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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1111119
異議申立番号 異議2003-72214  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-04 
確定日 2004-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3383308号「硬質ポリウレタンフォームの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3383308号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯

本件特許第3383308号は、出願日が平成5年7月22日(優先日 平成4年8月4日 ドイツ)であって、平成14年12月20日に特許権の設定登録がなされ、旭硝子株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由を通知したところ、その指定期間内に意見書が提出されるとともに訂正請求がなされたものである。

[2]訂正の適否

1.訂正事項
訂正請求における訂正事項は以下のとおりである。
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1中の「適宜ハロゲン置換されたC1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキル」を「C1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキル」と訂正する。
訂正事項b:明細書第2頁第15行〜第3頁下から第11行中の「適宜ハロゲン置換されたC1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキル」(特許公報第4欄第26〜27行参照)を「C1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキル」と訂正する。

2.訂正の目的・範囲の適否、拡張・変更の有無
訂正事項aは、可溶化剤(4)の式のうちR1〜R3の中からハロゲン置換されたものを削除する訂正であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項bは、訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合しなくなることを解消するための訂正であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、明りょうでない記載を釈明するものである。
また、訂正事項a、bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]本件発明

本件の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、訂正明細書の請求項1〜4に記載された下記のとおりのものと認める。
「1. (1)ポリイソシアネートを、
(2)イソシアネートに対し活性な少なくとも2個の水素原子を有する分子量92〜10,000の化合物と、
(3)発泡剤としてのヒドロフルオロアルカンおよび
(4)可溶化剤
の存在下に、必要に応じ
(5)それ自体公知の他の助剤および添加剤の存在下に
反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、可溶化剤(4)として式:

[式中、R1〜R3はC1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキルを示す]
で示されるホスフェートを使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
2. 可溶化剤としてトリエチルホスフェートまたはトリブチルホスフェートを使用することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の方法。
3. 可溶化剤を成分(2)の100重量部当り1〜10重量部の量にて使用することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の方法。
4. 発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを使用することを特徴とする請求の範囲第1〜3項のいずれか一項に記載の方法。」

[4]特許異議の申立ての理由の概要

特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証(欧州特許出願公開第432,672号明細書)、甲第2号証(特開平4-298544号公報)、甲第3号証(米国特許第4,704,411号明細書)、甲第4号証(特開平2-29440号公報)、甲第5号証(特開平3-231917号公報)、甲第6号証(特開平2-86635号公報)、甲第7号証(Journal of Applied Polymer Science,Vo1.28,p.431-435(1983))を提出し、概略、次の理由a、bを主張している。
理由a:訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
理由b:訂正前の請求項1〜4に係る発明は、甲第1、3〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
なお、甲第2号証は、甲第1号証の理解のために提出されたものである。

[5]特許異議の申立てに対する判断

1.本件発明1について
本件発明1は、発泡剤としてヒドロフルオロアルカンを使用する硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、可溶化剤(4)として、請求項1に記載された特定の式で示されるホスフェート(以下「本件ホスフェート」という。)を使用する発明であり、本件ホスフェートを使用することにより、ヒドロフルオロアルカンのポリオールに対する溶解度が高められるという効果を奏するものと認められる。なお、本件発明1は「イソシアネートに対し活性な少なくとも2個の水素原子を有する分子量92〜10,000の化合物」(以下「(2)成分」という。)を使用するものであり、これはポリオールとは限らない。しかし、請求項1に本件ホスフェートを可溶化剤として記載している以上、(2)成分がポリオールを含まない場合等であって本件ホスフェートがヒドロフルオロアルカンの可溶化剤として機能しない場合は本件発明1に含まれないものと認める。
そこで、ヒドロフルオロアルカンと、可溶化剤である本件ホスフェートを併用する観点から甲第1、3〜7号証を検討する。
甲第1号証の請求項1には「ポリイソシアネート、イソシアネート基に対し反応性の少なくとも2個の水素原子を有する化合物、発泡剤及び、場合により別の添加剤を反応させて、ポリイソシアネートを基体とするフォームを製造するに当たり、少なくとも10モル%の程度まで一般式I
CaHbFc
(式中、a=4〜6、b=1〜12及びc=2〜13である)で示される、1又は多数のフルオロアルカンから構成されている発泡剤を使用することを特徴とする方法」(訳文)が記載され、例4〜6には、トリクロルエチルホスフエートを使用した実施例が記載されているが、甲第1号証には、本件ホスフェートについては記載も示唆もされていない。
甲第3号証の請求項1には、発泡剤、重合剤および界面活性剤の存在下、特定構造を持つポリオールとポリイソシアネートを反応させる工程を含む硬質ポリウレタンフォームの製造方法が、請求項10には、追加のポリオール成分、発泡剤、界面活性剤、難燃化剤およびポリイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種と、特定構造を持つポリオールとを含む、硬質ポリウレタンフォーム製造用の前駆体組成物が、第3欄第54〜58行には、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェートやトリエチルホスフェートを難燃剤として配合することが記載されているが、甲第3号証には本件ホスフェートをヒドロフルオロアルカンと併用することについての記載はなく、また、本件ホスフェートがヒドロフルオロアルカンの可溶化剤であることを示唆する記載もない。
甲第4号証の請求項1には「膨張剤を用いて独立気泡発泡体を製造する方法において、膨張剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンを用いることを特徴とする上記方法」と記載され、第3頁右上欄第13行〜第3頁左下欄第12行には「(5)助剤および添加剤が随意に用いられ、これらのものには次のものがある:・・・、公知の難燃剤(例えば、トリクレジルホスフェート)、・・・」と記載されているが、甲第4号証には本件ホスフェートについては記載も示唆もされていない。
甲第5号証の請求項13には「ポリオール、発泡剤、触媒、整泡剤及びその他の助剤を含むレジン原液と有機ポリイソシアナートを混合、反応させて、硬質ポリウレタンフォームを製造するに際して、該ポリオールに請求項1記載のポリオール(A)を用い、該発泡剤として、ハイドロクロロフルオロカーボン類およびハイドロフルオロカーボン類からなる群から選ばれた1種以上を含む発泡剤、及び必要により発泡助剤を用いることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法」と記載され、第12頁左下欄第16〜17行には「HFCとしてはHFC-134a・・・が挙げられる。」と記載され、第25頁の表-16には実施例101として、発泡剤としてHFC-134aを配合した例が記載され、第13頁右上欄第13〜18行には「又難燃剤として例えば、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、大八化学社製CR-505およびCR-507、アクゾ・ジャパン社製Fyrol-6等を使用することができる。」と記載され、第33頁左下欄の表-26には、難燃剤としてトリス(2-クロロエチル)ホスフェートを使用した実施例および比較例が記載されているが、甲第5号証には本件ホスフェートについては記載も示唆もされていない。
甲第6号証の請求項1には「(a)有機ポリイソシナアート(「有機ポリイソシアナート」の誤記と認める。)及び/或は変態有機ポリイソシアナートを、(b)少なくとも2個の反応性水素原子を有する少なくとも1種類の高分子化合物及び場合により(c)低分子量の鎖長伸展剤及び/或は架橋剤と、(d)発泡剤、(e)触媒、(f)助剤及び/或は添加剤の存在下に反応させることにより、ポリイソシアナート重付加法で合成樹脂気胞体を製造する方法であって、発泡剤(d)として、低沸点で、(a)乃至(c)に対して難溶性或いは不溶性の弗素化化合物であって、弗素化炭化水素、過弗素化炭化水素および六弗化硫黄及びこれらの混合物から成る群から選択されるものを、構成分(a)に、(b)に、(b)及び(c)に或は(a)及び(b)に乳化させることを特徴とする方法」と記載され、第10頁左下欄第1〜6行には「部分的弗素化アルカンとしては、・・が挙げられる。ことに好ましいのはヘプタフルオルプロパン、・・・である。」と記載され、第13頁右下欄第7〜12行には「(f)ポリイソシアナート重付加法により気胞含有合成樹脂製造のための反応混合物は、・・・難燃化剤、・・・などである。」と記載され、第14頁左下欄第3〜7行には「適当な難燃化剤は、例えばトリクンシルホスファート、トリス-2-クロルエチルホスファート、トリスークロルプロピルホスファート及びトリス-2,3-ジブロムプロピルホスファートである。」と記載され、第15頁左下欄第4行〜第16頁左上欄第1行にはトリクロルエチルホスファートを使用した実施例1が記載されているが、甲第6号証には本件ホスフェートについては記載も示唆もされていない。
甲第7号証の第431頁下から第9〜8行には「オリゴエステルアルコールとフレオン11との混和性はトリス(β-クロロエチル)ホスフェートの導入により高められる」(訳文)と記載されているだけで、本件ホスフェートに関しては何も記載されていない。
以上のとおり、甲第1〜7号証には、本件ホスフェートをヒドロフルオロアルカンと併用することについての記載はなく、本件ホスフェートがヒドロフルオロアルカンの可溶性を高めることを示唆する記載もない。
特許異議申立人は、甲第7号証の記載から、当業者であれば、従来公知の難燃化剤であるリン酸トリエステル類を用いることにより、ポリオールに対する部分弗素化された炭化水素の溶解度の増大を容易に想到できると主張しているが、上記のとおり、甲第7号証には本件ホスフェートについて記載も示唆もされていないから、この特許異議申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1、3〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

2.本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、発泡剤としてのヒドロフルオロアルカン又はその下位概念化合物を使用する硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、可溶化剤である本件ホスフェート又はその下位概念化合物を使用する発明である。
そして、本件発明2〜4も、上記「1.」に記載した理由と同様の理由により、甲第1、3〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

3.まとめ
したがって、特許異議申立人が主張する理由a、bは採用できない。

[6]取消理由の概要、及び、取消理由に対する判断

当審が通知した取消理由の概要は、訂正前の請求項1、3、4に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものであるが、該取消理由は、訂正によって解消したものと認める。

[7]むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由および取消理由によっては本件発明1〜4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めることはできない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硬質ポリウレタンフォームの製造方法
【発明の詳細な説明】
独立気泡のポリウレタン硬質フォームは永年にわたりその優れた断熱性により工業プラント、タンク貯槽、配管、造船などにおける冷却装置および冷凍装置の断熱、並びに建築工業における多くの断熱に使用されている。
独立気泡を有するポリウレタン硬質フォームの熱伝導性は、用いた発泡剤もしくは気泡ガスの種類に著しく依存する。従来、これには過ハロゲン化フルオロクロロ炭化水素(FCKW)が特に適すると判明しており、特にトリクロルフルオロメタン(R11)は格別に低い熱伝導性を有する。この材料は化学的に不活性、無毒性かつ非燃焼性である。しかしながら、過ハロゲン化フルオロクロル炭化水素は成層圏における高安定性のため塩素の含有量に基づき成層圏に存在するオゾン層の破壊を伴う[たとえばモリナ、ロウランド・マチュア、第249巻(1974)、第810頁;ドイツ連邦議会諮問委員会「地球環境保護に関する対策」の第1回中間報告、1988年11月2日ドイツ連邦議会、研究報告、ボン]。
したがって、過ハロゲン化フルオロクロル炭化水素の代りに、たとえば1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンのような部分弗素化された炭化水素(ヒドロフルオロアルカン)をポリウレタンフォームを包含するプラスチックフォームの発泡剤として使用することが提案された(EP-PS 344 537号、US-PS4 931 482号参照)。
まだ少なくとも1個の炭素-水素結合を有するヒドロフルオロアルカンはもはや塩素原子を含有せず、したがってゼロのODP値(オゾン・デプリーション・ポテンシャル)を有する(参考R11:ODP=1)。
この物質種類の典型的な代表例は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン(R356)の他に1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)である。
部分弗素化された炭化水素はその化学構造に基づき極めて非極性であると共に、硬質フォーム製造に慣用されるポリオールに対し貧弱にしか混合しない。しかしながら、これは一般的な製造技術に重要な前提であり、ポリオール-およびイソシアネート成分は機械的に互いに混合される。
ポリオール成分は、反応性ポリエーテル-もしくはポリエステルポリオールの他に発泡剤およびたとえば活性化剤、乳化剤および安定化剤のような助剤をも溶解型で含有する。したがってポリオール側には一相混合物が存在する。
部分弗素化された炭化水素の低い溶解度は、たとえば市販処方物における新規な環境的に優しい化合物に対するR11のような慣用の発泡剤の当モル交換に際し、慣例的にはもはや処理しえない二相の形成をもたらす。
したがって本発明の課題は、部分弗素化された炭化水素によりR11を当モル置換した際に一相ポリオール成分が得られるようポリオールに対する部分弗素化された炭化水素の溶解度を増大させることにある。
驚くことに、所定の可溶化剤を添加すればポリオールに対する部分弗素化されたアルカンの溶解度が著しく増大することが突き止められた。
すなわち、本発明は、
(1)ポリイソシアネートを、
(2)イソシアネートに対し活性な少なくとも2個の水素原子を有する分子量92〜10,000の化合物と、
(3)発泡剤としてのヒドロフルオロアルカンおよび
(4)可溶化剤の存在下に、必要に応じ
(5)それ自体公知の他の助剤および添加剤の存在下に反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、可溶化剤(4)として式:

[式中、R1〜R3はC1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキルを示す]
で示されるホスフェートを使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
硬質ポリウレタンフォームを製造するため、出発成分として次のものを使用する:
1.脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族および複素環式ポリイソシアネート、たとえばW.シーフケン、ジャスタス・リービッヒス・アナーレン・デル・ヘミー、第562巻、第75〜136頁に記載されたもの、たとえば式
Q(NCO)n
[式中、nは2〜4、好ましくは2であり、
Qは2〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜15個、好ましくは5〜10コの炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜15コ、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または8〜15個、好ましくは8〜13個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基を示す]
を有するもの、たとえばDE-OS2 832 253号、第10〜11頁に記載されたようなポリイソシアネート。
一般に、技術的に容易に入手しうるポリイソシアネート、たとえば2,4-および2,6-トルイレンジイソシアネート並びにこれら異性体の任意の混合物(「TDI」)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、たとえばアニリン-ホルムアルデヒド縮合に続くホスゲン化により作成されるもの(「粗製MDI」)、さらにカルホジイミド基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、尿素基もしくはビウレット基を有するポリイソシアネート(「改変ポリイソシアネート」)、特に2,4-および/または2,6-トルイレンジイソシアネートから或いは4,4’-および/または2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから誘導されるような改変ポリイソシアネートが特に好適である。
2. 出発成分はさらに、イソシアネートに対し反応性の少なくとも2個の水素原子と一般に92〜10 000の分子量とを有する化合物である。これにはアミノ基、チオール基もしくはカルボキシル基を有する化合物の他に、好ましくはヒドロキシル基を有する化合物、特に2〜8個のヒドロキシル基を有する化合物、殊に200〜1200、好ましくは250〜500の分子量を有するもの、たとえば少なくとも2個、一般に2〜8個、好ましくは2〜6個のヒドロキシル基を有するポリエーテルおよびポリエステル、たとえば均質および気泡状ポリウレタンの製造につきそれ自体公知であるもの、並びにたとえばDE-OS 2 832 253号、第11〜18頁に記載されたものが挙げられる。
3. 発泡剤としては易揮発性の部分弗素化された炭化水素(ヒドロフルオロアルカン)が使用され、好ましくは1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン(R356)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)および/または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227)である。
必要に応じ、部分的に水および/または他の易揮発性の有機物質も発泡剤として同時使用される。
4. 本発明によれば既に挙げた可溶化剤を、好ましくは成分(2)の100重量部に対し1〜10重量部、特に3〜5重量部の量にて使用する。
好適化合物は、トリエチルホスフェートおよびトリブチルホスフェートである。
5. 必要に応じ、それ自体公知の他の助剤および添加剤、たとえば防炎剤、触媒およびフォーム安定化剤も同時使用される。
防炎剤としては、それ自体公知の防炎剤、好ましくは20℃にて液体の物質が使用される。
フォーム安定化剤としては特にポリエーテルシロキサン、殊に水溶性のものが挙げられる。これら化合物は一般に、酸化エチレンと酸化プロピレンとのコポリマーがポリジメチルシロキサン残基と結合したような構造を有する。この種のフォーム安定化剤は、たとえばUS-PS 2 834 748号、2 917 480号及び3 629 308号に記載されている。触媒としてはポリウレタン化学から自体公知の触媒、たとえば第三アミンおよび/または金属有機化合物が挙げられる。
さらに、たとえば酸性物質(たとえば塩酸もしくは有機の酸ハロゲン化物)のような反応遅延剤、たとえばパラフィンもしくは脂肪族アルコールまたはジメチルポリシロキサンのような自体公知の種類の気泡調整剤、並びに顔料もしくは染料、さらに老化-および風化-作用に対する安定化剤、柔軟剤、並びに制黴的および制細菌的に作用する物質、さらに充填剤、たとえば硫酸バリウム、珪藻土、煤または沈降炭酸石灰も同時使用することができる。
必要に応じ本発明により同時使用される表面活性添加剤およびフォーム安定化剤、並びに気泡調整剤、反応遅延剤、安定化剤、防炎性物質、柔軟剤、色素および充填剤、さらに制黴的および制細菌的に作用する物質の他の例、並びにこれら添加剤の使用および作用に関する詳細はクンストストッフ・ハンドブーフ、第VII巻、フィーウエーク・アンド・ホッホトレン編、カール・ハンサー・フェアラーク出版、ミュンヘン(1966)、たとえば第103〜113頁に記載されている。
本発明による方法の実施:
反応成分は本発明によればそれ自体公知の1工程法、プレポリマー法または半プレポリマー法で反応させ、たとえばUS-PS 2 764 565号に記載されたような機械的装置がしばしば使用される。本発明にも用いうる処理装置に関する詳細はクンストストッフ・ハンドブーフ、第VIII巻、フィーウエーク・アンド・ホッホトレン編、カール・ハンサー・ファアラーク出版、ミュンヘン(1966)、たとえば第121〜205頁に記載されている。
本発明によれば100〜300、好ましくは100〜130の指数範囲にて処理される。
本発明によればフォーム製造に際し、発泡は密閉金型内でも行うことができる。その際、反応混合物を金型中へ導入する。金型材料としては金属(たとえばアルミニウム)またはプラスチック(たとえばエポキシ樹脂)が挙げられる。
金型内で発泡性反応混合物が発泡して成形体を形成する。その際、金型発泡は成形部品がその表面に気泡構造を有するよう行うことができる。さらに成形部品が緻密なスキンと気泡性のコアとを有するよう行うこともできる。本発明によれば、この関係で形成されたフォームが金型を丁度満たすような量の発泡性反応混合物を金型中に導入するよう行うことができる。しかしながら、発泡性反応混合物をフォームにより金型内部を満たすのに必要であるよりも多量に金型中へ導入するよう行うこともできる。後者の場合、「過剰充填」として処理され、この種の方法はたとえばUS-PS 3 178 490号および3 182 104号から公知である。
金型発泡の場合は、しばしば自体公知の「外部離型剤」、たとえばシリコーン油が同時使用される。しかしながら、いわゆる「内部離型剤」も必要に応じ外部離型剤と混合して使用することができ、たとえばDE-OS 2 121 670号および2 307 589号から公知である。
好ましくは本発明によれば、冷蔵-および冷凍-装置が発泡される。
勿論、ブロック発泡により或いはそれ自体公知の二重ベルトコンベア法にしたがってフォームを作成することもできる。
さらに、本発明により得られる硬質フォームはたとえば建築、並びに遠隔暖房チューブおよびコンテナの断熱についても用途を有する。
実施例
基礎ポリオールと活性化剤と安定化剤と水とからなる100gのポリオール混合物を、層分離が生じるまで1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンと混合した。この量は、各ポリオール混合物における溶解度の限界濃度と呼ばれる。
たとえばポリオール混合物は、それぞれ95gの基礎ポリオールと1gの活性化剤(ジメチルシクロヘキシルアミン)と2gの安定化剤B8421(ゴールドシュミットAG社)と2gの水とで構成した。
さらに、上記ポリオール混合物(全量100g)に、本発明による可溶化剤としての乳化剤5gを添加した。
ポリオール1:蔗糖とプロピレングリコールと水と酸化プロピレンとに基づく850g/モルの平均分子量を有するポリオール、
ポリオール2:ソルビトールとプロピレングリコールと酸化プロピレンとに基づく750g/モルの平均分子量を有するポリオール、
ポリオール3:エチレンジアミンと酸化プロピレンとに基づく480g/モルの平均分子量を有するポリオール、
ポリオール4:トリエタノールアミンと酸化プロピレンとに基づく1100g/モルの平均分子量を有するポリオール。
ここで可溶化剤として用いた乳化剤は次の通りである:
1:プロピレンカーボネート
2:トチエチルホスフェート
3:ジオクチルフタレート
4:トリブチルホスフェート

本発明による実施例2および4並びに参考例である実施例1および3は極めて明らかに1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンのポリオールに対する可溶量が比較と対比して顕著に増大したことを示している。
ポリオールにおける発泡剤の可溶量が高いほど、それに基づいて作成された硬質フォームの気泡ガスの割合も高くなり、したがって熱伝導率も低くなる。
(57)【特許請求の範囲】
1. (1)ポリイソシアネートを、
(2)イソシアネートに対し活性な少なくとも2個の水素原子を有する分子量92〜10,000の化合物と、
(3)発泡剤としてのヒドロフルオロアルカンおよび
(4)可溶化剤
の存在下に、必要に応じ
(5)それ自体公知の他の助剤および添加剤の存在下に
反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、可溶化剤(4)として式:

[式中、R1〜R3はC1〜C12アルキルまたはC5〜C10シクロアルキルを示す]
で示されるホスフェートを使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
2. 可溶化剤としてトリエチルホスフェートまたはトリブチルホスフェートを使用することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の方法。
3. 可溶化剤を成分(2)の100重量部当り1〜10重量部の量にて使用することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の方法。
4. 発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを使用することを特徴とする請求の範囲第1〜3項のいずれか一項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-05 
出願番号 特願平6-504951
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 大熊 幸治
石井 あき子
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3383308号(P3383308)
権利者 バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 硬質ポリウレタンフォームの製造方法  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 柴田 康夫  
代理人 三和 晴子  
代理人 青山 葆  
代理人 青山 葆  
代理人 柴田 康夫  

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