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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1111155
異議申立番号 異議2003-70193  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-22 
確定日 2004-11-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3305818号「半導体製造装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3305818号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
特許第3305818号の発明についての出願は、平成5年6月28日に特許出願され、平成14年5月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人高橋学より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月30日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1中の「炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、」を、「炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられ、」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項2中の「該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、」を、「該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口を閉塞する炉口蓋と、」と、
又同中の「炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、」を、「炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられ、」と訂正する。
(3)訂正事項c
請求項3中の「前記ウェーハの処理は、」を、「複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、」と、
又同中の「ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理である請求項1又は請求項2の半導体製造装置。」を、「ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。」と訂正する。
(4)訂正事項d
請求項4中の「前記ウエーハの処理は、」を、「複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウエーハの処理は、」と、
又同中の「ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理てある請求項1又は請求項2の半導体製造装置。」を、「ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書段落【0010】を、「【課題を解決するための手段】本発明は、複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉ロフランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの内少なくとも1つのノズルを屈曲させてノズルの先端を近接させた半導体製造装置に係り、又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口を閉塞する炉口蓋と、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応カスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係り、又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係り、更に又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3とを導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉ロフランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係るものである。」と訂正する。
なお、下線部が訂正個所である。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項aは、請求項1において、反応炉の構成について、具体的に外管、内管、外管の下端に設けられた炉口フランジとを有することを限定し、ガス導入ノズルについて、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は内管よりも下方に設けられることを限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。そして、この点は、特許明細書段落【0003】欄の従来の技術の説明、及び図1、2の記載によって裏付けられている。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)上記訂正事項bは、請求項2において、半導体製造装置として、炉口を閉塞する炉口蓋を有することを限定し、反応炉の構成について、具体的に外管、内管、外管の下端に設けられた炉口フランジとを有することを限定し、ガス導入ノズルについて、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より炉口蓋に近い位置に設けられることを限定するものであって、
上記訂正事項cは、請求項3を請求項1、2の従属項であったものを独立項とし、反応炉の構成について、具体的に外管、内管、外管の下端に設けられた炉口フランジとを有することを限定し、ガス導入ノズルについて、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けられると共に、複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを限定するものであって、
又上記訂正事項dは、請求項4を請求項1、2の従属項であったものを独立項とし、反応炉の構成について、具体的に外管、内管、外管の下端に設けられた炉口フランジとを有することを限定し、ガス導入ノズルについて、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けられると共に、複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを限定するものであって、いずれも特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、これらの点は、特許明細書段落【0003】欄の従来の技術の説明、及び図1、2の記載によって裏付けられている。
したがって、訂正事項b〜dは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)上記訂正事項eは、上記特許請求の範囲の訂正に基づき訂正後の請求項と整合するよう発明の詳細な説明の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明に該当し、又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
上記II.で示したとおり上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明4」という)は、上記訂正に係る平成16年3月30日付の訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの内少なくとも1つのノズルを屈曲させてノズルの先端を近接させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口を閉塞する炉口蓋と、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項3】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウエーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3とを導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。」

2.刊行物に記載された発明
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1(特開平5-59555号公報)、刊行物2(特開平4-308086公報)及び刊行物6(特開平2-138733号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1
(1a)「【請求項1】反応室と、前記反応室内に設置され、被処理基板を支持する基板支持台と、前記反応室内に、ガス供給口の近傍で複数の反応性ガスが所定の角度をなして交わり混合されて、前記基板支持台上の被処理基板表面に導かれるように、先端が所定の角度をなして互いに近接せしめられた複数のガス導入管とを具備し、減圧下で前記反応性ガスを混合せしめ、前記被処理基板表面に薄膜形成あるいはエッチングを行う表面処理装置。」
(1b)従来の技術に関し、「【0004】しかしながら近年、半導体基板の大口径化に伴い、図3に示すように、反応容器内へのガス導入口1,2と試料基板との距離も小さくなる一方である。このため、ガス導入口付近の試料基板3上ではガスの混合比が均一にならず、その結果、試料基板面内での膜厚の均一性が、上部すなわちガス導入口から離れた位置にある試料基板に比べて低下するという問題があった。
【0005】【発明が解決しようとする課題】このように従来の減圧CVD装置においては、ガス導入口付近ではガスの混合比が均一にならず、その結果、試料基板面内での膜厚の均一性が、悪いという問題があった。
【0006】なお、このような均一性低下の問題は、薄膜形成のみならず、2種類以上の反応性ガスを用いて行うエッチング等においても同様であった。」
(1c)「【0009】【作用】上記構成によれば、複数のガス導入管が先端近傍で、互いに所定の角度を成して交わるように近接せしめられているため、反応室へのガス供給口の近傍で複数の反応性ガスが所定の角度をなして噴出せしめられて交わり良好に混合されて、被処理基板表面に導かれ、ガス供給口近傍の基板表面でも均一な薄膜形成あるいはエッチングを行うことが可能となる。」
(1d)実施例として、「【0011】図1は、本発明実施例の減圧CVD装置の概略構成図である。
【0012】この減圧CVD装置は、反応容器10内に配設された基板支持台14に、互いに所定の間隔を隔てて平行にシリコン基板13が配列され、これらのシリコン基板13に向けてSiH2Cl2を供給する第1の導入管11とNH3を導入する第2の導入管12とがその先端で直交するように設置されていることを特徴とするものである。
【0013】他の部分については従来の装置と同様に形成されている。
【0014】すなわち、この装置は、1Torr反応容器10内に、被処理基板13を載置するとともに基板を所定の温度に維持するヒータを兼ねた基板支持台14を配設し、第1の導入管11と第2の導入管12との先端近傍で、ガスの噴射方向を交差させ良好に混合させて、基板支持台14表面に載置された被処理基板13上に導き、シリコン薄膜を形成するようにしたものである。ここでは、基板温度は800℃程度に維持するとともに、第1および第2のガス供給管からSiH2 Cl2 およびNH3 がそれぞれ1:10の割合で供給されるとともにガス排出口(図示せず)から排出され反応容器10内が1Torr程度の減圧状態を維持するようになっている。
【0015】この減圧CVD装置によれば、第1の導入管11と第2の導入管12との先端近傍で、ガスの噴射方向を交差させガスを良好に混合させて、被処理基板13上に導くことができるため、均一で信頼性の高い薄膜形成を行う事が可能となる。なお、前記実施例では、第1および第2のガス供給管を直交させるようにしたが、図2(a) および(b) に示すように、互いに鋭角または鈍角を成して交わるようにしても良い。ガス供給口と被処理基板との間が比較的長い場合には、図2(a) に示すようにを互いに鋭角をなすように設置するのがよい。一方ガス供給口と被処理基板との間が比較的短い場合には、図2(b) に示すように互いに鈍角をなして交わるように設置するのがよい。
【0016】さらにまた、図2(c) および(d) に示すように、3本以上のガス供給管を用いる場合にも適用可能である。」が記載されるとともに、図1には、反応容器10内に配設された基板支持台14に、互いに所定の間隔を隔てて平行にシリコン基板13が複数枚多段に配列され、第1のガス導入管11と第2のガス導入管12とが反応容器内の基板支持台14の下方に設けられていることが示されている。

(2)刊行物2
(2a)「【請求項1】フランジ部に支持された縦型炉芯管を持ち、炉芯管内にボートにより支持されたウエハースを入れ、減圧に保ちながら炉芯管内に前記フランジ部の内側面に設けた材料ガス導入部から材料ガスを導入してヒーター加熱し、気相成長を行うLPCVD装置において、材料ガスの導入部をフランジ部内側面の円周方向に沿って均等に1種類の材料ガス当り複数個設けたことを特徴とするLPCVD装置。」
(2b)「【0002】【従来の技術】従来のLPCVD装置は、縦型もしくは横型のいずれにおいても、1種類の材料ガス当り1個の材料ガス導入部を有しており、例えば窒化膜成長の場合、材料ガスはジクロールシランガスとアンモニアガスの2種類を、それぞれ別々の材料ガス導入部から炉内に流し、その2種類のガスがヒーターの熱エネルギーによりウエハース上で化学変化を起こし、窒化膜成長が行われていた。材料ガスは、炉芯管を固定するフランジ部にそれぞれ設けられた材料ガス導入部から炉芯管内に導かれていたが、一般にフランジに設けられる材料ガス導入部は、複数のガスを流し炉芯管内でミキシングする場合、フランジの対向する側に各々1個ずつ設置され、そこから炉芯管内のボートに支持されたウエハースに至るまでの間に複数のガスはミキシングされる構造になっていた。」
(2c)「【0003】【発明が解決しようとする課題】この従来のLPCVD装置の材料ガス導入方式では、1種類の材料ガス当り1個の導入部を有しており、それらはフランジの対向する内側面に各々設置されていた。しかし、窒化膜成長の場合を例にとれば、ジクロールシランガスとアンモニアガスの導入部を対向する内側面に設置すると、2個の導入部の距離が離れるため、炉内の縦方向に複数枚を平行にして入れたウエハースのうちの導入部に最も近い側のウエハースでは、材料ガスがまだ十分にミキシングされておらず、面内の膜厚均一性が悪いという問題があった。又、単に2個の導入部を近ずけた場合では、ガスは十分にミキシングされるものの、導入部が炉芯管の円周方向の一部に片寄るために、その片寄った側寄りのウエハースの面内で膜厚が厚くなってしまうという問題があった。」
(2d)「【0006】【実施例】・・。図1は本発明の実施例1の概略図で、同図(a)は縦断面図、同図(b)はそのフランジ部を示すA-A矢視図である。図(a)全体はLPCVD装置を表わし、縦方向にヒーター1が巻かれ、その内側にアウター側炉芯管2が入れられ、フランジ3の上面にアウター側炉芯管2の下部が固定されている。又、フランジ3の中程にはインナー側炉芯管4も固定され、さらにインナー側炉芯管4の内側には、ボート5によって固定されたウエハース6が入る。ボート5は、ガスのミキシング及び昇温のための助走部である保温筒7の上に乗せられ、保温筒7の下側にハッチ8がある。ハッチ8はフランジ3と密着できるように上下に動作可能で、ウエハース6をインナー側炉芯管4内に入れた後、ハッチ8と密着する。
【0007】フランジ3には真空引き用のポート9が設けられており、アウター側炉芯管2の中を真空に引く。フランジ3の下部には、1組の材料ガス導入部10が設けられ、ここからインナー側炉芯管4内に材料ガスを導入する。窒化膜成長を例にとれば、ジクロールシランガスの導入部10Aとアンモニアガスの導入部10Bを1組として3組設けてある。フランジ3内に入った材料ガスは、それぞれフランジ3内を一周する孔に沿って流れ、フランジ3内面の3組のガス導入部からインナー側炉芯管4内に導入される。このようにして、インナー側炉芯管4内に導入された材料ガスは、ミキシング及び昇温のための助走部である保温筒7を通り、ボート5上のウエハース6に到達し、ウエハース6上で窒化膜が成長する。余ったガスは、インナー側炉芯管4の上部からアウター側炉芯管2の内壁面に回り込んで、フランジ3の真空引き用ポート9から排出される。」が記載されるとともに、図1(a)には、材料ガス導入部10が左側外部からフランジ3の下部を貫通して水平状態でインナー側炉心管4と保温筒7との空間部にまで設けられていることが示されている。

(3)刊行物6
(3a)第1図を参照した実施例の説明には、「第1図は、本発明の一実施例の縦型熱処理装置の構成を示す説明図である。この縦型熱処理装置は、半導体ウエハをバッチ処理する縦型CVD装置を構成している。図中1は、縦型炉を構成する二重構造の反応管である。反応管1は、その長手方向を垂直にして設置されている。反応管1は、外管1aと、この外管1aと非接触状態の内管1bとで構成されている。」(3頁右上欄18行〜左下欄5行)
(3b)「反応管1の下端部は、蓋体10によって開閉自在になっている。また、反応管1の下端部には、排気管9が接続されている。・・・。蓋体10には、内管1bの内部に、所定の処理ガスを供給するためのガス供給管8が1本又は複数本取り付けられている。・・・。ガス供給管8から反応管1内に定められたプログラムにより所定の処理ガスが供給される。供給された処理ガスは、内管1bの下部から上部へと流れ、上部で内管1bと外管1a間を流下し、排気管9から外部に放出される。このような処理ガスの連続した流下状態の中で、半導体ウエハ3に所定の熱処理が施されるようになっている。・・・。保温筒11上には、被処理体例えば半導体ウエハ3を搭載したボート4が設置されるようになっている。このボート4上には、通常100〜150枚の半導体ウエハ3が垂直方向に所定間隔を設けて搭載されるようになっている。」(3頁左下欄17行〜右下欄末行)
(3c)「蓋体10は、反応管1とほぼ平行に立設された搬送機構5に取り付けられている。すなわち、蓋体10は、搬送機構5を構成するボールネジ5aに沿って昇降し、反応管1の直下のローディング領域6からボート4を反応管1内壁に非接触で搬出入するようになっている。」(4頁左上欄6〜11行)が記載されている。

3.対比・判断
(3-1)本件発明1について
刊行物1には、上記摘記事項(1b)によれば、発明が解決しようとする課題として、従来の減圧CVD装置においては、ガス導入口付近ではガスの混合比が均一にならず、その結果、試料基板面内での膜厚の均一性が、悪いという問題があった(【0005】)のを解決するために、反応室と、前記反応室内に設置され、被処理基板を支持する基板支持台と、前記反応室内に、ガス供給口の近傍で複数の反応性ガスが所定の角度をなして交わり混合されて、前記基板支持台上の被処理基板表面に導かれるように、先端が所定の角度をなして互いに近接せしめられた複数のガス導入管とを具備し、減圧下で前記反応性ガスを混合せしめ、前記被処理基板表面に薄膜形成あるいはエッチングを行う表面処理装置(上記摘記事項(1a))としたもので、図1には、反応容器10内に配設された基板支持台14に、互いに所定の間隔を隔てて平行にシリコン基板13が複数枚多段に配列さていること、及び第1のガス導入管11と第2のガス導入管12とが反応容器内の基板支持台14の下方に設けられていることが示されており(上記摘記事項(1d))、第1のガスと第2のガスを反応容器の下方から導入し、反応容器内を上昇させる様に流しているものである。
そうすると、刊行物1には、「反応室と、前記反応室内に設置され、被処理基板を互いに所定の間隔を隔てて平行に複数枚多段に配列支持する基板支持台と、前記反応室内に、ガス供給口の近傍で複数の反応性ガスが所定の角度をなして交わり混合されて、前記基板支持台上の被処理基板表面に導かれるように、先端が所定の角度をなして互いに近接せしめられた複数のガス導入管とを具備し、複数のガスを複数のガス導入管から反応容器内に下方から導入し、反応容器内を上昇する様に流し、減圧下で前記反応性ガスを混合せしめ、前記被処理基板表面に薄膜形成あるいはエッチングを行う表面処理装置」(以下、「引用発明1」という)が記載されていることになる。
そこで、本件発明1と上記引用発明1とを対比する。
引用発明1の「反応室」、「基板支持台」、「複数のガス導入管」は、順に本件発明1の「反応炉」、「ボート」、「複数のガス導入ノズル」に相当しているから、両者は共に、導入された複数の反応ガスの混合状態を改善し、炉口部近傍のウェーハの膜厚均一性を向上しようとする課題を有するものであって、「複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記複数のガス導入ノズルの内少なくとも1つのノズルを屈曲させてノズルの先端を近接させた半導体製造装置」で一致するものの、次の点で相違している。
(相違点1)本件発明1がボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータを備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点2)本件発明1では反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点3)ガス導入ノズルが、本件発明1では炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられているのに対して、引用発明1では反応室の下方に設けられている点。

そこで、上記相違点1〜3について検討する。
(相違点1)引用発明1には、具体的にボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータが記載されていないが、複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートを備える縦型反応炉において、ボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータを有することは周知のことであるから(必要ならば、刊行物6の「搬送機構」参照)、引用発明1において当該ボートエレベータを備えるようにすることは当業者ならば適宜なし得ることである。
(相違点2)引用発明1には、具体的に反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを備えることが記載されていないが、反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有することは、例えば刊行物2に、LPCVD装置がアウター側炉芯管2、インナー側炉芯管4、フランジ3を備えること(上記摘記事項(2d))が記載されているように周知のことであるから、引用発明1において当該反応炉の構成を備えるようにすることは当業者ならば適宜なし得ることである。
(相違点3)引用発明1にはガス導入ノズルの取付が反応室の下方に設けられている以外は具体的に記載されていない。
しかし、刊行物2には上記摘記事項(2d)によれば、図1に材料ガス導入部10が左側外部からフランジ3の下部を貫通して水平状態でインナー側炉心管4と保温筒7との空間部にまで設けられていることが示されており、この材料ガス導入部は、当然にフランジ部の中程に固定されるインナー側炉心管よりも下方に設けられていることになる。又ガス導入ノズルを炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けることも周知技術である(必要ならば、特開平5-21581号公報の図7従来の技術でのガス導入管12、特開平4-18727号公報の第1図でのガス導入管8、9、実開平3-50331号公報の第1図での原料ガス供給管16a、16b参照)。
そうすると、引用発明1での反応室の下方に設けられているガス導入ノズルを、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けるようにすることは設計的事項であって当業者ならば適宜なし得ることである。
なお、これら相違点1〜3は、本件特許明細書の段落【0002】〜【0006】において記載されている従来の半導体製造装置の構造に相当しているものにすぎない。
そして、本件発明1による効果も上記刊行物1、2、6及び周知技術から予測し得る程度のもので格別なものとは認められない。
よって、本件発明1は、上記刊行物1、2、6に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-2)本件発明2について
上記(3-1)で述べたとおり引用発明1には、「前記反応室内に、ガス供給口の近傍で複数の反応性ガスが所定の角度をなして交わり混合されて、前記基板支持台上の被処理基板表面に導かれるように、先端が所定の角度をなして互いに近接せしめられた複数のガス導入管とを具備する表面処理装置」が記載され、この「先端が所定の角度をなして互いに近接せしめられた複数のガス導入管」とを具備することは、上記摘記事項(1d)によれば、「第1および第2のガス供給管を直交させるようにしたが、図2(a) および(b) に示すように、互いに鋭角または鈍角を成して交わるようにしても良い。・・図2(a) に示すようにを互いに鋭角をなすように設置するのがよい。・・図2(b) に示すように互いに鈍角をなして交わるように設置する」(段落【0015】)と記載されている如く先端でノズルの向きを交差させたことにもなっている。
そうすると、本件発明2と引用発明1とを対比すると、両者は、「複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置」で一致するものの、次の点で相違している。
(相違点4)本件発明1がボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、炉口を閉塞する炉口蓋を備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点5)本件発明1では反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点6)ガス導入ノズルが、本件発明1では炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられているのに対して、引用発明1では反応室の下方に設けられている点。

そこで、上記相違点について検討すると、相違点5は上記相違点2と同じでありその検討は上記で述べたとおりであるから、次に相違点4、6について検討する。
(相違点4)引用発明1には、具体的にボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、炉口を閉塞する炉口蓋が記載されていないが、複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートを備える縦型反応炉において、ボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータを有することは(必要ならば、刊行物6の「搬送機構」参照)、炉口を閉塞する炉口蓋を有すること(必要ならば、刊行物2の「ハッチ8」、刊行物6の「蓋体10」参照)は周知のことであるから、引用発明1において当該ボートエレベータ、蓋体を備えるようにすることは当業者ならば適宜なし得ることである。
(相違点6)引用発明1にはガス導入ノズルの取付が反応室の下方に設けられている以外は具体的に記載されていない。
しかし、刊行物2には上記摘記事項(2d)によれば、図1に材料ガス導入部10が左側外部からフランジ3の下部を貫通して水平状態でインナー側炉心管4と保温筒7との空間部にまで設けられていることが示されており、この材料ガス導入部は、当然にウェーハ最下端より炉口蓋に近い位置に設けられていることになる。又ガス導入ノズルを炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に炉口フランジに突出する様取付けることも上記相違点3で示したとおり周知技術である。
そうすると、引用発明1での反応室の下方に設けられているガス導入ノズルを、炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より炉口蓋に近い位置に設けるようにすることは設計的事項であって当業者ならば適宜なし得ることである。
そして、本件発明2による効果も上記刊行物1、2、6及び周知技術から予測し得る程度のもので格別なものとは認められない。
よって、本件発明2は、上記刊行物1、2、6に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3)本件発明3について
上記(3-1)(3-2)で述べた引用発明1における被処理基板表面に薄膜形成あるいはエッチングを行う表面処理とは、上記摘記事項(1d)によれば、シリコン基板13に向けて第1の導入管11からSiH2Cl2を第2の導入管12からNH3を導入するものであるから(【0012】)、ウエーハ上にSi3N4膜を形成するものと認められ、本件発明3と上記引用発明1とを対比すると、両者は、「複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウエーハの処理は、反応炉内に反応ガスを導入し、ウエーハ上に成膜する処理であり、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置」で一致するものの、次の点で相違している。
(相違点7)本件発明3がボートを反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータを備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点8)ウエーハの処理が、本件発明3では反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であるのに対して、引用発明1では反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3を導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を形成する処理である点。
(相違点9)本件発明3では反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを備えているのに対して、引用発明1ではこの点が記載されていない点。
(相違点10)ガス導入ノズルが、本件発明3では炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられるのに対して、引用発明1では反応室の下方に設けられている点。

そこで、上記相違点について検討すると、相違点7は上記相違点1と、相違点9は上記相違点2、5と、相違点10は実質的に相違点3の一部と同じであってその検討は上記で述べたとおりであるから、次に相違点8について検討する。
(相違点8)半導体製造装置として、ウェーハ上にHTO膜を成膜するのに反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを用いることは周知のことであるから、引用発明1での反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3を導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を形成する処理にかえて、反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜することは当業者ならば適宜なし得ることである。
なお、上記相違点8は、本件特許明細書の段落【0007】において記載されている従来の成膜処理における反応ガス、生成膜にすぎない。
そして、本件発明3による効果も上記刊行物1、2、6及び周知技術から予測し得る程度のもので格別なものとは認められない。
よって、本件発明3は、上記刊行物1、2、6に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4)本件発明4について
本件発明4と本件発明3は、ウエーハの処理が、本件発明3では反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であるのに対して、本件発明4では反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3を導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を形成する処理である点で異なっている。
そうすると、本件発明4と引用発明1とを対比すると、上記の点は相違点にはならず、両者の相違点は、上記(3-3)で示した相違点7、9、10と同じになり、その検討は上記で述べたとおりである。
そして、本件発明4による効果も上記刊行物1、2、6及び周知技術から予測し得る程度のもので格別なものとは認められない。
よって、本件発明4は、上記刊行物1、2、6に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1〜4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1〜4に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの内少なくとも1つのノズルを屈曲させてノズルの先端を近接させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口を閉塞する炉口蓋と、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項3】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】 複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3とを導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させたことを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体製造装置、特に反応炉の反応ガス導入ノズルの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2、図3に於いて、従来の半導体製造装置の反応炉について説明する。
【0003】
半導体製造装置の反応炉は外管1、該外管1内に同心に挿入された内管2、前記外管1の下端に設けられた炉口フランジ3、及び前記外管1を囲繞して設けられたヒータ(図示せず)から構成され、前記内管2内にはボート4がボートエレベータ(図示せず)により装入される。該ボート4にはウェーハ5が水平姿勢で多段に装入され、該ボート4はボートキャップ6を介して炉口蓋7に乗載され、該炉口蓋7は前記図示しないボートエレベータに設けられ昇降可能であり、上昇時には前記炉口フランジ3に密着し、炉口を閉塞する。
【0004】
前記炉口フランジ3には前記内管2内部に開口する第1ガス導入ノズル8、第2ガス導入ノズル9が設けられ、又前記外管1と内管2が成す円筒状の空間11には排気口10が設けられている。
【0005】
前記第1ガス導入ノズル8、第2ガス導入ノズル9は図3に見られる様に、直管であり、内管2に対して放射状に設けられている。
【0006】
ウェーハ5の成膜処理は図示しないヒータにより炉内を加熱した状態で、ウェーハ5を装填したボート4をボートエレベータにより炉内に装入し、前記炉口蓋7により炉口を閉塞して前記排気口10より排気する。真空排気後、前記第1ガス導入ノズル8、前記第2ガス導入ノズル9より第1反応ガス、第2反応ガスがそれぞれ導入され、導入後ボート下部に於いて混合して上昇し、混合した反応ガスが加熱され、ウェーハ5に接触することでウェーハ表面に蒸着し、薄膜を生成する。更に、反応後のガスは前記内管2の上端より前記円筒状の空間11に回込み、下降後前記排気口10から排気される。
【0007】
前記ボートエレベータ5の成膜処理に於いて、HTO膜(High Temperature Oxidation Film)を成膜する場合は、第1、第2反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、Si3N4膜を成膜する場合は、第1、第2反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3を導入し、P-Doped Poly Si膜を生成する場合は、第1、第2反応ガスとしてSiH4とPH3を導入する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例に於いては、第1反応ガス、第2反応ガスが導入された近傍では混合状態が充分でなく、ボート4上のウェーハ5に関して炉口部に近い位置にあるウェーハ程ウェーハ内での膜厚均一性が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、導入された複数の反応ガスの混合状態を改善し、炉口部近傍のウェーハの膜厚均一性を向上しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置は前記内管よりも下方に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの内少なくとも1つのノズルを屈曲させてノズルの先端を近接させた半導体製造装置に係り、又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口を閉塞する炉口蓋と、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、取付け位置はウェーハ最下端より前記炉口蓋に近い位置に設けられ、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係り、又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH4又はSi2H6とN2Oを導入し、ウェーハ上にHTO膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係り、更に又複数枚のウェーハを処理する反応炉と、該反応炉内で複数枚のウェーハを水平姿勢で多段に支持するボートと、該ボートを前記反応炉下端の炉口より反応炉内に装入するボートエレベータと、前記炉口付近より前記反応炉内に複数の反応ガスを導入する複数のガス導入ノズルとを有し、前記複数の反応ガスを前記炉口付近から炉内に導入し、炉内を上昇させる様に流す半導体製造装置に於いて、前記ウェーハの処理は、反応炉内に反応ガスとしてSiH2Cl2とNH3とを導入し、ウェーハ上にSi3N4膜を成膜する処理であり、前記反応炉は外管と、該外管内に設けられた内管と、前記外管の下端に設けられた炉口フランジとを有し、前記ガス導入ノズルは前記炉口フランジ内壁からノズル先端迄が水平となる様に前記炉口フランジに突出する様取付けられると共に、前記複数のガス導入ノズルの先端でノズルの向きを交差させた半導体製造装置に係るものである。
【0011】
【作用】
ガス導入ノズルの先端が近接してあるので、導入されたガスは直ちに混合し、ウェーハには均質な混合ガスが供給される。
【0012】
【実施例】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施例を説明する。
【0013】
図1は本実施例の要部を示すものであり、図中、図3と同一のものには同符号を付してある。
【0014】
炉口フランジ3に内管2内部に開口する第1ガス導入ノズル12、第2ガス導入ノズル13を設ける。前記第1ガス導入ノズル12の先端部をL字状に屈曲させ、該第1ガス導入ノズル12の先端を第2ガス導入ノズル13先端に近接させる。
【0015】
而して、第1ガス導入ノズル12、第2ガス導入ノズル13から導入された第1、第2反応ガスは導入直後に混合し、内管2に供給される。又、導入後早期に混合することで均質な混合ガスが得られる。
【0016】
単一ウェーハ内に於ける本実施例と従来例との膜厚の均一性の比較を表1に示す。
【0017】
【表1】

表1中、測定したウェーハはボートに装入されたものの内、最も均一性の悪かったものである。
【0018】
尚、第1ガス導入ノズル12、第2ガス導入ノズル13は先端の開口位置が近接しておればよく、第1ガス導入ノズル12、第2ガス導入ノズル13がそれぞれL字状をしていても、或は第1ガス導入ノズル12、第2ガス導入ノズル13を共に直管とし一方の管を他方の管に対して傾斜させ、先端の開口位置を近接させてもよい等、種々変更が可能であることは言う迄もない。又、本発明は縦型炉の他、横型炉にも実施可能であることも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の要部を示すA-A矢視図相当図である。
【図2】
縦型反応炉を示す断面概略図である。
【図3】
従来例の要部を示すA-A矢視図である。
【符号の説明】
1 外管
2 内管
3 炉口フランジ
4 ボート
10 排気口
11 円筒状の空間
12 第1ガス導入管
13 第2ガス導入管
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-16 
出願番号 特願平5-182022
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
瀬良 聡機
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3305818号(P3305818)
権利者 株式会社日立国際電気
発明の名称 半導体製造装置  
代理人 三好 祥二  
代理人 三好 祥二  

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