数が20Hzとしても、トルクリプル周波数が機械共振周波数に一致するのは、定格速度の1/2以下の速度となり、良好な乗り心地を得ることができる。また、定格速度60m/min,45m/minでは極数を20から26以上に選べば、同様な効果を得ることができる。
【0033】
図6にその他の実施例におけるエレベータの動作波形を示す。これは、図5の実施例よりも、極数を更に多くしてトルクリプル周波数が機械的共振周波数と一致する速度を極めて小さくして、起動直後、および停止直前に機械的共振周波数と一致するようにしたものである。これにより、かごのドア開閉に近接した起動,直後,停止直前にのみかご振動が生じるようにするので、かご振動が乗客には感じにくく、かご振動があっても、さほど不快感を与えないという効果がある。図7にその他の実施例の永久磁石同期モータの断面図を示す。これは、図1の実施例と永久磁石の取り付け方が異なるもので、永久磁石を回転子ヨークに埋め込んだ、いわゆる埋め込み磁石型のモータである。図1の永久磁石がギャップに直接面した、いわゆる表面磁石型のモータでは、永久磁石をヨークに精度良く固定するために、専用の取り付け部材や、接着剤が必要であるのに対して、この実施例の埋め込み型のモータでは、ヨーク内に挿入すれば位置も自ずと定まり、特に固定用の部材を必要としないので、永久磁石の固定が容易であるという製作上の長所がある。
【0034】
しかしながら、永久磁石の部分と、ヨークのみの部分で、磁気抵抗が異なるので、ギャップ磁束に高調波成分が多くなり易い。従って、表面磁石型よりもトルクリプルが生じ易い。このため、トルクリプルのかご振動への影響は、より大きいので、本実施例のように極数を増加して、トルクリプルの周波数が定格速度の1/2以下で機械的共振周波数に一致するようにすれば、かご振動が生じる時間が短く、乗客に不快感を与えにくく、良好な乗り心地を得られるという効果がある。
【0035】
以上、トルクリプルに着目して本発明の実施例を説明してきたが、コギングトルクについても同様な構成として同様な効果を得ることができる。ただし、コギングトルクの周波数が、トルクリプルの周波数と異なることと、コギングトルクの周波数には極数のみならずスロット数も関係してくるので、その点を考慮した極数とスロット数を選定することが必要である。
【0036】
以下に、図1の実施例を元にその要点を説明する。
【0037】
まず、モータ1回転あたりのコギングトルクの数Ncを求めると、極数Pとスロット数Mの最小公倍数となる。Fを最小公倍数を得る関数として、次式で表す。
【0038】
【数6】
Nc=F(P,M) …(6)
先に、トルクリプルは極数の3倍としたが、これは、3相のそれぞれの電流の転流時に生じるリプルが支配的であるためである。例えば、4極,12スロットのモータを考えると、トルクリプルは1回転12個,コギングトルクも4と12の最小公倍数で12個となり、同じ周波数となる。4極の場合は、トルクリプルの説明で述べたように、定格速度付近でかご振動を発生させるので、良好な乗り心地を損なうおそれがある。この場合のコギングトルクも同様に、乗り心地に悪影響を与えるだろう。
【0039】
コギングトルク周波数fcを算出すると、次式となる。
【0040】
【数7】
fc=F(P,M)Nv/(60πD) …(7)
従って、先に述べた、トルクリプル周波数に対するエレベータの機械的共振周波数の関係と同様に、機械的共振周波数fmに対して、コギングトルク周波数が以下の関係を保てば、定格速度付近でかご振動が生じることもなく、良好な乗り心地を得ることができる。
【0041】
【数8】
fm<F(P,M)Nv/(120πD) …(8)
例えば、シーブ径D=0.4mで、ローピングN=2,速度v=60m/minでは、機械的共振周波数fm=20Hzに対して、一回転あたりのコギングトルクNcを25以上とすれば、(8)式を満足し、定格速度付近でコギングトルク周波数が機械的共振周波数に一致しないので、良好な乗り心地を得られる。
【0042】
一回転あたりのコギングトルクを25以上とするには、具体的には、トルクリプルの観点から極数を10とすると、最小公倍数が60となるスロット数12,最小公倍数が30となるスロット数15などを選定すればよい。
【0043】
また、コギングトルクは、埋め込み磁石型の永久磁石同期モータでも発生し、磁石側にも突極性ができることから、より一層コギングトルクが大きくなる可能性が大きい。従って、本発明を用いることにより、より大きな効果が得られるであろう。
【0044】
本発明の効果として、かご振動に着目したが、トルクリプルはモータ,巻上機に振動を生じせしめるので、騒音の原因ともなる。従って、本発明のように、トルクリプル周波数を、定格速度近傍からずらすことにより、長時間に渡って振動が生じないので、騒音が低下するという効果もある。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、巻上機のシーブに永久磁石同期モータを直結したエレベータ装置において、定格速度の近傍より十分低い、定格速度の略1/2以下の速度において、前記永久磁石同期モータで生じるトルクリプルの周波数がエレベータの機械的共振周波数と一致するように、前記永久磁石同期モータの極数を選定するので、定格速度付近では、トルクリプル周波数がエレベータの機械的共振周波数から大幅に異なるので、かご振動が発生せず、良好な乗り心地が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例の永久磁石モータの横断面図である。
【図2】
本発明の実施例の永久磁石モータを巻上機に組み込んだエレベータ装置の鳥瞰図である。
【図3】
本発明の実施例のエレベータ装置の走行波形を示す概略特性図である。
【図4】
本発明の実施例の永久磁石モータの極数とエレベータ速度の関係を説明するために用いる特性図である。
【図5】
本発明の実施例の永久磁石モータの極数とエレベータ速度の関係を説明するために用いる特性図である。
【図6】
本発明の他の実施例のエレベータ装置の走行波形を示す概略特性図である。
【図7】
本発明の他の実施例の永久磁石モータの横断面図である。
【符号の説明】
1…固定子コア(ティース)、2…コイル、3…永久磁石、4…回転子バックヨーク、17…巻上機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-01 
出願番号 特願平10-113022
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H02K)
P 1 651・ 853- ZA (H02K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安池 一貴  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 岩本 正義
村上 哲
登録日 2003-05-02 
登録番号 特許第3424551号(P3424551)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 永久磁石同期モータを用いたエレベータ装置  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ